2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
X 5721-1991
(ISO 8571-1 : 1988)
開放型システム間相互接続−
ファイルの転送,
アクセス及び管理 (FTAM) −
第1部 通則
Informtion processing systems−
Open Systems Interconnection−
File Transfer, Access and Management−
Part 1 : General introduction
日本工業規格としてのまえがき
この規格は,1988年に第1版として発行されたISO 8571-1 (Information processing systems−Open Systems
Interconnection−File Transfer, Access and Management−Part 1 : General introduction) に基づいて,技術的内容
及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格である。
0. 序文 この規格を含む,JIS X 5721〜5724(以下,規格群という。)は,情報処理システムの相互接続
を容易にするための一連の規格の集まりの一部である。この規格群は,JIS X 5003に基づく規格に関連し
ている。基本参照モデルでは,相互接続の標準化の領域を,各々管理可能な一連の層に分割している。
開放型システム間相互接続は,相互接続規格外の最小限の技術的取り決めによって,次の情報処理シス
テムの相互接続を実現することを目的とする。
(a) 異なる製造業者によるシステム
(b) 異なる管理下にあるシステム
(c) 複雑さの程度が異なるシステム
(d) 年代が異なるシステム
この規格群は,基本参照モデルの応用層で使用するファイルサービス及びファイルプロトコルを規定す
る。規定するサービスの種類は,応用サービス要素 (ASE) に属する。この応用サービス要素は,ファイ
ルとして処理でき,更に,開放型システム内に格納し,又は応用プロセス間で受け渡すことができる識別
可能な情報の集合体に関わるものとする。
この規格群は,基本ファイルサービスを規定する。このサービスは,ファイル転送を支援する十分な機
能を提供し,ファイルアクセス及びファイル管理のための枠組みを確立する。この規格群は,局所的なシ
ステム内のファイルの転送又はアクセス機能とのインタフェースについては規定しない。
この規格群は,次の4規格から構成する。
2
X 5721-1991 (ISO 8571-1 : 1988)
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JIS X 5721 開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第1部 通
則
JIS X 5722 開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第2部 仮
想ファイルストア定義
JIS X 5723 開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第3部 フ
ァイルサービス定義
JIS X 5724 開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第4部 フ
ァイルプロトコル仕様
この規格での定義は,仮想ファイルストア,ファイルサービス及びファイルプロトコルを規定するこの
規格群の他の規格において使用する。
この規格には,次の附属書がある。これらの附属書は,この規格の参考とする。
附属書A(参考) FTAMの使用例
附属書B(参考) オブジェクト識別子一覧
1. 適用範囲 この規格は,この規格群の他の規格で規定している概念及び機構の概要を規定する。
2. 引用規格
ISO 7498 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Basic Reference Model
備考 JIS X 5003(開放型システム間相互接続の基本参照モデル)-1987が,この国際規格と技術的
に一致している。
ISO 8326 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Basic connection oriented
session service definition
備考 JIS X 5201(開放型システム間相互接続の基本コネクション型セションサービス定義)-1987
が,この国際規格と技術的に一致している。
ISO/TR 8509 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Service conventions
備考 JIS X 5201-1987の参考(開放型システム間相互接続のサービス記法)が,この国際規格と技
術的に一致している。
ISO 8571-2 Information processing systems−Open Systems Interconnection−File Transfer, Access and
Management−Part2 : Virtual Filestore Definition
備考 JIS X 5722[開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第
2部 仮想ファイルストア定義]-1991が,この国際規格と一致している。
ISO 8571-3 Information processing systems−Open Systems Interconnection−File Transfer, Access and
Management−Part3 : File Service Definition
備考 JIS X 5723[開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第
3部 ファイルサービス定義]-1991が,この国際規格と一致している。
ISO 8571-4 Information processing systems−Open Systems Interconnection−File Transfer, Access and
Management−Part4 : File Protocol Specification
備考 JIS X 5724[開放型システム間相互接続−ファイルの転送,アクセス及び管理 (FTAM) −第
4部 ファイルプロトコル仕様]-1991が,この国際規格と一致している。
ISO 8649 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Service definition for the
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Association Control Service Element
備考 JIS X 5701(開放型システム間相互接続−アソシエーション制御サービス要素のサービス定
義)-1991が,この国際規格と一致している。
ISO 8822 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Connection oriented
presentation service definition
備考 JIS X 5601(開放型システム間相互接続−コネクション型プレゼンテーションサービス定義)
-1991が,この国際規格と一致している。
ISO 8824 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Specification ofAbstract Syntax
Notatioin One (ASN. 1)
備考 この国際規格に対応する規格として,JIS X 5603[開放型システム間相互接続の抽象構文記
法1 (ASN. 1) 仕様]-1990が制定されている。JIS X 5603は,この国際規格に対して日
本語が使用できるように拡張されている。
ISO 8825 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Specification ofBasic Encoding
Rules for Abstract Syntax Notation One (ASN. 1)
備考 JIS X 5604[開放型システム間相互接続の抽象構文記法1 (ASN. 1) の基本符号化規則仕様]
-1990が,この国際規格と一致している。
ISO 9804 Information processing systems−Open Systems Interconnection−Definition of Application
Service Elements−Commitment, Concurrency and Recovery
ISO 9834-2 Information processing systems−Procedures for specific OSI registration authorities−Part2 :
Registra-tion of OSI Document Types(1)
注(1) この規格群の制定時点では,規格案である。
3. 基本参照モデルの用語 この規格群は,JIS X 5003で定義された次の用語を使用する。
(a) 応用エンティティ (application-entity)
(b) 応用プロセス (application process)
(c) 応用サービス要素 (application service element)
(d) <N>コネクション [(N) -Connection]
(e) 開放型システム (open system)
(f) <N>プロトコル [(N) -protocol]
(g) <N>プロトコル制御情報 [(N) -protocol-control-information]
(h) <N>プロトコルデータ単位 [(N) -protocol-data-unit]
(i) <N>サービスアクセス点 [(N) -service-access-point]
(j) <N>サービスアクセス点アドレス [(N) -service-access-point-address]
(k) <N>サービスデータ単位 [(N) -service-data-unit]
(l) 副層 (sublayer)
(m) <N>利用者データ [(N) -user-data]
(n) 利用者要素 (user element)
4. サービス記法の用語 この規格群は,JIS X 5201の参考で定義された次の用語を使用する。
(a) 確認 (confirm)
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(b) 指示 (indication)
(c) プリミティブ (primitive)
(d) 要求 (request)
(e) 応答 (response)
(f) サービス提供者 (service provider)
(g) サービス利用者 (service user)
5. 定義 特記しない限り,すべての用語は,開放型相互接続のために導入するシステムを対象に適用す
る。これは,用語が実ファイルストアではなく,仮想ファイルストアに対応することを意味する(7.参照)。
定義は主な分類ごとにまとめ,各分類の中ではアルファベット順に並べる。
この規格群のためには,5.1〜5.7の定義を適用する。
5.1
全般的定義
5.1.1
空きファイル (empty file) ファイルコンテンツがデータ単位も節点名ももたない根節点だけで
構成されるファイル。
5.1.2
ファイルアクセス (file access) ファイルコンテンツの一部の検索,変更,置換又は消去。
5.1.3
ファイルコンテンツ (filecontents) ファイル中に含まれ,ファイルオープン動作有効期間におい
て操作できるデータ単位,節点名及び構造を規定する情報。ファイル属性は,ファイルコンテンツを構成
する要素とはしない。
5.1.4
ファイル管理 (file management) ファイルの生成及び削除,並びにファイル属性の検索又は操作。
5.1.5 ファイル転送 (file transfer) ファイルの内容の一部又は全部を開放型システム間で移動する機能。
5.1.6
階層ファイルモデル (hierarchical file model) 名前を付けることができるファイルアクセスデー
タ単位からなる木の形態をとる,ファイルの内部構造を表すモデル。
5.1.7
実ファイル (real file) 実システムに存在し,開放型システム間相互接続 (OSI) 環境における仮
想ファイルに対応付けられる名前をもった情報の集合及びその属性。
5.1.8
実ファイルストア (real filestore) ファイルの属性及び名前も含めてファイル群を系統立てて集
めたもの。ファイルは実システムに存在し,OSI環境における仮想ファイル参照に対応付ける。
5.1.9 仮想ファイル,ファイル (virtual file, file) 共通の属性をもつ構造化された情報の集まりであって,
明確な名前をもつもの。
5.1.10 仮想ファイルストア (virtualfilestore) ファイル群及びファイルストア群並びにそれらに対する動
作を記述するための抽象モデル。あいまいにならない限り,この規格群では単に”ファイルストア”とい
う。
5.2
アーキテクチャ
5.2.1
課金動作有効期間 (accounting regime) 課金情報の集合が適用される期間。
5.2.2
コミットメント単位 (commitment unit) ファイルストア動作の集まり。成功した場合,その作用
が他のプロセスに見えるようになり,完全に失敗した場合,他のプロセスに見える作用を伴わない。
備考 コミットメント単位における動作は,コミットメント単位の完了時まで随時無効にできる。
5.2.3
回復用情報 (docket) ファイルサービス動作有効期間に関係するものであって,誤り回復のため
に保持しなければならない情報の集まり。
5.2.4
外部ファイルサービス (external file service) ファイルサービス利用者から見えるファイルのアク
