日本工業規格
JIS
W
2010
-1989
航空宇宙航行体の配線
Wiring for Aerospace Vehicle
1.
適用範囲
1.1
適用範囲 この規格は,航空宇宙航行体に使用する配線及び配線器具に関して選定から装備にわた
るすべての分野について規定する。航空宇宙航行体は,飛行機,ヘリコプタ,軽航空機及び飛しょう体を
含む。
参考 この規格の内容は,MIL-W-5088K (IA 1) (Wiring, Aerospace Vehicle) に相当する。
1.1.1
適用 この規格は,航空宇宙航行体の配線に関する設計要求事項の手引を定めるものである。要求
事項の多くは命令的なものとして規定しているが,選択的,推奨的又は手引的な要求事項を示そうとして
いる部分も多量にある。
この規格の中の資料は,この規格全体の精神を各新型航空宇宙航行体の配線に生かすことを意図してい
ると解釈すべきである。その精神とは,要員の安全,航行体の安全,航行体の満足な性能と信頼性及び整
備の容易さ並びに運用寿命のすべてを発注者が最少の費用で得ることである。この規格の意図は,その要
求事項を新しい型式又は種類の各航空宇宙航行体の設計に合わせて適正に適用することによって達成され
る。
2.
関連規格
2.1
この規格の関連規格を次に示す。これらの規格を使用するときは,特に指示がない限り,入札又は
見積りの依頼日に効力がある版による。
仕様書
Military Specification
MIL-I-631
Insulation, Electrical, Synthetic-Resin Composition, Nonrigid
MIL-I-3190
Insulating Sleeving, Electrical, Flexible, Coated, General Specification for
MIL-C-3607
Connectors Coaxial, Radio Frequency, Series Pulse General Specification for
MIL-C-3650
Connector, Coaxial, Radio Frequency, Series LC
MIL-C-3655
Connector, Plug and Receptacle, Electrical (Coaxial, Series Twin) , and Associated
Fitting, General Specification for
MIL-B-5087
Bonding, Electrical and Lighting Protection, for Aerospace Systems
(JIS W 2009 航空宇宙システムの電気的ボンディング及び落雷防護)
MIL-E-6051
Electromagnetic Compatibility Requirements, Systems
(JIS W 7005 航空宇宙システムの電磁適合性通則)
MIL-C-6136
Conduit, Electrical, Flexible, Shielded, Aluminum Alloy for Aircraft Installations
MIL-E-7080
Electric Equipment, Aircraft, Selection and Installation of
2
W 2010-1989
(JIS W 2011 航空機用電気機器の装備方法)
MIL-T-7099
Terminals : Lug and Splice, Crimp Style Aluminum, for Aluminum Aircraft Wire
MIL-F-7179
Finishes, Coatings, (and Sealants) for the Protection of Aerospace Weapons Systems
(JIS W 2014 航空宇宙システム保護用塗装及びシーリング)
MIL-I-7444
Insulation Sleeving, Electrical, Flexible
MIL-C-7762
Compasses, Installations of
MIL-B-7883
Brazing of Steels, Copper, Copper Alloys, Nickel Alloys, Aluminum and Aluminum
Alloys
MIL-T-7928
Terminals, Lug : Splices, Connectors : Crimp Style, Copper, General Specification for
MIL-S-8516
Sealing Compound, Polysulfide Rubber, Electric Connectors and Electric Systems,
Chemically Cured
MIL-I-8700
Installation and Test of Electronic Equipment in Aircraft, General Specification for
(JIS W 7202 航空機用電子機器の装備及び試験通則)
MIL-I-18057
Insulation Sleeving, Electrical, Flexible, Glass Fiber, Silicone Rubber Treated
MIL-C-22520
Crimping Tools, Terminal, Hand or Power Actuated, Wire Termination , and Tool Kits,
General Specification for
MIL-W-22759
Wire, Electric, Fluoropolymer-Insulated, Copper or Copper Alloy
MIL-I-23053
Insulation Sleeving, Electrical, Heat Shrinkable, General Specification for
MIL-S-23190
Straps, Clamps, and Mounting Hardware, Plastic and Metal for Cable Harness Tying
and Support
MIL-S-23586
Sealing Compound Electrical, Silicone Rubber, Accelerator Required
MIL-I-23594
Insulation Tape, Electrical : High Temperature, Polytetrafluoroethylene, Pressure
Sensitive
MIL-M-24041
Molding and Potting Compound, Chemically Cured, Polyurethane
MIL-C-25516
Connectors, Electrical, Miniature, Coaxial Environment Resistant Type, General
Specification for
MIL-C-26637
Connectors, Coaxial, Radio Frequency, Series LT, General Specification for
MIL-C-39012
Connectors, Coaxial, Radio Frequency, General Specification for
MIL-C-39029
Contacts, Electrical Connector, General Specification for
MIL-T-43435
Tape, Lacing and Tying
MIL-M-81260
Manual, Technical, Aircraft /System /Equipment Maintenance
MIL-T-81490
Transmission Lines, Transverse Electromagnetic Mode
MIL-T-81714
Terminal Junction Systems, General Specification for
MIL-T-81714/11
Terminal Junction System Terminal Junction Block, Sectional Wire In-Line Junction,
Single
MIL-T-81714/12
Terminal Junction Block, Sectional Wire In-Line Junction, Double
MIL-S-81824
Splices, Electric, Permanent, Crimp Style Copper, Insulated, Environment Resistant
MIL-S-83519
Shield Termination, Solder Style, Insulated, Heat Shrinkable, Environment Resistant,
General Specification for
MIL-C-85049
Connector Accessories, Electrical, General Specification for
3
W 2010-1989
MIL-C-85485
Cable, Electric, Filter Line, Radio Frequency Absorptive
規格
Federal
Standard
FED-STD-595
Colors
Military
Standard
DOD-STD-100
Engineering Drawing Practices
MIL-STD-143
Standards and Specifications, Order of Precedence for the Selection of
MIL-STD-454
Standard General Requirements for Electronic Equipment
(JIS W 7204 航空機用電気・電子機器のはんだ付け方法)
MIL-STD-681
Identification Coding and Application of Hookup and Lead Wire
MIL-STD-704
Aircraft Electric Power Characteristics
(JIS W 7001 航空機の電源特性)
DOD-STD-863
Wiring Data and System Schematic Diagrams Preparation of
MIL-STD-1353
Electrical Connectors, Plug−In Sockets and Associated Hardware, Selection and Use
of
MIL-STD-1388
Logistic Support Analysis
MIL-STD-1553
Aircraft, Internal Time Division Command /Response Multiplex Data Bus
(JIS W 7205 航空機内時分割コマンドレスポンス多重データバス)
MS 14100
Tape Identification, Coaxial Cable Transmission Line Assembly
MS 18029
Cover Assembly, Electrical, for MS 27212 Terminal Board Assembly
MS 21266
Grommet, Plastic, Edging
MS 21919
Clamp, Loop-Type, Cushioned, Support
MS 25171
Nipple, Electrical Terminal
MS 25274
Cap, Electrical (Wire End, Crimp Style, Type II, Class 1) for 105, Deg. C Total Conductor
Temperature
MS 25281
Clamp, Loop, Plastic, Wire Support
MS 25435
Terminal-Lug, Crimp Style, Straight Type, For Aluminum Aircraft Wire, Class 1
MS 25436
Terminal-Lug, Crimp Style, 90 DEG Upright Type, For Aluminum Aircraft Wire, Class 1
MS 25437
Termanal-Lug, Crimp Style, Left Angle Type, For Aluminum Aircraft Wire, Class 1
MS 25438
Terminal-Lug, Crimp Style, Right Angle Type, For Aluminum Aircraft Wire, Class 1
MS 25439
Splice-Permanent Crimp Style, 2 Way Type for Aluminum Aircraft Wire, Class 1
MS 25440
Washers, For Use with Aircraft Aluminum Terminals
MS 27212
Terminal Board Assembly, Molded−In Stud, Electric
MS 27488
Plug, End Seal, Electrical Connector
MS 33540
Safety Wiring and Cotter Pinning, General Practices for
MS 35489
Grommets, Synthetic and Silicone Rubber, Hot Oil and Coolant Resistant
MS 90376
Caps, Dust, Plastic, Electic Connector
MS 90387
Tool, Hand, Adjustable for Plastic Tiedown Straps
AND 10380
Fitting Installations−Standard Conduit
出版物
4
W 2010-1989
Military Handbook
MIL-HDBK-216
R. F. Transmission Lines and Fittings
追加関連文書 電線及びケーブルの選定に関する追加の関連文書を附属書 A に記載する。
2.2
その他の関連文書を次に示す。
Aerospace Industries Association of America, Inc. (AIA)
NAS 813
Cap-Protective, Electrical Connector
NAS 820
Plug-Protective, Electrical Connector
American National Standards Institute (ANSI)
ANSI Y 14.15-1966
Electrical and Electronics Diagrams
ANSI Y 32.2-1975
Graphic Symbols for Electrical and Electronics Diagrams
[JIS C 0301(電気用図記号)
]
ANSI Y 32.16-1975
Reference Designations for Electrical and Electronic Parts and Equipment
3.
要求事項
3.1
用語の意味 この規格で用いる“配線”の語は,6.3.5 に示す意味に解釈しなければならない。
3.1.1
離反 受注者がこの規格からの離反(機器,材料又は装備の代替)を希望する場合は,設計データ
を承認申請のために発注者に提出するのと同時か又はそれ以前に,文書によって,個別に発注者の注意を
喚起しておかなければならない。離反に関するすべての申請には,その離反を立証するための十分な技術
情報を含めなければならない。
3.2
相違する要求事項 この規格と,特定の航行体部品に対する型式仕様書又は個別仕様書との間に相
違がある場合には,型式仕様書又は個別仕様書を優先させなければならない。
3.3
部品及び材料の選定 部品及び材料は,この規格に記載する文書で規定されるものが標準であって,
それらが目的に適する場合には常にそれを使用しなければならない。部品及び材料は,認定品目表に登録
された供給者があるときには,そこから購入しなければならない。
標準外の部品及び材料は,類似の標準部品及び標準材料と同等以上のものでなければならない。この規
格が適用仕様書又は規格を指定していない場合には,受注者は,MIL-STD-143 で規定する優先順位に従っ
て,他の確立された仕様書又は規格を使用しなければならない。この規格以外から選定した部品及び材料
は,標準ではないので,航空宇宙航行体に使用する前に,発注者の承認を得なければならない。標準外の
部品又は材料の各購入先専門業者に関しては,発注者の承認が必要である。適切な標準部品が存在する場
合に標準外部品を使用するときには,受注者は,図面,部品表又はデータパッケージ(資料集)にその標
準部品を参考呼出しして,しかも,その装備は,標準部品との交換ができるようになっていなければなら
ない。
3.3.1
標準外部品の承認申請 標準外部品の承認申請と共に提出すべき資料は,契約条項に従わなければ
ならない。
3.3.2
市販はん(汎)用部品 小ねじ,ボルト,ナット,コッタピンなどの市販はん(汎)用部品は,そ
れらが適切な性質をもっていて,変更することなく標準部品と交換できるならば,使用してもよい。
