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日本工業規格

JIS

 W

0605

-1994

ヘリコプタの構造設計に対する要求

Structural design requirement, helicopters

1.

適用範囲

1.1

適用範囲  この規格は,ヘリコプタに対する静的,動的な構造設計の基準を定める。飛行,地上及

び操だ荷重,荷重分布及びこれに伴うあらゆる構成部分の応力に対する最小限の要求を定めてある。

備考1.  この規格の引用規格を,次に示す。

JIS W 0401

  ヘリコプタの飛行性

2.

この規格の中で{  }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,

参考として併記したものである。

参考  この規格の内容は,MIL-S-8698(1) (1958-2-28)  に相当する。

1.2

適用  この規格の要求は,すべてのヘリコプタに対して適用されるが,発注者の承認する変更はこ

の限りでない。

1.3

分類  この規格の目的のために,ヘリコプタを,次の種類に分ける。

クラス I

本来の使用目的が,次のものであるヘリコプタ

  救助,避難,連絡,多用途又は訓練

クラス II  使用目的が貨物輸送のヘリコプタであって 22 241.5N (5 000lbf) {2 268kgf}  以下の重量の

貨物の積載に対して設計されているヘリコプタ

クラス III  使用目的が貨物輸送のヘリコプタであって 22 241.5N (5 000lbf) {2 268kgf}  を超える重量

の貨物の積載に対して設計されているヘリコプタ

2.

適用文書

2.1

この規格の関連規格を参考のため,次に示す。

備考  これらの関連規格を使用するときは,最新版による。

仕様書 

  Military 

MIL-A-8806

  Sound Pressure Levels in Aircraft, General Specification for

MIL-D-7579

  Data, Development Airplane Engineering

MIL-H-8501A

  Helicopter Flying Qualities, Requirements for

MIL-T-8679

  Test Requirements, Ground, Helicopter

MIL-HDBK-5

  Metallic Materials and Elements for Aerospace Vehicle Structures

  Bureau of Aeronautics 

SR-6

  Contract Design Data Requirements for Aircraft and Aircraft Parts

SR-134

  The Requirements of Power Plant Vibration Isolator Installations for Naval Airplanes


2

W 0605-1994

出版物 

  Air Force-Navy-Civil Bulletins 

ANC-2

  Ground Loads

ANC-12

  Vibration and Flutter Prevention Handbook

  Air Research and Development Command 

ARDC

  Manual 80-1 Handbook of Instructions for Aircraft Designers

(一部省略)

2.2

他の出版物  次の文書は,この規格の一部を構成する。

NACA

  Technical Note 1604  Standard Symbols for Helicopter

NACA

  Report 474  Nomenclature for Aeronautics

NACA

  RM L 9 H 08  An Empirical Method for Estimating Trailing Edge Loads at Transonic Speed

3.

