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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 2 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 略語······························································································································ 17 

5 暗号モジュールのセキュリティレベル ················································································· 17 

5.1 セキュリティレベル1 ···································································································· 17 

5.2 セキュリティレベル2 ···································································································· 18 

5.3 セキュリティレベル3 ···································································································· 18 

5.4 セキュリティレベル4 ···································································································· 19 

6 機能的セキュリティ目標 ··································································································· 20 

7 セキュリティ要求事項 ······································································································ 20 

7.1 総論 ··························································································································· 20 

7.2 暗号モジュールの仕様 ··································································································· 22 

7.3 暗号モジュールインタフェース ······················································································· 25 

7.4 役割,サービス及びオペレータ認証·················································································· 27 

7.5 ソフトウェア・ファームウェアセキュリティ ······································································ 32 

7.6 動作環境 ····················································································································· 33 

7.7 物理セキュリティ ········································································································· 37 

7.8 非侵襲セキュリティ ······································································································ 45 

7.9 センシティブセキュリティパラメタ管理············································································ 46 

7.10 自己テスト ················································································································· 49 

7.11 ライフサイクル保証 ····································································································· 53 

7.12 その他の攻撃への対処 ·································································································· 57 

附属書A(規定)文書化要求事項 ··························································································· 58 

附属書B(規定)暗号モジュールのセキュリティポリシ ······························································ 63 

附属書C(規定)承認されたセキュリティ機能 ········································································· 68 

附属書D(規定)承認されたセンシティブセキュリティパラメタ生成・確立方法 ····························· 70 

附属書E(規定)承認された認証メカニズム············································································· 71 

附属書F(規定)非侵襲攻撃への対処に関する承認されたテストメトリクス ··································· 72 

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(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,独立行政法人情報

処理推進機構(IPA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を

改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格で

ある。 

これによって,JIS X 19790:2009は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

X 19790:2015 

(ISO/IEC 19790:2012) 

セキュリティ技術−暗号モジュールのセキュリティ

要求事項 

Information technology-Security techniques-Security requirements for 

cryptographic modules 

序文 

この規格は,2012年に第2版として発行されたISO/IEC 19790を基に,技術的内容及び構成を変更する

ことなく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

情報技術分野において,エンティティ認証のため及び否認防止のために,また,許可されていない開示

又は操作からのデータ保護の仕組みとして,暗号メカニズムを利用する必要性は益々高くなってきている。

そのようなメカニズムのセキュリティ及び信頼性は,それらが実装されている暗号モジュールに依存して

いる。 

この規格は,内容が段階的に深まる四つのレベルのセキュリティ要求事項を規定しているが,これは,

様々なものが考えられる応用業務及び環境に広く対応できるよう考慮したからである。対象の暗号技術群

は,四つのセキュリティレベルにわたり同一である。このセキュリティ要求事項は,暗号モジュールの設

計及び実装に関係した分野を取り上げている。その分野には,次のものがある。 

・暗号モジュールの仕様 

・暗号モジュールインタフェース 

・役割,サービス及びオペレータ認証 

・ソフトウェア・ファームウェアセキュリティ 

・動作環境 

・物理セキュリティ 

・非侵襲セキュリティ 

・センシティブセキュリティパラメタ管理 

・自己テスト 

・ライフサイクル保証 

・その他の攻撃への対処 

暗号モジュールの全体的なセキュリティレベル付けは,暗号モジュールを利用する応用業務及び環境か

らのセキュリティ要求事項,並びに暗号モジュールの提供するセキュリティサービスに応じた適切なレベ

ルを提供するように選ぶ必要がある。それぞれの組織の責任者は,暗号モジュールを利用するコンピュー

タシステム及び通信システムが,所与の応用業務及び環境からみて受容し得るセキュリティレベルを提供

することを確実にすることが望ましい。承認されたセキュリティ機能のどれが所与の応用業務に対して適

切であるか選択することの責任は,それぞれの組織の責任者にあり,この規格に適合していること自体は,

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

適合製品の完全な相互運用性及び相互受容可能性のいずれをも意味しない。セキュリティ意識の重要性,

及び情報セキュリティを経営の優先課題とすることの重要性を,関係する全ての人々に周知させることが

望ましい。 

情報セキュリティに対する要求事項は,応用業務が異なれば違ったものになる。組織は,組織の情報資

産を識別し,適切な管理策を実施することによって,その損失の可能性及び損失による影響を判断するこ

とが望ましい。管理策には次のようなものがあるが,これに限らない。 

・物理的・環境的管理 

・アクセス制御 

・ソフトウェア開発 

・バックアップ計画及び緊急時対応計画 

・情報及びデータについての管理 

これらの管理策は,運用環境内で,適切なセキュリティポリシ及び手順による運営が効果的に行われて

いるときに効果的となる。 

適用範囲 

この規格は,コンピュータ及び通信システムにおける取扱いに慎重さを要する情報を保護するセキュリ

ティシステムの中で使用される暗号モジュールに対するセキュリティ要求事項を規定する。この規格は,

データの重要度の幅広さ(例えば,低価値の管理データ,一億円規模の資金振替,生命に関わるデータ,

個人の識別情報,政府が使用する取扱いに慎重さを要する情報)及び使用環境の多様性(例えば,保護さ

れた施設,オフィス,リムーバブルメディア,全く保護されていない場所)に応じて暗号モジュールを提

供するために,四つのセキュリティレベルを定義している。この規格は,11種類の要件分野のそれぞれに

対して四つのセキュリティレベルの内容を規定する。各セキュリティレベルは,下位のレベルにセキュリ

ティを上乗せしている。 

この規格は,暗号モジュールによって提供されるセキュリティの確保を目的としてセキュリティ要求事

項を規定しているが,この規格に適合していることだけでは,ある暗号モジュールがセキュアであること

は保証されず,暗号モジュールによって提供されるセキュリティが,保護しようとする情報の所有者にと

って十分であり受け入れられるものであるかどうかも保証しない。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO/IEC 19790:2012,Information technology−Security techniques−Security requirements for 

cryptographic modules(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

引用規格 

附属書C,附属書D,附属書E及び附属書Fに示す規格は,この規格に引用されることによって,この

規格の規定の一部を構成する。これらの引用規格のうちで,西暦年の付記がない引用規格は,その最新版

(追補を含む。)を適用する。 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

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3.1 

アクセス制御リスト,ACL(access control list, ACL) 

オブジェクトへのアクセス権限を定めたリスト。 

3.2 

管理者ガイダンス(administrator guidance) 

暗号モジュールの正しい設定,メンテナンス,及び管理のためにクリプトオフィサ及び/又はその他の

管理的役割が使用する文書。 

3.3 

自動化された(automated) 

手動による介入又は入力なしの(例えば,コンピュータネットワークを通じた)。 

3.4 

承認機関(approval authority) 

セキュリティ機能を承認,及び/又は評価することを権限付けられた国内又は国際の組織・機関。 

注記1 この定義の文脈における承認機関は,暗号学的又は数学的観点からセキュリティ機能を評価

及び承認するものであり,この規格に適合するかどうかを試験するようなものではない。 

注記2 承認機関は,ISO/IECやANSIなどの標準化団体で標準化された暗号アルゴリズムの仕様に

ついて,暗号学的及び数学的観点での評価を行い,十分なセキュリティをもっていると判断

されたものを,“承認されたセキュリティ機能”として承認する組織である。 

我が国の“暗号モジュール試験及び認証制度(JCMVP)”においては,IPAが“承認機関”

を担っている。 

3.5 

承認されたデータ認証技術(approved data authentication technique) 

ディジタル署名,メッセージ認証コード又は鍵付きハッシュ(例えばHMAC)の使用を含む承認された

方法。 

3.6 

承認された完全性技術(approved integrity technique) 

承認されたハッシュ,メッセージ認証コード又はディジタル署名アルゴリズム。 

3.7 

承認された動作モード(approved mode of operation) 

承認されたセキュリティ機能又はプロセスを利用する一つ以上のサービスを含み,セキュリティに関連

しないサービスを含むことのできるサービスの集合。 

注記1 Cipher Block Chaining(CBC)モードなどの,承認されたセキュリティ機能の特定の動作モー

ドと混同しないように注意する。 

注記2 承認されていないセキュリティ機能又はプロセスは排除される。 

3.8 

承認されたセキュリティ機能(approved security function) 

附属書Cで参照されているセキュリティ機能(例えば,暗号アルゴリズム)。 

3.9 

非対称暗号技術(asymmetric cryptographic technique) 

二つの関連する変換[公開変換(公開鍵によって定義される。)及びプライベート変換(プライベート鍵

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によって定義される。)]を使う暗号技術。 

注記 この二つの変換は,公開変換からプライベート変換を導出することが,与えられた時間限度及

び計算資源内では困難であるという特性をもつ。 

3.10 

生体情報(biometric) 

オペレータであることを識別するために,又は本人であることの主張を検証するために使用される測定

可能な,身体的特徴又は個人的行動特性。 

3.11 

バイパス機能(bypass capability) 

暗号機能を部分的に又は全体的にう(迂)回するサービスの機能。 

3.12 

証明書(certificate) 

認証局のプライベート鍵又は秘密鍵で,偽造できないようにされたエンティティのデータ。 

注記 認証機関によって発行された暗号モジュール認証書と混同しないように注意する。 

3.13 

危たい(殆)化(compromise) 

クリティカルセキュリティパラメタが許可なく開示,変更,置換,若しくは使用されること,又は公開

セキュリティパラメタが許可なく変更,若しくは置換されること。 

3.14 

条件自己テスト(conditional self-test) 

規定されたテスト条件が成立したときに暗号モジュールが実行するテスト。 

3.15 

機密性(confidentiality) 

情報が,許可されていないエンティティに利用又は公開されない性質。 

3.16 

構成管理システム,CMS(configuration management system, CMS) 

暗号モジュールのハードウェア,ソフトウェア及び文書に対する変更を管理することによるセキュリテ

ィの特性及び保証のマネジメント。 

3.17 

制御情報(control information) 

暗号モジュールの動作を指示するために暗号モジュールに入力される情報。 

3.18 

クリティカルセキュリティパラメタ,CSP(critical security parameter, CSP) 

セキュリティに関する情報であって,その開示又は変更が,暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)

化し得るもの。 

例 秘密鍵,プライベート鍵,認証データ(例えば,パスワード,PIN,証明書,その他のトラスト

アンカ) 

注記 CSPは平文でも暗号化されていてもよい。 

3.19 

クリプトオフィサ(crypto officer) 

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暗号モジュールの暗号関連の初期化又は管理機能を実行するために暗号モジュールにアクセスする,個

人又はその個人の代わりに動作するプロセス(すなわち,主体)によって担われる役割。 

3.20 

暗号アルゴリズム(cryptographic algorithm) 

可変入力を受けて,出力を生成する,明確に定義された計算手順。可変入力は暗号鍵を含む場合がある。 

3.21 

暗号境界(cryptographic boundary) 

暗号モジュールの物理的及び/又は論理的な領域を確定し,かつ,暗号モジュールの全てのハードウェ

ア,ソフトウェア,及び/又はファームウェアの構成要素をその内側に含む,明確に定義された連続する

境界線。 

3.22 

暗号学的ハッシュ関数(cryptographic hash function) 

任意長のビット列を固定長のビット列に計算量的に効率よく対応付ける関数であって,同一の出力値に

対応する異なる二つの入力値を求めることが与えられた時間限度及び計算資源内では困難であるもの。 

3.23 

暗号鍵,鍵(cryptographic key, key) 

暗号変換の動作を制御する記号列。 

例 暗号変換は,暗号化,復号,MAC計算,署名生成,又は署名検証を含むが,これに限定されない。 

3.24 

暗号鍵要素,鍵要素(cryptographic key component, key component) 

承認されたセキュリティ機能において他の鍵要素とともに使用される,平文のCSPを構成するため又は

暗号機能を実行するためのパラメタ。 

3.25 

暗号モジュール,モジュール(cryptographic module, module) 

セキュリティ機能を実装した,暗号境界内に含まれるハードウェア,ソフトウェア,及び/又はファー

ムウェアの集合。 

3.26 

暗号モジュールのセキュリティポリシ,セキュリティポリシ(cryptographic module security policy, security 

policy) 

暗号モジュールが動作する上で従わなければならないセキュリティルールの明確な仕様。これには,こ

の規格の要求事項から導出されたルール,及び暗号モジュール又は認証機関によって課せられた付加的ル

ールも含まれる。 

注記 附属書Bを参照。 

3.27 

データパス(data path) 

データが通過する物理的又は論理的な経路。 

注記 物理データパスは,複数の論理データパスによって共有されてもよい。 

3.28 

縮退動作(degraded operation) 

エラー状態から再構成された結果として,アルゴリズム,セキュリティ機能,サービス又はプロセスの

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全体集合の部分集合が,利用可能及び/又は設定可能な状態での動作。 

3.29 

差分電力解析,DPA(differential power analysis, DPA) 

暗号処理と相関がある情報を抽出することを目的として,暗号モジュールの電力消費の変化を解析する

こと。 

3.30 

ディジタル署名(digital signature) 

メッセージの受信者が,メッセージの出所及び完全性の証明,並びに(例えば,受信者による)偽造か

らの保護を可能にする,メッセージに付加されたデータ,又はメッセージを暗号変換したデータ。 

3.31 

直接入力(direct entry) 

キーボードのようなデバイスを用いた,暗号モジュールへのSSP又は鍵要素の入力。 

3.32 

個別署名(disjoint signature) 

実行可能コード全体の完全性を表す一つ以上の署名。 

3.33 

電磁放射,EME(electromagnetic emanations, EME) 

傍受され,分析された場合,情報処理装置によって送信,受信,操作,又は処理されている情報を開示

する可能性のある信号。 

3.34 

電子的入力(electronic entry) 

電子的手法を用いた,暗号モジュールへのSSP又は鍵要素の入力。 

注記 鍵のオペレータは入力しようとする鍵の値について知ることはできない。 

3.35 

包括署名(encompassing signature) 

実行可能コード全体に対する単一の署名。 

3.36 

暗号化された鍵(encrypted key) 

承認されたセキュリティ機能を用いて,鍵暗号化鍵で暗号化された暗号鍵。 

注記 この鍵は保護されているとみなされる。 

3.37 

エンティティ(entity) 

人,グループ,デバイス又はプロセス。 

3.38 

エントロピー(entropy) 

一つの閉鎖系における無秩序さ,無作為性又は変動性の尺度。 

注記 確率変数Xのエントロピーとは,Xの観測によって提供される情報量の数学的尺度である。 

3.39 

環境故障保護,EFP(environmental failure protection, EFP) 

暗号モジュールの通常動作範囲外の環境条件によって,暗号モジュールのセキュリティが危たい(殆)

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化することを防止する機構を使用すること。 

3.40 

環境故障試験,EFT(environmental failure testing, EFT) 

暗号モジュールの通常動作範囲外の環境条件によって,暗号モジュールのセキュリティが危たい(殆)

化しないという妥当な保証を与えるために特定の方法を使用すること。 

3.41 

誤り検出符号,EDC(error detection code, EDC) 

データから計算された冗長ビット及びデータで構成される値で,データの意図しない改変を検出するた

めのもの。データの訂正はしない。 

3.42 

実行可能形式(executable form) 

暗号モジュールの動作環境によって完全に管理及び制御されるソフトウェア又はファームウェアのコー

ドの形式であって,コンパイルを必要としない形式[例えば,ソースコード,オブジェクトコード又はJIT

(just-in-time)コンパイルコードのいずれでもない。]。 

3.43 

故障誘導(fault induction) 

過渡電圧,放射,レーザ又はクロック・スキューイング技術を応用することによってハードウェアにお

いて動作変化を引き起こす技術。 

注記 故障注入(fault injection)ともいう。 

3.44 

有限状態モデル(finite state model, FSM) 

入力イベントの有限集合,出力イベントの有限集合,状態の有限集合,状態及び入力を出力に対応付け

る関数,状態及び入力を状態に対応付ける関数(状態遷移関数),並びに初期状態について記述する仕様か

らなる,シーケンシャルマシンの数学的モデル。 

3.45 

ファームウェア(firmware) 

暗号境界内のハードウェアに保存され,変更不可能又は限定動作環境で動作しながら,実行している間

は動的な書き込みも変更もできない暗号モジュールの実行可能コード。 

例 保存用ハードウェアにはPROM,EEPROM,フラッシュメモリ,半導体メモリ,ハードディスク

ドライブなどを含み得るがそれに限定されない。 

3.46 

ファームウェアモジュール(firmware module) 

ファームウェアだけからなる暗号モジュール。 

3.47 

機能仕様(functional specification) 

オペレータに見えるポート及びインタフェースの上位記述,並びに暗号モジュールの振る舞いの上位記

述。 

3.48 

機能試験(functional testing) 

機能仕様によって定義される暗号モジュールの機能性の試験。 

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3.49 

硬い/硬さ(hard/hardness) 

金属,その他の物質の,へこませること,ひっかくこと又は曲げることへの相対的抵抗力,物理的に硬

くなっていること,頑丈なこと,及び耐久力のあること。 

注記 その物質以外の物体による貫通に対する物質の相対的抵抗力。 

3.50 

ハードウェア(hardware) 

プログラム及びデータを処理するために使用される,暗号境界内の物理的装置・構成要素。 

3.51 

ハードウェアモジュール(hardware module) 

主にハードウェアからなる暗号モジュール。ファームウェアを含んでもよい。 

3.52 

ハードウェアモジュールインタフェース,HMI(hardware module interface, HMI) 

ハードウェアモジュールのサービスを要求するために使われるコマンドの全体。そのハードウェアモジ

ュールの暗号境界で,要求されたサービスの一部として,入出力されるパラメタを含む。 

3.53 

ハッシュ値(hash value) 

暗号学的ハッシュ関数からの出力。 

3.54 

ハイブリッドモジュール(hybrid module) 

暗号モジュールであって,その暗号境界が,ソフトウェア又はファームウェア構成要素,及びそれらと

分離されたハードウェア構成要素の複合体で区切られているもの。 

3.55 

ハイブリッドファームウェアモジュールインタフェース,HFMI(hybrid firmware module interface, HFMI) 

ハイブリッドファームウェアモジュールのサービスを要求するために使われるコマンドの全体。その暗

号モジュールの暗号境界で,要求されたサービスの一部として,入出力されるパラメタを含む。 

3.56 

ハイブリッドソフトウェアモジュールインタフェース,HSMI(hybrid software module interface, HSMI) 

ハイブリッドソフトウェアモジュールのサービスを要求するために使われるコマンドの全体。その暗号

モジュールの暗号境界で,要求されたサービスの一部として,入出力されるパラメタを含む。 

3.57 

入力データ(input data) 

暗号モジュールに入力される情報。承認されたセキュリティ機能を用いて変換又は計算を行うために使

用される情報を含む。 

3.58 

完全性(integrity) 

許可されておらず,かつ,検出されない方法で,データが変更も消去もされていないという性質。 

3.59 

インタフェース(interface) 

論理的な情報フローに対して暗号モジュールへのアクセスを提供する,暗号モジュールの論理的な入出

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力点。 

3.60 

ISO/IEC採用(ISO/IEC adopted) 

次のいずれかのセキュリティ機能。 

・ ISO/IEC規格の中で規定されているもの。 

・ ISO/IEC規格の中で採用又は推奨されており,そのISO/IEC規格の附属書又はISO/IEC規格が

参照している文書に規定されているもの。 

3.61 

鍵共有(key agreement) 

二者以上の情報によって定まり,単独では値を定めることができない鍵を,自動化された方法によって

共有するSSP確立手順。 

3.62 

鍵暗号化鍵,KEK(key encryption key, KEK) 

他の鍵を暗号化又は復号するために用いられる暗号鍵。 

3.63 

鍵ローダ(key loader) 

平文のまま又は暗号化された,SSP又は一つ以上の鍵要素を格納できるデバイスであって,要求があっ

たときは,それらを暗号モジュール内に転送できるもの。 

注記 鍵ローダの使用は,人による操作を必要とする。 

3.64 

鍵管理(key management) 

セキュリティポリシに従った鍵及び鍵関連情報の生成,登録,証明,登録抹消,配送,インストール,

保存,保管,失効,導出及び破棄の管理及び使用。 

3.65 

鍵配送(key transport) 

自動化された方法を使って,あるエンティティから他のエンティティへ鍵を配送するプロセス。 

3.66 

限定動作環境(limited operational environment)  

ソフトウェア・ファームウェアロードテストに成功した,管理されたファームウェアの変更だけを受け

入れるように設計された動作環境。 

3.67 

下位レベル試験(low-level testing) 

暗号モジュールの個別の構成要素又は構成要素の集まり,並びに構成要素の物理ポート及び論理インタ

フェースの試験。 

3.68 

メンテナンス役割(maintenance role) 

物理メンテナンス及び/又は論理メンテナンスサービスを実行することを担う役割。 

例 メンテナンスサービスは,ハードウェア及び/又はソフトウェアの診断を含んでもよいが,それ

に限定されない。 

10 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.69 

手動(manual) 

人間のオペレータによる操作を要求すること。 

3.70 

メッセージ認証コード,MAC(message authentication code, MAC) 

偶然の及び意図的なデータの変更を検出するための,対称鍵を使用した暗号チェックサム。 

例 ハッシュベースメッセージ認証コード 

3.71 

マイクロコード(microcode) 

ある実行可能なプログラム命令に対応するプロセッサの一連の命令。 

例 アセンブラコード 

3.72 

最小エントロピー(minimum entropy) 

エントロピーの下限。標本のエントロピーの最悪の推定値を決定するのに有用である。 

3.73 

変更可能な動作環境(modifiable operational environment) 

管理されていない(すなわち,信頼できない)ソフトウェアを含む機能変更を受け入れるように設計さ

れた動作環境。 

3.74 

多要素認証(multi-factor authentication) 

二つ以上の独立した認証要素をもつ認証。 

注記1 認証要素とは,エンティティのIDを認証するために用いる情報及びプロセスである。 

注記2 独立した認証要素のカテゴリは,エンティティのもつ知識,所持物,エンティティ自身の特

徴である。 

3.75 

マルチチップ組込み型暗号モジュール(multiple-chip embedded cryptographic module) 

二つ以上のICチップが相互接続されて,囲い又は製品内に組み込まれる物理形態の暗号モジュール。こ

の囲い又は製品は物理的に保護されていなくてもよい。 

例 アダプタ及び拡張ボード 

3.76 

マルチチップスタンドアロン型暗号モジュール(multiple-chip standalone cryptographic module) 

二つ以上のICチップが相互接続されて,囲い全体が物理的に保護されている物理形態の暗号モジュール。 

例 暗号化ルータ又はセキュア無線 

3.77 

非管理者ガイダンス(non-administrator guidance) 

承認された動作モードで暗号モジュールを操作するためにユーザ及び/又はその他の非管理的役割によ

って使用される文書。 

注記 承認された動作モードで暗号モジュールを操作するためにユーザ及び/又はその他の非管理的

役割によって使用される文書。 

11 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.78 

非侵襲攻撃(non-invasive attack) 

暗号境界内の構成要素との直接的な物理的接触なしに実行され得る暗号モジュールに対する攻撃。 

注記 暗号モジュールの状態を変化させない攻撃。 

3.79 

変更不可能な動作環境(non-modifiable operational environment) 

ファームウェアの変更を受け入れないよう設計された動作環境。 

3.80 

セキュリティに関連しない(non-security relevant) 

この規格の適用範囲内で取り上げられていない要求事項で,承認された又は承認されていないセキュリ

ティ機能又はプロセスへの参照を含まない(連体修飾)。 

3.81 

通常動作(normal operation) 

アルゴリズム,セキュリティ機能,サービス又はプロセスの全体が,利用可能及び/又は設定可能であ

る動作。 

3.82 

不透明な(opaque) 

光(すなわち,波長が400 nm〜750 nmの範囲の可視光領域内の光)を通さない,すなわち,可視光領

域内で透明でも半透明でもない。 

3.83 

動作環境(operational environment) 

暗号モジュールがセキュアに動作するために必要な,オペレーティングシステム及びハードウェアプラ

ットフォームからなる全てのソフトウェア及びハードウェアの集合。 

3.84 

動作状態(operational state) 

オペレータがサービス又は機能を要求することができ,暗号モジュールのデータ出力インタフェースか

らデータ結果が出力される状態。 

3.85 

オペレータ(operator) 

一つ以上の役割を担うことが許可された人,又はその人の代わりに操作するプロセス(主体)。 

3.86 

出力データ(output data) 

暗号モジュールから生成される情報。 

3.87 

表面安定化処理(passivation) 

検出及び保護の手段を含めるために構成された,半導体の接合部,表面又は構成要素,及び集積回路に

おける,反応プロセスの効果。 

例 二酸化けい素(Silicon dioxide),りんけい酸ガラス(phosphorus glass) 

注記 表面安定化処理は,回路の振る舞いを変更することができる。表面安定化処理物質は,半導体

技術に依存している。 

12 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.88 

パスワード(password) 

識別認証又はアクセス権の検証に使用される文字列。 

例 英字,数字,その他の記号。 

3.89 

個人識別番号,PIN(personal identification number, PIN) 

