X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日
本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO/IEC 9126-1:2001,Software
engineering - Product quality - Part 1 : Quality modelを基礎として用いた。
JIS X 0129-1:0000には,次に示す附属書がある。
附属書A(規定)測定法
附属書B(参考)他規格での定義
附属書C(参考)規格制定の経緯
附属書D(参考)関連規格及び標準情報
JIS X 0129の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS X 0129-1 ソフトウェア製品の品質―第1部:品質モデル
X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 2
2. 適合性 ··························································································································· 3
3. 引用規格 ························································································································ 3
4. 定義 ······························································································································ 3
5. 品質モデルの枠組み ········································································································· 4
5.1 品質への取組み ············································································································· 4
5.2 製品品質及びライフサイクル ··························································································· 5
5.3 評価される項目 ············································································································· 7
5.4 品質モデルの利用 ·········································································································· 8
6. 外部品質及び内部品質のための品質モデル ··········································································· 8
6.1 機能性 ························································································································· 9
6.2 信頼性 ························································································································ 10
6.3 使用性 ························································································································ 10
6.4 効率性 ························································································································ 11
6.5 保守性 ························································································································ 11
6.6 移植性 ························································································································ 12
7. 利用時の品質のための品質モデル ······················································································ 12
7.1 利用時の品質 ··············································································································· 13
附属書A(規定)測定法 ······································································································· 14
A.1 ソフトウェア測定法 ······································································································ 14
A.2 利用時の品質測定法 ······································································································ 15
A.3 測定法の選択及び測定基準 ····························································································· 16
A.4 比較のために用いる測定法 ····························································································· 16
附属書B(参考)他規格での定義 ··························································································· 17
附属書C(参考)規格制定の経緯 ··························································································· 21
附属書D(参考)関連規格及び標準情報 ·················································································· 23
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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日本工業規格 JIS
X 0129-1:2003
(ISO/IEC 9126-1:2001)
ソフトウェア製品の品質―第1部:品質モデル
Software engineering - Product quality - Part 1 : Quality model
序文 この規格は,2001年に第1版として発行されたISO/IEC 9126-1,Software engineering - Product quality
- Part 1 : Quality modelを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本工業規格
である。
なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。
コンピュータの利用が広範な領域に広がりつつあり,その正しい運用は,しばしば事業の成功及び/又
は人の安全性に関して重大な意味をもっている。したがって,高品質ソフトウェア製品を開発する又は選
択することは,大変重要である。ソフトウェア製品品質の包括的な仕様化及び評価が,適切な品質を確保
するための主要な要因である。これは,ソフトウェア製品の使用目的を考慮して,適切な品質特性を定義
することによって達成できる。可能な限り妥当性が確認され又は広く受け入れられている測定法を用いて,
すべての関連するソフトウェア製品品質特性を仕様化し,評価することは重要である。
これらの必要性を支援するために作成されたJIS X 0129:1994 ソフトウェア製品の評価−品質特性及び
その利用要領は,六つの品質特性を定義し,ソフトウェア製品評価プロセスのモデルを記述していた。
