2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
X 5107-1985
マルチリンク手順
Multilink Procedures
1. 適用範囲 この規格は,データリンク層において複数の並行するデータリンクを用いて,ネットワー
ク層エンティティ間に種々の伝送容量をもつ一つのデータリンクを提供するために用いるマルチリンク手
順について規定する。
備考1. マルチリンク手順は,データリンク層内の上位の副層のプロトコルであり,複数のシングル
リンク手順からなるデータリンク層内の下位の副層とネットワーク層の間で動作する。MLP
は,マルチリンク手順を実行し,SLPは,シングルリンク手順を実行する。MLPとSLPとの
関係を図1に示す。マルチリンク手順で使用される複数のシングルリンク手順の遅延特性や回
線速度は,それぞれ異なってもよい。
図1 MLPとSLPとの関係
2. マルチリンク手順を実行するものをMLPと呼び,シングルリンク手順を実行するものをSLP
という。
引用規格:
JIS X 0001 情報処理用語
JIS X 5104 ハイレベルデータリンク制御手順のフレーム構成
JIS X 5105 ハイレベルデータリンク制御手順の手順要素
JIS X 5003 開放型システム相互接続の基本参照モデル
対応国際規格:
ISO DIS 7478 Multilink procedures
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2. 用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS X 0001(情報処理用語),JIS X 5104(ハイレ
ベルデータリンク制御手順のフレーム構成),JIS X 5105(ハイレベルデータリンク制御手順の手順要素)
及びJIS X 5003(開放型システム相互接続の基本参照モデル)によるほか,次のとおりとする。
(1) マルチリンクフレーム マルチリンク手順における転送単位。マルチリンク制御フィールド及びデー
タユニットからなるビットの列である。
(2) シングルリンク手順 単一のデータ通信回線を通してデータリンクの設定,維持,切断及びデータ伝
送を行うデータリンクプロトコル。
(3) ウィンドウ マルチリンクフレームのフロー制御を行うための制御方式。送信ウィンドウ及び受信ウ
ィンドウの2種類があり,連続して送受信するマルチリンクフレームの数の制限や紛失したマルチリ
ンクフレームの検出などを行う。
3. パラメータの定義とマルチリンクフレームの形式
3.1
パラメータの定義 パラメータは,次のとおりとする。
(1) マルチリンク送信順序番号 [MN (S)] 送信するマルチリンクフレームに付与する0から4095までの
順序番号。受信側MLPは,データユニットをネットワーク層へ渡す前にマルチリンクフレームの再
順序制御をしたり,重複又は紛失したマルチリンクフレームを検出したりするためにMN (S) を使用
する。
(2) マルチリンク送信状態変数 [MV (S)] 次に送信するマルチリンクフレームに付与するMN (S) を示
す。
(3) マルチリンクフレーム確認状態変数 [MV (T)] 自局SLPからの送達確認の通知を待つ最旧マルチリ
ンクフレームのMN (S) を示す。送信ウィンドウの下限を表す。
(4) マルチリンク受信状態変数 [MV (R)] ネットワーク層へ渡すべき,次に受信が期待されるマルチリ
ンクフレームのMN (S) を示す。受信ウィンドウの下限を表す。
(5) マルチリンクウィンドウサイズ (MW) 送信ウィンドウは,MV (T) からMV (T) +MW−1までの
順序番号の範囲を示し,受信ウィンドウは,MV (R) からMV (R) +MW−1までの,順序番号の範囲
を示す。一つの伝送方向において送信側MLPと受信側MLPとは,同一のMWを用いる(1)。
注(1) MWは,システムパラメータであり,4095−MXを超えてはならない。パラメータMWの値に
影響する要素としては,伝送時間,伝搬遅延,リンク数,マルチリンクフレームの長さ,シン
グルリンクパラメータ[SLP再送回数N,応答時間及び確認を受けずに連続送信できる情報 (I)
フレームの最大数]などがある。
(6) 受信MLPウィンドウガード領域 (MX) 受信ウィンドウに先行する一定の順序番号の範囲。MN (S)
がMX内にあるマルチリンクフレームを受信すると,MV (R) からそのMN (S) −MWまでの範囲内
