X 25012:2013 (ISO/IEC 25012:2008)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 3
2 適合性···························································································································· 4
3 引用規格························································································································· 4
4 用語及び定義 ··················································································································· 4
5 データ品質 ······················································································································ 6
5.1 概要 ···························································································································· 6
5.2 データ品質モデル ·········································································································· 6
5.3 データ品質特性 ············································································································· 7
附属書A(参考)JIS X 25000からの用語及び定義 ····································································· 13
参考文献 ···························································································································· 15
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(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格
JIS
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ソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)
−データ品質モデル
Software engineering-Software product Quality Requirements and
Evaluation (SQuaRE)-Data quality model
序文
この規格は,2008年に第1版として発行されたISO/IEC 25012を基に,技術的内容及び構成を変更する
ことなく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
コンピュータシステムで取り扱うデータ及び情報の量は,世界的に増加している。データ品質は,それ
らのデータから導出される情報の品質及び有用さの重要な構成要素であり,多くの事業プロセスは,デー
タの品質に依存している。
全ての情報技術プロジェクトに共通な必要前提条件は,コンピュータシステムと利用者との間及びコン
ピュータシステム同士の間で,やり取りし,処理し,使用するデータの品質である。
データの品質を管理し,向上させることは,次の理由から重要である。
− データ生成プロセスの品質が分からない組織,又は品質が劣っている組織からのデータの獲得
− 不満足な情報,使用できない結果及び顧客の不満を生み出す不完全なデータの存在
− 様々な所有者及び利用者のところにあるといったデータの散乱:一つの組織の作業の流れのニーズに
従って獲得されたデータは,首尾一貫し,統合された構想は,相互運用性及び共有利用を確実にする
ために必要である。
− 処理対象データ自体に意味的曖昧性があるために,又はこのデータと他の既存の共通に関係するデー
タとの間に一貫性が欠如しているために,即座に再利用できないデータを処理するニーズ
− 過去の経緯を継承した基本設計概念及びコンピュータシステムと,異なる時期に,異なる標準に従っ
て,設計され実現された分散システムとの共存
− 頻繁なデータ交換及び統合が特別の課題となる,(WWWのような)情報システムの存在
この規格で規定されたデータ品質モデルは,データライフサイクルが多くの場合,ソフトウェアライフ
サイクルより長いことを考慮して,これらのニーズを満たすことを意図している。例えば,次のことを実
施するために使用される。
− データの生成プロセス,取得プロセス及び統合プロセスにおいてデータ品質要求事項を定義し,評価
するため。
− データの品質保証基準を識別するため。これらは,また,データのリエンジニアリング,総合評価及
び改善にとって有益である。
− データの標準適合性を法律及び/又は要求事項で評価するため。
データに起因するエラー又は効率の劣化の検出は,データ及びデータが内在するシステムの他の構成要