品質特性及び関連する測定法は,ソフトウェア製品の評価だけではなく,品質要求の定義及び他の用途
に対して利用可能であることから,旧JIS X 0129:1994は,JIS X 0129群(ソフトウェア製品の品質)及びJIS
X 0133群(ソフトウェア製品の評価)という,二つの関連する規格群に置き換えられた。JIS X 0129群のこ
の部で定義されているソフトウェア製品の品質特性は,顧客及び利用者の機能的要求及び非機能的要求を
共に仕様化するのに用いることができる。
JIS X 0129のこの部は,旧JIS X 0129:1994の改正版であり,同じソフトウェア品質特性を含む。主要な
変更点は次のとおりである。
− 副特性を規定内容として導入,この副特性の大部分は旧JIS X 0129:1994の附属書A(参考)に掲載され
ていたものである。
− 品質モデルの仕様化
− 利用時の品質の導入
− 評価プロセスの削除(評価プロセスは現在JIS X 0133群で仕様化されている。)
− JIS X 0133-1との内容の整合
JIS X 0129群とJIS X 0133群(附属書D参照)との規格間の関係を図1に示す。
2
X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
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0133 -3
0133 -4
0133 -5
0129 -1
0133 -1
ISO/IEC TR
9126-2
ISO/IEC TR
9126-4
ISO/IEC TR
9126-3
資源 及び環境
評価プロセ
ス
ソフトウェア
製品の効果
ソフトウェ
ア製品
評価の支援
0133 -2
0133 -6
評価プロセス
内部測定法
外部測定法
利用時の品質
の測定法
図 1 JIS X 0129群とJIS X 0133群との規格間の関係
1. 適用範囲 この規格では,ソフトウェア製品品質に対して,次のa)及びb)の二部構成のモデルを規定
する。
a
内部品質及び外部品質
b
利用時の品質
モデルのa)の部分は,内部品質及び外部品質に対して六つの特性を規定し,これらの特性を,更に副特性
に細分化している。これらの副特性は,ソフトウェアがコンピュータシステムの一部として利用されると
きに外的に現れるもので,それらは,また内部ソフトウェア属性の結果である。この規格では,副特性よ
り下位のレベルでの内部品質及び外部品質のモデルについては規定していない。
モデルのb)の部分は,四つの利用時の品質特性を規定する。しかし,特性より下位のレベルでの利用時
の品質のモデルについては規定していない。利用時の品質は,六つのソフトウェア製品品質特性の利用者
に対する複合効果である。
規定された特性は,ファームウェアのコンピュータプログラム及びデータを含むあらゆる種類のソフト
ウェアに適用できる。特性及び副特性は,ソフトウェア製品品質についての一貫した用語を規定する。そ
れらは,また,ソフトウェアの品質要求の仕様化とソフトウェア製品能力との間のトレードオフのための
枠組みを規定する。
附属書A(規定)は,ソフトウェア製品の測定法及び利用時の品質の測定法に対する,要求事項及び推奨
事項を規定する。これらの測定法の例は,JIS X 0129群の他の部に含まれている。これらの測定法は,中
間製品を含むソフトウェア製品の品質要求及び設計目標を仕様化するときに適用可能である。この品質モ
デルをどのようにソフトウェア製品の評価に適用するかについては,JIS X 0133-1に示している。
この規格は,ソフトウェアの取得,要求,開発,利用,評価,支援,保守,品質保証及び監査に関連す
る人による異なる観点からのソフトウェア製品品質の仕様化及び評価を可能にする。例えば,開発者,取
得者,品質保証の要員及び独立した評価者,特にソフトウェア製品品質を仕様化し評価する責任者が,こ
の規格を利用することができる。この規格で規定する品質モデルの利用例を次に示す。
− 要求定義の完全性についての妥当性確認
3
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− ソフトウェア要求の識別
− ソフトウェア設計の具体目標の識別
− ソフトウェア試験の具体目標の識別
− 品質保証基準の識別
− 完成したソフトウェア製品に対する受入れ基準の識別
備考1. この規格は,次のことを提供するために,TR X 0021群(ソフトウェアプロセスアセスメント)
と共に用いることができる。
− 顧客−供給者プロセスにおけるソフトウェア製品品質定義のための枠組み
− 支援プロセスにおける審査,検証及び妥当性確認の支援,並びにその定量的な品質評価のた
めの枠組み
− 管理プロセスにおける組織的な品質目標設定の支援
2. この規格は,次のことを提供するために,JIS X 0160(ソフトウェアライフサイクルプロセス)
と共に用いることができる。
− ライフサイクルの初期のプロセスにおけるソフトウェア製品の品質要求定義の枠組み
− 支援ライフサイクルプロセスにおける審査,検証及び妥当性確認の支援
3. この規格は,次のことを提供するために,JIS Q 9001(品質マネジメントシステム―要求事項)
と共に用いることができる。
− 品質目標設定の支援
− 設計審査,検証及び妥当性確認の支援
4. この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21に基づき,IDT(一致している),MOD(修
正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO/IEC 9126-1:2001,Software engineering - Product quality - Part 1 : Quality model (IDT)
2. 適合性 この規格に従うあらゆるソフトウェア製品の品質要求,仕様化又は評価のためには,6.及び
7.で示す特性及び副特性を使用しなければならない。このときいずれかの特性又は副特性を除外する場合
には,理由を示さなければならない。又は,ソフトウェア製品品質属性の独自の分類を示し,6.及び7.で
示す特性及び副特性との対応を提示しなければならない。
比較に用いるための測定法を含むソフトウェア製品の品質要求又は仕様は,測定法がA.4で仕様化され
た特徴をもっているかどうかを明示しなければならない。
3. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。この引用規格は,記載の年の版だけがこの規格の規定を構成するものであって,その後の改正版・追
補には適用しない。しかしながら,この規格に基づくことに同意した関係者は,次に示す規格の最新版が
適用できるかを調査するとよい。
JIS X 0133-1:1999 ソフトウェア製品の評価−第1部:全体的概観
備考 ISO/IEC 14598-1:1998, Information Technology - Software product evaluation - Part 1 : General
overviewが,この規格と一致している。
4. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS X 0133-1の4.(定義)によるほか,次による。
4
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備考 JIS X 0133-1からの定義は,附属書Bに再定義されている。
4.1
達成水準(level of performance) 品質特性に対応する特定の値の集合によって示される必要性を満
たす度合い。
5. 品質モデルの枠組み ここでは,品質に対する異なる取組みの間の関係を説明する品質モデルの枠組
みを規定する。この品質モデルの例を,6.及び7.に示す。
5.1
品質への取組み
プロセス ソフトウェア製品 ソフトウェア製品の効果
影響する 影響する 影響する
プロセス 内部品質 外部品質 利用時の
品質 属性 属性 品質属性
依存する 依存する 依存する
利用
状況
プロセス測定値 内部測定値 外部測定値 利用時の品質測定値
図 2 ライフサイクルでの品質
利用者の品質の必要性は,特定の利用状況における利用時の品質に対する要求を含む。これらの識別さ
れた必要性は,ソフトウェア製品の品質特性及び品質副特性を用いて,外部品質及び内部品質を仕様化す
るときに使用することができる。
ソフトウェア品質の必要性を満たすためのソフトウェア製品の評価は,ソフトウェア開発ライフサイク
ルの中のプロセスの一つである。ソフトウェア製品品質は,内部属性を測定すること(典型的には中間製品
の静的な測定値),外部属性を測定すること(典型的には実行時のコードの振る舞いを測定すること)又は利
用時の品質属性を測定することによって評価することができる。その具体目標は,製品が特定の利用局面
で要求された効果を発揮できることである(図2参照)。
プロセス品質(JIS X 0160に規定されているすべてのライフサイクルプロセスの各品質)は,製品品質の
向上に寄与し,製品品質は,利用時の品質の向上に寄与する。したがって,プロセスの評価及び向上は,
製品品質を向上させる手段であり,製品品質の評価及び向上は,利用時の品質を向上させる手段の一つで
ある。同様に,利用時の品質の評価は,製品の向上に反映させることができ,製品の評価は,プロセスの
向上に反映させることができる。
ソフトウェアの適切な内部属性は,要求された外部の振る舞いを満たすめの前提条件であり,適切な外
部の振る舞いは,利用時の品質を満たすための前提条件である(図2参照)。
開発者,保守者,取得者及び最終利用者の要求を満たすために,ソフトウェア製品品質に対する要求は,
一般的には,内部品質,外部品質及び利用時の品質に対する総合評価の基準を含む (JIS X 0133-1:1999 の