の受信されていないマルチリンクフレームは,紛失したとみなされる。
(7) 異常マルチリンクフレーム範囲 (MZ) 正常な状態では受信することのないMN (S) の範囲。MN (S)
がMZ内にあるマルチリンクフレームは,廃棄しなければならない。
(8) 順序制御無効ビット (V) Vビットは,受信したマルチリンクフレームの再順序制御が必要か否かを
示す。V=1は,再順序制御が不要であることを示し,V=0は,再順序制御が必要であることを示す。
(9) 順序検査オプションビット (S) Sビットは,V=1(受信マルチリンクフレームの再順序制御が不要
なことを示す。)のときにだけ有効となる。V=1かつS=1は,送信側MLPがマルチリンクフレーム
にMN (S) の値を付与しなかったことを示す。V=1かつS=0は,マルチリンクフレームの重複又は
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紛失の検査を容易に行うため,送信側MLPがMN (S) の値を付与したことを示す。
(10) MLPリセット要求ビット (R) Rビットは,MLP状態変数をリセットするのに用いる。R=0は,通
常の通信に使用する。R=1は,受信側MLP状態変数のリセット要求を示す。R=1の場合,マルチリ
ンクフレームのデータユニットフィールドには,高位層の情報を含んではならないが,リセットの理
由を組み入れる付加的な理由フィールドを含んでもよい。
(11) MLPリセット確認ビット (C) Cビットは,すべてのMLP状態変数がリセットされたことを確認す
るために,R=1の応答として使用する。C=0は,通常の通信に使用する。C=1は,R=1に対する
応答に使用され,MLP状態変数のリセットが完了したことを示す。C=1の場合,マルチリンクフレ
ームは,データユニットフィールドをもたない。
(12) マルチリンクフレーム紛失タイマ (T1) MV (R) に等しいMN (S) をもつマルチリンクフレームの
紛失を検出するために使用する。
(13) グループビジータイマ (T2) 受信側MLPは,このタイマを使用することにより,マルチリンクフレ
ームの再順序制御を行う前にバッファが不足し,閉塞状態になったことを検出することができる。こ
のタイマの設置は,任意とする。
(14) MLPリセット確認タイマ (T3) T3タイマは,R=1のマルチリンクフレームの送信後,期待される
C=1のマルチリンクフレームが受信されなかったことを検出するために使用する。
(15) SLP再送回数 (N) SLPは,N回マルチリンクフレームの再送を試みた後,MLPにそのことを通知
する。N回再送後の動作は,SLPの設計により異なる。MLPは,N回リトライアウトとなったマルチ
リンクフレームを同一のSLPか,一つ又は複数の他のSLPに割り当てる。
3.2
マルチリンクフレームの形式 データユニット(例:パケット)の再順序制御を行うために,マル
チリンク制御 (MLC) フィールドを使用する。このフィールドは,SLP送信ユニットの情報フィールド内
の最初の2オクテットとして送信される。図2にMLCフィールドとデータユニットとの関係及びシング
ルリンク手順ヘッダとトレイラを示す。シングルリンク手順ヘッダの直後に2オクテットのMLCフィー
ルドが続く。シングルリンク手順のヘッダ及びトレイラ並びにMLCフィールドは,データリンク層にお
いてだけ生成,使用され,ネットワーク層には渡されない。
マルチリンク送信順序番号MN (S) は12ビットからなり,モジュロ4096で表す。MN (S) は,図2に示
すようにMNH (S) とMNL (S) の二つのフィールドに分かれる。
MLCフィールド内には,四つの制御ビットがある。順序制御無効ビットVは,相手ネットワーク層よ
り受け取ったデータユニットを自ネットワーク層に渡す前に再順序制御が不要であるか否かを示すのに用
いる。V=1のとき,受信側MLPは,データユニットの再順序制御を行う必要がなく,直ちにネットワー
ク層にデータユニットを渡す。V=0のときは,MN (S) が必ず存在し,受信側MLPは,データユニット
をネットワーク層に渡す前に再順序制御を行う。順序検査オプションビットSは,V=1(マルチリンクフ
レームの再順序制御が不要であることを示す。)のときだけ有効となる。Sビットは,V=0のとき意味を
もたない。V=1かつS=1のとき,送信側MLPは,マルチリンクフレームにMN (S) の値を付与しない。