セス,転送及び管理。
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5.2.5
ファイルサービス利用者 (file service user) FTAMサービスを概念的に起動する応用エンティテ
ィの部分。
5.2.6
起動側 (initiator) FTAM動作有効期間の確立を要求するファイルサービス利用者。
5.2.7
内部ファイルサービス (internal file service) ファイル誤り回復プロトコル機械がファイル誤り回
復プロトコル制御情報及び通常のファイルプロトコル制御情報の両方を転送するために使用するサービス。
5.2.8
開放型システム間相互接続環境 (open systems interconnection environment) システム間の相互接
続を可能とする規格化されたサービス,プロトコル及びデータ構造の定義の集合。
5.2.9 フェーズ (phase) プロトコル交換が応用コンテキストの確立,解放などの特定の目的をもつ期間。
各フェーズで有効なメッセージの集まりは,状態遷移によって定義する。
備考 エンティティは,いつでもいずれか一つのフェーズにある。
5.2.10 プレゼンテーションデータ値 (presentation data value) 抽象構文によって記述し,プレゼンテーシ
ョンサービスによって転送する情報の単位。
5.2.11 実システム環境 (real system environment) 実システム内における応用プロセスを支援する実装の
側面。
5.2.12 受信側エンティティ,受信側 (receiving entity, receiver) ファイルデータ転送動作有効期間におい
てファイルコンテンツの一部又は全部を受信するエンティティ。
5.2.13 動作有効期間 (regime) エンティティが,そのとり得る状態のうちのある部分集合状態にあり,
特定の動作が許される期間。
備考 動作有効期間は,入れ子にすることができる。
5.2.14 応答側 (responder) 起動側から要求したFTAM動作有効期間確立を受け入れる側のファイルサー
ビス利用者。
5.2.15 ロールバック (rollback) 完結していない動作を無効にすること。
5.2.16 送信側エンティティ,送信側 (sendingentity, sender) ファイルデータ転送動作有効期間において
ファイルコンテンツの一部又は全部を送信するエンティティ。
5.2.17 サービス要素 (service element) まとまった機能を有する標準化の単位。
5.2.18 サービスプリミティブ (service primitive) 通信サービスの利用者と提供者との間の相互作用のう
ち,最小の定義単位。
5.2.19 共存するサービス要素 (symbiotic service element) 1 1番目のサービスのプロトコル制御情報の抽
象構文中で,定義した位置に2番目のサービスの抽象構文の部分を内包し,そのサービスの意味を取り入
れることによって2番目のサービスの操作を支援するサービス。
5.3
ファイルストアスキーマ
5.3.1
アクティビティ属性 (activity attributes) ファイルサービスを使用する活動を記述する属性。この
属性は,一つのFTAM動作有効期間(その中に入れ子にした動作有効期間を含む。)に適用する。
5.3.2
属性 (attribute) 各々の値が定義した意味をもつ値集合から一つの値をとることによって何らか
の性質を表す情報。
5.3.3
ファイル属性 (file attributes) ファイルの名前及びその他の識別可能な性質。
備考 複数の利用者が同時に活動する場合でも,ファイルサービスの利用者には,ファイル属性は同
一の値とする。
5.4
ファイルストア動作
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X 5721-1991 (ISO 8571-1 : 1988)
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5.4.1
アクセスコンテキスト (access context) 転送又はアクセスのためにファイルを読み出すときに,
ファイルコンテンツにおける構造を規定する情報及び利用者情報の部分集合を定義するアルゴリズム。
5.4.2
データ要素 (data element) プレゼンテーションサービスによって転送する場合,識別情報を保持
する必要がある最小データの定義。一つのデータ要素でファイルコンテンツ情報,ファイル構造情報又は
プロトコル制御情報を運ぶことができる。
5.4.3
データ単位 (data unit) ファイルストア動作が操作できるファイルコンテンツの最小単位。各デ
ータ単位は,ファイルアクセス構造の節点に関係付ける。データ単位は一連のデータ要素からなる。
5.4.4
ファイルアクセスデータ単位 (file access data unit) 転送,削除,拡張,置換又は挿入動作を行う
ことができるファイルアクセス構造の単位。ファイルアクセスデータ単位は,0個以上のデータ単位で構
成する。
5.4.5
ファイルストア動作 (file store action) 仮想、ファイルストアの定義の一部として規定した動作の
一つ。
5.4.6
ファイルアクセス構造 (file access structure) ファイルアクセスデータ単位を関係付けて,ファイ
ルアクセスデータ単位の識別,記述及び操作を可能にするファイルのデータ構造。
5.5
ファイル構造
5.5.1
弧 (arc) 二つの節点間の方向性のあるつながり。
5.5.2
弧長 (arc length) 子節点と親節点の間の水準の差。正の整数で表す。
5.5.3
(節点の)子 [child (of a node)] ある節点の出弧の終点となる節点。
5.5.4
葉 (leaf) 出弧がない木の節点。
5.5.5
(節点の)水準 [level (of a node)] 根からその節点までの弧長の和。
5.5.6
長弧 (long arc) 弧長が1よりも大きい弧。
5.5.7
節点 (node) 木を構成する基本要素。
5.5.8
順序木 (ordered tree) 木の各節点の子の順序付けを定義した木。
5.5.9
(節点の)親 [parent (of a node)] ある節点の入弧の始点となる節点。
5.5.10 経路 (path) 弧の定義された方向に沿って各々の弧を通過するように,ある節点と他の節点を結
ぶ弧のつながり。
5.5.11 根 (root) ある木において,入弧のない唯一の節点。根の水準は0とする。
5.5.12 (節点の)兄弟 [sister (of a node)] ある節点と同じ親節点を共有する節点。
5.5.13 部分木 (sub tree) 部分木根節点としての任意の節点,及びその部分木根節点からの経路で到達す
ることができる他のすべての節点で構成する木の部分。
5.5.14 トラバーサル順序 (traversal sequence) 木において,各節点が1回だけ現れるような節点の順序付
け。その順序は,すべての木に適用するアルゴリズムによって決定する。
備考 一般に,幾つかの異なる木から同じトラバーサル順序を生成できることがある。
5.5.15 木 (tree) ただ一つの節点だけが入弧をもたず,他のすべての節点が一つの入弧をもつように,
すべての節点を方向性のある弧で結んだ接続構造。
5.6
制約集合
5.6.1
制約集合 (constraint set) はん(汎)用ファイルモデルヘの制約及び詳細化の集合。これによって,
特定の応用部類にも適合するように,はん(汎)用性の低いモデルを規定する。
5.6.2
ファイルモデル (file model) ファイルコンテンツのアクセス構造のモデル。
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5.6.3
フラット(制約集合) [flat (constraint set)] はん(汎)用階層ファイルモデルに適用した場合,
水準0及び水準1の二つの水準で構成し,葉節点だけにデータ単位をもち,根節点にはデータ単位をもた
ないアクセス構造を生成する制約集合。
5.6.4
はん(汎)用階層ファイルモデル (general hierarchical model) ファイルアクセスデータ単位が階
層木を構成するモデル。
5.6.5
階層(制約集合) [hierarchical (constraint set)] はん(汎)用階層ファイルモデルに適用した場合,
階層的であるが,節点記述及びデータ単位の形式が制約されたアクセス構造を生成する制約集合。
5.6.6
非構造(制約集合) [unstructured (constraintset)] はん(汎)用階層ファイルモデルに適用した場
合,一つのデータ単位をもつ根節点だけで構成するアクセス構造を生成する制約集合。
5.7
ドキュメント型
5.7.1
(ドキュメントの)連結 [concatenation (ofdocuments)] 二つのドキュメントを組み合わせて,一
つのドキュメントを作ること。
5.7.2
ドキュメント (document) 適用可能な転送構文の集合,抽象構文及び部分的意味 (semantics) が
分かっている情報の集まり。
5.7.3
ドキュメント型 (documenttype) ドキュメントに必要な意味,抽象構文,転送構文及び動的特性
を示すドキュメントのクラスの仕様。
5.7.4
(ドキュメントの)動的特性 [dynamics (of a document)] ドキュメントの連結及び単純化の特性。
5.7.5
(ドキュメントの)緩和 [relaxation (of a document)] ドキュメントのパラメタをより少ない制約
にすることによって,あるドキュメントから異なるドキュメントを抽出作成する過程。
5.7.6
(ドキュメントの)単純化 [simplification (ofa document)] あるドキュメントから構造情報を捨て
ることによって,異なるドキュメントを抽出作成する過程。
6. 略語 この規格群では,次の略語を使用する。
ACSE
アソシエーション制御サービス要素 (association control service element)
ASE
応用サービス要素 (application service element)
CCR
コミットメント,並行処理及び回復 (commitment, concurrency and recovery)
DU
データ単位 (data unit)
EFS
外部ファイルサービス (extemal file service)
FADU
ファイルアクセスデータ単位 (file access data unit)
FERPM
ファイル誤り回復プロトコル機械 (file error recovery protocol machme)
FPDU
ファイルプロトコルデータ単位 (file protocol data unit)
FPM
ファイルプロトコル機械 (file protocol machine)
FTAM
ファイルの転送,アクセス及び管理 (file transfer, access and management)
Id
識別子 (identifier)
IFS
内部ファイルサービス (intemal file service)
OSI
開放型システム間相互接続 (open systems interconnection)
OSI環境 (OSIE)
開放型システム間相互接続環境 (open systems interconnection environment)
PCI
プロトコル制御情報 (protocol control information)
PDU
プロトコルデータ単位 (protocol data unit)
PDV
プレゼンテーションデータ値 (presentationdatavalue)
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PSDU
プレゼンテーションサービスデータ単位 (presentation service data unit)
RSE
実システム環境 (realsystemenvironment)
第1章 FTAMの一般概念
7. OSIアーキテクチャの背景 ファイルサービスの標準化は,自システムがファイルを格納している場
合と同じように他システムが保有する情報を転送,アクセス又は管理したいと希望するファイル利用者に
対して,開放型システム間相互接続を実現することを目的とする。開放型システムで,応答側として規定
したファイルプロトコルに準拠するものは,仮想ファイルストアを提供するものとみなす。
すべての開放型システム間相互接続の規格と同様に,ここで使用するアーキテクチャ上の分割は,プロ
トコルの分類を反映する。この分割は,その実装を構築する方法をいかなる形でも制限しない。適合性の
試験は,相互接続性に限定する。
この規格群の各規格は,更に大きな開放型システム間相互接続規格の規格群の一部で,全体の関連はJIS
X 5003で規定されている。各種の利用領域に共通な相互接続プロトコルの諸側面は,それぞれの規格で規
定し,各種要素の論理的関係は,それらのサービスの定義によって提供する。
OSIの意図を理解するために,相互に関連した規格と,規格に規定されているプロトコルを使用する実
開放型システムのハードウェア及びソフトウェアによる実装とを慎重に区別しなければならない。この区
別から,次の二つの環境を識別することができる。
(a) 実システム内の応用プロセスを支援する実際のファシリティ及び資源の点から見た実装の側面は,実
システム環境 (RSE) を構成する。
(b) システムの相互接続を可能にする標準化されたサービス,プロトコル及びデータ構造の定義は,OSI
環境を構成する。OSI環境において見られる応用プロセスの動作を様式化する側面を,応用エンティ
ティとする。OSI基本参照モデルで定義された層をなす通信機能は,応用エンティティのアクティビ
ティを支援する。
実装の設計において,定義項目と実装との間の関連付けを決定する作業が発生する。この過程を図1に
示す。
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図1 RSEとOSI環境との間の情報の流れ
備考1.