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素,例えば,次の構成要素に関する,増強及び是正処置を引き起こす。
− データ(例えば,再設計,構造の解析,不適切なデータの削除,データの増強,変換,整合化)
− ソフトウェア(例えば,一貫性を制御するためのソースプログラムの修正)
− ハードウェア(例えば,応答時間を改善するためのコンピュータシステムのアップグレード)
− 人間系の業務プロセス(例えば,データ入力処理のエラーを避けるための利用者教育,データを管理
する会計処理の改善)
この規格で規定したデータ品質モデルは,図1(JIS X 25000から引用し変更した。)に示すSQuaREシ
リーズの他の規格とともに使用することを意図している。
図1−SQuaREシリーズ規格の構成
SQuaREモデルの“各部門”には,次のものがある。
− ISO/IEC 2500n 品質管理部門 この部門の規格は,SQuaREシリーズの,他の全ての規格から参照さ
れる共通モデル,用語及び定義を規定する。規格を特定の応用事例に適用する場合の参照経路(SQuaRE
シリーズ全体の手引)及び高水準の実際的な提案は,全ての種別の利用者への手助けを提供する。こ
の部門は,ソフトウェア製品の品質要求事項の仕様及び評価の管理に責任のある支援機能のための要
求事項及び手引も提供する。
− ISO/IEC 2501n 品質モデル部門 この部門の規格は,内部ソフトウェア品質,外部ソフトウェア品
質及び利用時のソフトウェア品質のための品質特性を含む詳細な品質モデルを提供する。さらに,内
部ソフトウェア品質特性及び外部ソフトウェア品質特性は,品質副特性に分解される。また,品質モ
デルの実際的な利用のための手引も提供する。
− ISO/IEC 2502n 品質測定(measurement)部門 この部門の規格は,ソフトウェア製品の品質測定
(measurement)の参照モデル,品質測定量(measures)の数学的な定義及び適用のための実際的な手
引を含む。提供する測定量(measures)は,内部ソフトウェア品質,外部ソフトウェア品質及び利用
時のソフトウェア品質に適用する。後に続く品質測定量(measures)のための基礎となる品質測定
(measurement)の要素を定義し提供する。
− ISO/IEC 2503n 品質要求部門 この部門の規格は,品質要求事項の仕様化に役立つ。これらの品質
要求事項は,開発するソフトウェア製品の品質要求事項の導出又は評価プロセスのための入力として
利用することができる。要求定義プロセスは,JIS X 0170に定義された技術プロセスに対応付けられ
る。
− ISO/IEC 2504n 品質評価部門 この部門の規格は,評価者,取得者又は開発者が実施するかどうか,
ISO/IEC 25050〜ISO/IEC 25099 SQuaRE拡張部門
ISO/IEC 2503n
品質要求部門
ISO/IEC 2501n
品質モデル部門
ISO/IEC 2500n
品質管理部門
ISO/IEC 2502n
品質測定部門
ISO/IEC 2504n
品質評価部門
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ソフトウェア製品評価のための要求事項,推奨事項及び手引を提供する。評価モジュールとして測定
量(measure)の文書化のための支援も提供する。
− ISO/IEC 25050〜ISO/IEC 25099 SQuaRE拡張部門 この部門の規格は,特定の応用範囲を取り扱う
ソフトウェア製品品質の規格,標準仕様書(TS)及び/又は標準報告書(TR)を含むように指定さ
れている。また,一つ以上のSQuaRE規格を補完するために利用できるソフトウェア製品品質の規格,
標準仕様書及び/又は標準報告書を含むように指定されている。
1
適用範囲
この規格は,コンピュータシステム内の構造化された様式で保有されたデータに対する,一般的なデー
タ品質モデルを規定する。
この規格は,コンピュータシステムの一部としてのデータの品質に焦点を当て,人及びシステムが使用
する対象データに対する品質特性を規定している。
対象データとは,モデルを通して解析し妥当性確認をすることを組織が決定したデータのことをいう。
一方,対象外データという用語は,次の二つの場合をいう。一つ目は,オペレーティングシステムによっ
て取り扱われるデータのような永続性のないデータのことをいう。二つ目は,規格の適用範囲内にあるデ
ータであるかもしれないが,組織が規格を適用しないことを選択したデータをいう。
図2に,一般のシステムの構造を図示する。システムは,複数の情報システムを含み,情報システムの
それぞれが,一つ以上のコンピュータシステムを含むことができる。
図2−データ品質モデルの対象領域
この規格は,データ品質要求事項を確定し,データ品質測定量を定義し,データ品質評価を計画し実施
するために,SQuaREシリーズの他の規格とともに使用することができる。
データ品質要求事項及びデータ品質測定量は,5.2に示すデータ品質特性を使って分類することができ,
他のコンピュータシステムの構成要素とは無関係にデータを解析するために,評価プロセスで使用するこ
システム
情報システム
通信
コンピュータシステム
コンピュータ
ハードウェア
ソフトウェア
対象データ
対象外データ
機械システム
人間系の事業
システム
データ品質モデル
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とができる。
この規格は,システムのライフサイクルプロセス,例えば,JIS X 0170で規定されたプロセス,の実施
を支援することを意図している。
この規格は,全てのデータ型(例えば,文字列,テキスト,日付,数字,イメージ,音),割り当てられ
たデータ値及びデータ間の関係(例えば,同じ実体又は異なる実体の中でのデータ間の一貫性)を考慮し
ている。さらなる処理又は蓄積する目的をもたない,組込み機器又はリアルタイムセンサが生成するデー