8.を参照)。
5
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5.2
製品品質及びライフサイクル ソフトウェアライフサイクルを通して,内部品質,外部品質及び利
用時の品質の視点は変化する。例えば,ライフサイクルの開始時点で品質要求として仕様化された品質は,
大部分が外部の視点及び利用者の視点から見たものであり,設計品質のように大部分が内部の視点及び開
発者の視点から見た中間的な製品品質とは異なっている。品質の仕様化及び品質の評価などのような,品
質の必要な水準を達成するのに用いられる技術は,これらの異なる視点を支援する必要がある。ライフサ
イクルの各段階で適切に品質を管理するために,これらの見方及び品質に関連する技術を定義する必要が
ある。
その目標は,利用者の真の必要性を満たすために,必要かつ十分な品質を達成することである。ISO 8402
は,明示的及び暗示的な必要性を満たす能力という点から品質を定義している。しかしながら,利用者に
よって明示された必要性は,必ずしも真の利用者の必要性を反映しているとは限らない。なぜなら,
(1) 利用者が自分の真の必要性に気づいていないことがある。
(2) 必要性は,明示された後に変わることがある。
(3) 異なった利用者は,異なった運用環境をもつことがある。
(4) 特に既製ソフトウェアにおいては,可能性のある全種別の利用者を調査することは不可能かもしれな
い。
そのため,設計の開始前に品質要求を完全に定義することはできない。それでも,可能な限り詳細に真の
利用者要求を理解すること及び要求事項としてそれらを表現する必要がある。目標は,必ずしも完全な品
質を達成するものではなく,製品が納入されて実際に利用者によって利用されるときに,個々の利用の局
面において,必要かつ十分であればよい。
品質要求のために用いられる測定法のための測定尺度は,要求の異なる満足度に対応した分類に分割す
ることができる。例えば,その尺度は,不満足及び満足のような二種類,又は要求を超過・目標範囲内・
最小限で受入可・受入不可のような四種類に分割することができる (JIS X 0133-1を参照)。分類は,利用
者及び開発者の両方が不必要な費用及び工程遅延を回避できるように仕様化するのがよい。
ソフトウェアライフサイクルの異なる段階においては,製品品質及び関連する測定法に対する異なる視
点がある(図3参照)。
6
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外部品質
要求
外部品質
内部品質
要求
内部品質
利用者の品質
への必要性
利用時の品質
妥当性確認
検証
利用及び反映
仕様化に関与する
標示する
標示する
仕様化に関与する
図 3 ソフトウェアライフサイクルでの品質
備考 この図はJIS X 0133-1の図4を単純化し,JIS X 0129-1と一貫性をもつように修正したもので
ある。
利用者の品質の必要性は,利用時の品質の測定法,外部測定法及びときには内部測定法によって,品質要
求として仕様化することができる。測定法によって仕様化されたこれらの要求は,製品の妥当性を確認す
るとき,基準として使用するのがよい。利用者の必要性を満足する製品を作り上げるには,通常,利用者
の観点からの継続的な反映を伴う反復的なソフトウェア開発への取組みが必要となる。
備考 対話型システムのための設計プロセスに関する手引きは,JIS Z 8530に規定されている。
外部品質要求は,外部の視点から要求された品質の水準を仕様化する。それらは,利用時の品質要求を含
む利用者の品質の必要性から派生した要求を含む。外部品質要求は,開発の様々な段階で妥当性を確認す
るための対象として利用される。この規格で規定するすべての品質特性の外部品質要求は,外部測定法を
用いて品質要求仕様に記述し,内部品質要求に変換し,製品を評価するときの基準として利用するのがよ
い。
内部品質要求は,製品の内部の視点から要求された品質の水準を仕様化する。内部品質要求は,中間的な
製品の特徴を仕様化するために利用する。中間的な製品は,静的モデル及び動的モデル,その他の文書及
びソースコードを含むことができる。内部品質要求は,開発の様々な段階で妥当性を確認するための対象
として利用することができる。それらはまた,開発戦略及び開発期間中の評価及び検証のための基準の定
義に,利用することができる。これは,JIS X 0129群の範囲外である追加の測定法(例えば,再利用性に関
するもの)の利用を含んでもよい。特定の内部品質要求は,内部測定法を用いて,定量的に仕様化するのが
よい。
内部品質は,内部の視点からのソフトウェア製品特性の全体である。内部品質は,内部品質要求に対して
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測定及び評価する。ソフトウェア製品品質の細部は,コード作成中,審査中及び試験中に向上することも
ある,しかし,内部品質によって示されたソフトウェア製品品質の基本的な性質は,再設計しない限り変
わらずに残る。
見積られる(又は予測される)外部品質は,内部品質の知識に基づいて,開発の各段階で各品質特性に対応
して見積られ又は予測される最終ソフトウェア製品の品質である。
外部品質は,外部の視点から見たソフトウェア製品の特性の全体である。外部品質は,ソフトウェアが実
行されるときの品質であり,通常は,外部測定法を利用して摸擬データを用いた摸擬環境での試験中に測
定及び評価する。大部分の障害は,試験中に発見し除去するのがよい。しかしながら,幾つかの障害は,
試験後も残存するかもしれない。ソフトウェアのアーキテクチャ又は他の基本的な設計は修正するのが難
しいので,通常,試験中を通して基本的な設計は変わらずに残る。
見積られる(又は予測される)利用時の品質は,内部品質及び外部品質の知識に基づいて,開発の各段階で
各利用時の品質特性に対応して見積られ又は予測される最終ソフトウェア製品の品質である。
備考 固有な技術が開発された時点で,この規格で規定された各品質特性の外部品質及び利用時の品
質は,開発期間中に見積り又は予測することができる。しかしながら,現在の技術の状態は,
予測の目的のための必要なすべての支援を提供できていないので,内部品質,外部品質及び利
用時の品質との間の相互関係を明らかにする,より多くの技術を開発するのがよい。
利用時の品質は,それが特定の環境及び特定の利用状況で利用されるときの,利用者の視点でのソフトウ
ェア製品の品質である。それは,ソフトウェア自体の特徴を測定するのではなく,ある環境において,利
用者が目標を達成することができる程度を測定する(利用時の品質は7.に規定されている。)。
備考 “利用者”は,オペレータ及び保守者の両方を含む想定できるあらゆる種別の利用者であり,
かつ,その要求は異なることがある。
利用者環境の品質水準は,開発者環境のそれとは異なっていてもよい。これは,異なる利用者の必要性
及び能力間の差異,並びに異なるハードウェア及び支援環境の違いによる。利用者は,自分の作業に利用
するソフトウェアの属性だけを評価する。場合によっては,要求分析の段階で最終利用者によって仕様化
したソフトウェア属性が,製品の利用時点では,もはや利用者要求を満たさないことがある。これは,利
用者要求の変更及び暗示的必要性を仕様化することの困難さによる。
5.3
評価される項目 項目は,直接測定によって評価することができるか,又はその項目から生じた結
果を測定することで間接的に評価することもできる。例えば,プロセスは,その製品を測定及び評価する
ことで間接的に評価してもよい。また,製品は,(利用時の品質測定法を用いて)利用者の作業実績を測定
することで間接的に評価してもよい。
ソフトウェアは,単独では動作せず,通常は,インタフェース,ハードウェア,オペレータ及びワーク
フローをもつ他のソフトウェア製品によって主に構成される,より大きなシステムの一部として動作する。
完成したソフトウェア製品は,選択した外部測定法の水準によって評価することができる。これらの測定
法は,その環境との相互作用を示し,運用中のソフトウェアの観察によって総合評価する。利用時の品質
は,特定の利用者によって利用される製品が,有効性,生産性,安全性及び満足性についての仕様化され
た目標を達成するという必要性を満たす程度によって,測定することができる。これは通常,より特定の
ソフトウェア製品の品質特性の測定値によって補われ,開発プロセスの早い段階で行うことができる。
開発の初期の段階では,資源及びプロセスだけを測定することができる。中間製品(仕様,ソースコード
など)が利用できるようになった時点で,中間製品は,選択された内部測定法の水準によって評価すること
ができる。これらの測定法は,外部測定法の値を予測するために利用することができる。また,外部品質
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に対する本質的な前提条件として,単独に測定してもよい。
さらに,ソフトウェア製品の評価とそれが実行されるシステムの評価を区別することができる。
備考1. 例えば,システムの信頼性は,あらゆる原因(ハードウェア,ソフトウェア,人的誤りなど)
に基づくすべての故障を観察することで総合評価するが,ソフトウェア製品の信頼性は,観
察された故障の中から,そのソフトウェアの障害(要求,設計又は製造に起因する)に基づく
ものだけを抜き取って総合評価する。
また,システムの境界がどこかの判断は,評価の目的及び利用者が誰であるかに依存する。
備考2. 例えば,コンピュータを利用した航空管制システムをもつ航空機の利用者が乗客である場合
には,彼らが依存するシステムは,乗組員,機体並びに航空管制システムのハードウェア及
びソフトウェアを含むが,乗組員が利用者である場合には,彼らが依存するシステムは,機