RSEとOSI環境との間の動作の流れは,通信要求の応用エンティティ利用者要素への写像を表現する。
2. 応用エンティティ間の応用PCI及び利用者データの流れは,合意した抽象構文での論理的な情報の流れと
し,特定の転送構文からは独立なものとする。
3. 応用エンティティとプレゼンテーションエンティティとの間の流れは,一つ以上の合意したプレゼンテー
ションコンテキストによる利用者データ及び応用プロトコル制御情報を含む論理的な情報の流れとする。
4. プレゼンテーションエンティティ間の流れは,折衝された転送構文で符号化したデータ及びプレゼンテー
ションプロトコル制御情報からなる。
8. ファイルサービスの特徴
8.1 ファイルアクティビティの制御 この規格群の目的を明らかにするため,ファイルアクティビティを
制御する方法を規定する。ファイル転送又はファイルアクセスの場合,どのような転送又はアクセス
においても,制御の主導権をもつエンティティ,元側仮想ファイルをアクセスするエンティティ及び
あて先仮想ファイルをアクセスするエンティティの三つのエンティティが関係する。制御側からは,
次の二つの情報の流れがある。
(a) 元側仮想ファイルの指定,及び転送を行う方法の制約に関して,元側ファイルをアクセスするエンテ
ィティに送られる情報。
(b) あて先仮想ファイルの指定,及び転送を行う方法の制約に関して,あて先ファイルをアクセスするエ
ンティティに送られる情報。
これらの情報の流れと転送との関係を図2aに示す。
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図2a ファイル転送における論理的な情報の流れ
図2b FTAMにおける実際の情報の流れ
転送の調整及び制御を単純化するためには,制御側が,二つのファイルプロトコルエンティティのうち
一つを介してこれらの情報を流し,そのエンティティに転送時の制御側の代理を行わせるのがよい(図2b
参照)。これは,制御側及び起動を行うファイルエンティティが,同じシステムにあることによる。
ここでは,図2bのA及びBにおける要素の相互接続を支援するサービスを定義する。A及びBは,サ
ービス定義で参照されるサービスの利用者とする。
8.2
会話の非対称性 ファイルプロトコルが支援する動作は,サービス及びプロトコル構造に反映され
る重要な非対称性を示す。この非対称性は,主従関係の形式をとる。
まず,各アクティビティは,何らかの目的をもつ1名のファイルサービス利用者(起動側,図2bのA)
から開始される。ファイルストアに関係したエンティティ(応答側,図2bのB)は,単にこの起動に従う。
これは,プロトコルが起動側のファイルストアに関する情報を運ぶ必要がないため,ファイルを一つのフ
ァイルストアから他のファイルストアに転送する場合にも適用できる。ファイルプロトコルは,応答側の
ファイルストアに関する情報だけを送る。ファイルアクセスデータ単位を応答側のファイルストアに向け
て転送する動作は,ファイルヘの局所的なアクセス,及び他のファイルヘのリモートアクセスを行う複写
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業務を行っているものと考える(図3参照)。
第2の非対称性は更に基本的なものであって,ファイルアクセスデータ単位を転送する場合,方のエン
ティティが送信側となり,他方のエンティティが受信側となる。データを転送している間は,いつでもデ
ータの流れに方向性がある。
図3 ファイルエンティティ間の会話の例
8.3
外部ファイルサービス及び内部ファイルサービス モジュール化手法を用いて誤り回復機構を切り
離すことによって,8.2で規定した起動側と応答側との通信を,次の二つのサービス水準に分ける(図4
参照)。
図4 ファイルプロトコルエンティティの構造化
(a) 外部ファイルサービス このサービスでは,利用者がサービス品質の条件を指定するが,誤り回復に
ついては関知せず,この問題をサービス提供者に委任する。外部ファイルサービスにおいては,ファ
イルデータの転送は,誤りのない一連の操作としてモデル化される。したがって,外部ファイルサー
ビスでは,回復可能誤り及び誤り回復動作は利用者の目には見えない。
(b) 内部ファイルサービス このサービスは,ファイル誤り回復プロトコル機械が使用する。このサービ
スは,サービス利用者に誤りの回復及びチェックポイント機構の制御の機能を与えるプリミティブを
含む。外部ファイルサービスと内部ファイルサービスとを関連付けるプロトコル仕様は,標準誤り回
復手順から構成され,この手順を実行するプロトコル機械は,内部ファイルサービスの利用者となる。
外部サービスで要求されるFTAM及び通信サービスの品質にかかる費用の分析及び局所的な管理情報
を基礎にして,使用する誤り回復手順を選択する。
8.4
サービスクラス及び機能単位 FTAMプロトコル及びFTAMサービスは,豊富な機能をもち,広範
な種類の応用を支援できるが,すべての場合を考慮してプロトコルの全部を実装する経費は,かなり高く
なる。
一方,実装者が,どの機能を装備するかについて任意の選択権をもっている場合には,他の実装者が同
様の選択を行う機会は少なくなり,通信できる可能性も少なくなる。
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これらの問題を回避するため,FTAMサービスでは,2種類の機能選択を定義する。最も基本的な水準
では,定義する機能を機能単位に分類する。実装は,機能単位を完全に支援するか,又は全く支援しない
かのいずれかにしなければならない。したがって,選択の数には制限がある。二つの通信エンティティが,
利用できる機能単位について共通の理解に達するために,FTAM動作有効期間を初期化する際に機能単位
を折衝する機構を定義する。
このため多様性は低下するが,かなりの自由度が残される。サービスクラスを定義することによって,
更に集約し,各サービスクラスは,広範な利用種別を支援する。これらのクラスは,次のとおりとする。
(a) 転送クラス データ転送前後のプロトコル負荷の少ない,簡単な操作に力点を置いたシステム間のフ
ァイル又はファイルの一部の移動を行うクラス。
(b) 管理クラス 一連の独立した確認型サービス交換による仮想ファイルストアの制御を行うが,ファイ
ル転送機構を含まないクラス。
(c) 転送・管理クラス 転送クラス及び管理クラスの機能を組み合わせたクラス。
(d) アクセスクラス 起動側エンティティがファイルアクセスデータ単位についての一連の操作を行い,
遠隔データの操作を行うクラス。
(e) 無制約クラス 機能単位の選択が分散応用の設計者に任され,完全な最適化の柔軟性が得られるが,
共通の機能上の中核は保証されないクラス。
FTAM動作有効期間の初期化時には,必要なサービスクラスの折衝を行う。
9. ファイルサービスに関連した機能
9.1
動作制御 仮想ファイルストアは,ファイルに対して実行できる動作を定義する。どのような状況
においても,定義した動作の部分集合だけを有効とする。その集合は,次の要因で決まる。
(a) ファイル属性(第2章参照)。ファイル属性は,適用される制約集合によって表現するファイルコンテ
ンツ及び許可動作ファイル属性による局所的な格納域機構に適合した動作を示し,ファイルアクセス
に影響するアクセス制御の制約を表す。
(b) ファイルストアの現状態。特に,同一ファイルに対して実行中の同時アクセスによって示す制約。
(c) データ転送動作有効期間の折衝中にファイルサービスのパラメタによって確立されたアクティビティ
属性の値。
(a)〜(c)の要因が動作集合の可用性について制約をつける。実際に実行可能な動作の集合を絞り込んで決
定する過程を図5のベン図に示す。
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図5 可能な動作についての制約
ベン図は,ファイルに適合した動作が,制約集合中の構造上の制約で表現されたファイル構造,許可動
作及びアクセス制御属性であることを示す。その結果,原則的にファイル上で実行可能な動作の集合が決
まる。
結果として生じる属性集合は,ファイルストアに適用されるシステムの制約を勘案して,更に縮小する。
システム制約のうち,他の利用者との同時のアクティビティが,ファイルアクセスに最も重要な制約を与
える。最終的に,データ転送動作有効期間確立中に起動者が動作集合を要求し,各々の段階において,パ
ラメタの折衝は,要求した動作集合の制約,システムが許容する集合,又はその両方を制約する。アソシ
エーション初期化時,折衝したサービスクラス及び機能単位の集合が動作を制約する。ファイル選択時,
同意した許可動作からこの動作の部分集合が生じる。最後に,ファイルがオープン時,指定の処理モード
に使用できる動作を示す。
9.2
課金 FTAMサービスは,課金先及び課金値の情報転送のための基本機構を定義している。課金先
は,ファイル格納域で発生する経費を取り扱うためファイルと関連させることもでき,またファイル内の
情報にアクセスする経費を取り扱うためファイル動作有効期間と関連させることもできる。
課金値パラメタによって,動作有効期間の終了時に,これらの発生した経費を課金先に対して報告する。
課金先は,FTAM動作有効期間の初期化時に指定されるが,別の課金先に請求することを許すために,必
要ならばあるファイルが選択されたときに,課金先を更新してもよい。
これらの機構によって,課金先及び課金値情報の交換を行うことができるが,使用する課金モデル,予
算及び分配の管理の機構は,この規格群の対象外とする。この問題には,多くのアクティビティが関係し
ており,FTAMは,その使用例の一つとする。
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9.3
並行処理制御 並行処理制御機構は,共用アクセスを制限することによって,起動側にファイルの
一貫性を保証する。この機構は,同時に起こるアクセスの影響を受けることなしに一連のまとまった動作
を利用者が実行する方法を提供する。
個々のファイルストア動作は通常,読み出しデータ転送,書き込みデータ転送などの一個の動作が分割
できず,かつ逐次的となるように実装する。すなわち,アソシエーション群における動作の順序は予測不
可能だが,一つのアソシエーションにおける動作はそれらが完了したときに,別のアソシエーションから
区別できる。
並行処理制御は,複数タスクによる並行処理を正しく制御するために用意する。これは,安全保護機構
としてのアクセス制御及びファイルストアをもつシステムの能力を示す許可動作の規定と明確に区別しな
ければならない。どんな動作も実行するに当たっては,並行処理制御,アクセス制御及び許可動作の規定
の3種の制御機構を整合させなければならない。
並行処理制御には二つの水準を用意する。外側水準は,ファイル全体へのアクセスを制御する。一方,
内側水準は,個々のファイルアクセスデータ単位へのアクセスを個別に制御できる。外側水準,すなわち
ファイル水準は,ファイル選択又は生成のときに適用し,ファイル解放又はファイル削除のときに解放す
る。例えば,ファイルをまず読んで次に再度,更新のためファイルオープンを行う場合,ファイルオープ
ン動作有効期間の間変更できる。ファイル並行処理制御は,ファイル選択又はファイルオープンのときに
設定し,ファイル解放又はファイルクローズまで継続する。
ファイル並行処理は,仮想ファイルに対して行われる各々の型の動作に別個に適用される。すなわち,
読み出し,挿入,置換,拡張,消去,属性読み出し,属性変更及びファイル削除動作のそれぞれについて
独立した制御ができる。これによって,一般的な方法と応用業務に特有な方法の両方を兼ね備えた応用業