識別認証に使用される数字コード。 

3.90 

物理的保護(physical protection) 

物理的手段を用いた,暗号モジュール,CSP及びPSPの安全防護策。 

3.91 

平文の鍵(plaintext key) 

暗号化されていない暗号鍵,又は承認されていない方法によって難読化された暗号鍵。その暗号鍵は,

保護されていないとみなされる。 

3.92 

ポート(port) 

暗号モジュールへのアクセスを提供する,暗号モジュールの物理的・論理的な入出力点。 

3.93 

動作前自己テスト(pre-operational self-test) 

(電源オフ,リセット,リブート,コールドスタート,停電などの後で)暗号モジュールの電源投入さ

れた時又は起動された時から動作状態に遷移するまでの間に暗号モジュールが実行するテスト。 

3.94 

プライベート鍵(private key) 

エンティティが所有する非対称鍵ペアの鍵で,そのエンティティ以外が使用しないほうがよいもの。 

注記 非対称署名方式の場合,プライベート鍵は署名変換を定義する。非対称暗号化方式の場合,プ

ライベート鍵は復号変換を定義する。 

3.95 

製品グレードの(production-grade) 

動作スペックに合致することが試験によって確認されている製品,部品又はソフトウェア。 

3.96 

公開鍵(public key) 

エンティティが所有する非対称鍵ペアの鍵で,公開できるもの。 

注記1 非対称署名方式の場合,公開鍵は検証変換を定義する。非対称暗号化方式の場合,公開鍵は

暗号化変換を定義する。公開鍵は,広く利用可能である必要はなく,特定のグループの全メ

ンバに利用可能であるだけであってもよい。 

注記2 この規格では,公開鍵は,CSPとはみなされない。 

3.97 

公開鍵証明書(public key certificate) 

適切な認証局によって署名され,それゆえ偽造できないようにされた,エンティティの公開鍵情報。 

13 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.98 

公開鍵(非対称)暗号アルゴリズム[public key(asymmetric)cryptographic algorithm] 

公開鍵及びプライベート鍵という二つの関連する鍵を使用する暗号アルゴリズム。 

注記 二つの鍵には,公開鍵からプライベート鍵を導出することが,計算量的に困難であるという特

性をもつ。 

3.99 

公開セキュリティパラメタ,PSP(public security parameter, PSP) 

セキュリティに関連する公開情報であって,その変更が,暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)

化し得るもの。 

例 公開鍵,公開鍵証明書,自己署名証明書,トラストアンカ,及びワンタイムパスワード(カウン

タ及び内部的に保持された時刻に関連付けられたもの)。 

注記 PSPは,変更することができない場合,又は変更が暗号モジュールによってなされる場合,保

護されているものとみなす。 

3.100 

乱数ビット生成器,RBG(random bit generator) 

統計的に独立で偏りのないビット列を出力するデバイス又はアルゴリズム。 

3.101 

除去可能なカバー(removable cover) 

暗号モジュール内部への,損傷を与えない物理アクセスを許すよう意図的に設計された物理手段。 

3.102 

役割(role) 

ユーザのアクセス権限又は暗号モジュールのサービスへの制限を定義し,ユーザと関連付けられている

セキュリティ属性。 

注記 一つの役割に一つ以上のサービスを関連付けることができる。一つの役割に一つ以上のユーザ

を関連付けることができ,一つのユーザが一つ以上の役割を担うことができる。 

3.103 

役割ベースのアクセス制御,RBAC(role-based access control, RBAC) 

役割ごとに付与された許可権限に基づくアクセス制御。 

3.104 

実行時環境(runtime environment) 

コンピュータが動作している間にプロセス又はプログラムにソフトウェアサービスを提供する仮想マシ

ンの状態。 

注記 実行時環境は,オペレーティングシステム自体又はその上で動作するソフトウェアに関連する。

その導入の主たる目的は,“プラットフォームに依存しない”プログラミングを可能にすること

である。 

3.105 

秘密鍵(secret key) 

対称鍵暗号アルゴリズムにおいて使用される暗号鍵であり,一つ以上のエンティティに一意に関連付け

られ,公開されないほうがよいもの。 

注記 “共通鍵”ともいう。 

14 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.106 

セキュリティ機能(security function) 

ブロック暗号,ストリーム暗号,対称鍵アルゴリズム又は非対称鍵アルゴリズム,メッセージ認証コー

ド,ハッシュ関数,他のセキュリティ機能,乱数ビット生成器,エンティティ認証並びにSSP生成及び確

立のような,ISO/IEC又は承認機関によって承認された全ての,動作モードを伴う暗号アルゴリズム。 

注記 附属書Cを参照。 

3.107 

シード鍵(seed key) 

乱数ビット生成器を初期化するために使用される秘密の値。 

3.108 

自己テスト(self-tests) 

オペレータに要求されたときに,又はセキュリティポリシに規定された条件で最大動作時間後定期的に

実行される,動作前自己テスト及び条件自己テストの一式。 

3.109 

センシティブデータ(sensitive data) 

ユーザの観点で保護が必要なデータ。 

注記 機微データともいう。 

3.110 

センシティブセキュリティパラメタ,SSP(sensitive security parameters, SSP) 

クリティカルセキュリティパラメタ(CSP)及び公開セキュリティパラメタ(PSP)の総称。 

3.111 

サービス(service) 

暗号モジュールによって実行することができる,外部からオペレータが呼び出す動作及び/又は機能。 

3.112 

サービス入力(service input) 

暗号モジュールによって利用される全てのデータ又は制御情報であって,特定の動作又は機能を,開始

又は取得するためのもの。 

3.113 

サービス出力(service output) 

サービス入力によって開始又は取得される動作又は機能から生じる全てのデータ及び状態情報(status)。 

3.114 

単純電力解析,SPA(simple power analysis, SPA) 

暗号操作と相関がある情報を抽出することを目的とした,暗号モジュールの消費電力に関連した命令実

行(又は個別命令の実行)のパターンの,直接的な(主に視覚的な)解析。 

3.115 

シングルチップ暗号モジュール(single-chip cryptographic module) 

単体の集積回路(IC)チップがスタンドアロンデバイスとして用いられるか,又は物理的に保護されて

いない囲い若しくは製品内に組み込まれている物理形態の暗号モジュール。 

例 単体のICチップ又はICチップを一つだけ搭載したスマートカード 

15 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.116 

ソフトウェア(software) 

暗号モジュールの実行コードであって,消去可能なメディアに格納され,変更可能な動作環境で動作し

ながら,実行中に動的に書き込み及び変更が可能であるもの。 

例 消去可能メディアには,半導体メモリ,ハードディスクドライブなどを含み得るがそれに限定さ

れない。 

3.117 

ソフトウェアモジュール(software module) 

ソフトウェアだけから成る暗号モジュール。 

3.118 

ソフトウェア・ファームウェアロードテスト(software/firmware load test) 

ロードされるソフトウェア又はファームウェアに対して実施されるテストの集合であって,ソフトウェ

ア又はファームウェアが暗号モジュールによって実行可能となる前に成功しなければならないもの。 

注記 ソフトウェア又はファームウェアのイメージを完全に置き換える場合であって,暗号モジュー

ルの電源を切って再投入した後にだけ実行される場合,適用されない。 

3.119 

ソフトウェア・ファームウェアモジュールインタフェース,SFMI(software/firmware module interface, SFMI) 

ソフトウェア又はファームウェアモジュールのサービスを要求するために使用されるインタフェースの

全体。その暗号モジュールの暗号境界で,要求されたサービスの一部として,入出力されるパラメタを含

む。 

3.120 

知識分散(split knowledge) 

暗号鍵を,元の暗号鍵の知識を単独ではもたない複数の鍵要素に分割するプロセス。個々の鍵要素は,

別々のエンティティによって暗号モジュールに入出力され,元の暗号鍵を復元するために組み合わされる。 

注記 鍵要素の全て又は一部分が,その鍵の復元に必要とされることがある。 

3.121 

SSP確立(SSP establishment) 

共有されたSSPを一つ以上のエンティティに利用可能にするプロセス。 

注記 SSP確立には,SSP共有,SSP配送,及び,SSP入力又は出力を含む。 

3.122 

状態情報(status information) 

暗号モジュールのある動作の特徴又は状態(state)を示すために,暗号モジュールから出力される情報。 

3.123 

強固な(strong) 

簡単には打ち破られないか,平均若しくは予想より大きな強さ又は力をもつ,攻撃に耐えることができ

る又は堅固に組み立てられた(連体修飾)。 

3.124 

対称暗号技術(symmetric cryptographic technique) 

暗号化変換及び復号変換の両方に同じ秘密鍵を使用する暗号技術。 

注記 “共通鍵暗号技術”ともいう。 

16 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.125 

タンパー検出(tamper detection) 

暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)化する試みがなされたことの,暗号モジュールによる自

動的な判定。 

3.126 

タンパー証跡(tamper evidence) 

暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)化する試みがなされたことを示す,観察可能な表示。 

3.127 

タンパー応答(tamper response) 

暗号モジュールがタンパーを検出したときに取る自動的な動作。 

3.128 

トラストアンカ(trust anchor) 

公開鍵暗号アルゴリズム,公開鍵の値,発行者の名前を含み,場合によって他のパラメタを含む,信頼

される情報。 

例 他のパラメタは,有効期間を含んでもよいがそれに限定されない。 

注記 トラストアンカは,自己署名証明書の形で提供され得る。 

3.129 

トラステッドチャネル(trusted channel) 

保護されていない,平文のCSP,鍵要素及び認証データをセキュアに通信するために,暗号モジュール

及び送信者又は受信者の間で確立される,信頼され,かつ,安全な通信リンク。 

注記1 トラステッドチャネルは,暗号モジュールの定義された入出力ポートと,意図したエンドポ

イントとの間の通信リンクに沿って,傍受,及び好ましくないオペレータ,エンティティ,

プロセス,他のデバイスによる物理的又は論理的タンパーを防ぐ。 

注記2 JIS X 5070-1:2011では“高信頼チャネル”の用語を使用している。 

3.130 

ユーザ(user) 

暗号サービスを受けるために暗号モジュールにアクセスする個人,又は個人の代わりに動作するプロセ

ス(すなわち,主体)によって担われる役割。 

3.131 

認証された(validated) 

試験に基づき確認された適合性の,認証機関によって保証された(連体修飾)。 

注記 certifiedともいう。 

3.132 

認証機関(validation authority) 

この規格に適合しているかどうかの試験結果を認証するエンティティ。 

注記1 certification authorityともいう。 

注記2 我が国では,この規格に基づく“暗号モジュール試験及び認証制度(JCMVP)”が運営され

ており,独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が“認証機関”を担っている。JCMVPでは,

試験機関がJIS X 19790に基づいて暗号モジュールの適合性試験(conformance test)を実施し,

認証機関がその試験結果の報告書を確認して認証(validate)する枠組みをとっている。 

17 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.133 

ベンダ(vendor) 

試験及び認証のために暗号モジュールを提出するエンティティ,集団又は団体。 

注記 ベンダは,暗号モジュールを設計又は開発したかどうかにかかわらず,全ての関連文書及び設

計証拠へのアクセスができる。 

3.134 

ゼロ化(zeroisation) 

データ復元及び再使用を防止するために,格納データ及び保護されていないSSPを破壊する方法。 

略語 

この規格で用いる主な略語は,次による。 

API Application Program Interface 

CBC Cipher Block Chaining 

注記 暗号利用モードの一つ。 

CCM Counter with Cipher block chaining-Message authentication code 

注記 認証機能をもつ暗号利用モードの一つ。 

ECB Electronic Codebook 

注記 暗号利用モードの一つ。 

HDL Hardware Description Language ハードウェア記述言語 

IC Integrated Circuit 集積回路 

PROM Programmable Read-Only Memory プログラム可能な読出し専用メモリ 

RAM Random Access Memory ランダムアクセスメモリ 

URL Uniform Resource Locator 

暗号モジュールのセキュリティレベル 

四つのセキュリティレベルの概念については,次による。どのように要求事項が満たされるかを示すた

めに掲げた例示は,そこに掲げたものだけに限定することを意図したものでなく,全てを網羅したもので

もない。 

この規格において,“モジュール”という用語は“暗号モジュール”を意味する。 

対象の暗号技術群は,四つのセキュリティレベルにわたり同一である。各セキュリティレベルは,暗号

モジュールそのものの保護(例えば,内部構成要素及び操作へのアクセス並びに内部構成要素及び操作に

ついての知識)及び暗号モジュール内に含まれ,制御されているSSPの保護に対する,セキュリティレベ

ルが高いほど高いレベルのセキュリティ要求事項を課している。各セキュリティ要求事項は,“なければな

らない[xx.yy]”で識別される。ここで,xxが箇条7の第一階層の細分箇条を指し,yyが細分箇条内の連

番を示す。 

5.1 

セキュリティレベル1 

セキュリティレベル1は,セキュリティの基準となるレベルである。暗号モジュールとしての基本的な

セキュリティ要求事項(例えば,一つ以上の承認されたセキュリティ機能,又は承認されたセンシティブ

セキュリティパラメタの確立方法が使用されていなければならないこと)がここで規定されている。ソフ

トウェアモジュール又はファームウェアモジュールは,変更不可能な動作環境,限定動作環境又は変更可

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

能な動作環境において動作する。セキュリティレベル1のハードウェアモジュールに,製品グレードとし

ての基本的な要求事項を超える特別な物理セキュリティのメカニズムは要求されない。実装されている,

非侵襲攻撃に対する対処方法,その他の攻撃に対する対処方法は文書化されている。セキュリティレベル

1の暗号モジュールの例として,パーソナルコンピュータ(PC)内のハードウェアボード又は手持ちサイ

ズのデバイス若しくは汎用コンピュータで実行される暗号ツールキットがある。 

このような暗号モジュールの導入は,例えば,物理セキュリティ,ネットワークセキュリティ,管理手

続などの制御が,暗号モジュールの外部だが暗号モジュールが配置される環境内で提供されているときの,

セキュリティ用途のアプリケーションに最適である。例えば,暗号モジュールの動作環境が全体的なセキ

ュリティの実現において重要な場合に,SSPに対するより高いセキュリティを提供する高い保証レベルの

暗号モジュールを使用するよりも,費用対効果の観点で,セキュリティレベル1の暗号モジュールの導入

を選択するなど,セキュリティ要件を満たすために代替となる暗号ソリューションを組織が選択すること

ができる。 

5.2 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル2は,タンパー証跡を残すコーティング若しくはシール,又は除去可能なカバー若

しくはドアに対してこじ開け耐性のある錠を含むタンパー証跡に関する要求事項を追加することで,セキ

ュリティレベル1の物理セキュリティのメカニズムを強化したものである。 

タンパー証跡を残すコーティング又はシールは,暗号モジュールに塗布又は貼付され,暗号モジュール

内のSSPへの物理アクセスがあった場合,そのコーティング又はシールは必ず破壊されなければならない。

タンパー証跡を残すシール又はこじ開け耐性のある錠は,許可されていない物理アクセスから保護するた

めに,カバー又はドアに添付又は設置される。 

セキュリティレベル2は,役割ベースの認証を必要とする。この認証では,オペレータが特定の役割を

担い,その役割に対応したサービスを実行する権限があることを,暗号モジュールが認証する。 

セキュリティレベル2は,ソフトウェアの暗号モジュールが,(a)役割ベースのアクセス制御,又は(b)

最低限,新しいグループを定義しアクセス制御リスト(例えば,ACL)を通じて制限付きの許可を規定す

る堅ろう(牢)なメカニズムをもち,かつ,一つ以上のグループに各ユーザを割り当てる能力を備えた任

意アクセス制御を実装し,無許可の実行,変更及び暗号のソフトウェアを読み取ることを防止する,変更

可能な環境で実行されることを許可している。 

5.3 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル2で要求されるタンパー証跡を残す物理セキュリティのメカニズムに加えて,セキ

ュリティレベル3は,暗号モジュール内のSSPに対する無許可のアクセスに対処する要求事項を規定して

いる。セキュリティレベル3で要求される物理セキュリティのメカニズムは,物理アクセスの試み,暗号

モジュールの利用又は変更及び通気口又はスリットを通したプロービングに対して,高い確率で検出及び

応答することを意図している。この物理セキュリティのメカニズムには,暗号モジュールの除去可能なカ

バー・ドアが開けられたときに,CSPを全てゼロ化するタンパー検出・応答をもつ回路,及び頑丈な囲い

の使用を含んでもよい。 

セキュリティレベル3は,IDベースの認証メカニズムを要求する。これは,セキュリティレベル2で規

定される役割ベースの認証メカニズムが提供するセキュリティを強化する。暗号モジュールは,オペレー

タのIDを認証し,かつ,そのオペレータが特定の役割を担って,その役割に応じたサービスの集合を実

行する権限が与えられていることを検証する。 

セキュリティレベル3は,手動で確立された平文のCSPが暗号化され,トラステッドチャネルを利用し

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

入力及び出力に知識分散処理を用いることを要求する。 

セキュリティレベル3は,暗号モジュールが正常に動作する電圧及び温度の範囲を超えた環境条件によ

るセキュリティの危たい(殆)化からも暗号モジュールを保護する。攻撃者は,暗号モジュールの防御を

妨害するために,通常動作範囲を意図的に逸脱させるかもしれない。暗号モジュールは,電圧及び温度の

境界を超えたことを検出しCSPをゼロ化するよう設計された特別な環境故障保護機構をもつか,又は暗号

モジュールのセキュリティを危たい(殆)化するような形で通常動作範囲から外れたときに暗号モジュー

ルが影響を受けない妥当な保証を提供する,厳しい環境故障試験を受けることが要求される。 

暗号モジュールに実装されている非侵襲攻撃に対する対処法は,7.8に規定されるセキュリティレベル3

の試験方法及び基準に従い試験される。 

ソフトウェアモジュールに対して,セキュリティレベル3はこの規格の全ての箇条で提供されておらず,

したがって,ソフトウェアモジュールによって達成可能な最も高い全体セキュリティレベルは,セキュリ

ティレベル2に限定される。 

セキュリティレベル3の暗号モジュールは,自動化された構成管理,詳細設計,下位レベル試験,ベン

ダが提供する認証情報を利用したオペレータ認証などの,追加のライフサイクル保証を要求する。 

5.4 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル4は,この規格の中で定義される最も高いレベルのセキュリティを提供する。この

レベルには,より低いレベルの全ての適切なセキュリティ特性と追加された特性とが含まれる。 

セキュリティレベル4での物理セキュリティのメカニズムは,外部電源が供給されているかどうかにか

かわらず,SSPが暗号モジュールに含まれる場合,全ての許可されていない物理アクセスの試みに対して

検出及び応答することを意図した,暗号モジュールの周りを完全に囲んだ包被での保護を提供する。あら

ゆる方向からの暗号モジュールの囲いへの侵入は,非常に高い確率で検出され,その結果,全ての保護さ

れていないSSPが直ちにゼロ化される。セキュリティレベル4の暗号モジュールは,物理的に保護されて

いない環境下での運用に役立つ。 

セキュリティレベル4は,オペレータの認証に多要素認証の要求事項を導入している。最低でも,これ

は,次の三つの属性のうちの二つを要求する。 

a) 秘密のパスワードのような,知識 

b) 物理鍵又はトークンのような,所持物 

c) 生体情報 

セキュリティレベル4での暗号モジュールは,暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)化し得る

ような形で通常動作範囲を超える場合に影響を受けない妥当な保証をもたらすために,電圧及び温度の境

界を検出し,CSPをゼロ化するよう設計された,特別な環境故障保護機構をもつことが要求されている。 

暗号モジュールに実装されている非侵襲攻撃に対する対処法は,7.8に規定されるセキュリティレベル4

の試験方法及び基準に従い試験される。 

ソフトウェアモジュールに対して,セキュリティレベル4は,この規格の全ての箇条で提供されておら

ず,したがって,ソフトウェアモジュールによって達成できる最も高い全体セキュリティレベルは,セキ

ュリティレベル2に限定される。 

セキュリティレベル4の暗号モジュールの設計は,事前条件及び事後条件の両方並びに機能仕様の間の

対応によって検証される。 

20 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

機能的セキュリティ目標 

この規格で規定されているセキュリティ要求事項は,暗号モジュールのセキュアな設計及び実装に関す

るものである。セキュリティ要求事項は,セキュリティの基準となるレベルから始まって,セキュリティ

目標のレベルが徐々に上がっていく。これらの要求事項は,次のことを暗号モジュールに実現するという,

上位の機能的セキュリティ目標から導き出されている。 

a) センシティブ情報を保護するために,承認されたセキュリティ機能を採用し,正しく実装する。 

b) 許可されていない操作又は許可されていない使用から暗号モジュールを保護する。 

c) その暗号モジュールの内容(CSPを含む。)の許可されていない開示を防ぐ。 

d) その暗号モジュール及び暗号アルゴリズムに対する,許可されていない変更及び検出不能な変更(SSP

に対する,許可されていない変更,置換,挿入,及び消去を含む。)を防ぐ。 

e) その暗号モジュールの動作状態を表示する。 

f) 

承認された動作モードで動作するときに,その暗号モジュールが適切に働くことを保証する。 

g) 暗号モジュールの動作においてエラーを検出し,かつ,これらのエラーによるSSPの危たい(殆)化

を防ぐ。 

h) 暗号モジュールの,適切な設計,適切な配付,及び適切な運用を保証する。 

セキュリティ要求事項 

7.1 

総論 

ここでは,この規格に適合する暗号モジュールが満たさなければならない[01.01]セキュリティ要求事

項を規定している。これらのセキュリティ要求事項は,暗号モジュールの設計及び実装に関連した分野を

網羅している。これらの分野には,次のものがある。 

a) 暗号モジュールの仕様 

b) 暗号モジュールのインタフェース 

c) 役割,サービス及びオペレータ認証 

d) ソフトウェア・ファームウェアセキュリティ 

e) 動作環境 

f) 

物理セキュリティ 

g) 非侵襲セキュリティ 

h) センシティブセキュリティパラメタ管理 

i) 

自己テスト 

j) 

ライフサイクル保証 

k) その他の攻撃への対処 

表1は,それぞれの分野におけるセキュリティ要求事項をまとめたものである。 

暗号モジュールは,箇条7(この箇条)で記述された各分野の要求事項に対して,試験されなければな

らない[01.02]。暗号モジュールは分野ごとにレベル付けされなければならない[01.03]。幾つかの分野で

は,上位のセキュリティレベルの要求事項が下位のセキュリティレベルの要求事項を包含する。これらの

分野では,暗号モジュールは,その項目の要求事項の全てを満足する最も上位のセキュリティレベルに照

らしてレベル付けされる。セキュリティレベルの区別がない分野,すなわち,標準的な要求事項だけから

なる分野においては,全体のセキュリティレベルと同じレベルにレベル付けされる。 

セキュリティ分野ごとの独立したセキュリティレベル付けに加え,暗号モジュールは総合的にセキュリ

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ティレベル付けされる。総合的なセキュリティレベル付けは,各分野で独立に格付けしたセキュリティレ

ベルのうち,最低のセキュリティレベルとなる。 

この規格のセキュリティ要求事項の多くは,附属書A及び附属書Bで要約されている特定の文書化要求

事項を含んでいる。ユーザマニュアル,設置マニュアル,設計仕様及びライフサイクル文書のコピーを含

む全ての文書は,独立した検証及び評価スキームを受ける暗号モジュール用に提供されなければならない

[01.04]。 

附属書C,附属書D,附属書E及び附属書Fは,承認されたセキュリティ機能,承認されたセンシティ

ブセキュリティパラメタ確立方法,承認された認証メカニズム及び非侵襲攻撃への対処の試験方法につい

ての引用規格を提供している。 

表1−セキュリティ要求事項の要約 

セキュリティ 

レベル1 

セキュリティ 

レベル2 

セキュリティ 

レベル3 

セキュリティ 

レベル4 

暗号モジュールの 
仕様 

暗号モジュール,暗号境界,承認されたセキュリティ機能,並びに通常動作モード及び縮退動
作モードの仕様。全てのハードウェア,ソフトウェア及びファームウェアの構成要素を含む暗
号モジュールの記述。全てのサービスは,そのサービスが承認された暗号アルゴリズム,セキ
ュリティ機能又はプロセスを承認された方法で利用していることを示す状態情報を提供する。 

暗号モジュールの 
インタフェース 

必須のインタフェース及び選択可能なインタ
フェース。全てのインタフェースの仕様及び
全ての入出力データパスの仕様。 

トラステッドチャネル。 

役割,サービス,及び
認証 

必須の役割と選択可
能な役割との論理的
な分離,及び必須のサ
ービスと選択可能な
サービスとの論理的
な分離。 

役割ベース又はIDベ
ースのオペレータ認
証。 

IDベースのオペレー
タ認証。 

多要素認証。 

ソフトウェア・ファー
ムウェアセキュリテ
ィ 

承認された完全性技
術,定義されたSFMI,
HFMI及びHSMI。 
 
実行可能コード。 

承認されたディジタ
ル署名又は鍵付きメ
ッセージ認証コード
に基づく完全性テス
ト。 

承認されたディジタル署名に基づく完全性テ
スト。 

動作環境 

変更不可能な動作環
境,限定動作環境又は
変更可能な動作環境。 
 
SSPの制御。 

変更可能な動作環境。 
 
役割ベースの,又は任
意アクセス制御。 
監査メカニズム。 

物理セキュリティ 

製品グレードの部品。 タンパー証跡。 

 
不透明なカバー又は
囲い。 

カバー及びドアに対
してのタンパー検
出・応答。強固な囲
い又はコーティン
グ。直接的なプロー
ビングからの保護。
EFP又はEFT。 

タンパー検出・応答が
可能な包被。EFP。故
障注入への対処。 

非侵襲セキュリティ 

暗号モジュールは,附属書Fで規定されている非侵襲攻撃に対処するよう設計されている。 

附属書Fで規定されている対処技術の文書化
及び有効性。 

対処法試験。 

対処法試験。 

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表1−セキュリティ要求事項の要約(続き) 