体及び航空管制システムだけを含む。
5.4
品質モデルの利用 ソフトウェア製品品質は,定義された品質モデルを利用して評価するのがよい。
ソフトウェア製品及び中間製品の品質目標を設定するときには,品質モデルを利用するのがよい。ソフト
ウェア製品品質は,特性及び副特性から構成される階層的な品質モデルに分解するのがよい。その品質モ
デルは,品質に関連する課題のチェックリストとして利用できる。6.及び7.では,階層的な品質モデルを
規定している(けれども,特定の環境では他の方法で品質を分類するほうがより適切な場合もある)。
実際には,大規模なソフトウェア製品のすべての部分に対して,すべての内部副特性及び外部副特性を
測定することはできない。同様に,考え得るすべての利用者作業のシナリオに対して,利用時の品質を測
定することは通常,実用的でない。評価のための資源は,業務の具体目標,並びに製品及び設計プロセス
の性質に基づいて,異なる種別の測定に配分する必要がある。
6. 外部品質及び内部品質のための品質モデル ここでは,外部品質及び内部品質のための品質モデルを
定義する。品質モデルは,ソフトウェア品質属性を六つの特性(機能性,信頼性,使用性,効率性,保守性
及び移植性)に分類する。それらを更に副特性に分割する(図4参照)。副特性は,内部測定法又は外部測定
法によって測定することができる。
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外部及び内部
品質
機能性
信頼性
成熟性
障害許容性
回復性
信頼性標準適合性
使用性
理解性
習得性
運用性
魅力性
使用性標準適合性
効率性
時間効率性
資源効率性
効率性標準適合性
保守性
解析性
変更姓
安定性
試験性
保守性標準適合性
移植性
環境適応性
設置性
共存性
置換性
移植性標準適合性
合目的性
正確性
相互運用性
セキュリティ
機能性標準適合性
図 4 外部及び内部品質のための品質モデル
各品質特性及び品質特性に影響するソフトウェアの品質副特性を定義する。特性及び副特性のそれぞれ
についてのソフトウェアの能力は,測定可能な内部属性の集合によって定まる。内部測定法の例をISO
/IEC TR 9126-3に示す。特性及び副特性は,ソフトウェアを含むシステムが提供する能力の度合いによっ
て外部的に測定できる。外部測定法の例をISO /IEC TR 9126-2に示す。
備考1. 標準適合性の考え方は,すべての内部品質及び外部品質の特性に全般的に適用できるため,
すべての特性には,標準適合性に関する副特性がある。
2. この規格の幾つかの特性が,ディペンダビリティに関連している。あらゆる種別のシステム
に対するディペンダビリティの特性がJIS Z 8115 に定義されている。この規格の用語もまた,
JIS Z 8115に定義されており,定義は,広く互換性がある。
6.1
機能性 ソフトウェアが,指定された条件の下で利用されるときに,明示的及び暗示的必要性に合
致する機能を提供するソフトウェア製品の能力。
備考1. この特性は,必要性を満たすためにソフトウェアが何をするかに関係している。これに対し
て,他の特性は,主に,いつどのように必要性を満たすかに関係している。
2. この特性の明示的及び暗示的必要性について,B.21の品質の定義の備考が適用できる。
3. 利用者が運用するシステムについては,機能性,信頼性,使用性及び効率性が組み合わされ
たものを,利用時の品質によって外部的に測定することができる(7.参照)。
6.1.1
合目的性 指定された作業及び利用者の具体目標に対して適切な機能の集合を提供するソフトウ
ェア製品の能力。
備考1. 適切であることの例は,構成要素の副機能及びテーブルの容量が,仕事に合わせて構築され
ていることである。
2. 合目的性は,JIS Z 8520“仕事への適合性”に対応する。
3. 合目的性は,運用性にも影響する。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.1.2
正確性 必要とされる精度で,正しい結果若しくは正しい効果,又は同意できる結果若しくは同意
できる効果をもたらすソフトウェア製品の能力。
6.1.3
相互運用性 一つ以上の指定されたシステムと相互作用するソフトウェア製品の能力。
備考 相互運用性は,置換性(6.6.4参照)とのあいまいさを可能な限り避けるために,互換性という用
語の代わりに使用する。
6.1.4
セキュリティ 許可されていない人又はシステムが情報又はデータを読んだり,修正したりするこ
とができないように,及び許可された人又はシステムが情報又はデータへのアクセスを拒否されないよう
に,情報又はデータを保護するソフトウェア製品の能力(JIS X 0160:1996 )。
備考1. 転送中のデータにも適用する。
2. 安全性は,それがソフトウェアだけに関係するのではなく,システム全体に関係するため,
利用時の品質特性として定義する。
6.1.5
機能性標準適合性 機能性に関連する規格,規約又は法律上及び類似の法規上の規則を遵守するソ
フトウェア製品の能力。
6.2
信頼性 指定された条件下で利用するとき,指定された達成水準を維持するソフトウェア製品の能
力。
備考1. 磨耗又は経年変化は,ソフトウェアでは起こらない。信頼性の限界は,要求,設計及び製造
における障害に起因する。故障は,経過時間より,むしろソフトウェア製品の使い方及び選
択されたプログラムのオプションに依存した障害に起因する。
2. JIS X 0014における信頼性の定義は,“機能単位が,要求された機能を………実行する能力”
である。この規格では,機能性は,ソフトウェア品質の特性の一つにすぎない。それゆえ,
信頼性の定義を“要求された機能を………実行する”から“指定された達成水準を維持する
………”に拡張している。
6.2.1
成熟性 ソフトウェアに潜在する障害の結果として生じる故障を回避するソフトウェア製品の能
力。
6.2.2
障害許容性 ソフトウェアの障害部分を実行した場合,又は仕様化されたインタフェース条件に違
反が発生した場合に,指定された達成水準を維持するソフトウェア製品の能力。
備考 指定された達成水準は,フェールセーフの能力を含んでもよい。
6.2.3
回復性 故障時に,指定された達成水準を再確立し,直接に影響を受けたデータを回復するソフト
ウェア製品の能力。
備考1. 故障に伴い時々ソフトウェア製品が,しばらくの間ダウンすることがあるが,その時間の長
さで,回復性を評価する。
2. 可用性は,明示された利用条件下で,定められた時点に,要求された機能を実行できる状態
に保つソフトウェア製品の能力である。外部的には,可用性は,総時間に対して,ソフトウ
ェア製品が正常な状態で動作している時間の比率で評価できる。したがって,可用性は,成
熟性(故障の頻度を左右する。),障害許容性及び回復性(各故障に伴うダウン時間の長さを左
右する。)の組み合せたものである。それゆえ,可用性は,副特性として含まれていない。
6.2.4
信頼性標準適合性 信頼性に関連する規格,規約又は規則を遵守するソフトウェア製品の能力。
6.3
使用性 指定された条件の下で利用するとき,理解,習得,利用でき,利用者にとって魅力的であ
るソフトウェア製品の能力。
備考1. 機能性,信頼性及び効率性のある側面は使用性に影響を与える。しかし, JIS X 0129群の目
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
的から,それらの側面を使用性として分類していない。
2. 利用者にはオペレータ,最終利用者及びソフトウェアの利用で影響を受けたり依存したりす
る間接的利用者を含めてもよい。使用性は,利用の際の準備及び結果に対する評価を含め,
ソフトウェアが影響を与えうるすべての利用者環境を扱うとよい。
6.3.1
理解性 ソフトウェアが特定の作業に特定の利用条件で適用できるかどうか,及びどのように利用
できるかを利用者が理解できるソフトウェア製品の能力。
備考 理解性は,文書類及びそのソフトウェアから得られる最初の印象に依存する。
6.3.2
習得性 ソフトウェアの適用を利用者が習得できるソフトウェア製品の能力。
備考 この内部属性は,JIS Z 8520に定義されている“学習への適合性”に対応する。
6.3.3
運用性 利用者がソフトウェアの運用及び運用管理を行うことができるソフトウェア製品の能力。
備考1. 合目的性,変更性,環境適応性及び設置性の側面は,運用性に影響を与える場合がある。
2. 運用性は,JIS Z 8520に定義されている“可制御性”,“誤りに対する許容度”,及び“利用者
の期待への合致”に対応する。
3. 利用者によって運用されるシステムでは,機能性,信頼性,使用性及び効率性が組み合わさ
れたものを,利用時の品質として外部的に測定することができる。
6.3.4
魅力性 利用者にとって魅力的であるためのソフトウェア製品の能力。
備考 魅力性は色彩の利用及びグラフィカルデザイン性のように,利用者にとってソフトウェア製品
をもっと魅力的なものにするための属性に相当する。
6.3.5
使用性標準適合性 使用性に関連する規格,規約,スタイルガイド又は規則を遵守するソフトウェ
ア製品の能力。
6.4
効率性 明示的な条件の下で,使用する資源の量に対比して適切な性能を提供するソフトウェア製
品の能力。
備考1. 資源には他のソフトウェア製品,システムを構成するソフトウェア及びハードウェア並びに
材料(例えば印刷用紙,ディスケットなど)を含んでもよい。
2. 利用者によって運用されるシステムでは,機能性,信頼性,使用性及び効率性が組み合わさ
れたものを,利用時の品質として外部的に測定することができる。
6.4.1
時間効率性 明示的な条件の下で,ソフトウェアの機能を実行する際の,適切な応答時間,処理時
間及び処理能力を提供するソフトウェア製品の能力。
6.4.2
