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W 0620-1987

(1) 

目次

ページ

1.

  適用範囲

1

1.1

  目的

1

1.2

  適用

1

1.2.1

  飛行機の種類

1

1.2.2

  プログラムの種類

1

1.2.3

  構造の種類

1

1.3

  修正

1

2.

  関連規格

1

2.1

  (この規格の関連規格)

1

2.2

  (その他の関連文書)

3

3.

  用語の意味

3

3.1

  耐久性 (durability)

3

3.2

  経済寿命 (economic life)

3

3.3

  初期品質 (initial quality)

3

3.4

  構造操作機構 (structual operating mechanisms)

3

3.5

  損傷許容性 (damage tolerance)

3

4.

  一般要求事項

3

4.1

  検討

3

4.1.1

  (ASIP の一般要求事項)

4

4.1.2

  (追加要求事項)

4

4.2

  要求事項

4

5.

  詳細要求事項

4

5.1

  設計情報(タスク 1)

4

5.1.1

  ASIP  基本計画

4

5.1.2

  構造設計基準

5

5.1.2.1

  損傷許容性及び耐久性設計基準

5

5.1.2.1.1

  損傷許容性

5

5.1.2.1.2

  耐久性

5

5.1.2.2

  構造設計基準要求事項

5

5.1.3

  損傷許容性及び耐久性管理計画

6

5.1.3.1

  損傷許容性管理計画

6

5.1.3.2

  耐久性管理計画

6

5.1.4

  材料,工程及び結合方式の選定

7

5.1.4.1

  構造用材料,工程及び結合方式の選定に関する要求事項

7

5.1.5

  設計運用寿命及び設計運用

8


W 0620-1987

目次

(2) 

5.2

  設計解析及び開発試験(タスク 2)

8

5.2.1

  材料及び継手の許容値

8

5.2.2

  荷重解析

8

5.2.3

  設計運用荷重スペクトル

8

5.2.4

  設計化学環境及び熱環境スペクトル

8

5.2.5

  応力解析

9

5.2.6

  損傷許容解析

9

5.2.6.1

  解析手順

9

5.2.7

  耐久性解析

9

5.2.7.1

  解析手順

9

5.2.8

  音響耐久性解析

9

5.2.9

  振動解析

10

5.2.10

  フラッタ及びダイバージェンス解析

10

5.2.11

  (削除)

10

5.2.12

  (削除)

10

5.2.13

  設計開発試験

10

5.3

  実物大構造試験(タスク 3)

10

5.3.1

  静強度試験

11

5.3.1.1

  日程要求事項

11

5.3.2

  耐久性試験

11

5.3.2.1

  供試体の選定

11

5.3.2.2

  日程要求事項

11

5.3.2.3

  検査

12

5.3.2.4

  試験時間

12

5.3.3

  損傷許容試験

12

5.3.4

  飛行試験及び地上運用試験

13

5.3.4.1

  飛行荷重及び地上荷重調査

13

5.3.4.2

  動的応答試験

13

5.3.5

  音響耐久性試験

13

5.3.6

  飛行振動試験

13

5.3.7

  フラッタ試験

14

5.3.7.1

  地上振動試験

14

5.3.7.2

  構造剛性試験

14

5.3.7.3

  飛行フラッタ試験

14

5.3.8

  試験結果の解釈及び評価

14

5.4

  運用管理データパッケージ(タスク 4)

14

5.4.1

  最終解析

14

5.4.1.1

  解析の初期更新

15

5.4.1.2

  解析の最終更新

15

5.4.1.3

  検査及び修理基準の作成

15


W 0620-1987

目次

(3) 

5.4.2

  強度概要書

15

5.4.3

  構造整備計画

15

5.4.3.1

  初期の構造整備計画

15

5.4.3.2

  更新した構造整備計画

15

5.4.4

  荷重及び環境スペクトル調査

16

5.4.4.1

  データ取得装置

16

5.4.4.2

  データ処理装置

16

5.4.4.3

  データの解析及び基本運用スペクトルの開発

16

5.4.5

  個別飛行機追跡プログラム

16

5.4.5.1

  追跡解析方法

17

5.4.5.2

  データ取得装置

17

5.5

  運用管理(タスク 5)

17

5.5.1

  荷重及び環境スペクトル調査

17

5.5.2

  個別飛行機追跡データ

17

5.5.3

  個別飛行機整備時期

18

5.5.4

  構造整備記録

18

6.

  注記

18

6.1

  データ要求事

18

6.2

  体系工学管理との関係

18

付表  飛行機構造完全性プログラムのタスク18

付図 1  飛行機構造完全性プログラム  タスク 1 及び 218

付図 2  飛行機構造完全性プログラム  タスク 319

付図 3  飛行機構造完全性プログラム  タスク 4 及び 519

付図 4  試験結果の解釈及び評価(設計運用寿命及び設計運用に基づく) 20


日本工業規格

JIS

 W

0620

-1987

飛行機構造完全性プログラム要求事項

Aircraft Structural Integrity Program, Airplane Requirements

1.

適用範囲

1.1

目的  この規格の目的は,飛行機構造完全性プログラム[Aircraft Structural Integrity Program (ASIP)]

について記述し,飛行機の構造完全性を達成するために必要な全般的要求事項を明確にし,さらに,受注

者がこの要求事項に従っていることを確認する方法を規定することにある。次の者は,この規格を使用し

なければならない。

(a)

特定のシステム用の機体の開発を行っている受注者。

(b)

特定の飛行機システムの開発,生産及び運用支援を,そのライフサイクルの全期間にわたって管理し

ている発注者。

参考  この規格の内容は,MIL-STD-1530A に相当する。

1.2

適用  この規格の各部分を適用する程度は,1.3 に規定するとおり,各飛行機システムごとに異なっ

ていてもよい。

1.2.1

飛行機の種類  この規格は,固定翼又は可変固定翼をもつ有人動力飛行機,並びにこれと類似の構

造特性をもつ有人ヘリコプタ及び垂直離着陸機,短距離離着陸機の構造部位に直接適用するものである。

ただし,揚力及び操縦用回転翼その他の動的機構部を含むヘリコプタ形動力伝達系統,並びに動力発生装

置,エンジン及び推進系統は,この規格で規定しない。無人航行体に対しては,その機体の用途を満足さ

せるために十分なだけの構造安全性と耐久性に適応するよう,この規格の要求事項の一部を適用除外とす

るか,又は安全率を小さくとってもよい。適用除外及び離反については,契約仕様書に規定し,それを設

計の中での実行に先立って,発注者の個別承認を受けなければならない。

1.2.2

プログラムの種類  この規格は,次のものに対して適用する。

(a)

将来の飛行機システム

(b)

(削除)

(c)

改修又は用途変更する飛行機。

1.2.3

構造の種類  この規格は,ここに引用する規格の中で特に指示がない限り,金属構造及び非金属構

造に適用する。

1.3

修正  発注者は,この規格の適用に関して決定を行うとともに,この規格の要求事項をシステムの

要求に適応するように修正することができる。この修正の記述は,5.1.1 に従って文書化しなければならな

い。

2.

関連規格

2.1

この規格の関連規格を次に示す。

なお,これらの規格を適用するときは他に規定がなければ,入札依頼日又は見積依頼日に効力のある規


2

W 0620-1987

格を適用する。

仕様書 

Military Specification

MIL-I-6870

  Inspection Program Requirements, non-destructive for Aircraft and Missile Materials

and Parts

MIL-A-8860

  Airplane Strength and Rigidity, General Specification for

JIS W 0606  飛行機の強度及び剛性,通則)

MIL-A-8861

  Airplane Strength and Rigidity, Flight Loads

JIS W 0607  飛行機の強度及び剛性,飛行荷重)

MIL-A-8862

  Airplane Strength and Rigidity, Landplane, Landing and Ground Handling Loads

JIS W 0608  飛行機の強度及び剛性,着陸及び地上取扱荷重)

MIL-A-8865

  Airplane Strength and Rigidity, Miscellaneous Loads

JIS W 0610  飛行機の強度及び剛性,雑荷重)

MIL-A-8866

  Airplane Strength and Rigidity, Reliability Requirements, Repeated Loads, and Fatigue

JIS W 0611  飛行機の強度及び剛性,信頼性要求事項,繰返し荷重及び疲れ)

MIL-A-8867

  Airplane Strength and Rigidity, Ground Tests

JIS W 0612  飛行機の強度及び剛性,地上試験)

MIL-A-8870

  Airplane Strength and Rigidity, Flutter, Divergence and Other Aeroelastic Instabilities

JIS W 0613  飛行機の強度及び剛性,フラッタ,ダイバージェンス及びその他の空力弾性の

不安定)