要求事項

3.1

一般

3.1.1

強度  つり上げ装置及び引上げ装置を含み,ヘリコプタの全構造は 3.に規定する荷重条件及び終極

安全係数による終極荷重まで破壊することなく耐えることができ,かつ,MIL-T-8679 の繰り返し荷重及び

耐久試験で破壊することなく持ちこたえることができなければならない。強度計算に用いる許容応力値は

できるだけ公の出版物から取られなければならない。

3.1.1.1

ヘリコプタに対しては,もし,十分な試料の試験が行われていれば,試験データに基づいた許容

応力を使用してもよい。立証するデータは,調達者に提出しなければならない。材料試験片だけの試験は,

十分な証拠とはみなされない。一般に試験には実際の構造のパネル及び組合せ部品を含まなければならな

い。

3.1.2

安全係数

3.1.2.1

降伏  最小降伏安全係数は 1.0 とする。ただし,海上機に対しては 1.15 とする。

3.1.2.2

終極  最小終極安全係数は,1.5 とする。

3.1.3

変形

3.1.3.1

相互作用  3.に規定された荷重条件及び安全係数に基づく制限,降伏及び終極荷重の大きさ及び

分布の決定には,対応する荷重に基づく構造の変形の影響を含まなければならない。

3.1.3.2

永久変形  ヘリコプタの構造は,3.に規定する降伏安全係数及び荷重条件に基づく降伏及び制限

荷重に対して,どの部分も空力的特性又は機械的作動に悪影響がなく,また,検査の際に発見される永久

変形がなく耐えなければならない。

3.1.3.3

ドア,カウリング,ロック及びファスナ  着陸装置の上げ,下げのロック及びカウリングのファ

スナを含む,ドア,カウリング,ロック及びファスナは,終極荷重までのすべての荷重でカバーの不慮の

開閉,脱落又は機構のロックやファスナが外れて,その本来の位置からずれることがあってはならない。

3.1.3.4

熱変形による荷重  3.に規定する荷重条件に基づく,内部荷重の大きさ及び分布の決定には,熱

による変形の影響を含まなければならない。−54∼+71℃  (−65∼+160°F)  の大気温度中のすべての範

囲での運用による変形は考慮されなければならない。

3.1.4

反力  3.に規定する設計条件に基づく荷重は,慣性力及び回転慣性力又は調達者が承認した安全側

の方法によって合理的につり合わなければならない。

3.1.5

総重量  この規格に略記する設計基準に対する総重量は,3.1.5.1 及び 3.1.5.2 の総重量とする。


3

W 0605-1994

また,それ以下の重量でも実際に危険となる所があれば,その重量としなければならない。

3.1.5.1

基礎設計総重量  3.の荷重及び荷重条件に対する基礎設計総重量は,細部仕様書で決められた本

来の使命を達成するために必要なすべての機内及び機外積載物を含んだヘリコプタの離陸総重量とする。

基礎設計総重量は,適用可能な飛行,着陸,離陸及び地上取扱いの条件に対して適用しなければならない。

3.1.5.2

設計代替総重量  3.の対称飛行状態の荷重及び荷重条件に対する設計代替総重量は,細部仕様書

に規定する総重量とする。荷重倍数は,基礎設計総重量に対して規定された荷重倍数に基礎設計総重量を

設計代替総重量で割った比を掛けたものとする。この場合荷重倍数は,2.0 以下であってはならない。この

代替総重量は,後に規定する着陸条件及び地上取扱いの条件に対しても適用する。

3.1.6

重量分布  3.の荷重及び荷重条件に対する重量の分布は,積載物と取付けを必要とする固定装備品

(又はこれらの物件の代わりに用いられるバラスト)のあらゆる不利な組合せで,基礎設計又は設計代替

総重量のうち大きい方の値までの任意の総重量でヘリコプタの運用の際,実用する分布としなければなら

ない。

3.1.7

重心位置  3.2 の荷重及び荷重条件で使用される重心位置は,最前方位置,最後方位置及びこの範

囲内で最も不利な負荷を生じる重心位置とする。これらの位置は,運用時のすべての総重量及びその分布

に対して求めなければならない。3.4 の荷重及び荷重条件に対して,各降着装置にとって最も不利な負荷と

なる前述の範囲内の重心位置を用いなければならない。

3.1.8

荷重分布  構造設計に用いる空気力,慣性力及び動的荷重の分布は,風胴試験,飛行試験,承認で

きる解析法及び適用できることが証明されている空気力データによって決定しなければならない。空気力

の分布には圧縮性と失速の影響を含んでいなければならない。

3.1.9

疲れ  繰返し応力の大きさを最小にし,材料及び細部設計は疲れ破壊の可能性を最小にするもので

なければならない。

3.1.10

荷重倍数  別に断らなければ,ここに示した荷重倍数は,ヘリコプタの重心での制限荷重倍数であ

る。ヘリコプタの設計には,次の荷重倍数を使用する。

クラス I

+3.5

−0.5

クラス II

+3.0

−0.5

クラス III

+2.5

−0.5

3.2

飛行及び離陸荷重条件

3.2.1

飛行荷重算定用数値

3.2.1.1

飛行速度  対気速度は,3.の飛行荷重条件に対して規定された速度及びヘリコプタの任意の部分

に最も不利な負荷となる。任意の低速又は中間の飛行速度としなければならない。圧縮性又はブレードの

失速の影響を含むこれらの場合に対し,設計速度は,調達者によって承認を受けなければならない。

3.2.1.2

高度  3.に規定する荷重条件の高度は,V

H

に対応する等価対気速度が最大となる高度,ロータブ

レードの先端が最大のマッハ数に達する高度及びロータブレードの失速の空気力学的性質の変化から限度

(臨界荷重,極端な振動など)となる。任意の中間の高度としなければならない。

3.2.1.3

操縦装置の動き  3.2 に規定する操だ力と操だ量については,次の時間を用いる。

クラス I

−  0.2s

クラス II

−  0.3s

クラス III

−  0.4s

必要があるときは,操縦系統に操だ量が規定された時間以内ではできないような特別な装置を作らなけ

ればならない。


4

W 0605-1994

3.2.2

対称飛行

3.2.2.1

最大速度  対気速度は,前方,後方及び横方向に V

D

とする。垂直荷重倍数は 1 とする。ロータ

速度は,次のようにしなければならない。

(a)

動力作動時の制限ロータ速度

(b)