受信側MLPは,マルチリンクフレームのMN (S) の正当性又は重複の検査を行わず,マルチリンクフレー
ム内のデータユニットをネットワーク層に渡す。V=1かつS=0のとき,送信側MLPは,マルチリンク
フレームにMN (S) の値を付与する。受信側MLPでは,再順序制御を行わないが,マルチリンクフレーム
の重複又は紛失の検査を行う。重複マルチリンクフレームのデータユニットは,ネットワーク層に渡さな
い。MLPリセット要求ビットRは,マルチリンクリセット手順を開始するために使用する。MLPリセッ
ト確認ビットCは,マルチリンクリセット手順の完了を確認するために使用する。通常の通信においては,
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R=C=0とする。
図2 マルチリンクフレームの形式
4. 送信側動作
4.1
基本動作 送信側MLPは,上位層(ネットワーク層)から渡されたデータユニットをマルチリンク
フレームに組み込み,更に,受信側MLPへ送信するためにSLPへと渡す一連の制御を確実に行う。
送信側MLPの機能を次に示す。
(1) ネットワーク層からデータユニットを受け取る。
(2) MN (S) を含むマルチリンク制御フィールドを,データユニットに付加する。
(3) 送信ウィンドウの範囲外のMN (S) を付与しないことを保証する。
(4) 作成したマルチリンクフレームを転送のためにSLPに渡す。
(5) SLPから送達確認の通知を受け取る。
(6) SLPで起こる転送の失敗や異常を監視し,回復を行う。
(7) SLPからのフロー制御の指示を受け取って,適切な処置をとる。
4.2
マルチリンクフレームの転送 送信側MLPは,ネットワーク層からデータユニットを受け取ると,
マルチリンクフレーム内にそのデータユニットを組み込む。必要ならば(V=0のとき,又はV=1かつS
=0のときは),MN (S) にMV (S) の値を設定し,そして,MV (S) に1を加算する。
送信状態変数及び受信状態変数は,次のように連続する繰返し数列に従って増加する。すなわち,モジ
ュロ4096によって4095は4094より1だけ大きく,0は4095より1だけ大きい。
MN (S) がMV (T) +MWより小さく,相手局の動作可能なSLPの少なくとも一つがビジー状態でなけ
れば送信側MLPは,まだ割り当てていない最小番号のMN (S) をもつマルチリンクフレームを任意の動作
可能なSLPに割り当てる。
送信側SLPは,相手局SLPからの送達確認の受信によって,マルチリンクフレームの転送を正常に終了
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したとき,送信側MLPにこれを通知する。これにより,送信側MLPは,確認済みマルチリンクフレーム
を廃棄する。送信側MLPは,自局SLPからの送達確認の通知を受け取ると,まだ確認のとれていない最
小番号のMN (S) を示すようMV (T) を更新する。
送信側MLPは,常に最小番号のMN (S) をもつマルチリンクフレームを最初にSLPに割り当てる。ま
た,一つのマルチリンクフレームを,複数のSLPに割り当ててもよい。
マルチリンクフレームを複数のSLPで転送する場合(例えば,転送成功確率を上げるために),これら
のマルチリンクフレームの一つが既に確認された後に,重複したマルチリンクフレームが相手局MLPに
届くことが起こり得る。この場合,先に受信したマルチリンクフレームによって受信側MLPは,MV (R) を
更新し,送信側MLPはMV (T) を更新する。受信側MLPが,重複マルチリンクフレームを4096の整数倍
進んだ新しいマルチリンクフレームと取り違えないことを保証するため,送信側MLPは,すべてのSLP
が重複マルチリンクフレームを正常に転送終了するか,又は最大回数の再送を行うまで,MN (S) −MW−
MXに等しいか又は大きい順序番号をもつ新マルチリンクフレームを送信してはならない。この場合,MN
(S) は,他のSLPで転送が行われている重複マルチリンクフレームのMN (S) とする。これに代わる方法
として,すべてのSLPが重複マルチリンクフレームを正常に転送終了するか,又は最大回数の再送を行う
まで,MV (T) の更新を保留してもよい。
4.3
送信側フロー制御 フロー制御は,MWと相手局SLPによるビジー状態の通知によって行われる。