タは適用対象外である。
この規格はデータの物理的構成(すなわち,データベース管理システム)については触れない。さらに,
概念的,論理的及び物理的なスキーマ設計の活動はこの規格の適用範囲外である。このようなデータに関
連する全てのプロセス及び成果物はこの規格を適用することで恩恵を受ける。
データ設計に対するデータの適合性は,この規格の適用範囲内である。
メタデータの定義は,ISO/IEC 11179-1で規定しており,たとえ,データ品質を評価するためにメタデー
タを参照していても,この規格の適用範囲外である。
工業的データ品質規格及び領域特定データ品質規格に対するこの規格の関係並びにこれらの規格に対す
るこの規格の優先権は,特定の利用状況における利用者が決める。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO/IEC 25012:2008,Software engineering−Software product Quality Requirements and Evaluation
(SQuaRE)−Data quality model(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
適合性
この規格を適合性に関して使用する場合,この規格の利用者は,次のいずれかをしなければならない。
− 5.2の各データ品質特性に取り組んでいる証拠を提供する。
− あるデータ品質特性に取り組んでいない場合には,その理由を示す。
− 自らのデータ品質属性体系を記述し,5.2の中の特性へのマッピングを提供する。
3
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS X 25000 ソフトウェア製品の品質要求及び評価(SQuaRE)−SQuaREの指針
注記 対応国際規格:ISO/IEC 25000,Software engineering−Software product Quality Requirements and
Evaluation (SQuaRE)−Guide to SQuaRE(IDT)
4
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS X 25000によるほか,次による。
4.1
コンピュータシステム(computer system)
一つ以上の構成要素を含むシステム。
注記1 構成要素には,一つ以上のコンピュータ(ハードウェア),並びに関連するソフトウェア及び
5
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データを含む。
注記2 ISO/IEC 24765を変更した。
4.2
データ(data)
情報の表現であって,伝達,解釈又は処理に適するように形式化され,再度情報として解釈できるもの。
注記1 データに対する処理は,人間が行ってもよいし,自動的手段で行ってもよい。
(JIS X 0001:1994)
注記2 JIS X 25000では,測定の結果に関係するデータについて定義しているので,ここでの定義と
は異なっている。
4.3
データ品質(data quality)
指定された状況で使用するとき,明示されたニーズ及び暗黙のニーズをデータの特性が満足する度合い。
4.4
データ品質特性(data quality characteristic)
データ品質に影響するデータ品質属性の種類。
4.5
データ品質測定量(data quality measure)
データ品質特性の測定の結果として,値が割り当てられる変数。
注記 JIS X 0141:2009を変更した。
4.6
データ品質モデル(data quality model)
データ品質要求事項を仕様化し,データ品質を評価するための枠組みを提供する特性の定義された集合。
4.7
データ型(data type)
抽象的な取り得る値の集合,特性,及び(属性に対する)操作の集合を分類したもの。
注記 JIS X 0017を変更した。
4.8
実体(entity)
同じ特性を共有し同じ関係を共有するという理由で,同じ型として認識された実際のもの又は抽象的な
ものの集合で表現されたもの。
注記 JIS X 0017を変更した。
4.9
実体インスタンス(entity instance)
実体によって表現される実際のもの又は抽象的なものの集合の一つ(IEEE 1320.2:1998参照)。
4.10
情報(information)
事実,事象,事物,過程,着想などの対象物に関して知り得たことであって,概念を含み,一定の文脈
中で特定の意味をもつもの(JIS X 0001:1994参照)。
注記 情報は,情報を伝達するために,表現様式を必ずもっているが,第一に関係があるのは,この
表現の解釈(意味)である。
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4.11
情報システム(information system)
人的資源,技術的資源,財務資源などの関連する組織上の資源とともに,情報を提供し配布する一つ以
上のコンピュータシステム及び通信システム。
注記 JIS X 0001:1994を変更した。
4.12
インテグリティ(integrity)
資産の正確性及び完全さを保護する特徴(JIS Q 13335-1:2006参照)。
4.13
メタデータ(metadata)
他のデータを記述するデータ(ISO/IEC 11179-1:2004参照)。
4.14
品質測定量要素(quality measure element)
ソフトウェア測定量又はデータ品質測定量を構成するために使用する測定量。基本測定量又は導出測定
量のいずれか一方である。
5
データ品質
5.1
概要
定義されたデータ品質モデルを使用してデータ品質を記述する。
この規格で規定するデータ品質モデルは,品質属性を固有の視点及びシステム依存の視点という二つの