MIL-A-8871

  Airplane Strength and Rigidity, Flight and Ground Operations Tests

JIS W 0616  飛行機の強度及び剛性,飛行及び地上運用試験)

MIL-A-8892

  Airplane Strength and Rigidity, Vibration

JIS W 0614  飛行機の強度及び剛性,振動)

MIL-A-8893

  Airplane Strength and Rigidity, Sonic Fatigue

JIS W 0615  飛行機の強度及び剛性,音響疲労)

MIL-R-83165

  Recorder, Signal Data, MXU-553/A

MIL-C-83166

  Converter-multiplexer, Signal Data, General Specification for

MIL-A-83444

  Airplane Damage Tolerance Requirements

JIS W 0621  飛行機損傷許容要求事項)

規格 

Military Standard

MIL-STD-499

  Engineering Management

MIL-STD-882

  System Safety Program Requirements

MIL-STD-1515

  Fastener Systems for Aerospace Applications

MIL-STD-1568

  Materials and Processes for Corrosion Prevention and Control in Aerospace Weapon

Systems

JIS W 1115  航空宇宙システムの防食管理のための材料及び工程)

便覧 

Military Handbook


3

W 0620-1987

MIL-HDBK- 5

  Metallic Materials and Elements for Aerospace Vehicle Structures

MIL-HDBK-17

  Plastics for Flight Vehicles

MIL-HDBK-23

  Structural Sandwich Composites

Air Force Systems Command (AFSC) Design Handbooks 

DH 1-0

  General

DH 1-2

  General Design Factors

DH 2-0

  Aeronautical Systems

DH 2-7

  System Survivability

2.2

その他の関連文書を次に示す。

MCIC-HB-01

  Damage Tolerance Design Handbook(

1

)

注(

1

)

発行所:Metals and Ceramics Information Center, Battelle Memorial Institute, Columbus, Ohio 43201,U.

S. A.

3.

用語の意味  用語の意味は,2.に記載した文書によるほか,次のとおりとする。

3.1

耐久性 (durability)   定められた期間,き裂(応力腐食割れや水素ぜい性割れを含む。),腐食,温

度劣化,はく離,摩耗,及び異物による損傷の影響に耐える機体の能力。

3.2

経済寿命 (economic life)   耐久性試験プログラムの結果[すなわち,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  に

よる試験成績の解釈及び評価]によって示される運用寿命であって,発注者が承認し委託した製造時変更

又はそ(遡)及改修を取り入れること,及びこの規格による構造整備計画を支援適用することによって得

られるものである。一般に,製造時変更又はそ及改修は,試験によって判明した局部的な設計上及び製造

上の欠陥を是正するために取り入れるものである。修理することが不経済であって,しかも,修理しなけ

れば運用即応態勢に影響するような機能上の問題を引き起こす可能性がある広範囲な損傷が発生したとき

に,その供試体は経済寿命に達したとみなす。経済寿命は,一般に,周期試験時間が増加することに伴っ

て,損傷箇所数又は修理費用が急速に増加することで特徴付けられる。

3.3

初期品質 (initial quality)   素材に存在していたか又は機体の製造中に生じたきず,欠陥その他の不

具合に関する機体構造状態の程度。

3.4

構造操作機構 (structual operating mechanisms)   構造物表面及び構造要素を操作したり,動かした

りしているときに,構造上の力を伝達する作動,関節及び操作機構。

3.5

損傷許容性 (damage tolerance)   機体が,規定された非修理運用期間中,きず,き裂その他の損傷

が存在しても破損までに至らない能力。

4.

一般要求事項

4.1

検討  どのような運用能力もその有効性の一部は,飛行機システムの運用即応性に依存する。飛行

機システムの中で,その運用即応性に影響する主要事項の一つは,構造の状態である。この規格において,

機体と呼んでいる全体構造は,胴体,主翼,尾翼,降着装置,操縦系統及び操縦だ(舵)面,発動機架,

構造操作機構,並びに契約仕様書で規定するその他の構成部品を含む。運用即応性を維持するためには,

一つ一つの飛行機システムの機体の能力,状態及び運用限界を明確にしておかなければならない。運用部

門への影響を最小にするため,ライフサイクルの初期において,構造上又は材料上の潜在的な問題を明確

にし,さらに,機体の中の寿命制限がある構造要素の検査及び交換又は修理の秩序ある実施計画が立てら

れるような予防整備プログラムを決定しなければならない。


4

W 0620-1987

4.1.1

飛行機に所要の構造特性を与えるための全般プログラムを,飛行機構造完全性プログラム(以下,

ASIP

という。

)と呼ぶ。ASIP の一般要求事項は,次のとおりとする。

(a)

飛行機の構造完全性(機体の強度,剛性,損傷許容性及び耐久性)を設定,評価及び実証すること。

(b)

個々の飛行機の運用中の完全性を継続的に評価するために,運用実績データを取得,評価及び活用す

ること。

(c)

支援業務及び運用計画の要求事項(整備,検査,補給,飛行機の回転運用,システムの段階的用途廃

止及び将来の運用部門構成)を決定するための根拠を得ること。

(d)

将来の飛行機に対して,構造の基準並びに設計,評価及び実証の方法を改善するための根拠を得るこ

と。

4.1.2

詳細要求事項の大部分は,引用した規格に示されている。この規格では,これらの要求事項の幾つ

かを強調するために再録するとともに,現時点ではこれらの引用規格に含まれていない追加要求事項を記

載する。詳細要求事項に関して,この規格と 2.に記載した関連規格との間に相違がある場合には,直ちに

発注者に注意を促して解決を図らなければならない。特定の飛行機に対する最新改訂を含む適用仕様書は,

契約仕様書に記載するとおりとしなければならない。

4.2

要求事項  ASIP は,付表 並びに付図 1及び に規定するとおり,相互に関係がある次の五つ

の機能タスクで構成する。

(a)

タスク 1(設計情報)  個別要求事項を満足するように,設計時に適用しなければならない基準を決

定すること。

(b)

タスク 2(設計解析及び開発試験)  機体を運用しなければならない設計環境及びその設計環境に対

する機体の応答を決定すること。

(c)

タスク 3(実物大構造試験)  構造に関する設計上の適切性の判定を支援するために行う機体の飛行

試験及び試験室レベルの試験。

(d)

タスク 4(運用管理データパッケージ)  検査,改修及び損傷評価に関して運用を管理するのに必要

なデータを作成すること。

(e)

タスク 5(運用管理)  個々の飛行機の耐用寿命期間中の損傷許容性及び耐久性を保証するために,

運用者が運用中に実施しなければならない作業。

5.

詳細要求事項

5.1

設計情報(タスク 1)  設計情報タスクは,既存の理論的研究,実験的研究,応用研究及び運用経験

を,飛行機の材料選定及び構造設計に関する個別基準に反映するために必要とする努力を包含する。その

目的は,個別運用要求事項を満足するように,適切な基準及びその意図した使用法が飛行機の設計に適用

されることを保証することである。このタスクは,構想設計段階のできるだけ早い時期に開始し,飛行機

のライフサイクルのそれ以後の各段階中に終了する。

5.1.1

ASIP 

基本計画  受注者は,契約仕様書で規定する詳細要求事項に従って,ASIP 基本計画を作成

しなければならない。ASIP 基本計画の目的は,その飛行機のライフサイクルの期間中,各種の ASIP タス

クを達成するための個別手順を明確にし,文書化することである。この計画書には,機体の設計,開発,

認定及び運用履歴追跡に必要なすべての ASIP タスクの時間展開した日程とそれらの統合化について記述

しなければならない。

また,この計画書には,その特徴,この規格の要求事項からの除外項目及びその理論的根拠,並びにこ

の計画の実行に当たって予想されるあらゆる問題についての検討を含めなければならない。日程の設定に


5

W 0620-1987

当たっては,すべてのインタフェース,日程遅延の影響(例えば,試験の失敗による遅延)

,日程回復計画

作成の手法及びその他の問題点について考慮しなければならない。計画及び日程は,毎年及び大きな変更

が起こったときに更新しなければならない。

ASIP

基本計画は,発注者の承認を受けなければならない。

5.1.2

構造設計基準  特定の飛行機に対する詳細構造設計基準は,5.1.2.2 に規定する各仕様書の要求事項

に従って,受注者が作成しなければならない。これらの仕様書は,強度,損傷許容性,耐久性,フラッタ,

振動,音響疲労などに関する設計基準を包含している。損傷許容性及び耐久性に関する構造設計基準につ

いては,特に強調するため,更に 5.1.2.1 に規定する。

5.1.2.1

損傷許容性及び耐久性設計基準  機体は,次の事項を満足する材料,応力レベル及び構造形態を

取り入れたものでなければならない。

(a)