セキュリティ 

レベル1 

セキュリティ 

レベル2 

セキュリティ 

レベル3 

セキュリティ 

レベル4 

SSP管理 

乱数ビット生成器,SSP生成,確立,入出力,格納及びゼロ化。 

承認された方法を利用した,自動化されたSSP配送又はSSP共有。 

手動で確立されたSSPは,平文の形式で入力
又は出力されてもよい。 

手動で確立されたSSPは,暗号化された形式
か,トラステッドチャネル経由で知識分散処
理を利用して入力又は出力されてもよい。 

自己テスト 

動作前自己テスト:ソフトウェア・ファームウェア完全性テスト,バイパステスト,又は重要
機能テスト。 

条件自己テスト:暗号アルゴリズムテスト,鍵ペア整合性テスト,ソフトウェア・ファームウ
ェアのロードテスト,手動入力テスト,条件バイパステスト及び重要機能テスト。 

ライフサ
イクル保
証 

構成管理 暗号モジュール,部品,及び文書用の構成管

理システム。ライフサイクルを通じて,各々
一意に識別及び追跡される。 

自動化された構成管理システム。 

設計 

提供する全てのセキュリティ関連サービスの試験を許すよう設計された暗号モジュール。 

FSM 

有限状態モデル。 

ライフサ
イクル保
証 

開発 

注釈付きソースコー
ド,回路図又はHDL。 

ソフトウェアの高級言語。ハードウェアの上
位記述言語。 

暗号モジュールの構
成要素への入力時の
事前条件,及び構成要
素が完了した場合に
真であると期待され
る事後条件を伴う注
釈付き文書。 

テスト 

機能試験。 

下位レベル試験。 

配付及び
運用 

初期化手順。 

配付手順。 

ベンダから提供され
た認証情報を用いた
オペレータ認証。 

ガイダン
ス 

管理者ガイダンス及び非管理者ガイダンス。 

その他の攻撃への対
処 

試験可能な要求事項は用意されていない攻撃への対処の仕様。 

試験可能な要求事項
を備えた,攻撃への対
処の仕様。 

7.2 

暗号モジュールの仕様 

7.2.1 

暗号モジュールの仕様の一般要求事項 

暗号モジュールは,最低限,承認された暗号アルゴリズム,セキュリティ機能又はプロセスを用いた,

定義された暗号サービスを実装し,かつ,定義された暗号境界内に含まれる,ハードウェア,ソフトウェ

ア,ファームウェア,又はそれらの組合せの集合でなければならない[02.01]。 

A.2.2で規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[02.02]。 

7.2.2 

暗号モジュールの種類 

暗号モジュールは,次のモジュールの種類の一つとして定義されなければならない[02.03]。 

a) ハードウェアモジュールは,その暗号境界がハードウェアで区切られている暗号モジュールである。

この暗号境界内には,ファームウェア及び/又はソフトウェアが含まれていてもよく,そのファーム

ウェア及び/又はソフトウェアはオペレーティングシステムを含んでもよい。 

b) ソフトウェアモジュールは,その暗号境界が,変更可能な動作環境で実行されるソフトウェアだけの

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(一つ以上の)構成要素で区切られている暗号モジュールである。ソフトウェアが実行される動作環

境のコンピューティングプラットフォーム及びオペレーティングシステムは,定義されたソフトウェ

アモジュールの境界の外側にある。 

c) ファームウェアモジュールは,その暗号境界が,限定動作環境又は変更不可能な動作環境で実行され

るファームウェア構成要素だけで区切られている暗号モジュールである。ファームウェアが実行され

る動作環境のコンピューティングプラットフォーム及びオペレーティングシステムは,定義されたフ

ァームウェアモジュールの境界の外側にあるが,ファームウェアモジュールに明示的に結び付けられ

ている。 

d) ハイブリッドソフトウェアモジュールは,その暗号境界が,ソフトウェア構成要素とハードウェア構

成要素との複合体で区切られている暗号モジュールである。このソフトウェア構成要素はそのハード

ウェア構成要素には含まれない。ソフトウェアが実行される動作環境のコンピューティングプラット

フォーム及びオペレーティングシステムは,定義されたハイブリッドソフトウェアモジュールの境界

の外側にある。 

e) ハイブリッドファームウェアモジュールは,その暗号境界が,ファームウェア構成要素とハードウェ

ア構成要素との複合体で区切られている暗号モジュールである。このファームウェア構成要素はその

ハードウェア構成要素には含まれない。ファームウェアが実行される動作環境のコンピューティング

プラットフォーム及びオペレーティングシステムは,定義されたハイブリッドファームウェアモジュ

ールの境界の外側にあるが,ハイブリッドファームウェアモジュールに明示的に結び付けられている。 

変更可能な動作環境において実行されるソフトウェアモジュールについては,7.7及び7.8に規定されて

いる物理セキュリティ要求事項及び非侵襲セキュリティ要求事項の適用は任意である。 

ハードウェアモジュール及びファームウェアモジュールに対して,7.7及び7.8に規定されている物理セ

キュリティ要求事項及び非侵襲セキュリティ要求事項が適用されなければならない[02.04]。 

ハイブリッドモジュールについては,そのソフトウェア構成要素及びファームウェア構成要素は,7.5

及び7.6の全ての適用可能な要求事項を満たさなければならない[02.05]。ハードウェアの構成要素は,

7.7及び7.8の全ての適用可能な要求事項を満たさなければならない[02.06]。 

7.2.3 

暗号境界 

7.2.3.1 

共通の暗号境界の要求事項 

暗号境界は,暗号モジュールの全ての構成要素の境界を確立する明確に定義された境界線(すなわち,

ハードウェア構成要素,ソフトウェア構成要素及びファームウェア構成要素の集合)で構成されなければ

ならない[02.07]。この規格の要求事項は,暗号モジュールの暗号境界内の全てのアルゴリズム,セキュ

リティ機能,プロセス及び構成要素に適用されなければならない[02.08]。暗号境界は,最低限,暗号モ

ジュールの全てのセキュリティ関連のアルゴリズム,セキュリティ機能,プロセス及び構成要素(すなわ

ち,この規格の適用範囲内のセキュリティ関連のもの)を包含しなければならない[02.09]。セキュリテ

ィに関連しないアルゴリズム,セキュリティ機能,プロセス又は構成要素は,暗号境界内に含まれてもよ

い。セキュリティに関連しないアルゴリズム,セキュリティ機能,プロセス又は構成要素は,承認された

動作モードで使用されてもよい。承認された動作モードで使用されるセキュリティに関連しないアルゴリ

ズム,セキュリティ機能,プロセス又は構成要素は,暗号モジュールの承認された動作を妨害又は危たい

(殆)化しないように実装されなければならない[02.10]。 

定義された暗号モジュールの名称は,暗号境界内の構成要素の組合せを示すものでなければならず,暗

号境界外の構成要素又は製品を示すものであってはならない[02.11]。暗号モジュールは,最低限,異な

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る個々のハードウェア,ソフトウェア及び/又はファームウェアの構成要素を表す,特定のバージョン管

理情報をもたなければならない[02.12]。 

暗号境界内のハードウェア,ソフトウェア及び/又はファームウェアの構成要素は,この規格の要求事

項の適用から除外されてもよい。除外されるハードウェア,ソフトウェア及び/又はファームウェアの構

成要素は,暗号モジュールの承認されたセキュアな動作を妨害又は危たい(殆)化しないように実装され

なければならない[02.13]。除外されるハードウェア,ソフトウェア又はファームウェアが,規定されな

ければならない[02.14](附属書A)。 

7.2.3.2 

暗号境界の定義 

ハードウェアモジュールの暗号境界は,次の範囲のものを定め,識別しなければならない[02.15]。 

a) ハードウェアの構成要素の集合(次のものを含んでもよい。) 

1) 回路基板,半導体基板,又は構成要素の間を相互に接続する物理的配線を提供する取付面を含む,

物理的構造物 

2) セミカスタムIC,カスタムIC,汎用IC,プロセッサ,メモリ,電源,コンバータなどの能動回路

部品 

3) 囲い,封止材又は被覆材料,コネクタ及びインタフェースのような物理的構造物 

4) ファームウェア(オペレーティングシステムを含んでもよい。) 

5) 上記に記載されていない他の構成要素のタイプ 

ソフトウェアモジュールの暗号境界は,次の範囲のものを定め,識別しなければならない[02.16]。 

a) 実行ファイル又は暗号モジュールを構成するファイルの集合 

b) メモリに保存され,一つ以上のプロセッサによって実行される暗号モジュールのインスタンス 

ファームウェアモジュールの暗号境界は,次の範囲のものを定め,識別しなければならない[02.17]。 

a) 実行ファイル又は暗号モジュールを構成するファイルの集合 

b) メモリに保存され,一つ以上のプロセッサによって実行される暗号モジュールのインスタンス 

ハイブリッドモジュールの暗号境界は,次を満たさなければならない[02.18]。 

a) ハイブリッドモジュールの暗号境界は,ハードウェア構成要素の境界とソフトウェア構成要素又はフ

ァームウェア構成要素の境界との複合体である。 

b) ハイブリッドモジュールの暗号境界は,各構成要素の全てのポート及びインタフェースを含む。 

ハードウェア構成要素は,その中に組込みソフトウェア又はファームウェアを含んでもよい。 

7.2.4 

動作モード 

7.2.4.1 

動作モードの一般要求事項 

オペレータは,承認された動作モードで暗号モジュールを操作できなければならない[02.19]。承認さ

れた動作モードは,承認された暗号アルゴリズム,セキュリティ機能又はプロセスを利用する一つ以上の

サービス及び7.4.3に規定されたサービス又はプロセスを含むサービスの集合と定義されなければならな

い[02.20]。 

承認されていない,暗号アルゴリズム,セキュリティ機能,若しくはプロセス,又は7.4.3に規定されて

いないその他のサービスは,その承認されていない暗号アルゴリズム又はセキュリティ機能が承認された

プロセスの一部であって,かつ,承認されたプロセス動作のセキュリティに影響しない場合を除き,承認

された動作モードでオペレータによって利用されてはならない[02.21]。例えば,承認されていない暗号

アルゴリズム,又は承認されていない方法によって生成された鍵をデータ又はCSPを難読化するために使

用してもよいが,それによってデータ又はCSPが保護されたとはみなされない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.2.4.2 

通常動作 

通常動作においては,アルゴリズム,セキュリティ機能,サービス又はプロセスの全体が利用可能及び

/又は設定可能である。 

CSPは,承認されたサービス及び動作モードと承認されていないサービス及び動作モードとの間で排他

的でなければならない[02.22](例えば,CSPは動作モード間で共有されない。また,CSPは他のモード

からアクセスされない。)。ただし,承認されたRBGのシードが承認されていない動作モードからアクセ

スできない場合に限り,そのRBGの出力は,そのシードをゼロ化することなしに,承認されていないア

ルゴリズム,セキュリティ機能又はプロセスに提供されてもよい。 

暗号モジュールのセキュリティポリシは,定義された(承認された及び承認されていない)動作モード

ごとに提供されるサービスの全体を定義しなければならない[02.23]。 

全てのサービスは,そのサービスが承認された暗号アルゴリズム,セキュリティ機能又はプロセスを承

認された方法で利用する場合,及び7.4.3で規定されているようなサービス又はプロセス利用する場合,

インジケータを提供しなければならない[02.24]。 

7.2.4.3 

縮退動作 

暗号モジュールは,そのモジュールがエラー状態を遷移したときに縮退機能に対応するよう,設計して

もよい。暗号モジュールが縮退動作するためには,次が適用されなければならない[02.25]。 

a) 縮退動作には,エラー状態から遷移しなければならない[02.26]。 

b) 暗号モジュールは,再構成され縮退動作に遷移したとき,状態情報を提供しなければならない[02.27]。 

c) 故障したメカニズム又は機能は,隔離されなければならない[02.28]。 

d) 縮退動作に遷移した後に,暗号アルゴリズムの使用に先立ち,全ての暗号アルゴリズム条件自己テス

トが,実行されなければならない[02.29]。 

e) サービスは,動作しないアルゴリズム,セキュリティ機能又はプロセスの使用が試みられた場合,そ

れを示すインジケータを提供しなければならない[02.30]。 

暗号モジュールが失敗することなく全ての動作前自己テスト及び条件自己テストに成功するまで,その

暗号モジュールは,縮退動作にとどまらなければならない[02.31]。暗号モジュールが動作前自己テスト

に失敗した場合,その暗号モジュールは縮退動作に遷移してはならない[02.32]。 

7.3 

暗号モジュールインタフェース 

7.3.1 

暗号モジュールインタフェースの一般要求事項 

暗号モジュールにおいては,全ての論理的情報の流れが,その暗号境界の入力点及び出力点として識別

される物理アクセスポイント及び論理インタフェースだけに限定されなければならない[03.01]。暗号モ

ジュールの全ての論理インタフェースは,(同一のポートを介して入力データの入力及び出力データの出

力を行うなど,)一つの物理ポートを共有してもよいし,又は(シリアルポートとパラレルポートとの両方

を介して入力データが入力されるなど,)一つ以上の物理ポートに分かれていてもよいが,互いに区別され

ていなければならない[03.02]。暗号モジュールのソフトウェア構成要素のアプリケーションプログラム

インタフェース(API)は,一つ以上の論理インタフェースとして定義されてもよい。 

A.2.3に規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[03.03]。 

7.3.2 

インタフェースのタイプ 

a) ハードウェアモジュールインタフェース(HMI):ハードウェアモジュールのサービスを要求するた

めに使われるインタフェースの全体であって,そのハードウェアモジュールの暗号境界で,要求され

たサービスの一部として,入出力されるパラメタを含む。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b) ソフトウェア・ファームウェアモジュールインタフェース(SFMI):ソフトウェア又はファームウェ

アモジュールのサービスを要求するために使用されるインタフェースの全体であって,その暗号モジ

ュールの暗号境界で,要求されたサービスの一部として,入出力されるパラメタを含む。 

c) ハイブリッドソフトウェアモジュールインタフェース又はハイブリッドファームウェアモジュール

インタフェース(HSMI又はHFMI):ハイブリッドソフトウェアモジュール又はハイブリッドファー

ムウェアモジュールのサービスを要求するために使われるインタフェースの全体であって,その暗号

モジュールの暗号境界で,要求されたサービスの一部として,入出力されるパラメタを含む。 

7.3.3 

インタフェースの定義 

暗号モジュールは,次の五つのインタフェースをもたなければならない[03.04](“入力”及び“出力”

とは,暗号モジュールから見たときの“入力”及び“出力”である。)。 

a) データ入力インタフェース 暗号モジュールに入力され処理される(制御入力インタフェースを介し

て入力される制御データを除く)全てのデータ(平文データ,暗号文データ,SSP及び別の暗号モジ

ュールからの状態情報を含む。)は,“データ入力”インタフェースを介して入力されなければならな

い[03.05]。暗号モジュールは,自己テストを実行している間に,データ入力インタフェースを介し

てデータを受け付けてもよい(7.10)。 

b) データ出力インタフェース 暗号モジュールから出力される(状態出力インタフェースを介しての状

態データ出力及び制御出力インタフェースを介しての制御データ出力を除く)全てのデータ(平文デ

ータ,暗号文データ及びSSPを含む。)は,“データ出力”インタフェースから出力されなければなら

ない[03.06]。手動入力,動作前自己テスト,ソフトウェア・ファームウェアのロード,及びゼロ化

を実行している間,又は暗号モジュールがエラー状態にある場合には,“データ出力”インタフェース

を介する全てのデータ出力は禁止されなければならない[03.07]。 

c) 制御入力インタフェース 暗号モジュールの動作を制御するために使用される全ての入力コマンド,

信号(例えば,クロック入力)及び制御データ(関数呼出し及びスイッチ,ボタン,並びにキーボー

ドのような手動制御を含む。)は,“制御入力”インタフェースを介して入力されなければならない

[03.08]。 

d) 制御出力インタフェース 暗号モジュールの動作の状態を制御又は伝えるために使用される全ての出

力コマンド,信号及び制御データ(例えば,他の暗号モジュールに対する制御コマンド)は,“制御出

力”インタフェースを介して出力されなければならない[03.09]。暗号モジュールがエラー状態にあ

るときには,セキュリティポリシに,例外が規定されており,かつ,文書化されている場合を除き,

“制御出力”インタフェースを介する全ての制御出力は禁止されなければならない[03.10]。 

e) 状態出力インタフェース 暗号モジュールの状態を示すために使用される全ての出力信号,インジケ

ータ(例えば,エラーインジケータ)及び状態データ[戻り値,及び視覚的(ディスプレイ,インジ

ケータランプ),聴覚的(ブザー,トーン,ベル音),機械的(振動)などの物理的な表示を含む。]は,

“状態出力”インタフェースを介して出力されなければならない[03.11]。状態出力は,明示的でも

暗黙的でもよい。 

ソフトウェアモジュールを除く全ての暗号モジュールは,次のインタフェースももたなければなら

ない[03.12]。 

f) 

電力インタフェース 暗号モジュールに入力される全ての外部電力は,電力インタフェースから入力

されなければならない[03.13]。暗号モジュールの暗号境界内に全ての電力が(内部バッテリなどに

よって)内部的に供給又は維持されているときには,電力インタフェースは必要とされない。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

暗号モジュールは,入力についてはデータ,制御情報及び電力を区別し,出力についてはデータ,制御

情報及び状態情報を区別しなければならない[03.14]。 

暗号モジュールの仕様は,入力データ及び制御情報のフォーマットを,全ての可変長入力の長さ制限を

含めて,明確に規定しなければならない[03.15]。 

7.3.4 

トラステッドチャネル 

トラステッドチャネルは,保護されていない,平文のCSP,鍵要素及び認証データをセキュアに通信す

るために,暗号モジュールと,送信者又は受信者との間で確立される通信リンクである。暗号モジュール

における定義された入出力ポートと,意図した送信者又は受信者との間の通信リンクに沿って,好ましく

ないオペレータ,エンティティ,プロセス又は他のデバイスによる,傍受,及び物理的タンパー又は論理

的タンパーを防ぐ。 

セキュリティレベル1及び2 

セキュリティレベル1及び2では,トラステッドチャネルに関する要求事項はない。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル3では,次が適用される。 

a) 暗号モジュールと送信者又は受信者のエンドポイントとの間で,保護されていない平文のCSP,鍵要

素及び認証データを送信するためには,暗号モジュールはトラステッドチャネルを実装しなければな

らない[03.16]。 

注記 CSPが平文の秘密鍵又は平文のプライベート鍵である場合の要求事項が,[09.21]に記載され

ている。 

b) トラステッドチャネルは,通信リンク上での許可されていない変更,置換及び開示を防止しなければ

ならない[03.17]。 

c) トラステッドチャネルのために使用される物理ポートは,他の全てのポートから物理的に分離されて

いなければならない[03.18],又はトラステッドチャネルのために使用される論理インタフェースは,

他の全てのインタフェースから論理的に分離されていなければならない[03.19]。 

d) IDベースの認証は,トラステッドチャネルを利用する全てのサービスのために用いられなければなら

ない[03.20]。 

e) トラステッドチャネルが使用中である場合,それを示す状態インジケータが提供されなければならな

い[03.21]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル3の要求事項に加えて,セキュリティレベル4では,IDベースの多要素認証は,ト

ラステッドチャネルを利用する全てのサービスのために用いられなければならない[03.22]。 

7.4 

役割,サービス及びオペレータ認証 

7.4.1 

役割,サービス及びオペレータ認証の一般要求事項 

暗号モジュールは,オペレータに対して許可された役割及びそれぞれの役割に対応するサービスをサポ

ートしなければならない[04.01]。単一のオペレータは,複数の役割を担ってもよい。暗号モジュールが,

複数のオペレータによる同時利用をサポートする場合には,その暗号モジュールは,それぞれのオペレー

タによって担われる役割及びそれに対応するサービスの区分けを,内部的に維持しなければならない

[04.02]。オペレータは,CSP及びPSPが変更,開示,又は置換されないサービス(例えば,状態の表示,

自己テスト,暗号モジュールのセキュリティに影響を与えない他のサービス)を実行するときには,許可

された役割を担う必要がない。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

暗号モジュールにアクセスするオペレータを認証するために,並びにオペレータが要求された役割を担

うことが許可されていること及び役割の中のサービスを実行することが許可されていることを検証するた

めに,暗号モジュール内で認証メカニズムが必要となることがある。 

A.2.4に規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[04.03]。 

7.4.2 

役割 

暗号モジュールは,最低限,クリプトオフィサ役割をサポートしなければならない[04.04]。クリプト

オフィサ役割は,暗号関連の初期化又は管理機能,及び一般的なセキュリティサービス(例えば,暗号モ

ジュールの初期化,CSP・PSPの管理,監査機能)を実行するときに担われなければならない[04.05]役

割である。 

暗号モジュールは,ユーザ役割をサポートしてもよい。暗号モジュールがユーザ役割をサポートする場

合,ユーザ役割は,暗号操作,その他の承認されたセキュリティ機能を含む,一般的なセキュリティサー

ビスを実行するときに担われなければならない[04.06]役割である。 

暗号モジュールは,メンテナンス役割をサポートしてもよい。メンテナンス役割は,物理メンテナンス

及び/又は論理メンテナンスサービス[例えば,サービスカバーを開けること,組込み自己テスト(BIST)

のようなある種の診断の実行]のときに担われる役割である。メンテナンス役割を担わせる場合,又はメ

ンテナンス役割を解く場合には,全ての保護されていないSSPはゼロ化されなければならない[04.07]。 

暗号モジュールは,上記三つの役割に加え,その他の役割をサポートしてもよい。 

7.4.3 

サービス 

7.4.3.1 

サービスの一般要求事項 

暗号モジュールが実行できるサービス,動作,又は機能は,もれなく“サービス”としなければならな

い[04.08]。サービス入力は,特定のサービス,動作,又は機能を開始又は利用する暗号モジュールへの

全てのデータ入力又は制御入力から構成されなければならない[04.09]。サービス出力は,サービス入力

によって開始又は利用されるサービス,動作,又は機能から生じる全てのデータ出力及び状態出力から構

成されなければならない[04.10]。サービス入力は,サービス出力をもたらさなければならない[04.11]。 

暗号モジュールは,オペレータに次のサービスを提供しなければならない[04.12]。 

a) 暗号モジュールのバージョン情報の表示 暗号モジュールは,名称又はその暗号モジュールの識別子,

及び認証記録と関連付けられるバージョン情報(例えば,ハードウェア,ソフトウェアの及び/又は

ファームウェアのバージョン情報)を出力しなければならない[04.13]。 

b) 状態の表示 暗号モジュールは,現在の状態を出力しなければならない[04.14]。これには,サービ

スの要求に対応した状態インジケータの出力を含んでもよい。 

c) 自己テストの実行 暗号モジュールは,7.10.2で規定されているように,動作前自己テストを開始及

び実行しなければならない[04.15]。 

d) 承認されたセキュリティ機能の実行 暗号モジュールは,7.2で規定されているように,承認された動

作モードで使用されている少なくとも一つの承認されたセキュリティ機能を実行しなければならない

[04.16]。 

e) ゼロ化の実行 暗号モジュールは,7.9.7で規定されているように,パラメタのゼロ化を実行しなけれ

ばならない[04.17]。 

暗号モジュールは,上記に規定された五つのサービスに加え,承認されているいないにかかわらず,そ

の他のサービス,動作又は機能を提供してもよい。特定のサービスは,複数の役割に提供されてもよい(例

えば,鍵入力サービスは,ユーザ役割及びクリプトオフィサ役割に提供されてもよい。)。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.4.3.2 