視点を考慮した15の品質特性に分類する。
5.1.1
固有のデータ品質
固有のデータ品質は,データを明示された条件で使用するとき,明示されたニーズ及び暗黙のニーズを
満足させるために,データの品質特性が本来備えている潜在力の度合いを参照する。
固有の視点から,データ品質は,データそのものを参照する。特に次のものを参照する。
− データ領域の値及び起こり得る制限(例えば,与えられた適用上の特性に対して要求された品質に影
響を与えるビジネス上のルール)
− データ値の関係(例えば,一貫性)
− メタデータ
5.1.2
システム依存のデータ品質
システム依存のデータ品質は,データを明示された条件で使用するとき,コンピュータシステム内でデ
ータ品質が到達し,維持される度合いを参照する。
この視点から,データ品質は,データが使用される,技術上の領域に依存する。データ品質は,コンピ
ュータシステムの構成要素の能力によって達成される。構成要素とは,ハードウェア装置(例えば,デー
タを使用可能にするため又は必要な精度を確保するための装置),コンピュータシステムソフトウェア(例
えば,回復性を達成するためのバックアップソフトウェア),及びその他のソフトウェア(例えば,移植性
を達成するための移行ツール)である。
5.2
データ品質モデル
この規格で規定するデータ品質モデルは,固有の視点及びシステム依存の視点に従って,15の品質特性
の概要を記述する。
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表1−データ品質モデル特性
特性
データ品質
固有
システム依存
正確性(Accuracy)
○
完全性(Completeness)
○
一貫性(Consistency)
○
信ぴょう(憑)性(Credibility)
○
最新性(Currentness)
○
アクセシビリティ(Accessibility)
○
○
標準適合性(Compliance)
○
○
機密性(Confidentiality)
○
○
効率性(Efficiency)
○
○
精度(Precision)
○
○
追跡可能性(Traceability)
○
○
理解性(Understandability)
○
○
可用性(Availability)
○
移植性(Portability)
○
回復性(Recoverability)
○
表1の“○”印は,固有の視点及び/又はシステム依存の視点から要求されるか,又は評価されるデー
タ品質に対する特性と結果としてのその測定可能性との関連を示している。
幾つかの特性は,両方の視点から関係がある。
データ品質特性は,様々な利害関係者に応じて変化する様々な重要性及び優先度をもっている。
5.3
データ品質特性
5.3.1
固有の視点
固有の視点に関連する特性を次に示す。
5.3.1.1
正確性
特定の利用状況において,意図した概念又は事象の属性の真の値を正しく表現する属性をデータがもつ
度合い。次の二つの主要な局面をもつ。
− 構文上の正確性
構文上の正確性は,領域内で定義された構文的に正しいと考えられる値の集合へのデータ値の近さ
として定義される。
例1 構文上の正確性の低い度合いは,“メアリ(mary)”という単語が“メアリ(marj)”として保
存されているときのことである。
− 意味的な正確性
意味的な正確性は,領域内で定義された意味的に正しいと考えられる値の集合へのデータ値の近さ
として定義される。
例2 意味的な正確性の度合いが低いのは,“太郎”という名前が“次郎”として保存されていると
きなどである。両者とも名前参照領域に属しているので,構文上は正確である。しかし,“次
郎”は,別の人についた異なる名前である。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 構文上の正確性の記録欄
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− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=詳細記入の欄が構文上正確なレコードの数
B=レコードの数
5.3.1.2
完全性
実体に関連する対象データが,特定の利用状況において,全ての期待された属性及び関係する実体イン
スタンスに対する値をもつ度合い。
例 従業員データベースにとって,幾つかの従業員レコードが緊急事態発生時に従業員に連絡できる
電話番号に関するデータを含んでいない場合,完全性は低くなる。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 ファイルの中のデータの完全性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=データファイル中で,特別な状況に対して要求されたデータの数
B=使用目的の明示された特別な状況でのデータの数
5.3.1.3
一貫性
特定の利用状況において,矛盾がないという属性及び他のデータと首尾一貫しているという属性をデー
タがもつ度合い。それは,一つの実体に関するデータ相互間,又は同等の実体に対する類似のデータをま
たがったデータ同士間の,いずれか一方又は両方となる場合がある。
注記 一貫性が低くなる例として,同義語の使用が挙げられる。データを定義するために使用される
用語辞書は,こうしたケースを避けるために有用になることがある。
例 従業員の生年月日は,“採用日”より遅くなることはあり得ない。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 データファイルの一貫性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=ファイル中の一貫性のあるデータの数
B=ファイル中に記録されたデータの数
5.3.1.4
信ぴょう(憑)性
特定の利用状況において,利用者によって真(実)で信頼できるとみなされる属性をデータがもつ度合