動力作動時の設計最小ロータ速度

3.2.2.2

設計疲れ荷重  設計疲れ荷重は,承認を受けた疲れ設計荷重計画によらなければならない。ヘリ

コプタ及びその構成部品は,適用される仕様書によって指定される部分を除き,1 000h の最小疲れ寿命に

対して設計しなければならない。

3.2.2.3

対称の急降下及び引起こし  前進対気速度は V

D

及び 0.6V

H

とする。垂直荷重倍数は,それぞれ規

定された飛行速度に対し 3.1.10 に規定したとおりとする。ロータ速度は,次の速度とする。

(a)

動力作動時の制限ロータ速度

(b)

動力作動時の設計最小ロータ速度

縦揺れ加速度は 3.2.1.3 に規定する時間を超えない範囲で規定の荷重倍数になるように,直線的な操だを

行い,規定の荷重倍数の到達後,3.2.1.3 の規定時間を超えない範囲で水平飛行に必要な変位まで直線的な

かじのもどしによって生じたものとする。

3.2.3

非対称飛行

3.2.3.1

最大の操だ量での斜め引き起こし  前進対気速度は,V

D

及び最も不利な荷重を生じる任意の低い

速度とする。ロータ速度は,次のとおりとする。

(a)

動力作動時の制限ロータ速度

(b)

動力作動時の設計最小ロータ速度

横揺れ率は,3.2.1.3 に規定する時間を超えない範囲で,0.44kN (100lbf) {45kgf} の横方向操だ力を加え

た場合又は最大の横方向操だ量の場合のうち到達する最大値とする。垂直荷重倍数は,3.1.10 に規定する

正の荷重倍数の 0.8 倍及び 0 とする。最大の横揺れ率及び荷重倍数は同時に生じるものとする。方向の操

縦は,次のとおりとする。

(a)

中立位置で固定保持する。

(b)  3.2.1.3

に規定する時間を超えない範囲で回復の方向に最大の可能操だ量までとする。

3.2.3.2

片揺れ  対気速度は,V

D

及び前進飛行と横進飛行で,最も不利な横荷重を生じる速度とする。操

縦席内の方向操縦装置は,3.2.1.3 に規定する時間を超えない範囲でストッパによって制限される最大の移

動量[又は,定常的に加えられる 1.33kN (300lbf) {136kgf}  の方向操だ力で達し得る最大の移動量]まで動

かす。操だ量は,横滑りの最大角が生じるまで保持し,それから同じ操だ速度で中立位置までもどす。ロ

ータ速度は,動力作動時の制限ロータ速度とする。

3.2.4

自転飛行

3.2.4.1

対称の急降下及び引き起こし  前進対気速度は,最小降下率に対する速度及び V

D

とする。ロー

タ速度は,動力不作動時の制限ロータ速度及び動力不作動時の設計最小ロータ速度とする。各規定の対気

速度における対称引き起こしの際に生じる荷重倍数は,3.1.10 に規定するとおりとする。縦揺れ加速度は,

3.2.1.3

に規定する時間内のコレクチブピッチ制御及びサイクリックピッチ制御の直線的変移によって規定

の荷重倍数に到達し,規定の荷重倍数になった後,3.2.1.3 に規定する時間内で水平飛行に必要な位置まで

かじの直線的もどしによって生じるものとする。


5

W 0605-1994

3.2.4.2

片揺れ  前進対気速度は,動力不作動飛行中の V

D

及び動力不作動時最小降下率に対する前進速

度又は最も不利な横荷重を受ける中間速度とする。操縦席方向操縦装置は,ストッパで制限される最大移

動量まで[又は,定常的に加えられる 1.33kN (300lbf) {136kgf}  の方向操だ力で生じる最大移動量]3.2.1.3

に規定する時間内に動かすものとする。

操だ量は,最大角度の横滑りが起こるまでそのままに保ち,また,次に同じ操だ速度で中立に急激にも

どす。ロータ速度は動力不作動時の制限ロータ速度とする。

3.2.5

突風  対気速度は,前進飛行 V

H

とする。15.24

σ

-

0.5

m/s (50

σ

-

0.5

ft/sec)

