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W 2924 : 2002 (ISO 11218 : 1993)

(1) 

まえがき

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。


日本工業規格

JIS

 W

2924

 : 2002

 (ISO

11218

 : 1993

)

航空宇宙−

油圧作動油の清浄度

Aerospace

−Cleanliness classification for hydraulic fluids

序文  この規格は,1993 年に第 1 版として発行された ISO 11218 を翻訳し,技術的内容及び規格票の様式

を変更することなく作成した日本工業規格である。ISO 11218 は,SAE AS 4059B,Aerospace−Cleanliness

classification for hydraulic fluids

を,事実上の ISO 国際規格として採用したものである。

1.

適用範囲

1.1

この規格は,航空宇宙用油圧作動油の微粒子汚染についての清浄度を規定する。また,清浄度につ

いてのデータ報告の方法を示す。この規格で採用した清浄度は,広く認知されている NAS 1638 のものを

拡張及び簡易化したものである。

1.2

目的  この規格の目的は,システムの性能及び信頼性を保証するため微粒子汚染管理の必要がある

油圧システムについて,汚染レベル(清浄度)の的確な比較及び判断を可能にするための最少限の情報を

提供することである。

2.

引用規格  次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの規格は,最新版を適用する。この規格の本体とここに示す引用規格との間に矛盾がある場合

には,この規格の本体を優先する。

2.1

SAE

規格 

ARP 598

  The Determination of Particulate Contamination in Liquids by the Particle Count Method

ARP 1192

  Procedure for Calibration and Verification of Liquid−Borne Particle Counter : An Absolute

Standard

AIR 877

  Particle Count Data Conversion and Extrapolation

2.2

NAS

規格 

NAS 1638

  Cleanliness Requirements of Parts Used in Hydraulic Systems

2.3

日本工業規格

JIS W 2923

  航空宇宙−流体系統及び構成部品−作動油の固体微粒子汚染の試料採取及び測定の方法

備考  ISO 5884 : 1987, Aerospase−Fluid systems and components−Methods for system sampling and

measuring the solid particle contamination of hydraulic fluids

がこの規格と一致している。


2

W 2924 : 2002 (ISO 11218 : 1993)

3.

清浄度クラス  油圧システム作動油の清浄度を規定するために,航空宇宙工業においては NAS 1638

が広範に使用されてきた。この NAS 規格は長期間使用されてよく知られているので,そのクラスをこの規

格の基本として使用してある。この規格は,NAS 1638 を拡張して,作動油中の汚染粒子の個数濃度(個/

100ml

)を累積測定によるものとし,また,粒径区分に>2

µm とクラスに 000 とを追加してある。さらに,

清浄度データの報告及び解釈を簡易化してある。

3.1

清浄度  作動油の清浄度を規定する基準として清浄度クラスを表 のとおりに設定する。これらの

クラスは,汚染物質の粒径,個数及び分布に基づくものである。

表 1  清浄度クラス

クラス

粒径  (

µm)

000

00

0 1 2 3 4 5 6 7  8

9  10  11  12

>2

164

328

656  1 310  2 620 5 250 10 500 21 000 42 000 83 900 168 000

336 000  671 000  1 340 000  2 690 000

>5

76

152

304

609  1 220 2 430

4 860 9 730 19 500 38 900

77 900

156 000  311 000

623 000  1 250 000

>15

14

27

54

109

217

432

864 1 730 3 460 6 920

13 900

27 700

55 400

111 000  222 000

>25

3

5

10

20

39

76

152

306

612 1 220

2 450

4 900

9 800

19 600

39 200

>50  1 1

2 4 7

13

26

53

106

212

424

848

1

700 3

390

6

780

備考  粒子の個数濃度(個/100ml)

3.2

清浄度クラスの適用  表 の清浄度クラスは,作動油のサンプル 100ml 当たりの粒径及びそれに対

応する個数によって決める。

4.