い。
注記 信ぴょう(憑)性は,真正性(authenticity)(素性,帰属,約束の正しさ)の概念を含む。
例 独立し,かつ,信頼できる組織が保証したデータは,信用できると考えることが望ましい。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 信用取引リスクを評価するために銀行で使用するデータの信ぴょう(憑)
性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=信用取引リスク情報データを取得した後,内部監査によって保証され
るデータの数
B=信用取引リスク情報データを取得するために使用されるデータの数
5.3.1.5
最新性
特定の利用状況において,データが最新の値である属性をもつ度合い。
例 駅の発車案内板は,たとえ,列車の発着予定時刻又は発着ホームが変わったとしても,乗客が列
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車に乗車できるような頻度で更新されなければならない。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 欄データ値の最新性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=検出したデータ値が最新性を求める要求事項に適合しているデータ検
査の数
B=明示された欄のデータ値のデータ検査の数
5.3.2
固有の視点及びシステム依存の視点
固有及びシステム依存の両方の視点に関連する特性を次に示す。
5.3.2.1
アクセシビリティ
特に,幾つかの障害が原因で,支援技術又は特別の機器構成を必要とする人々が,特定の利用状況にお
いて,データにアクセスできる度合い。
例 スクリーンリーダで管理することが望ましいデータは,イメージデータとして保存してはならな
い。
注記 スクリーンリーダとは,コンピュータ画面上の文字データを音声データとして読み上げるソフ
トウェアのことをいう。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 音データのアクセシビリティ
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=“音”としてだけ保存されたデータの数(例えば,音の文書表現の使
用なしで)
B=音を表現するデータ値の数
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 複数チャンネルデータのアクセシビリティ
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=別の能力を使用して利用者がうまくアクセスできるデータの数
B=利用可能なデータの数
5.3.2.2
標準適合性
特定の利用状況において,データ品質に関係する,規格,協定又は規範,及び類似の規則を遵守する属
性をデータがもつ度合い。
例 銀行の信用取引リスクデータは,特定の法律及び規格に適合しなければならない。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 プライバシー法不適合:値
− 測定関数
A
− 品質測定量要素
A=データの内容が原因で,プライバシー法の文言に合致しない項目の数
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 プライバシー法不適合:構造
− 測定関数
A
− 品質測定量要素
A=技術的アーキテクチャの故障が原因で,プライバシー法の文言に合致
しない項目の数
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5.3.2.3
機密性
特定の利用状況において,承認された利用者によってだけ利用でき,解釈できることを保証する属性を
データがもつ度合い。
注記 機密性は,JIS Q 13335-1: 2006で(可用性,完整性とともに)規定された情報セキュリティの
一側面である。
例 健康又は収益のような個人情報又は機密情報を参照するデータは,承認された利用者だけが利用
できるようにしておくか又は秘密のコードで書くことが望ましい。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 暗号化の使用
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=暗号化されたデータベースの欄の数
B=暗号化が必要なデータベースの欄の数
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 非ぜい弱性
− 測定関数
1−(A/B)
− 品質測定量要素
A=公式の侵入テスト期間中に侵入に成功した回数
B=侵入を試みた回数
5.3.2.4
効率性
特定の利用状況において,適切な量及び種類の資源を使用することによって処理することができ,期待
された水準の性能を提供できる属性をデータがもつ度合い。
例 データを保存するために必要以上の空欄を使用することは,保存装置,メモリ及び時間の浪費の
原因となる。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 文字列として保存された数
− 測定関数
A
− 品質測定量要素
A=文字列として保存されたデータの数
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 空間を浪費している記憶容量
− 測定関数
Σ(B−A)
− 品質測定量要素
A=データベースの有効なデータ保存に対して評価した平均記憶容量
B=データベースの物理ファイルの中でデータに対して使用された記憶容
量
5.3.2.5
精度
正確な属性,又は特定の利用状況において弁別を提供する属性をデータがもつ度合い。