バイパス機能 

バイパス機能は,暗号機能及び暗号プロセスを部分的又は全体的にう(迂)回するサービスの機能であ

る。暗号モジュールが,暗号的に保護された形式で特定のデータ又は状態を出力でき,しかも(暗号モジ

ュールの設定又はオペレータの操作の結果として)保護されていない形式でもデータ又は状態を出力でき

る場合,バイパス機能が定義されなければならない[04.18]。 

暗号モジュールが,バイパス機能を実装している場合,次が適用される。 

a) オペレータは,バイパス機能を構成する前に,許可された役割を担わなければならない[04.19]。 

b) 単一のエラーによって平文データが不用意にバイパスされることを防ぐために,バイパス機能を活性

化するときには,独立した二つの内部動作が要求されなければならない[04.20]。それらの独立した

二つの内部動作は,ソフトウェア及び/又はハードウェアの,バイパス機能をつかさどる振る舞いを

変更しなければならない[04.21](例えば,二つの異なるソフトウェア又はハードウェアのフラグが

セットされる。そのうち一つのフラグのセットは,ユーザ操作によるものでもよい。)。 

c) 暗号モジュールは,バイパス機能が次のいずれかの状態にあるかを表示しなければならない[04.22]。 

1) バイパス機能が活性化されておらず,暗号モジュールが暗号処理を行う(例えば,平文データが暗

号化される)サービスだけを提供している状態。 

2) バイパス機能が活性化しており,暗号モジュールが暗号処理を行わない(例えば,平文データが暗

号化されない)サービスだけを提供している状態。 

3) バイパス機能の活性化と非活性化とが交互に起こり,暗号モジュールが,暗号処理を行うサービス

と暗号処理を行わないサービスとの双方を提供している状態(例えば,複数の通信チャネルをもつ

暗号モジュールの場合,それぞれのチャネルの設定に応じて,平文データが暗号化されるかされな

いかが決まる。)。 

7.4.3.3 

暗号出力の自動開始機能 

暗号出力の自動開始機能は,外部オペレータの要求なしに,暗号処理,その他の承認されたセキュリテ

ィ機能又はSSP管理技術を実行する暗号モジュールの機能である。暗号出力の自動開始機能は,クリプト

オフィサによって設定されなければならず[04.23],暗号モジュールがリセット,リブート又は電源再投

入された場合でも引き続きこの設定を維持してもよい。 

暗号モジュールが,暗号出力の自動開始機能を実装する場合,次が適用される。 

a) 単一のエラーによって不用意に出力されることを防ぐために,暗号出力の自動開始機能を活性化する

ときには,独立した二つの内部動作が要求されなければならない[04.24]。それらの独立した二つの

内部動作は,ソフトウェア及び/又はハードウェアの,自動開始機能をつかさどる振る舞いを変更し

なければならない[04.25](例えば,二つの異なるソフトウェア又はハードウェアのフラグがセット

されるものであって,そのうち一つのフラグのセットは,ユーザ操作によるものでもよい。)。 

b) 暗号モジュールは,その暗号出力の自動開始機能が活性化されているかどうかを表示しなければなら

ない[04.26]。 

7.4.3.4 

ソフトウェア・ファームウェアのロード 

暗号モジュールが,外部ソースからソフトウェア又はファームウェアをロードする機能をもっている場

合には,次の要求事項が適用されなければならない[04.27]。 

a) 認証を維持するために,ロードされるソフトウェア又はファームウェアは,事前に認証機関によって

認証されなければならない[04.28]。 

b) データ出力インタフェースを介する全てのデータ出力は,ソフトウェア・ファームウェアのロード中

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及びロードテストに成功するまで禁止されなければならない[04.29]。 

c) 7.10.3.4に規定されているソフトウェア・ファームウェアロードテストは,ロードされたコードが実

行可能になる前に実施されなければならない[04.30]。 

d) その暗号モジュールは,7.10.2で規定されている動作前自己テストの成功するまで,ロードされたか

又は変更された,承認されたセキュリティ機能の実行を保留しなければならない[04.31]。 

e) その暗号モジュールのバージョン情報は,新しくロードされたソフトウェア又はファームウェアの追

加及び/又はアップデートを示すために変更されなければならない[04.32](7.4.3)。 

新しいソフトウェア又はファームウェアをロードすることがイメージの完全な置換えである場合,これ

は,認証を維持するためには認証機関による認証を要求するであろう全く新しい暗号モジュールとして取

り扱われなければならない[04.33]。その新しいソフトウェア又はファームウェアのイメージは,パワー

オンリセットを通じた暗号モジュールの遷移の後にだけ実行されなければならない[04.34]。全てのSSP

は,新しいイメージの実行前にゼロ化されなければならない[04.35]。 

7.4.4 

オペレータ認証 

暗号モジュールにアクセスするオペレータを認証するために,並びにオペレータが要求された役割を担

うことが許可されていること及び役割の中のサービスを実行することが許可されていることを検証するた

めに,暗号モジュール内で認証メカニズムが必要となることがある。次のタイプのメカニズムが,暗号モ

ジュールへのアクセスを制御するために使用される。 

a) 役割ベースの認証 暗号モジュールにおいて役割ベースの認証メカニズムがサポートされている場合

には,暗号モジュールは,オペレータが一つ以上の役割を明示的又は暗黙的に選択することを要求し

なければならず[04.36],また,暗号モジュールは,オペレータが選択された役割(又は役割の集合)

を担っていることを認証しなければならない[04.37]。暗号モジュールは,オペレータ個々のIDを検

証することは要求されない。役割の選択及び選択された役割を担うことの認証は,同時に行われても

よい。暗号モジュールが,オペレータに役割を変更することを許可する場合には,暗号モジュールは,

そのオペレータが以前認証されていないいかなる役割を担うことに対しても認証をしなければならな

い[04.38]。 

b) IDベースの認証 暗号モジュールにおいてIDベースの認証メカニズムがサポートされている場合に

は,暗号モジュールはオペレータが個別にかつ独自に識別されることを要求しなければならない

[04.39]。また,オペレータによって明示的又は暗黙的に一つ以上の役割が選択されることを要求し

なければならず[04.40],並びにオペレータのID及びオペレータが選択された役割又は役割の集合を

担うことの許可を検証しなければならない[04.41]。オペレータのIDの認証,役割の選択及び選択さ

れた役割を担うことの許可は,同時に行われてもよい。暗号モジュールがオペレータに役割を変更す

ることを許可する場合には,暗号モジュールは,以前に許可されていないいかなる役割を担うために,

識別されたオペレータの許可を検証しなければならない[04.42]。 

暗号モジュールは,認証されたオペレータに対して,許可された役割の中で許容されるサービスの全て

を実行することを許してもよいし,それぞれのサービス又は異なるサービスの集合に対して個別の認証を

要求してもよい。オペレータは,暗号モジュールが,リセット,リブート,電源再投入された場合には,

再度認証されるように要求しなければならない[04.43]。 

サポートする認証メカニズムを実装するために様々なタイプの認証データを暗号モジュールが必要とす

ることがある。認証データの例を次に示す(ただし,これらに限定するものではない。)。 

a) パスワード,PIN,暗号鍵,又は同等の知識 

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b) 物理鍵,トークン,又は同等の所持物 

c) 生体情報 

暗号モジュール内の認証データは,許可されていない使用,開示,変更及び置換から保護されなければ

ならない[04.44]。承認されたセキュリティ機能は,認証メカニズムの一部として使用されてもよい。 

認証メカニズムの初期化では,特別な扱いを必要とすることがある。暗号モジュールが最初にアクセス

されるときに,オペレータを認証するために必要な認証データが格納されていない場合には,暗号モジュ

ールへのアクセスを制御し,認証メカニズムを初期化するために,(手続による制御,又は工場設定値,又

はデフォルトの認証データの使用などの)他の許可された方法が用いられなければならない[04.45]。デ

フォルトの認証データを用いて,暗号モジュールへのアクセスを制御する場合には,デフォルトの認証デ

ータは,最初の認証時に,置換されなければならない[04.46]。このデフォルトの認証データは,ゼロ化

要求事項(7.9.7)を満たす必要はない。 

認証メカニズムは,複数の異なる認証特性をもつメカニズムが7.4.4の要求事項を協同して満たすもので

あってもよい。暗号モジュールがオペレータを認証するためにセキュリティ機能を使用する場合,それら

のセキュリティ機能は,承認されたセキュリティ機能でなければならない[04.47]。 

a) 暗号モジュールは,附属書Eで参照されている承認された認証メカニズムを実装しなければならない

[04.48]。 

b) 承認された認証メカニズムの強度は,セキュリティポリシ(附属書B)で規定されなければならない

[04.49]。 

c) 承認された認証メカニズムを1回試行する場合において,暗号モジュールは,定められた認証強度目

標を満たさなければならない[04.50]。承認された認証メカニズムを1分間に複数回試行する場合に

おいて,暗号モジュールは,定められた認証強度目標を達成しなければならない[04.51]。 

d) 承認された認証メカニズムは,文書化された(パスワードの長さ制限などの)手続による制御又はセ

キュリティ規則に依存してはならず,暗号モジュールの実装によって満たされなければならない

[04.52]。 

e) セキュリティレベル2のソフトウェアの暗号モジュールにおいては,認証メカニズムは,オペレーテ

ィングシステムによって実装されていてもよい。その場合には,オペレーティングシステムによって

実装されている認証メカニズムは,7.4.4の要求事項を満たさなければならない[04.53]。 

f) 

オペレータへの認証データのフィードバックは,認証処理の間は,分からないようにしなければなら

ない[04.54](例えば,パスワード入力のときに文字列が表示されない。)。実際の認証データの代わ

りに,意味のない文字を表示してもよい。 

g) 認証の試行の間,オペレータに提供されるフィードバックによって,認証メカニズムの強度が要求さ

れる認証強度を下回らないようにしなければならない[04.55]。 

セキュリティレベル1 

セキュリティレベル1において,暗号モジュールは,暗号モジュールへのアクセスを制御するために認

証メカニズムを用いることは要求されない。暗号モジュールが,認証メカニズムをサポートしない場合に

は,暗号モジュールは,オペレータが一つ以上の役割を明示的又は暗黙的に選択することを要求しなけれ

ばならない[04.56]。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル2において,暗号モジュールは,暗号モジュールへのアクセスを制御するために,

最低限,役割ベースの認証を採用しなければならない[04.57]。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

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セキュリティレベル3 

セキュリティレベル3において,暗号モジュールは,暗号モジュールへのアクセスを制御するために,

IDベースの認証メカニズムを採用しなければならない[04.58]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル4において,暗号モジュールは,暗号モジュールへのアクセスを制御するために,

IDベースの多要素認証メカニズムを採用しなければならない[04.59]。 

7.5 

ソフトウェア・ファームウェアセキュリティ 

暗号モジュールは,ハードウェアモジュール,ソフトウェアモジュール,ファームウェアモジュール又

はハイブリッドソフトウェアモジュールとして定義される(7.2.2)。7.5の要求事項が,暗号モジュールの

ソフトウェア及びファームウェアの構成要素に適用されなければならない[05.01]。 

完全にハードウェアだけによって実装されている暗号モジュールは,この規格の7.5の要求事項の対象

ではない。 

公開検証鍵又は鍵付きメッセージ認証鍵は,暗号モジュールのコード内に存在してもよく,SSPとみな

されない。 

A.2.5に規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[05.02]。 

セキュリティレベル1 

セキュリティレベル1において,次の要求事項が,暗号モジュールのソフトウェア及びファームウェア

の構成要素に適用されなければならない[05.03]。 

a) 全てのソフトウェア及びファームウェアは,インストールに先立つ変更なしに,この規格の要求事項

を満たす形式でなければならない[05.04](7.11.7)。 

b) 暗号モジュールの定義された暗号境界内の全てのソフトウェア及びファームウェア構成要素に,次の

いずれかの方法の一つ以上を用いて,承認された完全性技術を用いた暗号メカニズムを適用しなけれ

ばならない[05.05]。 

1) 暗号モジュール自身による方法 

2) 承認された動作モードで動作している別の認証された暗号モジュールによる方法 

c) 完全性テストが失敗した場合は,暗号モジュールは,エラー状態に遷移しなければならない[05.06]。

承認された完全性技術は,単一の包括メッセージ認証コード若しくは包括署名,又は,複数の個別メ

ッセージ認証コード若しくは個別署名から構成されてもよいが,一つでもメッセージ認証コード又は

署名の検証失敗があった場合,暗号モジュールはエラー状態に遷移しなければならない[05.07]。完

全性技術のメカニズムの期待される出力はデータとみなされ,それ自体は完全性技術の対象ではない。

暗号モジュールのソフトウェア又はファームウェアの完全性テストの間に生成される一時的な値は,

完全性テストが完了次第,ゼロ化されなければならない[05.08]。 

d) オペレータは,HMI,SFMI,HSMI又はHFMIサービスを介して,承認された完全性技術をオンデマ

ンドで実行できなければならない[05.09](7.3.2)。 

e) 暗号モジュール及びサービス(7.4.3)の全てのデータ入力及び制御入力,並びに全てのデータ出力,

制御出力及び状態出力(7.3.3に規定)は,定義されたHMI,SFMI,HFMI又はHSMIを介して入出

力されなければならない[05.10]。 

f) 

ソフトウェアモジュール又はファームウェアモジュールにおいて,ロードされるソフトウェア又はフ

ァームウェアが,認証された暗号モジュールのイメージを完全に置換又は上書きする場合,その置換

又は上書き後のイメージは,新しいモジュールを構成するため,ソフトウェア・ファームウェアロー

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

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ドテストの適用対象外(NA)である。 

ロードされるソフトウェア又はファームウェアが認証された暗号モジュールに,1)関係付けられる

場合,2)結び付けられる場合,3)認証された暗号モジュールを変更する場合,4)若しくは認証され

た暗号モジュールの実行に必要であるが,認証された暗号モジュールの完全な置換又は上書きではな

い場合,ソフトウェア・ファームウェアロードテストは適用され,その認証されたモジュールによっ

て実行されなければならない[05.11]。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル1の要求事項に加えて,セキュリティレベル2においては,次の要求事項が,暗号

モジュールのソフトウェア及びファームウェアの構成要素に適用されなければならない[05.12]。 

a) 暗号モジュールのソフトウェア構成要素及びファームウェアの構成要素は,実行可能形式であるコー

ド(例えば,ソースコード,オブジェクトコード又はJITコンパイルコードのいずれでもない。)だけ

を含まなければならない[05.13]。 

b) HMI,SFMI,HFMI又はHSMIインタフェースを介して,オペレータにデバックを開始又は実行する

ことを許可するサービス又は制御設定は存在してはならない[05.14]。 

c) 承認されたディジタル署名又は鍵付きメッセージ認証コードは,暗号モジュールの定義された暗号境

界内の全てのソフトウェア及びファームウェアに適用されなければならない[05.15]。ディジタル署

名又は鍵付きメッセージ認証コードの検証に失敗した場合,テストは失敗し,暗号モジュールはエラ

ー状態に遷移しなければならない[05.16]。 

セキュリティレベル3及び4 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加えて,次の要求事項が,セキュリティレベル3及び4の暗

号モジュールのソフトウェア及びファームウェアの構成要素に適用されなければならない[05.17]。 

承認されたディジタル署名は,暗号モジュールの定義された暗号境界内の全てのソフトウェア及びファ

ームウェア構成要素に適用されなければならない[05.18]。ディジタル署名の検証に失敗した場合,テス

トは失敗し,暗号モジュールはエラー状態に遷移しなければならない[05.19]。 

ディジタル署名技術は,単一の包括署名又は複数の個別署名から構成されてもよいが,一つでも個別署

名に検証失敗があった場合,暗号モジュールはエラー状態に遷移しなければならない[05.20]。プライベ

ート署名鍵が,暗号モジュール外に存在しなければならない[05.21]。 

7.6 

動作環境 

7.6.1 

動作環境の一般要求事項 

暗号モジュールの動作環境とは,暗号モジュールが動作するために必要なソフトウェア,ファームウェ

ア及び/又はハードウェアの管理を指す。ソフトウェアモジュール,ファームウェアモジュール又はハイ

ブリッドモジュールの動作環境は,最低限,暗号モジュール構成要素,コンピューティングプラットフォ

ーム,及びコンピューティングプラットフォーム上のソフトウェア又はファームウェアの実行を制御又は

許可するオペレーティングシステムを含む。ハードウェアモジュールは,内部のソフトウェア又はファー

ムウェアを実行することを許可するオペレーティングシステムからなる動作環境を暗号モジュール内にも

ってもよい。オペレーティングシステムは,適用可能な場合は,仮想マシン(システム及び/又はプロセ

ス)及び実行時環境[例えば,Java実行時環境(JRE)]も含むとみなされる。 

汎用動作環境とは,次の機能をもつ市販の汎用オペレーティングシステム(すなわち,リソースマネジ

ャー)を利用していることを指す。 

a) ソフトウェア構成要素及びファームウェア構成要素を管理する機能 

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b) ワードプロセッサのような汎用アプリケーションソフトウェアを含むシステム及びオペレータプロセ

ス・スレッドを管理する機能 

動作環境には,変更不可能な動作環境,限定動作環境又は変更可能な動作環境に分類される。 

三つの動作環境について次に示す。 

a) 変更不可能な動作環境は,暗号モジュール構成要素,コンピューティングプラットフォーム又はオペ

レーティングシステムに対するオペレータ又はプロセスによる変更を防ぐよう設計又は構成された動

作環境である。この環境は,プログラムを変更することができないコンピューティングプラットフォ

ームで動作しているファームウェアモジュール,又は追加ソフトウェア若しくは追加ファームウェア

のロードを防ぐハードウェアモジュールから構成されてもよい。 

b) 限定動作環境は,暗号モジュール構成要素,コンピューティングプラットフォーム又はオペレーティ

ングシステムに対するオペレータ又はプロセスによる制御された変更を許可するように設計又は構成

された動作環境である。この環境は,追加ファームウェアのロードが7.4.3.4で規定されているファー

ムウェアロード要求事項を満たす場合,プログラム可能なハードウェアモジュールで動作するファー

ムウェアでもよい。 

c) 変更可能な動作環境は,機能を追加,削除,変更するために再構成することが可能な動作環境及び/

又は汎用オペレーティングシステム機能(例えば,コンピュータのオペレーティングシステム,設定

可能なスマートカードオペレーティングシステム,又はプログラム変更可能なソフトウェアの使用)

を含んでもよい動作環境を指す。ソフトウェア構成要素がオペレータ又はプロセスによって変更でき

る場合及び/又は定義されたソフトウェアモジュール,ファームウェアモジュール又はハイブリッド

モジュールの一部ではないソフトウェア(例えば,ワードプロセッサ)をオペレータ又はプロセスが

ロード及び実行できる場合には,オペレーティングシステムは,変更可能な動作環境とみなされる。 

変更可能な動作環境は,次の特徴をもっている。 

動作環境内で機能を追加又は変更してもよい。動作環境によって禁止されていない場合,必ずしも

これらの機能が暗号モジュールの動作に干渉しないとは限らない。 

このような環境においては,その動作環境の信頼できる部分に属さないが,同じ動作環境で動作し

ているいかなる機能も,暗号モジュールの定義されたインタフェースを介する以外にSSPにアクセス

しないことが求められる。 

したがって,動作中の暗号モジュールと動作環境における他の機能とを分離する能力を提供するこ

とがその動作環境に求められる。これによって,暗号モジュール自身によって提供されるインタフェ

ースを介することなしに,それらの機能はCSPに関連する情報を暗号モジュールから得ることも,暗

号モジュールのCSP,PSP又は実行の流れを変更することもできない。 

暗号モジュールのコード及びデータに対して適切な保護を達成するために,動作環境について特定

の構成が要求される場合がある(例えば,暗号モジュールのために,特定の種類のプロセス間通信を

禁止する,SSP又は暗号モジュールのコードを含むファイルへの制限されたアクセス権を割り当て

る。)。 

表2は,動作環境の幾つかの例をまとめたものである。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

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表2−動作環境の例 

構成例 

動作環境 

コードのロードを許可せず,かつ,コンピューティングプラットフォーム,オペレーティングシス
テム又は暗号モジュールの構成を変更することをオペレータに許可しないコンピューティングプラ
ットフォーム。 

変更不可能 

オペレーティングシステムを含むコンピューティングプラットフォームであって,真正性が確認さ
れており,かつ,この規格の適用可能な要求事項全てを満たす追加コードのロードを許可する。 

限定 

この規格のソフトウェア又はファームウェアのロード要求事項を満たさずに,コードのロードを許
可するコンピューティングプラットフォーム。 

変更可能 

コードを含むコンピューティングプラットフォームであって,そのオペレーティングシステムがオ
ペレータによって再構成可能であり,セキュリティ保護の削除を許可しているもの。 

変更可能 

変更不可能な動作環境又は限定動作環境においては,それらの環境を維持する制御構成要素は,コンピ

ューティングプラットフォーム,オペレーティングシステム若しくは暗号モジュール自身の属性又はこれ

ら全ての属性を含んでもよい。 

変更不可能な動作環境又は限定動作環境で実行されるコードは,この規格内ではファームウェアとされ,

変更可能な動作環境で実行されるコードは,この規格ではソフトウェアとされる。 

動作環境が変更不可能な動作環境又は限定動作環境である場合は,7.6.2のオペレーティングシステム要

求事項だけが適用されなければならない[06.01]。 

動作環境が変更可能な動作環境である場合は,7.6.3のオペレーティングシステム要求事項が適用されな

ければならない[06.02]。 

A.2.6で規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[06.03]。 

7.6.2 

限定動作環境又は変更不可能な動作環境に対するオペレーティングシステム要求事項 

セキュリティレベル1 

暗号モジュールが7.7のセキュリティレベル1である場合は,7.6.3のセキュリティレベル1の要求事項

が適用されなければならない[06.04]。 

セキュリティレベル2,3及び4 

追加の要求事項はない。 

7.6.3 

変更可能な動作環境に対するオペレーティングシステム要求事項 

セキュリティレベル1 

次の要求事項が,セキュリティレベル1のオペレーティングシステムに対して適用される。 

a) 暗号モジュールのそれぞれのインスタンスは,それ自身のSSPを制御しなければならない[06.05]。 

b) CSP及びPSPのデータが,プロセスメモリにあるか動作環境内の不揮発性のストレージに格納されて

いるかにかかわらず,動作環境は,CSPへの制御されていないアクセス及びSSPの制御されていない

変更を防ぐことによって,個々のアプリケーションプロセスを相互に分離する機能を提供しなければ

ならない[06.06]。これによって,CSP及びSSPへの直接アクセスが暗号モジュール及び動作環境の

信頼され得る部分に限定されることが保証される。動作環境の構成に対する制限は,暗号モジュール

のセキュリティポリシで文書化されなければならない[06.07]。 

c) 暗号モジュールによって生成されるプロセスは,外部のプロセスオペレータによって所有されてはな

らず,暗号モジュールによって所有されなければならない[06.08]。 

注記 これらの要求事項は,管理文書及び管理手順によって満たされるものではなく,暗号モジュー

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ル自身によって満たされなければならない。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル1の要求事項に加えて,セキュリティレベル2では,動作環境は,次の要求事項を

満たすか,又は認証機関によって許可されたとおりでなければならない[06.09]。 

a) 全ての暗号ソフトウェア,SSP,並びに制御情報及び状態情報は,1)役割ベースのアクセス制御,又

は2)最低限,新しいグループを定義し,例えばアクセス制御リスト(ACL)を通じて定義されるよ

うな,制限付きの許可を割り当てる堅ろう(牢)なメカニズムを備え,かつ,各ユーザに一つ以上の

グループを割り当てるような能力を備えた,任意アクセス制御を実装したオペレーティングシステム

の制御下になければならない[06.10]。オペレーティングシステムは,SSP,制御データ及び状態デー

タの無許可の実行,変更,及び読取りから保護するよう構成されなければならない[06.11]。 

b) 平文データ,暗号ソフトウェア,SSP,及び認証データを保護するために,次の要求事項がオペレー

ティングシステムのアクセス制御メカニズムに対して適用される。 

1) オペレーティングシステムのアクセス制御メカニズムは,格納されている暗号ソフトウェアを実行

する排他的な権限をもつ,役割又はグループ,及びそれらに関連した制限付きの許可を定義し,実

施するよう構成されていなければならない[06.12]。 

2) オペレーティングシステムのアクセス制御メカニズムは,暗号境界内に格納されている暗号ソフト

ウェア,すなわち暗号プログラム,暗号データ(例えば,暗号監査データ),SSP,平文データを変

更(書き込み,置換及び削除)する排他的な権限をもつ,役割又はグループ,及びそれらに関連し

た制限付きの許可を定義し,実施するよう構成されていなければならない[06.13]。 

3) オペレーティングシステムのアクセス制御メカニズムは,暗号データ(例えば,暗号監査データ),

CSP,又は平文データを読み出す排他的な権限をもつ,役割又はグループ,及びそれらに関連した

制限付きの許可を定義し,実施するよう構成されていなければならない[06.14]。 

4) オペレーティングシステムのアクセス制御メカニズムは,SSPを入力する排他的権限をもつ役割又

はグループ,及びそれらに関連した制限付きの許可を定義し,実施するよう構成されていなければ

ならない[06.15]。 

c) 次の仕様は,セキュリティポリシで定義された役割又は指定されたグループの権限及びサービスと整

合していなければならない[06.16]。 

1) メンテナンス役割をサポートしていない場合,オペレーティングシステムは,いかなるオペレータ

及び実行中のプロセスからの,実行中の暗号プロセス(すなわち,ロードされて,実行中の暗号プ

ログラムのイメージ)の変更も防がなければならない[06.17]。この場合,実行中のプロセスとは,

暗号プロセスであるかどうかにかかわらず,オペレーティングシステムによって所有も開始もされ

ていない(すなわち,オペレータによって開始された)全てのプロセスを指す。 

2) オペレーティングシステムは,その他のプロセスによって所有されているSSP及びシステムSSPを,

ユーザプロセスが読取りアクセス又は書き込みアクセスをすることを防がなければならない

[06.18]。 

3) 上記の要求事項を満たすオペレーティングシステムの構成が,管理者ガイダンスに規定されていな

ければならない[06.19]。暗号モジュールの内容が保護されているとみなされるために,規定され

たとおりにオペレーティングシステムが構成される必要がある,と管理者ガイダンスに明記されて

いなければならない[06.20]。 

オペレーティングシステムに対する識別及び認証メカニズムは,7.4.3の要求事項を満たし,暗号モジュ

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ールのセキュリティポリシで規定されていなければならない[06.21]。 