5
W 2010-1989
3.3.3
受注者の仕様書 受注者の仕様書による配線及び配線器具は,各受注者仕様書が発注者によって承
認され,しかも公共規格が存在しない場合には,使用してもよい。受注者は,立証する試験データを作成
し,発注者が要求するときは,試験試料を提出しなければならない。受注者の仕様書を使用しても,検定
機関の検査が免除されることにはならない。
受注者の仕様書は,公共規格の様式に従わなければならない。
必要な材料の種別に対して個別又は一般公共規格が存在する場合には,受注者の仕様書は,既存の公共規
格を引用して,必要な新要求事項及び離反だけを記述しなければならない。
3.3.4
共通性 部品選定の目標は,電気配線系統の製作,装備及び整備に必要な配線部品及び関連整備用
工具の種類を最少にし,共通性を最大にすることでなければならない。
3.3.5
発注者支給の航空機装備品 発注者が支給する配線及び配線器具は,発注者の認可又は指示がない
限り,改修せずに装備しなければならない。
3.3.6
改修 受注者は,発注者の認可又は指示がない限り,公共規格に従って製作され,その公共規格を
満足している配線又は配線器具を,変更したり,再加工又は改修してはならない。
また,このような改修は,発注者の検査を受けなければならない。改修した部品は,公共の識別部品番
号を消去し受注者部品番号で識別しなければならない。
3.4
運用寿命 配線装備を行うために使用する配線及び関連部品は,航行体の全予想運用寿命にわたり
整備の容易さ及び高信頼性を促進するように選定し装備しなければならない。配線系統に対する信頼性及
び整備性の目標は,予想運用寿命と同様に MIL-STD-1388 に規定する後方支援解析で決定する。
これらの目標は,発注者の承認を受けなければならない。
3.5
煙及び火災の危険 配線及び配線器具は,煙及び火災の危険を最小にするように選定し装備しなけ
ればならない。この要求事項に適応した信頼性及び安全性を与えるため,物理的及び電気的に適切な保護
方法を用いなければならない。
3.6
材料 配線及び機器の装備に使用する材料は,目的に適し,契約で個々に適用する公共規格の規定
に適合するものでなければならない。
3.6.1
金属 配線装備に使用する金属は,耐食性のものであるか,又は正規の運用寿命中における腐食及
び電解作用を防止するよう適切に保護されていなければならない。仕上げ及び塗装は,MIL-F-7179 (JIS W
2014)
の規定に従わなければならない。
3.6.1.1
異種金属 使用する異種金属は,MIL-STD-454 の要求事項 16 に適合しなければならない。
MIL-STD-454
の要求事項 16 は,異種金属の組合せの選定及び保護並びにその他の重要な腐食化要因に関
する要求事項を規定するものである。
3.6.2
非金属 使用する非金属(プラスチック,布製品及び保護仕上げを含む。)は,耐湿耐火性のもの
であって,かびの生育を助長したり,燃焼を助長してはならない。
また,天候,使用流体及び推薬,温度,並びに航行体の運行中に遭遇する周囲条件によって悪影響を受
けてはならない。有毒ガスの発生量が最小の材料を選定しなければならない。非金属は,この要求事項に
適合するように処理すればよい。
3.6.2.1
絶縁材料 絶縁材料は,回路要求事項を満足するようなアーク抵抗性をもったものでなければな
らない。
3.6.3
シーリング材料 ゴム状弾性をもち,加硫戻りがない材料だけを使用しなければならない。電線の
接続部及び端末をシールするために必要なシーリング材料は,MIL-S-8516,MIL-S-23586 又は発注者が個
別に承認したその他の材料から選定しなければならない。中でも MIL-S-8516 が望ましい材料である。こ
れらの材料には,次の温度限界を適用する(上限値は周囲温度に温度上昇を加えたものである。
)
。
6
W 2010-1989
MIL-S-8516
−51∼+93℃ (−60∼+200°F)
MIL-S-23586
−65∼+232℃ (−85∼+450°F)
3.6.3.1
工程 シーリング材料は,製造者の指示に厳格に従って適用しなければならない。使用期限を過
ぎた材料は,使用してはならない。シーリング材料は,加硫工程中は適切な形状で所定位置に保持しなけ
ればならない。
3.7
構成部品の選定及び装備 構成部品及び配線器具は,その適用に対して適するものをこの規格の要
求事項に従って選定し,装備しなければならない。さらに,それらが適用配線構成部品仕様書に規定する
限界を超える条件にさらされないことが確実であるように,航行体の運用及び使用環境に関連して,選定
及び装備を考慮しなければならない。
3.7.1
整備に対する考慮 配線系統の整備性は,ハーネス,ケーブル組立て及び配線系統構成部品の選定,
設計及び装備において主要な考慮事項でなければならない。すべての配線は,発注者が指定する整備レベ
ルで接近可能,修理可能及び交換可能でなければならない。整備に関するその他の特別な要求事項は,そ
の問題の該当する箇条で規定する。
3.8
配線の選定 配線は,その用途に適する形式のものでなければならない。電線は,電気負荷,周囲
温度及び電線束,電線管その他の囲いの熱影響のどのような組合せにおいても,最大定格導体温度以下と
なるように選定しなければならない。選定に際して考慮すべき代表的要素は,電圧,電流,周囲温度,機
械的強度,摩耗,屈曲及び圧力高度の要求事項,並びに流体が過度に集積しやすい過酷な風及び湿度問題
(SWAMP)
区域又は場所のような極端な環境とする。電線は,この規格の
附属書 A に従って選定し,この
規格のすべての要求事項及び次の設計考慮事項を勘案して選定しなければならない。
3.8.1
温度上昇による品質低下 すずめっき及び銀めっき銅導体は,高い温度で連続使用すると,品質低
下を起こすものである。配線の選定及び適用に際しては,この影響を考慮しなければならない。
3.8.1.1
すずめっき導体 すずめっき導体においては,すず・銅中間金属が生成して,導体抵抗の増加を
もたらす。この抵抗増加は,導体径に逆比例し,最小径のものでは 4%に達する。
3.8.1.2
銀めっき導体 銀めっき導体は,定格温度近くで連続使用すると,素線間の癒着,銀めっきの移
動及び銅素線の酸化の形で品質低下が起こり,たわみ性がなくなる。エチレングリコール溶液による汚染
を受ける所では,潜在的な火災の危険があるから,銀めっき導体は使用してはならない。銀めっき導体を
用いた配線を使用する際は,これらの条件を考慮することが望ましい。
3.8.1.3
はんだ付け性 すずめっき及び銀めっき銅導体は,どちらも,連続して高温にさらした後には,
はんだ付け性が低下する。再端末処理のための整備手順には,これに対する補償手段を含めなければなら
ない。
3.8.2
アルミニウム電線 アルミニウム電線を使用するときには,発注者の承認を必要とする。アルミニ
ウム電線は,サイズ 8 以上のものに限定しなければならない。
アルミニウム電線は,エンジン装着の補機に直接取り付けたり,その他の振動の激しい箇所に装備して
はならない。
また,接続及び取外しの頻度が多い所に装備してはならない。アルミニウム電線のすべての装備は,準
永久的でなければならない。アルミニウム電線は,配線長が 90cm (3ft) 未満の所,又は腐食性ガスが存在
する場所には,使用してはならない。
アルミニウム電線は,この用途に対して特別に承認された端末方法だけを用いて端末処理しなければな
らない(3.20.2 参照)
。
7
W 2010-1989
3.8.3
SWAMP
区域での使用 過酷な風若しくは湿度の問題,又はその両方 (SWAMP) がある区域に対
して,望ましい電線の種類は,MIL-W-22759 による。脚室,翼フラップ近傍,翼折り畳み部及びパイロン
がこのような区域に含まれる。
3.8.4
同軸ケーブル 同軸ケーブルは,用途に適するものでなければならず,附属書 A の 30.1.4 に従っ
て選定しなければならない。400MHz を超える用途に対して,及び重要な無線周波数回路においては,減
衰,静電容量,不均等反射減衰量,環境要求事項,リード線の短絡及び接地のような重要な電気的特性を,
設計で考慮しなければならない。同軸ケーブルの選定では,MIL-HDBK-216 を手引として用いなければな
らない。
TEM
モードで動作する同軸ケーブル及び管状金属外面をもつ同軸ケーブルは,
長さ 61cm (24in) ご
と及び端末から 15cm (6in) 以内に,MS 14100 によるテープの帯を巻いて識別しなければならない。
MIL-T-81490
による伝送線路は,MIL-T-81490 の色についての要求事項を満足しているときには,テープ
の帯で識別する必要はない。
3.8.5
ハーネス ハーネスは,開放形又は保護形設計のどちらかでなければならない。整備を考慮すると
きは,開放形ハーネスが望ましい。保護形ハーネスの使用は,配線設計上の考慮から必要でない限り,避
けなければならず,また,保護形ハーネスの使用は,発注者の承認対象とする。保護形ハーネスの設計の
細部も同様に,発注者の承認対象とする。
3.8.6
シール及び整備に関する絶縁体の適合性 耐環境性の継手を形成するために配線をシールしなけ
ればならないような器具の配線端末は,その器具のシール特性に適合する絶縁体を備えていなければなら
ない。滑らかな押出し絶縁体をもった電線をシールするには,一般にエラストマー製グロメットが認定さ
れている。一つのグロメットの穴には,1 本の電線だけを通すことが許される。テープ巻付け,編組若し
くはしま状の絶縁体,又はその他の滑らかな円形ではない絶縁体に対するシールについては,適合性が端
末器具の認定で実証されていない限り,
適合性を個別に試験して,
発注者の承認を受けなければならない。
航行体に装備した後も,このようなすべての器具のシール特性の完全性は,そのまま残っていて,しか
も,その機能を果たすことができなければならない。器具は,それを目視検査したとき,最外側のシール
部(ウエブ)がその器具と十分に接触しているときは,シールされているとみなさなければならない。配
線は,横荷重が電線のシール部の完全性を破壊しないように,装備しなければならない。
3.8.6.1
電線の直径 仕上り電線の外径は,該当構成部品仕様書で規定するグロメットに対する指定限界
内にあって,しかも,コンタクトの挿入引抜き用整備工具の取扱い限度を超えてはならない。
3.8.6.2
電線のポッティングシール ポッティングの外面を使用する場合には,シーリングコンパウンド
は,電線絶縁体に接着するものでなければならない。電線絶縁体に上塗りが施してある場合には,シーリ
ングコンパウンドは,この上塗りに接着しなければならない。
3.8.6.3
絶縁低下 配線は,シールを施そうとする絶縁体をゆがめたり,凸凹にしたり,損傷させたりす
ることのないように,取り扱い,被覆をはがし,取り付けなければならない。表示及び識別は,湿気の侵
入路を形成しないような方法で施さなければならない。シールド電線及びより電線の絶縁体上に残った圧
こんもまた,エラストマー製のシールに関して容認できない絶縁低下の原因となる可能性がある。この状
態を避けるよう注意を払わなければならない。
3.8.7
コロナの防止 配線を選定する際は,コロナ放電の防止について考慮することが望ましい。コロナ
の防止に関する有用な情報は,6.6 に記載されており,すべての配線の選定に先立って検討することが望ま
しい。
8
W 2010-1989
3.8.8
電線の最小サイズ この規格では,電線の最小サイズとしてサイズ 22 の電線の使用を許可してい
る。サイズ 24 以下の細い電線の使用は,厳格に禁止する。航空宇宙航行体に使用する際にこの制限を課す
のは,整備上の困難による。
3.8.8.1
電流容量 各電線の連続電流に関する手引を,付表 1 に示す。付表 1 は,周囲温度 70℃,33 本
以上の電線から成るハーネス又はハーネスブランチが定格電流
(ハーネス又はハーネスブランチの)
の 20%
以下の電流を流し,しかも,高度 18 000m (60 000ft) で使用していると仮定したものである。この表を使
用しても,電線の選定に関するその他の要求事項を除外してはならない。
付表 1 に示す以外の条件に対し
て電線サイズを決定するには,
付図 3,付図 4 及び付図 5 のデータを使用するとよい。付表 1 並びに付図
3
,
付図 4 及び付図 5 を使用しても,電線の選定に関するその他の要求事項を除外してはならない。
3.8.8.1.1
ハーネスの配線 付表 1 に示すハーネス内電線の定格電流は,33 本以上の電線から成るハーネ
スを高度 18 000m (60 000ft) 及び周囲温度 70℃で使用する場合に基づくものであり,ハーネス内を流れる
全電流は,そのハーネス内のすべての電線の該当電線構造定格温度に対して,
付表 1 から得られる電流容
量を加算して
(又は
付表 1 で仮定した条件とは異なる周囲温度,高度又はハーネス負荷の要因に対しては,
付図 3,付図 4 及び付図 5 から計算して)得られる合計値の 20%以下でなければならない。例えば,ハー
ネスが定格 200℃,サイズ 20 の電線 33 本で構成されているとすれば,電流容量の合計値は 297A で,その
20%
は 59A である。したがって,このハーネスの最大許容全電流は 59A で,ハーネス内のサイズ 20 の電
線の任意の 1 本の最大許容電流は 9A である。
ハーネス内のケーブルは,そのケーブル内の導体本数(シールドを除く。
)に等しい本数の個別電線とし
て扱わなければならない。比較的小さいハーネスについては,全電流の許容百分率は,ハーネスが単一電
線の形態に近づくのに伴って増加させてもよい。
付表 1 に示すハーネス定格は,付図 3,付図 4 及び付図 5 から導き出したものである。これは,自由大
気中の単一電線に対する定格を
Δ
T
= (200−70) ℃において決定し,それを次の条件に対して低減させたも
のである。
(a)
運用高度 18 000m (60 000ft)
(b)
ハーネスの電線本数 33 以上
(c)
ハーネス内を流れる電流は定格ハーネス電流の 20%以下
上記以外の条件の場合については,6.7 を参照のこと。
3.8.8.1.2
電線の端末 付表 1 の連続定格電流は,電線への適用だけのために記載したもので,関連電線
端末具(例えば,コネクタコンタクト,リレー,回路遮断器,スイッチ)に直接適用できない。これらの
定格電流は,
その器具の設計上の特性によって制限する。特定の系統回路に対して選定した連続電流値で,
どの回路素子内にも過熱点を生じて早期故障とならないよう保証するために,注意することが望ましい。
回路構成部品の容認温度レベルは,特定の回路構成部品仕様書で規定するものでなければならない。
3.8.8.2
周囲温度 受注者は,電線束がさらされる最高周囲温度に電線負荷電流による温度上昇を加えた
温度が,
附属書 A の付表 A-1 及び付表 A-2 に示す最高導体定格温度を超えないことを保証しなければなら
ない。最高周囲温度,最高導体定格温度,最大高度及び電線束内の電線本数が既知の場合には,該当する
負荷電流を決定するのに
付図 3,付図 4 及び付図 5 を使用すればよい。この計算方法に関しては,6.7 の例
題を参照のこと。
3.8.8.3
(削除)
3.8.8.4
電圧降下 電力分配回路に対しては,供給路及び帰路の全インピーダンスは,負荷機器端子の電
圧が MIL-STD-704 (JIS W 7001) の限界内に納まるものでなければならない。
9
W 2010-1989
3.8.9
整備性 電線の選定は,整備作業の種類と頻度を考慮して行わなければならない。
3.8.10
特別な用途に対する配線の選定 附属書 A に記載のはん(汎)用電線は,すべての用途で同じよ
うに性能を発揮するとは限らない。次の特別の用途に対しては,個々の種類の電線の個別の特性を考慮し
なければならない。
3.8.10.1
過酷な風及び湿度問題 (SWAMP) SWAMP の区域には,MIL-W-22759 から選定した適切な種
類の電線が望ましい。
3.8.10.2
頻 繁 な た わ み 配 線 が 繰 り 返 し て 曲 が っ た り , た わ ん だ り す る 必 要 が あ る 箇 所 に は ,
MIL-W-22759
から選定した適切な種類の電線が望ましい。
3.8.10.3
電磁干渉 (EMI) 及び電磁ぜい弱性 (EMV) に敏感な箇所 EMI 及び EMV に敏感な箇所に使用
するケーブルは,MIL-C-85485 によることが望ましい。
3.9
電線及びケーブルの識別 各電線及びケーブルは,そのジャケット又はスリーブに識別記号を表示
しなければならない。
3.9.1
識別記号の指定 配線の識別記号は,発注者の指定に従い,附属書 B 有意的電線識別法又は附属
書 C 非有意的電線識別法によらなければならない。
3.9.2
(削除)
3.9.3
表示
3.9.3.1
電線識別記号は,左から右へ水平に,又は上から下へ垂直に読むように印刷しなければならない。
附属書 B の付図 B-1 及び付図 B-2 参照。
3.9.3.2
文字は読取り可能で永久的なものとし,識別表示方法は配線の特性を損なうものであってはなら
ない。
3.9.3.3
配線は,全長にわたって,7.6cm (3in) 以下の間隔で識別表示しなければならない。
3.9.3.3.1
(削除)
3.9.3.3.2