例 小数点第5位の精度は,小数点第2位の精度と比べて異なる機能性をもつ。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 データ値の精度
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=要求された精度をもつデータ値の数
B=データ値の総数
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システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 データベースの欄の精度
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=要求される精度で定義されたデータベースのデータ欄の数
B=データベースのデータ欄の総数
5.3.2.6
追跡可能性
特定の利用状況において,データへのアクセス及びデータに実施された変更の監査証跡を提供する属性
をデータがもつ度合い。
例 機密性のあるデータを読み書きした人を調査するために,公共管理組織は,利用者が実行したア
クセスに関する情報を保持し続けなければならない。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 値の追跡可能性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=要求された,値の追跡可能性が利用可能なデータの数
B=追跡可能性をテストしたデータ項目の数
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 自動追跡可能性
− 測定関数
A
− 品質測定量要素
A=(システムの能力を使用して)自動的に追跡するデータ項目の数
5.3.2.7
理解性
利用者がデータを読み,説明することができる属性で,特定の利用状況において,適切な言語,シンボ
ル及び単位で表現された属性をデータがもつ度合い。
注記 データ理解性についての幾つかの情報は,メタデータとして提供される。
例 国名を表現するために,標準の頭字語は,数字コードよりもずっと理解しやすい。
固有のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 既存のメタデータに由来するマスタデータの理解性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=既存のメタデータをもつマスタデータファイルのデータの数
B=マスタデータファイルのデータの数
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 リンクを張ったメタデータに由来するマスタデータの理解性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=関連するデータに自動的にリンクを張ったメタデータをもつ欄の数
B=欄の総数
5.3.3
システム依存の視点
システム依存の視点に関連する特性を次に示す。
5.3.3.1
可用性
特定の利用状況において,承認された利用者及び/又はアプリケーションがデータを検索できる属性を
データがもつ度合い。
注記1 可用性の特別な事例には,複数の利用者及び/又はアプリケーションによる(データを読み
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X 25012:2013 (ISO/IEC 25012:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
込むため又はデータを更新するための)同時並行のアクセスがある。
注記2 可用性のその他の事例には,特定の時間帯で使用可能なデータの機能がある。
例 データは,バックアップのような管理操作中にも利用できることが望ましい。
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 データ項目可用性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=バックアップ作業中及び/又は復元作業中に利用可能なデータ項目の
数
B=バックアップ手続及び/又は復元手続を行っているデータ項目の数
5.3.3.2
移植性
特定の利用状況において,既存の品質を維持しながら,データを一つのシステムから他のシステムに実
装したり,置き換えたり,移動したりできる属性をデータがもつ度合い。
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 データ移植性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=異なるコンピュータシステムに移行した後,既存の品質属性を維持し
たデータの数
B=移行したデータの数
5.3.3.3
回復性
特定の利用状況において,故障発生の場合でさえ,明示された水準の操作及び品質を継続し,維持する
ことを可能にする属性をデータがもつ度合い。
注記 回復性は,更新を確定した時期及び/又は同期した時期のような特徴,何らかの操作以前の状
態に戻すこと(障害許容性の能力)又はバックアップ−回復の仕組みによって規定することが
できる。
例 媒体装置が故障した場合,その装置に保存されたデータを,回復できることが望ましい。
システム依存のデータ品質測定量の例
− データ品質測定量の名称 回復性
− 測定関数
A/B
− 品質測定量要素
A=バックアップ操作中及び/又は復元操作中にうまくバックアップ及び
/又は復元できたデータ項目の数
B=バックアップ手続及び/又は復元手続を行っているデータ項目の数
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X 25012:2013 (ISO/IEC 25012:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A