送信側MLPは,MV (T) +MW−1より大きいMN (S) を,マルチリンクフレームに付与してはならな
い。次に送信するマルチリンクフレームのMN (S) がMV (T) +MWに等しいとき,送信側MLPは,これ
とこれに続くマルチリンクフレームを,MV (T) を更新する送達確認の通知を受けるまで保持する。
図3において,MV (S) は,MV (T) +MWとなっている。この時点では,送信側MLPは,MV (T) を更
新するまで,これ以上マルチリンクフレームをSLPに割り当ててはならない。
受信側MLPは,一つ以上のSLPのビジー状態の通知によって,送信側MLPのフロー制御を行う。実現
する送信側フロー制御の程度は,ビジー状態のSLPの数で決まる。送信側MLPは,一つ以上のSLPから
ビジー状態の通知を受けると,それらのSLPに割り当てた送達確認のとれていないマルチリンクフレーム
の再割当てを行う。この場合,送信側MLPは,最小番号のMN (S) をもつマルチリンクフレームから動作
可能なSLPに割り当てる。
図3 送信側フロー制御
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4.4
再送 送信側SLPがN回再送しても,マルチリンクフレームを含むフレームの送達確認がとれない
場合,送信側MLPは,別のSLPからこのマルチリンクフレームに対する送達確認が通知されていない限
り,一つ又は複数の他のSLPにこの送達確認のとれていないマルチリンクフレームの再割当てを行う。
4.5
リンク障害 送信側SLPがデータリンク障害を検出した場合,そのSLPは,データリンクがサービ
スを停止していることを送信側MLPに通知する。すべての送達確認のとれていないマルチリンクフレー
ムは,送信側MLPによって再割当てされる。送信側MLPは,データリンク障害を検出したSLPのデータ
リンクが復旧するまで,このSLPにマルチリンクフレームを割り当ててはならない。
4.6
送信側の再構成 データリンクは,物理層又はデータリンク層における切断によってサービスを停
止することがある。送信側SLPは,送信側MLPにデータリンクがサービスしていないことを通知する。
そのSLPに割り当てられているすべての送達確認のとれていないマルチリンクフレームは,送信側MLP
によって再割当てされる。サービスを再開したか,又は最初にサービスを開始したデータリンクは,その
SLPによって送信側MLPに通知される。これによって送信側MLPは,このSLPにマルチリンクフレーム
を割り当てることができる。
5. 受信側動作
5.1
基本動作 受信側MLPは,SLPからマルチリンクフレームを受け取ると,MLCフィールドの内容
を調べる。V=0のときは,マルチリンクフレームをネットワーク層に渡す前に再順序制御を行う。受信側
SLPで検出できない伝送誤りが発生するか,又は装置内部の誤りが発生すると,マルチリンクフレームは,
紛失する場合がある。受信側MLPは,紛失したマルチリンクフレームを5.4に述べるように検出できる。
紛失したマルチリンクフレームの回復は高位レベルにより行われると仮定されている。受信側MLPが,
バッファ資源を使い果たしそうになったときは,5.5に述べるフロー制御を用いてもよい。
5.2
マルチリンクフレームの受信 受信側MLPは,長さが2オクテット未満のすべてのマルチリンクフ
レームを廃棄する。
V=0ならば,受信側MLPは,マルチリンクフレームの再順序制御を行う。V=1かつS=0でMN (S) が
MV (R) ≦MN (S) ≦MV (R) +MW+MX−1を満足し,かつMN (S) が重複していなければ,マルチリン
クフレームに含まれているデータユニットを直ちにネットワーク層へ渡す。V=1かつS=1ならば,マル
チリンクフレームに含まれているデータユニットを直ちにネットワーク層へ渡す。
マルチリンクフレームの受信を制御するために用いる受信側MLPの順序番号は,図4に示すように三
つの領域に分割される。
MV (R) は,次にネットワーク層に渡すデータユニットを含むマルチリンクフレームのMN (S) である。
MV (R) より大きいMN (S) をもつ既に受信されているマルチリンクフレームは,MV (R) に等しいMN (S)
をもつマルチリンクフレームを受信するまでネットワーク層へ渡されず,MLP内に保持される。MV (R) に
関連する三つの領域は,次のとおりとする。
(1) MV (R) からMV (R) +MW−1までの順序番号を有する受信ウィンドウ(マルチリンクウィンドウサ