運用時の日常的検査が可能であること。

(b)

発見できないき裂,きずその他の損傷の進展による飛行機喪失の確率を最小にすること。

(c)

き裂(応力腐食割れや水素ぜい性割れを含む。

,腐食,はく離,摩耗及び異物による損傷の影響を最

小にすること。

発見できないきず又は損傷が発生しないようにするために設計,製造及び検査面でどのように努力をし

ても,標定構造構成部品にそのようなきず又は損傷が存在する可能性があることから,構造の安全性を保

証するため,損傷許容設計手法を用いなければならない。

また,飛行機の設計運用寿命の期間中,低い運用整備費及び改善された運用即応性を備えた飛行機シス

テムを達成するため,耐久性構造設計手法を用いなければならない。

5.1.2.1.1

損傷許容性  損傷許容設計要求事項は,MIL-A-83444 (JIS W 0621)  に規定されており,これを

飛行安全上重要な構造に対して適用しなければならない。損傷許容設計の概念は,次の二つに分類する。

(a)

多重荷重経路又は割れ止めを用いることによって,不安定なき裂の成長を局部にとどめるというフェ

ールセーフの概念。

(b)

きず又は欠陥が不安定で急速な進展をするために必要な大きさに達することを許さないという遅いき

裂成長の概念。

どちらの設計概念も,発見できないきず又は損傷が存在するものと仮定し,さらに,規定された非修理

運用期間中とその終了時の両方において,規定された残存強度水準をもつものでなければならない。初期

損傷の仮定寸法,損傷の成長限界,残存強度要求事項及び最小非修理運用期間は,構造の種類及び該当す

る検査性水準によりて定まる。

5.1.2.1.2

耐久性  耐久性設計要求事項は,MIL-A-8866 (JIS W 0611)  に規定されている。機体は,設計運

用荷重及び環境スペクトルの下で,

その経済寿命が設計運用寿命を超えるように設計しなければならない。

設計運用寿命及び代表的設計運用の要求事項は,

発注者が新規飛行機のそれぞれの契約仕様書で規定する。

この設計目標は,燃料漏れ,操縦不能,機室圧力の低下のような過度の整備上の問題又は機能上の問題を

引き起こす可能性があるき裂の発生又はその他の構造若しくは材料の劣化を最小にすることにある。

5.1.2.2

構造設計基準要求事項  受注者は,システム仕様書及び関連規格の要求事項を用いて,特定の飛

行機に対する詳細構造設計基準を作成しなければならない。これらの基準及びそのすべての要素は,発注

者の承認を受けなければならない。

詳細構造設計基準は,

AFSC DH 1-0

及び DH 2-0 並びに MIL-A-8860 (JIS 

W 0606)

MIL-A-8861 (JIS W 0607)  ,MIL-A-8862 (JIS W 0608)  ,MIL-A-8865 (JIS W 0610)  ,MIL-A-8866

(JIS W 0611)

MIL-A-8870 (JIS W 0613)  ,MIL-A-8892 (JIS W 0614)  ,MIL-A-8893 (JIS W 0615)  及び

MIL-A-83444 (JIS W 0621)

に規定している。


6

W 0620-1987

該当する場合には,特定の損傷基準を発注者が提示する。この基準は,飛行条件並びに損傷を受けた後

の荷重負担能力及びその耐久時間などを含む。構造は,これらの基準及び AFSC DH 2-7 に規定されたその

他の基準に従って設計しなければならない。

5.1.3

損 傷 許 容 性 及 び 耐 久 性 管 理 計 画   受 注 者 は , こ の 規 格 , MIL-A-8866  (JIS W 0611)  及 び

MIL-A-83444 (JIS W 0621)

に従って,損傷許容性及び耐久性管理計画を作成し,それに規定したプログラ

ムを実施しなければならない。この計画では,5.1.2.1.1 及び MIL-A-83444 (JIS W 0621)  に規定する損傷許

容要求事項と,5.1.2.1.2.と MIL-A-8866  (JIS W 0611)  に規定する耐久性要求事項とに適合していることを

保証するのに必要なすべてのタスクを指定し,明確にしなければならない。計画及びその個々の要素は,

発注者の承認を受けなければならない。損傷許容性及び耐久性の管理の中には,破壊力学,疲れ,材料の

選定及び処理,環境に対する防護,腐食の防止及び管理,設計,製造,品質管理並びに非破壊検査に関す

る教育訓練を含める。腐食の防止及び管理の計画は,MIL-STD-1568 (JIS W 1115)  に従わなければならな

い。この計画には,MIL-A-8866 (JIS W 0611)と MIL-A-83444 (JIS W 0621)  の要求事項に適合する軽量で

費用対効果の高い設計を行うために,初期設計段階において,損傷許容性及び耐久性の設計概念,材料,

質量,性能並びに費用についてのトレードスタディを実施するための要求事項を含めなければならない。

5.1.3.1

損傷許容性管理計画  損傷許容性管理計画には,少なくとも次のタスクを含めなければならない。

(a)

初期のトレードスタディ並びに最終の設計及び解析に用いる基礎的な破壊力学データ(すなわち,K

Ic

K

c

,K

Iscc

,da/dn など)は,既存の資料から求めるか,又は 5.2.1 に従って契約の一環として開発しな

ければならない。

(b)

受注者は,MIL-A-83444 (JIS W 0621)  に従って,破壊標定部品一覧表を作成しなければならない。

この表は,発注者の承認を受け,機体設計の進行に伴って最新状態に維持しなければならない。

(c)

破壊標定部品の設計図面には,標定箇所並びに特殊工程(例えば,シヨットピーニング)及び検査要

求事項を明示しなければならない。

(d)

受注者は,破壊標定部品に対する完全な非破壊検査要求事項,工程管理要求事項及び品質管理要求事

項を設定して,発注者の承認を受けなければならない。非破壊検査は,MIL-I-6870 の規定に適合しな

ければならない。このタスクには,下請業者,専門業者及び供給業者が行う管理を検定し監視するた

めの計画提案を含めなければならない。

(e)

損傷許容性管理計画には,MIL-A-83444 (JIS W 0621)  の要求事項に従って実施する特別な非破壊検査

実証プログラムがあれば,それを含めなければならない。

(f)

素材及びそれによって製作した破壊標定部品が,重要な荷重方向において,設計に使用した値よりも

小さい破壊じん性をもつ可能性を最小にするために,必要に応じて材料購入仕様書及び製造工程仕様

書を作成し,これを最新状態に保たなければならない。

(g)

受注者は,受注者又は下請業者の社内において設計材料特性を低下させる可能性があるような工程及

び工作作業を受ける破壊標定部品について,工程追跡要求事項を明確にし,これを実行しなければな

らない。

(h)

この規格,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  及び MIL-A-83444 (JIS W 0621)  に従って,損傷許容解析,開発

試験及び実物大試験を実施しなければならない。

(i)

運用中検査不可能以外の検査性等級に該当するものとして設計したすべての破壊標定部品に対しては,

受注者は,MIL-A-83444 (JIS W 0621)  に規定するそれぞれの検査性等級に応じて,現地整備に必要な

検査手順を定めなければならない。

5.1.3.2

耐久性管理計画  耐久性管理計画には,少なくとも次のタスクを含めなければならない。


7

W 0620-1987

(a)

き裂発生又は破壊の問題(すなわち,従来,耐久性試験中の初期又は運用の初期に発見されていた問

題)を生じる可能性があるような有害な残留応力,局部詳細設計,材料,工程及び工作方法が飛行機

の設計と製造に取り入れられる可能性を最小にするように,耐久性設計に関する確立された手法を実

施しなければならない。耐久性管理計画は,MIL-A-8866  (JIS W 0611)  の耐久性詳細設計手順に規定

された要求事項を包含していなければならない。

(b)

初期のトレードスタディ並びに最終の設計及び解析に用いる基礎データ(すなわち,初期品質分布,

疲労許容値など)は,既存のデータから求めるか,又は 5.2.1 に従って契約の一環として開発しなけれ

ばならない。

(c)

受注者は,耐久性標定部品を決定する基準を設定して,発注者の承認を受けなければならない。耐久

性標定部品としては,MIL-A-8866 (JIS W 0611)  の耐久性要求事項によって設計して寸法が決まるか,

又は特別の管理手順を用いないときには MIL-A-8866 (JIS W 0611)  の要求事項によって設計して寸法

を決めることが可能であるような,高価で交換が不経済な部品を想定している。受注者は,耐久性標

定部品一覧表を作成し,機体設計の進行に伴って最新状態に維持しなければならない。

(d)