識別用の印刷をすることができないケーブルは,端末及び各接続点(圧力壁又は隔壁)におい
て,外部被覆の外側に取り付けた非金属材料の上に識別記号(及び該当する場合は個々の電線の色)を印
刷して,識別しなければならない。電線管内又は共通ジャケット内に収容されていないケーブルは,印刷
したスリーブを各端末及び 900mm (3ft) 以下の間隔に取り付けて識別しなければならない。ケーブル内の
個々の電線は,その端末から 76mm (3in) 以内に識別を表示しなければならない。
3.9.3.3.3
識別用の表示を電線上に直接することができない場合は,印刷したスリーブを両端及び 900mm
(3ft)
以下の間隔に取り付けて識別しなければならない。
3.9.3.3.4
長さが 15cm (6in) 未満の短い電線及びケーブルは,航空機内では識別表示する必要はないが,
図面上では完全に識別しなければならない。
3.9.3.3.5
開発原型航空機に対しては,配線の識別表示は,接続点及び端末点だけに行えばよい。
3.9.3.3.6
装備した後に識別指定を変更した電線は,各電線セグメントの端末の所で,スリーブを用いて
識別表示し直せばよい。このような電線は,全長にわたって識別表示をし直す必要はない。
3.9.3.3.7
高密度ハーネス及びシールド付き,ジャケット付き多心ケーブル,並びに非有意的電線識別法
を用いる場合は,同じハーネス内にカラーコード又はその相当英数字コードが入れ替わっていてもよい。
カラーコードの相当英数字コードは,MIL-STD-681 の規定に従わなければならない。カラーコードに相当
する英数字コードの例として,
附属書 C の 30.2.3.2 を参照のこと。
10
W 2010-1989
3.9.4
コネクタの識別 コネクタは,結合を容易にするため,識別表示しなければならない。すべてのプ
ラグは,その電線グループ,ケーブル又はハーネスに非金属バンドを取り付けなければならない。このバ
ンドには,プラグ及び相手側レセプタクルの両方の P 及び J 番号の識別並びに機器名称を表示しなければ
ならない。このバンドは,プラグから 15cm (6in) 以内になければならない。すべてのレセプタクルは,構
造部材の両側に,レセプタクルに隣接して J 番号を表示して識別しなければならない。試験用及び電源用
のような,相手側プラグが取り付けられないレセプタクルは,このほかに更に,構造部材のプラグ側にレ
セプタクルの機能を識別表示しなければならない。
3.9.5
電線サイズカラーコード方式 発注者が承認したときは,電線サイズの管理を容易にするため,以
下に規定する電線サイズカラーコード方式を用いてもよい。電線サイズカラーコードを用いるときは,電
線の絶縁体に,次の方法のうちの一つを用いて,該当する色で識別しなければならない。各航行体には,
一つの方法だけを用いるのがよい。
(a)
全体に色を着ける。
(b)
明確な帯状に色を着ける。
(c)
明確なしま状に色を着ける。
電線サイズカラーコードは,次のとおりとする。
サイズ
色
サイズ
色
24
青
10
褐色
22
緑
8
赤
20
赤
6
青
18
白
4
黄
16
青
2
赤
14
緑
1
白
12
黄
0
青
3.10
配線の装備 配線装備の設計は,次の優先順位の規定に適合しなければならない。
1
位 飛行安全性
2
位 配線の整備,取外し及び交換の容易さ
3
位 コスト有効度が高い航空機の生産
配線は,次の事項を達成するように工作し装備しなければならない。
(a)
最高度の信頼性
(b)
系統間の干渉及びカップリングを最小にすること。
(c)
検査及び整備のための接近性
(d)
損傷の防止
配線の設計に際しては,電線ハーネスの整備,取外し及び完全交換が容易にできるように考慮しなけれ
ばならない。
3.10.1
配線の配置 配線は,取付け及び整備を容易にするため,グループ及び束にして配置しなければな
らない。個々のグループはスポットタイで縛り,また,これらのグループを束ねるときには,スポットタ
イを取り除いてはならない。
11
W 2010-1989
3.10.2
束及びグループの太さ 設計目標として,クランプ内に納まる束及びグループは,直径 5cm (2in) 以
下でなければならない。高密度ハーネスは,この要求事項から除外する。高密度コネクタへの配線は,グ
ループ内の電線がすべてただ一つの品目,機器又は系統に関するものであるならば,単一のグループとし
て配線してもよい。
3.10.2.1
高密度ハーネスの大きさ 高密度ハーネス内の電線本数は,効率的で良好な設計によってだけ制
限されるものとしなければならない。電線サイズが 16 より大きい電線の使用は,同じハーネス内にそれよ
り細い電線が含まれていない限り,推奨されない。
3.10.3
検査及び整備 露出配線では,グループは束を取り外さずにグループの交換ができるように装備し
なければならない。高密度ハーネスは,部分ごとに容易に交換できるように設計しなければならない。
3.10.4
変更の容易さ 発注者が要求する場合には,指定された系統の配線は,系統の変更を行うときに,
容易に取り外して,新しい系統配線が容易に取り付けられるように装備しなければならない。配線の装備
は,変更に関係する機器及び配線だけが影響を受けるようなものでなければならない。
3.10.5
デッドエンド 接続指定がない各電線端末は,MS 25274 によるキャップを用いるか,又は発注者
が容認する絶縁方法を用いて,デッドエンドとしなければならない。高密度配線を用いる場合には,デッ
ドエンドは,コネクタ又は貫通ブッシングから 100∼150mm (4∼6in) の範囲に作らなければならない。
3.10.6
経路 配線は,信頼性を保証し,次の危険から保護されるように経路をとらなければならない。
(a)
摩擦
(b)
取っ手として,又は要員用装備品の支えとして用いられること。
(c)
航行体内における要員の動きによる損傷
(d)
貨物の積込み又は移動による損傷
(e)
電池,又は酸性のガス及び流体による損傷
(f)
石,氷,泥などにさらされる脚室内での摩耗
(g)
戦闘による損傷(可能最大限まで)
(h)
可動部品による損傷
(i) SWAMP
区域,高温区域又は高濃度の流体若しくはガスが集積しやすい区域などの過酷な環境
3.10.7
配線のたるみ 水切りループのためのたるみ(3.11.8 参照)のほか,更に,3.10.7.1∼3.10.7.5 の要
求事項を満足させるためのたるみを設けなければならない。たるみの要求事項は,試作機はもちろん,各
量産機においても満足していなければならない。量産形電線ハーネスの工作に際しては,装備したハーネ
スが,張力や無理な力を受けたり改修を必要としたりしないで,これらの要求事項を満足することを保証
できるような対策を,ハーネスの設計及び工作工程に採り入れなければならない。
3.10.7.1
コネクタ端末 配線端末がコネクタ又は端末接続具(無線周波コネクタを除く。)の場合には,
完全なコネクタ交換ができるように,最小 25mm (1in) のたるみを設けなければならない。このたるみは,
コネクタと 2 番目の配線支持クランプとの間になければならない。
この 25mm (1in) のたるみの要求事項は,
コネクタが結合されていない状態で 1 番目の配線支持クランプを緩めたとき,その配線端末のコネクタシ
ェルの前面を,
コネクタを正しく結合させるのに通常必要とする点よりも更に 25mm (1in) 延ばせることを
意味するものと解釈しなければならない。ポッティングしたコネクタの交換用のたるみは,少なくともポ
ッティングの長さに 25mm (1in) を加えたものとしなければならない。
12
W 2010-1989
3.10.7.2
ラグ端末 ラグを端末とする電線の各端末には,ラグの胴部の長さの最小限 2 倍に等しい長さの
たるみを設けなければならない。
サイズ 2 以上の銅電線及びサイズ 4 以上のアルミニウム電線の場合には,
たるみの長さは,最小限ラグの胴部の長さに等しくとらなければならない。これらのたるみは,ラグの近
くにあって,整備員がラグを交換するときに利用できなければならない。
3.10.7.3
引張り防止 配線の装備は,電線,接続点及び支持点で引っ張られることがないように設計しな
ければならない。
3.10.7.4
自由な動き 配線の装備は,防振台に取り付けた機器が自由に動けるようにしなければならない。
3.10.7.5
配線の移動 配線の装備は,航行体内で整備を行う必要がある配線及び機器が移動できるように
しなければならない。
3.10.8
電磁適合性 配線(無線周波ケーブル及びアンテナケーブルを含む。)は,MIL-E-6051 (JIS W 7005)
に従って,電磁干渉を最小にするように,経路をとらなければならない。
3.10.9
点火 マグネトケーブル回路に対しては,発注者が個別に承認した種類のたわみ金属電線管を使用
しなければならない。マグネト接地ケーブル(誘導振動子出力ケーブルを除く。
)は,他のケーブルを収容
した電線管又は接続箱を通して配線してはならない。
3.10.10
コンパス自差 配線及び接地帰路は,MIL-C-7762 で許容される範囲を超えるコンパス自差を生じ
ないように装備しなければならない。コンパス区域内又はコンパスの高感度ピックアップ素子内にある直
流伝送の各電線は,磁界を打ち消すため,対応する接地帰路電線とより合わせなければならない。
3.10.11
組立て ラグ端子を端末とする電線は,隣接する端子に組み付ける際の人的誤りを減らすように装
備しなければならない。記号識別に依存するよりも,束縛点からの電線長を管理するか,扇形編出し端子
板を用いるか,又はスタッド穴の大きさを違えるのが望ましい。
3.10.12
高感度回路 低電力レベルの信号回路のような高感度回路は,接続点において他の回路から分離し
なければならない。このためには,高感度回路に別個のコネクタを使用すること,及び共通端子盤上で高
感度回路と他の回路との間に少なくとも 1 個の接地端子スタッドを置くことによって達成しなければなら
ない。
3.10.12.1
電気起爆部分系統の配線(その 1) 電気起爆部分系統に関連するすべての回路は,2 心より合
わせシールド線で配線しなければならない。すべての回路及び接続部は,シールドに不連続やすきまを作
らずにシールドしなければならない。電線のシールドは,コネクタの外周に接続しなければならない。武
器及び起爆部分系統に関連するすべての発射及び制御回路は,接続点において他の回路から分離しなけれ
ばならない。
3.10.12.2
電気起爆部分系統の配線(その 2) 武器及び起爆部分系統に関連する発射及び制御回路で,接
続箱内に納まっているものは,すべて,赤色(FED-STD-595 の色番号 11105)のしま模様によって識別し
なければならない。
参考 MIL-W-5088 では,この箇条は,空軍機に対する要求事項になっている。
3.10.13
電力系統 一次電力系統の電気的に保護されていない配線は,分配回路の配線と束ねたり,グルー
プにしてはならない。二つ以上の電源からの配線は,単一損傷が二つ以上の電源に影響することを防止す
るため,同じ束又はグループにしてはならない。
3.10.14
不可欠機器 正規状態又は非常状態のもとで航行体の操縦を維持するために作動しなければなら
ない各系統への配線は,他の配線から分離した経路をとらなければならない。不可欠のエンジン回路は,
一つのエンジンに対するどれかの回路の損傷が他のどのエンジンの回路にも影響しないように,配線経路
をとらなければならない。
プロペラ回路は,
すべての他の回路から分離した経路をとらなければならない。
13
W 2010-1989
3.10.15
並列回路 発注者は,特定の機器の回路及びロードセンターへの給電線に対して,並列回路を指定
してもよい。二重機能を果たす機器への配線は,一つの系統に対する損傷が他の系統に影響することを防
止するため,別の束にして配線しなければならない。
複式又は多重冗長な MIL-STD-1553 (JIS W 7205) による多重データバス系統を用いる航行体では,冗長
データバスケーブルは,一つのデータバスケーブルに対する損傷が冗長データバス(単数又は複数)の動
作に影響することを防止するため,別の束にして配線しなければならない。
3.10.16
高温機器 配線は,絶縁低下を防止するため,抵抗器,単排気管,暖房用ダクト及び除氷装置のよ
うな高温機器から離さなければならない。
3.10.17
ナセルの配線 エンジン取外しの際の分離点から内側のエンジンナセル内の配線は,同じ機器を装
備した同じシリーズの航行体に用いるすべてのエンジン装備の間で互換性がなければならない。エンジン
取外しのためにクランプを取り外さなければならない配線に対しては,クランプ位置を確実に決められる
手段を講じなければならない。このことは,クランプブラケットを支持部品に永久的に取り付けることに
よって達成しなければならない。
3.10.18
ビルジ内の配線 ビルジ内の配線は,この区域内に設置した機器に取り付ける必要がある場合を除
き,機体中心線から少なくとも 150mm (6in) 離して装備しなければならない。湿気によって品質低下しや
すい種類の電線を,ビルジ内で使用してはならない。
3.10.19
エンジン装着補機 エンジン装着補機に直接取り付ける場合には,サイズ 20 より細い電線を使用
してはならない。サイズ 20 の電線を使用する場合は,それらは高強度合金導体であり,また,端末がコネ
クタである場合は,そのコネクタが電線を支持し,端末での引張りを防止しなければならない。電線は適
切にグループ分けし,スポットタイで縛り,支持しなければならない。
3.10.20
脚室 脚室内のすべての配線には,電線管その他の保護を施さなければならない。配線が正しく支
持されている所では,たわみ配管,耐摩耗性テープ又は外側編組ジャケットの使用を容認する。配管を用
いるときは,すべてのトラップ点と各支持クランプの組の間の最低点とに,排水孔を設けなければならな
い。テープ巻きは,3.11.6 の規定に従わなければならない。湿気によって品質低下しやすい種類の電線は,
脚室内では使用してはならない。
3.11
保護及び支持 配線は,次の要求事項を満足するように支持しなければならない。
(a) 6.3.8
で定義する摩擦を防止すること。
(b)
隔壁及び構造部材を通って配線する所では,配線を固定すること。
(c)
接続箱,パネル及び電線束内では,配線を適正にグループ分けし,支持し,経路をとること。
(d)
導体及び接続を破壊しようとする機械的引張りや加工硬化を防止すること。
(e)
機械的操作用索及び関連可動機器に損傷を生じさせるアークの発生や配線の過熱を防止すること。
(f)
機器の端子盤への再組付けが容易であること。
(g)
配線と他の機器との間の干渉を防止すること。
(h)
高振動区域においては,配線の過度の動きを防止するように支持すること。
(i)
グロメットシールを変形させないで,コネクタ及び端末具で配線がその経路方向に向くようにする
こと。
14
W 2010-1989
3.11.1
一次支持 配線の一次支持は,610mm (24in) 以下の間隔で配置した MIL-S-23190,MS 21919 及び
MS 25281
によるクッション形クランプ及びプラスチック製クランプによって行わなければならない。
さら
に,航空機構造の切欠きを通って配線が行われる場合は,この規格の保護及び摩擦防止要求事項を満足さ
せるのに必要な程度に,クランプを装着しなければならない。トラフ,ダクト又は電線管内の露出配線は,
この要求事項から除外する。ハーネスのたわみ性がない部分は,1 070mm (42in) 以下の間隔で配置したク
ランプによって支持しなければならない。
丸形以外のハーネス用クランプは,ハーネスの外形に適合する形状で,きちんとはまり合うものでなけ
ればならない。プラスチック製クランプは,ハーネスのたわみ性がない部分を支持するのに使用してはな
らない。プラスチック製のケーブルストラップは,発注者の個別承認がない限り一次支持具として使用し
てはならず,もし使用する場合には,プラスチック製クランプに課せられた制限事項に従わなければなら
ない。
配線の一次支持具は,隣接する配線に取り付けてはならない。
3.11.1.1
プラスチック製クランプ プラスチック製のケーブルクランプは,4 番目ごとのクランプをゴム
クッション形とするならば,水平の配線に使用してもよい。水平以外の配線にプラスチック製クランプを
使用することは,その装備がクランプ点間にたるみが蓄積する可能性がなく,4 番目ごとのクランプをゴ
ムクッション形としない限り,避けなければならない。
3.11.1.2
クランプのサイズ 一次支持具は,絶縁体を損傷せずに配線を所定位置に保持するようなサイズ
のものでなければならない。適正にはまり込むようにするため,3.11.6.1 によるテープをグループの周囲に
巻き付けてもよい。
3.11.1.3
コネクタの支持 プラグを端末とする配線は,配線がその経路方向に向くように支持しなければ
ならない。このことは,アダプタ,クランプ,ポッティング,電線案内具,又は発注者が容認するその他
の方法によって達成すればよい。
3.11.1.4
クッション形クランプ 一次支持にクッション形クランプを使用する場合,その物理的性質は,
その装備環境に適合したものでなければならない。クッション成形材料は,個別の要求事項を満足させる
ように指定し,他の用途には適しなくてもよい。
3.11.2
二次支持 配線の二次支持(一次支持点間の支持)は,3.11.2.1∼3.11.2.3 から選定した方法で行わ