イズMW)
(2) MV (R) +MWからMV (R) +MW+MX−1までの順序番号を有するガード領域(受信MLPウィンド
ウ領域MX)
(3) MV (R) +MW+MXからMV (R) −1までの順序番号を有する異常領域(異常マルチリンクフレーム
範囲MZ)
受信側MLPは,MN (S) =MV (R) のマルチリンクフレームを受信し,そのデータユニットをネットワ
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ーク層に渡すとき,MV (R) を増加させる。
図4 マルチリンクフレームの受信
5.3
再順序制御 受信側MLPは,再順序制御が必要な場合,MN (S) がMV (R) +1からMV (R) +MW
−1までの範囲にあるすべてのマルチリンクフレームを保持しておき,それらのデータユニットをネット
ワーク層に渡す前にマルチリンクフレームの再順序制御を行う。
5.4
紛失したマルチリンクフレームの検出 受信側SLPがマルチリンクフレームを含むフレームの受信
と送達確認を行い,送信側SLPが,この送達確認を送信側MLPに通知したとき,送信側MLPは,そのウ
ィンドウを進め,より大きいMN (S) をもつマルチリンクフレームをSLPへ割り当てる。受信したマルチ
リンクフレームがSLPからMLPへ渡される前に紛失すると,受信側MLPの受信ウィンドウは,進まない。
受信側MLPは,紛失したマルチリンクフレームを次のいずれかの時点まで待たなければならない。
(1) 受信側MLPのMX内のMN (S) をもつマルチリンクフレームの受信
(2) T1タイマのタイムアウト
受信側MLPは,マルチリンクフレームの紛失を検出した場合,ネットワーク層にこれを通知する。
受信側MLPは,MN (S) がMX内にあるマルチリンクフレームを受信した場合,有効なマルチリンクフ
レームとみなす。この場合,MV (R) から受信MN (S) −MWまでのまだ受信していないマルチリンクフ
レームは,紛失したとみなす。
MV (R) から受信MN (S) −MWまでの既に受信済みのマルチリンクフレームは,ネットワーク層へ渡
される。受信ウィンドウは,MV (R) が受信MN (S) −MW+1となるよう進められる。更に,MV (R) は,
未受信である最小のMN (S) に等しくなるまで進められる。MV (R) の更新例を図5に示す。
MXは,受信側MLPでマルチリンクフレームの紛失が発生した後に,その受信ウィンドウの外で正当に
受信し得る最大のMN (S) を認識できるよう十分大きいものとする。
T1タイマがタイムアウトになると,受信側MLPは,MN (S) =MV (R) のマルチリンクフレームが紛失
したとみなし,受信ウィンドウを進める。MN (S) がMV (R) よりも大きく,かつ再順序制御が必要なマ
ルチリンクフレームを受信したとき,T1タイマを始動する。MN (S) =MV (R) のマルチリンクフレーム
を受信したとき,MN (S) が更新されたMV (R) に等しいマルチリンクフレームを受信していないために,
ネットワーク層への転送を待っているマルチリンクフレームが存在する場合,T1タイマを再始動し,存在
しない場合は,T1タイマを停止する。すべてのSLPがビジー状態を示しているとき,T1タイマを停止す
る。
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図5 紛失したマルチリンクフレームの検出
5.5
受信側フロー制御 受信側SLPは,送信側MLPのフロー制御を要求する場合,ビジー状態を表示す
ることができる。
受信側MLPが再順序制御を完了する前にそのバッファ容量を使い果たすことがあるならば,T2タイマ
を用いてもよい。
受信側MLPのすべてのSLPがビジー状態になり,かつ受信側MLPでマルチリンクフレームが再順序制
御を待っているときは,T2タイマを始動する。ビジー状態が一つ又は複数のSLPで解除されたとき,T2
タイマを停止する。
T2タイマがタイムアウトになった場合,MN (S) =MV (R) のマルチリンクフレームは,受信不能のた
め紛失したとみなす。受信側MLPは,MV (R) を次のまだ受信していない順序番号まで進め,その間にあ
る順序番号をもつ受信済みのマルチリンクフレームのデータユニットをネットワーク層に渡す。ビジー状
態がすべてのSLPで依然継続しており,かつ受信側MLPで再順序制御を待つマルチリンクフレームが存