耐久性標定部品の設計図面には,標定箇所並びに特殊工程及び検査の要求事項を明示しなければなら

ない。

(e)

初期品質が設計時に仮定したものより低下する可能性を最小にするために,必要に応じて,材料購入

仕様書及び製造工程仕様書を作成し,これを最新状態に保たなければならない。

(f)

実物大構造耐久性試験中にき裂が発生した構造区域に対しては,初期品質を評価するために十分な顕

微鏡検査又は破面解析による実験的判定を要求しなければならない。この調査結果は,5.3.8 に規定す

る実物大構造試験データの解釈及び評価に,さらに該当するときは 5.4.3 に規定する構造整備計画の作

成に用いなければならない。

(g)

この規格,MIL-A-8866 (JIS W 0611)  及び MIL-A-8867 (JIS W 0612)  に従って,耐久性解析,開発試

験及び実物大構造試験を実施しなければならない。

5.1.4

材料,工程及び結合方式の選定  材料,工程及び結合方式は,この規格と関連規格の強度,損傷許

容性及び耐久性の要求事項を満足する軽量で費用対効果が高い機体が得られるように選定しなければなら

ない。

最終選定を行う際の主要素として,

損傷許容性及び耐久性管理計画の一環として実施した設計構想,

材料,質量及び費用についてのトレードスタディの結果を用いなければならない。

5.1.4.1

構造用材料,工程及び結合方式の選定に関する要求事項  受注候補者は,提案要求に応募する際

に,各構造構成部品に使用する材料,工程及び結合方式の提案,並びにその個々の選定の理論的根拠を明

示しなければならない。受注者は,契約成立後と設計活動中に,各構造構成部品の最終選定に用いた理論

的根拠のすべてを文書化しなければならない。この理論的根拠には,データの根拠,従来の経験及びトレ

ードスタディの結果も含めて,選定の基礎となったすべての関係データを含めなければならない。該当す

る場合には,AFSC DH 1-2,7A 章(材料)と 7B 章(工程)の要求事項を満足させなければならない。フ

ァスナの選定は,MIL-STD-1515 に従わなければならない。破壊標定部品と耐久性標定部品に対する材料,

工程及び結合方式の選定については,発注者の承認を受けなければならない。


8

W 0620-1987

5.1.5

設計運用寿命及び設計運用  発注者は,契約仕様書の一部として,所要の設計運用寿命及び代表

的な設計運用を規定するものとする。これらのデータは,機体の初期の設計及び解析に使用しなければな

らない。設計運用寿命及び設計運用は,調達部門と企画部門との間の緊密な調整によって設定するものと

する。予想される運用に対する実際的な推定として設計用途プロファイル及び用途の相対的頻度を設定す

る。実際の運用が設計運用よりも過酷な場合には,おそらく特別の運用管理処置(すなわち,早期用途廃

止,早期改修又は選定した飛行機の回転連用)が必要になると考えられる。契約交渉後にこれらのデータ

を改訂するのは,すべて発注者の随意としなければならないが,発注者と受注者との間の別途交渉を必要

とする。

5.2

設計解析及び開発試験(タスク 2)  設計解析及び開発試験タスクの目的は,所要の強度,損傷許容

性及び耐久性要求事項を満足するように機体を設計して寸法を決めるために,その機体を運用しなければ

ならない環境(荷重,温度,化学的,摩耗,振動及び音響の環境)を決定すること及びこれらの環境に基

づいて予備解析・試験を実施することである。

5.2.1

材料及び継手の許容値  受注者は,種々の設計解析を助けるため,MIL-HDBK-5MIL-HDBK-17

MIL-HDBK-23

及び MCIC-HDBK-01 に記載する材料及び継手の許容値データを適宜利用しなければなら

ない。これ以外の資料も用いてよいが,発注者の承認を受ける。十分なデータが入手できない場合には,

受注者は,データを得るための実験計画を作成し,実施しなければならない。試験データの取得及び解析

は,MIL-HDBK

の要求事項を満足しなければならない。これらの計画の適用範囲は,契約候補者が提

案要求に応募する際に明示して,発注者の承認を受けなければならない。

5.2.2

荷重解析  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,荷重解析の詳細要求事項に従わなければなら

ない。

この荷重解析は,構造設計基準によって設定した包囲線の範囲内で運用したときに機体が遭遇すること

のある主要な静的荷重及び動的荷重の大きさと分布を決定することで構成しなければならない。

また,この解析は,飛行荷重,地上荷重,動力装置荷重,操縦系統荷重などを決定することで構成する。

該当する場合には,この解析に,温度,空力弾性及び機体の動的応答の影響を含めなければならない。

5.2.3

設計運用荷重スペクトル  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8866 (JIS W 0611)  の

設計運用荷重スペクトルに対する詳細要求事項に従わなければならない。これらのスペクトルは,発注者

の承認を受けなければならない。設計運用荷重スペクトルの目的は,設計運用寿命及び代表的な設計運用

に基づいて運用したときに機体が受ける荷重の分布及び頻度を設定することである。設計運用荷重スペク

トル並びに 5.2.4 に規定する設計化学環境及び熱環境スペクトルは,該当する場合には,この規格に規定す

る種々の解析及び試験タスクを支援するために,設計フライトバイフライト応力及び環境スペクトルの設

定に使用する。

5.2.4

設計化学環境及び熱環境スペクトル  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8866  (JIS 

W 0611)

の設計化学環境及び熱環境スペクトルに対する詳細要求事項に従わなければならない。これらの

スペクトルは,発注者の承認を受けなければならない。

また,これらのスペクトルは,各環境の特徴(すなわち,強さ,持続時間,発生頻度など)を表すもの

でなければならない。


9

W 0620-1987

5.2.5

応力解析  受注者は,契約仕様書で規定する応力解析に対する詳細要求事項に従わなければならな

い。この応力解析は,発注者の承認を受けなければならない。応力解析は,機体に加わる外部荷重と温度

とによって生じる応力,変形及び安全余裕の解析的決定を含むものでなければならない。

標定荷重に耐え,

規定された強度要求事項を満足する機体の能力を決定しなければならない。この応力解析は,強度を立証

することのほかに,耐久性及び損傷許容性の解析,設計開発試験を実施する標定構造構成部品の選定,再

審処理,並びに構造試験に用いる荷重条件の選定の根拠として使用しなければならない。

応力解析は,また,その飛行機の寿命期間中に行う構造変更の適切性を判定するため及び性能向上又は

新しい用途要求事項から生じる新しい荷重条件に対する構造の適切性を判定するための根拠としても使用

しなければならない。応力解析は,機体又は機体に加わる荷重条件に大きな変更があったときには,それ

を反映するように改訂しなければならない。

5.2.6

損傷許容解析  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-83444  (JIS W 0621)  の損傷許容

解析に対する詳細要求事項に従わなければならない。この解析は,

発注者の承認を受けなければならない。

この解析の目的は,その構造構成部品が MIL-A-83444 (JIS W 0621)  の要求事項を満足する能力をもってい

ることを立証することにある。

5.2.6.1

解析手順  損傷成長の解析及び立証試験には,5.2.3 と 5.2.4 の要求事項に基づく設計フライトバ

イフライト応力及び環境スペクトルを用いなければならない。きずの限界の大きさ,残存強度,安全き裂

成長期間及び検査間隔の計算は,既存の破壊試験データ及び設計開発試験プログラムの一環として得られ

た基礎破壊許容値データに基づいて行わなければならない。損傷許容設計においては,破壊特性のばらつ

きが解析結果に及ぼす影響を考慮に入れなければならない。

5.2.7

耐久性解析  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8866 (JIS W 0611)  の耐久性解析に

対する詳細要求事項に従わなければならない。この解析は,発注者の承認を受けなければならない。この

解析の目的は,その構造が MIL-A-8866 (JIS W 0611)  の要求事項を満足する能力をもっていることを立証

することにある。

5.2.7.1

解析手順  耐久性の解析及び立証試験には,5.2.3 と 5.2.4 の要求事項に基づく設計フライトバイ

フライト応力及び環境スペクトルを用いなければならない。

この解析では,

き裂又はこれと同等の損傷が,

不経済な機能上の問題,修理,改修又は交換の原因となるのに十分な大きさに達するまでの時間に影響す

る要因を考慮に入れなければならない。これらの要因には,初期品質及びそのばらつき,化学環境及び熱

環境,負荷順序及び環境の相互作用効果,材料特性のばらつき並びに解析の不確実性を含めなければなら

ない。耐久性解析は,耐久性設計を解析的に保証することのほかに,設計開発及び実物大構造耐久性試験

に用いる試験荷重スペクトルを開発するための基礎となるものである。

5.2.8

音響耐久性解析  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8893 (JIS W 0615)  の音響耐久