全ての暗号ソフトウェア,SSP,制御情報及び状態情報は,次の制御の下に置かれなければならない

[06.22]。 

a) オペレーティングシステムで,最低限,次の属性をもたなければならない[06.23]もの。 

1) オペレーティングシステムは,それぞれの監査イベントの日時を監査メカニズムに提供しなければ

ならない[06.24]。暗号モジュールの監査記録にはSSPを含めてはならない[06.25]。 

2) 暗号モジュールは,オペレーティングシステムの監査メカニズムによって記録される,次のイベン

トを提供しなければならない[06.26]。 

▪ 暗号データ及びSSPの変更,アクセス,削除及び追加。 

▪ クリプトオフィサ機能に対する無効な入力の試み。 

▪ クリプトオフィサ役割へのオペレータの追加,又は削除(この役割が暗号モジュールによっ

て管理されている場合)。 

▪ セキュリティに関係するクリプトオフィサ機能の使用。 

▪ 暗号モジュールに関係する認証データへのアクセス要求。 

▪ 暗号モジュールに関係する認証メカニズム(例えば,ログイン)の使用。 

▪ クリプトオフィサ役割を担う明示的な要求。 

3) オペレーティングシステムの監査メカニズムは,オペレーティングシステムに関係する次のイベン

トの監査ができるようにしなければならない[06.27]。 

▪ 監査証跡に格納された監査データへの読取りアクセス又は書き込みアクセス。 

▪ 暗号データ又はSSPを格納するために暗号モジュールによって使用されるファイルへのアク

セス。 

▪ クリプトオフィサ役割へのオペレータの追加,又はクリプトオフィサ役割からのオペレータ

の削除(この役割が動作環境によって管理されている場合)。 

▪ 認証データ管理メカニズムの使用要求。 

▪ トラステッドチャネルがこのセキュリティレベルでサポートされている場合,トラステッド

チャネル機能の使用の試み,及びその要求が許可されたかどうか。 

▪ トラステッドチャネルがこのセキュリティレベルでサポートされている場合,トラステッド

チャネルのイニシエータ及びターゲットの識別。 

注記 トラステッドチャネルを開始するエンティティをイニシエータと呼び,もう一方のエンテ

ィティをターゲットと呼ぶ。 

4) オペレーティングシステムは,暗号モジュールの動作環境内に格納されている暗号モジュールソフ

トウェア及び監査データをセキュリティポリシで識別される権限をもつオペレータ以外のオペレー

タが変更することを防ぐように,構成されていなければならない[06.28]。 

このセキュリティレベルでは,暗号モジュールが承認された動作モードで動作しているかどうかにかか

わらず,オペレーティングシステムは,上記のセキュリティ要求事項を満たすよう構成されなければなら

ない[06.29]。監査記録は,許可されていない変更から,承認されたセキュリティ機能を用いて保護され

ることが望ましい。 

7.7 

物理セキュリティ 

7.7.1 

物理セキュリティと暗号モジュールの形態 

暗号モジュールは,設置後のその内部への許可されていない物理アクセスを制限し,許可されていない

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使用又は変更(暗号モジュール全体の置換えを含む。)を防ぐために,物理セキュリティのメカニズムを備

えていなければならない[07.01]。暗号境界内の全てのハードウェア,ソフトウェア,ファームウェア,

データ構成要素及びSSPは保護されなければならない[07.02]。 

ソフトウェアによって全て実装されている暗号モジュール(例えば,物理セキュリティがコンピューテ

ィングプラットフォームによってだけ提供される暗号モジュール)は,この規格の物理セキュリティの要

求事項の対象ではない。 

7.7の要求事項は,ハードウェアモジュール及びファームウェアモジュール,並びにハイブリッドモジュ

ールのハードウェア構成要素及びファームウェア構成要素に適用されなければならない[07.03]。 

7.7の要求事項は,暗号モジュールの定義された物理境界に適用されなければならない[07.04]。 

物理セキュリティの要求事項は,次の三つの定義された暗号モジュールの物理形態に対して規定されて

いる。 

a) シングルチップ暗号モジュール これは,単一の集積回路(IC)チップがスタンドアロンデバイスと

して用いられるか,又は物理的に保護されていない囲い若しくは製品内に組み込まれている物理形態

である。シングルチップ暗号モジュールの例には,単一ICチップ又は単一ICチップの付いたスマー

トカードが含まれる。 

b) マルチチップ組込み型暗号モジュール これは,二つ又はそれ以上のICチップが相互接続されて,物

理的に保護されていない囲い又は製品内に組み込まれている物理形態である。マルチチップ組込み型

暗号モジュールの例には,アダプタ及び拡張ボードが含まれる。 

c) マルチチップスタンドアロン型暗号モジュール これは,二つ又はそれ以上のICチップが相互接続

されて,囲い全体が物理的に保護されている物理形態である。マルチチップスタンドアロン型暗号モ

ジュールの例には,暗号化ルータ,セキュア無線又はUSBトークンが含まれる。 

暗号モジュールの物理セキュリティのメカニズムによって,物理アクセス,使用,又は変更の許可され

ていない試みは,次の二つの時点のいずれか一方又は双方で高い確率で検出されなければならない[07.05]。 

・ 視覚的な形跡(すなわち,タンパー証跡)を残す試みの後。 

・ アクセスの試みの最中。 

また,CSPを保護するために,暗号モジュールによって直ちに適切な動作がとられなければならない

[07.06]。 

表3は,四つのセキュリティレベルそれぞれについて,物理セキュリティに関する共通要求事項及び三

つの物理形態に特有の要求事項を要約している。それぞれのセキュリティレベルにおける物理形態に特有

の物理セキュリティの要求事項は,同じセキュリティレベルの共通要求事項,及びそれよりも低いセキュ

リティレベルにおける形態特有の要求事項を強化している。 

background image

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表3−暗号モジュールに対する物理セキュリティ要求事項の要約 

全ての形態に対する 

一般的要求事項 

シングルチップ 

マルチチップ組込み型 

マルチチップスタンド

アロン型 

セキュリティ
レベル1 

製品グレードの構成要
素。標準的な表面安定化
処理。メンテナンスアク
セスインタフェースへ
のアクセス時の手続的
又は自動ゼロ化。 

追加要求事項なし。 

製品グレードの囲い又
は除去可能なカバー。 

製品グレードの囲い又
は除去可能なカバー。 

セキュリティ
レベル2 

タンパー証跡。可視光領
域内で不透明又は半透
明。穴又はスリットを通
しての直接の観察の防
止。 

タンパー証跡を残す,
チップ上のコーティン
グ又は囲い。 

タンパー証跡を残す被
覆材料,ドア若しくは
除去可能なカバーに適
用するタンパー証跡を
残すシール,又はこじ
開け耐性のある錠の付
いた囲い。 

タンパー証跡を残す被
覆材料,ドア若しくは
除去可能なカバーに適
用するタンパー証跡を
残すシール,又はこじ
開け耐性のある錠の付
いた囲い。 

セキュリティ
レベル3 

タンパー応答及びゼロ
化回路。メンテナンスア
クセスインタフェース
へのアクセス時の自動
ゼロ化。穴又はスリット
を通してのプロービン
グの防止。温度及び電圧
に関するEFP又はEFT。 

硬くかつタンパー証跡
を残すチップ上のコー
ティング又は強固で除
去耐性及び貫き耐性の
ある囲い。 

硬くかつタンパー証跡
を残す被覆材料又は強
固な囲い。 

硬くかつタンパー証跡
を残す被覆材料又は強
固な囲い。 

セキュリティ
レベル4 

タンパー検出・タンパー
応答包被。温度及び電圧
に関するEFP。故障誘導
からの保護。 

硬く除去耐性のあるチ
ップ上のコーティン
グ。 

ゼロ化機能の付いたタ
ンパー検出・応答包被。 

ゼロ化機能の付いたタ
ンパー検出・応答包被。 

注記 この表は,各セキュリティレベルにおいて追加で要求される要求事項が記載されている。すな

わち,そのセキュリティレベルの欄に書かれている物理セキュリティ要求事項に加えて,それ

以下のセキュリティレベルの要求事項を全て満たすことが必要である。例えば,セキュリティ

レベル4の暗号モジュールにおいても(セキュリティレベル2の欄に記載されている)直接の

観察が防止されていることも合わせて要求される。 

なお,マルチチップ組込み型及びマルチチップスタンドアロン型に関しては,この表での表

記は同じであるが,本文に記載されている要求事項は異なるため注意が必要である。 

一般に,セキュリティレベル1では,最低限の要求事項を規定する。セキュリティレベル2では,タン

パー証跡メカニズム及び暗号モジュールの重要な部分の内部動作についての情報収集ができないこと(す

なわち不透明性)の追加を要求されている。セキュリティレベル3では,除去可能なカバー及びドアに対

するタンパー検出・応答メカニズム付きの強固な又は硬い,絶縁保護された又は絶縁保護されていない囲

いの使用に対する要求事項,並びに開口部又は侵入点(例えば,スイッチ又はコネクタの設置部)を介し

ての直接的なプロービングへの耐性に関する要求事項を追加している。さらに,セキュリティレベル3で

は,環境故障保護(EFP)又は環境故障試験(EFT)を要求している。セキュリティレベル4では,囲い全

体に対するタンパー検出・応答メカニズムをもつか,又は暗号モジュールが致命的な損傷を被る,強固な

又は硬い,絶縁保護された又は絶縁保護されていない,囲いの使用に関する要求事項を追加している。ま

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

た,セキュリティレベル4では,環境故障保護(EFP)及び故障誘導攻撃からの保護を要求している。 

暗号モジュールが(例えば,暗号モジュールベンダによる,又はその他の許可された個人による)物理

アクセスを許容するように設計されている場合には,メンテナンスアクセスインタフェースに対してセキ

ュリティ要求事項が規定されている。 

タンパー検出・応答は,タンパー証跡の代替にはならない。 

A.2.7に規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[07.07]。 

7.7.2 

物理セキュリティに関する共通要求事項 

次の要求事項は,全ての物理形態に対して適用されなければならない[07.08]。 

a) 文書は,物理形態及び暗号モジュールの物理セキュリティのメカニズムが実装されるセキュリティレ

ベルを示さなければならない[07.09]。 

b) 物理セキュリティの目的の下でゼロ化が実行されるときには常に,検出してから実際のゼロ化が行わ

れるまでの間にセンシティブデータが復元されることを防ぐために,十分短い時間でゼロ化を行わな

ければならない[07.10]。 

c) 暗号モジュールが,暗号モジュールの内部への物理アクセスを必要とするメンテナンス役割を含むか,

又は暗号モジュールが(例えば,暗号モジュールのベンダ又は他の許可された個人による)物理アク

セスを許すように設計されている場合には,次の事項を適用する。 

1) メンテナンスアクセスインタフェースが定義されなければならない[07.11]。 

2) メンテナンスアクセスインタフェースは,あらゆる除去可能なカバー又はドアを含む,暗号モジュ

ールの内部への全ての物理アクセス経路を含んでいなければならない[07.12]。 

3) メンテナンスアクセスインタフェースに含まれるあらゆる除去可能なカバー又はドアは,適切な物

理セキュリティのメカニズムを用いて保護されなければならない[07.13]。 

セキュリティレベル1 

次の要求事項が,セキュリティレベル1の全ての暗号モジュールに適用されなければならない[07.14]。 

a) 暗号モジュールは,表面安定化処理(例えば,環境又はその他の物理的損害から保護するために,暗

号モジュールの回路に施されている絶縁保護コーティング又はシーリングコート)を含んだ製品グレ

ードの構成要素で構成されなければならない[07.15]。 

b) 物理メンテナンスを行うとき,ゼロ化は,オペレータによって手続的に行われるか,又は暗号モジュ

ールによって自動的に行われるかのいずれかでなければならない[07.16]。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル1の共通要求事項に加え,次の要求事項がセキュリティレベル2の全ての暗号モジ

ュールに適用されなければならない[07.17]。 

a) 暗号モジュールへの物理アクセスが試みられたとき,暗号モジュールは(例えば,カバー,囲い及び

シールに)タンパーされた証拠が残らなければならない[07.18]。 

b) タンパー証跡を残す材料,コーティング又は囲いは,暗号モジュールの重要な部分の内部動作につい

ての情報収集を防止するために,可視光領域(すなわち,波長が400 nm〜750 nmの範囲)で不透明

又は半透明でなければならない[07.19]。 

c) 暗号モジュールが通気孔又はスリットを含む場合には,暗号モジュールは,その内部構造又は構成要

素について可視光領域での人工光源を用いた直接的な視覚による観察によって,情報収集されること

を防ぐような構造で組み立てられなければならない[07.20]。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル1及び2の共通要求事項に加え,次の要求事項がセキュリティレベル3の全ての暗

号モジュールに適用されなければならない[07.21]。 

a) 暗号モジュールがドア若しくは除去可能なカバーを含むか,又はメンテナンスアクセスインタフェー

スが定義されている場合には,暗号モジュールはタンパー応答及びゼロ化機能を含まなければならな

い[07.22]。そのタンパー応答及びゼロ化機能は,ドアを開けられたとき,カバーが取り外されたと

き,又はメンテナンスアクセスインタフェースがアクセスされたとき,全ての保護されていないSSP

を直ちにゼロ化しなければならない[07.23]。そのタンパー応答及びゼロ化機能は,保護されていな

いSSPが暗号モジュール内に含まれているときは,働いていなければならない[07.24]。 

b) 暗号モジュールが通気孔又はスリットを含む場合には,その暗号モジュールは,囲いの内部に対する,

検出されない物理プロービング(例えば,単関節付きプローブによるプロービング)を妨げるような

方法で組み立てられなければならない[07.25]。 

c) 強固な若しくは硬い,絶縁保護された若しくは絶縁保護されていない囲い,コーティング又は封止材

は,動作時,保管時及び配送時における既定の温度範囲にわたって,強固さ及び硬さの特性を維持し

なければならない[07.26]。 

d) タンパー証跡を残すシールを採用する場合,そのシールは,一意に付番されるか,又は,単体で識別

可能(例えば,一意に付番されたタンパー証跡テープ又は一意に識別可能なホログラムシール)でな

ければならない[07.27]。 

e) 暗号モジュールは,EFPの機構をもつか,又はEFTに合格するかのいずれか一つ以上を満たさなけれ

ばならない[07.28]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の共通要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル4の全て

の暗号モジュールに適用されなければならない[07.29]。 

a) 暗号モジュールは,硬く不透明な,除去耐性のあるコーティングによって,又はタンパー応答及びゼ

ロ化機能の付いたタンパー検出包被によって保護されなければならない[07.30]。 

b) 暗号モジュールは,EFPの機構をもたなければならない[07.31]。 

c) 暗号モジュールは,故障誘導による攻撃から保護されなければならない[07.32]。採用された故障誘

導への対処技術及びその有効性の根拠(メトリクス)は,附属書Bで規定されるように文書化しなけ

ればならない[07.33]。 

7.7.3 

物理形態別の物理セキュリティの要求事項 

7.7.3.1 

シングルチップ暗号モジュール 

7.7.2に規定された物理セキュリティに関する共通要求事項に加え,シングルチップ暗号モジュールに課

せられる要求事項を次に示す。 

セキュリティレベル1 

シングルチップ暗号モジュールに対するセキュリティレベル1の追加要求事項はない。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル1の要求事項に加え,次の要求事項がセキュリティレベル2のシングルチップ暗号

モジュールに適用されなければならない[07.34]。 

a) 暗号モジュールへの直接的な観察,プロービング,又は不正操作を防ぐために,かつ,暗号モジュー

ルへのタンパーの試みの証拠又は暗号モジュール(の物理的保護)を除去した証拠を残すために,暗

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

号モジュールは,タンパー証跡を残すコーティング(例えば,タンパー証跡を残す表面安定化処理の

材料,又は例えば,表面安定化処理を施した上でそれを覆うタンパー証跡を残す材料)で覆われてい

るか,又はタンパー証跡を残す囲い内に含まれていなければならない[07.35]。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,次のいずれかの要求事項のうち一つ以上が,セキュリ

ティレベル3のシングルチップ暗号モジュールに適用されなければならない[07.36]。 

a) 暗号モジュールは,硬く不透明なタンパー証跡を残すコーティングで覆われていなければならない

[07.37](例えば,表面安定化処理を施した硬く不透明なエポキシ樹脂で覆う。)。 

b) 暗号モジュールの囲いは,その除去又は貫通の試みが高い確率で暗号モジュールに致命的な損傷を与

えなければならない[07.39](すなわち,暗号モジュールが機能しなくなる)ように実装されていな

ければならない[07.38]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の要求事項に加え,次の要求事項がセキュリティレベル4のシングルチ

ップ暗号モジュールに適用されなければならない[07.40]。 

a) 暗号モジュールは,暗号モジュールからコーティングを剝がそうとする試み,又はこじ開けようとす

る試みが,高い確率で暗号モジュールに致命的な損傷を与える(すなわち,暗号モジュールが機能し

なくなる)ような硬度及び接着特性をもった,硬く不透明で除去耐性のあるコーティングで覆われて

いなければならない[07.41]。 

b) 除去耐性のあるコーティングは,コーティングの溶解が,高い確率で暗号モジュールを溶解する,又

は暗号モジュールに致命的な損傷を与える(すなわち,暗号モジュールが機能しなくなる)ような溶

解特性をもたなければならない[07.42]。 

7.7.3.2 

マルチチップ組込み型暗号モジュール 

7.7.2に規定された共通要求事項に加え,マルチチップ組込み型暗号モジュールに課せられる要求事項を

次に示す。 

セキュリティレベル1 

暗号モジュールが,囲い又は除去可能なカバー内に含まれる場合には,製品グレードの囲い又は除去可

能なカバーが使用されなければならない[07.43]。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル1の要求事項に加え,次のいずれかの要求事項のうち一つ以上が,セキュリティレ

ベル2のマルチチップ組込み型暗号モジュールに適用されなければならない[07.44]。 

a) 暗号モジュール構成要素は,暗号モジュール構成要素への直接的な観察を防ぐために,及びタンパー

の試みの証拠,又は暗号モジュール構成要素の除去の証拠を残すために,タンパー証跡を残すコーテ

ィング又は封止材(例えば,エッチング耐性のあるコーティング又は厚い塗装)で覆われていなけれ

ばならない[07.45]。 

b) 暗号モジュールは,金属製又は硬いプラスチック製の製品グレードの囲い内に完全に含まれていなけ

ればならない[07.46]。この囲いは,ドア又は除去可能なカバーを含んでもよい。 

c) 囲いが,ドア又は除去可能なカバーを含む場合には,ドア又はカバーが物理鍵若しくは論理鍵を用い

たこじ開け耐性のある機械錠で施錠されていなければならない[07.47]か,又は,ドア若しくはカバ

ーは,タンパー証跡を残すシール(例えば,タンパー証跡テープ又はホログラムシール)で保護され

ていなければならない[07.48]。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,次のいずれかの要求事項のうち一つ以上が,セキュリ

ティレベル3のマルチチップ組込み型暗号モジュールに適用されなければならない[07.49]。 

a) 暗号モジュール内の回路全体は,除去又は貫通の試みが高い確率で暗号モジュールに致命的な損傷を

与える(すなわち,暗号モジュールが機能しなくなる)ような硬いコーティング又は封止材(例えば,

硬いエポキシ樹脂)で覆われていなければならない[07.50]。 

b) 暗号モジュールは,除去又は貫通の試みが高い確率で暗号モジュールに致命的な損傷を与える(すな

わち,暗号モジュールが機能しなくなる)ような強固な囲いの中に含まれなければならない[07.51]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル4のマルチチ

ップ組込み型暗号モジュールに適用されなければならない[07.52]。 

a) 暗号モジュール構成要素は,強固な又は硬い,絶縁保護されている又はされていない囲い内に含まれ

ていなければならない[07.53]。この囲いは,タンパー検出包被によって被覆されていなければなら

ない[07.54]。包被の例には曲がりくねった幾何学パターンの導電体による柔軟なポリエステル薄膜

回路,巻き線型パッケージ,柔軟性がなく壊れやすい回路,強固な囲いがある。タンパー検出包被は,

SSPへのアクセスを可能にする程度のタンパー[例えば,封止材又は囲いの切断,せん(穿)孔,粉

砕,研削,燃焼,溶融又は溶解]を検出しなければならない[07.55]。 

b) 暗号モジュールは,タンパー応答及びゼロ化回路を含まなければならない[07.56]。タンパー応答及

びゼロ化回路は,タンパー検出包被を継続的に監視しなければならない[07.57]。そのタンパー応答

及びゼロ化回路は,タンパー検出時に全ての保護されていないSSPを直ちにゼロ化しなければならな

い[07.58]。そのタンパー応答及びゼロ化回路は,保護されていないSSPが暗号モジュール内に含ま

れているときは,働いていなければならない[07.59]。 

7.7.3.3 

マルチチップスタンドアロン型暗号モジュール 

7.7.2に規定された共通要求事項に加え,マルチチップスタンドアロン型暗号モジュールに課せられる要

求事項を次に示す。 

セキュリティレベル1 

暗号モジュールは,金属製又は硬いプラスチック製の製品グレードの囲い内に完全に含まれていなけれ

ばならない[07.60]。この囲いは,ドア又は除去可能なカバーを含んでもよい。 

セキュリティレベル2 

セキュリティレベル1の要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル2のマルチチップスタ

ンドアロン型暗号モジュールに適用されなければならない[07.61]。 

a) 暗号モジュールの囲いが,ドア又は除去可能なカバーを含む場合には,ドア又はカバーは,物理鍵若

しくは論理鍵を用いたこじ開け耐性のある機械錠で施錠されていなければならない[07.62]か,又は

タンパー証跡を残すシール(例えば,タンパー証跡テープ,ホログラムシール)で保護されていなけ

ればならない[07.63]。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル3のマルチチッ

プスタンドアロン型暗号モジュールに適用されなければならない[07.64]。 

a) 暗号モジュールは,囲いの除去又は貫通の試みが高い確率で暗号モジュールに致命的な損傷を与える

(すなわち,暗号モジュールが機能しなくなる)ような強固な囲い内に含まれていなければならない

44 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

[07.65]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル4のマルチチ

ップスタンドアロン型暗号モジュールに適用されなければならない[07.66]。 

a) 暗号モジュールの囲いは,(例えば,マイクロスイッチ,磁気ホール効果スイッチ,永久磁石アクチュ

エータを用いた)カバースイッチ,(例えば,超音波,赤外線,又は電磁波を用いた)モーション検出

器,又は7.7.3.2のセキュリティレベル4で記述されたその他のタンパー検出メカニズムを使用するタ

ンパー検出包被を含まなければならない[07.67]。タンパー検出メカニズムは,SSPへのアクセスを

可能にする程度の攻撃[例えば,切断,せん(穿)孔,粉砕,研削,燃焼,溶融又は溶解]に応答し

なければならない[07.68]。 

b) 暗号モジュールはタンパー応答及びゼロ化機能を含まなければならない[07.69]。タンパー応答及び

ゼロ化機能は,タンパー検出包被を継続的に監視しなければならず[07.70],タンパー検出時に,全

ての保護されていないSSPを直ちにゼロ化しなければならない[07.71]。そのタンパー応答及びゼロ

化機能は,保護されていないSSPが暗号モジュール内に含まれているときは,働いていなければなら

ない[07.72]。 

7.7.4 

環境故障保護・環境故障試験 

7.7.4.1 

環境故障保護・環境故障試験の一般要求事項 

電子デバイス及び電子回路は,環境条件の特定の範囲内において動作するように設計されている。電圧

及び温度が規定された通常動作範囲から故意又は偶然に外れることは,電子デバイス又は電子回路の異常

な動作又は故障を引き起こし,暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)化させる可能性がある。暗

号モジュールのセキュリティが厳しい環境条件によって危たい(殆)化されないという妥当な保証は,暗

号モジュールが環境故障保護(EFP)機構をもつか,又は環境故障試験(EFT)に合格していることによっ

て提供される。 

セキュリティレベル1及び2においては,暗号モジュールは,環境故障保護(EFP)機構をもつことも,

環境故障試験(EFT)を受けることも要求されない。セキュリティレベル3において,暗号モジュールは,

環境故障保護(EFP)機構をもつか,又は環境故障試験(EFT)に合格していなければならない[07.73]。

セキュリティレベル4においては,暗号モジュールは,環境故障保護(EFP)機構をもたなければならな

い[07.74]。 

7.7.4.2 

環境故障保護機構 

環境故障保護(EFP)機構は,暗号モジュールが,暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)化さ

