2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 9220-1992
能動ひじ(肘)ヒンジ継手
Outside locking elbow hinge units
1. 適用範囲 この規格は,ロック付きヒンジ継手と自由ヒンジ継手を一組とする,成人用能動ひじ(肘)
ヒンジ継手(以下,ひじヒンジ継手という。)について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 0205 メートル並目ねじ
JIS B 0207 メートル細目ねじ
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,
参考として併記したものである。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
なお,ひじヒンジ継手の部品名称は,付図1による。
(1) ロック装置 ひじ継手をある屈曲角度で固定する装置。
(2) ロックケーブル ロック装置を作動してロック及びロック解除を行うケーブル。
(3) ロック付きヒンジ継手 ロック装置の付いたひじヒンジ継手。
(4) 自由ヒンジ継手 ロック装置のないひじヒンジ継手。
(5) 上腕取付け部 義手上腕部とひじヒンジ継手との結合部分。
(6) 上腕取付け補助板 上腕部に対するひじヒンジ継手の取付け強度を増すための延長部。
(7) 前腕取付け部 ひじヒンジ継手と義手前腕部との結合部分。
(8) 無段階ロック式 ひじの屈曲角度を,全可動範囲にわたって任意の位置でロックできる方式。
(9) 段階ロック式 ひじの屈曲角度を,全可動範囲で一定の角度ごとにロックできる方式。
3. 種類及び記号 種類及び記号は,表1のとおりとする。
表1
種類
構造
単軸
多軸
無段階ロック式
FSH
FPH
段階ロック式
ASH
APH
4. 性能
4.1
一般条件 一般条件は,次のとおりとする。
(1) ひじヒンジ継手は,最小屈曲角を5度以上とし,継手回りを滑らかに125度以上の範囲で前腕取付け
部を屈曲できること。
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T 9220-1992
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(2) 段階固定式のものは,全可動範囲にわたって5段階以上の固定位置をもつこと。
(3) ロック装置の操作は,ロックケーブルの引きと戻しによって滑らかに行うことができ,かつ,ロック
とロック解除を交互に行うこと。
(4) ロック装置の操作に必要なロックケーブルの張力及びケーブル移動距離は,表2による。
表2
ロック解除に要する力
N {kgf}
無負荷時
5〜20 {0.5〜2.0}
負荷時
5〜35 {0.5〜3.5}
ロック及びロック解除に要するケーブル移動距離
mm
1.5〜10
ロック時の継手部の遊
び量 mm
伸展方向
5以下
左右方向
7以下
(5) ロック装置は,手先部操作時にロックが外れない構造であること。
4.2
静的強度 ひじヒンジ継手は,9.2によって試験したとき,大きな遊び(がた),永久変形,破損,
動作不良などの著しい異常があってはならない。
4.3
耐久性 耐久性は,次のとおりとする。
(1) 9.3によって試験したとき,大きな遊び(がた),永久変形,破損,動作不良,異常音などの著しい異
常がなく,表2を満足しなければならない。
(2) 9.3によって試験した後,9.2.3によって試験したとき,ロックが外れてはならない。
5. 形状及び寸法
5.1
ひじヒンジ継手の形状・寸法 ひじヒンジ継手の形状及び寸法は,図1のとおりとする。
図1
(1) 最大厚さ (l1) は,ロック付きヒンジ継手で16mm以下,自由ヒンジ継手で10mm以下でなければなら
ない。
(2) 上腕取付け部の長さ (l2) (1)は,160mm以上とする。
(3) 前腕取付け部の長さ (l3) (1)は,130mm以上とする。
(4) 上腕取付け補助板の長さ (l4) (2)は,60〜100mmの範囲内とする。
注(1) 多軸の場合,l2は中枢端の継手軸中心から計算し,l3は末端の継手軸中心から計測する。
(2) 上腕取付け部の構造によっては,上腕取付け補助板を用いなくてもよい。
5.2
質量 ひじヒンジ継手の質量は,400gを超えてはならない。
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6. 外観 外観は,次のとおりとする。
(1) 人体に触れる部分には,鋭い突起又は角があってはならない。
(2) 金属材料の表面に,きず,さび及び汚れがあってはならない。
7. 材料 材料は,人体に対して無害であって,不快な臭気がなく,また,耐食性,耐湿性及び耐候性が
なければならない。
(1) ねじ ねじは,原則としてJIS B 0205に規定するメートル並目ねじ及びJIS B 0207に規定するメート
ル細目ねじを用いなければならない。
(2) その他の材料 金属材料,プラスチック,ゴム,ベルトなどの材料は,使用箇所に耐えるものでなけ
ればならない。
8. 試験場所の状態 試験場所の状態は,温度状態20±10℃及び湿度状態 (65±30) %の室内とする。
9. 試験方法
9.1
試料の組立て ひじヒンジ継手の上腕取付け部と前腕取付け部にそれぞれ金属ブロックを挟んで組
み立てる。
(1) ロック付きヒンジ継手と自由ヒンジ継手が平行で,かつ,軸中心が一致していること。
(2) 継手軸間の距離は,55mmとする。
9.2
静的強度試験
9.2.1
圧縮強度試験 前腕取付け部を最小屈曲角θでロックし,上腕取付け部が垂直になるような取付け
ジグを水平な台に置き,上腕取付け部の中心軸方向に900N {90kgf} の圧縮力を加え試験する(図2参照)。
9.2.2
引張強度試験 前腕取付け部を最小屈曲角θでロックし,上腕取付け部が垂直になるように取付け