性解析に対する詳細要求事項に従わなければならない。この解析は,発注者の承認を受けなければならな

い。音響耐久性解析の目的は,機体が設計運用寿命の期間中,音響耐久性き裂に耐えることを保証するこ

とである。この解析では,考えられる過酷な音源による音響環境の強さを明確にし,主要な熱的影響を含

めた動的応答を決定しなければならない。考えられる過酷な音源としては,動力装置の騒音,乱流及びは

く(剥)離流領域での空力騒音,露出した空洞部の共鳴及び局部加振力を含むが,これだけに限定するも

のではない。


10

W 0620-1987

5.2.9

振動解析  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8892 (JIS W 0614)  の振動解析に対す

る詳細要求事項に従わなければならない。この振動解析は,発注者の承認を受けなければならない。設計

によって,構造の振動環境を規制し,また,解析によって,発生する環境を,乗員室,貨物室,機器室,

その他の飛行機の種々の区域における振動レベルの形で予測しなければならない。これらの各区域の構造

は,設計運用寿命の期間中,振動荷重によって,5.2.7.1 に規定するような容認できないき裂の発生に対し

て抵抗性をもつものでなければならない。さらに,設計によって,飛行機の設計寿命の期間中,振動レベ

ルを,

乗員及び機器が信頼できる性能を発揮するのに必要なレベルに保つように抑制しなければならない。

5.2.10

フラッタ及びダイバージェンス解析  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8870  (JIS 

W 0613)

のフラッタ及びダイバージェンス解析に対する詳細要求事項に従わなければならない。この解析

は,発注者の承認を受けなければならない。

また,この解析は,関係する構成部品の空力,慣性及び弾性の各特性の相互作用によって生じる飛行機

のフラッタ及びダイバージェンス特性を判定することで構成しなければならない。この解析の目的は,飛

行機の構造が規定されたフラッタ及びダイバージェンス余裕を満足する能力をもっていることを立証する

ことである。

また,発注者と受注者との間で合意した破壊モードに対するフラッタ解析も行わなければならない。

5.2.11

(削除)

5.2.12

(削除)

5.2.13

設計開発試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8867 (JIS W 0612),MIL-A-8870

(JIS W 0613)

MIL-A-8892 (JIS W 0614)  及び MIL-A-8893 (JIS W 0615)  の設計開発試験に対する詳細要求

事項に従わなければならない。設計開発試験計画は,発注者の承認を受けなければならない。設計開発試

験の目的は,材料及び継手の許容値を設定すること,解析手順を立証すること,許容応力レベル,材料選

定,結合方式及び設計化学環境及び熱環境スペクトルの影響に対する早期評価を得ること,風洞試験によ

ってフラッタ特性を決定すること,並びに標定となる構造部品及び組立品の強度,耐久性(音響耐久性を

含む。

)及び損傷許容性に対する早期評価を得ることである。

設計開発試験の例は,試験片,小さな構造要素,結合部及び継手,パネル,結合金具,操縦系統構成部

品及び構造操作機構並びに主翼キャリスルー,水平尾翼スピンドル,主翼ピボットのような主要構成部品

及びそれらの組立品に対する試験である。受注候補者は,提案要求に応募する際に,提案試験計画の範囲

を設定しなければならない。受注者は,契約成立後及び設計解析タスク中に,この計画を最終的なものに

し,それを発注者に提出して承認を受けなければならない。受注者は,設計の進行に伴って,試験計画を

改訂し,承認された最新版を維持しなければならない。この計画書は,試験の範囲選定に対する理論的根

拠,供試品,手順,試験荷重及び試験時間に関する記述並びに費用と日程のトレードオフを立証するため

の解析など,計画を作成するのに用いた情報で構成しなければならない。

5.3

実物大構造試験(タスク 3)  このタスクの目的は,一連の地上試験及び飛行試験を通じて,基本設

計における構造の適切性の判定を支援することである。


11

W 0620-1987

5.3.1

静強度試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  の静強度試験に

対する詳細要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験の計画,手順及び日程について,

発注者の承認を受けなければならない。静強度試験計画は,計装した機体において,過酷な飛行条件及び

地上取扱い条件から生じる荷重を模擬して行う一連の試験室レベルの試験で構成しなければならない。著

しい熱影響を与える運用環境の場合には,機体に荷重を加えるとともに,熱環境の影響を模擬しなければ

ならない。静強度試験の主目的は,機体の設計終極強度能力を実証することである。次に示す場合を除き,

設計終極荷重までの実物大静強度試験を実施しなければならない。

(a)

機体及びその負荷が,過去に飛行機に用いられ実物大構造試験によって実証されているものと実質的

に同じであることが分かっている場合。

(b)

強度余裕(特に安定性標定構造に対して)が,主組立品の試験によって実証されている場合。

実物大終極荷重静強度試験を実施しない場合には,強度保証試験を実施することを計画要求事項としな

ければならない。実物大終極荷重静強度試験を実施しないときには,発注者の承認を受けなければならな

い。機能保証試験及び検査保証試験の要求事項は,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  に従わなければならない。

5.3.1.1

日程要求事項  実物大静強度試験は,飛行試験機に課せられた MIL-A-8871 (JIS W 0616)  による

80%

制限荷重の飛行制限が解除されて,設計包囲線内での無制限飛行が日程どおりにできるような,十分

な時間をもって試験が完了するように,日程を立てなければならない。

5.3.2

耐久性試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  の耐久性試験に

対する詳細要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験計画,手順及び日程については,

発注者の承認を受けなければならない。機体の耐久性試験は,フライトバイフライト設計運用荷重及び環

境スペクトルの繰返し負荷によって構成しなければならない。実物大構造耐久性試験の目的は,次のとお

りである。

(a)

設計運用荷重及び環境スペクトルを受けたとき,供試体の経済寿命が設計運用寿命以上であることを

実証すること。

(b)

これまでに解析又は構成部品試験によって明確にされていない機体の標定区域を明確にすること。

(c)

飛行機に対する特別の検査及び改修に関する要求事項を設定する根拠を得ること。

5.3.2.1

供試体の選定  供試体は,初期の本格的開発 (full scale development) 用又は研究開発試験及び評

価用の機体で,できる限り運用形態を代表するものでなければならない。もし供試体と量産飛行機との間

に設計,材料又は製造上の著しい相違がある場合には,追加の供試体又は選定した構成部品及びその組立

品について,耐久性試験を要求しなければならない。

5.3.2.2

日程要求事項  実物大機体耐久性試験は,1 寿命時間の耐久性試験に,5.3.2.3 (a)及び(b)による

標定構造区域の検査を加えたものが,量産開始の決定に先立って完了するように,日程を立てなければな

らない。

また,2 寿命時間の耐久性試験に,5.3.2.3 (a)及び(b)による標定構造区域の検査を加えたものが,量産

初号機の引渡しに先立って完了するように,日程を立てなければならない。もし供試体が 2 寿命時間の耐

久性試験の終了前に経済寿命に達する場合には,必要な製造時変更及びそ及改修の範囲を推定するため,

量産初号機の引渡しに先立って,5.3.2.3 (a)及び(b)による十分な検査及びデータの評価を完了しなければ

ならない。

量産決定及び量産機引渡しという主要事項に対する最初の日程が上述の日程要求事項と両立しなくなっ

た場合には,これらの主要事項の日程を変更する技術上の危険性及び費用の影響を評価するため,調査を

行わなければならない。耐久性試験計画における重要な考慮事項の一つは,それをできるだけ早い時期に


12

W 0620-1987

完了させることである。これは,試験中に欠陥が発見されたために運用者が行うことになる改修を最小限

にするために必要なことである。このために,次の事項を達成することが必要である。

(a)

試験荷重スペクトルを適切な時期に設定すること。

(b)

供試体を早期に引き渡すこと。

(c)

試験が失敗した場合の試験中断時間を最小にするための管理上及び契約上の手順を早期に設定するこ

と。

試験の時間及び費用を節減するために,試験スペクトルの荷重サイクルを削減したり,削除したり,又

は置き換えることが許される。受注者は,何らかの削減提案をする場合には,MIL-A-8866 (JIS W 0611)  及

び MIL-A-83444 (JIS W 0621)  のそれぞれの耐久性及び損傷許容の要求事項に適合させるため,き裂が有害

な大きさに達するまでの時間に,その提案が及ぼす影響を,解析と試験室レベルの試験とによって明確に

しなければならない。この解析及び試験の結果は,最終的な試験スペクトルを設定したり,必要に応じて

試験結果を解釈したりするために使用しなければならない。最終的な試験スペクトルは,発注者の承認を

受けなければならない。

5.3.2.3

検査  主要検査計画は,実物大機体耐久性試験の一部として実施しなければならない。検査計画

は,発注者の承認を受けなければならない。この検査計画には,次の事項を含めなければならない。

(a)  MIL-A-83444 (JIS W 0621)