せる可能性がある,通常動作範囲外の(偶然又は故意による)異常な環境条件から,暗号モジュールを保

護しなければならない[07.75]。 

暗号モジュールは監視を行い,動作温度及び動作電圧が規定された通常動作範囲から外れる場合は,正

しく対応しなければならない[07.76]。 

温度又は電圧が,暗号モジュールの通常動作範囲から外れる場合には,保護機構は(1)それ以上動作し

ないように暗号モジュールをシャットダウンするか,(2)全ての保護されていないSSPを直ちにゼロ化す

るか,のいずれかを行わなければならない[07.77]。 

7.7.4.3 

環境故障試験手順 

環境故障試験(EFT)は,温度及び電圧に関して暗号モジュールが通常動作範囲から外れる場合の(偶

然又は故意による)環境条件が,暗号モジュールのセキュリティを危たい(殆)化しないという妥当な保

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証を提供するために,暗号モジュールの解析,シミュレーション及び試験の組合せを含まなければならな

い[07.78]。 

EFTは,動作温度又は動作電圧が,暗号モジュールの故障が発生するほど通常動作範囲から外れる場合

に,暗号モジュールのセキュリティが決して危たい(殆)化してはならない[07.80]ことを実証しなけれ

ばならない[07.79]。 

試験される温度範囲は,通常動作温度範囲から(1)更なる動作を防ぐためにシャットダウンするか,又

は(2)全ての保護されていないSSPを直ちにゼロ化するか,のいずれかとなる最も低い温度まで,及び,

通常動作温度範囲から(1)シャットダウンする若しくはエラー状態になるか,又は(2)全ての保護され

ていないSSPをゼロ化するか,のいずれか一つ以上が起こる最も高い温度までとしなければならない

[07.81]。試験される温度範囲は,−100 ℃〜+200 ℃でなければならない[07.82]。しかし,(1)更なる

動作を防ぐために暗号モジュールをシャットダウンするか,(2)全ての保護されていないSSPを直ちにゼ

ロ化するか,又は(3)暗号モジュールが故障状態になるか,のいずれかが起こったときに,速やかに試験

を中断しなければならない[07.83]。温度は,単に物理境界上で監視するのではなく,その内部にあるセ

ンシティブ構成要素及び重要なデバイスで監視されなければならない[07.84]。 

試験する電圧範囲は,通常動作電圧範囲から始めて電圧を徐々に下げていき,(1)更なる動作を防ぐた

めに暗号モジュールをシャットダウンするか,又は(2)全ての保護されていないSSPを直ちにゼロ化す

るか,のいずれかとなる電圧まで下げなければならない[07.85]。また,通常動作電圧範囲から電圧を徐々

に上げていき,(1)更なる動作を防ぐために暗号モジュールをシャットダウンするか,又は(2)全ての保

護されていないSSPを直ちにゼロ化するか,のいずれかとなる電圧まで上げなければならない[07.86]。 

7.8 

非侵襲セキュリティ 

非侵襲攻撃は,暗号モジュールを物理的に変更することも暗号モジュールに侵入することもなく,暗号

モジュールのCSPの知識を得ることによって,暗号モジュールを危たい(殆)化しようとする試みである。

暗号モジュールは,このタイプの攻撃に対処するための様々な技術を実装する場合がある。この規格にお

けるセキュリティ機能のそれぞれについて,非侵襲攻撃対処に関わる試験方法及び基準(テストメトリク

ス)は,附属書Fで参照されている。 

暗号モジュールが,附属書Fに規定されている非侵襲攻撃からSSPを保護するための非侵襲攻撃対処技

術を実装していない場合は,7.8は適用されない。 

附属書Fで規定されていない非侵襲攻撃から暗号モジュールのSSPを保護するためにその暗号モジュー

ルが実装している非侵襲攻撃対処技術は,7.12の要求事項を満たさなければならない[08.01]。 

附属書Fで規定されている非侵襲攻撃から暗号モジュールのSSPを保護するためにその暗号モジュール

が実装している非侵襲攻撃対処技術は,次の要求事項を満たさなければならない[08.02]。 

A.2.8で規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[08.03]。 

セキュリティレベル1及び2 

セキュリティレベル1及び2においては,文書は,附属書Fに規定されている非侵襲攻撃技術から,暗

号モジュールのCSPを保護するために用いられる全ての対処技術を規定しなければならない[08.04]。文

書は,それぞれの攻撃対処技術の有効性の証拠を含まなければならない[08.05]。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル3においては,暗号モジュールは,セキュリティレベル1及び2における要求事項

に加え,附属書Fで規定されているような,セキュリティレベル3の承認された非侵襲攻撃対処に関わる

試験方法及び基準(テストメトリクス)を満たすように試験されなければならない[08.06]。 

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セキュリティレベル4 

セキュリティレベル4においては,暗号モジュールは,セキュリティレベル1及び2における要求事項

に加え,附属書Fで規定されているような,セキュリティレベル4の承認された非侵襲攻撃対処に関わる

試験方法及び基準(テストメトリクス)を満たすように試験されなければならない[08.07]。 

7.9 

センシティブセキュリティパラメタ管理 

7.9.1 

センシティブセキュリティパラメタ管理の一般要求事項 

センシティブセキュリティパラメタ(SSP)は,クリティカルセキュリティパラメタ(CSP)及び公開セ

キュリティパラメタ(PSP)から構成される。SSP管理のセキュリティ要求事項には,暗号モジュールが

使用するSSPのライフサイクル全体が含まれる。SSP管理は,乱数ビット生成器(RBG),SSP生成,SSP

確立,SSP入出力,SSPの格納及び保護されていないSSPのゼロ化を含む。 

暗号化されたCSPとは,承認されたセキュリティ機能を使用して暗号化されたCSPを指す。承認され

ていないセキュリティ機能を使用して暗号化又は難読化されたCSPは,この規格の適用範囲内では保護さ

れていない平文とみなされる。 

CSPは,許可されていないアクセス,使用,開示,変更及び置換から,暗号モジュール内で保護されな

ければならない[09.01]。 

PSPは,許可されていない変更及び置換から,暗号モジュール内で保護されなければならない[09.02]。 

暗号モジュールは,生成されるか,暗号モジュールに入力されるか又は暗号モジュールから出力される

SSPを,SSPに割り当てられたエンティティ(例えば,人,グループ,役割,プロセス)と関連付けなけ

ればならない[09.03]。 

パスワードのハッシュ値,RBG状態情報及び鍵生成の中間値は,CSPとみなされなければならない

[09.04]。 

A.2.9で規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[09.05]。 

7.9.2 

乱数ビット生成器 

暗号モジュールは,RBGを含んでもよく,複数のRBGの連鎖を含んでもよい。暗号モジュールはRBG

だけを実装したものであってもよい。承認されたRBGは,附属書Cに記載されている。 

承認されたセキュリティ機能,SSP生成方法又はSSP確立方法が乱数値を必要とする場合には,承認さ

れたRBGが,この値を提供するために使用されなければならない[09.06]。 

暗号境界外からエントロピーが収集される場合,このエントロピー入力を使用して生成されたデータス

トリームは,CSPとみなされなければならない[09.07]。 

注記 暗号モジュール内部にエントロピー源をもち,保護することが望ましい。しかし,外部からエ

ントロピーを収集する場合においても,出力される乱数の予測困難性を維持するために,その

決定論的乱数生成器の入力をCSP扱いし,保護する必要があるため,[09.07]が課される。 

7.9.3 

センシティブセキュリティパラメタ生成 

暗号モジュールはSSPを内部的に生成してもよいし,又は暗号モジュールに入力されたSSPから導出し

てもよい。 

承認されたRBGの出力を利用するSSP生成方法のセキュリティの危たい(殆)化(例えば,決定論的

RBGを初期化するためのシード値の推定)は,最低限,生成されたSSPの値を決定するのと同じだけの操

作が必要でなければならない[09.08]。 

承認されたRBGの出力,又は暗号モジュールに入力されたSSPから,暗号モジュールによって生成さ

れ,かつ,承認されたセキュリティ機能又は承認されたSSP確立方法によって使用されるSSPは,附属書

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Dに記載されている承認されたSSP生成方法を使って生成されなければならない[09.09]。 

7.9.4 

センシティブセキュリティパラメタ確立 

SSP確立は,次のいずれか一つ以上の方法で構成されてもよい。 

a) 自動化されたSSP配送方法又はSSP共有方法 

b) 直接的方法又は電子的方法を介した手動のSSP入力又は出力 

自動化されたSSP確立は,附属書Dに記載されている承認された方法を使用しなければならない[09.10]。

手動のSSP確立は,7.9.5の要求事項を満たさなければならない[09.11]。 

7.9.5 

センシティブセキュリティパラメタの入力及び出力 

SSPは,(キーボード又はテンキーを介した入力,画面表示を介した出力などの)直接的な手段,又は電

子的に(スマートカード・トークン,PCカード,その他の電子鍵ロードデバイス,暗号モジュールのオペ

レーティングシステムを介するなどの)電子的な手段によって,手動で暗号モジュールに入力されても又

は暗号モジュールから出力されてもよい。SSPが,手動で暗号モジュールに入力される場合又は暗号モジ

ュールから出力される場合,定義されたHMI,SFMI,HFMI又はHSMIインタフェース(7.3.2)を介して

入力又は出力されなければならない[09.12]。 

暗号モジュールに入力される又は暗号モジュールから出力される暗号的に保護された全てのSSPは,承

認されたセキュリティ機能を使って暗号化されなければならない[09.13]。 

直接的に入力されるSSPにおいて,入力された値は,視覚的な検証を可能とするため及び正確さを高め

るために,一時的に表示してもよい。暗号化されたSSPが暗号モジュールに直接的に入力される場合には,

SSPの平文の値は表示されてはならない[09.14]。直接的に入力された(平文の,又は暗号化された)SSP

は,暗号モジュールへの入力の間に,正確さを期すために7.10.3.5で規定された条件手動入力テストを用

いて,検証されなければならない[09.15]。 

センシティブデータが不用意に出力されることを防ぐため,平文のCSPを出力するときには,独立した

二つの内部動作が要求されなければならない[09.16]。この独立した二つの内部動作は,CSPの出力をつ

かさどることに特化していなければならない[09.17]。 

無線接続を介する電子的入力又は出力において,CSP,鍵要素及び認証データは,暗号化されなければ

ならない[09.18]。 

手動で入力されたPSPは,暗号的に認証される必要はない。 

セキュリティレベル1及び2 

平文のCSP,鍵要素及び認証データは,暗号モジュールの他の物理ポート及び論理インタフェースと共

用の物理ポート及び論理インタフェースを介して入力及び出力してもよい。 

ソフトウェアモジュール又はハイブリッドソフトウェアモジュールのソフトウェア構成要素において,

CSP,鍵要素及び認証データは,暗号化された形式又は平文の形式で入力又は出力されてもよい。その場

合にはそのCSP,鍵要素及び認証データは,動作環境内で維持され,かつ,7.6.3の要求事項を満たさなけ

ればならない[09.19]。 

セキュリティレベル3 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,セキュリティレベル3においては,CSP,鍵要素及び

認証データは,暗号化されるか又はトラステッドチャネルによって,暗号モジュールに入力又は暗号モジ

ュールから出力されなければならない[09.20]。 

CSPが平文の秘密鍵及び平文のプライベート鍵である場合,トラステッドチャネルを用いた知識分散の

手順を利用して,暗号モジュールに入力又は暗号モジュールから出力されなければならない[09.21]。 

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注記 乱数生成器の内部状態に関しても,規格書で指定されている場合には,同様に扱われる。 

暗号モジュールが知識分散の手順を用いる場合,その暗号モジュールは,それぞれの鍵要素を入力又は

出力するために個別にIDベースのオペレータ認証を用いなければならず[09.22],かつ,二つ以上の鍵要

素が,元の暗号鍵を復元するのに必要とされなければならない[09.23]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル3の要求事項に加え,セキュリティレベル4においては,暗号モジュールは,それ

ぞれの鍵要素を入力又は出力するために,個別にIDベースのオペレータ多要素認証を用いなければなら

ない[09.24]。 

7.9.6 

センシティブセキュリティパラメタの格納 

暗号モジュール内に格納されるSSPは,平文の形式又は暗号化された形式のどちらで格納されてもよい。

暗号モジュールは,暗号モジュール内に格納されている各SSPとそのSSPが割り当てられているエンティ

ティ(例えば,オペレータ,役割,プロセス)とを関連付けなければならない[09.25]。 

許可されていないオペレータによる平文のCSPへのアクセスは,禁止されなければならない[09.26]。

許可されていないオペレータによるPSPの変更は,禁止されなければならない[09.27]。 

7.9.7 

センシティブセキュリティパラメタのゼロ化 

暗号モジュールは,暗号モジュール内の保護されていない全てのSSP及び鍵要素をゼロ化するための方

法を提供しなければならない[09.28]。一時的に格納されているSSP及びその他の値は,以降の使用の必

要がなくなった時点で,ゼロ化されることが望ましい。 

ゼロ化されたSSPは,復元又は再使用が可能であってはならない[09.29]。 

次のPSP又はCSPにはゼロ化が要求されない。 

a) 保護されたPSP 

b) 暗号化されたCSP 

c) 内部に組み込まれた(この規格の要求事項を満たす)認証された暗号モジュールによって物理的又は

論理的に保護されたCSP 

認証プロキシであるプロセスに対して平文データを渡す目的に限って使用されるSSP(例えば,暗号モ

ジュール初期化鍵であるCSP)の場合,これらのSSPはゼロ化の要求事項を満たす必要はない。 

7.10の自己テスト目的のためだけに使用されるパラメタは,ゼロ化の要求事項を満たす必要はない。 

セキュリティレベル1 

保護されていないSSPのゼロ化は,暗号モジュールの制御とは独立に,暗号モジュールのオペレータに

よって手続的に行われてもよい(例えば,ハードディスクドライブの再フォーマット,暗号モジュールの

大気圏への再突入による破壊)。 

セキュリティレベル2及び3 

暗号モジュールは,保護されていないSSPのゼロ化を実行しなければならない[09.30](例えば,全て

0,全て1,ランダムなデータでの上書き)。保護されていないSSPを別の保護されていないSSPで上書き

することは,ゼロ化の方法から除外されなければならない[09.31]。一時的なSSPは,必要なくなった時

点で,ゼロ化されなければならない[09.32]。暗号モジュールは,ゼロ化が完了したことを状態出力を通

じて示さなければならない[09.33]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル2及び3の要求事項に加え,次の要求事項が満たされなければならない[09.34]。 

a) ゼロ化は,直ちに実行され,かつ,中断不可能でなければならず[09.35],さらに,ゼロ化は,その

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開始時刻から完了時刻までの間にセンシティブデータが復元されることを防ぐために,十分短い時間

で行われなければならない[09.36]。 

b) 全てのSSPは,平文であっても,暗号的に保護されていても,ゼロ化されなければならない[09.37]。

その結果,暗号モジュールは工場出荷状態に戻る。 

7.10 

自己テスト 

7.10.1 

自己テストの一般要求事項 

暗号モジュールの動作前自己テスト及び条件自己テストは,暗号モジュールの正常な動作を妨げるよう

な故障箇所がないという保証をオペレータに提供する。暗号モジュールはこれらの自己テストを実行しな

ければならず[10.01],自己テストの実行及び自己テストの成功か失敗かの判定は,承認された動作モー

ドで動作しているかどうかにかかわらず,また,外部からの制御,外部から提供される入力テストベクタ,

期待される出力結果,及びオペレータの介在によらずに,暗号モジュールによって行わなければならない

[10.02]。 

動作前自己テストは,暗号モジュールがデータ出力インタフェースを介してデータ出力を行う前に,実

行され,成功しなければならない[10.03]。 

条件自己テストは,該当するセキュリティ機能又はプロセス(すなわち,自己テストが要求されるセキ

ュリティ機能)が呼び出されるときに実行されなければならない[10.04]。 

アルゴリズムの標準(附属書C〜附属書E)で識別される全ての自己テストは,暗号モジュール内で適

切に実装されなければならない[10.05]。アルゴリズムの標準(附属書C〜附属書E)で規定された自己

テストに追加する自己テスト又はその代替の自己テストは,承認されたセキュリティ機能,SSP確立方法

及び認証メカニズムのそれぞれに対して,附属書C〜附属書Eで参照されているように実装されなければ

ならない[10.06]。 

暗号モジュールは,この規格に規定されている自己テストに加え,その他の動作前重要機能自己テスト

又は条件重要機能テストを実行してもよい。 

暗号モジュールが自己テストに失敗した場合には,その暗号モジュールはエラー状態に遷移しなければ

ならず[10.07],かつ,7.3.3に規定されているエラーインジケータを提供しなければならない[10.08]。

その暗号モジュールは,エラー状態の間は,暗号動作の実行,制御出力インタフェースを介した制御出力

及びデータ出力インタフェースを介したデータ出力のいずれも行ってはならない[10.09]。その暗号モジ

ュールは,自己テストに失敗した機能又はアルゴリズムに依存するいかなる機能も,関連する自己テスト

が繰り返され,成功するまで利用してはならない[10.10]。暗号モジュールが自己テストが失敗したとき

にエラー状態情報を出力しない場合は,オペレータは,その暗号モジュールがエラー状態になったかどう

かを,セキュリティポリシ(附属書B)で文書化されている曖昧さのない手順を通じて暗黙的に判定でき

なければならない[10.11]。 

セキュリティレベル3及び4において,暗号モジュールは,その暗号モジュールの許可されたオペレー

タがアクセスできるエラーログを保持しなければならない[10.12]。そのエラーログは,最低限,直近の

エラーイベント(すなわち,どの自己テストが失敗したのか)を含む情報を提供しなければならない[10.13]。 

A.2.10に規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[10.14]。 

7.10.2 

動作前自己テスト 

7.10.2.1 

動作前自己テストの一般要求事項 

動作前自己テストは,(電源オフ,リセット,リブート,コールドスタート,停電の後などで)暗号モジ

ュールの電源投入時又は起動時から動作状態へ遷移するまでの間に,暗号モジュールによって実行され,

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成功しなければならない[10.15]。 

暗号モジュールは,該当する場合には,次の動作前テストを実行しなければならない[10.16]。 

a) 動作前ソフトウェア・ファームウェア完全性テスト 

b) 動作前バイパステスト 

c) 動作前重要機能テスト 

7.10.2.2 

動作前ソフトウェア・ファームウェア完全性テスト 

暗号境界内の全てのソフトウェア構成要素及びファームウェア構成要素は,7.5に定義されている要求事

項を満たす,承認された完全性技術を使って検証されなければならない[10.17]。その検証に失敗した場

合,動作前ソフトウェア・ファームウェア完全性テストは失敗としなければならない[10.18]。動作前ソ

フトウェア・ファームウェア完全性テストは,この規格のセキュリティ要求事項から除外されているいか

なるソフトウェア若しくはファームウェアにも,又は再構成不可能なメモリに格納されているいかなる実

行可能なコードにも必要とされない。 

注記 再構成不可能なメモリとは,一度だけ書き込み可能なメモリを指す。 

ハードウェアモジュールがソフトウェアもファームウェアも含まない場合,その暗号モジュールは,動

作前自己テストとして7.10.3.2で規定されている暗号アルゴリズム自己テストを,最低限,一つ実装しな

ければならない[10.19]。 

動作前ソフトウェア・ファームウェア完全性テストに用いる承認された完全性技術の実行に用いられる

暗号アルゴリズムは,ソフトウェア・ファームウェア完全性テストの前に7.10.3.2で規定されている暗号

アルゴリズム自己テストに成功しなければならない[10.20]。 

7.10.2.3 

動作前バイパステスト 

暗号モジュールがバイパス機能を実装している場合には,その暗号モジュールは,バイパス機能の活性

化を管理する論理の正常な動作を,その論理を動作させることによって確認しなければならない[10.21]。

その暗号モジュールは,データパスの検証も,次の二つの方法によって行わなければならない[10.22]。 

a) 暗号処理をするようにバイパススイッチを設定して,バイパスメカニズムを通過したデータが暗号処

理されていることを検証する。 

b) 暗号処理をしないようにバイパススイッチを設定して,バイパスメカニズムを通過したデータが暗号

処理されていないことを検証する。 

7.10.2.4 

動作前重要機能テスト 

暗号モジュールのセキュアな動作にとって重要なその他のセキュリティ機能で,動作前テストによって

テストされなければならない[10.23]ものがあってもよい。文書は,テストされる動作前重要機能を規定

しなければならない[10.24]。 

7.10.3 

条件自己テスト 

7.10.3.1 

条件自己テストの一般要求事項 

条件自己テストは,暗号アルゴリズム自己テスト,鍵ペア整合性テスト,ソフトウェア・ファームウェ

アロードテスト,手動入力テスト,条件バイパステスト及び条件重要機能テストに規定された条件が成立

したとき,暗号モジュールによって実行されなければならない[10.25]。 

7.10.3.2 

暗号アルゴリズム条件自己テスト 

暗号アルゴリズム自己テスト。暗号アルゴリズム自己テストは,暗号モジュールに実装された,附属書

C〜附属書Eに参照されているそれぞれの承認された暗号アルゴリズムの全ての暗号機能(例えば,セキ

ュリティ機能,SSP確立・認証方法)に対して実行されなければならない[10.26]。この条件自己テスト

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は,その暗号アルゴリズムの最初の実使用前に実行されなければならない[10.27]。 

暗号アルゴリズム自己テストは,既知解テスト,比較テスト又は故障検出テストであってもよい。 

既知解テストは,暗号アルゴリズムによって結果を生成するために処理される既知の入力ベクタ(例え

ば,データ,鍵関連情報,乱数の代わりの定数)の一組から構成される。その結果は,既知の期待される

出力結果(既知解)と比較される。計算結果が既知解と等しくない場合は,既知解テストは,失敗としな

ければならない[10.28]。 

アルゴリズム自己テストは,最低限,暗号モジュールによってサポートされている,最小の承認された

鍵長,法サイズ,DSA素数又は曲線を適切に使用しなければならない[10.29]。 

アルゴリズムが複数の利用モード(例えば,ECB,CBCなど)を規定している場合は,自己テストの対

象として,暗号モジュールによってサポートされているモードの中から最低限一つのモードを選択するか,

認証機関によって規定された一つのモードを選択しなければならない[10.30]。 

既知解テストの例は次のとおりである。 

a) 単一の暗号機能から成る暗号アルゴリズム[例えば,ハッシュ,鍵付きハッシュ,メッセージ認証,

RBG(固定エントロピーベクタ),SSP共有]:入力テストベクタが期待された出力と同一の出力を生

成しなければならない[10.31]。 

b) 一対の暗号機能から成る暗号アルゴリズム(例えば,共通鍵暗号の暗号化及び復号,SSP配送のため

の暗号化及び復号,ディジタル署名生成及び検証):順方向関数及び逆関数の両方が,自己テストされ

なければならない[10.32]。 

比較テストは,二つ以上の独立した暗号アルゴリズムの実装の出力を比較し,出力が同一ではない場合

は,比較テストは,失敗としなければならない[10.33]。 

故障検出テストは,暗号アルゴリズムの実装に組み込まれた故障検出メカニズムの実装を伴うもので,

故障が検出された場合は,暗号アルゴリズム故障検出自己テストは,失敗としなければならない[10.34]。 

7.10.3.3 

条件鍵ペア整合性テスト 

暗号モジュールが,附属書C〜附属書Eで参照されている適用可能な暗号アルゴリズムの公開鍵とプラ

イベート鍵とのペアを生成する場合,生成された公開鍵とプライベート鍵とのペアに対して,鍵ペア整合

性テストが実行されなければならない[10.35]。 

7.10.3.4 

条件ソフトウェア・ファームウェアロードテスト 

暗号モジュールが,外部ソースからソフトウェア又はファームウェアをロードする機能をもつ場合には,

7.4.3.4の要求事項に加え,次の要求事項が適用されなければならない[10.36]。 

a) 暗号モジュールは,ロードされるソフトウェア又はファームウェアの妥当性を検証するための承認さ

れた認証技術を実装しなければならない[10.37]。 

b) 妥当性検証用認証鍵は,ソフトウェア又はファームウェアのロードに先立ち,別個に暗号モジュール

にロードされなければならない[10.38]。 

c) 適用される承認された認証技術は,検証に成功しなければならない[10.39]が,そうでなければ,ソ

フトウェア・ファームウェアロードテストは失敗としなければならない[10.40]。ソフトウェア・フ

ァームウェアロードテストが失敗だった場合は,ロードされたソフトウェア又はファームウェアは,

使用されてはならない[10.41]。 

7.10.3.5 

条件手動入力テスト 

SSP又は鍵要素が暗号モジュールに直接手動で入力される場合,又は人間のオペレータの側の誤りによ

って,意図した値の不正確な入力となる可能性がある場合は,次の手動入力テストが実行されなければな

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らない[10.42]。 

・ SSP又は鍵要素は,適用されるべき誤り検出符号(EDC)をもたなければならない[10.43],又

は繰り返し入力を使って入力されなければならない[10.44]。 

EDCが使われる場合,EDCの検査ビットは,16ビット以上でなければならない[10.45]。EDCを検証

できない場合,又は繰り返し入力が一致しない場合は,テストは失敗としなければならない[10.46]。 

7.10.3.6 

条件バイパステスト 

暗号モジュールが,暗号処理なしにサービスが提供される(例えば,暗号モジュールを通して平文を転

送する)バイパス機能を実装している場合には,暗号モジュール構成要素の単一の故障が意図しない平文

の出力につながらないことを保証するために,次の一連のバイパステストを実行しなければならない

[10.47]。 

暗号モジュールは,排他的なバイパスサービスと排他的な暗号サービスとの間で切替えが発生するとき,

暗号処理を提供するサービスの正しい動作をテストしなければならない[10.48]。 

暗号モジュールがバイパスサービスと暗号サービスとを自動的に交互に行うことができ,暗号処理を伴

う何らかのサービス及び暗号処理を伴わない何らかのサービスを提供する場合には,暗号モジュールは,

切替え手順をつかさどるメカニズムが変更される時点(例えば,IPアドレスのソース・ディスティネーシ

ョン表が変更される時点)で,暗号処理を提供するサービスの正しい動作をテストしなければならない

[10.49]。 

暗号モジュールがバイパス機能管理情報を内部に保持する場合には,暗号モジュールは,バイパス機能

管理情報が変更される直前に,その完全性を,承認された完全性技術を用いて検証しなければならず

[10.50],かつ,変更直後に,承認された完全性技術を用いて新しい完全性を示す値を生成しなければな

らない[10.51]。 

7.10.3.7 

条件重要機能テスト 

暗号モジュールのセキュアな動作にとって重要なその他のセキュリティ機能で条件自己テストによって

テストされなければならない[10.52]ものがあってもよい。 

7.10.3.8 

定期自己テスト 

セキュリティレベル1及び2 

暗号モジュールは,その暗号モジュールの定期テストのためにオンデマンドで動作前自己テスト又は条

件自己テストを開始することをオペレータに許可しなければならない[10.53]。定期自己テストをオンデ

マンドで開始するために認められる手段は,提供されているサービス,リセット,リブート又は電源再投

入である。 

セキュリティレベル3及び4 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,暗号モジュールは,外部からの入力又は制御なしに,