在するとき,T2タイマを再始動する。
T2タイマの値は,各MLPにより独立に設定してもよい。
6. MLPの初期設定 MLPの初期設定において,MLPは,7.のマルチリンクリセット手順を適用するこ
とによって,MV (S), MV (T) 及びMV (R) を0に初期設定する。
7. MLPのリセット マルチリンクリセット手順は,MLP相互間のMN (S) を同期させるための機構を
提供する。マルチリンクリセット手順の完了後には,各転送方向のMN (S) は,0から開始する。R=1の
マルチリンクフレームは,MLPのリセットを要求するのに使用し,C=1のマルチリンクフレームは,マ
ルチリンクリセット手順の完了を確認するのに使用する。一つのMLPは,R=1のマルチリンクフレーム
をSLPに渡すときにMV (S) とMV (T) を0にリセットし,R=1のマルチリンクフレームを受信するとき
にMV (R) を0にリセットする。
一つのMLPがマルチリンクリセット手順を開始するときには,そのMLP及び関連するSLPが保持して
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いるすべての未確認マルチリンクフレームを除去し,それらのマルチリンクフレームについての制御を維
持する。これ以後,開始側MLPは,マルチリンクリセット手順が完了するまではR=C=0のマルチリン
クフレームをSLPに渡さない。(SLP内のマルチリンクフレームを除去する一つの方法は,そのSLPのデ
ータリンクを切断することである。)
開始側MLPは,次にそのMV (S) 及びMV (T) を0にリセットする。開始側MLPは,一つのSLPにR
=1のマルチリンクフレームをリセット要求として渡し,T3タイマを始動する。R=1のときには,受信
側MLPは,MN (S) を無視する。このため,R=1のマルチリンクフレームのMN (S) は,任意の値でよい。
開始側MLPは,相手局MLPからR=1のマルチリンクフレームを受信するまで,5.2で記述した手順に従
って相手局MLPからのマルチリンクフレームの受信とその処理を継続する。
通常の通信状態において,MLPが相手局MLPからR=1のマルチリンクフレームを受信したとき,上
述の動作を開始する。MLPは,マルチリンクリセット手順が終了するまでは,相手局MLPからのR=C
=0のマルチリンクフレームを廃棄する。そのMLPがそれ自身のマルチリンクリセット手順を既に開始し,
かつ送信のために一つのSLPにR=1のマルチリンクフレームを渡し済みである場合には,そのMLPが相
手局MLPからR=1のマルチリンクフレームを受信するときに,上述の動作を反復してはならない。
R=1のマルチリンクフレーム(リセット要求)を受信すると,受信側MLPは,受信済みのマルチリン
クフレームのデータユニットをネットワーク層に渡し,SLPに割り当て済みかつ送達未確認のマルチリン
クフレームを識別する。MV (R) の元の値から受信すべき最大のMN (S) までの未受信のマルチリンクフ
レームの紛失をネットワーク層に通知してもよい。R=1のマルチリンクフレームを受信したMLPでは,
MV (R) を0にリセットする。
MLPは,一つのSLPにR=1のマルチリンクフレームを割り当てた後に,C=1のマルチリンクフレー
ムを送信するときの一つの条件として,SLPからR=1のマルチリンクフレームの送達確認又は送信不成
功の通知を得ていなければならない。リセット開始側MLPでは,R=1のマルチリンクフレームを受信し,
前述のマルチリンク状態変数のリセット動作が完了したときに,相手局MLPに対してC=1(リセット確
認)のマルチリンクフレームを送信する。受信側MLPは,R=1のマルチリンクフレームを受信し,R=1
のマルチリンクフレームを送信し,そして前述のマルチリンク状態変数のリセットが完了した後,そのSLP
からR=1のマルチリンクフレームに対する送達確認又は送信不成功が通知されると,相手局MLPに対し
てC=1(リセット確認)のマルチリンクフレームを速やかに送信する。C=1のマルチリンクフレームは,
R=1のマルチリンクフレームに対する応答とする。受信側MLPは,C=1のマルチリンクフレームのMN
(S) を無視する。このため,C=1のマルチリンクフレームのMN (S) は任意の値でよい。マルチリンクリ
セット手順の完了後に,各MLPで受信するマルチリンクフレームのMN (S) は,0から開始する。