の損傷許容要求事項及び MIL-A-8866 (JIS W 0611)  の耐久性要求事項に従

って開発した設計運用時検査。

(b)

標定区域の状態を監視するためと,5.3.2.2 の主要事項日程要求事項を支援するための特別検査。

(c)  5.3.8

の解釈及び評価タスクを支援するため,予定した何らかの損傷許容試験を含む実物大耐久性試験

の終了時に実施する分解検査。

5.3.2.4

試験時間  耐久性試験の最小試験時間は,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  に規定するとおりとしなけ

ればならない。寿命延長能力を判定し,また,設計運用よりも過酷な運用に対する設計寿命能力を立証す

るために,最小要求事項を超えて試験を続行することは,発注者にとって有益なことがある。この最小試

験時間を超えて試験を続行するための決定は,受注者と発注者との合同検討に基づいて行わなければなら

ない。受注候補者は,提案要求に応募する際に,最小要求事項を超えて更に 2 寿命時間分の耐久性試験を

続行するために要する費用見積り及び日程を提出しなければならない。

5.3.3

損傷許容試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8867 (JIS W 0612)  の損傷許容試

験に対する要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験計画,手順及び日程について,

発注者の承認を受けなければならない。損傷許容試験計画は,MIL-A-83444 (JIS W 0621)  によるカテゴリ

I

の破壊標定部品を立証するために十分な範囲のものでなければならない。この計画の意図は,既存の供

試体を用いて損傷許容試験を行うことでなければならない。この試験には,実物大静強度試験供試体及び

耐久性試験供試体のほかに,設計開発試験の構成部品及び組立品を使用することを含めてもよい。必要な

場合には,MIL-A-83444 (JIS W 0621)  の要求事項に適合していることを立証するために,追加の構造構成

部品及び組立品を製作して試験しなければならない。


13

W 0620-1987

5.3.4

飛行試験及び地上運用試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8871  (JIS W 0616)

の飛行試験及び地上運用試験に対する詳細要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験

計画,手順及び日程については,発注者の承認を受けなければならない。飛行試験及び地上運用試験を実

施するのには,初期の本格的開発用又は研究開発試験及び評価用の飛行機を用いなければならない。荷重

は,受注者と発注者との間で合意したひずみ計法又は圧力調査法によって測定しなければならない。確実

に最終形態のものを取得できるように,生産計画の十分後期における別の飛行機 1 機を主試験飛行機と同

様に計装して,これらの飛行試験の予備機としなければならない。

荷重及び環境スペクトルの調査及び個々の飛行機の追跡プログラムの実施中に使用する特別計装(例え

ば,記録装置,機械式ひずみ記録計,ひずみ計など)は,評価及び相関関係を得る目的に適するように,

構造確認飛行試験用の飛行機に配置しなければならない。飛行試験及び地上運用試験には,飛行荷重と地

上荷重との調査及び動的応答試験を含めなければならない。

5.3.4.1

飛行荷重及び地上荷重調査  飛行荷重及び地上荷重の調査計画は,計装及び校正を終えた飛行機

をその制限構造設計包囲線の範囲内及び限界まで運用し,それによって生じる荷重,及び必要な場合はそ

の機体構造の関連温度分布を測定することで構成しなければならない。この荷重調査の目的は,次のとお

りとしなければならない。

(a)

機体の設計に用いた構造荷重及び温度の解析を検証すること。

(b)

標定となる構造荷重及び温度の分布を生じる荷重条件を評価すること。

(c)

設計制限包囲線内における構造確認飛行条件の調査によって指示することができる推測新標定荷重条

件を決定し明確化すること。

5.3.4.2

動的応答試験  動的応答試験は,乱気流中を飛行中,及び地上走行,離陸,けん引,着陸,燃料

補給,搭載物射出などを行っている間における構造荷重及び入力を測定するために,計装及び校正を終え

た飛行機を運用することによって構成しなければならない。その目的は,荷重解析及び疲労解析の実証又

は修正に用いるため,また,運用荷重データを解釈するために,これらの動的荷重入力に対する構造の弾

性応答特性を飛行によって立証し,評価することでなければならない。

5.3.5

音響耐久性試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8893 (JIS W 0615)  の音響耐久

性試験に対する詳細要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験計画,手順及び日程に

ついて,発注者の承認を受けなければならない。初期の設計音響荷重及び環境を立証又は修正するため,

実物大飛行機について音響環境を測定しなければならない。音響耐久性試験は,設計運用寿命に対する構

造の適切性を実証するため,代表的な飛行機(又はその主要構成部品)について実施しなければならない。

音響耐久性試験は,通常,完成飛行機を,設計運用寿命を保証するために十分な時間をかけて,動力装置

を全出力で運転して地上試験をすることによって達成する。しかし,飛行機の推進装置を音源として用い

る特殊な無反響地上試験装置内又は高音圧騒音発生設備内において,飛行機の主要部分を試験しても差し

支えない。

5.3.6

飛行振動試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8892 (JIS W 0614)  の飛行振動試

験に対する詳細要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験計画,手順及び日程につい

て,発注者の承認を受けなければならない。この試験は,振動解析の正確さを立証するために実施しなけ

ればならない。さらに,この試験結果は,振動を規制する手段が,設計運用寿命を通じてき裂の発生を防

止して,乗員及び機器の信頼できる性能を発揮させるのに適切なものであることを実証するために用いな

ければならない。


14

W 0620-1987

5.3.7

フラッタ試験  受注者は,契約仕様書で規定するとおり,MIL-A-8870 (JIS W 0613)  のフラッタ関

連試験に対する詳細要求事項に従わなければならない。試験開始に先立って,試験計画,手順及び日程に

ついて,発注者の承認を受けなければならない。フラッタ関連試験は,地上振動試験,熱弾性試験,制限

荷重剛性試験,操縦だ面の遊び及び剛性試験並びに飛行フラッタ試験によって構成しなければならない。

5.3.7.1

地上振動試験  地上振動試験は,機体又はその構成部品の固有振動数,振動モードの形及び構造

減衰を実験的に判定することによって構成しなければならない。その目的は,空力弾性解析(フラッタ解

析,動的解析,数学モデルなど)に用いる質量,剛性及び減衰特性を確認することである。

5.3.7.2

構造剛性試験  熱弾性試験,制限荷重剛性試験,並びに操縦だ面の遊び及び剛性試験は,機体及

びその構成部品の構造弾性及び遊びの特性を実験的に判定することによって,構成しなければならない。

これらの試験の目的は,空力弾性解析と動的モデルの設計とに用いた支援データを立証することである。

5.3.7.3

飛行フラッタ試験  飛行フラッタ試験は,機体が,運用飛行包囲線の全域にわたって,空力弾性

不安定を起こさず,満足な減衰特性をもっていることを立証するために実施しなければならない。

5.3.8

試験結果の解釈及び評価  受注者は,この規格で要求する試験中に生じた構造上の不具合(破断,

き裂,降伏など)の一つ一つを解析して,その原因,是正処置,運用者との関係及び見積り費用を決定し

なければならない。この解釈及び評価活動における種々のタスクの範囲及び相互関係を

付図 に示す。こ

の評価結果は,強度,剛性,損傷許容性及び耐久性の設計要求事項を満足していることを実証するために

必要な是正処置を明確にするものでなければならない。

また,欠陥を是正するために生じる費用,日程,運用上その他の諸影響は,大きな設計変更,計画の打

切り,表彰又は罰則適用及び量産飛行機の購入などの主要な計画決定を行うために用いる。

規定の強度,剛性,損傷許容性及び耐久性の設計要求事項を満足させるために,実物大試験の結果から

導き出された構造の改修又は変更は,構成部品,組立品又は実物大供試体のうちの該当するものに対する

その後の試験によって立証しなければならない(

付図 参照)。耐久性改修に対する試験時間は,

MIL-A-8867  (JIS W 0612)