資源効率性 明示的な条件の下で,ソフトウェアの機能を実行する際の,資源の量及び資源の種類
を適切に使用するソフトウェア製品の能力。
備考 人的資源は,生産性(7.1.2参照)の一部として含まれる。
6.4.3
効率性標準適合性 効率性に関連する規格又は規約を遵守するソフトウェア製品の能力。
6.5
保守性 修正のしやすさに関するソフトウェア製品の能力。修正は,是正若しは向上,又は環境の
変化,要求仕様の変更及び機能仕様の変更にソフトウェアを適応させることを含めてもよい。
6.5.1
解析性 ソフトウェアにある欠陥の診断又は故障原因の追及,及びソフトウェアの修正箇所の識
別を行うためのソフトウェア製品の能力。
6.5.2
変更性 指定された修正を行うことができるソフトウェア製品の能力。
備考1. 修正の実施にはコーディング,設計及び仕様書の変更を含む。
2. ソフトウェアが最終利用者によって修正される場合,変更性は運用性に影響する場合もある。
6.5.3
安定性 ソフトウェアの修正による,予期せぬ影響を避けるソフトウェア製品の能力。
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6.5.4
試験性 修正したソフトウェアの妥当性確認ができるソフトウェア製品の能力。
6.5.5
保守性標準適合性 保守性に関連する規格又は規約を遵守するソフトウェア製品の能力。
6.6
移植性 ある環境から他の環境に移すためのソフトウェア製品の能力。
備考 環境には組織,ハードウェア又はソフトウェアの環境を含めてもよい。
6.6.1
環境適応性 ソフトウェアにあらかじめ用意された以外の付加的な作業又は手段なしに,指定され
た異なる環境にソフトウェアを適応させるためのソフトウェア製品の能力。
備考1. 環境適応性は内部的容量(例えば,画面,表,トランザクションの規模,報告書の形式など)
の拡大縮小の調整能力を含む。
2. ソフトウェアが最終利用者によって適応される場合,環境適応性は,JIS Z 8520で定義され
る“個人化への適合性”に対応し,運用性に影響を与える場合がある。
6.6.2
設置性 指定された環境に設置するためのソフトウェア製品の能力。
備考 ソフトウェアが最終利用者によって設置される場合,設置性は結果として合目的性及び運用性
に影響を及ぼすことがある。
6.6.3
共存性 共通の資源を共有する共通の環境の中で,他の独立したソフトウェアと共存するためのソ
フトウェア製品の能力。
6.6.4
置換性 同じ環境で,同じ目的のために,他の指定されたソフトウェア製品から置き換えて使用す
ることができるソフトウェア製品の能力。
備考1. 例えば,アップグレード時にソフトウェア製品の新しい版の置換性は,利用者にとって重要
である。
2. 置換性は,相互運用性(6.1.3参照)との意味のあいまいさを避けるために,互換性という用語
の代わりに使用する。
3. 置換性は,設置性と環境適応性との両方の属性を含む場合がある。置換性の概念が重要であ
るために副特性として含められている。
6.6.5
移植性標準適合性 移植性に関連する規格又は規約を遵守するソフトウェア製品の能力。
7. 利用時の品質のための品質モデル ここでは利用時の品質のための品質モデルを定義する。利用時の
品質の属性は,有効性,生産性,安全性及び満足性の四つの特性に分類できる (図5参照)。
利用時の品質は,利用者の視点からの品質である。利用時の品質を達成することは,必要な外部品質を
達成することに依存している。さらに,外部品質を達成することは,必要な内部品質を達成することに依
存している(図2参照)。測定は,通常,三つの階層が要求される。なぜなら内部測定値が基準に合致して
も必ずしも,外部測定値の基準を達成できるわけではなく,副特性の外部測定値に対して基準に合致して
も,利用時の品質の基準を達成できるわけではない。利用時の品質測定法の例をISO/IEC TR 9126-4に示
す。
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利用時の品質
有効性
生産性
安全性
満足性
図 5 利用時の品質のための品質モデル
7.1
利用時の品質 指定された利用者が,指定された利用の状況で,有効性,生産性,安全性及び満足
性に対する指定された目標を達成できるソフトウェア製品の能力。
備考1. 利用時の品質は,ソフトウェア自身の特徴というよりも,ソフトウェアを含む環境における
利用者の視点の品質であり,むしろその環境の中でソフトウェアを利用した結果から測定す
る。
2. 現在,JIS X 0133-1(附属書Bで再述)における利用時の品質の定義では,“安全性”という新
しい特性を含んでいない。
3. JIS Z 8521で定義している使用性は,この規格にある利用時の品質と類似の定義をしている。
利用時の品質は,どの品質特性からも影響を受けることがあり,この規格で,理解性,習得
性,運用性,魅力性及び使用性標準適合性によって定義している使用性よりも広範囲である。
7.1.1
有効性 利用者が指定された利用の状況で,正確かつ完全に,指定された目標を達成できるソフト
ウェア製品の能力。
7.1.2
生産性 利用者が指定された利用の状況で,達成すべき有効性に対応して,適切な量の資源を使う
ことができるソフトウェア製品の能力。
備考 資源には,作業を完了するまでの時間,利用者の労力,材料又は使用した費用を含めることが
できる。
7.1.3
安全性 利用者が指定された利用の状況で,人,事業,ソフトウェア,財産又は環境への害に対し
て,容認できるリスクの水準を達成するためのソフトウェア製品の能力。
備考 リスクは,一般に,機能性(セキュリティを含む),信頼性,使用性又は保守性の欠陥の結果で
ある。
7.1.4
満足性 指定された利用の状況で,利用者を満足させるソフトウェア製品の能力。
備考 満足性は,製品を対話的に利用したときの利用者の反応であり,製品の利用を含む。
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附属書A(規定)測定法
A.1 ソフトウェア測定法
A.1.1 内部属性及び外部属性 ある階層レベルの内部属性は,幾つかの階層レベルの外部属性に影響を与
えることが分かっている。したがって,ほとんどの特性には外部の局面及び内部の局面がある。例えば,
信頼性は外部的には,ソフトウェア試用期間中に,所定実行時間に発生する故障の数を観察することによ
って測定するとよい。また内部的には,障害許容性の水準を総合評価するために,詳細仕様書及びソース
コードを点検することによって測定するとよい。内部属性は外部属性の指標であるといえる。ある内部属
性は,一つ以上の特性に影響を与えていてもよい,そしてある特性は一つ以上の属性(図 A.1参照)から影
響を受けていてもよい。このモデルで,ソフトウェア製品の品質属性全体は,特性及び副特性の階層的な
木構造に分類される。この構造の最上位のレベルは,品質特性からなり,最下位のレベルはソフトウェア
品質属性からなる。幾つかの属性は,一つ以上の副特性に寄与しているかもしれないので,この階層構造
は完全ではない。
内部属性
品質特性
品質副特性
属性
外部属性
図 A.1 品質特性,品質副特性及び品質属性
副特性は,内部測定法又は外部測定法によって測定することができる。
内部属性と外部測定値との関係は,決して完全ではない。特定の内部属性が関連する外部測定値に与え
る効果は経験によって決定され,ソフトウェアが使われる特定の状況に依存する。
同様に,(合目的性,正確性,障害許容性及び時間効率性のような)外部の特徴が,観察された品質に影
響を与える。利用時の品質における故障(例えば,利用者が作業を完了することができない)は,外部品質
属性(例えば,合目的性又は運用性)及び関連する,変更すべき内部属性までを追跡することができる。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
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A.1.2 内部測定法 内部測定法は,設計及びコーディング期間に(仕様書又はソースコードのような)実行
可能ではないソフトウェア製品に適用できる。ソフトウェア製品を開発中に,中間製品は擬似の振る舞い
から得られたものも含めて,内部の特徴を測定する内部測定法を使って評価するのがよい。これらの内部
測定法の主要な目的は,必要とされる外部品質及び利用時の品質が達成されることを確実にすることであ
る。例を ISO/IEC 9126-3に示す。内部測定法は,利用者,評価者,試験者及び開発者に対し,ソフトウ
ェア製品が実行可能になる前に,ソフトウェア製品の品質を評価すること及び品質の課題を提言すること
を可能にする利点を提供する。
内部測定法は,内部属性を測定する,又は中間ソフトウェア製品若しくは引渡可能なソフトウェア製品
の静的な特徴を分析することによって外部属性を指し示す。内部測定法の測定は,例えば,ソースコード
命令,ソフトウェア構成要素,制御グラフ,データフロー及び状態遷移図に現れる数又は頻度を使う。
備考 文書類も内部測定法を使って同様に評価することができる。
A.1.3 外部測定法 外部測定法は,実行可能なソフトウェア又はシステムを試験し,操作し,観察するこ
とによって,それがシステムの一部であるソフトウェア製品の振る舞いの測定から導きだされた測定値を
用いる。ソフトウェア製品を取得する前,又は利用する前に,特定の組織的及び技術的環境におけるその
製品の利用,開発及び管理に関係する業務の具体目標に基づいて,測定法を用いてそのソフトウェア製品
を評価するのがよい。これらは主として外部測定法である。例をISO/IEC TR 9126-2に示す。外部測定法
は,利用者,評価者,試験者及び開発者に対し,試験又は運用期間中にソフトウェア製品品質の評価を可
能とする利点を提供する。