務に向いた並行処理制御手段を提供する。しかし,それらをもっていても,その手段を可能な限り使いこ
なしても現実には使えないことがあり得る。適用に当たって広く良く考え設計することが必要である。フ
ァイル選択又はファイルオープン動作有効期間に対して,個々の動作に次のうちの一つを省略時値として
採用するか,又は次のうちの一つを指定する。
(a) 必要なし 自分は操作しない,他者は操作してよい。
(b) 共用 自分も他者も操作できる。
(c) 排他 自分は操作できるが,他者は操作できない。
(d) アクセス禁止 誰も操作を行うことができない。
このようにして,例えば,分散型応用は,全体のデータ保全性を保つために,読み出しアクセスに対し
て“共用”を,他の動作に対して“アクセス禁止”を指定することができる。複数の利用者は,通常の操
作で読み出しができるが,管理エンティティが構造の変更を伴うファイルの排他的置換及び挿入アクセス
を要求すると,他のすべてのアクセスを止めるまでそのアクティビティを開始できない。更に,その操作
が完了するまで新たな他の利用者によるアクセスを止める。
しかし,全利用者が共用読み出し及び排他置換をファイル全体に対して要求すると,置換の制約によっ
て同時にファイルにアクセスできるのは1利用者だけに限られ,並行処理は無効になる。
より精巧な水準として,ファイルアクセスデータ単位 (FADU) ロックという第2の制御型を規定する。
個々のFADUをロックするこの機構の使用は,FTAM動作有効期間初期化時に対応する機能単位を選択す
ることによって折衝する。その後ファイルオープン時にそのファイルに対して使用を要求する。
FADUロックを要求する場合,ファイル選択時に要求された並行処理制御は効力をもつが,ファイルオ
ープンを行ったときに指定された並行処理制御は,直ちには適用されない。その代り要求された制御は,
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個々のファイルアクセス動作の間適用される。例えば,FADU読み出し要求は,ファイルオープン時に要
求した共用並行処理制御の実行を読み出し動作中に引き起こす。
更に,個々のファイルアクセスデータ単位には,パラメタで適当に指定した対のファイルアクセス動作
で区切られたファイルオープン動作有効期間内の期間に適用されるロックがある。
ファイルアクセスデータ単位のロックには,オン及びオフの二つの状態がある。ロックがオフのとき,
ファイル全体への共用動作は他の同じアクセスと同時に実行できる。しかし,利用者による動作の結果と
して,ロックがオンになると,利用者はそのファイルアクセスデータ単位全体に排他制御をするか,又は
前に動作が要求されていない場合,“アクセス禁止”となる。利用者は,他の利用者からロックされたFADU
中のより小さなFADUを制御できない。
ロックは,位置付け又はデータ転送の動作と関連してオン又はオフにされる。動作の実行の前にロック
をオンにし,実行の後にロックをオフにする。ファイル選択時にファイル全体に“排他”又は“アクセス
禁止”を指定した動作は,ファイルアクセスデータ単位ロックの影響を受けない。
すべての範囲にわたって並行処理制御を実装するのが難しいシステムの場合は,機能に制約を付けた形
で実装をしてもよい。例えば,利用者にはサービス品質の低下となるが,局所事項として全動作に最も制
約が付いた要求の場合と同じ水準の制約を付けた形で実装する。
9.4
アクセス制御 この規格群で規定するアクセス制御機構は,アクセス制御リストの概念に基づく。
このリストの各項目は,動作集合,並行処理制約及び起動側がこれらのファイルストア動作を行う前に満
たさなければならない試験集合を示し,リストの項目に示された条件が満たされた場合に動作が実行でき
る。したがって,リストには,名前をもった幾つかの起動側に対してファイルの読み出しを許可する項目,
並びにパスワードを指定したエンティティに対してファイルの読み出し及び書き込みを許可する項目を含
む。
項目に示されている動作のほかに,許される並行処理制御の組合せも含む(9.3参照)。それらを含まな
い場合,並行処理制御の機能はファイルストアによって局所的に決める。
ファイルの動作に適用される並行処理制御は,単に必要又は不要というだけでなく,もっと詳細な水準
で行う。起動側は,他のアクセスする者とファイルを共用しながら動作を実行してもよいし,排他的アク
セスを要求してもよい。起動側は,自分自身が動作の実行に関し権限をもっていない場合でも,他のエン
ティティが当該動作を実行できないようにすることを要求してもよい。これらの並行処理制御は,実行能
力を記録したアクセス制御ファイル属性によって,それぞれの動作を個別に指定する。要求された特定の
動作形態が指示されている場合に限り,並行処理制御を行うことができる。しかし,起動側は,いつでも
アクセス“必要なし”を指示してよい。
例えば,起動側は自分自身で削除要求しないにしても,読み出し動作中は他の者に削除動作させないよ
う指示する権限をもって共用読み出しを要求してもよい。
アクセス制御リストの各項目は,許される操作の集合を指定し,応用エンティティ名称によって起動側
の識別及び位置を指定し,必要なアクセスパスワードを指定する。
FTAM動作有効期間,ファイル選択及びオープン動作有効期間確立時に,リスト項目に対応する各種の
アクティビティ属性について値を確立する。特に,起動側は,ファイル選択動作有効期間確立時に,要求
アクセスアクティビティ属性を設定することによって動作の実行を要求する。要求された動作を行う前に,
応答側エンティティは,アクセス制御リストを走査して,アクティビティ属性値が項目に一致しているこ
とを確認する。一致している場合には,動作を行うことができる。一致が確認されない場合には,要求は
拒否する。
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アクセス制御リストは,ファイルの恒久的特性とし,ファイルが存在する限り保持し,アクセスを伴う
動作有効期間が確立されるごとに,このリストについてのアクセス検査を行う。アクセス許可は,動作有
効期間が存続している間有効とする。
9.5
コミットメント この規格群では,誤り回復プロトコルとして,広範囲にわたる通信又はシステム
の障害の場合にも,要求されたデータ転送を正常に行うための機構を定める。しかし,分散応用における
群又は一連の動作の実行については,一連の動作全体が終了して終了を確認するか,又はロールバックし
て動作の結果が残らないようにする必要がある。
ISO 9804のCCRは,ある条件のもとで,この作用を行うための機構を規定する。応用は,CCRとFTAM
とを結び付けて構築でき,ファイル転送の場合にこれを行えるよう規則を定義する。これは,FTAMプロ
トコルが許しているはん(汎)用的なアソシエーションの共用の特別な場合とする。
10. FTAMを支援するサービス提供者
10.1 ACSE−応用コンテキスト及びFTAM環境 ACSE制御機能は,ファイルプロトコルを行うのに必
要な応用アソシエーション及び関連する応用コンテキストを確立する。アソシエーション及びコンテキス
トに必要な条件は,FTAM動作有効期間のインスタンスを初期化及び終了するサービスプリミティブによ
って表現する。
ファイルプロトコルは,新たなアソシエーションの確立によってこれらの条件が満足されるように規定
する。初期のACSE制御規格では,アソシエーションの確立及び解放だけを規定する。しかし,将来の
ACSE機能では,すでに存在する応用アソシエーションをFTAM環境を提供するために再使用することが
できる。このような機構は,FTAM動作有効期間を開始及び終了する有効な方法となる。
応用アソシエーションの性質は,名前をもつ応用コンテキストを定める。一般に,この名前は,応用の
種々の側面を識別する。FTAMもその一つである。しかし,一つのアクティビティとしてファイルを転送
する場合に使用するため,特定の応用コンテキスト名をJIS X 5724に定義する。
ファイルプロトコルは,いつでも,一つのアソシエーションでは一つのファイルアクティビティだけが
進行するように操作を行う。複数のファイルアクティビティが必要な場合には,複数のアソシエーション
を確立しなければならない。ファイルアクティビティが終了すると,他のファイルアクティビティを開始
するか,アソシエーション及びアソシエーションを支援するコネクションを解放するか,又は応用コンテ
キストを変更して他種のサービスを行うかは,局所的な管理によって決定する。
10.2 プレゼンテーションサービス FTAMプロトコルの制御情報及びファイルデータは,JIS X 5601で
定義されているプレゼンテーションサービスを用いて,相互に通信する。
応用にとって情報の意味は,符号化方式とは関係なく,抽象構文の概念によって表現する。基本的側面
は,抽象構文の仕様の一部としてデータ型の定義によって記述する。応用の仕様では,この側面だけを参
照する。
プレゼンテーションサービスは,応用エンティティにとって意味のある情報の表現を管理する。通信す
る情報の表現に関連する要素として,次の三つの表現がある。開放型システム間で通信する情報を表現す
る転送構文,及び通信する二つの実システム内で使用するそれぞれの情報の表現の三つとする。これらの
すべての情報表現は,確立したプレゼンテーションコンテキストに対応する一つの共通抽象構文を表す。
しかし,プレゼンテーションエンティティは,これらの表現のうち転送構文及び自システム内の局所的な
表現の二つだけを知っていればよい。プレゼンテーションエンティティ間で規定するプロトコルは,転送
構文だけに関係する。
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ある応用にとっては,転送される情報のある部分だけが意味があり,他は意味のある部分を転送するた
めの取決めに過ぎない。意味のある側面及び意味のない側面の区別は,応用の性質に依存し,応用が異な
れば,区別も異なってよい。
例えば,テキストメッセージを転送する応用は,メッセージを形成する一連の語句に関与しているが,
印刷されたページでのメッセージの正確な配置には関係していない。一方,植字のためのテキストを転送
する応用は,テキストの配置の細部に関係している。非テキスト転送でも同様のことが考えられる。
応用にとって意味のある転送という側面を,抽象構文によって表現する。応用から見ると,それぞれの
抽象構文は,単一のプレゼンテーションコンテキストに対応しており,一つ以上のプレゼンテーションコ
ンテキストを同時に使用してよい。プレゼンテーションコンテキストを確立するとき,プレゼンテーショ
ンエンティティの間で適切な転送構文を折衝する。抽象構文の定義に明示されていない表現上の細部の折
衝は,プレゼンテーションサービス提供者が行う。プレゼンテーションエンティティが行う変換は,抽象
構文で定義したデータ型のすべての意味が失われない範囲で実行される。
プレゼンテーションコンテキストの集合は,FTAM動作有効期間を初期化するときに確立し,アクティ
ビティを行うには,これだけで十分としてもよい。広範囲にわたるファイルの型を処理する必要がある場
合には,プレゼンテーションサービスのコンテキスト管理ファシリティに要求を行い,各ファイルについ
て必要なプレゼンテーションコンテキストを提供するようファイルオープンを行うときに定義したコンテ
キスト集合を変更する。
個々のデータ要素を通信する場合,応用は,転送するプレゼンテーションデータ値,データ値の属する
データ型及びこれから引き出される抽象構文を,プレゼンテーションサービスへ提供する。そのプレゼン
