2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 9218-1992
能動ハンド
Voluntary opening hands
1. 適用範囲 この規格は,成人用随意開き式能動ハンド(以下,ハンドという。)について規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 0205 メートル並目ねじ
JIS B 0207 メートル細目ねじ
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって参
考として併記したものである。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
なお,ハンドの部品名称は,付図1による。
(1) 母指可動型 コントロールリードを引いたとき,母指だけが開き動作をするハンド。
(2) 2指可動型 コントロールリードを引いたとき,示指及び中指が開き動作をするハンド。
(3) 3指可動型 コントロールリードを引いたとき,母指,示指及び中指が開き動作をするハンド。
(4) 多指可動型 コントロールリードを引いたとき,母指を除く4指又は5指が開き動作をするハンド。
(5) コントロールリードの可動距離 可動指を閉じた状態から最大開きまでに要するコントロールリード
の引張長さ。
3. 種類及び記号 種類及び記号は,表1のとおりとする。
表1
種類
記号
備考
母指可動型
M
付図2(1)参照
2指可動型
D
−
3指可動型
T
付図2(2),(3)参照
多指可動型
P
−
4. 性能
4.1
一般条件 一般条件は,次のとおりとする。
(1) ハンドは,母指と他の指の間で把持動作を確実,かつ,円滑にできる構造であること。
(2) ハンドの開き幅は,ハンドを最大に開いたときに母指と示指の間の最大間隔は55mm以上であること。
(3) ハンドの可動部分は,装飾手袋をかぶせたとき,その機能を損なわないこと。
(4) コントロールリードの可動距離は,60mm以下であること。
(5) 平面上に置いた一辺10mmの立方体をつまみ上げることができ,そのときのハンドのアプローチ角θ
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は,10〜30度であること(図1参照)。
(6) ハンドは,図2のように20×25×100mmの面取りをした木製の取っ手が付いた10kgのおもりをしっ
かり把持できること。
図1
図2
4.2
静的強度及び耐久性 静的強度及び耐久性は,9.によって試験したとき,表2を満足しなければなら
ない。
表2
項目
性能
試験方法
適用箇所
静
的
強
度
鉛直方向の強度
破損,永久変形,動作不良などの異常が
あってはならない。
9.1(1)
母指の横方向引張強度
9.1(2)
示指の横方向強度
9.1(3)
示指・中指の伸展方向強度
9.1(4)
耐
久
性
可動指の遊び(がた)量
2mm以上の遊び(がた)があってはな
らない。
9.2
把持性
対象物を落としてはならない。
開閉性
ハンドを開くのに要する力が150N
{15kgf} 以下であること。
内部機構(可動部分,ねじ,コ
ントロールリードなど)
破損,永久変形,動作不良などの異常が
あってはならない。
また,ねじの緩み,脱落があっては
ならない。
異常音
操作時に異常音を生じてはならない。
5. 形状及び寸法
5.1
ハンドの長さ ハンドの長さ (l) は,図3及び表3のとおりとする。
3
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5.2
質量 ハンドの質量は,400g以下とする(1)。
注(1) 装飾手袋は含めない。
5.3
取付けねじ ハンドの取付けねじは,原則としてJIS B 0207に規定するメートル細目ねじでM12×
1.5を用いなければならない。
6. 外観 外観は,次のとおりとする。
(1) ハンドの表面に,きず,さび及び汚れがあってはならない。
(2) ゴム,プラスチックに著しい変色,ひび割れ及びき裂があってはならない。
7. 材料 材料は,人体に対して無害であって不快な臭気がなく,また,耐食性,耐湿性及び耐候性がな
ければならない。
(1) ゴム ゴムの組成は均一で,使用箇所に十分耐えなければならない。
(2) ねじ ねじは,原則としてJIS B 0205に規定するメートル並目ねじ及びJIS B 0207に規定するメート
ル細目ねじを用いなければならない。
(3) その他の材料 金属材料,プラスチックなどの材料は,使用箇所に耐えるものでなければならない。
8. 試験の条件 試験の条件は,次のとおりとする。
(1) 試験場所の状態は,温度状態20±10℃,湿度状態 (65±30) %の室内とする。
(2) 装飾手袋及びインナーグラブをかぶせないで試験する。ただし,耐久試験では,インナーグラブをか
ぶせる。
9. 試験方法
9.1
静的強度試験 表4の○印のある試験項目について試験する。
表4
試験項目
母指可動型
2指可動型
3指可動型
多指可動型
鉛直方向の強度
○
○
○
○
母指の横方向の強度
○
−
○
○(2)
示指の横方向の強度
−
○
○
○
示指・中指の伸展方向の強度
○
○
○
○
注(2) 母指が可動型でないものは除く。