及び契約仕様書で規定するとおりとしなければならない。受注者は,これらの

追加試験要求事項を,それに関連する理由説明とともに発注者に提案して承認を受けなければならない。

5.4

運用管理データパッケージ(タスク 4)  強度,剛性,損傷許容性及び耐久性の維持は,運用者が,

運用寿命の全期間を通じて特定の間隔で(すなわち,規定された整備工場又は基地レベルでの整備回数や

特別検査間隔で)個々の検査,整備及び起こり得る改修又は交換の諸タスクを実施する能力によって変わ

るものである。これらのタスクを適正に実施するためには,運用者は,必要な処置について詳細な知識を

もっていなければならない。さらに,経験によれば,飛行機の実際の運用は,仮定した設計運用とは著し

く異なることがある。したがって,運用者は,運用におけるこのような相違が,飛行機の損傷許容性及び

耐久性に及ぼす影響を評価できるような技術的方法及び実際の運用データを所有していることが必要であ

る。

タスク 4 は,運用者が 5.5 に規定するとおりに運用管理タスクを遂行できるようにするために,受注者

が準備しなければならないデータパッケージの最小限の必要要素を述べたものである。タスク 4 は,受注

者が実施すべき基本的な ASIP 要求事項を含むものであるが,タスク 1∼3 とは異なり,基本的な構造設計

要求事項に適合させることを目的とするものではないということに留意することが望ましい。

5.4.1

最終解析  受注者は,実物大構造試験中及びその後の荷重・環境スペクトル調査中に判明した解析

と試験結果との間の重要な相違を説明するため,適宜,設計解析を改訂しなければならない。この解析の

更新は,以下に述べるとおりに作成して,発注者の承認を受けなければならない。


15

W 0620-1987

5.4.1.1

解析の初期更新  5.2 に規定する設計解析は,5.2.135.3.7 に規定する設計開発試験と実物大構造

試験との結果が入手できたときに改訂しなければならない。この初期更新は,5.3.8 に規定する試験結果の

解釈及び評価のタスクによって要求される不具合の原因,是正処置,並びに製造時改修及び運用者改修を

明確にするために用いる。

5.4.1.2

解析の最終更新  損傷許容性及び耐久性の解析を初期更新したものは,5.4.3 に規定する基本運用

スペクトルを反映するように,更に改訂しなければならない。この更新した解析は,5.4.3.2 に規定すると

おり,最新の構造整備計画を作成するための基礎としなければならない。この解析では,構造整備計画の

一環として要求される損傷許容性及び耐久性に関する検査及び改修の要求事項,並びに推定経済寿命を設

定するために必要とする標定区域,損傷成長率及び損傷限界を明確にしなければならない。

5.4.1.3

検査及び修理基準の作成  検査及び修理基準を決定するための定量的方法を開発するために,適

切な解析(応力,損傷許容性,耐久性など)を用いなければならない。この解析によって設定した許容損

傷限界及び損傷成長率は,これを構造構成部品及び組立品に対する検査及び修理時期を設定するために用

いなければならない。これらの解析は,また,整備工場又は基地レベルで使用する詳細修理手順を設定す

るために用いなければならない。接着構造,ハニカム構造又は最新の複合材方式の構造を利用した構成部

品に対する損傷容認限界及び損傷成長率を定めることに特別の注意を払わなければならない。これらの検

査及び修理基準は,5.4.3 で規定するとおり,構造整備計画に組み入れなければならない。

5.4.2

強度概要書  受注者は,最終解析やその他の該当する構造のデータを要約し,重要構造の特性,制

限及び能力を運用パラメータの形で見やすい様式にまとめなければならない。この概要書は,飛行機の構

造上の制限及び能力を,速度,加速度,重心位置,総重量などの重要な運用パラメータの関数として,主

として図表の形で示すことが望ましい。この概要書には,やはりできるだけ図表形式で,各主要構造組立

品について,構造配置,材料,標定設計条件,損傷許容性及び耐久性の標定区域,並びに最小安全余裕を

示す簡単な説明を含めなければならない。

また,設計図面,詳細解析,試験報告書その他の補足文書に関する適切な引用を行わなければならない。

強度概要書は,発注者の承認を受けなければならない。

5.4.3

構造整備計画  受注者は,構造整備計画を作成し,検査及び改修の要求事項並びに機体の推定経済

寿命を明示しなければならない。完全な詳細情報(時期,場所,方法及び費用の各データのうち該当する

もの)を含めなければならない。この計画は,運用者が予算計画,運用部門構成計画及び整備計画を立案

するために用いるためのものである。この計画書は,発注者の承認を受けなければならない。

5.4.3.1

初期の構造整備計画  初期計画は,設計運用寿命,設計運用スペクトル,5.3.8 に規定する実物大

構造試験結果の解釈及び評価のタスク,

並びに 5.1.3 の規定によって要求される改善した標定部品一覧表に

基づくものでなければならない。

5.4.3.2

更新した構造整備計画  構造整備計画は,5.4.1.2 で規定するとおりに更新した最終解析を用いて,

基本運用スペクトルを含めるように更新しなければならない。計画の初回更新は,荷重及び環境スペクト

ル調査の初期段階で得たデータを利用した解析に基づかなければならない。荷重及び環境スペクトル調査

の継続中に決定した重要な変更を反映するために必要となることがある追加更新は,発注者と受注者との

間の別途交渉によって実施する。


16

W 0620-1987

5.4.4

荷重及び環境スペクトル調査  荷重及び環境スペクトル調査の目的は,機体の標定区域に対して実

際の応力スペクトルを定めるために必要なそれらのパラメータの時間履歴を得ることでなければならない。

運用飛行機の 10∼20%は,速度,加速度,高度,燃料使用量,温度,ひずみなどのパラメータを測定する

ために計装すると想定される。これらのデータは,5.5 に規定する運用管理業務の一環として運用者が収集

し,受注者は,これを,5.4.4.3 に規定するとおり,基本運用スペクトルを構成するために使用しなければ

ならない。データの取得は,運用初号機の引渡しと同時に始めなければならない。受注者は,提案要求に

応募する際に,計装する飛行機の機数及び監視するパラメータを提案しなければならない。プログラムの

明確化,費用の見積り及び日程の作成のために,調査期間は,3 年,又は無制限運用の全飛行記録時間が

設計寿命に等しくなる時間のどちらか早い方と仮定しなければならない。

また,受注者は,基本運用スペクトルの更新を要するような重要な運用の変更が起こる時期を予知する

ために用いる方法を提案しなければならない。もし,5.4.5 に規定する個々の飛行機の追跡プログラムによ

って,基本運用スペクトルの作成と重要な運用変更を見つけるために十分なデータが得られるならば,こ

こに述べる別個の調査計画(又はその継続)は要求しなくてもよい。プログラムの範囲(例えば,計装す

る飛行機の機数,監視するパラメータの個数と種類)は,契約仕様書で明確にする。

5.4.4.1

データ取得装置  受注者は,契約仕様書で規定するとおりに,この規格の要求事項に従って,機

能を果たす認定済みの計装及びデータ記録装置を選定しなければならない。受注者は,調査作業を達成す

るため,個々の計装及びデータ記録装置を選定し,この選定について発注者の承認を受け,必要な計装と

データ記録装置とを指定された飛行機に装備しなければならない。記録装置及び変換用多重化装置を選定

する場合には,

それぞれ MIL-R-83165 及び MIL-C-83166 の要求事項を満足するものでなければならない。

プログラム費用を軽減し,証明済みの動作能力を利用するために,既存の認定済みの計装及び記録装置を

使用するよう,あらゆる努力を払わなければならない。計装及び記録装置(予備を含む。

)の発注者支給品

とするか,又は受注者自給品とするかは,契約で指定しなければならない。

5.4.4.2

データ処理装置  受注者は,計算機解析方法が発注者のデータ解析システムと両立することを保

証するために,使用するデータ処理装置(書式変換を含む。

)について発注者と調整しなければならない。

量産初号機の引渡しに始まる 3 年間に収集したデータを処理するためには,受注者の設備及び要員を使用

すると想定される。ただし,書式変換,転写その他のデータ処理・解析機能で,発注者がその能力をもっ

ていて,それを使用することを承認したものはこの限りではない。

また、この調整事項には,データ処理装置を受注者から発注者の施設へ移管する計画(発注者の要員訓

練を含む。

)を含めなければならない。

5.4.4.3

データの解析及び基本運用スペクトルの開発  受注者は,設計と耐久性試験との荷重及び環境ス

ペクトルの適用性を評価し,

基本運用スペクトルを開発するために,

飛行データを用いなければならない。

統計的に適切な量のデータが記録されている場合には,5.4.1.2 で規定するとおりに,耐久性解析及び損傷

許容解析を更新するために,

基本運用スペクトルを用いなければならない。

基本運用スペクトルについて,

その後,改訂を要することがあるが,その場合には,発注者と受注者との間の別途交渉を必要とする。

5.4.5