テーションコンテキストについて折衝した転送構文を使用する。FTAM応用プロトコルの選択は,この特
定のプロトコルの制御情報(FTAMPCI抽象構文)の表現に必要な抽象データ型の使用を意味する。JIS X
5604は,抽象構文からプロトコル制御情報の転送構文を確立するための規則を規定する。これは,すべて
のFTAM実装で支援しなければならない。更に,他の規格又は企業特有の転送構文でFTAMを実装しても
よい。
10.3 セションサービス FTAMアクティビティを支援するプレゼンテーション層のエンティティは,そ
れ自体,JIS X 5201で定義されているセションサービスを経由して通信を行う。セションサービスは通信
会話を構造化する手段を提供し,通信会話はプレゼンテーションエンティティによって応用エンティティ
に渡す。
プレゼンテーションサービスは,下位のセションサービスを使って,ファイルチェックポイント及び回
復を支援するため,同期点挿入及び再同期サービスを提供する。これらのサービスによって,ファイル利
用者データの流れに対してチェックポイントを挿入し,誤り後のセション接続の解除を行い,データ転送
再開前のセション同期点機構の再同期を行う。
また,セション層の規格に従い,FTAMプロトコルでは,どちらのエンティティが同期点を出すことが
できるかを制御するセショントークンの管理を行わなければならない。
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第2章 仮想ファイルストアの一般概念
11. 仮想ファイルストア
11.1 ファイルストアモデルの必要性 実ファイルストアを実装する方法は,既存の実システムによって
大幅に異なる。実システムが違えば,データ格納域及びこの格納域をアクセスする方法を記述する様式が
様々に異なる。ファイルの転送,アクセス及び管理のサービス,プロトコル及び手順を開放型システム間
相互接続環境で使用するには,ファイル及びファイル属性の記述に使用する共通モデルを必要とする。こ
のモデルを“仮想ファイルストア”という。
このファイルストアの定義によって,様式及び仕様の相違を開放型システムから実開放型システムへの
写像機能に吸収することができ,特定の実開放型システムは,相互に理解できる条件に基づき他の異なる
実開放型システムと相互作用を行うことができる。実システムの細部を外部接続の利用者から遮へいする
ことで,既存の実システムを変更する必要性及び開放型システム間相互接続の初期経費を引き下げること
ができる。
同様に,ファイルサービスを使用する方法における著しい多様性にも対処できる。起動側の役割を果た
すファイルプロトコル実装は,利用者(人),委託されたファイル要求の待ち行列を処理するサブシステム
又は利用者が作成した応用プログラムによって直接起動してよい。応答側のためのファイルプロトコル実
装は,実ファイルストアに直接アクセスするか,又は利用者が作成した応用プログラムとインタフェース
をもつかしてよい。いずれの場合にも,同じファイルプロトコルを使用する。
仮想ファイルストアで会話を表現することによって,複雑さの異なる多くの実システムの相互接続が可
能となる。ファイルサービス定義における幾つかの任意選択機能単位の定義及び仮想ファイルストア定義
における幾つかの任意選択属性グループの定義によって,より単純な実開放型システムが,より高度なシ
ステムと相互に作用するという形の作業を可能とする。例えば,複雑なコンピュータシステムは,インテ
リジェント端末の補助格納域又はユニットレコード周辺装置と通信することができる。この方法は,同じ
種類のデータ格納域間の様式の相違を隠すだけでなく,型又は機能の程度の差をも解決する。しかし,こ
の規格群で定義する中のどの属性が実際に支援されているか適合性宣言をする必要があり,それによって
利用者は,安全保護,並行処理制御などの必要な機能が実ファイルストアによって支援されていることを
確認する。
11.2 仮想ファイルストア定義の写像 ファイルサービス及びファイルプロトコルを使用するため,実装
においては,仮想ファイルストア定義の要素を,使用する実格納域システムに関連付けなければならない。
この規格群を使用する実装者は,次の(a)と(b)との間に写像を設定する(図6参照)。
(a) 開放型システム間相互接続環境の仮想ファイルストアで定義した動作,ファイルアクセスデータ単位
及びファイル属性,並びにアクティビティ属性
(b) 実システム環境における資源
応用エンティティがプロトコルメッセージを受信すると,これらのメッセージは,そのエンティティが
仮想ファイルストア構成要素及び動作と,情報格納域に関連する実システム環境のこれらの側面との間に
設定した対応関係を考慮して解釈する。したがって,写像は,実開放型システムの設計者が設定した対応
関係の集合とする。
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図6 実システムと開放型システムとの間の写像
11.3 仮想ファイルストアの形式 仮想ファイルストアの定義は,ファイルに格納された情報を記述する
スキーマを形成する。この記述では,ファイルは,次の情報をもつ実体とする。
(a) ファイルをあいまいさなしに参照するための単一のファイル名
(b) 課金情報,履歴などのファイルの性質を表す他のファイル属性
(c) ファイルに対して実行できる動作を表すファイル属性
(d) ファイルに格納するデータの論理構造及び大きさを表すファイル属性
(e) このファイルの内容を形成するファイルアクセスデータ単位
これらを,許可を受けた起動側が観察できるファイルのすべての側面とする。単一のファイルのこれら
の側面に対して,二つの参照者が同じ照会を行った場合には,照会の間に変更が行われていなければ,参
照者はファイルの性質についての同じ情報を入手する。これらの特性をファイル属性という。認証,デー
タ転送任意選択,累積経費などについての,ファイルと特定の起動側との関係を記述するアクティビティ
属性がある。進行中の各アクティビティごとに,これらのアクティビティ属性は独立した値の集合をもつ。
この集合は,関連するファイルストアのFTAM動作有効期間が初期化されたときに作成し,FTAM動作有
効期間が存在する間維持し,遅くともFTAM動作有効期間を最終的に解放するときまでに破棄する。
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あるファイルの属性は,ファイルコンテンツの構造に制約を加える。この構造は,ファイルの寿命があ
る間保存する。しかし,ファイルをアクセスするすべての利用者が,ファイルのすべての詳細情報を必要
とするとは限らない。例えば,要約報告を作成するため,複雑な階層ファイルをフラットファイルとみな
してアクセスする必要があるが,すべての場合にファイルの最小構造単位を個別にアクセスする必要性は
なくてよい。永続的なファイルアクセス構造を記述するために,ファイル作成及びファイル管理で使用す
るファイル属性に加えて,読み出しデータ転送が要求された場合に,アクセスコンテキストがファイルア
クセスデータ単位から転送されるべきファイル構造情報及び利用者データの部分集合を示す。
11.4 属性動的特性 ファイル属性は,実際に格納されるファイルの状態を反映する。起動側がこの特定
の通信から入手した属性についての情報を反映したとき,起動側と応答側との間の通信は,これらのファ
イル属性の不完全な共用像を作り上げる。ファイル属性ごとに,そのファイル属性についての情報を表す
アクティブ属性があり,FTAMサービスプリミティブのパラメタ経由で起動側に送られる。
これとは独立して,確立されたFTAM動作有効期間そのものを記述する現属性がある。この属性には,
起動側の識別及び場所の記述,並びに確立された各種の動作有効期間の開始時の折衝結果を含む。
アクティブ属性と現属性とを一緒にしてアクティビティ属性という。これらのアクティビティ属性は,
ファイルプロトコル機械の操作を決定する。
11.5 ファイルストアスキーマ 仮想ファイルストアの形式についての規定は,各種の概念及び概念の相
互関係の特徴を関連付けるスキーマの形で表現することができる。このスキーマを図式的に図7に示す。
図7 仮想ファイルストアスキーマ
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12. ファイル構造
12.1 構造の分類 ファイルは,0個以上の識別可能なデータ単位を格納する。これらのデータ単位は,論
理的に関係する。この規格群で定義するファイルストアモデルは,アクセス及び識別のためにデータ単位
間の関係を表す木構造を備えている。この構造をファイルアクセス構造という。ファイルアクセス構造の
各節点は,0個又は1個のデータ単位と関係をもつ。ファイルサービス利用者の立場から見た情報の構造
は,ファイルアクセス構造とは異なるので,ファイルサービス利用者は,自分の立場から見た情報の構造
の意味からファイルアクセス構造への写像を行わなければならない。
備考 一般に,これらの関係は,順次型,階層型,ネットワーク型又はリレーショナル型である。階
層モデル以外のモデルは,この規格では規定しない。しかし,例えば,ネットワーク又はリレ
ーショナルデータベースモデルが将来,この規格に追加されることがある。また,他の規格で
規定するモデルを参照することになるかもしれない。
ファイルコンテンツに対する操作が行われる単位は,ファイルアクセスデータ単位 (FADU) とし,これ
は,それ自体構造化されており,抽象構文で定義されたデータ単位を含む。特定の読み出し動作で転送さ
れるファイルアクセス構造情報及び利用者データの部分集合は,動作に規定するアクセスコンテキストに
よって決まる。
ファイル構造は,次の四つの側面をもち,その各々はファイルに関する別の情報を提供する。
(a) ファイルアクセス構造 ファイルアクセスデータ単位からファイルの構成を記述する。
(b) プレゼンテーション構造 ファイルアクセス構造において定義したデータ単位の抽象構造を記述する。
(c) 転送構造 通信のためにファイルアクセスデータ単位の順序性を記述する。
(d) 識別構造 ファイルアクセス構造における節点の名前の付け方及び転送すべきファイルアクセスデー
タ単位の識別を記述する。
12.2 ファイルアクセス構造 ファイルアクセス構造は,主にファイルを静的にとらえた見方とする。図8
に木構造表現ファイルのファイルアクセス構造を示す。ファイルアクセス構造は,どの部分がFTAMを使
って独立にアクセスできるかを決める。
ファイルアクセスでは階層構造を使っても,応用がファイルアクセスデータ単位の内容の参照によって
無階層論理構造を表現することを可能とする。
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図8 ファイルアクセス構造の例
12.3 プレゼンテーション構造 プレゼンテーション構造は,データ要素,データ単位及びファイルコン
テンツの関係について記述する。ファイルの情報内容の転送のための規則を,プレゼンテーション構造か
らプレゼンテーションサービスを使って得る。この記述は,ファイルの情報内容をデータ単位及びデータ
要素に分解する規則の働き方を示す。この仕様は,JIS X 5722及びファイルに適用できるドキュメント型
に示す。すなわち,その記述は,実ファイルレコード構造をFTAMファイル構造にどのように写像し,プ
レゼンテーションデータ値をどのようにP-DATAプリミティブ (PSDU) に写像するかを示す。
次に,抽象構文記法1(以下,ASN. 1という。)を使って定義したファイルの構造の概略を示す。