の突風を受けるものとする。

突風軽減係数は,

図 より決定する。ロータ速度は,動力作動時に制限ロータ速度までのすべての速度と

する。

図 1  突風軽減係数

3.3

種々の荷重条件

3.3.1

ロータ加速度  ロータ加速度荷重は,動力装置のミリタリパワーで生じるトルクの 1.5 倍か,又は

伝達機構で任意の単一のロータに伝達できる最大のトルクの 1.5 倍のうち,大きい方を 0.1s 以内に加える

ことによって生じた加速度とする。飛行中の場合を除き,これらの荷重(ロータブレードがストッパに当

たって起こす慣性力をも含む。

)は,3 枚ブレード関節式ロータのうちの任意の 2 枚のブレード又は 4 枚,

5

枚ブレードの関節式ロータのうちの任意の 3 枚のブレードに分布させなければならない。抗力ヒンジを

備えないロータに対しては,これらの荷重はロータのすべてのブレードに等しく分布させなければならな

い。

3.3.2

ロータ制動荷重  ロータの制動によって伝えられる最大の制動トルクの 2.0 倍を適用して生じる荷

重を,ロータのすべてのブレードに等しく分布させなければならない。

3.3.3

遷音速でのブレード後縁の荷重  遷音速で翼形の後部 30%の後縁荷重は信頼できる方法で決定す

るか,NACA RM L 9 H 08 のデータに基づくか,又はこの節の方法によって求めなければならない。非圧

縮性流体に対する信頼できる解析法によって決定される空気荷重に加え,翼形の少なくとも後部 30%にわ

たる部分の正味の空気荷重の強さは,次の実験式の値に等しい等分布の“圧縮性の増分”を加えなければ

ならない。

2

1

35

.

0

2

5

.

0

V

M

M

r

C

ú

û

ù

ê

ë

é

ρ


6

W 0605-1994

ここで

M

Cr

は,取り上げた断面で,設計条件の迎え角のとき,最初に局部的に音速に到達するときの自

由流れのマッハ数である。この正味の空気荷重の強さの増分は,

0.6

以下のマッハ数に対しては適用しない。

2.0

以上の

M/M

Cr

の値に対し後縁の圧縮性の増分の値は,

0.35q

を超える必要はない。この条件が適用され

るロータブレード又はだ面の部分の基礎空気荷重に対する上記の経験的な荷重の割増しを行っても,ブレ

ード又はロータ上の正味の全空気荷重を増したり,また,航空機若しくはロータブレードの空力的つり合

いに影響する姿勢の変化を考えたりする必要はない。

3.4

地上荷重条件

3.4.1

構造への影響  3.4 に規定する着陸荷重は,ヘリコプタ全体の設計に適用する。非常着陸のときは

3.4.7

の規定を適用する。支持部材と,荷重伝達構造部に加わる慣性力は,要求されているすべての装備品

と積載物について検討しなればならない。タイヤ及びオレオは,基礎設計及び代替総重量のうち,最も不

利な運用時に製作者が定めた圧力並びに静的な伸びの状態で使用されていると仮定する。

3.4.1.1

降着装置の設計方針及び解析方法  ANC-2 の第 章及び第 章を適用する。

3.4.2

着陸荷重用数値  制限降下速度は,基礎設計総重量で

2.4m/s (8ft/sec)

とし,

2W/3

のロータ揚力が

あるものとする。又は,設計代替総重量で

1.8m/s (6ft/sec)

とし,

2W/3

のロータ揚力があるものとする。最

大許容地面反力は調達者が規定する。

3.4.3

着陸に対する降伏強さ(海上機のみに適用)  3.4.2 に規定した降下速度の

15

.

1

倍に等しい降下速

度で着陸において,降伏荷重倍数を超えてはならない。設計総重量の

1.15

倍の総重量で 3.4.2 に規定した

降下速度で着陸する場合に降伏荷重倍数を超えてはならない。降伏荷重倍数は 3.4 に規定する着陸では 4.5

を超える必要はない。

3.4.4

余裕エネルギーの要求  3.4.2 に規定する着陸重量のときの降下速度の制限値の

5

.

1

倍に等しい降

下速度で落下するときに,構造物の破壊が生じてはならない。

3.4.5

着陸  ANC-2 の第 章及び第 章の着陸荷重条件を適用する。ANC-2 の速度

V

SL

1.2V

SL

の代わ

りに,接地速度は進入に続く引き起こし中 3.4.2 で決めた降下速度での自転着陸時の最大前進速度とする。

3.4.5.1

主脚障害荷重  ANC-2 の第 章に規定する。前輪及び後輪形の横滑り着陸

 (drifting landing)

の代

わりに次のとおりとする。補助脚がわずか地面から離れた状態で,主脚は同時に地面に接する。前進速度

は,

0

とする。地面力の垂直成分は規定の降下速度及びロータ揚力での接地に基づく反力とする。各車輪

個々については,最大垂直地面反力の

2

1

に等しいが,

1.0W

を超えない荷重が,前方,後方,内方及び外方

に,それぞれ垂直荷重と組み合わさって,各車輪にそれぞれ独立して加わるものとする。他の車輪の横荷

重は,

0

とする。

旋回車輪

 (Swiveled Wheel)