個別飛行機追跡プログラム  個別飛行機追跡プログラムの目的は,MIL-A-83444  (JIS W 0621)  の

損傷成長限界,検査間隔及び経済的修理間隔の決定の根拠となる各機体の標定区域に潜在するきずの成長

を予測することでなければならない。データの取得は,運用初号機の引渡しと同時に始めなければならな

い。このプログラムには,発注者が構成部品の追跡を行えるように,主要構成部品(例えば,主翼,水平

及び垂直安定板,降着装置など)に一連番号を付与することを含めなければならない。受注者は,個々の

飛行機に対する個別飛行機追跡プログラムを提案して,発注者の検討及び承認を受けなければならない。


17

W 0620-1987

5.4.5.1

追跡解析方法  受注者は,個々の飛行機の運用データに基づいて機体の各標定区域に対する検査

及び修理間隔を設定し調整するために,個々の飛行機の追跡解析方法を開発しなければならない。この解

析方法を設定するために,損傷許容性及び耐久性解析並びに関連試験データを用いる。この解析は,き裂

の成長率,き裂が限界の大きさに達するまでの時間及びき裂の長さを,総飛行時間及び運用データの関数

として予測する能力を与える。計算機解析方法が発注者のデータ解析システムと両立することを保証する

ために,受注者は,この作業について発注者と調整しなければならない。個々の飛行機の追跡解析方法は,

発注者の承認を受けなければならない。

5.4.5.2

データ取得装置  受注者は,契約仕様書で規定するとおりに,この規格の要求事項に従って,機

能を果たす認定済みの計装及びデータ記録装置を選定しなければならない。記録装置は,可能な限り単純

で,しかも,5.4.5.1 に規定する解析方法を支援するために必要なパラメータを監視するための必要最小限

のものでなければならない。加速度頻度計,電気式又は機械式ひずみ記録計,電気抵抗ゲージ,単純化し

た手書きのデータ書式などを考慮しなければならない。受注者は,個々の飛行機の運用を追跡するため,

個々の計装及びデータ記録装置を選定し,その選定について発注者の承認を受け,必要な計装及びデータ

記録装置の装備を指定された機体に行わなければならない。計装及び記録装置(予備を含む。

)を発注者支

給品とするか,又は受注者自給品とするかは,契約で指定しなければならない。

5.5

運用管理(タスク 5)  タスク 5 は,各飛行機の損傷許容性及び耐久性を保証するために,運用者が

運用中に実施しなければならない活動を述べたものである。

タスク 5 は,

主として運用者の責任であって,

タスク 4 において受注者が供給したデータパッケージを利用して,運用部門が受注者の最少量の援助によ

って実施する。タスク 5 における受注者の責任は,契約仕様書で規定する。

5.5.1

荷重及び環境スペクトル調査  運用者は,荷重及び環境スペクトル調査の全般計画及び管理に対し

て責任を負い,次のことを行う。

(a)

運用者内でのデータ収集手順及びデータ伝送チャネルを設定すること。

(b)

容認できる品質データを取得することを保証するため,必要に応じ,飛行部門,基地及び整備工場レ

ベルの要員を訓練すること。

(c)

計装及び記録装置を整備し,修理すること。

(d)

受注者が結果を解析し,基本スペクトル(5.4.4.3 参照)を開発し,解析(5.4.1.2 参照)及び構造整備

計画(5.4.3.2 参照)を更新することができるように,データが容認できる品質のものであって,適時

に入手できることを保証すること。

運用者は,また,運用部門内で起こる各種の用途(訓練,観測,特殊用など)に対して調査データが得

られることを保証する責任を負う。運用者は,初期データ収集作業が完了した後,基本スペクトル及び構

造整備計画の追加更新を支援するために,調査用飛行機に搭載した計装及び記録装置の全部又は一部の運

用を継続するか否かを選択する。

5.5.2

個別飛行機追跡データ  運用者は,個別飛行機追跡データの収集作業の全般計画及び管理に対して

責任をもち,次のことを行う。

(a)

運用者内でのデータ収集手順及びデータ伝送チャネルを設定すること。

(b)

容認できる品質データを取得することを保証するため,必要に応じ,飛行部門,基地及び整備工場レ

ベルの要員を訓練すること。

(c)

計装及び記録装置を整備し,修理すること。

(d)

各飛行機の各標定区域に対して調整した整備時期を設定できるように,適切な時期にデータを取得し

て処理することを保証すること。


18

W 0620-1987

5.5.3

個別飛行機整備時期  運用者は,5.4.5.1 に規定する追跡解析方法と,5.5.2 に規定する個別飛行機

追跡データとを用いて,各飛行機の各標定区域に対し個々の整備(検査と修理)時期を設定する責任を負

う。その目的は,5.4.3 に規定する構造整備活動を個々の飛行機及びその各標定区域に対して実施しなけれ

ばならない時期を調整して決定することである。運用者は,構造整備計画及び個々の飛行機整備時期の要

求事項が利用できるならば,運用上の相違が構造整備間隔に及ぼす影響を考慮して選択した根拠に基づい

て,構造整備活動を計画することができる。

5.5.4

構造整備記録  運用部門は,個々の飛行機に対する構造整備記録(検査,修理,改修及び交換)を

維持する責任を負う。この記録には,すべての関連データ(期限付き技術指令による処置,構成部品の飛

行時間,構成部品及び飛行機の製造番号など)と共に,実施した構造整備活動の完全な一覧表を含めなけ

ればならない。

6.

注記

6.1

データ要求事項(削除)

6.2

体系工学管理との関係  該当する場合は,受注者が飛行機構造完全性を達成するために行う業務努

力は,飛行機に対する MIL-STD-499A による体系工学管理計画に含まれ,MIL-STD-882 によるシステム

安全計画と両立する。

付表  飛行機構造完全性プログラムのタスク

タスク 1

タスク 2

タスク 3

タスク 4

タスク 5

設計情報

設計解析及び

開発試験

実物大構造試験

運用管理

データパッケージ

運用管理

ASIP

基本計画

構造設計基準

損 傷 許 容 性 及 び 耐 久 性

管理計画

材料,工程及び結合方式

の選定

設 計 運 用 寿 命 及 び 設 計

運用

材料及び継手の許容値

荷重解析

設 計 運 用 荷 重 ス ペ ク ト

設計化学及び熱環境

スペクトル

応力解析

損傷許容解析

耐久性解析

音響解析

振動解析

フ ラ ッ タ 及 び ダ イ バ ー

ジェンス解析

設計開発試験

静強度試験

耐久性試験

損傷許容試験

飛 行 試 験 及 び 地 上 運 用

試験

音響試験

飛行振動試験

フラッタ試験

試 験 結 果 の 解 釈 及 び 評

最終解析

強度概要書

構造整備計画

荷 重 及 び 環 境 ス ペ ク ト

ル調査

個 別 飛 行 機 追 跡 プ ロ グ

ラム

荷 重 及 び 環 境 ス ペ ク ト

ル調査

個別飛行機追跡データ

個別飛行機整備時期

構造整備記録


19

W 0620-1987

付図 1  飛行機構造完全性プログラム

付図 2  飛行機構造完全性プログラム

付図 3  飛行機構造完全性プログラム


20

W 0620-1987

付図 4  試験結果の解釈及び評価(設計運用寿命及び設計運用に基づく)


21

W 0620-1987

航空規格原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

竹  中  規  雄

日本大学理工学部

(副委員長)

土  屋  武  二

横浜ゴム株式会社航空部品事業部

伊佐山  建  志

通商産業省機械情報産業局航空機武器課

横  溝  眞一郎

工業技術院標準部機械規格課運輸航空規格室

加  藤      晋

運輸省航空局技術部検査課

井  村      勇

海上保安庁警備救難部

瀬  倉  久  男

防衛庁装備局調達補給課

山  根  皓三郎

科学技術庁航空宇宙技術研究所機体第一部荷重研究室

横  田  友  宏

日本定期航空操縦士会

中  西  正  義

社団法人日本航空技術協会

白  浜  洋  海

日本航空株式会社技術部技術企画室

佐  治  康  雄

全日本空輸株式会社整備本部技術部技術管理課

内  田  憲  夫

東亜国内航空株式会社整備本部技術部

藤  嶋  敏  夫

航空規格調査会

(主査)

播  磨  克  彦

富士重工業株式会社航空機技術本部設計管理課

金  田  利  泰

三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所第二技術部

足  立  三  郎

川崎重工業株式会社航空事業本部航空機技術本部管理業務

宇  野  威  信

石川島播磨重工業株式会社航空エンジン事業部技術課

植  田  隆  之

住友精密工業株式会社第一技術部

田      隆  吉

三菱電機株式会社電子システム業務部

竹  内  誠一郎

株式会社東芝特定機器部

立  石      弘

株式会社島津製作所航空機器事業部第 1 工場第 1 技術課

(事務局)

番  匠  敦  彦

社団法人日本航空宇宙工業会

小  林  繁  雄

社団法人日本航空宇宙工業会