なければならない。
3.11.2.1 MIL-T-43435
による固縛用テープ
3.11.2.2 MS 90387
による工具を用いて取り付けた MIL-S-23190 によるプラスチック製ケーブルストラッ
プ。
3.11.2.3 MIL-I-23594
,タイプ I による絶縁テープ。
3.11.3
支持に関する制限
3.11.3.1
連続したひもで縛る方法は,用いてはならない。ただし,パネル及び接続箱内では,この方法を
任意使用してもよい。
3.11.3.2
(削除)
3.11.3.3
配線を保護するために絶縁スリーブを使用するのは,最小限にしなければならない。液がたまる
可能性を除くような対策を講じなければならない。
3.11.3.4
(削除)
3.11.3.5
電線は,電線管又は絶縁スリーブ内では,互いに縛り合わせたり締め合わせてはならない。
3.11.3.6
ケーブルの支持は,防振台の作動を妨害するような,配線を拘束するものであってはならない。
15
W 2010-1989
3.11.3.7
テープ又はひもは,一次支持に使用してはならない。
3.11.3.8
プラスチック製ケーブルストラップは,3.11.3.8.1∼3.11.3.8.7 の制限事項が適用される箇所には使
用してはならない。
3.11.3.8.1
全温度(周囲温度+温度上昇)が 85℃ (187°F) を超える箇所。
3.11.3.8.2
ストラップの破損が配線の動きを許し,それが部品に当たって,絶縁体を損傷したり機械的リ
ンク機構の動きを妨害する可能性がある箇所。
3.11.3.8.3
ストラップが破損したとき,それが可動機械部品の中に落下するような箇所。
3.11.3.8.4
高振動区域内
3.11.3.8.5
脚室,翼フラップ近傍,翼折り畳み部,アンビリカル部その他個別仕様書又は契約書で規定す
る区域のような,過酷な風若しくは湿度問題,又はその両方 (SWAMP) がある区域。
3.11.3.8.6
紫外線にさらされることがある箇所。ただし,ストラップが紫外線に対する抵抗性をもつもの
であるときは,この限りでない。
3.11.3.8.7
電線束内の電線,ケーブル,グループ又はハーネスを縛る箇所。
3.11.4
対摩擦処置 電線束が機器及び構造部材の縁に接触しないように配線経路を定め,電線束をクラン
プすることによって,摩擦を防止しなければならない。少なくとも 9.5mm (
8
3
in)
の物理的間隔がとれない
所では,縁は,グロメットや適当な保護片で覆わなければならない。グロメット及び保護片は,接着その
他の適当な方法で所定位置にしっかりと固定しなければならない。シールドケーブルは,絶縁外被を備え
たものでなければならない。
3.11.5
無線周波 (RF) 同軸ケーブルの支持 個々の同軸ケーブル及び同軸ケーブルを含む束の支持は,次
の追加要求事項に従わなければならない。
(a)
一次支持具及び二次支持具は,どちらも,滑りの防止に必要な最小限度を超える圧力が,ケーブル
に作用しないように取り付けなければならない。
(b)
圧力は,同軸ケーブルを含む束の周囲又は個々に支持する場合の同軸ケーブルの周囲に一様に分布
させなければならない。
(c)
支持具は,ケーブルを変形させケーブルの電気特性を低下させるようになってはならない。
(d)
同軸ケーブルを含む束を縛るには,3.11.2.1 に規定するテープだけを使用しなければならない。テー
プの選定及び取付けは,3.11.5(a),(b)及び(c)の要求事項を満足しなければならない。ただし,固体
誘電体をもつ同軸ケーブルを含む束を縛るには,MS 90387 による工具を用いて取り付けた
MIL-S-23190
によるプラスチック製ストラップを使用してもよい。MS 90387 による工具の張力調整
は,3.11.5(a)の要求事項を満足するように行わなければならない。
3.11.6
はん(汎)用保護及び支持用部品 配線と関連機器の保護及び支持に,次の品目を使用してもよい。
3.11.6.1
絶縁テープ 絶縁テープは,その用途に適する種類のものか,又は個別の使用に対して呼び出さ
れたとおりでなければならない。絶縁テープは,主としてクランプの下の詰め物として,及び二次支持用
として使用しなければならない。脚室内のような,追加保護を必要とする箇所の配線に対する巻付け材と
しては,非粘着性テープを使用してもよい。すべてのテープは,ほどけるのを防ぐために端末を縛るか,
その他の適当な方法で固定する。
保護用に用いるテープは,重なり合った層が液体を遮るように使用し,すべてのトラップ点及びクラン
プ間の各低い位置に排水孔を設けなければならない。湿気を吸収したり,他の配線と化学反応を起こす揮
発性の可塑剤を含むプラスチック製テープは,使用してはならない。
16
W 2010-1989
3.11.6.2
絶縁スリーブ あらかじめ絶縁していない限り,スプライス及び電線端子は,絶縁スリーブで保
護しなければならない。絶縁スリーブは,MIL-I-7444,MIL-I-631,MIL-I-3190 又は MIL-I-18057 の規定
に適合していなければならない。スリーブでは,スプライス又は端子胴部及び少なくとも 13mm (
2
1
in)
の
隣接する電線絶縁体を覆わなければならない。所定位置に確実に縛るには,非熱収縮スリーブを用いなけ
ればならない。スリーブの定格温度は,電線及びスプライス又は端子の使用温度要求事項に適合しなけれ
ばならない。
3.11.6.2.1
熱収縮絶縁スリーブ 熱収縮絶縁スリーブは,MIL-I-23053 の規定に適合しなければならない。
3.11.6.3
ターミナルニップル ターミナルラグ及びスタッドを全体的に絶縁し保護するためには,MS
25171
によるターミナルニップルを用いなければならない。
3.11.6.4
グロメット グロメットは,MS 21266 又は MS 35489 の規定に従わなければならない。MS 21266
によるグロメットは,
所定位置に永久的に接着し,電線が穴の縁に接触しないようにしなければならない。
3.11.6.4.1
分割グロメット 分割グロメットの開口部は,割れ目の幅が 1.6mm (
16
1
in)
以下としなければな
らない。割れ目は,斜めになっていて,グロメット取付用切欠きへの配置は,電線の圧力が割れ目の反対
側にかかるようにしなければならない。
3.11.7
曲げ半径
(a)
電線又はケーブル 個々に経路をとり支持された単一の電線及びケーブルに対しては,最小曲げ半
径は,電線又はケーブルの外径の 10 倍としなければならない。グループ,ハーネス又は束から個々
の電線又はケーブルを取り出す点では,その電線又はケーブルが取り出し点で適切に支持されてい
るときは,電線又はケーブルの最小曲げ半径は,外径の 10 倍としなければならない。
シールド端末又はジャンパとして使用する電線をハーネス内で逆方向にする必要があるときは,
その電線が適切に支持されているならば,逆向きにした点での電線の最小曲げ半径は,直径の 3 倍
としなければならない。
(b)
グループ,束又はハーネス グループ,束又はハーネスの最小曲げ半径は,グループ,束又はハー
ネスの外径の 6 倍としなければならない。どのような場合にも,グループ,束又はハーネスの曲げ
半径は,それらに含まれる最も太い単一電線又はケーブルの直径の 10 倍以上としなければならない。
(c)
同軸ケーブル 最小曲げ半径は,ケーブルの特性に悪影響を及ぼすものであってはならない。たわ
み形同軸ケーブルに対しては,曲げ半径は外径の 6 倍以上としなければならない。半硬質形に対し
ては,曲げ半径は外径の 10 倍以上としなければならない。
(d)
これらの要求事項は,また,出荷,取扱い及び保管中にも適用する。
3.11.8
水切りループ 配線がコネクタ,端子ブロック,パネル又は接続箱に向かって下向きに装備されて
いる所では,3.10.7.1 の要求事項に加えて,流体又は凝縮水が上記の器具内に入ることを防ぐため,配線に
トラップ又は水切りループを設けなければならない。ポッティングしたコネクタは,この要求事項から除
外する。
3.11.9
可動部品に近い配線 相対運動が起こる所(ヒンジ及び回転部品,特に操縦かん,操縦輪及び操縦
棒,並びに操縦だ面など)の組立品に取り付ける配線は,組立部品の相対運動によって配線の劣化が起こ
るのを防止するように装備するか又は保護しなければならない。この劣化には,1 本の電線又はケーブル
と他の電線又はケーブルとの間の摩耗,並びに過度のねじり及び曲げを含む。
配線の束は,ヒンジのこちら側と向こう側との間では,曲げられるのではなくねじられるように取り付
けなければならない。ライン交換可能ユニット (LRU) 及び交換可能組立品 (WRA) の近くのケーブルは,
機器の頻繁な取外し及び交換による曲げ,引張り,摩耗その他の影響による損傷に対して保護しなければ
17
W 2010-1989
ならない。
3.11.10
特別保護 電線,ケーブル及びバスを含む電力用給電線は,特別追加絶縁,隔離取付け及び分離な
どの形で特別の機械的保護を講じなければならない。バスセンタは,電源系統を断絶させるような接地故
障又は相間故障を防止するため,隔離した絶縁容器内に配置しなければならない。ビルジ,デッキ又は床
のような場所に装備した配線は,整備員が行う通常の整備又は乗員の移動によって損傷を受けないように
配置するか,又は保護しなければならない。流体がたまって電線及びケーブルが汚染されることがある場
所に取り付ける配線は,適正に経路をとり,流体による損傷に対して保護しなければならない。
3.11.11
気体及び流体輸送用管路及び配管 配線は,流体輸送用のすべての管路,配管及び機器から独立し
て,可能な限り最大に離して支持しなければならない。配線は,流体が漏れたときに汚染されたり液が浸
透してくるのを防止するため,流体輸送用の管路,配管及び機器の下方よりも,むしろ上方を通さなけれ
ばならない。このような経路をとることができない場合には,配線は,管路の下方を,管路に平行よりも
むしろある角度で通さなければならない。
端末具は,どのような管路の下にも配置してはならない。
配線は,電気接続を必要とするか又は分離距離が 50mm (2in) 未満でない限り,流体輸送用の管路,配管
及び機器に取り付けてはならない。分離距離が 50mm (2in) 未満の区域では,配線は,少なくとも 13mm
(
2
1
in)
の分離距離を確実に維持するように装備しなければならない。その方法の例としては,
(a)
適切な分離装置を用いて配線を管路から分離する。
(b)
配線と管路が最も接近している所で,配線を一次支持具に取り付ける。
管路と配線とが非たわみ非金属電線管,金属電線管,小骨,ウェブ,フレーム,チャネル,押出材,ス
トリンガ,その他適切なバリヤによって分離されるように装備される場合には,上述の最小分離距離の要
求事項は適用しない。
3.11.12
燃料タンクを通る配線 配線は,他に方法がない場合を除き,燃料タンクを通る経路をとらないこ
とが望ましい。燃料管理又は燃料制御用配線の一部でない配線が,燃料タンクを通る経路をとらなければ
ならない場合には,配線絶縁体と燃料との接触を避けるため,乾燥した接近用チャネル又は通路内を通さ
なければならない。このチャネル又は通路は,燃料タンクを取り外さずに配線の取外し及び修理が容易に
できるような大きさのものとし,しかも,電気的接触を防ぐようなふっ化炭素製ライナを備えていなけれ
ばならない。
3.11.13
燃料タンク内の配線 燃料管理又は燃料制御系統の作動に不可欠の配線は,他に方法がない場合に
限り,燃料タンク内部を通してもよい。0.02mJ を超えるレベルのエネルギーを発生する能力をもった回路
に用いる配線は,ふっ化炭素製ライナを備えた接地した金属電線管内に納めなければならない。燃料と接
触する配線は,燃料及び燃料蒸気に適合できる絶縁方式のものでなければならない。燃料タンク内部の配
線を取り付けるのに用いるクランプ及び部材もまた,燃料及び燃料蒸気に適合できるものでなければなら
ない。固縛用テープ,ひも,機械的ストリップ,その他脱落して燃料フィルタを詰まらせる可能性がある
品目は,燃料タンク内部には用いてはならない。
3.11.14
支給機器の配線 長過ぎる配線及びコネクタが付いたままで支給される支給機器は,その配線の長
さを短縮してはならない。
余分の長さは,
配線の損傷及び可動部品にからみ付く可能性を防止するように,
グループ分けして支持しなければならない。
18
W 2010-1989
3.12
接地帰路 電源接地端子は,航行体の金属一次構造部材に接続しなければならない。系統上の考慮
事項によって別個の接地帰路配線を必要とするのでない限り,航行体の構造部材に接地帰路回路の役をさ
せなければならない。
接地端子を備えた機器は,
適切な最短の接地電線を用いて接地しなければならない。
内部接地された機器及び接地端子を備えていない機器は,もし機器の取付け台で適切な接地手段が得られ
ないか,又は取付け台の腐食が起こりそうな場合には,可能な限り最短の接地電線を用いて接地しなけれ
ばならない。接地帰路配線は,マグネシウム材に接続してはならない。電気的ボンディングは,MIL-B-5087
(JIS W 2009)
に従わなければならない。
3.12.1
シールド電線の接地 関連機器の個別装備仕様書で特に指示がない限り,シールド電線は,両端で
そのシールドを適切に接地しなければならない。50kHz 未満で動作する回路では,シールド電線は,一端
でだけシールドを接地してもよい。ハーネスに用いる場合は,シールド電線のシールドは,コネクタので
きるだけ近くで(個別には,ブレークアウト端末のブーツをかぶせた区域内で)端末処理しなければなら
ない。コネクタ附属品を通して接地するシールドは,シールド端末用に特別に設計したコネクタ附属品だ
けに接地しなければならない。
3.12.1.1
シールドの端末 MIL-S-83519 によって,シールドの端末処理に用いる唯一の器具を規定する。
3.12.2
多重接地 4 本を超える接地電線を 1 個の接地用ラグに端末接続してはならない。
また,4 個を超える接地用ラグを 1 個のスタッドに接続してはならない。電源(一次用,二次用,切換
え用,非常用)に対する各接地は,別個の接地点に接続しなければならない。利用機器の接地は,これら
の機器が二重機能又は重複機能を果たすのでなければ,同じ電源から給電される場合に限り,共通の接地
点に接続してもよい。
3.12.3
絶縁された機器箱 絶縁面上に取り付けたリレーのような電気機器は,直列に接続して,それから
1
本の電線で接地スタッドに接地するよりも,むしろ別々に接地しなければならない。
3.13
電線管 配線を保護したり,接近できない区域の整備を容易にする必要がある場合には,電線管を
使用してもよい。電線管の使用には,この規格の他の箇所で個別に要求していない限り,発注者の承認を
必要とする。金属電線管は,MIL-E-6051 (JIS W 7005) の要求事項を満足させるため,発注者の承認を得
たうえで,シールドとして使用してもよい。
3.13.1
非たわみ金属電線管 非たわみ金属電線管は,アルミニウム又はアルミニウム合金管でなければな
らない。
3.13.2
たわみ金属電線管 たわみ金属電線管は,MIL-C-6136 の規定に適合するものでなければならない。
これは,非たわみ金属電線管が使用できない場合にだけ使用しなければならない。
3.13.3
非金属電線管 非金属電線管は,装備環境に対して満足な材料で作られたものでなければならない。
ポリ塩化ビニルは,使用してはならない。
3.13.4
寸法 使用する電線管の直径を決定する際は,その中に納めようとする配線を一緒に束ねて,その
最大直径を測定しなければならない。この最大直径は,電線管の内径の 80%以下でなければならない。こ
の直径の測定を行う際には,適用仕様書で許容される最大直径の電線及びケーブルを用いるか,又は考慮
に入れなければならない。
3.13.5
電線管継手 金属電線管の場合には,AND 10380 又はその他の適用図面による電線管継手を使用
しなければならない。非金属電線管の端末は,承認された AN 又は MS の端末部品でなければならない。
接近できない場所の配線に使用する非たわみ性の金属及び非金属電線管は,
電線管を適切にフレアするか,
又は丸みを付けて鋭い縁を除去すれば,端末部品を付けなくてもよい。
19
W 2010-1989
3.13.6
電線管の装備 電線管は,振動や通常使用時の多少手荒な取扱いに耐えるように装備しなければな
らない。
3.13.7
支持 電線管は,フェルールのひずみを逃がすように支持しなければならない。
3.13.8
排水 実行できる場合には,金属及び非金属電線管は,流体又は凝縮水がたまらないように装備し
なければならない。マグネト接地ケーブル用電線管及びたわみ金属電線管の場合を除き,適当な排水孔を
低い点に設けなければならない。配線に巻き付けるのに使用するテープ(非粘着性)にも,低い点に排水
孔を設けなければならない。金属電線管の排水孔及び電線管継手は,ばりが取り除かれていなければなら
ない。
3.13.9
接地 金属電線管の接地は,MIL-B-5087 (JIS W 2009) に従わなければならない。
3.13.10
点火回路の電線管 各エンジンの点火回路接地電線管は,その単一損傷が 2 台以上のエンジンに影
響することを防止するため,別々の経路をとらなければならない。
3.13.11
曲げ半径 電線管及び電線管継手の曲がりによって,配線の摩擦が生じてはならない。