(a) ファイルコンテンツ及び構造情報を一連のデータ要素から作る。
(b) ASN. 1モジュールのISO 8571-FADUで定義されるデータ要素と,F-DATAサービスプリミティブによ
ってFTAMサービス提供者間で交換されるデータ値とは1対1に対応する。
(c) これらデータ要素において,ファイルコンテンツデータ要素は,通常,あるASN. 1型として定義する。
(d) レコード型構造をもつ実ファイルを非構造ファイルとして転送する場合,基本的な型の代表は,ファ
イル内の異なるレコード型をもつASN. 1のCHOICEとする。ファイルが一つのレコード型だけしか
もたない場合,CHOICEは使わない。個々のレコードへのアクセスをFTAMが提供する場合,基本的
な型の一つの値だけが個々のデータ単位にあると規定する。
備考 ドキュメント型FTAM-1,すなわち非構造テキストファイルにとって,▁ファイルコンテンツ
データ要素の型は図形文字列であり,各々の図形文字列はテキスト行に対応する。
(e) プレゼンテーションプロトコルは,プレゼンテーションデータ値を集めて転送に適したグループにす
る。このグループ化の度合いは,送信側の実装による。これは,転送負荷を最適化するという局所的
な事項とする。受信側はあらかじめ,各々のP-DATAプリミティブに幾つの基本型の値が入っている
かを知ることはできない。
(f) チェックポイントは,P-DATAプリミティブ間でだけ挿入できる。したがって,(e)で記述したグルー
プ化の総計は,ファイル転送の間に挿入するチェックポイントの位置によって決まる。
(g) 構造化ファイルは,一連のデータ要素(JIS X 5722参照)の値として転送する。各々のデータ要素は,
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F-DATAの一つのデータ値に対応する。そして,これらの幾つかを一個のP-DATAプリミティブ(JIS
X 5724参照)に写像する。一連のデータ要素は,ASN. 1を使って記述するが,▁部分木,▁子及び
▁DUに対する拡張規則に現れるSEQUENCE及びSEQUENCEOFの符号化は,これらの構造定義が2
次入力点を形成し,ファイルプロトコルからはこれらを参照しないため,転送ストリーム中には生成
しない。
データ要素,ファイルサビス,プレゼンテーションデータ値及びプレゼンテーションサービスのプリミ
ティブとそれらの符号化との関係を図9に示し,非構造テキストファイルの転送の例を示す。
図9 非構造テキストファイルの転送
13. 制約集合 12.で規定したはん(汎)用階層構造は,多様な実際のファイル構造を表現することができ
る。しかし,単一の応用は,特定の構造集合だけを必要とし,実システムはファイルを変更する方法につ
いての制約を伴う限られた範囲のファイル型だけを支援する。これらの制限を表現するため,制約集合の
概念を定める。制約集合は,許容される構造の範囲を指定し,基本ファイルアクセス動作が,構造の基本
的性格を変更せずに,どのように構造を変えることができるかを定義する。幾つかの共通ファイル型を反
映する制約集合をこの規格群は含むが,他の制約集合も,今後定義し,登録できる。
各制約集合は,この規格群,他の規格で定められたオブジェクト識別子の値によって識別されるか,又
はJIS X 5603で定義された他の機構によって識別される。
この規格群は,はん(汎)用階層構造の部分集合であり,広く使用している幾つかの構造モデルとして
の制約集合を定義する。例えば,節点名の付け方が異なれば,異なった索引付きの構造のクラスとなる。
定義する制約集合は,次のとおりとする。
(a) 非構造 名前のない単一のデータ単位をもつ。
(b) 順フラット 名前のない一連のデータ単位をもつ。この制約集合は,例えばFortran順入出力のモデル
に使用できる。
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(c) 順序フラット 名前付きの一連のデータ単位をもつ。同じ名前のデータ単位の処理を定義する。
(d) 一意名付き順序フラット 一連の一意名をもつデータ単位を有する。
(e) 順序階層 複数の索引をモデル化し,はん(汎)用階層性を有する。挿入は,これらの索引の位置に
基づいて行う。
(f) はん(汎)用階層 はん(汎)用階層性があり,構造を変更する場合,新しい節点位置付けを完全に
制御できる。
(g) 一意名付きはん(汎)用階層 一意命名条件をはん(汎)用階層制約集合に追加する。
14. ドキュメント型 ファイルコンテンツは,多くの型をとることができる。ファイルモデル,制約集合
及びデータ単位の抽象構文は,個別に指定することができる。しかし,この手順は複雑なので,意味,抽
象構文,転送構文及び構造動的特性を規定する単一の方法が望ましい。これは,ドキュメント型の定義に
よって行う。
ドキュメント型定義は,一つ以上のパラメタ群によって定める。これらのパラメタは,ある時点で密接
に関連する一群のドキュメント型を同時に効果的に定義できる。例えば,具体的文字集合又は最大行長を
パラメタで指定することによって,一つの定義でテキストドキュメントの型を複数個規定してもよい。
幾つかの応用においては,構造化ファイルからデータを読み出す場合,構造化ファイルの制約された見
方でもよい。
ドキュメント型定義は,幾つかの情報を捨てることによって,導き出される他のドキュメント型につい
ての記述を含めることができる。これを元のドキュメント型の単純化という。同様に,この定義は,幾つ
かのパラメタの値の制約をより少なくしてよい。これを元のドキュメント型の緩和という。
ドキュメント型は,ドキュメント型のはん(汎)用的利益又は特定の応用グループにとってのドキュメ
ント型の重要性のいずれかのために国際又は国内の登録機関に登録する(登録手続きの定義については,
ISO 9834-2参照)。登録項目は,オブジェクト識別子の値で名前を付ける。
一般に,ドキュメント型は,関連したステートメントの集まりから構成するが,その幾つかは,ドキュ
メント型の目的に特有とする。これは,次のものを含む。
(a) ドキュメント型の識別及び対象記述。
(b) ドキュメント型が目的とする範囲。仮想ファイルストア定義で参照し,ファイルの通信に使用するド
キュメント型は,この規格群の対象とする。
(c) ドキュメント型に適用するパラメタ。
(d) ドキュメントの解釈に適用する意味の制約。
(e) 適用する制約集合及びファイルモデルの点から見たドキュメントのファイルアクセス構造。
(f) 構造を規定している情報及び構造内のデータ単位の抽象構文。
(g) 情報を一連のプレゼンテーションデータ値に形成する方法及びそれらを転送する手順。
(h) 定義した抽象構文で通信を行うときの転送構文。
(i) 特定のASEで定義した操作がドキュメント型を取り扱う方法の詳細。例えば,二つのドキュメント型
の連結の結果,ファイルアクセス構造をより単純なドキュメント型として見ることによる単純化の方
法などを含む。
ドキュメント型の概念は,ドキュメントを次第に小さくなるクラスに段階的に細分するため,再帰的に
適用することができる。例えば,データ単位において許容される抽象構文の範囲で大幅な自由を残してド
キュメント型を定義することができる。この定義したドキュメント型を,同じ一般特性を共有するが,使
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用する抽象構文に対する別の制約を加える一連のドキュメント型で参照することができる。
第3章 ファイルサービス及びファイルプロトコルの概要
15. ファイルサービス ファイルサービス及びファイルサービスの支援プロトコルは,起動側が必要とす
るアクティビティを実行する作業環境を一連の段階で作成することに関係する。起動側及び応答側は,次
の会話を行う。
(a) 起動側及び応答側(ファイルストア)が,応用エンティティ名称によるそれぞれの識別を含む相互の
情報を設定する。
(b) 必要なファイルを識別する。
(c) ファイルを記述する属性及びこのアクティビティにおいて行う大量データ転送を設定する。
(d) ファイル管理を行う。
(e) アクセスするFADUのファイルアクセス構造における位置付けを行う。
(f) 一つ以上の完全なFADUを挿入,置換,拡張又は削除する。
これらの段階は,ファイルコンテキストの各種の部分を構成する。サービス利用者が保持する共通な状
態の一部が有効である期間を動作有効期間という。共用状態が次第に多く確立されて行くに従って,対応
する動作有効期間の入れ子構成を作って行く。しかし,一般に,アソシエーションの両端では,動作有効
期間確立は時間的にずれる。
プロトコル交換が,応用コンテキストの確立,解放などの特定の目的をもつ期間を,フェーズという。
各フェーズについて,有効なメッセージの集合を,状態遷移によって定義する。FTAM動作有効期間にあ
る各エンティティは,各々一つのフェーズにある。フェーズを他のフェーズの中に入れ子にすることはで
きない。アクティビティは,一連のフェーズを通過しながら進行する。
フェーズについてファイルサービスの代表的な使用例について,15.1〜15.9に順番に示す。
動作有効期間の入れ子構成を,図10に示す。
図10 ファイルサービス動作有効期間及び関連するプリミティブ
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15.1 FTAM動作有効期間初期化フェーズ FTAM動作有効期間初期化フェーズは,すべてのファイルサ
ービスインスタンスの最初のフェーズとする。このフェーズは,応用コンテキスト及びFTAM動作有効期
間の初期状態を確立して,動作有効期間の基礎となる応用アソシエーションに正しいアドレスを結合し,
使用可能なサービスクラス及び機能単位の折衝を行う。このフェーズは,また,この後に行うファイルス
トアの操作のために必要な認証,課金情報などのFTAM独自の情報を設定する。
15.2 ファイルストア管理フェーズ ファイルストア管理フェーズにおける操作については,将来規格が
追加されるかもしれない。
15.3 ファイル選択フェーズ ファイル選択フェーズは,ファイル選択動作有効期間を確立する。このフ
ェーズは,その後のフェーズにおける操作に適用する固有のファイルを識別又は作成する。選択は,解放
フェーズ又は終了フェーズによって明示的に解除するまで継続する。したがって,これ以降のフェーズで
行われる操作は,選択されたファイルを参照し,明示的なファイル識別を含まない。選択フェーズは,指
定した性質を備えた新しいファイルの作成を含む。
この規格群におけるファイル選択は,ファイル名によって行う。ファイル選択要求は,ファイル特有の
アクセス制御情報を含まなくてよい。
備考 この規格群の将来の追加規格では,ファイル選択を,ファイル名以外のファイル属性(JIS X
5722参照)に対する一連の制約として表現し,その値を必要なファイルの識別に使用すること
もできる。
15.4 ファイル管理フェーズ ファイル管理フェーズにおける操作によって,ファイルサービス利用者は,
選択したファイルについてのファイル管理動作を行うことができる。例えば,ファイル属性の幾つかを読
み出し又は更新することができる。
15.5 ファイルオープンフェーズ ファイルオープンフェーズは,ファイルアクセスデータ単位の転送が
行えるファイルオープン動作有効期間を確立する。ファイルオープン動作有効期間は,データ転送に必要
などんな特殊なプレゼンテーションコンテキストを包含してデータ転送機能を確立する。
15.6 データアクセスフェーズ ファイル全体は,一つのファイルアクセスデータ単位とし,その中には