定義された時間間隔で自動的に動作前自己テスト又は条件自己テストを繰り返し実行しなければならない

[10.54]。動作前自己テスト又は条件自己テストを実行する時間間隔及び暗号モジュールの自己テスト以

外の動作の中断を引き起こす全ての条件が,セキュリティポリシ(附属書B)に規定されなければならな

い[10.55](例えば,その暗号モジュールが中断できないミッションクリティカルなサービスを実行して

いて,動作前自己テスト開始の期間が経過してしまう場合は,その自己テストは,その時間間隔が再度経

過した後に延期されてもよい。)。 

53 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.11 

ライフサイクル保証 

7.11.1 

ライフサイクル保証の一般要求事項 

ライフサイクル保証とは,暗号モジュールの設計,開発,運用及び使用終了における暗号モジュールの

ベンダによる最善の慣行(best practice)の使用を指し,暗号モジュールが適切に設計され,開発され,試

験され,構成され,配付され,設置され,廃棄されること,及び適切なオペレータガイダンスが提供され

ることの保証を提供する。 

7.11では,構成管理,設計,有限状態モデル,開発,試験,配付及び運用,並びにガイダンス文書につ

いてセキュリティ要求事項を規定する。 

A.2.11で規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[11.01]。 

7.11.2 

構成管理 

7.11.2は,暗号モジュールのベンダが使用する構成管理システムに対する要求事項を規定する。構成管

理システムは,暗号モジュール及び関連文書の改良及び変更の過程における統制及び管理を要求すること

によって,暗号モジュールの完全性が維持されることの保証を提供する。構成管理システムは,暗号モジ

ュール及び関連文書への偶発的又は許可されていない変更を防止するため,及び変更のトレーサビリティ

を提供するために導入される。 

セキュリティレベル1及び2 

セキュリティレベル1及び2においては,次のセキュリティ要求事項が暗号モジュールに適用されなけ

ればならない[11.02]。 

a) 構成管理システムは,暗号モジュール及び暗号境界内の暗号モジュール構成要素の開発,並びに関連

する暗号モジュール文書の開発のために使用されなければならない[11.03]。 

b) 暗号モジュール及び関連文書を構成するそれぞれの構成アイテム(例えば,暗号モジュール,暗号モ

ジュールのハードウェアの部品,暗号モジュールのソフトウェア構成要素,暗号モジュールのHDL

記述,ユーザガイダンス,セキュリティポリシ)のそれぞれのバージョンは,一意の識別子が割り当

てられ,かつ,ラベル付けされなければならない[11.04]。 

c) 構成管理システムは,認証された暗号モジュールのライフサイクルを通じて,それぞれの構成アイテ

ムのID及びバージョン又はリビジョンに対する変更を記録し,かつ,維持しなければならない[11.05]。 

セキュリティレベル3及び4 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,構成アイテムは,自動化された構成管理システムを使

って管理されなければならない[11.06]。 

7.11.3 

設計 

設計とは,暗号モジュールに対する機能仕様を実現する工学的な解である。設計は,暗号モジュールの

機能仕様が,セキュリティポリシに記述された機能目標に対応することの保証を目的としている。 

暗号モジュールは,提供された全てのセキュリティ関連サービスの試験を許すよう設計されなければな

らない[11.07]。 

7.11.4 

有限状態モデル 

暗号モジュールの動作は,状態遷移図及び状態遷移表,並びに状態記述によって表現される有限状態モ

デル(又は同等のもの)を用いて規定されなければならない[11.08]。FSM(有限状態モデル)は,暗号

モジュールがこの規格の要求事項の全てに適合していることを明確に示すために十分に詳細に記述されな

ければならない[11.09]。 

暗号モジュールのFSMは,最低限,次の動作状態及びエラー状態を含まなければならない[11.10]。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 電源オン・オフ状態 暗号モジュールに主電源,副電源,又はバックアップ電源が供給されており,

電源オフ,スタンバイモード(揮発性メモリは維持されている),又は(休止モードのように)不揮発

性メモリに動作状態が保持されている状態。暗号モジュールに供給されている電源によってこの状態

を分類してもよい。ソフトウェアモジュールにおいては,電源オンは,暗号モジュールの実行可能イ

メージを生成する操作である。 

注記 有限状態モデルの始状態として用意される。 

b) 一般初期化状態 暗号モジュールが,承認された状態へ遷移する前に初期化を実行している状態。 

c) クリプトオフィサ状態 クリプトオフィサのサービス[例えば,暗号関連の初期化,セキュア管理

(administration)及び鍵管理]が実行されている状態。 

d) CSP入力状態 CSPを暗号モジュールへ入力している状態。 

e) ユーザ状態 (ユーザ役割が実装されている場合,)許可されたユーザに対してセキュリティサービス

を提供している,暗号操作を実行している,又は他の承認されたセキュリティ機能を実行している状

態。 

f) 

承認された状態 承認されたセキュリティ機能を実行している状態。 

g) 自己テスト状態 暗号モジュールが自己テストを実行している状態。 

h) エラー状態 暗号モジュールが(自己テストに失敗するなど)エラー条件を満たしたときに遷移する

状態。あるエラー状態に遷移するときのエラー条件は複数あってもよい。エラー状態は,装置故障を

指し示し,かつ,暗号モジュールのメンテナンス,サービス若しくは修理を必要とするかもしれない

“ハード”エラー又は暗号モジュールの初期化若しくはリセットを必要とするかもしれない復旧可能

な“ソフト”エラーを含んでもよい。エラー状態からの復旧は,暗号モジュールのメンテナンス,サ

ービス又は修理を必要とするハードエラーによって引き起こされたものを除いて,可能でなければな

らない[11.11]。 

個々の異なる暗号モジュールサービス,セキュリティ機能の利用,エラー状態,自己テスト又はオペレ

ータ認証は,別々の状態として表現されなければならない[11.12]。 

クリプトオフィサ役割以外の役割を担った状態からのクリプトオフィサ状態への遷移は,禁止されなけ

ればならない[11.13]。 

暗号モジュールは,次のような他の状態を含んでもよい。ただし,これらに限定するものではない。 

i) 

バイパス状態 暗号モジュールの構成又はオペレータの操作の結果として,サービスが,通常は暗号

化された形で出力されるような特定のデータ又は状態情報の平文での出力をもたらす状態。 

j) 

休眠状態 暗号モジュールが休眠中の状態(例えば,低電力,サスペンド,休止状態)。 

7.11.5 

開発 

適切な開発プロセスは,暗号モジュールの実装が,暗号モジュールの機能仕様及びセキュリティポリシ

に対応していること,暗号モジュールが維持可能なこと,並びに認証された暗号モジュールが再現可能で

あることを保証する。7.11.5では,機能仕様から実装表現までの様々な抽象レベルにおいて,暗号モジュ

ールのセキュリティ機能の表現についてのセキュリティ要求事項を規定する。 

セキュリティレベル1 

次の要求事項が,セキュリティレベル1の暗号モジュールに対して適用されなければならない[11.14]。 

a) 暗号モジュールがソフトウェア又はファームウェアを含む場合には,ソースコード,言語リファレン

ス,コンパイラ,コンパイラバージョン及びコンパイラオプション,リンカ及びリンカオプション,

ランタイムライブラリ及びランタイムライブラリの設定,構成の設定,ビルドの手順及びビルド方法,

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ビルドオプション,環境変数,並びにソースコードを実行可能形式にコンパイル及びリンクするため

に用いられるその他の全てのリソースが,構成管理システムを用いて追跡されなければならない

[11.15]。 

b) 暗号モジュールがソフトウェア又はファームウェアを含む場合には,ソースコードは,ソフトウェア

又はファームウェアと暗号モジュールの設計との対応を示すコメントを用いて注釈が付けられなけれ

ばならない[11.16]。 

c) 暗号モジュールがハードウェアを含む場合には,文書は,場合に応じて,ハードウェアの回路図及び

/又はハードウェア記述言語(HDL)記述を示さなければならない[11.17]。 

d) 暗号モジュールがハードウェアを含む場合には,HDL記述は,ハードウェアと暗号モジュールの設計

との対応を示すコメントを用いて注釈が付けられなければならない[11.18]。 

e) ソフトウェアモジュール及びファームウェアモジュール,並びにハイブリッドモジュールのソフトウ

ェア構成要素又はファームウェア構成要素において,次が適用される。 

1) 7.5及び7.10に規定されている完全性技術メカニズム及び認証技術メカニズムによる値は,暗号モ

ジュールの開発時に,ベンダによって計算され,ソフトウェアモジュール又はファームウェアモジ

ュールに埋め込まれなければならない[11.19]。 

2) 暗号モジュール文書は,コンパイラ,構成の設定,及びソースコードを実行可能形式にコンパイル

するための方法を規定しなければならない[11.20]。 

3) 暗号モジュールは,製品グレードの開発ツール(例えば,コンパイラ)を用いて開発されなければ

ならない[11.21]。 

セキュリティレベル2及び3 

セキュリティレベル1の要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル2及び3の暗号モジュ

ールに適用されなければならない[11.22]。 

a) 全てのソフトウェア又はファームウェアは,公開されている(non-proprietary)高級言語 を用いて実

装されなければならない[11.23]。ただし,暗号モジュールの性能に不可欠であるために,又は高級

言語が使用できないために,低級言語(例えば,アセンブラ言語又はマイクロコード)を使用する場

合には,低級言語を使用する根拠が提供されなければならない[11.24]。 

b) 暗号モジュール内のカスタムICは,高級なハードウェア記述言語(HDL)(例えば,VHDL又は

Verilog-HDL)を用いて実装されなければならない[11.25]。 

c) ソフトウェアモジュール又はファームウェアモジュールは,暗号モジュールの機能及び実行に不必要

なコード,パラメタ又は記号の使用を避けるように,設計され,かつ,実装されなければならない

[11.26]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の要求事項に加え,次の要求事項が,セキュリティレベル4の暗号モジ

ュールに適用されなければならない[11.27]。 

a) 暗号モジュールのそれぞれのハードウェア及びソフトウェア構成要素に対して,文書は,(1)構成要

素,関数,及び手続が正しく実行されるために必要な事前条件,並びに(2)構成要素,関数,及び手

続のそれぞれの実行が完了するときに正しいと期待される事後条件,を規定するコメントによる注釈

が付けられなければならない[11.28]。事前条件及び事後条件は,暗号モジュール構成要素,関数,

及び手続の振る舞いを完全かつ明確に説明するのに十分詳細な注釈を用いて規定されてもよい。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.11.6 

ベンダ試験 

7.11.6では,暗号モジュールがそのセキュリティポリシ及び機能仕様に従って振る舞うことを保証する

ベンダ試験の要求事項を規定する。ベンダ試験には,その暗号モジュールに実装されたセキュリティ機能

の試験が含まれる。 

セキュリティレベル1及び2 

セキュリティレベル1及び2においては,文書は,暗号モジュールについて実行される機能試験を規定

しなければならない[11.29]。 

ソフトウェアモジュール若しくはファームウェアモジュール,又はハイブリッドモジュールのソフトウ

ェア構成要素若しくはファームウェア構成要素に対して,ベンダは,(例えば,バッファオーバーフロー検

知する)自動化されたセキュリティ診断ツールを用いなければならない[11.30]。 

セキュリティレベル3及び4 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,文書は,暗号モジュールについて実行される下位レベ

ル試験の手順及び結果を規定しなければならない[11.31]。 

7.11.7 

配付及び運用 

7.11.7では,暗号モジュールが,許可されたオペレータにセキュアに配付され,正確かつセキュアな方

法で設置及び初期化されることを保証するために,暗号モジュールのセキュアな配付,設置及び立ち上げ

に関するセキュリティ要求事項を規定する。 

セキュリティレベル1 

セキュリティレベル1においては,文書は,暗号モジュールのセキュアな設置,初期化及び立上げに関

する手順を規定しなければならない[11.32]。 

セキュリティレベル2及び3 

セキュリティレベル1の要求事項に加え,文書は,許可されたオペレータに対して暗号モジュールの各

バージョンを配送,設置及び初期化している間のセキュリティを維持するために必要な手順を規定しなけ

ればならない[11.33]。手順は,許可されたオペレータに対して暗号モジュールを配付,設置及び初期化

している間,タンパーをいかに検知するかを規定しなければならない[11.34]。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の要求事項に加え,手順は,許可されたオペレータに対して,ベンダに

よって提供される認証データを用いて暗号モジュールへ認証するよう求めなければならない[11.35]。 

7.11.8 

使用終了 

7.11.8では,暗号モジュールが,今後配備されることがない場合又はオペレータによる今後の使用が想

定されない場合のセキュリティ要求事項を規定する。 

セキュリティレベル1及び2 

セキュリティレベル1及び2においては,文書は,暗号モジュールのセキュアな廃棄処理(sanitization)

の手順を規定しなければならない[11.36]。廃棄処理(sanitization)とは,暗号モジュールが他のオペレー

タに配送されても廃棄されてもよいように,暗号モジュールからセンシティブ情報(例えば,SSP,ユー

ザデータなど)を取り除くプロセスである。 

セキュリティレベル3及び4 

セキュリティレベル1及び2の要求事項に加え,文書は,暗号モジュールのセキュアな破壊に必要な手

順を規定しなければならない[11.37]。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

7.11.9 

ガイダンス文書 

7.11.9の要求事項は,暗号モジュールを使用する全てのエンティティが,承認された動作モードで暗号

モジュールを管理及び使用するための十分なガイダンス及び手順を利用できることを保証することを目的

としている。 

ガイダンス文書は,管理者ガイダンス及び非管理者ガイダンスから構成されている。 

管理者ガイダンスには,次の4項目を規定しなければならない[11.38]。 

a) クリプトオフィサ及び/又はその他の管理的役割が利用可能な暗号モジュールの管理機能,セキュリ

ティイベント,セキュリティパラメタ(及び,必要ならば,パラメタ値),物理ポート及び論理インタ

フェース 

b) 独立したオペレータ認証メカニズムを機能的に独立した状態に保つのに必要な手順 

c) どのように暗号モジュールを承認された動作モードで管理するかに関する手順 

d) 暗号モジュールのセキュアな動作に関係するユーザの振る舞いについての前提条件 

非管理者ガイダンスには,次の2項目を規定しなければならない[11.39]。 

a) 暗号モジュールのユーザが利用可能な承認された機能,承認されていないセキュリティ機能,物理ポ

ート及び論理インタフェース 

b) 暗号モジュールの承認された動作モードのために必要な全てのユーザの責任 

7.12 

その他の攻撃への対処 

この規格の他の箇条で定義されていない攻撃に対する暗号モジュールの影響の受けやすさは,暗号モジ

ュールのタイプ,実装及び使用環境に依存する。そのような攻撃は,敵対的環境(例えば,攻撃者が暗号

モジュールの許可されたオペレータになるかもしれない環境)で使用される暗号モジュールでは特に注意

を要すると考えられる。これらの攻撃は,一般に,物理的に暗号モジュールの外部にある情報源から得ら

れた情報を解析することである。全ての場合において,これらの攻撃は,暗号モジュール内のCSPについ

ての何らかの情報を得ようとする。 

A.2.12で規定された文書化要求事項に関する情報が,提供されなければならない[12.01]。 

セキュリティレベル1,2及び3 

暗号モジュールがこの規格の他の箇条で定義されていない一つ以上の特定の攻撃に対処するよう設計さ

れている場合には,暗号モジュールのサポート文書は,暗号モジュールが対処するよう設計されている攻

撃を全て列挙しなければならない[12.02]。攻撃に対処するために用いられるセキュリティメカニズムが

存在すること,及びそれが適切に機能することは,要求事項及びそれに対応する試験が開発されたならば,

認証され得る。 

セキュリティレベル4 

セキュリティレベル1,2及び3の要求事項に加え,次の要求事項をセキュリティレベル4の暗号モジュ

ールに適用されなければならない[12.03]。 

a) この規格の他の箇条で定義されていない特定の攻撃への対処を主張する場合,文書は,その攻撃に対

処するために用いられる方法及び対処技術の有効性を試験する方法を規定しなければならない

[12.04]。 

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附属書A 

(規定) 

文書化要求事項 

A.1 目的 

この附属書は,試験対象の暗号モジュールに関して文書化しなければならない[A.01]最小限の事項を

規定している。 

A.2 項目 

A.2.1 一般要求事項 

一般的な文書化要求事項は,規定されない。 

A.2.2 暗号モジュールの仕様 

a) 暗号モジュールのタイプ(ハードウェアモジュール,ソフトウェアモジュール,ファームウェアモジ

ュール,ハイブリッドソフトウェアモジュール又はハイブリッドファームウェアモジュール)の仕様

(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) 暗号境界の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

c) 暗号モジュールのハードウェア,ソフトウェア及びファームウェアの構成要素の仕様,並びに暗号モ

ジュールの物理的な構成の記述(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

d) この規格のセキュリティ要求事項の適用を除外する暗号モジュールのハードウェア,ソフトウェア及

びファームウェアの構成要素の仕様,並びに適用除外とする根拠の説明(セキュリティレベル1・2・

3・4)。 

e) 暗号モジュールの物理ポート及び論理インタフェースの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

f) 

暗号モジュールの手動制御又は論理的制御,物理的又は論理的な状態インジケータ,並びにそれらの

物理的,論理的及び電気的な特徴の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

g) 承認されているかどうかにかかわらず,暗号モジュールに採用される全てのセキュリティ機能の仕様,

並びに承認されているかどうかにかかわらず,全ての動作モードの仕様(セキュリティレベル1・2・

3・4)。 

h) 暗号モジュールの主要なハードウェア構成要素の全て及びそれらの接続関係を示すブロック図。これ

には,マイクロプロセッサ,入出力バッファ,テキスト(平文又は暗号文)バッファ,制御バッファ,

鍵格納メモリ,作業メモリ及びプログラムメモリを含む(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

i) 

暗号モジュールのハードウェア,ソフトウェア及びファームウェアの設計仕様(セキュリティレベル

1・2・3・4)。 

j) 

秘密暗号鍵及びプライベート暗号鍵(平文及び暗号化されたものの両方),認証データ(例えば,パス

ワード,PIN),CSP,PSP及び開示又は変更が暗号モジュールのセキュリティに危たい(殆)化をも

たらすその他の保護された情報(例えば,監査イベント,監査データ)を含む,全てのセキュリティ

関連情報の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

k) 暗号モジュールが縮退動作モードをサポートする方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

l) 

この規格の要求事項から導かれる規則及びベンダによって課せられた追加要求事項から導かれる規則

を含む,暗号モジュールのセキュリティポリシの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.2.3 暗号モジュールのインタフェース 

a) 物理的及び論理的な,データ入力,データ出力,制御入力,制御出力,状態出力及び電力インタフェ

ースの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) トラステッドチャネルのインタフェースの仕様(セキュリティレベル3・4)。 

c) エラー状態の間,制御出力のインタフェースが禁止されない場合,許可される制御出力のインタフェ

ースの仕様及び許可される根拠(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

A.2.4 役割,サービス及びオペレータ認証 

a) 暗号モジュールがサポートする全ての許可された役割の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) 暗号モジュールによって提供される(承認された及び承認されていない),サービス,動作又は機能の

仕様。それぞれのサービスにおいて,サービス入力,それに対応するサービス出力及びそれらのサー

ビスを実行することが許可された一つ以上の役割の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

c) オペレータが許可された役割を担うことを必要とされない暗号モジュールが提供するサービスの仕様,

並びにそれらのサービスが,暗号鍵及びその他のCSPが変更,開示若しくは置換がなされない,又は

そうでなければ,暗号モジュールのセキュリティに影響を与えない方法の仕様(セキュリティレベル

1・2・3・4)。 

d) 複数の認証メカニズムの使用する根拠を含む,暗号モジュールによってサポートされる認証メカニズ

ム,サポートされた認証メカニズムを実装するために必要とされる認証データのタイプ,最初の暗号

モジュールへのアクセスを制御し,認証メカニズムを初期化するために使用される許可された方法及

び暗号モジュールによってサポートされた認証メカニズムの強度の仕様(セキュリティレベル2・3・

4)。 

e) 暗号モジュールのバージョン情報を表示し,状態を表示し,自己テストを実行し,承認されたセキュ

リティ機能を実行し,及びゼロ化を実行する暗号モジュールのサービスの仕様(セキュリティレベル

1・2・3・4)。 

f) 

バイパスメカニズムの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

g) ソフトウェア又はファームウェアのロードメカニズムの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

h) 暗号出力の自動開始機能の制御及びインタフェースの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

A.2.5 ソフトウェア・ファームウェアセキュリティ 

a) 用いられる承認された完全性技術の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) オペレータがオンデマンドで承認された完全性技術を実行する方法の仕様(セキュリティレベル1・

2・3・4)。 

c) 実行可能コードの形式の仕様(セキュリティレベル2・3・4)。 

A.2.6 動作環境 

a) 暗号モジュールによって採用されたオペレーティングシステムを含む,暗号モジュールの動作環境の

仕様(セキュリティレベル1・2)。 

b) セキュリティ規則,設定又は動作環境の構成に対する制限の仕様(セキュリティレベル1・2)。 

c) 仕様の要求事項に従ってオペレーティングシステムを構成するための管理者ガイダンス文書(セキュ

リティレベル2)。 

A.2.7 物理セキュリティ 

a) 物理形態の仕様及び暗号モジュールの物理セキュリティのメカニズムが実装されるセキュリティレベ

ル。暗号モジュールの物理セキュリティのメカニズムの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

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X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b) 暗号モジュールが,暗号モジュールの内部への物理アクセスを必要とするメンテナンス役割を含む場

合,又は暗号モジュールが物理アクセスを許すように設計されている場合,メンテナンスアクセスイ

ンタフェースの仕様,及びメンテナンスアクセスインタフェースがアクセスされたときにCSPがどの

ようにゼロ化されるかの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

c) 暗号モジュールの通常動作範囲の仕様。暗号モジュールによって用いられる環境故障保護機構の仕様

(セキュリティレベル4)。 

d) 用いられる故障誘導への対処技術の仕様(セキュリティレベル4)。 

A.2.8 非侵襲セキュリティ 

a) 附属書Fで規定される技術を含む,非侵襲攻撃に対して用いられる対処技術の仕様(セキュリティレ

ベル1・2・3・4)。 

b) 用いられる攻撃対処技術のそれぞれの有効性の証拠(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

A.2.9 センシティブセキュリティパラメタ管理 

a) 暗号モジュールに用いられる全てのCSP及びPSPの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) 全てのRBG及びその使用法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

c) それぞれの入力されたエントロピー入力パラメタに対して暗号モジュールが必要とする最小エントロ

ピーの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

d) 暗号モジュールに用いられるRBG(承認されたRBG,承認されていないRBG,及びエントロピー源)

のそれぞれの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

e) エントロピーが暗号モジュールの暗号境界内から収集される場合,最小エントロピー及び主張された

最小エントロピーの生成方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

f) 

RBGを利用するそれぞれのSSP生成方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

g) 暗号モジュールに用いられる全てのSSP確立方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

h) 暗号モジュールに用いられるSSP生成方法のそれぞれの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

i) 