は,横荷重によってその方向に旋回しているものとする。海上機のヘリコプ

タでは,旋回車輪は中正位置で,固定されている場合についても行う。

3.4.5.2

補助脚の障害荷重  補助脚は,主脚がわずか地面から離れた状態で同時に地面に接する。前進速

度は

0

とする。地面反力の垂直成分は,規定の降下速度及びロータ揚力での接地に基づく反力とする。各

車輪における最大垂直地面反力の

10

7

に等しいが,

1.0W

を超えない荷重が前方,後方,内方及び外方にそ

れぞれ垂直荷重と組み合わさって,各車輪にそれぞれ独立して加わるものとする。他の車輪の横荷重は

0

とする。旋回車輪は,横荷重によってその方向に旋回しているものとする。海上機のヘリコプタでは,旋

回車輪は中正位置で固定されている場合についても行う。

3.4.5.3

頭下げ着陸  ヘリコプタは,あとの着陸装置がわずか地面から離れた状態で前の着陸装置で地面

に接する。前進速度は,

0

とする。地面反力の垂直成分は,規定の降下速度及びロータの揚力での接地に

基づく反力とする。


7

W 0605-1994

3.4.5.4

尾部下げ着陸  ヘリコプタは,前の着陸装置がわずか地面から離れた状態で,後の着陸装置で地

面に接する。前進速度は,

0

とする。地面反力の垂直成分は,規定の降下速度及びロータの揚力での接地

に基づく反力とする。

3.4.6

滑走及び地上の取扱い  ANC-2 の第 章及び第 章を適用する。ANC-2 の要求事項に用いる重量

は,3.1.5.1 又は 3.1.5.2 の重量のうちいずれか大きい方とする。

3.4.6.1

固縛  (この節は,艦船積載用ヘリコプタのみに対して適用する。陸上基地用ヘリコプタは,

ANC-2

の係留の要求によって設計しなければならない。

)次の条件に対して,ロータブレードは胴体ある

いは地面か甲板に固縛してあるものとする。

(a)

ヘリコプタは,水平な地面又は甲板に固縛してあるものとする。荷重は,ヘリコプタの重量及び任意

の水平方向から吹く

51.4m/s (100kt)

の風によるものとする。つり合いの力は合理的に,かつ,安全側

に見積もって固定点に振り分けなければならない。

(b)

ヘリコプタは,水平から

45

度傾いた船の甲板に固縛してあるものとする。ヘリコプタの重心に作用す

る甲板に平行な横荷重は

1.0W

とする。ヘリコプタの重心に作用する甲板に垂直な荷重は,

1.0W

及び

0.4W

とする。つり合いの力は合理的,かつ,安全側に見積もって着陸装置と固定点に振り分けなけれ

ばならない。

3.4.6.2

風による荷重  ヘリコプタは,水平な地面又は甲板の上でロータが地上運転のフラッピング臨界

速度で回転しているものとする。空力的な荷重は,艦船積載用のヘリコプタに対しては任意の水平方向か

ら吹く

30.9m/s (60kt)

の風及び陸上基地用ヘリコプタに対しては

20.6m/s (40kt)

の風が生じる荷重とする。

ロータブレードのフラッピングによる慣性荷重は,空気力学的荷重と組み合わさなければならない。

3.4.6.3

取扱い  持上げ荷重は,ANC-2 の荷重とする。つり揚げ荷重は,ANC-2 の荷重とするが,荷重

倍数を

2.0

とする。つり揚げの場合は,ロータは広げられた位置と折り畳みの位置の双方とし,ロータが

折り畳まれたとき,固縛支柱は規定どおりに装着してあるものとする。

3.4.7

非常着陸  座席の取付けや発動機,トランスミッション,装備品及び貨物(

2

1

の燃料が入った燃料

タンクを含む。

)の取付け及びこれらの荷重伝達構造は,その破壊によって人員に害を加えないように十分

な強さを持っていなければならない。終極慣性荷重倍数は,調達者が規定する荷重倍数とする。

3.5

操縦系統の荷重  操縦者によって加えられる荷重のかかる点とスオッシュブレート,ロータブレー

ドのピッチ制御面アーム又は制御面ホーンとの間の操縦系統及びすべての非可逆的な機構は,この節の操

縦者によって加えられた(制限)荷重又はロータブレードによって加えられた荷重のいずれか大きい方に

基づく荷重を受けるものとする。これらの荷重は,その移動限界内のすべての位置において操縦席内の当

該の操縦で生じるものとする。スオッシュブレート又はすべての非可逆機構と,ロータブレードピッチ制

御ホーンとの間の定常及び振動荷重は合理的であるか又は安全側になるような解析によって決定しなけれ

ばならない。荷重に対する反力は,次の点で生じるものとする。

(a)

操縦系統のストッパだけ。

(b)

操縦系統固縛装置だけ。

(c)

だ面の移動限界内のすべての位置において,だ面と非可逆機構を固縛した状態の非可逆機構だけ。

(d)

移動限界内の制御ホーン位置で,ロータブレードピッチ制御ホーンへの操縦系統の取付け金具だけに

よる。

(e)