より小さい複数のFADUがあってもよい。ファイルの内容に対する動作は,FADUに作用する。一般に,
データ単位は,一連のデータ要素から構成するが,これらのデータ要素を独立して要求又は更新すること
はできない。
データアクセスフェーズは,幾つかの操作が実行されている期間で構成する。転送クラスでは,一つだ
けの操作を実行している期間とする。これらの操作は,大量データ転送操作又は制御操作とする。各大量
データ転送操作は,次のものから構成する。
(a) 実行される操作の指定,操作の型の指定,及び適用されるファイルアクセスデータ単位の識別。
(b) 必要なデータ転送。
(c) 終了交換。
制御操作は,単純な指令及び応答とする。定義する操作は,次のとおりとする。
(d) 位置付け ファイル構造内の節点を指定する。この節点は,ファイルアクセスデータ単位の根とする。
(e) 消去 FADUをファイル構造から取り除く。
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15.7 ファイルクローズフェーズ ファイルクローズフェーズは,オープンフェーズで確立したファイル
オープン動作有効期間を終了する。これによってデータ転送できる期間が終了する。クローズフェーズで
は,ファイルオープン動作有効期間の終わりの状態情報の交換を行うことができる。このフェーズは,要
求されたすべてのデータ転送が,成功又は失敗して終了したことの確認を行う。成功した場合には,これ
までの動作を無効にすることはない。成功したクローズの後には,その後の通信又は応用が失敗したとし
ても,ファイルをデータ転送フェーズ中に行われたすべての動作結果を保持する。オープン後からクロー
ズが成功するまでに誤りが生じた場合には,ファイルは不定状態となる。ファイルの状態は,誤り回復手
順によって再び確立することができる。
15.8 ファイル解放フェーズ 解放フェーズは,選択フェーズで確立したファイル選択を解除する。解放
フェーズには,標準課金順序を含めてもよい。このフェーズは,ファイル選択フェーズの前に確立した認
証又は課金識別を有効なままにしておく。解放フェーズは,選択したファイルの削除を含む。
15.9 FTAM動作有効期間終了フェーズ このフェーズは,認証動作有効期間及び課金動作有効期間を解
放して,起動側と応答側が共有する動作有効期間を解消する。このフェーズの後には,ファイル関係の動
作有効期間は存在しない。ファイルサービスアクティビティは,終了する。
16. ファイルプロトコルにおける機構
16.1 プロトコル状態機械 基本プロトコルの主要動作は,一連の入れ子構成の動作有効期間の確立及び
終了に関わる。最も内側の動作有効期間では,データ転送は,チェックポイントの確認を伴う単純な一方
向の流れとする。したがって,プロトコル実装は,JIS X 5724で規定する有限状態記述で厳密にモデル化
する簡明な状態機械によって正確に記述することができる。
実装の経費及び複雑さは,実装が対応する状態機械の複雑さと密接に関連する。したがって,サービス
クラス及び機能単位は,機能単位間の相互依存をできるだけ少なくした,単純な状態遷移機械が実現する
ように選択する。
16.2 プロトコルデータ単位のグループ化 状態機械を単純化する一つの方法として,転送サービスクラ
スでは必ずグループ化する方法を採用する。実装が適合性をもつには,ファイル選択とオープン動作有効
期間を確立するプロトコルデータ単位の連結を行わなければならない。同様の制約をそれらの動作有効期
間を終了するプロトコルデータ単位に対しても適用する。連結を開始するに際して,要求された動作を実
行する前に,連結が完了しておかなければならない個数を,しきい値パラメタによって制御する。更に,
転送サービスクラスの実装は,要求したすべての動作有効期間が確立できるか,又はすべての確立要求が
失敗する(すなわち,動作がロールバックする)かのいずれかになるようにグループ化にしきい値パラメ
タを設定する。
このグループ化を行うことによって選択,属性管理及びファイルオープンに関係するプロトコルデータ
単位を,実装の点から単一のデータ転送の一部分とみなすことができる。ファイル動作有効期間初期化の
ための状態遷移機械は,初期化済み及びオープン済みの二つの安定状態並びに二つの処理中状態だけをも
つ。
しかし,アクセスクラス及び無制約クラスでグループ化を任意選択として,上位互換性を確保している
ので,種々の応用に対して十分柔軟に対応できる。
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16.3 透過性 プレゼンテーションサービス提供者にとって,ファイル利用者データ及びFTAMプロトコ
ル制御情報は,ともに一連のプレゼンテーションデータ値とする。一般に,利用者データとPCIとの間で
あいまいさのない任意のファイルを行う能力を必要とする。すなわち,ファイル利用者データ内に構文的
にPCIと解釈されるようなプレゼンテーションデータ値が連続するのを防ぐための対策を必要とする。
FTAMプロトコルで選択した解決法は,プレゼンテーションコンテキストを使用して,これら二つを分
離する。FTAM動作有効期間で使用する最初のプレゼンテーションコンテキストを,FTAM PCIプレゼン
テーションコンテキストとみなし,他のプレゼンテーションコンテキストのプレゼンテーションデータ値
は,同じ抽象構文から取り,構文的に整然としたプロトコルデータ単位の場合でも,プレゼンテーション
プロトコル機構によってFTAM PCIとは別のものと明確に識別する。
透過性機構は,使用する抽象構文のインスタンスであるプレゼンテーションコンテキストに基づいてい
るので,ファイル利用者データがFTAM PCI抽象構文である場合にも,透過性は維持できる。この抽象構
文に対応する2種のプレゼンテーションコンテキストをもつ。
16.4 チェックポイント挿入 再開機能及び回復機能の操作を行うため,ファイル利用者データの流れの
中に送信側が選んだ位置にチェックポイントを挿入する。送信側及び受信側は,ともにファイル内の使用
中のチェックポイントの位置にある情報を保持しなければならない。使用中のチェックポイントは,送信
又は受信したが,まだ後のチェックポイントの受信通知によって取り替えられていないチェックポイント
を意味する。
一般に,ファイル構造においてチェックポイントを挿入する位置についての情報を保持することを必要
とする。これを,次の2種類に分ける。
(a) ファイルアクセス構造における位置,ポインタと識別子参照のようなデータ単位間の他の関係などの
ファイル内容の暗黙的意味情報。これらは,ファイルとともに既に維持していない補助的情報を必要
としない。
(b) 抽象構文及び転送構文の解釈状態についての情報。チェックポイントを,任意な箇所に設定すること
を認めた場合,対応する転送構文の解釈状態も保持しなければならなくなる。これは,ファイルの暗
黙的な情報ではなく,付加情報となる。理由は,プレゼンテーションサービスは,それが管理する局
所的な構文変換(応用向けレコードのフィールドの再順序付けなど)によって,格納した状態から受
信状態を導き出すことができなくなるか,又は構文単位が終了する前に情報を記憶することが実際で
きなくなるからである。
(b)の情報に対して,実装で特別な措置をとることを避けるため,抽象構文で定義した完全な単位で
ある意味の区切りにチェックポイントを置くようにチェックポイントの位置付けを制限する。
FTAMファイル構造情報に対するこの制限は,ファイル構造及びファイルコンテンツを,一連の連結デ
ータ要素(それぞれ独立して符号化できる)として表現し,ASN. 1記法で表す。プロトコル抽象構文は,
これらの要素を単一の記号によって参照する。その記号の拡張は,使用可能なデータ要素のCHOICEとす
る。構造の点から見た意味関係は,ASN. 1を用いて,完全な階層ファイルモデルを表すデータ型によって
定義する。このデータ型は,プロトコルの抽象構文では参照することはないので,符号化されない。
これらを制約条件として,送信側が決定した位置にチェックポイントを置くが,これは,いずれかのシ
ステムにおける格納域境界に関連していても,関連していなくてもよい。受信側は,ファイルの正当な位
置であればどこでもチェックポイントを受け入れる準備を行わなければならない。
16.5 診断及び結果 プロトコルは,要求された操作の成功又は失敗について二つの水準の情報をもつ。
第1の情報源は,プロトコル機械そのものの動作を決定するための,全般的な水準の指示とする。これ
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は,次のものを示す一組の結果パラメタによって通知する。
(a) 要求されたプロトコル機械遷移の成功
(b) 要求されたファイルストア動作の成功
例えば,ファイル削除においては,解放のプロトコル遷移は常に成功するが,削除のファイルストア動
作は失敗してもよい。
動作結果パラメタの値は,成功,誤り回復プロトコルを起動する回復可能な失敗又は完全な失敗を示す。
第2の情報源は,診断パラメタとする。このパラメタは,詳しい説明及び複雑な構造を与え,より利用
者向けの情報を保持する。このパラメタの分析は,プロトコルの進行のためには不要とする。
16.6 回復用情報処理及び不揮発性格納域 この規格群は,支援するプレゼンテーションコネクション及
び応用アソシエーションを切断する通信障害又はシステム障害の後にデータ転送アクティビティを続行す
るための誤り回復手順を定義する。しかし,回復を行うには,アクティビティ及びデータ転送の現在の状
態を記述する情報の本体を,そのまま保存する必要がある。通信相手及び理由に関するシステムの情報を
破壊する障害は,回復することはできない。
保存しなければならない情報の本体を,この規格群では回復用情報という。この用語の定義は,実装で
その情報を1箇所に集中させる必要があることを意味するものではなく,単に,その情報の集合全体が一
定の永続性の水準にあることを示すにすぎない。
回復用情報を保持するために使用する格納域の種類は,サービスの利用者が設定する信頼性の目標によ
って決まる。
支援装置の物理的損傷だけを考えてみても,どの種類の格納域にも,何らかの障害の可能性がある。分
散型応用の設計者は,システム全体にわたる信頼性の目標に合った何らかの不揮発性の記憶域を選べる。
16.7 誤り回復機構 この規格群で規定する誤り回復手順は,利用者に異常が発生したことを気付かせず
に,プロトコル機械間の交換によって誤りを訂正し,外部ファイルサービス利用者に途切れることのない
ファイルサビスを提供することを目的とする。
誤りによって,支援している通信が破壊されたり,終端システムの一方が失敗して,再開されることが
ある。いずれの場合にも,両方とも一致した回復用情報を保持しているため,通信している応用間のアソ
シエーションを維持する。
誤り回復プロトコルは,回復用情報に記録された情報に基づいて,支援するコネクション及び失敗の前
のデータ転送状態を復元し,通信を続ける。
ファイルサービス利用者は,ファイル誤り回復プロトコル機械にサービス品質パラメタ,及び局所的な
方法で表される機構を選択するのに必要な情報を渡す。ファイル誤り回復プロトコル機械は,内部ファイ
ルサービス利用者として動作し,特定のアソシエーションで使用するための回復機能単位又はデータ転送
再開機能単位と折衝する。
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附属書A(参考) FTAMの使用例
A.1 序文 この附属書では,FTAMを使用する幾つかの環境を設定し,誤りがない場合に実施するプロ