MLPがR=1のマルチリンクフレームとC=1のマルチリンクフレームの送信にただ一つのSLPを用い
るならば,MLPは,R=1のマルチリンクフレームの送信後には,SLPからその送達確認又は送信不成功
の通知を待たずにC=1のマルチリンクフレームを直ちにSLPに渡すことができる。MLPは,T3タイマ
がタイムアウトになるまで,R=1又はC=1のマルチリンクフレームを再送してはならない。MLPは,一
方のSLPをR=1のマルチリンクフレームの送信に使用し,他方のSLPを,送信したR=1のマルチリン
クフレームに対するSLPからの送達確認又は送信不成功の通知後におけるC=1のマルチリンクフレーム
の送信に使用するのであれば,二つの異なったSLPを使用してもよい。R=C=1のマルチリンクフレーム
は,使用してはならない。
MLPは,C=1のマルチリンクフレームを受信したときにT3タイマを停止する。MLPは,SLPへC=1
のマルチリンクフレームを渡し,かつ相手局MLPからC=1のマルチリンクフレームを受信することによ
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って,マルチリンクリセット手順を完了する。R=C=0の最初のマルチリンクフレームのMN (S) は,0
でなければならない。MLPは,C=1のマルチリンクフレームをSLPに渡した後,一つ以上のR=C=0の
マルチリンクフレームを受信可能とする。MLPは,C=1のマルチリンクフレームを受信後に,一つ以上
のR=C=0のマルチリンクフレームを送信可能とする。
MLPは,R=1のマルチリンクフレームを受信してからC=1のマルチリンクフレームをSLPに渡すま
での間に,更にR=1のマルチリンクフレームを受信したときには,これらを廃棄する。MLPがC=1の
マルチリンクフレームを受信したときに,それがR=1のマルチリンクフレームに対する応答でないなら
ば,受信したC=1のマルチリンクフレームを廃棄する。
MLPが,C=1のマルチリンクフレームを一つのSLPで送信した後に,そのMLPは,相手局MLPから
R=1のマルチリンクフレームを受信することがある。そのMLPは,R=1のマルチリンクフレームを新た
なリセット要求とみなして,マルチリンクリセット手順を最初から開始しなければならない。R=1のマル
チリンクフレームを受信していないMLPが,R=1のマルチリンクフレームを送信した後に,C=1のマル
チリンクフレームを受信したとき,そのMLPはマルチリンクリセット手順を最初から再開始しなければ
ならない。
T3タイマがタイムアウトになったときには,MLPは,マルチリンクリセット手順を最初から再開始す
る。T3タイマの値は,SLPにおける送信,再送,伝搬遅延,及びMLPにおけるR=1のマルチリンクフ
レームの受信からC=1のマルチリンクフレームの応答までの動作時間を含めて,十分に大きな値としな
ければならない。
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原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(主査)
渋 谷 多喜夫
日本電信電話株式会社
(幹事)
谷 公 夫
日本電信電話株式会社
赤 井 貞 夫
日本電気株式会社
石 坂 充 弘
三菱電機株式会社
磯 貝 徹 二
沖電気工業株式会社
伊 東 厚
工業技術院
伊 藤 哲 史
日本情報処理開発協会
小 野 欽 治
国際電信電話株式会社
河 本 清 人
日本アイ・ビー・エム株式会社
小 林 哲 二
日本電信電話株式会社
斎 藤 忠 夫
東京大学
杉 田 信 昭
日本ユニバック株式会社
関 公 雄
郵政省
高 橋 修
日本電信電話株式会社
仲 瀬 煕
株式会社日立製作所
中 山 信 行
日本国有鉄道
長谷川 昇
日本科学技術情報センター
二 瀬 裕 孝
株式会社東芝
山 口 宏 二
富士通株式会社
吉 田 暁
全国銀行協会
原案作成委員会WG構成表
氏名
所属
(主査)
谷 公 夫
日本電信電話株式会社
(幹事)
高 橋 修
日本電信電話株式会社
井 出 政 司
沖電気工業株式会社
植 野 弘 宣
日本アイ・ビー・エム株式会社
宇野沢 庸 弘
株式会社東芝
小 林 哲 二
日本電信電話株式会社
鹿 間 敏 弘
三菱電機株式会社
永 田 悟
富士通株式会社
庭 山 正 幸
日本ユニバック株式会社
松 尾 一 紀
国際電信電話株式会社
山 川 博
日本電気株式会社
和 田 宏 行
株式会社日立製作所