操縦系統の移動限界内のすべての位置において,だ面制御ホーンへの操縦系統の取付け金具による。


8

W 0605-1994

3.5.1

操縦かん又は操縦輪

0.89N (200lbf) {91kgf}

の力を水平から上下

30

°内のすべての角度で前後方

向に操縦かんの握りの最上部に加える。横方向の操縦かんの動きについては,

0.44kN (100lbf) {45kgf}

力を操縦かんの握りの最上部に加える。操縦輪の場合は,二つの

0.44kN (100lbf) {45kgf}

の力を操縦輪の

リム上で直径の両端の

2

点で前後方向に加える。操縦輪の円周上のすべての一点で

0.35kN (80lbf) {36kgf}

の単一の力を前後方向に加える。直径の両端の

2

点で,

2

個の大きさ等しく方向反対の

0.35kN (80lbf)

{36kgf}

の力からなる操縦輪の面内の偶力を加える。

3.5.2

足で操作する方向操縦装置

1.33kN (300lbf) {136kgf}

の力をペダルの足の接する点に加える。

3.5.3

手動クランク又は手動輪の操作装置

203mm (8in)

又はそれ以上の半径に対し

0.67kN (150lbf)

{68kgf}

51mm (2in)

又はそれ以下の半径に対し

0.23kN (50lbf) {23kgf}

,その間,半径に比例して変わる接

線方向の力をクランク又は操縦輪の回転面より

30

°(度)以内のすべての方向から加える。

3.5.4

ねじりによる制御装置  手のねじりによる動作を必要とする制御装置については

223RNmm

(50Rin

lbf) {22.7Rkgf

mm}

に等しいトルクを制御装置に加える[

R

は握り又はハンドルの半径で

mm (in)

で表す]

3.5.5

コレクチブピッチ制御装置

0.67kN (150lbf) {68kgf}

の力を制御装置の動きの面に対し,±

30

°で,

制御装置の運動のどちらかの方向に制御装置のハンドルに加える。

3.5.6

系統内の荷重の分布  操縦者によって加えられた荷重に対する反力が操縦系統の

2

部分に分かれ

る所では,各部分はそれぞれ片方で

100%

の全反力を支えるものとする。

3.5.7

二重操縦系統  二重の操縦系統の場合には,操縦系統の荷重はそれぞれの系統に,他の系統を切り

離して,

100%

が加わるものとする。

3.5.8

複操縦装置  複操縦装置を備えたヘリコプタにおいては,操縦者によって加えられる荷重の

75%

が同時に加わるものとする。

3.5.9

機力操縦系統  機力操縦系統を備えたヘリコプタにおいては,操縦系統はその系統で,操縦者の加

える荷重と機力による荷重とが同時に加わる所は,これらを組み合わせた荷重に耐えなければならない。

3.6

機械的不安定性,フラッタ,振動

3.6.1

不快な振動の程度  主ロータの誘起する胴体及び操縦かんの振動の程度が MIL-H8501 A

  (

JIS W 

0401

)

に規定された限界を超えないようにヘリコプタを設計しなければならない。

3.6.2

フラッタ  ヘリコプタは,設計制限速度の

1.15

倍までの速度でフラッタやダイバージェンスを生

じてはならない。ロータブレードとこれに取り付けられただ面は,動力の有無にかかわらず設計制限ロー

タ速度の

1.25

倍までのロータ速度でフラッタやダイバージェンスを生じてはならない。

3.6.3

機械的不安定性  ヘリコプタは,契約によって規定された重量の全範囲にわたり,また,温度の上

下限内で,装着する着陸装置の形式にかかわらず,あらゆるロータ速度及び運用状態(着陸,離陸,滑走

及び飛行)で機械的な不安定性を生じてはならない。

3.6.3.1

解析方法  ロータの使用速度範囲で生じる不安定性領域及びこの領域を除去するのに必要な減

衰を求める解析には,合理的な方法を用いてよい。

3.6.3.2

固定ブレード  機械的不安定性の解析によって不安定速度領域の下限が主ロータの最大速度以

上であることを示さなければならない。

3.6.3.3

ヒンジ結合ブレード  ブレードが抗ヒンジによって主ロータハブに取り付けられている形状で

は,機械的不安定性を除くために,3.6.3.1 の解析によって決定される十分な減衰容量を持つ減衰装置を備

えなければならない。


9

W 0605-1994

3.6.3.3.1

ブレードのダンパ  摩擦形のダンパを除き,ダンパは線速度及び角速度にそれぞれ少なくとも

比例する力,又は,トルクを生じなければならない。もし,リリーフバルブを備えるならば,規定の地上

回転上昇試験

  (ground rev-up test)