A.1.4 内部測定法と外部測定法との関係 ソフトウェア製品の品質要求を定義するとき,品質要求に寄与
するソフトウェア製品の品質特性又は副特性を列挙する。利用者の必要性をソフトウェアが満たしている
かの妥当性を確認する品質基準を定量化するために,適切な外部測定法及び許容範囲を仕様化する。要求
される外部品質と利用時の品質とを最終的に達成するため及び開発期間中にそれらを製品に作り込む計画
を立てるために,ソフトウェアの内部品質属性を定義し,仕様化する。開発期間中に,中間ソフトウェア
製品が内部品質仕様を満たすかどうかについての検証に使用することができるように,内部品質属性を定
量化するための適切な内部測定法及びその許容範囲を仕様化する。
対象とする外部測定法とできるだけ強い関係をもつ内部測定法を用いることを推奨する。そうすること
によって,それらを,外部測定法の測定値の予測に使うことができる。しかし,内部測定法と外部測定法
との間に強い関係を与える厳密な理論モデルを設計することは一般的に難しい。
A.2 利用時の品質測定法 利用時の品質測定法は,特定の利用状況下で,特定の目標を達成するために,
有効性,生産性,安全性及び満足性を伴い,特定の利用者の必要性を製品が満たしている程度を測定する。
利用時の品質を評価することは,特定の利用者作業のシナリオにおけるソフトウェア製品品質の妥当性確
認を行うことである。
備考 JIS X 0133-6附属書Dが利用時の品質の評価モジュールの参考例を含んでいる。
利用時の品質は,ソフトウェアを含むシステム品質の利用者の視点であり,ソフトウェアそれ自身の特
徴よりも,ソフトウェアを使用することによる結果に関して,測定する。利用時の品質は,利用者にとっ
て内部品質及び外部品質の複合効果である。
ソフトウェア製品の他の品質特性と利用時の品質との関係は利用者の型に依存する。
− 利用時の品質が,主に機能性,信頼性,使用性及び効率性の結果である,最終利用者。
− 利用時の品質が,保守性の結果である,保守作業をする人。
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− 利用時の品質が,移植性の結果である,ソフトウェアの移植作業をする人。
A.3 測定法の選択及び測定基準 測定法の選択の基礎は,製品に対する業務の目標及び評価する人の必要
性に依存する。必要性は,測定値に対する基準によって規定する。この規格におけるモデルは,いろいろ
な評価要求を支援する。次に例を示す。
− 利用者又は利用者のビジネスユニットは,利用時の品質測定法を用いてソフトウェア製品の適合性を
評価することができる。
− 取得者は,機能性,信頼性,使用性及び効率性の外部測定値の基準値,又は利用時の品質測定値の基
準値と比較して,ソフトウェア製品を評価することができる。
− 保守者は,保守性の測定法を用いてソフトウェア製品を評価することができる。
− 異なった環境下にソフトウェアを作成することに責任をもつ人は,移植性の測定法を用いてソフトウ
ェア製品を評価することができる。
− 開発者は,ある品質特性の内部測定値を用い,基準値と比較してソフトウェア製品を評価することが
できる。
備考 ソフトウェア製品の評価のための測定法及び測定基準の選択のための要求事項及び手引きを
JIS X 0133-1が提供する。
A.4 比較のために用いる測定法 製品間の比較又は基準値との比較を行うために定量的な測定法を用いた
結果を報告するとき,測定法が客観的であるか,経験に基づいた既知の値をもつ項目を用いているか及び
再現可能であるか否かについて報告書で明示しなければならない。
厳密な測定法を使用した場合だけ,製品間又は基準値との信頼できる比較を行うことができる。測定の
手順は,基準を決め比較を行うために,測定する必要があるソフトウェア製品品質特性(又は副特性)を十
分正確に測定をするとよい。測定ツール又は人的な誤りによって起こる可能性のある測定誤りのために,
許容差をもつとよい。
信頼できる比較を行うために,用いられる測定法は,妥当であり十分に正確であるとよい。このことは,
測定は客観的であり,経験的に用いられている妥当な尺度で,再現可能であるとよいということを意味す
る。
− 客観的であるためには,製品の属性に対して番号又は分類を割り当てるための,文書化され同意され
た手順がなければならない。
− 経験的であるためには,データは,観察又は心理測定法的に妥当な質問から得なければならない。
− 妥当な尺度を使うためには,データは,同等な値又は既知の値の項目に基づかなければならない。デ
ータを提供するためにチェックリストを用いるなら,必要に応じてその項目に重み付けするとよい。
− 再現可能であるためには,測定の手順は,別な人が別な機会にソフトウェア製品の同じ測定を行い,
同じ測定値(適切な許容範囲の中で)が得られなければならない。
内部測定法は,予測に用いても妥当性をもつとよい。すなわち,内部測定法を用いて得られた測定値は
予測したい幾つかの外部測定値と相関があるとよい。例えば,特定のソフトウェア属性の内部測定値が,
ソフトウェアが利用されているときの品質の測定可能な側面と相関があるとよい。測定が,一般的な期待
と一致した値を割り当てることは重要である。例えば,もし測定によって製品が高品質であることを示す
ならば,特定の利用者の必要性を満足している製品であることと矛盾しないとよい。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
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附属書B(参考)他規格での定義
この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
ここでは,特に明示しない限り,JIS X 0133-1:1999の定義を示す。
B.1
取得者(acquirer) 供給者からシステム,ソフトウェア製品又はソフトウェアサービスを取得又は調
達する組織(JIS X 0160:1996)。
B.2
属性(attribute) 実体の測定可能な物理的又は概念的な特徴。
備考 属性は,内部属性でも外部属性でもよい。
B.3
開発者(developer) ソフトウェアライフサイクルプロセスにおいて,開発作業(要求分析,設計,試
験,受入れまでを含む。)を遂行する組織(JIS X 0160:1996)。
B.4
直接測定値(direct measure) 他のいかなる属性の測定値にも依存しないある属性の測定値。
B.5
評価モジュール(evaluation module) 特定のソフトウェア品質特性又は品質副特性のための一組の
評価技術。
備考 評価モジュールは,評価方法及び技法,評価への入力及び測定し収集すべきデータ,並びに支
援手続き及びツール含む。
B.6
外部測定値(external measure) 対象とするソフトウェア製品を含むシステムの振る舞いを測定する
ことから導かれる,ソフトウェア製品の間接測定値。
備考1. システムは,あらゆる関連するハードウェア,ソフトウェア (注文ソフトウェア又は既製ソ
フトウェア)及び利用者を含む。
2. 試験中に発見された故障の数は,対象プログラムを実行している計算機システムの運用時に
数えられるので,プログラム中の障害の数の外部測定値である。
3. 外部測定値は,設計の本来の目的により近い品質属性を評価するために用いることができる。
B.7
外部品質(external quality) 製品が指定された条件下で利用された場合に,明示的及び暗示的必要性
を満足させる程度。
B.8
故障(failure) 要求された機能を遂行する製品の能力が尽きる状態,又は事前に仕様化された制限
内で機能を遂行する製品の能力がない状態。
B.9
障害(fault) 計算機プログラム内の不正確なステップ,プロセス又はデータの定義。
備考 この定義はIEEE 610.12:1990から引用している。
B.10
暗示的必要性(implied needs) 対象の実体が特定の条件下で使われるとき,明示されていないが配
慮すべき必要性。
備考 暗示的必要性は,文書化されていないが,実際に必要となる事柄である。
B.11
指標(indicator) 他の測定値の見積り又は予測に使用できる測定値。
備考1. 予測された測定値は,同じ又は異なったソフトウェア品質特性に対するものでもよい。
2. 指標は,ソフトウェア品質属性及び開発プロセスの属性を見積もるために使われてもよい。
そのときには,属性に対する間接測定値である。
B.12
間接測定値(indirect measure) 一つ以上の他の属性の測定値から導かれる属性の測定値。
備考 計算機システムの属性の外部測定値(例えば,利用者からの入力への応答時間のような)は,ソ
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
フトウェアの属性だけでなく,その実行環境の属性の影響を受けるであろうから,ソフトウェ
アの属性の間接測定値である。
B.13
中間ソフトウェア製品(intermediate software product) ソフトウェア開発プロセスのある段階の製
品で,他の段階への入力として用いられる製品。
備考 ある場合には,中間製品は,同時に,最終製品でもよい。
B.14
内部測定値(internal measure) 製品それ自身の測定値で,直接又は間接のいずれでもよい。
備考 コード行数,複雑さの測定値,ウォークスルーで発見された障害の数及びフォグインデックス
(Fog Index)は,すべて製品それ自身の内部測定値である。
B.15
内部品質(internal quality) 特定の条件下で使用される場合に,明示的及び暗示的必要性を満たす製
品の能力を決定する製品の属性の全体。
備考1. “内部品質(internal quality)”という用語は,JIS X 0133群では,“外部品質(external quality)”