3.14
コネクタ 電気コネクタ及び関連部品の選定及び使用は,MIL-STD-1353 に従わなければならない。
コネクタは,耐環境形のものでなければならない。ピン形のものしかないハーメチックシール形コネクタ
を除き,コネクタは,人的危害を最小にし,コネクタが結合されていないときに生き回路(活線)の短絡
事故を防止するため,接続の生き側のコンタクトは,ピン形よりもソケット形であるように選定しなけれ
ばならない。
3.14.1
防湿形コネクタ コネクタは,高度,湿度及び温度の変化を含むすべての使用条件のもとで水及び
水蒸気の浸入を防ぐよう,シール(密封)しなければならない。コネクタは,電線の端末をシールすると
ともに,接続面間がシールされるものでなければならない。電線シール用グロメットを備えた耐環境形コ
ネクタが望ましいが,グロメットシール形コネクタが適当でない場合には,ポッティング形コネクタを使
用してもよい(3.14.8 参照)
。コネクタを端末とする配線は,シール形式と適合できる絶縁体を備えたもの
でなければならない。
3.14.2
コンタクト コネクタは,はんだ付け形コンタクトよりも着脱式圧着形コンタクトを用いたものの
方が望ましい。コンタクトは,MIL-C-39029 に従わなければならない。受注者は,コンタクトが圧着工具
を用いて行われたときに MIL-C-22520 による規定の性能を示すならば,生産には自動式,半自動式又は手
動式のどの圧着工具を使用してもよい。
3.14.3
耐火及び防火壁コネクタ これらのコネクタは,圧着形コンタクト及び耐食鋼シェルを備えたねじ
込み結合,戻り止め式のものでなければならない。継続する火炎のもとで限定された時間,導通を維持す
る必要がある所では,レセプタクル及び相手側プラグの両方共,耐火性のものでなければならない。火炎
下の形状完全性だけが必要で,導通が必要でない場合は,レセプタクルだけが耐火性であることを必要と
する。耐火及び防火壁コネクタは,該当公共規格のクラス K,KT 又は KS の要求事項を満足しなければな
らない。
3.14.4
同軸コネクタ 同軸コネクタは,用途に適するもので,パルス形シリーズについては MIL-C-3607,
LC
シリーズについては MIL-C-3650,ツイン形シリーズについては MIL-C-3655,耐環境形シリーズにつ
いては MIL-C-25516,LT シリーズについては MIL-C-26637,また,SMA,SMC,BNC,TNC,N,SNB,
C
及び SC シリーズについては MIL-C-39012 のような公共規格で規定されたものでなければならない。編
組同軸ケーブルを用いるすべての使用箇所には MIL-C-39012 カテゴリ D 及びカテゴリ C のコネクタだけ
を,また,半たわみ同軸ケーブルを用いる箇所には MIL-C-39012 カテゴリ E のコネクタを使用する。
公共規格の範囲を超えるコネクタ諸元を必要とする場合には,適用公共規格の一般要求事項を満足する
20
W 2010-1989
もので,発注者が承認するものであれば,標準外の市販品を使用してもよい。同軸コネクタの選定用手引
として MIL-HDBK-216 を使用しなければならない。
3.14.4.1
非たわみ同軸電線路 空気誘電体を用いる非たわみ同軸電線路は,線路の通気及び与圧のために,
空気通路隔壁形コネクタ及び圧力継手形コネクタを備えていなければならない。
3.14.5
コネクタの取付け 機器,構成部品又は配線を取り外したり整備するために,ケーブルとケーブル,
又はケーブルと機器との接続を頻繁に外す必要がある場合には,その接続にコネクタを使用しなければな
らない。工具を使用せずにコネクタを結合したり外したりすることができるように,適切な空間を設けな
ければならない。丸形コネクタのカップリングリングの周りには,少なくとも 19mm (
4
3
in)
空けなければ
ならない。丸形コネクタは,軸を水平方向にして取り付けるときは,主キー溝が上にくるような向きにし
なければならない。軸を垂直にして取り付けるときは,主キー溝が航行体に関して前方になるようにしな
ければならない。
コネクタは,操作員や整備員が取っ手に使ったり,足掛けにしたりすることがないように,又は貨物や
積込み資材によって損傷を受けないように,位置を選んで取り付けなければならない。プラグ及びレセプ
タクルは,どちらも,それを結合したり極性キーの位置を合わせるために,見える場所になければならな
い。結合されたプラグは,取り付けた配線で引っ張られてはならない。
与圧構造内のコネクタは,フランジを高圧側にして取り付けることが望ましい。地上電源用のレセプタ
クルは,小さいコンタクトを下方(6 時の位置)にして取り付けなければならない。
3.14.6
隣接位置 隣接位置に同じコネクタを使用することは,避けなければならない。隣接位置で使用す
るコネクタは,サイズ又はインサート配列を違えることが望ましい。同じコネクタを隣接位置で使用する
場合には,誤った接続ができないように,配線の経路を定め,支持しなければならない。隣接するコネク
タに同じインサート配列のものを用いる場合には,代替インサート位置又は代替シェルキー位置の利点を
生かすように選定しなければならない。この要求事項を満足させることができない場合には,関連レセプ
タクルの識別を表示したカラーコードスリーブを,プラグ近くの配線に取り付けなければならない。レセ
プタクルは,取付け構造部材に色帯を用いてカラーコード表示をしなければならない。
3.14.6.1
コネクタの排水 レセプタクルは,整備作業のために結合を外したとき,流体及び凝縮水がレセ
プタクルから排出されるが,逆にレセプタクルに入らないような姿勢になっていなければならない。エン
ジン室内,脚室内などのような,航行体本体の外部に取り付けるコネクタに対しては,結合したコネクタ
にはテープを巻くかシールを施し,結合を外したままにされることがあるレセプタクル及びプラグには保
護カバーを備えるなどして,油や湿気がコネクタに浸入するのを防止するよう,特別の注意を払わなけれ
ばならない。コネクタがたまり水を助長するような位置に,コネクタを取り付けたり,配置したりしては
ならない。
3.14.7
安全線 エンジンナセル,高振動区域(防振台に取り付けられた機器上のものを除く。),及び定期
整備検査時には,通常接近できない区域に設置する非戻り止めねじ結合形コネクタは,振動によってコネ
クタが外れるのを防止するため,カップリングナットに安全線を掛けるか,又は他の機械的な緩み止めを
施さなければならない。ねじ形カップリングリングを用いる電気コネクタ,若しくはコネクタ附属品又は
ねじ若しくはリングを利用してプラグの個別部品を共締めするプラグに対して安全線が必要な場合には,
MS 33540
による直径 0.5mm (0.020in) の耐食鋼線を用いて安全線を掛けなければならない。
21
W 2010-1989
3.14.8
ポッティング ポッティングを必要とするコネクタは,作動温度が 93℃ (200°F) 以下のときは,
MIL-S-8516
のシーラントを用いてポッティングしなければならない。作動温度が 93℃を超え 232℃
(450°F)
以下のときは,MIL-S-23586 によるシーリングコンパウンドを使用してもよい。耐油及び耐燃料
性が必要で,温度 125℃ (275°F) 以下の場合は,MIL-M-24041 の成形及びポッティング用コンパウンドを
使用してもよい。これよりも高温の場合には,発注者が個別に承認しない限り,ポッティングを使用して
はならない。
ポッティングしたコネクタの端末に保護スリーブ,識別スリーブ,ジャケット又は編組が使用されてい
る場合には,それがポッティング材の中にまで入り込んでいてはならない。コネクタのポッティング材の
中に絶縁スリーブを使用してはならない。
参考 MIL-W-5088 では,空軍機の場合には,コネクタのポッティングはすべて推奨されず,個別の
使用承認を必要とすることになっている。
3.14.9
予備コンタクト 圧着形コンタクトのコネクタを使用するときは,使用されないコンタクトも取り
付けておかなければならない。耐環境形コネクタの使用しないグロメット穴には,MS 27488 又は該当する
シーリング用プラグをはめ込まなければならない。ポッティングしたコネクタの場合には,各予備コンタ
クトには,そのコンタクトに接続できる最大サイズで,ポッティング材からの長さが 13∼18cm (5∼7in) の
電線から成るピグテールを取り付けなければならない。このピグテールは,識別表示を施して,デッドエ
ンドとしなければならない。
3.14.10
はんだ付け形コンタクト コンタクトのはんだ付けは,MIL-STD-454 の要求事項 5 (JIS W 7204)
に従わなければならない。ろう付け法を用いるときは,MIL-B-7883 に従わなければならない。
3.14.11
防じん(塵) 生産中(組立作業のためカバーを取り外すときを除く。)は,結合されていないコ
ネクタには,適切にカバーをかぶせなければならない。MS 90376,NAS 813 及び NAS 820 の規定に適合す
るようなプラスチック製ダストキャップを,この目的に使用してもよい。
3.14.11.1
最終組立カバー 試験用,将来用又はオプション用の配線のため用意してあるような,最終装備
組立品上の結合されていないコネクタには,MIL-STD-1353 によるダミーレセプタクル又は鎖でつないだ
保護カバーのような承認済みの防湿性カバーをつないでおかなければならない。
3.14.12
ダミーレセプタクル ダミーレセプタクルには,関連するコネクタを使用していないときの保管用
として,結合されていないプラグ若しくはキャップ又は保護カバーを備えていなければならない。このダ
ミーレセプタクルには,目立つように表示し,結合されていないコネクタ又は保護カバーを付けるのに便
利な所に配置しなければならない。ダミーレセプタクルは,関連するコネクタの仕様書の要求事項に適合
しなければならない。
3.14.13
プロビジョンプラグ 将来装備する機器用又は試験用のコネクタプラグは,プラグが配線上で揺れ
て,プラグ自身又は配線若しくは隣接機器を損傷したり,又は機械的リンク装置の動きを妨害する可能性
が生じないように,クランプで固定するか,又はそのために準備したダミーレセプタクルに固定しておか
なければならない。
3.14.14
コネクタ附属品 丸形の電気コネクタには,MIL-C-85049 による張力除去用附属品を備えていな
ければならない。附属品が特に接地線又は接地シールドの端末として設計されていない限り,その附属品
を接地線又は接地シールドの端末として使用してはならない。接地リード線の端末をサドルクランプねじ
に留めてはならない。
3.15
(削除)
3.15.1
(削除)
22
W 2010-1989
3.16
(削除)
3.17
接続部 一般的には,接続部を設けるより電線を中断しない方が望ましい。電線の接続部には,永
久スプライス,貫通ブッシング,ヘッダ,端子ブロック,端子接続具及びコネクタのような承認された器
具だけを使用しなければならない。接続部の必要性及び選択は,信頼性要因,整備性要因及び製作手順(選
択順位はこの記載順)を考慮して決定しなければならない。無はんだ式の接続部が望ましい。はんだ付け
接続部の使用は,最少限にとどめなければならない。
3.17.1
接続部の取付け 電気接続部は,機械的にも電気的にも適切であるように取り付けなければならな
い。接続部は,機械的ひずみを受けたり,又は,端子及びスプライスを絶縁する場合を除き,絶縁材を支
持するのに使用したりしてはならない。接続部は,その接続の確実性の維持を圧縮された絶縁材に依存し
てはならない。
また,回路の連続性を,圧縮負荷を受けても原形を保つような非金属部品に依存してはならない。
3.17.2
端末の準備 電線は,端末処理のために被覆をはがしたとき,付表 2 の規定を超えて素線がきずつ
いたり破断してはならない。導体の被覆をはがした部分の長さは,少なくとも端末のはんだ付け又は圧着
用筒部の底に届くのに十分なものでなければならない。しかし,導体が筒部の底に達したとき,0.8mm (
32
1
in)
を超える導体部分が筒部の端から露出してはならない。ラグ端子の場合には,導体の被覆をはがした部分
は,スタッド,座金,ナット又は類似の取付け具と干渉しない範囲内で,圧着用筒部の開口端を超えた点
まで延びていなければならない。
3.17.3
導電率 各接続部の導電率は,接続する電線と直径が同じで長さが同等の電線の導電率より小さく
てはならない。
3.17.4
間隔及び表面漏れ距離 電気接続部は,回路間にアーク及び有害な漏れ電流が生じるのを防止する
ため,適切な間隔及び表面漏れ距離をもっていなければならない。必要な表面漏れ距離を確保するため,
適当な絶縁バリヤ材を使用してもよい。
3.17.5
保護 電気接続部は,要員,貨物,シェルケース,固縛具その他固縛していない資材や積込み資材
の動きによって生じる損傷又は短絡から適切に保護されることを保証するよう,特別の注意を払わなけれ
ばならない。この保護は,接続部に覆いをすること,接続部を接続箱内に取り付けること,接続部を追加
保護を必要としないような位置に置くこと,又は発注者が容認するその他の方法によって実現させればよ
い。
3.17.6
露出した接続部 露出した接続部及びバスは,絶縁材を用いて保護しなければならない。再使用で
きない材料よりも,再使用できる器具の方が望ましい。電気及び電子機器だけを含む閉鎖区域内に設置し
た接続部及びバスは,露出したものとはみなさない。電気及び電子機器が収容されている所ではあるが,
本来は荷積み場所として適しているか,又は時折の飛散砂石に対して保護されていないような区画室は,
閉鎖区域とみなしてはならない。脚室内に置かれた端子接続部は,車輪が跳ね上げる水の影響に対して保
護しなければならない。
3.17.7
不可欠回路の接続部 航行体の運航安全性に影響する回路の接続部は,最高度の信頼性を保証する
ため,特別に保護しなければならない。これらの接続部は,電気絶縁及び異物からの隔離を保証するため,
個々に絶縁材で包まなければならない。
3.17.8
アルミニウム電線の接続部 アルミニウム電線及びケーブルの装備に対しては,接続部における過
度の電圧降下及び高抵抗を生じさせて,終極的に接続部の故障となることがあるような条件に対して防護
されるよう,特別の注意を払わなければならない。このような条件の例としては,端子及び座金の不適正
な取付け,ナットの不適正なねじり(トルク負荷)
,及び端子の不適正な接触面積がある。
23
W 2010-1989
3.17.9
接近性 すべての接続部は,航行体のどのような系統又は機器に対しても電気,油圧その他の作動
動力を与える必要なしに,検査及び整備のために接近できなければならない。これは,製作の便宜上取り
付けている接続部についても同じとしなければならない。
3.17.10
非金属製カバー 布又はプラスチックのような非金属製の接続部カバーは,高い絶縁抵抗を保持し,
使用流体を吸収したり,そのような流体によって影響されたりしてはならない。カバーは,機械的運動に
干渉を与えることがなく,締結部品が短絡の原因となることがなく,適正な排水が行われるように取り付
けなければならない。抵抗器のような高温機器の近くにある非金属製カバーは,遭遇する最高温度に損傷
を生じることなく耐える能力をもっていなければならない。
3.18
接続箱 電線及びケーブルの接続部に特別の保護を与えるため,接続箱を使用してもよい。
3.18.1
接続箱の構造 接続箱は,金属製又は非金属製のどちらでもよい。金属製接続箱は,接地故障の可
能性を最小にするため,箱の内部を絶縁材で被覆しなければならない。すべての接続箱の内側は,検査及
び整備を容易にするため,白色としなければならない。
防湿形接続箱の場合を除き,航行体が地上にあるとき及び飛行中,翼,脚及びだ面を折り畳んだ状態及
び展張した状態のどちらにおいても,接続箱の排水が行われるように,排水孔を設けなければならない。
金属製接続箱は,使用状態でたわみや変形を起こさずに多くの取付品を適切に支持し,またヒンジ止め
又は取外し可能のカバーを正しく支持及び心合わせすることができるような剛性を保持するため,十分な
板厚の金属板で製作しなければならない。
3.18.2
ヒンジ 電気及び電子機器を接続箱カバーに取り付ける場合には,カバーを開閉する際に,ケーブ
ル及び機器に損傷を与えないように,カバーをヒンジ止めしなければならない。
3.18.3
接続箱の識別 接続箱は,配線図との照合を容易にするため,外部に識別を表示しなければならな
い。防湿形の接続箱は,外部に“防湿形”と表示したラベルをはり付けなければならない。
3.18.4
接続箱内の配線 接続箱内の配線は,次の要求事項を満足させるのに都合がよい間隔で,適切に支
持しなければならない。
(a)
配線を簡潔に順序よく配置すること。
(b)
検査及び整備が容易にできること。
(c)
端末に張力の逃げを設けること。
(d)
故障の可能性を最小にすること。
(e)
振動によって配線又は端子が損傷するのを防止すること。
3.19
電線スプライス 部分組立品を組み立てたり,変更を実施したり,修理及び整備を容易にするため
に,絶縁したインライン形電線スプライスを使用してもよい。
3.19.1
永久スプライス 部分組立品を組み立てたり,変更を実施したり,修理を容易にするために,永久
スプライスを使用してもよい。銅導体用のスプライスは,MIL-T-7928 又は MIL-S-81824 の規定に従わな