の全範囲にわたり,バルブはダンパによって生じる力,又はトルクに影

響してはならない。摩擦ダンパだけを使用するときは,機械的不安定性の点から危険なあらゆる振動形態

におけるハブの有効ダンピングは限界減衰力の少なくとも

30%

でなければならない。

3.6.4

発動機,伝導軸及びロータの振動  ヘリコプタの運用範囲において,取り付けられた発動機−伝導

軸ロータ系統に顕著な共振(危険速度又はフライホイール形の共振)があってはならない。アイドルロー

タ速度から最大ロータ速度までヘリコプタの胴体モードを含むフライホイール形の共振があってはならな

い。

3.6.5

振動防止装置

3.6.5.1

一般  適当な振動防止装置を MIL-H-8501 A

 (

JIS W 0401

)

の振動特性の項に適合するように装着

しなければならない。

3.6.5.2

振動の絶縁及び吸収の機構  往復動発動機の取付けに対しては,適当な振動絶縁機構を備えなけ

ればならない。ロータ動力源の系統が一体になって取り付けられるヘリコプタの場合は,ヘリコプタに取

り付けるロータ動力源系統の固有振動数は,それがヘリコプタに取り付けられたとき,最小の飛行運用ロ

ータ速度の

70%

を超えてはならない。

普通の往復動発動機装備の場合には,ヘリコプタに付けられた状態で発動機の固有振動数は,クランク

軸線回りの回転運動形では最小の飛行運用発動機回転数の

35%

を超えてはならないし,また,すべての他

の振動形では,最小運用発動機回転数の

70%

を超えてはならない。

上記の装備法のいずれにおいても,取り付けたロータ動力源系統又は動力装置の共振が,ロータ又は発

動機のアイドル回転数の±

10%

以内で生じてはならない。

3.6.5.2.1

ターボジェット発動機の装置  振動防止装置を用いるときは,その性能,特性については,調

達者の認可を受けなければならない(一部省略)

3.6.5.2.2

受注者の責任  (内容省略)

3.6.5.2.3

強度と耐久性の要求  (内容省略)

3.6.5.2.4

種々の設計要求

3.6.5.2.4.1

振動絶縁機構には,運動を制限するストッパ又はブレーキを備え,動力源やロータの過度の

移動を防がなければならない。すなわち,動力源及びロータの相対運動量を動力源,ロータ及びヘリコプ

タ構造の間の動力操作系統,

ロータ操作系統及びその他の連結部分の許容範囲に制限しなければならない。

3.6.5.2.4.2

絶縁弾性材あるいは結合材が破壊した場合,動力源やロータがヘリコプタから完全に分離し

てしまうのを防止する方法を講じておかなければならない。この破壊のときには動力源の移動で燃料系統

やオイル系統を破壊したり,

又はロータブレードでヘリコプタのどんな部分をも打ったりしてはならない。

3.6.5.2.4.3

電気的な結合に対する設計の基準及び振動絶縁系統に必要なすきまは,適用できる限り,

ARDC

 manual 80-1

又は SR-134 に含まれた内容によらなければならない。


10

W 0605-1994

3.6.5.3

ロータブレードの間げき  ロータ系統は,ヘリコプタに取り付けられたときに,地面,ロータ相

互の間,ヘリコプタの他の部分などに対し,十分な間げきがあるように設計しなければならない。一般に,

ブレードの長さ,柔軟性及び間接部のために,運用中の間げきは静止のときの状態とは異なる。あらゆる

飛行形態における運用中,主ロータブレードとヘリコプタの他の部分との間の間げきは

304mm (12in)

が望

ましいが

229mm (9in)

以下であってはならない。同軸,シンクロプター,タンデム及び横に並べた多ロー

タ配置において,隣接したロータの主ブレードの間げきは運用中

152mm (6in)

以下であってはならない。

補助ロータブレードとヘリコプタの他の部分との間げきは

152mm (6in)

以下であってはならない。

また,隣接補助ロータ間の間げきはあらゆる運用条件のもとで

102mm (4in)

以下であってはならない。

ロータの設計は,ブレードが互いに打ち合ったり,ヘリコプタの任意部分のあたる可能性を無くするよう

にしなければならない。ロータが回転中に乗員が回転面に立ち入ることなく安全に航空機に出入できるよ

う十分な間げきがなければならない。

3.6.6

騒音基準  騒音の基準と絶縁の要求は,MIL-A-8806 A による。

3.7

資料の提出  (内容省略)

4.

品質保証の規定  (内容省略)

5.

引渡し準備  (内容省略)

6.