トコル交換を示す。FTAMの応用分野は広く,ここに示す単純な例以外にも,多くの使用方法がある。
A.2 遠隔システムへの完全なファイルの伝送 システムの利用者が,公衆データ網を介して,別のシス
テムを使用している他の利用者にファイルを転送する場合は,次の段階に従って実行される(図11参照)。
図11 遠隔システムへのファイル送信
(a) 起動側の利用者は,応用アソシエーションを要求する。利用者は,遠隔システムのアドレス指定に必
要な情報及び自分自身を識別する情報を提供する。プロトコル実装は,システム制御情報に基づいて
必要なサビス品質及びプレゼンテーションコンテキストを選び,書き込み機能単位及び限定ファイル
管理機能単位を含む転送クラスを選択する。回復及び再開機能単位の選択は,経費上の選択に基づい
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て行う。
(b) 応答側システムは,必要な発呼側システムの位置,起動側利用者の識別及び課金先の認証を行い,ア
ソシエーションを受け入れる。
(c) 起動側システムは,遠隔システムで作成するファイルの仕様及びデータ転送が行われるべき環境の仕
様を送る。
この規格群では,更に複雑な用途のために,生成プリミティブ及びオープンプリミティブを個別に
規定するが,この例ではこの仕様は常に連結され,1回の操作で送られるものとする。
(d) 応答側システムは,この仕様を受け入れる。
(e) 起動側システムは,連続した転送の流れとして,実行する書き込み操作の仕様,ファイルコンテンツ,
データ終端マーカ及び転送終了を確認する要求を送る。
(f) 応答側システムは,ファイルコンテンツの受信を確認する。
(g) 起動側システムは,新しく作成したファイルとの結合を解除する。ここでも,これは個別に指定する
要素の連結とする。
(h) 応答側システムは,ファイルが既に解放されていることを確認する。
(i) 起動側システムは,遠隔システムとのアソシエーションの解放を要求する。
(j) 応答側システムは,FTAM動作有効期間が既に解放されていることを確認する。
(k) 起動側システムは,接続を解消し,必要な課金及びログ情報を記録する。
A.3 遠隔データベースアクセス 利用者が,遠隔アータベースシステムから一連の問い合わせを行う場
合は,次の段階に従って実行される(図12参照)。
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図12 遠隔データベースアクセス
(a) この附属書のA.2の(a)及び(b)と同じようにアソシエーションを初期化するが,読み出し機能単位だけ
を選択する。
(b) この附属書のA.2の(c)及び(d)と同じようにファイル初期化を行う。利用者ファイルの仕様を指定する
代わりに,起動側システムは,アドレス指定したデータベース内の情報本体を指定する。
(c) 起動側システムは,概念的にフラットファイルとして見たときのファイルアクセスデータ単位の識別
子としてデータベース照会を使用して,データ読み出しの要求を送る。
(d) 応答側システムは,照会の結果をそれが要求されたファイルアクセスデータ単位の内容であるかのよ
うに送り返す。
(e) 起動側システムはトランザクションの終了を指示し,応答側システムはこれを確認する。
(f) 必要ならば,このほかの照会も同じように処理する。
(g) 起動側システムが,この附属書のA.2の(g)及び(h)と同じように情報ベースとの結合を解放する。
(h) この附属書のA.2の(i)〜(h)と同じように,アソシエーション及び支援資源が解放される。
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A.4 ローカルエリアネットワークファイルサーバ ワークステーションとしてローカルエリアネットワ
ーク (LAN) に接続されたディスクを装備していない小型システムが,その作業用ファイルの維持に中央
のファイルサーバを使用する場合を考える。これらのファイルは,ファイルサーバから見た領域内に単一
の直接アクセスファイルとして,ワークステーションのオペレーティングシステムによって編成されてい
る。これは,次の段階に従って実行される(図13参照)。
図13 LANファイルサーバにおけるFTAMの使用
(a) ワークステーションのオペレーティングシステムをロードするときのシステム初期化の一部として,
ワークステーションはファイルサバとのアソシエーションを確立し,この附属書のA.2の(a)〜(d)と同
じように,作業用ファイルをオープンするが,ここでは,ファイルアクセスクラス並びに読み出し機
能単位及び書き込み機能単位を選択する。
(b) オペレーティングシステムは,そのファイルからデータを読み出す,又はファイルにデータを書き込
む必要があるとき,この附属書のA.3又はA.2で既に示した読み出し又は書き込みの大量データ転送
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手順を使用する。LAN通信は障害が起こりにくいので,回復手順は不要とする。
(c) 読み出し及び書き込みの順序は,オペレーティングシステムが作動している間,継続する。システ
ムに障害が発生した場合には,ファイルサーバはアソシエーションを放棄する。ワークステーショ
ンのオペレーティングシステムが再び始動されると,アソシエーションは再び確立する。この場合,
システム初期化は,完全なディスクの内容を再び確立する。
A.5 ファイル管理アクティビティ この附属書のA.4で示したファイルサーバのシステム管理者が,幾
つかのワークステーションのうちの1台のワークファイルの大きさを決め,その格納域課金値の課金先を
変更する場合を例とする。これは,次の段階に従って実行される(図14参照)。
図14 ファイル管理
備考 管理要求,指示,応答及び確認は,対応するF-SELECT,F旧EAD-ATTRIBUTE,
F-CHANGE-ATTRIBUTE及びF-DESELECTのプリミティブの順序をグループ化したものを示
す。
(a) アソシエーションの初期化が行われ,ファイル管理クラスを選択する。
(b) 制御側システムは,連続した流れとして,ファイルを識別及び選択する命令を送信し,ファイルサイ
ズ属性の値を問い合わせ,課金先ファイル属性の値を設定し,ファイルを解放する。
(c) ファイルサーバは,応答の一つの流れにおける各項目に応答する。
(d) 制御側システムは,アソシエーションを終了し,システム管理者に結果を知らせる。
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X 5721-1991 (ISO 8571-1 : 1988)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B(参考) 規格群で規定するオブジェクト識別子一覧
B.1
序文 この規格群は,ASN. 1型のオブジェクト識別子に対する値を規定する。参照の利便のため,
この附属書で各種の定義を示す。しかし,あいまいさが発生した場合,この規格群の他の部分の定義が,
この附属書より優先する。
この規格群におけるオブジェクト識別子値の割当ては,二つの段階からなる。すなわち,オブジェクト
の集合についての識別子要素を記述し,更に,集合内の個々のオブジェクトについて識別子を記述する。
この過程は,JIS X 5603に定義される要素構造を使用することによって単純化される。
B.2
オブジェクトグループ 定義するオブジェクトグループは,次のとおりとする。
(a) 応用コンテキスト
(b) 抽象構文
(c) ファイルモデル
(d) 制約集合
(e) ドキュメント型
備考 定義された抽象構文から転送構文を生じる規則は,JIS X 5604に定義するiso-ccitt共通識別子
によって識別される。
B.3
オブジェクト識別子 定義する個々のオブジェクト識別子は,次のとおりとする。
B.3.1 応用コンテキスト
{ iso 規格 8571 応用コンテキスト(1) iso-ftam(1) }
B.3.2 抽象構文
{ iso 規格 8571 抽象構文(2) ftam-pci(1) }
{ iso 規格 8571 抽象構文(2) ftam-fadu(2) }
{ iso 規格 8571 抽象構文(2) 非構造テキスト(3) }
{ iso 規格 8571 抽象構文(2) 非構造2進数(4) }
B.3.3 ファイルモデル
{ iso 規格 8571 ファイルモデル(3)階層(1)}
B.3.4 制約集合
{ iso 規格 8571 制約集合(4) 非構造(1) }
{ iso 規格 8571 制約集合(4) 順フラット(2) }
{ iso 規格 8571 制約集合(4) 順序フラット(3) }
{ iso 規格 8571 制約集合(4) 意名付き順序フラット(4) }
{ iso 規格 8571 制約集合(4) 順序階層(5) }
{ iso 規格 8571 制約集合(4) はん(汎)用階層(6) }
{ iso 規格 8571 制約集合(4) 意名前付きはん(汎)用階層(7) }
B.3.5 ドキュメント型
{ iso 規格 8571 ドキュメント型(5) 非構造テキスト(1) }
{ iso 規格 8571 ドキュメント型(5) 順テキスト(2) }
{ iso 規格 8571 ドキュメント型(5) 非構造2進数(3) }
{ iso 規格 8571 ドキュメント型(5) 順2進数(4) }
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X 5721-1991 (ISO 8571-1 : 1988)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
{ iso 規格 8571 ドキュメント型(5) 単純階層(5) }
OSI-JIS 調査研究委員会 WG1 構成表 (敬称略,順不同)
氏名
所属
(主査)
飯 野 守 夫
株式会社日立製作所ソフトウェア工場デ
ータ通信プログラム部
(幹事)
吉 川 慶 一
株式会社日立製作所ソフトウェア工場デ
ータ通信プログラム部
(委員)
池 山 裕 彦
日本エヌ・シー・アール株式会社製品企画
部
岡 野 成 利
新日鐵情報通信システム株式会社関東支
社技術部
小 林 恵
株式会社東芝青梅向上情報通信システム
技術研究所開発第七部
清 水 孝 真
東京電力株式会社電子通信部通信技術課
白 沢 隆 彦
富士通神戸エンジニアリング株式会社開
発部第二開発課
多 田 和 博
日本電気株式会社情報システム技術本部
第一システム部
田 仲 正 幸
日本アイ・ビー・エム株式会社汎用ソフト
ウェア開発製品企画
鶴 正 人
沖電気工業株式会社コンピュータシステ
ム開発本部ソフトウェア開
発第一部
十 倉 健 二
日本電信電話株式会社情報通信処理研究
所応用システム研究部
(306C)
堀 茂 樹
三菱電機株式会社コンピュータ製作所汎
用コンピュータ製造部
松 井 今朝雄
鉄道情報システム株式会社中央システム
センター旅客システム課
粕 川 晃 秀
工業技術院標準部情報規格課
(事務局)
西 田 正 忠
財団法人日本規格協会情報技術標準化研
究センター
(委員交替)
高 橋 誠
株式会社日立製作所ソフトウェア工場デ
ータ通信プログラム部
岩 本 秀 治
全国銀行協会連合会事務部
小 沼 敬四郎
富士通神戸エンジニアリング株式会社開
発部
細 川 洋
東京電力株式会社電子通信部
松 本 孝 純
沖電気工業株式会社コンピュータシステ
ム開発本部ソフトウェア開
発第三部
渡 部 恭 久
新日本製鐵株式会社情報通信システム部
清 水 正 幸
JR中央情報管理センター