と対比する意味で使われており,ISO 8402での“品質(quality)”と本質的に同じ意味をもっ
ている。
2. “属性(attribute)”という用語は,B.21で使用されている“特性(characteristic)”と同じ意味で
使われており,JIS X 0129群では,“特性(characteristic)”という用語は,より限定的な意味で
使われる。
B.16
保守者(maintainer) 保守活動を遂行する組織(JIS X 0160:1996)。
B.17
測定する[measure(動詞)] 測定を行う行為。
B.18
測定値[measure(名詞)] 測定することによって,実体の属性に割り当てられた数又は分類。
B.19
測定(measurement) 実体の属性に対して尺度から値(数又は分類でもよい。)に割り当てるために,
測定法を使う行為。
備考 分類を使うことで,質的な測定を行える。例えば,プログラムの言語(Ada,C,COBOLなど)
のようなソフトウェア製品の重要な属性は,質的な分類である。
B.20
測定法(metric) 定義された測定方法及び測定尺度。
備考1. 測定法には,内部又は外部があり,かつ,直接的又は間接的であり得る。
2. 測定法は,定性的なデータを分類するための方法を含む。
B.21
品質(quality) ある“もの(entity)”の明示された又は暗黙の必要性を満たす能力に関する特性の全
体(ISO 8402:1994)。
備考1. 契約下において,又は原子力安全性の分野のような法的規制の状況下においては,必要性は,
仕様化されるが,それ以外の場合には,暗黙の必要性を明確にし,定めることが望ましい
(ISO 8402 : 1994, 備考1.)。
2. JIS X 0133群の中での“もの”とは,ソフトウェア製品を示す。
B.22
品質評価(quality evaluation) ある“もの”が,規定要求事項をどれだけ満たすことができるかの程
度を示すための体系的な審査(ISO 8402:1994)。
備考 製品が契約下で,特定の利用者向けに開発される場合には,要求事項は,正式に仕様化される
のがよい。製品が消費者向けソフトウェアのような不特定利用者向けの場合には,要求事項は,
開発組織によって仕様化されるのがよい。比較及び選択を目的として利用者が製品を評価する
場合には,要求事項は,より概括的であってもよい。
B.23
利用時の品質(quality in use) 指定された利用者が仕様化された特定の仕方で製品を利用したとき,
仕様化された目的を達成するために,有効性,生産性及び満足度を伴い必要性を満たしている程度。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 この利用時の品質の定義は,JIS Z 8251における使用性(usability)と類似させている。JIS X 0133
群においては,使用性という用語は,この規格に規定されたソフトウェア品質特性を参照して
用いられる。
B.24
品質モデル(quality model) 品質要求及び品質評価の基礎を与えるような特性の集合及び特性間の
関係。
B.25
評定(rating) 測定値を適切な評定水準に対応付ける行為。評定は,対象ソフトウェアについて,特
定の品質特性がどの評定水準に対応するかを決定するために行う。
B.26
評定水準(rating level) 測定尺度を分類するために使われる順序尺度上の点。
備考1. 評定水準は,明示的又は暗示的必要性に基づき,ソフトウェアを分類(評定)することを可能
にする。
2. 適切な評定水準は,例えば,利用者,管理者,開発者のような異なる品質視点に関係付けて
もよい。
B.27
尺度(scale) 定義された特徴をもつ値の集合。
備考 尺度の種別の例を,次に示す。
− 分類の集合に対応する名義尺度。
− 尺度上の点の順序に対応する順序尺度。
− 等間隔の尺度上の点の順序に対応する間隔尺度。
− 等間隔の尺度上の点だけでなく絶対値に対応する比率尺度。
測定法は,定性的なデータを扱う場合には,名義尺度又は順序尺度を用い,定量的なデータ
を扱う場合には,間隔尺度又は比率尺度を用いる。
B.28
ソフトウェア(software) 情報処理システムに関する,プログラム,プロセス,規則及び関連する
文書の全体又は一部(JIS X 0001:1994)。
備考 ソフトウェアは,記録媒体によらない知的な創造物である。
B.29
ソフトウェア製品(software product) 計算機プログラム,手続き並びにその関連する文書及びデー
タを含めたまとまり(JIS X 0160:1996)。
備考 製品は,中間製品,開発者,保守者などの利用者向けに作成された製品を含む。
B.30
供給者(supplier) 契約を交わした取得者に,システム,ソフトウェア製品又はソフトウェアサービ
スを契約に基づいて提供する組織(JIS X 0160:1996)。
B.31
システム(system) 明示的な必要性又は目的を満たす能力を与えるために,一つ以上のプロセス,
ハードウェア,ソフトウェア,設備及び人間からなる統合化されたもの(JIS X 0160:1996)。
B.32
利用者(user) 特定の機能を遂行するために,ソフトウェア製品を使う個人。
備考 利用者には,オペレータ,ソフトウェアの結果の受入者,ソフトウェアの開発者又は保守者を
含めてもよい。
B.33
妥当性確認(validation) 定められた用途に対する特有の要求事項が満たされていることを,客観的
証拠の審査及び提出によって確認すること(ISO 8402:1994)。
備考1. 設計及び開発において,妥当性確認は,使用者の必要性への適合性を確定するため,製品の
検討のプロセスに関係する。
2. 妥当性確認は,通常,最終製品について規定の運用条件の下で実施される。これは,もっと
早い段階で行うことが重要である。
3. “妥当性確認済”という用語は,妥当性が確認された状態を示すために用いる。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4. 複数の異なった用途があるとき,複数の妥当性確認が実施されることがある。
B.34
検証(verification) 規定要求事項が満たされていることを,客観的証拠の審査及び提出によって確
認すること(ISO 8402:1994)。
備考1. 設計及び開発において,検証は,ある活動に対する規定要求事項への適合性を確定するため,
その活動結果の検討のプロセスに関係する。
2. “検証済”という用語は,検証された状態を示すために用いる。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C(参考)規格制定の経緯
この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではな
い。
C.1
背景 ソフトウェア産業は成熟期に入っている,同時に,ソフトウェアは今日,多くの製品の重要
な構成要素になっている。このようなソフトウェアの普及は,取引上,新しい大きな要因を生じさせる。
さらに,安全性及び品質に対する新たな世界的要求によって,ソフトウェア品質の総合評価手順に関する
国際的な協定の必要性が重要となってきている。
本質的に製品品質の確保には二つの取組みがある。一つは,製品を開発するプロセスの保証であり,も
う一つは,最終製品の品質を評価することである。いずれの手段も重要であり,どちらにも品質を管理す
るためのシステムの存在が要求される。そのようなシステムでは,適所に詳細なステップがなければなら
ないと同時に,品質に対する管理上の誓約を識別し,その方針を明記する。
定量的な手段によって製品の品質を評価するためには,製品について説明し評価の基礎を形成する品質
特性の集合が必要である。この規格では,ソフトウェア製品に関するこれらの品質特性を規定する。
C.2
経緯 現状のソフトウェア技術の水準では,ソフトウェア製品の品質を評価するために十分確立さ
れていて,かつ,広く受け入れられる記述体系はまだ提供されていない。およそ1976年からソフトウェア
品質の枠組みを定義するために多くの人によって多くの作業がなされた。マコール,ベーム,米国空軍な
どによるモデルは数年間かけて採用され,拡充された。しかしながら,現在ソフトウェア製品の利用者又
は消費者にとって,ソフトウェアの品質を理解したり比較したりすることは難しい。
長い間,信頼性が品質をはかる唯一の方法であった。他の品質モデルが提案され,利用のために提供さ
れた。研究は役立ったが,一方で品質に対する多くの見方が提供されたために混乱を引き起こした。そこ
で,一つの標準モデルの必要性が生じた。
ISO/IEC JTC1が合意の必要性を広め,世界的に標準化を推進し始めたのはこの理由のためである。
最初の検討は1978年から始まり,1985年にISO/IEC 9126(JIS X 0129)の開発が始まった。最初に提案さ
れたモデルは,ソフトウェアの品質について説明するために,適用時又は導入時(又は両方)に依存するソ
フトウェアの特徴が導入された。
ISO専門委員会の第1ステップでこれらの特徴を系統的に整理したが,定義が不十分でうまくいかなか
った。用語は,専門家ごとに解釈が異なっていた。それゆえに, 共通の土台がなく,論議されたすべての
構造がバラバラの状態であった。
その結果として,国際規格を確立するための最良の機会は,その後,ISO 8402で使用された品質の定義
に基づいた特性の集合を規定することであると決定された。この定義は,あらゆる種類の製品及びサービ
スに受け入れられる。それは,利用者の必要性から始まる。
C.3
ISOの六つのソフトウェア品質特性 ISO/IEC 9126(JIS X 0129)で示された特性を選ぶための要求
事項は,次に示すとおりである。