手順

4.1

清浄度の測定

4.1.1

測定  ARP 598 の顕微鏡法又は ARP 1192 で校正した自動粒子計数器法によって,清浄度を測定す

る。

測定方法(顕微鏡又は自動粒子計数器)が異なると,計数値が異なる可能性がある。ARP 1192 で校正し

た自動粒子計数器では,微細な試験用ダストで校正した粒子計数器の場合に比べて,大きい方の粒径にお

いて著しく異なる値が計数される。したがって,自動粒子計数器の測定手順及び校正方法を,作動油清浄

度データシートに記録しなければならない。

4.1.2

サンプリング  クラス 2 以上汚染されたレベルを対象とするサンプリングボトル及びサンプリン

グシステムは,クラス 0 を超えないレベルまで前洗浄しておかなければならない。クラス 2 より清浄なレ

ベルを測定するのに使用するサンプリング器材は,サンプルの清浄度より少なくとも 2 クラス低いか(よ

り清浄か)

,又はサンプルの清浄度の 25%以下の清浄度をもつものでなければならない。

4.1.3

高汚染濃度  高レベルの汚染は,自動粒子計数器を飽和状態にさせることがある。したがって,計

数器の飽和レベルの 75%を超える計数値は,疑わしいとみるのがよい。飽和に近いか又はそれ以上のレベ

ルで粒子を計数する必要がある場合には,サンプルを適宜希釈する必要がある。しかし,希釈は,注意深

く行わなければならない。希釈液は極めて清浄(クラス 0 又はそれより良好)でなければならず,しかも,

油圧作動油と容易に混合し,自動粒子計数器の校正に使用した流体と光学的性質が同じにならなければな

らない(7.3 及び 9.参照)

5.

報告データ  作動油の清浄度のクラスは,5

µm より大きい粒子の個数によって表 に従って判定する。

発注者の自由裁量により,標準 5

µm の代わりに 2µm 又は 15µm を指定してもよい。作動油清浄度デー

タシートの

図 に 100m1 当たりの,2,5,15,25 及び 50

µm より大きいすべての粒子の個数をすべてプロ


3

W 2924 : 2002 (ISO 11218 : 1993)

ットし,その他のデータも記入する。清浄度クラスの判定に 25

µm 及び 50µm より大きい累積粒子個数を

使用する場合には,

図 の外挿直線上にこれらの点が載らないことに注意すべきである。

6.

清浄度クラスの導出  この規格の清浄度クラスは,NAS 1638 で粒径区分ごとに定めている粒子個数を

基礎にして設定したものである。すなわち,NAS 1638 における粒径区分ごとの粒子個数を,この規格では

累積値にして示してある。より微細なレベルまでの粒子管理を望む発注者のために 2

µm の累積粒子個数を

追加してある。

表 の 2

µm より大きいサイズの粒子個数は,5µm より大きい粒子個数と,15µm より大き

い粒子個数を通る直線を外挿して求めたものである。しかし,この規格では,大きいクラス番号に対して

2

µm を選択することは望ましくない。さらに,清浄度の範囲を拡張してクラス 000 を追加してある。また,

NAS 1638

で示してある 100

µm を超える粒子個数は,この規格では,50µm を超える粒径区分の粒子個数に

含めてある。


4

W 2924 : 2002 (ISO 11218 : 1993)

JIS W 2924

作動油清浄度データシート 

□粒径>5

µm 基準(標準)  要求クラス

□粒径>2

µm 基準

□粒径>15

µm 基準

清浄度測定結果  クラス

□その他の粒径>

µm 基準

サンプル識別記号                  採取日/採取者          /

サンプル採取源

測定方法  □インライン  □ボトル

作動油の種類

サンプルの体積              ml

顕微鏡による粒子計数データ

自動粒子計数器による計数データ

ARP 598 による顕微鏡法)

計数器の形名

顕微鏡の倍率

検出器の形名

薄膜フィルタ

校正日

        形番

校正方法

        製造者

検出器流量              ml/min

        穴径

1

回の計数体積              ml

希釈液

作動油サンプルの

100ml

当たり粒子個数

粒径区分>2

µm

粒径区分>5

µm

粒径区分>15

µm

粒径区分>25

µm

粒径区分>50

µm

図 1  AIR 877 に従ったデータプロット


5

W 2924 : 2002 (ISO 11218 : 1993)

7.