注解

6.1

使用の目的  (内容省略)

6.2

不用となっている資料  (内容省略)

6.3

定義及び記号  この規格に用いられた記号及び表示の定義を以下に示す。

6.3.1

等価対気速度 V

e

  (内容省略)

6.3.2

真対気速度 V  (内容省略)

6.3.3

ロータ回転面の面積 A  ロータブレード先端による弧状の動きの投影によって囲まれた面積,多ロ

ータをもってヘリコプタの重複部分の面積は,回転面の面積に含まれない。

6.3.4

自転  (内容省略)

6.3.5

最悪条件  (内容省略)

6.3.6

相対密度

σ

  海面上の空気密度に対する任意空気密度の比。

σ

ρ/ρ

0

6.3.7

急降下  高度を減少すると同時に前方向,横方向又は後方向の速度を増大させるために実施する操

縦。

6.3.8

機外積載物  (内容省略)

6.3.9

突風軽減係数 K  規定された突風速度に等価シャープエッジ突風を求めるために乗じる係数。

6.3.10

終極安全係数  (内容省略)

6.3.11

降伏安全係数  (内容省略)

6.3.12

制限  (内容省略)

6.3.13

荷重倍数 n  (内容省略)

6.3.14

制限荷重倍数  (内容省略)

6.3.15

設計降伏点荷重  (内容省略)


11

W 0605-1994

6.3.16

破壊荷重  (内容省略)

6.3.17

疲れ荷重  (内容省略)

6.3.18

制限荷重  (内容省略)

6.3.19

保証荷重  (内容省略)

6.3.20

終極荷重  (内容省略)

6.3.21

降伏強さ荷重  (内容省略)

6.3.22

最後方(前方)の重心  (内容省略)

6.3.23

安全最大  (内容省略)

6.3.24

通常飛行  ヘリコプタの通常飛行とは,次の内容から成るものとする。

(a)

離陸,ホバリング及び着陸。

(b)

次の制限のもとで通常の姿勢の飛行。

(1)

任意の高度での速度では,正規出力を使用してその高度において得られる。定常水平飛行の最大速

度を超えてはならない。

(2)

加速度は

1.5g

g

は,重力加速度)を超えてはならない。

(3)

パンク角は,

30

°を超えてはならない。

(4)

飛行の操縦装置を急激に動かしてはならない。

6.3.25

動力作動時設計最小ロータ速度  基礎設計総重量での動力作動飛行において達し得る最小実用ロ

ータ速度。

6.3.26

動力作動時設計最大ロータ速度  ミリタリパワー又はスラストを用いて,達し得る最大の速度。

6.3.27

動力作動時制限ロータ速度  動力作動時の設計最大ロータ速度に係数

1.25

を乗じた値。

6.3.28

動力不作動時設計最小ロータ速度  基礎設計総重量での自転飛行において達し得る最小実用ロー

タ速度。

6.3.29

動力不作動時設計最大ロータ速度  出力又はスラストが

0

となっている場合,飛行速度

V

D

の前進

飛行で達し得る最大ロータ速度。

6.3.30

動力不作動時制限ロータ速度  動力不作動時設計最大ロータ速度に係数

1.25

を乗じた値。

6.3.31

速度  ここに規定された速度

σ

V

として定義された等価対気速度。

6.3.32

設計最大水平飛行速度 V

H

  前方,後方及び横方向の飛行における設計最大水平飛行速度は,ミリ

タリパワー又はスラストを用いて,基礎設計総重量での水平飛行中に達し得る最大速度又はブレードの失

速や圧縮性の影響で制限される最大速度である。

6.3.33

制限急降下速度 V

D

  クラス

I

のヘリコプタでは係数

1.20

,クラス

II

及び

III

のヘリコプタでは

1.15

の係数を速度

V

H

に乗じた速度。


12

W 0605-1994

航空部会  ヘリコプタ専門委員会  構成表(昭和 44 年 8 月 1 日改正のとき)

氏名

所属

(委員会長)

池  田      健

東京大学航空研究所

江  口  幸  男

全日本空輸株式会社整備工場

大  沼  康  二

新明和工業株式会社

金  田  安  雄

富士重工業株式会社

黒  岩      信

三菱重工業株式会社名古屋航空機製作所

早乙女  増  雄

昭和飛行機工業株式会社

高  橋  忠  男

川崎航空機工業株式会社

林      武  治

日本航空工業会

上  山  忠  夫

航空宇宙技術研究所

村  上  正  武

警視庁装務部

松  川  安  一

工業技術院標準部

(専門委員)

相  原      守

工業技術院標準部

(事務局)

木  内  貞  夫

工業技術院標準部機械規格課

種  橋  誠  治

工業技術院標準部機械規格課

(事務局)

矢  島  武  憲

工業技術院標準部機械規格課(昭和 51 年 2 月 1 日改正のとき)

(事務局)

笹  尾  照  夫

工業技術院標準部機械規格課(平成 6 年 7 月 1 日改正のとき)