− ISOの品質定義に基づくソフトウェア品質のすべての面を一緒に網羅すること。
− 製品品質について重複を最小限にして説明すること。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
− 確立した用語にできるだけ近いこと。
− 明りょうさや利用面から,せいぜい六つから八つの特性の集合を形成すること。
− 一層洗練するためにソフトウェア製品の属性の分野を確認すること。
専門委員会の仕事は,上の特性の集合をつくることであった。
しかし,特性の定義を含む単なる用語の標準では,利用者がソフトウェア品質を総合評価する際の十分
な支援にならない。そこで,どのようにソフトウェア製品の品質評価を進めるかの記述も含めた。
実際に製品の品質評価を行うには,この規格で規定する特性の集合以外の特性が必要であり,それぞれ
の特性に対する測定法が必要である。現状の技術水準では,それらに対する標準化はできなかった。拡充
を待つことは,ISO/IEC 9126(JIS X 0129)の発行を実質上遅らせることになる。
このため,専門委員会は,その後の開発に適切につながるようにISO/IEC 9126(JIS X 0129)の1991年版
を発行した。
C.4
ISO/IEC 9126(JIS X 0129)の改訂 1994年,製品品質評価の分野で出されようとしている他の国際
規格が ISO/IEC 9126(JIS X 0129)の改正をよぎなくさせた。改正では,同じ六つの品質特性を保持するが,
内部測定法及び外部測定法との関係を明りょうにしている。特性と利用時の品質との関係もまた説明して
いる。
品質は,“あるものの・・・を満たす能力に関する特性の全体”という言葉で,ISO 8402に定義されて
いる。この定義の備考4は,“品質という用語は,単独の用語として,比較の意味で優秀さの程度を表す
ために,用いることは望ましくない”ということを述べている。このため,ISO/IEC 14598-1(JIS X 0133-1)
では,“内部品質”及び“外部品質”は,測定できる品質の側面に関連するものと定義した。内部品質及び
外部品質ともに測定可能であることが用語で理解できるように,品質特性の定義の表現は,“・・・をもた
らす属性の集合”から“・・・ためのソフトウェアの能力”に変更した。
副特性は,ISO/IEC 9126:1991(JIS X 0129:1994)版の附属書を基に導入した。標準適合性は,その本質は
一般的にすべてのソフトウェアの特性へ適用できるので,すべての特性の副特性とした。
評価プロセスのモデルは,ISO/IEC 14598-1(JIS X 0133-1)に移した。外部測定法,内部測定法及び利用
時の品質測定法の例を示す,三つの新しいテクニカルレポートを,ISO/IEC 9126の第2部,第3部及び第
4部として準備中である。
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D(参考)関連規格及び標準情報
この附属書(参考)は,本体及び附属書(規定)に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
JIS X 0001:1994 情報処理ー基本用語
備考 ISO/IEC 2382-1:1993, Information technology - Vocabulary - Part 1: Fundamental terms.からの
引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS X 0014:1999 情報処理用語ー信頼性,保守性及び可用性
備考 ISO/IEC 2382-14:1997, Information technology - Vocabulary - Reliability, maintainability and
availability.が,この規格と一致している。
JIS X 0020:1992 情報処理用語(システム開発)
備考 ISO/IEC 2382-20:1990, Information technology - Vocabulary - Part 20: Systems development.か
らの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 9901:1998 品質システムー設計,開発,製造,据付け及び付帯サービスにおける品質保証モデ
ル
備考 ISO 9001:1994, Quality systems - Model for quality assurance in design, development,
production, installation and servicing.が,この規格と一致している。
JIS Z 8520:1999 人間工学ー視覚表示装置を用いるオフィス作業ー対話の原則
備考 ISO 9241-10:1996, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs)
- Part 10: Dialogue principles.が,この規格と一致している。
JIS Z 8521:1999 人間工学ー視覚表示装置を用いるオフィス作業ー使用性についての手引
備考 ISO 9241-11:1998, Ergonomic requirements for office work with visual display terminals (VDTs) -
Part 11: Guidance on usability.が,この規格と一致している。
JIS X 0160:1996 ソフトウェアライフサイクルプロセス
備考 ISO/IEC 12207:1995, Information technology - Software life cycle processes.が,この規格と一
致している。
JIS Z 8530:2000 人間工学ーインタラクティブシステムの人間中心設計プロセス
備考 ISO 13407:1999, Human-centred design processes for interactive systems.が,この規格と一致
している。
JIS X 0133-2:2001 ソフトウェア製品の評価ー第2部:計画及び管理
備考 ISO/IEC 14598-2:2000, Software engineering - Product evaluation - Part 2: Planning and
management.が,この規格と一致している。
JIS X 0133-3:2001 ソフトウェア製品の評価ー第3部:開発者のプロセス
備考 ISO/IEC 14598-3:2000, Software engineering - Product evaluation - Part 3: Process for developers.
が,この規格と一致している。
JIS X 0133-4:2001 ソフトウェア製品の評価−第4部:取得者のプロセス
備考 ISO/IEC 14598-4:1999, Software engineering - Product evaluation - Part 4: Process for acquirers.
が,この規格と一致している。
JIS X 0133-5:1999 ソフトウェア製品の評価−第5部:評価者のプロセス
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X 0129-1:2003 (ISO/IEC 9126-1:2001)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 ISO/IEC 14598-5:1998, Information technology - Software product evaluation - Part 5: Process
for evaluatorsが,この規格と一致している。
JIS X 0133-6:2002 ソフトウェア製品の評価−第6部:評価モジュールの文書化
備考 ISO/IEC 14598-6:2001, Software engineering - Product evaluation - Part 6: Documentation of
evaluation modules.が,この規格と一致している。
TR X 0021(全パート) ソフトウェアプロセスアセスメント
備考 ISO/IEC TR 15504(all parts), Information technology - Software Process Assessment.が,この標
準情報と一致している。
ISO 8402:1994, Quality management and quality assurance - Vocabulary.
ISO/IEC TR 9126-2, Software engineering - Product quality - Part 2: External metrics.
ISO/IEC TR 9126-3, Software engineering - Product quality - Part 3: Internal metrics.
ISO/IEC TR 9126-4, Software engineering - Product quality - Part 4: Quality in use metrics.
IEC 60050-191, International Electrotechnical Vocabulary - Chapter 191: Dependability and quality of
service.
IEEE 610.12-1990, Standard Glossary of Software Engineering Terminology.