ければならない。
脚室,翼フラップ近傍,翼折り畳み部その他個別仕様書又は契約書で規定する区域のような,過酷な風
若しくは湿度問題,又はその両方 (SWAMP) がある区域では,耐環境形密封スプライスを使用しなければ
ならない。アルミニウム導体用のスプライスは,MIL-T-7099 及び MS 25439 の規定に従わなければならな
い。
参考 MIL-W-5088 では,海軍機の場合には,MIL-S-81824 による耐環境形スプライスだけを使用し
なければならないことになっている。
24
W 2010-1989
3.19.2
急速離脱式スプライス 工具を使用しないで接続を外すために設計した急速離脱式スプライスは,
使用してはならない。
3.19.3
端末接続離脱式スプライス 2 本以上の電線のインライン結線にスプライスを使用する場合に,離
脱を必要とするときは,MIL-T-81714/11 及び MIL-T-81714/12 による離脱式スプライスを使用しなければ
ならない。
使用しないグロメット穴には,
MS 27488
によるシーリングプラグを取り付けなければならない。
3.19.4
スプライスの制限 スプライスは,次の制限を受ける。
(a)
任意の 2 個のコネクタその他の分離点の間の任意の一つの電線セグメント内には,下記(e)及び(g)
で許される場合を除き,2 個以上のスプライスがあってはならない。
(b)
電線束内のスプライスは,その束が指定空間内にぴったりはまり込んだり,又は整備に悪影響を与
えるような過密状態になることを防止するため,互い違いの配置にして,束の大きさが増加しない
ようにしなければならない。
(c)
わずかの長さの電線を救済するために,スプライスを使用してはならない。
(d)
下記(e)の場合を除き,端末具から 300mm (12in) 以内でスプライスを使用してはならない。
(e)
スプライスは,ポッティングした端末具のピグテール予備リード線に取り付ける場合,又は 1 本の
電線に 2 本以上の電線を接続する場合,又はコンタクト端子の圧着用筒部のサイズに適合するよう
に電線のサイズを調節する場合には,端末具から 300mm (12in) 以内で使用してもよい。
(f)
スプライスを使用するには,これに設計的な管理を行い,図面によって認可しなければならない。
(g)
技術部門が承認した場合には,製作したハーネス又は装備した配線を修理するためにスプライスを
使用してもよい。
参考 MIL-W-5088 では,空軍機の場合には,武器又は起爆部分系統に関連する発射又は制御回路に
は,スプライスを使用してはならないことになっている。
3.19.5
スプライス区域 部分組立品を組み立てるために取り付けるスプライスは,スプライス区域内にな
ければならず,すべての適用図面でそのように指示しなければならない。スプライス区域は,束の中心部
にあるスプライスも含めて,整備及び検査のために容易にスプライスに接近できるように,選定しなけれ
ばならない。
3.20
ターミナルラグ 配線を端子ブロックスタッド又は機器端子スタッドに接続するため,電線ターミ
ナルラグを使用しなければならない。4 個を超えるターミナルラグ又は 3 個を超えるターミナルラグと 1
個のバスとを,任意の 1 個のスタッドに接続してはならない(スタッド 1 個当たりのターミナルラグの総
数には,隣接するスタッドを接続する 1 個の共通バスバーを含む。したがって,1 個のスタッドには,4
個のターミナルラグと 1 個の共通バスバーは許可しない。
)
。スタッドに取り付けるターミナルラグの直径
が異なる場合には,最大径のものを最下部に,最小径のものを最上部に置かなければならない。ターミナ
ルラグは,スタッドの径に適合するスタッド穴径をもつものを選定しなければならない。端子接続部を締
め付けることによって,ターミナルラグ又はスタッドが変形してはならない。締付け用小ねじ又はナット
を取り外すのにターミナルラグを曲げる必要がなく,また,ターミナルラグの動きがその接続を締め付け
る方向であるように,ターミナルラグの向きを選ばなければならない。
3.20.1
銅製ターミナルラグ 無はんだ式圧着形の銅製電線ターミナルラグを使用しなければならない。タ
ーミナルラグは,MIL-T-7928 の規定に適合しなければならない。ターミナルラグの舌部の間には,スペー
サ又は座金を入れてはならない。
25
W 2010-1989
3.20.2
アルミニウム製ターミナルラグ MIL-T-7099(MS 25435,MS 25436,MS 25437 及び MS 25438)
の規定に適合するアルミニウム製ターミナルラグは,アルミニウム電線だけに圧着しなければならない。
アルミニウム製ターミナルラグの舌部又は積み重ねたときのアルミニウム製ターミナルラグの舌部は全数,
端子スタッドに取り付けるとき,2 個の MS 25440 による平座金の間に挟まなければならない。ターミナル
ラグの舌部の間には,スペーサ又は座金を入れてはならない。
3.20.3
クラス 2 のターミナルラグ 受注者が装備する場合には,もしその装備が,ターミナルラグを交換
する際に,装備を直さずに又はターミナルラグを再加工せずにクラス 1 のターミナルラグを適切に使用で
きるようなものであれば,MIL-T-7928 の規定に適合するクラス 2 のターミナルラグを使用してもよい。ク
ラス 2 のターミナルラグは,導体温度が 105℃を超えない限り,絶縁形でなければならない(導体温度が
105
℃を超える場合は,非絶縁形のターミナルラグを使用しなければならない。
)
。部品表には,装備したク
ラス 2 のターミナルラグのサービス交換用として用いるクラス 1 の該当ターミナルラグを記載しなければ
ならない。
3.21
端子盤及び端子接続用モジュール まれにしか取り外す必要がない配線の接続,又は 2 本以上の電
線を一つの共通点に接続するには,端子盤又は端子接続用モジュールを使用しなければならない。
3.21.1
端子盤 端子盤は,MS 27212 の規定に従い,MS 18029 によるカバーを装着しなければならない。
電流計の分流器を端子盤として使用してはならない。
3.21.2
端子接続用モジュール 端子接続用モジュール並びにその取付用トラック及びブラケットは,
MIL-T-81714
の規定に従わなければならない。使用しないグロメット穴には,MS 27488 によるシールプラ
グを装着しなければならない。
参考 MIL-W-5088 では,空軍機に対しては,この箇条の最初の条項は適用しないことになっている。
3.21.3
端子盤の識別 MS 27212 による各端子盤には,配線図と照合するため,個別に品目番号を付与し,
また,各端子盤のスタッドには,1 から始まる連続番号を付与しなければならない。例えば,TB 75-4 は端
子盤 75 の第 4 番スタッドを表すものとする。この識別は,航行体に取り付けた永久的なものとし,配線又
は機器をできるだけ妨害せずに情報を読むことができるような位置になければならない。端子盤を取り外
しても,識別表示が完全に残っていなければならない。MIL-T-81714 による端子接続用モジュール及びト
ラックに対しては,個別に品目番号を付与しなければならない。
3.22
(削除)
3.22.1
(削除)
3.23
ワークマンシップ ワークマンシップは,航空宇宙航行体の電気配線及び機器に対して,安全性,
適正動作及び運用寿命を保証するのに十分な品質の高度な装備手法に従っていなければならない。ワーク
マンシップの詳細は,発注者の検査及び承認の対象としなければならない。
3.23.1
遊離部品 端子を短絡させたり,配線を摩耗させたり,絶縁を破壊させたりして,電気系統に損傷
を与えるおそれがあるような破片,廃品,余分な部品,工具その他不必要な資材を,航行体内に残しては
ならない。
26
W 2010-1989
4.
品質保証条項
4.1
検査の責任 契約書又は注文書で特に指示がない限り,受注者は,この規格で規定するすべての検
査要求事項を実施する責任がある。契約書又は注文書で特に指示がない限り,受注者は,この規格で規定
する検査要求事項を実施するのに適するものであれば,発注者が不承認としない限り,自己の設備を用い
ても,他のどのような設備を利用してもよい。発注者は,供給品及び役務が規定の要求事項に適合してい
ることを保証するのに必要とみなす場合には,仕様書に定めるどのような検査をも実施する権利を留保す
る。
4.2
一般 配線装備に対してこの規格で要求する検査点検及び試験は,これを品質確認検査として分類
する。
4.3
配線実大模型 契約で指定された場合には,受注者は,初回航行体の納入前で,しかも,必要な変
更が実施できる時期内に,配線の実大模型を製作して発注者の検査を受けなければならない。受注者は,
この実大模型で,代表的配線装備,及び離反を必要とする特定の配線方法を実証しなければならない。こ
の実大模型審査は,量産機で実施してもよい。
4.4
1
号機の検査 最初の完成航行体の配線装備は,この規格の要求事項に適合していることを判定する
ため,発注者の監督のもとに,受注者が受注者の工場で検査して,発注者の承認を受けなければならない。
4.5
配線の変更 配線に変更を実施した航行体は,この規格の要求事項に適合していることを判定する
ため,発注者の監督のもとに,受注者が受注者の工場で検査しなければならない。
4.6
個別試験 受注者は,すべての電気及び電子回路の適正な導通並びにすべての電気及び電子機器の
適正な動作を保証するため,各航行体について,機能点検を実施しなければならない。
5.
包装 (適用しない。)
6.
注記
6.1
用途 この規格で規定する配線要求事項は,航空宇宙航行体内の電気及び電子機器を相互接続する
ための配線及び附属器具の選定及び装備に用いるためのものである。ここに規定する要求事項は,新規又
は現用の航行体の開発用,原型用,量産用,再作業用及び改修用の配線に適用するものである。電気及び
電子機器の内部に完全に収容されているすべての配線は,この規格ではなく,適用機器仕様書に従うこと
が望ましい。
6.2
注文データ 附属書 B 又は附属書 C による配線識別記号の方式を指定すること(3.9.1 参照)。契約
書で DOD-STD-862 による配線データを要求するときは,その規格では
附属書 C による非有意的識別記号
を指定する。
参考 MIL-W-5088 では,海軍機に対しては,特に指示がない限り,附属書 B による有意的識別記号
としなければならないことになっている。
6.2.1
契約資料要求事項 (削除)
6.3
用語の意味
6.3.1
航空機 (aircraft) 飛行機,ヘリコプタ又は軽航空機。
6.3.2
電線 (wire) 電気回路で電流を流すように設計された単線,より線又は金糸で構成された単一金
属の導体で,金属の被覆,シース又はシールドをもたないもの。この規格の目的に対しては,
“電線”とい
う場合には“絶縁電線”を指す。
6.3.3
電線セグメント (wire segment) 2 個の端子又は接続部の間の導体。
27
W 2010-1989
6.3.4
ケーブル (cable) 二つ以上の絶縁導体(単線又はより線)を一つの共通被覆内に納めたもの,又
は二つ以上の絶縁導体を共通被覆なしでより合わせるか若しくは一体成形したもの,又は一つの絶縁導体
を金属の被覆シールド若しくは外部導体で覆ったもの。
6.3.5
配線 (wiring) 航行体に装備する電線,ケーブル,グループ,ハーネス及び束,並びにこれらの
端末,関連部品及び支持具。
また,動詞(配線する)として用いたときは,航行体においてこれらの品目を工作又は装備する行為を
いう。
6.3.6
配線器具 (wiring device) 端子,コネクタ,接続箱,電線管,クランプ,絶縁物,支持具のよう
な,配線を装備するのに使用する附属部品及び材料。
6.3.7
可燃性 (flammable) 高温の油又は揮発性可燃液体から発散する蒸気,及び燃焼性固体の微粒子
にみられるように,火花又は開放炎が十分に近くを通過したとき勢いよく燃え上がる能力をもっているこ
と。
6.3.8
摩擦 (chafing) 配線系統構成部品間,又は配線系統構成部品と構造部材若しくは機器との間の繰
返し相対運動で,有害な摩耗の原因となるような摩擦作用を生じさせるもの。
6.3.9
グループ (group) 機器の一品目又は機器全体へ,一緒にまとまって配線経路をとる多数の電線
又はケーブル。
6.3.10
ハーネス (harness) 一つのユニットとして取付け又は取外しできるように構成した電線又はケ
ーブルの組立品。
6.3.10.1
高密度ハーネス (high density harness) 質量及び占有空間を節減するように設計され,機械的
保護のためには外部カバーを必要とするようなハーネス。
6.3.11
束 (bundle) 一緒の配線経路をとる多数の電線又はケーブル,グループ及びハーネス。
6.3.12
スポットタイ (spot tie) 一つの束の中の多数の電線,ケーブル,グループ又はハーネスを分離す
るため使用するひも(紐)で,二次的支持用ひも(紐)以外のもの。
6.3.13
一次支持 (primary support) 配線の重量を支え,それを意図した位置に固定するために設けた配
線用支持。
6.3.14
過酷な風及び湿度問題区域 [severe wind and moisture problem (SWAMP) area] 脚室,翼折り畳
み部及び翼フラップ近傍のような区域,並びに広範囲な気象状態に直接さらされる区域は,航空宇宙航行
体での SWAMP 区域とみなす。
6.4
電気機器及び量子機器の装備 電気機器及び電子機器の装備は,それぞれ MIL-E-7080 (JIS W 2011)
及び MIL-I-8700 (JIS W 7202) に規定される。
6.5
技術マニュアル MIL-HDBK-216 には,無線周波ケーブルの工作及び装備に関する手引が記載され
ている。
参考 MIL-W-5088 では,技術マニュアル NAVAIR 01-1 A-505,空軍 T. O. 1-1 A-14 及び陸軍 TM
55-1500-323-24
“航空機電気及び電子配線の装備方法”に,航空機の配線装備方法に関する有用
な情報及び手引が記載されているとなっている。
28
W 2010-1989
6.6
コロナ防止に関する情報 シールドされていない電線被覆の外側とその電線が上を通っている接地
構造部材との間,又は絶縁体と編組シールドとの間のイオン化(コロナともいう。
)又は部分放電を防止す
るため,電線被覆は,動作条件に応じて適切な“等価絶縁体厚さ”をもっていることが望ましい。
“電線被
覆”とは,押出し又はテープ巻きした絶縁体及び絶縁ジャケットの任意の組合せを意味する。被覆の化学
的及び機械的品質低下を生じさせるイオン化は,無線周波の干渉源となり,また,隣接金属構成部品を腐
食させる可能性がある副産物を生成する。
240V (rms)
以下の交流動作電圧の場合には,任意の厚さのきずがない絶縁体が,どのような圧力又は温
度においてもこの電圧を支持するのに適する。この場合の厚さは,機械的要求事項によって決定される。
これより高い交流電圧の場合には,
“等価絶縁体厚さ”は,
付図 1 で求めることができる。電線が遭遇する
周囲大気の最小圧力及び最高温度の同時組合せに対する該当曲線を選択して,動作電圧(実効値)に対応
する“等価絶縁体厚さ”を読み取る。航空機及び宇宙用の場合には,与圧のための部分密閉又は完全密閉,
及び局部加熱によって,機器内の周囲圧力及び温度は,機体外と同じ高度における圧力及び温度とは対応
しないことがある。等価絶縁体厚さの決定には,機器の動作圧力及び動作温度を用いることが望ましい。
“等価絶縁体厚さ”は,電線被覆に関係するもので,
付図 2 に示す。ここで,t
1
,t
2
などは各被覆の厚さ
で,k
1
,k
2
などはこれらの電線被覆のそれぞれの比誘電率である。求めた数値は,少なくとも数 kHz まで
は電源周波数に無関係である。
付図 1 及び付図 2 の数値は,初動電圧(コロナ開始電圧)に基づくもので
ある。多くの実例によれば,イオン化がいったん始まった後は,加える電圧がコロナ消滅電圧(20%程度
低い電圧)に低下するまで消滅しないものである。したがって,イオン化が過渡電圧で開始し,動作電圧
になってからも消滅しないということがないように安全係数をとることが望ましい。
直流の場合には,ケーブルは通常の実用範囲の電線被覆厚さとは関係なく,最高 340V まではイオン化
を生じることなしに使用することができる。ある条件(特に高周囲温度又は高高度)のもとでは,ある種
の電線は,定格電圧においてコロナを発生することがある。
6.7
電線定格電流 3.8.8.1.1 の電線定格電流は,付図 3∼5 の曲線に基づくものである。次の例題は,付
表 1 に示す条件(周囲温度 70℃,ハーネスの電線本数 33)以外の使用条件に対して,これらの曲線を使用
する手順を示す。
(1)
サイズ 20,温度定格 200℃の電線 10 本とサイズ 22,温度定格 200℃の電線 25 本とで構成されるハー
ネス(露出又は編組)を仮定する。このハーネスを周囲温度 60℃の区域に装備することとし,航行体
は高度 18 000m (60 000ft) の運用能力をもっているものとする。回路計算によれば,この電線束内の
電線のうち電流を流すのは 35 本中の 7 本(
35
7
すなわち 20%)であることが示されている。
(a)
まず,
付図 3(自由大気中の単一電線)の曲線を参照し,自由大気定格を決定するために,電線の