暗号モジュールに用いられる(承認された及び承認されていない)鍵生成方法のそれぞれの仕様(セ

キュリティレベル1・2・3・4)。 

j) 

暗号モジュールに用いられるSSP確立方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

k) 暗号モジュールに用いられるSSP入力及び出力方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

l) 

暗号モジュールに用いられる鍵の入力及び出力方法の仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

m) 知識分散の手順が使用される場合には,n個の構成要素の知識が元のCSPを復元するのに必要とされ

るとき,いかなるn−1個の構成要素の知識も長さ以外に元のCSPについての情報を提供しないこと

を証明するために提供される文書(セキュリティレベル3・4)。 

n) 暗号モジュールに用いられる知識分散の手順の仕様(セキュリティレベル3・4)。 

o) 暗号モジュールに格納されたSSPの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

p) 暗号モジュールに格納された場合,許可されていないアクセス,使用,開示,変更及び置換からどの

ようにCSPを保護するかの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

q) 暗号モジュール内に格納された場合,許可されていない変更及び置換からどのようにPSPを保護する

かの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

r) 暗号モジュールが,どのように暗号モジュールに格納されたPSPをパラメタが割り当てられたエンテ

ィティ(オペレータ,役割又はプロセス)に関係付けるかの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

s) 

暗号モジュールに用いられるゼロ化の方法及びその方法の仕様,並びに,その方法がゼロ化された値

61 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

の復元及び再利用をどのように防止するかについての根拠(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

A.2.10 

自己テスト 

a) 動作前自己テスト及び条件自己テストを含む,暗号モジュールによって実行される自己テストの仕様

(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) 自己テストの成功状態インジケータ及び失敗状態インジケータの仕様(セキュリティレベル1・2・3・

4)。 

c) 自己テスト失敗時に暗号モジュールが進み得るエラー状態,並びに,暗号モジュールがエラー状態か

ら抜け出して,通常の動作を再開するために必要な条件及びアクション(例えば,これには,暗号モ

ジュールのメンテナンス,暗号モジュールの電源再投入,自動モジュール回復,縮退動作への移行又

は修理のため暗号モジュールをベンダへ戻すことを含んでもよい。)の仕様(セキュリティレベル1・

2・3・4)。 

d) 暗号モジュールのセキュアな動作にとって重要なセキュリティ機能の全ての仕様及び暗号モジュール

によって実行される該当する動作前自己テスト及び条件自己テストの識別(セキュリティレベル1・

2・3・4)。 

e) 暗号モジュールがバイパス機能を実装している場合,切替え手順をつかさどるメカニズム又は論理の

仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

A.2.11 ライフサイクル保証 

a) 暗号モジュールのために用いられる構成管理システムの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

b) 暗号モジュールの開発に関するサポート文書及び構成管理システムによって提供される関連文書の仕

様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

c) 暗号モジュールのセキュアな設置,生成,及び立上げに関する手順の仕様(セキュリティレベル1・2・

3・4)。 

d) 許可されたオペレータに対して暗号モジュールのバージョンを配送及び配付している間,セキュリテ

ィを維持するために必要な手順の仕様(セキュリティレベル2・3・4)。 

e) 暗号モジュールのハードウェア構成要素,ソフトウェア構成要素,及び/又はファームウェア構成要

素の設計と暗号モジュールのセキュリティポリシ及びFSM(有限状態モデル)との対応の仕様(セキ

ュリティレベル1・2・3・4)。 

f) 

暗号モジュールがソフトウェアを含む場合,ソフトウェアと暗号モジュールの設計との対応を明確に

表現するコメントの注釈を付けた,ソフトウェアのソースコードの仕様(セキュリティレベル1・2・

3・4)。 

g) 暗号モジュールがハードウェアを含む場合,ハードウェアの回路図及び/又はハードウェア記述言語

(HDL)リストの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

h) 暗号モジュール,暗号モジュールの機能性,暗号モジュールの外部物理ポート及び論理インタフェー

スを非形式的に記述した機能仕様の仕様,並びに物理ポート及び論理インタフェースの目的(セキュ

リティレベル2・3・4)。 

i) 

暗号モジュールの主要な構成要素の内部機能性,内部構成要素のインタフェース,構成要素のインタ

フェースの目的,及び(暗号境界全体内の及び主要な構成要素内の)内部情報の流れを記述した詳細

な設計の仕様(セキュリティレベル3・4)。 

j) 

(事前条件及び事後条件を含む)暗号モジュールの設計と機能仕様との対応の仕様(セキュリティレ

ベル4)。 

62 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

k) 次を含む状態遷移図及び状態遷移表を用いたFSM(又は同等のもの)の表現(セキュリティレベル1・

2・3・4)。 

1) 暗号モジュールの動作状態及びエラー状態。 

2) ある状態から別の状態への対応する遷移。 

3) ある状態から別の状態への遷移を引き起こす,データ入力及び制御入力を含む,入力イベント。 

4) ある状態から別の状態への遷移の結果起きる,内部モジュール状態,データ出力及び状態出力を含

む,出力イベント。 

l) 

ソフトウェア又はファームウェアに関するソースコードの仕様(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

m) 暗号モジュールのそれぞれのハードウェア及びソフトウェア構成要素に対する,(1)構成要素,関数

又は手続が正しく実行されるために必要な事前条件,及び(2)構成要素,機能又は手続の実行が完了

するときに正しいと期待される事後条件,を示すコメントからなるソースコードの注釈(セキュリテ

ィレベル4)。 

n) 管理者ガイダンスにおける,次の記述(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

1) クリプトオフィサ向けに用意された暗号モジュールの管理機能,セキュリティイベント,セキュリ

ティパラメタ(及び,必要ならば,パラメタ値),物理ポート並びに論理インタフェース。 

2) どのように暗号モジュールをセキュアなやり方で管理するかに関する手順。 

3) 暗号モジュールのセキュアな動作に関係するユーザの振る舞いについての前提条件。 

o) 管理者ガイダンスにおける,次の記述(セキュリティレベル1・2・3・4)。 

1) 暗号モジュールのユーザ向けに用意される承認されたセキュリティ機能,物理ポート及び論理イン

タフェース。 

2) 暗号モジュールのセキュアな運用のために必要な全てのユーザの責任。 

A.2.12 

その他の攻撃への対処 

a) 暗号モジュールがこの規格の他の箇条では定義されていない一つ以上の特定の攻撃に対処するように

設計される場合,その攻撃に対処するために暗号モジュールに採用されるセキュリティメカニズムの

列挙(セキュリティレベル1・2・3)。 

b) 暗号モジュールがこの規格の他の箇条では定義されていない一つ以上の特定の攻撃に対処するように

設計される場合,その攻撃に対処するために用いられる方法及び対処技術の有効性を試験する方法(セ

キュリティレベル4)。 

63 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書B 

(規定) 

暗号モジュールのセキュリティポリシ 

B.1 

要求事項 

次のリストは,公開セキュリティポリシで提供されなければならない[B.01]要求事項を要約したもの

である。セキュリティポリシのフォーマットは,この附属書において指示された順序又は認証機関によっ

て規定されたような順序で示されなければならない[B.02]。セキュリティポリシを,所有権又は著作権の

あるものとして表示する場合は,複写及び配付を許可する文言を付けなければならない[B.03]。 

B.2 

項目 

B.2.1 総論 

a) 個々の分野のセキュリティレベル及び全体的なセキュリティレベルを示した表。 

B.2.2 暗号モジュールの仕様 

a) 意図された使用環境を含む暗号モジュールの意図された目的又は用途。 

b) 暗号モジュールの説明図,回路図又は写真。ハードウェアモジュールにおいては写真を含む。セキュ

リティポリシが暗号モジュールの複数のバージョンを包含する場合は,それぞれのバージョンは,別々

に表示されるか,又は表示が全てのバージョンを説明するものであることの注釈が付けられる。ソフ

トウェアモジュール又はファームウェアモジュールにおいては,セキュリティポリシは,次を示した

ブロック図を含む。 

1) 論理的オブジェクトと暗号境界との間の全ての論理層及び物理層が明確に定義されるような,オペ

レーティングシステム,その他のサポートアプリケーション及び暗号境界との関係性の観点からの,

ソフトウェアモジュール又はファームウェアモジュールの論理的オブジェクトの位置。 

2) ソフトウェアモジュール又はファームウェアモジュールの論理的オブジェクトと,暗号境界内に存

在するオペレーティングシステム及びその他のサポートアプリケーションとの相互作用。 

c) 暗号モジュールの記述。 

1) 暗号モジュール及び全ての構成要素(ハードウェア,ソフトウェア又はファームウェア)のバージ

ョン及びIDを提供する。 

d) ハードウェア,ソフトウェア,ファームウェア又はハイブリッドの指定。 

1) ソフトウェアモジュール,ファームウェアモジュール及びハイブリッドモジュールに関して,その

暗号モジュールが試験されたオペレーティングシステムの列挙,及び暗号モジュールによって使用

可能であるとベンダが確認したオペレーティングシステムの列挙。 

e) 暗号モジュールの全体的なセキュリティレベル及び個々の分野のセキュリティレベル。 

f) 

暗号モジュールの物理境界及び暗号境界の正確な定義。 

1) セキュリティポリシに規定された,この規格の要求事項の適用から除外されるハードウェア,ソフ

トウェア又はファームウェア。 

g) 全ての動作モード,及びそれらの動作モード間の切替えの仕方。セキュリティポリシは,暗号モジュ

ールに実装されているそれぞれの承認された動作モード及びそれぞれの動作モードがどのように設定

されるかを記述する。 

64 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

h) 縮退動作の記述。 

i) 

承認されたサービスに対して用いられる特定の鍵の強度を伴った,全てのセキュリティ機能の表,及

び必要な場合は,実装されている利用モード(例えば,CBC,CCM)の表。 

j) 

必要な場合は,ブロック図。 

k) 全体的なセキュリティ設計及び動作規則。 

l) 

必要な場合は,初期化要求事項。 

B.2.3 暗号モジュールのインタフェース 

a) 全ての(物理的及び論理的)ポート及びインタフェースの表。 

b) 五つの論理インタフェースを通る情報を定義する。 

c) 物理ポート及びそこを通るデータを規定する。 

d) トラステッドチャネルを規定する。 

e) エラー状態の間,制御出力のインタフェースが禁止されない場合,許可される制御出力のインタフェ

ースの仕様及び許可される根拠。 

B.2.4 役割,サービス及びオペレータ認証 

a) 全ての役割を規定する。 

b) 入出力と対応するサービスコマンドを伴った,役割の表。 

c) 認証方法がIDベースか役割ベースかにかかわらず,そしてその認証方法が要求されるかどうかにか

かわらず,それぞれの認証方法を規定する。 

d) どのように認証の強度の要求事項が満たされるか。 

e) バイパス機能がある場合,独立した二つの動作とは何か,及びどのように状態がチェックされるか。 

f) 

暗号出力の自動開始機能がある場合,独立した二つの動作とは何か,及びどのように状態が示される

か。 

g) 外部のソフトウェア又は外部のファームウェアがロードされる場合,暗号モジュールへの許可されて

いないアクセス及び暗号モジュールの許可されていない使用を阻止する,ロードについての制御及び

コードの分離を規定する。 

h) 承認された及び承認されていない,セキュリティサービス及び非セキュリティサービスを別々に列挙

する。 

i) 

それぞれのサービスに関する,サービス名,サービスの目的及び/又は用途の簡潔な記述(場合によ

っては,サービス名だけでこの情報を提供する。),サービスの呼び出しによって用いられる又はそれ

を通して実装される,承認されたセキュリティ機能(アルゴリズム,鍵管理技術又は認証技術)の一

覧表,及びサービス又はサービスが使う承認されたセキュリティ機能と関係付けられたSSPの一覧表。

サービスの使用を許可されたそれぞれのオペレータ役割に関して,全てのSSPへの個別のアクセス権

を記述した情報及びそれぞれの役割を認証するために用いられる方法を記述した情報。 

j) 

インストールプロセス及び暗号認証メカニズムを記述する。 

B.2.5 ソフトウェア・ファームウェアセキュリティ 

a) 用いられる承認された完全性技術を規定する。 

b) どのようにオペレータがオンデマンドで完全性テストを開始できるかについて規定する。 

c) 提供される実行可能コードの形式及びそれぞれの構成要素を規定する。 

d) 暗号モジュールがオープンソースである場合,コードを実行可能フォーマットにコンパイルするのに

必要なコンパイラ及び制御パラメタを規定する。 

65 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

B.2.6 動作環境 

a) 動作環境を変更不可能な動作環境,限定動作環境,又は変更可能な動作環境のいずれかに識別する。 

b) オペレーティングシステム及び試験したプラットフォームを識別する。 

c) それぞれの該当するセキュリティレベルに関して,どのように要求事項が満たされるかを説明する。 

d) ベンダは,試験されていないがベンダが正しく動作すると主張するオペレーティングシステムへの移

植を主張してもよい。 

e) 動作環境の構成に対するセキュリティ規則,設定又は制限の仕様。 

f) 

動作環境の構成に対するあらゆる制限の仕様。 

B.2.7 物理セキュリティ 

a) 物理形態(シングルチップ,マルチチップ組込み型又はマルチチップスタンドアロン型)を規定する。 

b) 暗号モジュールに実装される物理セキュリティのメカニズム(例えば,タンパー証跡を残すシール,

錠,タンパー応答及びゼロ化スイッチ,アラーム)を規定する。 

c) 物理セキュリティが維持されることを確実にするためにオペレータに要求されるアクション(例えば,

タンパー証跡を残すシールの定期検査,タンパー応答及びゼロ化スイッチのテスト)を規定する。 

1) 暗号モジュールが,オペレータが貼付したタンパー証跡を残すシール,又はオペレータがその暗号

モジュールのライフサイクルの間に適用若しくは変更するセキュリティアプライアンスを必要とす

る場合には,次の情報を規定する。すなわち,B.2.2で要求された参考写真又はイラストは,規定さ

れたとおりに構成された又は組み立てられた暗号モジュールを反映する。追加の写真・イラストが,

その他の構成を反映するために提供されてもよい。 

2) 不透明性の要求事項を満たすために未使用のスロット又は開口部を覆うのにフィラーパネルが必要

な場合は,写真又はイラストに,必要であればタンパー証跡を残すシールを貼り付けた,フィラー

パネルを示す。フィラーパネルは,パーツの一覧表に含まれる。 

3) 写真又はイラストは,物理セキュリティの要求事項を満たすために必要とされる全てのタンパー証

跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスの正確な配置を示す。 

4) 必要とされるタンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスの総数が示される(例え

ば,五つのタンパー証跡を残すシール,二つの不透明スクリーン)。正確な配置についての指示を提

供する写真又はイラストは,その写真又はイラスト中のそれぞれのアイテムに番号を付け,番号の

数を示された総数と等しくする(実際のタンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアン

スに番号を振る必要はない。)。 

5) タンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスが暗号モジュールのベンダに再注文で

きるパーツである場合は,セキュリティポリシは,シール,セキュリティアプライアンス又は適用

可能なセキュリティキットのパーツ番号を暗号モジュールのベンダに示す。再構成後,暗号モジュ

ールのオペレータは,新しいタンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスを除去及

び導入することが求められるかもしれない。 

6) 次の項目に責任を負うオペレータの役割を規定する。a)常時,全ての未使用のシールのセキュリテ

ィの維持及び管理,並びにb)暗号モジュールへのあらゆる変更の直接的管理及び観察。例えば,

タンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスが除去されるか又は設置される再構成

のような変更においては,暗号モジュールのセキュリティがその変更の間にも維持され,変更後に

暗号モジュールが承認された動作モードに戻るのを保証するための,管理及び観察。 

7) タンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスが除去される又はインストールされる

66 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ことが可能な場合には,新しいタンパー証跡を残すシール又はセキュリティアプライアンスを適用

するためにどのように表面又はデバイスが準備されなければならないかに関して,明確な指示が含

まれる。 

d) 実装される故障誘導への対処方法を規定する。 

B.2.8 非侵襲セキュリティ 

a) 非侵襲攻撃から暗号モジュールのCSPを保護するために暗号モジュールに用いられる,附属書Fで規

定される全ての非侵襲攻撃対処技術を規定する。 

b) 非侵襲攻撃から暗号モジュールのCSPを保護するために暗号モジュールに用いられる,附属書Fで規

定される非侵襲対処技術の有効性を記述する。 

注記 非侵襲攻撃から暗号モジュールのCSPを保護するために暗号モジュールに用いられる,附属書

Fで規定される非侵襲対処技術の有効性の記述のレベルは,広告文書(製品紹介誌)に見られ

るレベルと同等とする。 

B.2.9 センシティブセキュリティパラメタ管理 

a) 次の事項を規定する鍵管理表を提供する。1)鍵のタイプ,2)ビット強度,3)セキュリティ機能,4)

セキュリティ機能の証明書番号,5)どこでどのように鍵が生成されるのか,6)鍵がインポートされ

たものなのかエクスポートされたものなのか,7)使用されるいかなるSSP生成及び確立方法,並び

に8)全ての関連する鍵。 

b) その他のSSPの表及びどのようにそれらのSSPが生成されたかを提示する。 

c) 承認された及び承認されていない乱数ビット生成器を規定する。 

d) RBG出力の用途を記述する。 

e) RBGのエントロピー源を規定する。 

f) 

電子的及び手動の鍵入出力方法を規定する。 

g) SSP格納技術を規定する。 

h) 保護されていないSSPゼロ化方法及び理論的根拠,並びにオペレータ開始機能を規定する。 

i) 

アルゴリズム又は鍵長が承認されたものから承認されていないものへ移行するときの,適用される移

行期間又は移行時間枠を規定する。 

B.2.10 

自己テスト 

a) 定義されたパラメタを伴った,動作前自己テスト及び条件自己テストのリストを提供し,それらのテ

ストが実行される条件を記載する。 

b) 動作前自己テスト又は条件自己テストを実行する時間間隔及び暗号モジュールの自己テスト以外の動

作の中断を引き起こす全ての条件を記載する。 

c) 全てのエラー状態及び状態インジケータを記載する。 

d) 必要ならば,自己テストの開始方法を記載する。 

B.2.11 

ライフサイクル保証 

a) 暗号モジュールのセキュアな設置,初期化,立上げ及び運用の手順を規定する。 

b) いかなるメンテナンス要求事項も規定する。 

c) 管理者ガイダンス及び非管理者ガイダンス(別々の文書であってもよい。)を提供する。 

B.2.12 

その他の攻撃への対処 

a) どのようなその他の攻撃が対処されているかを規定する。 

67 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

b) 記載された対処技術の有効性を記述する。 

c) セキュリティに関係するガイダンス及び制約を列挙する。 

注記 その他の攻撃に対処するために実装されるセキュリティメカニズムの記述のレベルは,広告文

書(製品紹介誌)に見られるレベルと同等とする。 

68 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書C 
(規定) 

承認されたセキュリティ機能 

C.1 目的 

この附属書は,この規格で承認した,この規格に適用できるセキュリティ機能のリストを提供する。カ

テゴリは,ブロック暗号,ストリーム暗号,非対称鍵,メッセージ認証コード,ハッシュ関数,エンティ

ティ認証,鍵管理及び乱数生成器を含む。このリストは,全てを網羅するものではない。 

これは,承認機関によって承認されたセキュリティ機能の使用を排除しない。承認機関は,この附属書

全体を,承認されたセキュリティ機能の独自のリストに置き換えてもよい。 

C.1.1 ブロック暗号 

a) ISO/IEC 18033-3,Encryption Algorithms−Part 3: Block Ciphers 

C.1.2 ストリーム暗号 

a) ISO/IEC 18033-4,Encryption Algorithms−Part 4: Stream Ciphers 

C.1.3 非対称アルゴリズム及び技術 

a) ISO/IEC 9796-2,Information technology−Security techniques−Digital signature with message recovery−

Part 2: Integer factorization based techniques 

b) ISO/IEC 9796-3,Information technology−Security techniques−Digital signature with message recovery−

Part 3: Discrete logarithm based techniques 

c) ISO/IEC 14888 (all parts),Information technology−Security techniques−Digital signature with Appendix 

d) ISO/IEC 15946 (all parts),Information technology−Security techniques−Cryptographic techniques based on 

elliptic curves 

e) ISO/IEC 18033-2,Information technology−Security techniques−Encryption Algorithms−Part 2: 

Asymmetric cryptographic algorithms 

C.1.4 メッセージ認証コード 

a) ISO/IEC 9797-2,Information technology−Security techniques−Message Authentication Codes (MACs) −

Part 2: Mechanisms using a dedicated hash-function 

C.1.5 ハッシュ関数 

a) ISO/IEC 10118-2,Information technology−Security techniques−Hash functions−Part 2: Hash functions 

using an n-bit block cipher 

b) ISO/IEC 10118-3,Information technology−Security techniques−Hash functions−Part 3: Dedicated hash 

functions 

c) ISO/IEC 10118-4,Information technology−Security techniques−Hash functions−Part 4: Hash functions 

using modular arithmetic 

C.1.6 エンティティ認証 

a) ISO/IEC 9798-2,Information technology−Security techniques−Entity authentication−Part 2: Mechanisms 

using symmetric encipherment algorithms 

b) ISO/IEC 9798-3,Information technology−Security techniques−Entity authentication−Part 3: Mechanisms 

using digital signature techniques 

69 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

c) ISO/IEC 9798-4,Information technology−Security techniques−Entity authentication−Part 4: Mechanisms 

using a cryptographic check function 

d) ISO/IEC 9798-5,Information technology−Security techniques−Entity authentication−Part 5: Mechanisms 

using zero-knowledge techniques 

e) ISO/IEC 9798-6,Information technology−Security techniques−Entity authentication−Part 6: Mechanisms 

using manual data transfer 

C.1.7 鍵管理 

a) ISO/IEC 11770-2,Information technology−Security techniques−Key management−Part 2: Mechanisms 

using symmetric techniques 

b) ISO/IEC 11770-3,Information technology−Security techniques−Key management−Part 3: Mechanisms 

using asymmetric techniques 

c) ISO/IEC 11770-4,Information technology−Security techniques−Key management−Part 4: Key 

establishment mechanisms based on weak secrets 

C.1.8 乱数生成器 

a) ISO/IEC 18031,Information technology−Security techniques−Random bit generation 

70 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書D 
(規定) 

承認されたセンシティブセキュリティパラメタ生成・確立方法 

D.1 目的 

この附属書は,この規格で承認した,この規格に適用できるセンシティブセキュリティパラメタ生成・

確立方法のリストを提供する。このリストは,全てを網羅するものではない。 

これは,承認機関によって承認されたセンシティブセキュリティパラメタ生成・確立方法の使用を排除

しない。承認機関は,この附属書全体を,承認されたセンシティブセキュリティパラメタ生成・確立方法

の独自のリストに置き換えてもよい。 

D.1.1 センシティブセキュリティパラメタ生成 

D.1.2 センシティブセキュリティパラメタ確立方法 

a) ISO/IEC 11770-2,Information technology−Security techniques−Key management−Part 2: Mechanisms 

using symmetric techniques 

b) ISO/IEC 11770-3,Information technology−Security techniques−Key management−Part 3: Mechanisms 

using asymmetric techniques 

c) ISO/IEC 15946-3,Information technology−Security techniques−Cryptographic techniques based on elliptic 

curves−Part 3: Key establishment 

注記 ISO/IEC 15946-3は,その内容がISO/IEC 11770-3に統合されたため,現在は廃止されている。 

71 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書E 

(規定) 

承認された認証メカニズム 

E.1 

目的 

この附属書は,この規格で承認した,この規格に適用できる認証メカニズムのリストを提供する。この

リストは,全てを網羅するものではない。 

これは,承認機関によって承認された認証メカニズムの使用を排除しない。承認機関は,この附属書全

体を,承認された認証メカニズムの独自のリストに置き換えてもよい。 

E.1.1 認証メカニズム 

a) 現時点で承認済みの定義されたメカニズムはない。 

72 

X 19790:2015 (ISO/IEC 19790:2012) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書F 

(規定) 

非侵襲攻撃への対処に関する承認されたテストメトリクス 

F.1 

目的 

この附属書は,この規格で承認した,この規格に適用できる非侵襲攻撃対処への対処に関わる試験方法

及び基準(テストメトリクス)を提供する。このリストは,全てを網羅するものではない。 

このリストは非侵襲攻撃への対処に関する承認機関が承認したテストメトリクスの使用を排除しない。 

承認機関は,この附属書全体を,非侵襲攻撃への対処に関する承認されたテストメトリクスの独自のリ

ストに置き換えてもよい。 

F.1.1 

非侵襲攻撃への対処のテストメトリクス 

a) 現時点で承認され,定義された非侵襲攻撃への対処のテストメトリクスはない。 

参考文献  

[1] ISO 10007:2003,Quality management systems−Guidelines for configuration management 

[2] National Institute of Standards and Technology, Security Requirements for Cryptographic Modules, 

Federal Information Processing Standards Publication 140-2, May 25, 2001 (with latest changes notices) 

[3] ISO/IEC 27001,Information technology−Security techniques−Information security management systems

−Requirements