(1) 鉛直方向の強度 閉じた状態のハンドを鉛直方向に固定し,第2〜5指の先端に150N {15kgf} の負荷
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を与えて試験する(図4参照)。
(2) 母指の横方向の強度 ハンドの手掌部が横を向く状態で水平方向に固定し,母指回転軸に5N・m {0.5
kgf・m} の負荷を与えて試験する(図5参照)。
(3) 示指の横方向の強度 ハンドの手掌部が横を向く状態で水平方向に固定し,示指回転軸に5N・m {0.5
kgf・m} の負荷を与えて試験する(図6参照)。
(4) 示指及び中指の伸展方向の強度 ハンドの手掌部が上を向く状態で水平方向に固定し,示指・中指の
中央部に金属板を置き,両指に均等に負荷が作用するようにして5N・m {0.5 kgf・m} の負荷力を回転
軸に与えて試験する(図7参照)。又は示指及び中指の中央部にワイヤを掛け,下方向に引き試験する。
図6
図7
9.2
耐久試験 ハンドの可動指の開閉動作を繰り返すことができる試験装置を用いて行う。装置の一例
を図8に示す。
試験は,次のとおりとする。
(1) ハンドのコントロールリードにワイヤを結合する。
(2) コントロールリードの可動距離から5mm手前までワイヤを引っ張り,ハンドを開く。次に,力を除
いてハンドを閉じる。
(3) ハンドの開閉動作の繰返し周期は1.5〜2.5秒 (0.40〜0.67Hz) とする。
(4) 繰返し試験回数は,10万回とする。
(5) 繰返し試験後,垂直下向きに固定したハンドに0.2kgのおもりをつかませ,おもりをしっかり把持で
きるかどうかを調べる(図9参照)。
また,図10によって可動指を開くのに要する引張力 (F) を測定する。
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(6) 繰返し試験後,可動指の軸に0.4N・m {0.04kgf・m} の負荷を作用させ,可動指先端の変位を測定する。
次に,逆向きに同じ負荷を作用させ,変位を測定する。両者の和を遊び(がた)量 (⊿x) とする(図
11参照)。
図8
6
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図11
10. 検査方法
10.1 抜取検査 抜取検査は,性能及び形状・寸法について5.及び9.によって行い,4.及び5.の規定に適合
しなければならない。
なお,この場合の抜取方式及び合否判定方式は,受渡当事者間の協定による。
10.2 全数検査 全数検査は,外観について目視によって行い,6.の規定に適合しなければならない。
11. 包装 防水効果及び防食効果のあるものとし,運搬中及び保存中に損傷しないよう包装を行わなけれ
ばならない。
また,次の事項を記入した表示を入れなければならない。
(1) 規格の名称
(2) 種類
(3) ハンドの長さの区分及び開き幅
(4) 左右の別
(5) JIS B 0205に規定するメートル並目ねじ及びJIS B 0207に規定するメートル細目ねじ以外のねじ部品
を用いた場合は,ねじの径とピッチ
(6) 製造年月又はその略号
(7) 製造業者名又はその略号
12. 製品の呼び方 製品の呼び方は,規格の名称,種類,サイズ及び左右の別による。
13. 表示 ハンドには,見やすい箇所に,容易に消えない方法で次の事項を表示しなければならない。
(1) 製造年月又はその略号
(2) 製造業者名又はその略号
関連規格 JIS T 0101 福祉関連機器用語[義肢・装具部門]
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付図1 ハンドの部品名称
注(3) 指の呼称は,人の手
と対比させて各々母
指,示指,中指,環
指及び小指とする。
8
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付図2 ハンドの種類
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JIS原案作成委員会 構成表(昭和62年3月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員長)
加倉井 周 一
東京都補装具研究所
青 山 孝
労働福祉事業団労災リハビリテーション工学センター
秋 山 昌 英
株式会社小原工業所
朝 倉 健太郎
東京大学工学部
川 村 一 郎
株式会社パシフィックサプライ
久 保 茂
東京都補装具研究所
佐 藤 政 義
有限会社佐藤製作所
鈴 木 祥 生
労働福祉事業団労災リハビリテーション工学センター
鋤 園 栄 一
日本義肢装具技術者協会
数 藤 康 雄
国立身体障害者リハビリテーションセンター
田 沢 宗 吉
社団法人日本義肢協会
中 島 咲 哉
兵庫県リハビリテーションセンター附属中央病院
浜 田 哲 夫
株式会社啓愛義肢装具材料販売所
河 野 康 徳
厚生省社会局
松 本 邦 宏
労働省労働基準局
田 中 明 夫
厚生団
太 田 健一郎
工業技術院標準部
中 田 哲 雄
通商産業省機械情報産業局
矢 野 秀 昭
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所