Δ
T
を求める。電線は 60℃の周囲温度中にあって,電線の定格温度が 200℃であるから,
Δ
T
=200−
60
=140℃である。
付図 3 の
Δ
T
=140℃の線をたどって,サイズ 20 の自由大気定格 21.5A,サイズ
22
の自由大気定格 16.2A を得る。
(b)
次に,
付図 4(電線束定格低減曲線)を参照し,回路計算でハーネス内の電線の 20%以下が電流を
流すものと出ているから,20%曲線を選択する。問題の電線束は 35 本の電線で構成されているから,
横軸上に 35 をとって,20%曲線から縦軸上に低減係数 0.52 を得る。
(c)
サイズ 22 の電線の自由大気定格 16.2A を低減係数 0.52 で低減させて,ハーネス定格 8.4A を得る。
また,サイズ 20 の電線の自由大気定格 21.5A を 0.52 で低減させて,ハーネス定格 11.2A を得る。
(d)
付図 5(高度定格低減曲線)を参照し,航行体の運用高度が 18 000m (60 000ft) であるから,これを
横軸上にとって縦軸上の値を読み取れば,電線は低減係数 0.79 で低減させなければならないことが
29
W 2010-1989
分かる。
(e)
サイズ 22 のハーネス定格 8.4A を低減係数 0.79 で低減させて,6.6A を得る。
また,サイズ 20 のハーネス定格 11.2A を低減係数 0.79 で低減させて,8.8A を得る。
(f)
全ハーネス電流容量を求めるため,サイズ 22 の全電線本数を低減させた電流容量に乗じ (25×6.6
=165A),それにサイズ 20 の全電線本数を低減させた電流容量に乗じたもの (10×8.8=88A) を加
算し,その合計に 20%のハーネス容量係数を乗じて,全ハーネス電流容量は,
(165
+88)×0.2=50.6A
となる。
(g)
以上で,全ハーネス電流容量は 50.6A 以下であることが望ましく,サイズ 22 のどの電線にも 6.6A
を超える電流を流すことは望ましくないこと,及びサイズ 20 のどの電線にも 8.8A を超える電流を
流すことは望ましくないことが決定された。
(2)
サイズ 12,定格温度 200℃の電線 12 本で構成されるハーネス(露出又は編組)を仮定する。ハーネス
は,海面上で周囲温度 25℃,高度 6 000m (20 000ft) で周囲温度 60℃のもとで使用する。
また,12 本の電線は,すべてその最大電流容量で使用する。
(a)
まず,
付図 3(自由大気中の単一電線)を参照し,自由大気定格を決定するために,電線の
Δ
T
を求
める。周囲温度が 25℃及び 60℃で,電線の定格温度が 200℃であるから,
Δ
T
は 200−25=175℃及
び 200−60=140℃である。
付図 3 で
Δ
T
=175℃及び 140℃の線をたどって,サイズ 12 の自由大気定
格はそれぞれ 68A 及び 61A を得る。
(b)
次に,
付図 4(電線束定格低減曲線)を参照し,12 本のすべての電線が定格負荷電流を流すと分か
っているから,100%曲線を選択する。電線束の電線本線が 12 であるから,横軸上に 12 をとって,
100%
曲線から縦軸上に低減係数 0.43 を得る。
(c)
サイズ 12 の自由大気定格 68A 及び 61A を低減係数 0.43 で低減させて,それぞれ 29.2A 及び 26.2A
を得る。
(d)
付図 5(高度定格低減曲線)を参照し,負荷電流を流すときの高度条件である 0m 及び 6 000m (20
000ft)
を横軸上にとって,縦軸上の値を読み取る。電線は,それぞれ低減係数 1.0 及び 0.91 で低減
させなければならない。
(e)
サイズ 12 の電線束定格 29.2A(海面上)及び 26.2A [6 000m (20 000ft)] をそれぞれ低減係数 1.0 及び
0.91
で低減させて,29.2A 及び 23.8A を得る。
(f)
海面上,
周囲温度 25℃における全電線束電流容量は 29.2×12=350.4A,
また,
高度 6 000m (20 000ft),
周囲温度 60℃における全電線束電流容量は 23.8×12=285.6A となる。
また,サイズ 12 の各電線には,海面上周囲温度 25℃においては 29.2A,6 000m (20 000ft),周囲
温度 60℃においては 23.8A を流すことができる。
6.8
(削除)
6.9
配線図 配線図が契約で要求される場合には,DOD-STD-100,ANSI Y 14.15,ANSI Y 32.16 及び ANSI
Y 32.2 (JIS C 0301)
に従って作成しなければならない。
6.9.1
接続図 電気配線の接続図(機能的)は,各回路を示さなければならず,2 枚以上になってもよい。
これらの回路は,直線(基本的)形式で表現しても差し支えない。ある一つの機器又は系統の各電子配線
図は,可能ならば,1 枚で示さなければならない。
参考 MIL-W-5088 では,この箇条は,空軍機以外の要求事項になっている。
30
W 2010-1989
6.9.2
全体配線図 全体配線図及び電線データ表は,MIL-M-81260 及び DOD-STD-100 に従わなければ
ならない。交流電源,直流電源,外部照明及びエンジン制御のような各系統は,可能ならば,不当に混雑
することなしに 1 枚で示さなければならない。
参考 MIL-W-5088 では,この箇条は,空軍機以外の要求事項になっている。
6.9.2.1
端子盤及びスタッド記号 相互接続全体配線図において,各端子盤のスタッド記号は,端子盤及
びスタッドに関して,3.21.3 で設定した記号と正確に対応するように識別しなければならない。配線図に
は,端子盤の位置に関する情報も含め,各端子盤及びこれに接続される電線が完全に示されていなければ
ならない。端子盤は,ANSI Y 32.16 の要求事項に従って識別しなければならない。
参考 MIL-W-5088 では,この箇条は,空軍機以外の要求事項になっている。
付表 1 電線の定格電流(
3
)
(3.8.8.1,3.8.8.1.1 及び 3.8.8.1.2 参照)
束,グループ又はハーネス内の電線の連続電流(
2
) A
導体材料
電線のサイズ
電線の定格温度
105
℃ 150℃ 200℃
22 3 5 6
20 4 7 9
18 6 9
12
16 7
11
14
14 10 14 18
12 13 19 25
10 17 26 32
8 27 39 48
6 34 53 67
4 46 72 93
2 65 99
124
1 76
114
145
1/0 88 133 168
2/0 101 154 196
3/0 118 181 232
銅又は銅合金
4/0 141 215 274
8 17
6 23
4 30
2 43
1 50
1/0
57
2/0
68
3/0
76
アルミニウム(
1
)
4/0
86
注(
1
)
これらの電線を使用する場合は,発注者の承認が必要である。
(
2
)
ここに示す定格は,運用高度 18 000m (60 000ft),周囲温度 70℃のもとで,電線本数 33
以上のハーネスをハーネス電流容量の 20%以下で使用する場合のものである。
(
3
)
電線端末器具の定格電流は,この表では規定されない(3.8.8.1.2 参照)
。
備考 ここに示す定格は,サイズ 4/0∼22 については銅導体及び銅合金導体に対するものであ
る。
31
W 2010-1989
付表 2 より線内にきずがあるか又は破断した素線の許容本数
(3.17.2 参照)
導体材料
導体当たりの素線数 きずがあるか又は破断した素線の総許容本数
19
きずがあるもの 2,破断したもの 0
37
きずがあるもの 4,破断したもの 0
銅又は銅合金
37
を超えるもの
きずがあるか破断したもの 6
アルミニウム
すべて
きずがあるか破断したもの 0
付図 1 電線被覆の等価絶縁体厚さとコロナ開始電圧と高度及び温度との関係
(6.6 参照)
32
W 2010-1989
付図 2 電線被覆の等価絶縁体厚さ
(6.6 参照)
+
+
+
=
3
3
2
2
1
1
k
t
k
t
k
t
t
……
ここに,
t
:
等価絶縁体厚さ mm (mil)
t
1
,t
2
,t
3
,……:
各絶縁体の厚さ mm (mil)
k
1
,k
2
,k
3
,……:
各絶縁体の比誘電率
付図 3 自由大気中の単一電線
(3.8.8.1,3.8.8.1.1 及び 6.7 参照)
注(
1
)
この電線サイズの使用には,発注者の承認が必要である。
(
2
)
単一電線としては使用しない。
33
W 2010-1989
付図 4 電線束定格低減曲線
(3.8.8.1,3.8.8.1.1 及び 6.7 参照)
付図 5 高度定格低減曲線
(3.8.8.1,3.8.8.1.1 及び 6.7 参照)
34
W 2010-1989
附属書 A
(3.8,3.8.4 及び 3.8.8.2 参照)
10.
適用範囲 この附属書は航空宇宙航行体内の機器の相互接続に使用する電線及びケーブルの選定につ
いて規定する。
20.
関連規格
20.1
仕様書
Military Specification
MIL-C-17
Cables, Radio Frequency, Flexible and Semi-Rigid, General Specification for
MIL-C-7078
Cable, Electric, Aerospace Vehicle, General Specification for
MIL-W-22759
Wire, Electric, Fluoropolymer-Insulated, Copper or Copper Alloy
MIL-W-25038
Wire, Electrical, High Temperature and Fire Resistant, General Specification for
MIL-C-27500
Cable, Electrical, Shielded and Unshielded, Aerospace
MIL-W-81044
Wire, Electric Crosslinked Polyalkene, Crosslinked Alkane-imide Polymer or
Polyarlene Insulated, Copper or Copper Alloy
MIL-W-81381
Wire Electric, Polyimide-Insulated, Copper or Copper Alloy
MIL-T-81490
Transmission Lines, Transverse Electromagnetic Mode
MIL-C-85485
Cable, Electric, Filter Line, Radio Frequency Absorptive
30.
要求事項
30.1
電線及びケーブルの選定 発注者が特に承認しない限り,航空宇宙航行体内の電気及び電子機器の
相互接続に対しては,この
附属書の付表 A-1,付表 A-2,30.1.3,30.1.4 又は 30.1.5 に記載する仕様書の一
つに適合する電線及びケーブルだけを使用しなければならない。これらの電線及びケーブルの選定及び使
用に際しては,この規格の 3 章の制限及び他の選定基準に従わなければならない。受注者は,使用する電
線及びケーブルを選定する前に,この規格のすべての要求事項を熟知していなければならない。
30.1.1
ハーネス配線 ハーネス配線用の電線は,付表 A-1 の中から選定しなければならない。
30.1.2
高密度ハーネス配線 高密度ハーネス配線用の電線は,付表 A-1 又は付表 A-2 の中から選定しな
ければならない。
30.1.3
ケーブル ケーブルは,MIL-C-7078 又は MIL-C-27500 の規定に従い,更に付表 A-1 と付表 A-2
による基本電線を使用している構成だけを使用しなければならないという要求事項にも従わなければなら
ない。
30.1.4
同軸ケーブル 同軸ケーブルは,MIL-C-17 の規定に従わなければならない。
30.1.4.1 TEM
モード伝送線 TEM モード伝送線は,MIL-T-81490 の規定に従わなければならない。
30.1.5
フィルタ線路ケーブル 無線周波吸収フィルタ線路ケーブルは,MIL-C-85485 の規定に従わなけ
ればならない。
35
W 2010-1989
40.
注記
40.1
用途 この附属書の目的は,航空宇宙航行体の配線に使用する電線及びケーブルの選定に際して用
いるべき承認された仕様書の実用一覧表を受注者に提示することである。
付表 A-1 露出配線用
仕様書
定格電圧
(最大)
V
定格電線温度
℃
備考
MIL-W-22759/1
600 200
銅
MIL-W-22759/2
600 260
銅
MIL-W-22759/3
600 260
銅
MIL-W-22759/4
600 200
銅
MIL-W-22759/5
600 200
銅
MIL-W-22759/6
600 260
銅
MIL-W-22759/7
600 200
銅
MIL-W-22759/8
600 260
銅
MIL-W-22759/9
1
000
200
銅
MIL-W-22759/10
1
000
260
銅
MIL-W-22759/13
600 135
銅
MIL-W-22759/16
600 150
銅
MIL-W-22759/17
600 150
高力銅合金
MIL-W-22759/20
1
000
200
高力銅合金
MIL-W-22759/21
1
000
260
高力銅合金
MIL-W-22759/34
600 150
銅
MIL-W-22759/35
600 200
高力銅合金
MIL-W-22759/41
600 200
銅
MIL-W-22759/42
600 200
高力銅合金
MIL-W-22759/43
600 200
銅
MIL-W-25038/1(
1
)
600 260
銅(ニッケル被覆)
MIL-W-25038/2(
2
)
600 260
銅
MIL-W-81044/6
600 150
銅
MIL-W-81044/7
600 150
高力銅合金
MIL-W-81044/9
600 150
銅
MIL-W-81044/10
600 150
高力銅合金
MIL-W-81381/11(
3
)
600 200
銅
MIL-W-81381/12(
3
)
600 200
銅
MIL-W-81381/13(
3
)
600 200
高力銅合金
MIL-W-81381/14(
3
)
600 200
高力銅合金
MIL-W-81381/22(
3
)
600 150
銅
注(
1
)
火災時に,限定された時間,電気的完全性の維持が要求される回路に
使用するためのもの。
(
2
)
保護配線用に使用できる。
(
3
)
下記の
参考参照
参考 MIL-W-5088 K,Interim Amendmem 1 では,海軍機に対しては
MIL-W-81381/11
∼14,22 は指定されていない。
36
W 2010-1989
付表 A-2 保護配線用
仕様書
定格電圧
(最大)
V
定格電線温度
℃
備考
MIL-W-22759/11
600 200
銅
MIL-W-22759/12
600 260
銅'
MIL-W-22759/14
600 135
銅
MIL-W-22759/15
600 135
高力銅合金
MIL-W-22759/18
600 150
銅
MIL-W-22759/19
600 150
高力銅合金
MIL-W-22759/22
600 200
高力銅合金
MIL-W-22759/23
600 260
高力銅合金
MIL-W-22759/32
600 150
銅
MIL-W-22759/33
600 150
高力銅合金
MIL-W-81044/12
600 150
銅
MIL-W-81044/13
600 150
高力銅合金
MIL-W-81381/7(
1
)
600 200
銅
MIL-W-81381/8(
1
)
600 200
銅
MIL-W-81381/9(
1
)
600 200
高力銅合金
MIL-W-81381/10(
1
)
600 200
高力銅合金
MIL-W-81381/17(
1
)
600 200
銅
MIL-W-81381/18(
1
)
600 200
銅
MIL-W-81381/19(
1
)
600 200
高力銅合金
MIL-W-81381/20(
1
)
600 200
高力銅合金
MIL-W-81381/21(
1
)
600 150
銅
注(
1
)
下記の
参考参照
参考 MIL-W-5088 K,Interim Amendment 1 では,海軍機に対して
は MIL-W-81381/7
∼10,17∼21 は指定されていない。
37
W 2010-1989
附属書 B
有意的電線識別法
(3.9.1 参照)
10.
適用範囲 この附属書は,配線識別記号の方式が 3.9.1 及び 6.2 に従って“有意的”と指定された場合
に,
この規格の適用範囲内の各個別電線及びハーネスに対する識別記号を付与する手順について規定する。
この電線識別法は,回路の機能を示すという点で“有意的”なものである。この識別法は,配線データに
用いるためと,装備した配線の物理的識別のためのものでなければならない。
20.
関連規格
20.1
規格
Military Standard
MIL-STD-196
Joint Electronics Type Designation System
30.