留意事項

7.1

データの限界  log/log

2

グラフ用紙に作図した場合に,清浄度クラスの粒子計数曲線がほぼ直線にな

ることを仮定してある。

7.2

システムフィルタの影響  油圧作動油システムの清浄度は,システムに使用されるフィルタの性能

に影響される。その効率によっては,フィルタが,より小さい寸法範囲の粒子を通過させ,システムに再

循環させてしまう。

7.3

希釈  精度よく測定できる計数範囲内まで粒子計数値を少なくするために,作動油サンプルを希釈

する場合には,注意が必要である。希釈によって,大きい二つの問題が起きる。第一は,希釈の際のいか

なる誤りも,計数値に影響することである。第二は,希釈液は,異なる大きさのいくつかの粒子を含んで

おり,そのために粒子計数値の誤った増加を招くことである。これらの問題から考えても,希釈液が極め

て高い清浄度であること,及び希釈率を正確に測定することが必要なことは明白である。

7.4

サンプリング誤差  作動油システムからの作動油サンプル採取の際に,大きな粒子がサンプルに入

る可能性がある。このことは,汚染粒子計数値を狂わせることになる。

一つのクラスに対する粒子計数値が,大きい粒径区分において異常に高い場合には,サンプリングの装

置又は技法のいずれか又は両方をその原因と考えるのがよい。不審がある粒径区分,及び標準 5

µm の粒径

区分又は清浄度を決めるのに使用する粒径区分について,二つのサンプルが同じクラスに入るまで,サン

プリングを繰り返すのがよい。

8.

清浄度の傾向の把握  この規格の規定事項の実行が,実際のシステムの計数記録を維持するのに役立

つ。集めた情報は,清浄度の傾向を評価する際に,高い価値をもつものとなる。

9.

粒径  第一の懸念は,粒子計数手法の能力についてである。使用する計数手順は,粒子の最大濃度に

よって制限されることがある。粒子の濃度が高いと,自動粒子計数器で測った個数に影響し,顕微鏡での

計数を困難にする。粒子濃度が高いサンプルについて計数値を得るには,希釈しなければならない。第二

の懸念は,2

µm の大きさの粒子の計数についてである。使用する粒子計数器は,2µm の大きさでの有効な

計数値を得ることができることを実証したものでなければならない。2

µm の大きさで計数できることを要

求される粒子計数器の能力は,ARP 1192 の校正方法を用いて検証する。

10.  JIS

規格表示文言  JIS W 2924 に適合することを表示する場合には,次の文言を使用する。

JIS W 2924 による油圧作動油の清浄度”


6

W 2924 : 2002 (ISO 11218 : 1993)

JIS W 2924

(航空宇宙−油圧作動油の清浄度)原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

松  木  正  勝

日本工業大学

(副委員長)

渡  辺      晃

日本飛行機株式会社開発部

(委員)

桑  原      哲

通商産業省機械情報産業局

池  川  澄  夫

通商産業省工業技術院

鵜  飼      博

運輸省航空局

寺  田  敏  洋

海上保安庁装備技術部

寺  岡  憲  吾

防衛庁装備局

伊  藤  誠  一

科学技術庁航空宇宙技術研究所

中  込  常  雄

日本工業標準調査会

久木田  実  守

航空システムコンサルタンツ

小  泉  一  哉

社団法人日本航空技術協会

徳  永  俊  二

日本航空株式会社技術研究部

木  原  政  則

株式会社日本エアシステム整備本部

八  代  充  造

三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所

麹  盛  謙  二

川崎重工業株式会社航空宇宙事業本部

服  部      博

石川島播磨重工業株式会社航空宇宙事業本部

飯  塚  芳  夫

富士重工業株式会社航空宇宙事業本部

谷  口  哲  夫

株式会社島津製作所航空機器事業部

多和田  幸  造

帝人製機株式会社航空機技術部

曽  我      章

日本航空電子工業株式会社航機事業部

清  田  紀  男

三菱電機株式会社鎌倉製作所

宇田川  知  行

横河電機株式会社航空宇宙特機事業部

播  磨  克  彦

アエロスペック研究会

山  田  秀二郎

社団法人日本航空宇宙工業会

(事務局)

井  上  一  彦

社団法人日本航空宇宙工業会