(参考)
JIS X 25000からの用語及び定義
A.1
基本測定量(base measure)
単一の属性とそれを定量化するための方法とで定義した測定量。
注記 基本測定量は,他の測定量と機能的に独立した測定量である(JIS X 0141:2009参照)。
A.2
利用状況(context of use)
利用者,仕事,装置(ハードウェア,ソフトウェア及び資材),並びに製品が使用される物理的及び社会
的環境(JIS Z 8521:1999参照)。
A.3
導出測定量(derived measure)
複数の基本測定量の値の関数として定義した測定量(JIS X 0141:2009参照)。
注記 数学的関数を用いた基本測定量の変換も導出測定量として扱うことができる。
A.4
測定量(名詞)[measure(noun)]
測定の結果として値が割り当てられる変数。
注記 “測定量”という用語は,基本測定量,導出測定値及び指標をまとめて参照するために使う(JIS
X 0141:2009参照)。
A.5
測定(measurement)
測定量の値を決定するという目的をもった操作の集合(JIS X 0141:2009参照)。
A.6
測定の関数(measurement function)
複数の基本測定量を結合するために遂行するアルゴリズム又は計算(JIS X 0141:2009参照)。
A.7
品質モデル(quality model)
品質要求の仕様化及び品質評価に対する枠組みを提供する特性の定義された集合及び特性間の関係の集
合。
A.8
要求(requirements)
何かを達成して欲しい,又は何かを実現して欲しい,というはっきりしたニーズの表現。
注記 要求は,契約の一部として明示してもよい。また,例えば,消費者向けソフトウェアのような
不特定の利用者のために製品を開発する場合のように,開発組織が明示してもよい。利用者が
比較及び選択する目的のために製品を評価する場合のように,より一般化してもよい。
A.9
システム(system)
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X 25012:2013 (ISO/IEC 25012:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
一つ以上の明記された目的を達成するために編成された相互に影響する要素を組み合わせたもの。
注記1 システムとは,それが提供する製品又はサービスとみなしてもよい。
注記2 実際には,その意味の解釈は,例えば,航空機システムのように複合名詞の使用によってし
ばしば明確にされる。別の表現として,システムという言葉を使わずに,文脈が明らかな場
合は,例えば,“航空機システム”を“航空機”という用語に置き換えることができる。その
場合は,システムという捉え方の観点が曖昧になる(JIS X 0170:2013参照)。
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X 25012:2013 (ISO/IEC 25012:2008)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1] JIS X 0001:1994 情報処理用語−基本用語
注記 対応国際規格:ISO/IEC 2382-1:1993,Information technology−Vocabulary−Part 1: Fundamental
terms(MOD)
[2] JIS X 0017:1997 情報処理用語(データベース)
注記 対応国際規格:ISO/IEC 2382-17,Information technology−Vocabulary−Part 17: Databases
(MOD)
[3] ISO/IEC 11179-1:2004,Information technology−Metadata registries (MDR)−Part 1: Framework
[4] JIS Q 13335-1:2006 情報技術−セキュリティ技術−情報通信技術セキュリティマネジメント−第1
部:情報通信技術セキュリティマネジメントの概念及びモデル
注記 対応国際規格:ISO/IEC 13335-1:2004,Information technology−Security techniques−
Management of information and communications technology security−Part 1: Concepts and models
for information and communications technology security management(IDT)
[5] JIS X 0170:2013 システムライフサイクルプロセス
注記 対応国際規格:ISO/IEC 15288:2008,Systems and software engineering−System life cycle
processes(IDT)
[6] JIS X 0141:2009 システム及びソフトウェア技術−測定プロセス
注記 対応国際規格:ISO/IEC 15939:2007,Systems and software engineering−Measurement process
(IDT)
[7] ISO/IEC 24765,Systems and software engineering−Vocabulary
[8] IEEE Std 1320.2-1998,IEEE standard for conceptual modeling language−Syntax and semantics for IDEF1X97
(IDEFobject)
[9] JIS Z 8521:1999 人間工学−視覚表示装置を用いるオフィス作業−使用性についての手引