要求事項
30.1
識別指定の責任 受注者(装備者)は,付表 B-1 で記号 R,S,T 及び Y として記載するものを除く
回路機能に対して,識別記号を付与しなければならない。機器の受注者は,R,S,T 及び Y の区分に入る
機器に対しては,機器仕様書に従って識別記号を付与しなければならない。
30.2
配線識別記号 配線識別記号は,付図 B-1 又は付図 B-2 のどちらか該当する方に示す様式及び以下
に述べる規定に従わなければならない。
30.3
ユニット番号 同一航行体内に同じ機器が 2 個以上装備される場合に,それらの機器が同じ基本識
別番号をもっていることを希望するときは,電線を区別するために 1,2,3,4,……などのユニット番号
を前に付けてもよい。互換性要求事項の実現を容易にするため,左右の主翼,ナセル及び主要互換性構造
組立品内に配置する同一の配線には,同一の識別記号を付与してもよく,ユニット番号を付ける必要はな
い。
30.4
回路機能別記号 回路機能別記号は,付表 B-1 に規定する回路機能を識別するために用いるもので
ある。1 本の電線が二つ以上の回路機能に用いられる場合には,機能的に優位な方の回路の回路機能別記
号を適用しなければならない。機能の優位度に疑義があるときは,最小の電線番号をもった電線の回路機
能別記号を用いなければならない。
30.5
電線番号 電線番号は,回路内の電線を区別するために用いるもので,1 けた以上の数字で構成する。
共通の端子又は接続点をもたない電線に対しては,異なる番号を用いなければならない。
30.5.1
共通の端子接続又は接続点をもった同じ回路機能の電線は,電線番号は同じとするが,異なるセグ
メント記号を与えなければならない。
30.5.2 2
000
∼4 999 の電線番号は,サービス改修によって装備される電線を識別するのに発注者が使用す
るため,保留しておかなければならない。
30.5.3
電線番号は,各電線に対し,最小番号から始めて,できる限り連続番号で付与しなければならない。
38
W 2010-1989
30.6
電線セグメント記号 電線セグメントとは,二つの端子又は接続点の間の導体をいう。電線セグメ
ント記号は,ある特定の回路内の導体セグメントを区別するために用いるものである。幾つかの電線セグ
メントが一つの端子又は接続点を共有している場合には,それぞれのセグメントに異なるセグメント記号
を用いなければならない。
電線セグメント記号は,アルファベット順の文字で付与するものとし,記号 A は,各回路のセグメント
のうち,電源から出発して最初のものを識別するのに用いることが望ましい。もし回路にただ一つの電線
セグメントしかない場合には,その電線セグメントには A と表示しなければならない。文字 I 及び O は,
電線セグメント記号として使用してはならない。24 個を超えるセグメント記号が必要な場合には,AA,
AB
,AC,……などの 2 文字の記号を用いなければならない。
永久スプライス接続した 2 本の電線は,そのスプライスが改修又は修理のために用いられたものである
ならば,別々のセグメント記号を付与する必要はない。
30.7
電線サイズ番号 電線サイズ番号は,電線又はケーブルのサイズを識別するために用いるものであ
る。同軸ケーブル及び熱電対電線に対しては,電線サイズ番号を表示してはならない。熱電対電線に対し
ては,電線サイズ番号の代わりにダッシュ (−) を用いなければならない。
30.8
接地,相又は熱電対の記号
30.8.1
発注者が特に指定しない限り,回路を接地回路網に最終接続させる配線を識別するため,電線識別
記号の接尾字として接地ケーブル記号 N を用いなければならない。このような配線は,どのような回路の
機能不良をも起こさずに航空機電気系統の接地回路網に接続される能力をもっていなければならない。機
器間接続用の接地リード線を備えているが,実際にはただ一つのセグメントだけが構造部材に接地される
重要で高感度の電子系統の場合には,構造部材に実際に接地するセグメントだけを接尾字 N で識別しなけ
ればならない。
30.8.2
交流系統の 3 相電力分配用配線の電線の相を識別するため,電線識別記号の接尾字として相記号
A, B
又は C を用いなければならない。相順は A-B-C とし,記号 A,B 及び C は,それぞれ T
1
,T
2
,及び
T
3
,に対応する相順を示していなければならない。接地した三角結線(△結線)の場合には,T
2
が接地相
に対応するものとみなさなければならない(交流電力配線に適用した電線識別番号の例を
付図 B-3 に示
す。
)
。
30.8.3
単相系統の接地しない電線を識別するため,電線識別記号の接尾字として相記号 V を用いなけれ
ばならない。
30.8.4
熱電対電線に対しては,次の接尾字のうちの該当するものを用いなければならない。記入スペース
の都合によっては,次に示す 2 文字の接尾字を用いてもよい。
クロメル CHROM CR
アルメル ALML
AL
鉄 IRON
FE
コンスタンタン CONST
CN
銅 COP
CU
30.9
アルミニウム電線 アルミニウム電線に対しては,電線識別記号の接尾字として ALUMINUM 又は
ALUM
を追加しなければならない。
30.10
予備コンタクト コネクタの予備コンタクトに取り付ける電線は,そのコンタクト指定記号を用い
て識別しなければならない。
39
W 2010-1989
30.11
ハーネス 各ハーネスは,文字 W と個別の接尾番号とを用いて識別しなければならない。例えば,
W-1
,W-2,W-3,W-4 など。
30.12
型式指定機器の記号 MIL-STD-196 に従って型式呼称が与えられる機器に対しては,電線識別記号
は,型式呼称(AN 型式名)のうち斜線 (/) に続く部分(ただし,ハイフン及び接尾文字を除く。
)を利用
して作り上げなければならない。各機器に対する電線番号の部分は,1 から始まってすべての電線を識別
するのに必要なだけの連続数字としなければならない。例えば,型式 AN/APS-45 の機器の電線は APS 45-1
A 20
∼APS 45-975 C 22,
AN/ARC-52 A
の電線は ARC 52-1 A 22∼ARC 52-999 C 22 及び MX 94 の電線は MX
94-1 A 20
∼MX 94-62 D 20 と識別されることになる。
付表 B-1 回路機能別記号
(
附属書 B の 30.1,30.4 参照)
回路機能別記号
回路
例
A
武装
搭載品管理システム
飛しょう体又はロケット
砲
化学薬
B
写真
カメラ
カメラ用扉
カメラの加熱
C
操縦だ面
自動操縦装置
操縦装置
翼後退
トリム操作
エアブレーキ
油圧系統
D
計器(飛行計器又はエンジン
計器以外)
位置指示器
圧力計
温度計
時計
E
エンジン計器
温度計
圧力計
油量計
流量計
回転計
出力指示計
ノズル指示計
F
飛行計器
ジャイロ計器
姿勢指示計
コンパス
ヘッドアップディスプレイ
高度計
G
降着装置
主翼折り畳み
脚上げ及び脚下げ
ブレーキ
ロック機構
操向
アンチキッド
アレスタフック
はん用油圧装置
40
W 2010-1989
回路機能別記号
回路
例
H
加熱
換気及び除氷
加熱
除氷
機室空気調和
調理室
機器室冷却
I
数字の 1 との混同を避けるため,回路又はケーブルの識別
に文字 “I” を用いてはならない。
J
点火
エンジン点火
離陸補助ジェット
K
エンジン制御
通気及びフラップ
プロペラ制御
気化器
過給
出力制御
ノズル制御
スラストリバーサ
エンジン始動
L
灯火(照明)
内部灯火
外部灯火
M
雑(電気)
風防ワイパ及びスプレー
扉
ホイスト及びウインチ
位置調整(座席及びペダル)
補助動力装置
非常動力装置
たばこ用ライタ
N
(指定されていない)
O
数字の 0 との混同を避けるため,回路又はケーブルの識別
に文字 “O” を用いてはならない。
P
直流電源
発電
配電
蓄電池
整流器
外部電源
Q
燃料及び滑油
バルブ
ポンプ
給油又は排油
移送
ダンプ
R
無線(航法及び通信)
計器着陸
ホーミング
連絡
マーカビーコン
VHF
無線機
UHF
無線機
HF
無線機
機内通話
方向探知
41
W 2010-1989
回路機能別記号
回路
例
S
レーダ(パルス技術)
電波高度計
要撃
火砲照準
マッピング
航法
爆弾照準
捜索
識別 (IFF)
地形追随
T
特殊電子
電子妨害装置
慣性航法
テレビジョン
逆探装置
偵察
計算機
武器照準
チャフ散布
赤外線装置
U
雑(電子)
“R”
,“S” 又は “T” の識別記
号が適用できない電子配線
には,回路機能別記号 “U”
を与えなければならない。例
として,電子機器及び電子系
統への共通リード線,二つ以
上の機器に共通のアンテナ
又は電源回路のような相互
接続配線がある。
V
交流系統用の直流電源ケーブル及び直流制御ケーブルは
どちらも,回路機能別記号 “V” で識別しなければならな
い。
W
警報及び非常装置(他の回路
機能別記号のところに記載
したものを除く。
)
脱出警報装置
酸素指示計
乗客指示器
中央又は主警報装置
X
交流電源
発電
配電
外部電源
Y
武装関係特殊機器(回路機能
別記号 “A” のところに記載
したものを除く。
)
Z
実験回路
飛行試験用及び実験研究用配線を装備する場合には,文字
“Z”
の後に該当する回路機能別記号を用いなければなら
ない。このような回路のどれかが採用され,標準装備の一
部となった場合には,文字 “Z” を取り除かなければなら
ない。
42
W 2010-1989
付図 B-1 電線識別記号の例
(3.9.3.1 及び 30.2 参照)
付図 B-2 電線識別記号の例
(3.9.3.1 及び 30.2 参照)
43
W 2010-1989
付図 B-3 交流電力配線に適用した電線識別記号の例
(30.8.2 参照)
(a)
単相系統
(b)
三相 Y 結線系統
(c)
三相三角結線(△結線)系統
コネクタのピンの所での相回転が C-B-A となっているインバータに対しては,対応する端子記号は
T1-T2-T3
とし,電線識別相記号は上図(c)のとおりとすることが望ましい。
44
W 2010-1989
附属書 C
非有意的電線識別法
(3.9.1 参照)
10.
適用範囲 この附属書は,配線識別記号の方式が 3.9.1 及び 6.2 に従って“非有意的”と指定された場
合に,この規格の適用範囲内の各電線,ケーブル及びハーネスに対する個別の識別記号を指示する手順に
ついて規定する。この電線識別法は,回路の機能を示さないという点で“非有意的”なものである。この
識別法は,配線データに用いるためと装備した配線の物理的識別のためのものでなければならない。
20.
関連規格 なし。
30.
要求事項
30.1
ハーネスの識別 各ハーネスは,種別記号 W の後に 4 けた以下の個別の電線ハーネス識別番号を付
けて識別しなければならない。
30.2
電線の識別 各電線は,その航空宇宙航行体内の他のすべての電線と区別するため,独特のアルフ
ァベット数字式識別(電線番号)を付与しなければならない。各電線番号は,電線ハーネス識別,電線識
別番号,電線サイズ番号,並びに該当する場合には電線の色,熱電対電線及びシールドを表す特別記号を
含んでいなければならない。
例: W
192
− 06 − 22 XX
(a) (b)
(f) (c) (f) (d) (e)
この電線番号は W 192-06-22 XX と読む。
(a)
電線ハーネスの種別記号
(b)
電線ハーネス識別番号(最大 4 けた。30.1 参照)
(c)
電線識別番号(最大 4 けた。30.2.1 参照)
(d)
電線サイズ番号(30.2.2 参照)
(e)
特別記号(30.2.3 参照)
(f)
分離用ハイフン
30.2.1
電線識別番号 電線識別番号は,ある与えられたハーネス内で各電線を他のすべての電線から区別
するものでなければならない。電線識別番号がハーネスからハーネスへ連続していることは,スプライス
接続された電線に対しては要求事項である。それ以外のすべての電線に対しては,電線識別番号がハーネ
スからハーネスへ連続していることは要求事項ではないが,しかし,設計目標として考慮することが望ま
しい。電線識別番号は,4 けたを超えてはならない。
30.2.1.1 900
∼999 及び 9 000∼9 999 の電線識別番号は,サービス改修によって装備する電線を識別するの
に発注者が使用するため,保留しておかなければならない。
30.2.2
電線サイズ番号 電線サイズ番号は,電線のサイズを識別するものである。同軸ケーブル及び熱電
対電線に対しては,電線識別記号から電線サイズ番号を省いてもよい。
30.2.3
特別記号
45
W 2010-1989
30.2.3.1
熱電対電線 熱電対電線に対しては,次の記号のうちの該当するものを用いなければならない。
クロメル CR
アルメル AL
鉄 FE
コンスタンタン CN
銅 CU
例: W 192-645-CR
30.2.3.2
カラーコード付きのケーブル 単独のしま状若しくは帯状又は全体着色のカラーコードを施し
た 2 本以上の電線で構成したジャケット付き,シールド付き及び(又は)より合せ導体のケーブルは,同
じ電線識別番号を付与しなければならない。この場合,電線サイズ番号の後に下記に示す 2 文字の記号を
付けて,各導体の色を識別しなければならない。
色
記号
色
記号
黒 BK
青 BL
褐 色 BR
紫 VT
赤 RD
灰 GY
だいだい
OR
白 WH
黄 YE
桃 色 PK
緑 GN
カラーコード付きの 3 心シールドケーブルに対する例として,30.2.3.3 参照。
30.2.3.3
シールド 30.2.3.2 に従って共通の電線識別番号を付与したシールドケーブルには,導体と同じ
番号を付与しなければならない。完成ハーネス又は 30.2.1 に従って異なる電線識別番号を付与した電線グ
ループにかぶせたシールドには,別の電線識別番号を付与しなければならない。この場合,電線識別番号
の後に接尾記号 SH を付けなければならない。
(a) 30.2.1
に従って別々の識別を与えた電線にかぶせたシールドの例
W 192-019-22
W 192-020-22
W 192-600-SH
(b)
単心シールド線の例
W 201-019-22
W 201-019-SH
(c)
カラーコード付きの 3 心シールド線の例
W 201-362-22 RD
W 201-362-22 BL
W 201-362-22 YE
W 201-362-SH
30.2.3.4
アルミニウム電線 アルミニウム電線に対しては,電線識別記号の接尾字として“ALUM”(も
し記号全体のけた数が 15 を超えるときは“AM”とすること。
)を追加しなければならない。
46
W 2010-1989
航空規格原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
竹 中 規 雄
日本大学理工学部
播 磨 克 彦
富士重工業株式会社航空機工場 YXX 準備室
今 野 秀 洋
通商産業省機械情報産業局
飛 田 勉
工業技術院標準部
北 田 彰 良
運輸省航空局技術部
北 村 孝
海上保安庁装備技術部
石 川 安 男
防衛庁装備局
山 根 晧三郎
科学技術庁航空宇宙技術研究所
横 田 友 宏
日本定期航空操縦士会
久木田 実 守
社団法人日本航空技術協会技術部
白 浜 洋 海
日本航空株式会社技術研究所基礎技術部
福 西 嘉 夫
全日本空輸株式会社整備本部技術部
山 内 清
東亜国内航空株式会社整備本部技術部
藤 嶋 敏 夫
航空規格調査会
前 田 辰 三
三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所航空機技術部構造設
計課
足 立 三 郎
川崎重工業株式会社航空機事業本部航空機技術本部
池 山 和 生
石川島播磨重工業株式会社航空宇宙事業本部技術開発事業部
基本設計部基本設計グループ
植 田 隆 之
住友精密工業株式会社航機技術部
内 藤 誠
三菱電機株式会社鎌倉製作所管制システム部
(主査)
神 子 富 雄
株式会社東芝小向工場宇宙・航空機器第三部
立 石 弘
株式会社島津製作所航空機器事業部第 1 工場
幸 田 慶 治
横浜ゴム株式会社航空部品事業部第二技術部
(事務局)
冨 田 泉
社団法人日本航空宇宙工業会
平 島 猷 三
社団法人日本航空宇宙工業会