ジグを固定し,上腕取付け部の中心軸方向に900N {90kgf} の引張力を加え試験する(図3参照)。
4
T 9220-1992
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図2
図3
9.2.3
ロック装置強度試験 上腕取付け部が垂直になるように取付けジグを固定し,前腕取付け部を90
度に最も近い位置でロックしたひじヒンジ継手の継手軸(3)中心から300mm離れた部位に200N {20kgf} の
負荷を下向きに加え試験する(図4参照)。
注(3) 多軸の場合,末端の継手軸
図4
5
T 9220-1992
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9.3
耐久試験 ひじヒンジ継手の屈曲伸展及びロック・ロック解除を交互に繰り返すことのできる試験
装置を用いて継手軸ロック装置の耐久性を調べる。装置の一例を図5に示す。
図5
試験は,次のとおりとする。
(1) 継手軸(3)の負荷が0.7N・m {0.07kgf・m} になるようにおもりをしっかり固定する。
(2) ロック装置を解除した状態で前腕取付け部を持ち上げ,上腕部と前腕部のなす角度が85度になるまで
ひじを屈曲させる。ロックケーブルの引きと戻しを1回行う。次に,前腕取付け部を離し,ひじを90
度屈曲位に最も近い角度でロックさせる。ロックケーブルの引きと戻しをもう1回行いロックを解除
し,ひじを重力によって伸展させ,元の状態に戻す。この一連の動作を1サイクルとする。
(3) 繰返し周期は,2〜3秒 (0.3〜0.5Hz) とする。
(4) 5万回ごとに,ひじヒンジ継手の回転軸などの機構部に注油する。
(5) 繰返し試験数は,30万回とする。
(6) 試験後に,表3に示した測定を行う。
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表3
測定項目
測定方法
ロックに要する力
ロックケーブルを毎秒5mmの速度で引き上げ,ロック及びロック解除時に必要な力の
ピーク値を読み取る。5回行って平均値を求める。
無負荷時にロック解除に
要する力
負荷時にロック解除に要
する力
0.7N・m {0.07kgf・m} の伸展方向の負荷を継手軸(3)に作用し,ロックケーブルを毎秒5
mmの速度で引き上げ,ロック解除に必要な力のピーク値を読み取る。5回行って平均
値を求める。
ロック及びロック解除に
要するケーブル移動距離
ロック及びロック解除時の,各々のケーブル引出し量を測定する。5回行って平均値を
求める。
ロック時の
継手部の遊
び量
屈伸方向
90度屈曲位に最も近い位置でロックしたひじヒンジ継手の継手軸(3)に,3N・m {0.3kgf・
m} の負荷を屈伸方向へ作用し,継手軸(3)から300mm末端の部位で変位を測定する。各
方向5回行って平均値を求め,両者の和を遊び量とする。
左右方向
90度屈曲位に最も近い位置でロックしたひじヒンジ継手の継手軸(3)に,3N・m {0.3kgf・
m} の負荷を左右方向へ作用し,継手軸(3)から300mm末端の部位で変位を測定する。各
方向5回行って平均値を求め,両者の和を遊び量とする。
10. 検査方法
10.1 抜取検査 抜取検査は,性能及び形状・寸法について5.及び9.によって行い,4.及び5.の規定に適合
しなければならない。
なお,この場合の抜取方法は,受渡当事者間の協定による。
10.2 全数検査 全数検査は外観について目視によって行い,6.の規定に適合しなければならない。
11. 包装 防水効果及び防食効果のあるものとし,運搬中及び保存中に損傷しないように包装を行わなけ
ればならない。
また,次の事項を記入し表示を入れなければならない。
(1) 規格の名称
(2) 種類
(3) 寸法(最大厚さ,上腕及び前腕取付け部の長さ,上腕取付け補助板の長さ)
(4) 左右の別
(5) 上腕及び前腕取付け部の結合方法
(6) JIS B 0205に規定するメートル並目ねじ及びJIS B 0207に規定するメートル細目ねじ以外のねじ部品
を用いた場合は,ねじの径とピッチ
(7) 製造年月又はその略号
(8) 製造業者名又はその略号
12. 製品の呼び方 製品の呼び方は,規格の名称,種類,寸法及び左右の別による。
13. 表示 ひじヒンジ継手には,見やすい箇所に,容易に消えない方法で次の事項を表示しなければなら
ない。
(1) 製造年月又はその略号
(2) 製造業者名又はその略号
7
T 9220-1992
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
関連規格 JIS T 0101 福祉関連機器用語[義肢・装具部門]
付図1 ひじヒンジ継手の部品名称
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JIS原案作成委員会 構成表(昭和62年3月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員長)
加倉井 周 一
東京都補装具研究所
青 山 孝
労働福祉事業団労災リハビリテーション工学センター
秋 山 昌 英
株式会社小原工業所
朝 倉 健太郎
東京大学工学部
川 村 一 郎
株式会社パシフィックサプライ
久 保 茂
東京都補装具研究所
佐 藤 政 義
有限会社佐藤製作所
鈴 木 祥 生
労働福祉事業団労災リハビリテーション工学センター
鋤 園 栄 一
日本義肢装具技術者協会
数 藤 康 雄
国立身体障害者リハビリテーションセンター
田 沢 宗 吉
社団法人日本義肢協会
中 島 咲 哉
兵庫県リハビリテーションセンター附属中央病院
浜 田 哲 夫
株式会社啓愛義肢装具材料販売所
河 野 康 徳
厚生省社会局
松 本 邦 宏
労働省労働基準局
田 中 明 夫
厚生団
太 田 健一郎
工業技術院標準部
中 田 哲 雄
通商産業省機械情報産業局
矢 野 秀 昭
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所