2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 9217-1992
能動フック
Voluntary opening hooks
1. 適用範囲 この規格は,重作業用を除く成人用随意開き式能動フック(以下,フックという。)につい
て規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 0205 メートル並目ねじ
JIS B 0207 メートル細目ねじ
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって参
考として併記したものである。
関連規格 JIS T 0101 福祉関連機器用語[義肢・装具部門]
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。
なお,フックの部品名称は,付図1による。
(1) フックの長さ フックの基部から指こう(鉤)わん(弯)曲部先端までの距離(図1参照)。
(2) フック先端のずれ フックを閉じたときの可動指こうと固定指こうの先端のずれ(図10参照)。
3. 種類及び記号 種類及び記号は,表1のとおりとする。
表1
種類(1)
記号
備考
スチール
S
炭素鋼のフック
ステンレススチール
SS
ステンレス鋼のフック
アルミニウム合金
AL
アルミニウム合金のフック
注(1) 指こうにプラスチックをかぶせたり,又は内面にネ
オプレンゴムなどを張り付けたものは,その指こう
の金属材料によって区分する。
4. 性能
4.1
一般条件 フックは,閉じたときに2本の指こうの先端にずれがなく,先端部又は先端わん曲部が
平行に接していなければならない。
4.2
静的強度及び耐久性 静的強度及び耐久性は,9.によって試験したとき,表2を満足しなければなら
ない。
2
T 9217-1992
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表2
単位 mm
項目
性能
試験方法
適用箇所
S, SS
AL
静
的
強
度
指こうわん曲部
指こう先端の伸び率が0.1 %未満
9.1(1)
可動指こう及び軸受部
破損,永久変形,動作不良などの異常が
あってはならない。
9.1(2)
指こうの横方向の強度
9.1(3)
耐
久
性
無負荷時の指こう先端のずれ
2以下
9.2
負荷時の指こう先端のずれ
4以下
5以下
指こう及びフックの制御レバー 破損,永久変形,動作不良などの異常が
あってはならない。
軸受部
指こうの開閉動作を妨げてはならない。
5. 形状及び寸法
5.1
フックの長さ及び開き幅 長さ (l) 及び開き幅 (W) は,図1,図2及び表3のとおりとする。
図1
図2
表3
単位 mm
区分
長さ l
開き幅 W
H3
l< 95
W≧ 75
H4
95≦l<105
W≧ 85
H5
105≦l<115
W≧ 95
H6
115≦l
W≧105
5.2
質量 フックの質量は,S及びSSは250 g以下,ALは150 g以下とする(2)。
注(2) 力源ゴムの質量は含めない。
5.3
取付けねじ フックの取付けねじは,原則としてJIS B 0207に規定するメートル細目ねじでM12×
1.5を用いなければならない。
6. 外観 外観は,次のとおりとする。
(1) フックの表面に,きず,さび及び汚れがあってはならない。
(2) ゴム,プラスチックに著しい変色,ひび割れ及びき裂があってはならない。
7. 材料 材料は,人体に対して無害であって,不快な臭気がなく,また,耐食性,耐湿性及び耐候性が
なければならない。
(1) ゴム ゴムの組成は均一で,使用箇所に十分耐えなければならない。
(2) ねじ ねじは,原則としてJIS B 0205に規定するメートル並目ねじ及びJIS B 0207に規定するメート
ル細目ねじを用いなければならない。
3
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(3) その他の材料 金属材料,プラスチックなどの材料は,使用箇所に耐えるものでなければならない。
8. 試験場所の状態 試験場所の状態は,温度状態20±10 ℃,湿度状態 (65±30) %の室内とする。
9. 試験方法
9.1
静的強度試験 静的強度試験に用いるフックには力源ゴムを付けて試験する。
(1) 指こうわん曲部の強度 フックを鉛直方向に固定し,指こうわん曲部先端に表4に示す負荷を与えて
試験する(図3参照)。このとき,各指こうに負荷を均一に作用させる。試験前後に指こう先端の高さ
(h) (図4参照)を測定し,指こうの伸び率を求める。
表4
単位 N {kgf}
S, SS
AL
備考
負荷
400 {40}
300 {30}
図3参照
図3
図4
(2) 可動指こう及び軸受部の強度 フックの指こう先端が上を向く状態で水平方向に固定し,可動指こう
に表5に示す負荷を上向き及び下向きに与えて試験する(図5参照)。
表5
単位 N {kgf}
S, SS
AL
負荷
15 {1.5}
10 {1.0}
4
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図5
(3) 指こうの横方向の強度 閉じた状態のフックが横を向く状態で水平方向に固定し,固定指こう及び可
動指こうに表6に示す負荷を下向きに与えて試験する(図6参照)。
表6
単位 N・m {kgf・m}
S, SS
AL
負荷
20 {2.0}
15 {1.5}
図6
9.2
耐久試験 軸受部の耐久性を調べるために,フック指こうの開閉動作とねじり動作を個別に,又は
交互に繰り返して行う。試料の力源ゴムは除去し,耐久性のある金属製ばねを代わりに取り付け(図8参
照),指こうが開き始めるときのワイヤ引張力が100 N {10 kgf} となるように調整する。装置の一例を図7
に示す。
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図7
(1) 開閉繰返し試験 フックの開閉繰返し試験は,次のとおりとする。
(a) フックの制御レバーにかけたワイヤを40 mm引き指こうを開き,次に,ワイヤを緩め指こうを閉じ
る。
(b) フックには,厚さ8 mmの板片(3)を挟んだままにする(図8参照)。
(c) 繰返し周期は,1.5〜2.5秒 (0.40〜0.67 Hz) とする。
(d) 繰返し試験数は,S及びSSは10万回,ALは5万回とする。
注(3) 表面が滑らかで,摩耗に耐える硬さをもつこと。
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図8
(2) ねじり繰返し試験 フックのねじり繰返し試験は,次のとおりとする。
(a) 一端に回転軸をもつ厚さ8 mmの板片(3)の中央部を挟み,一端に上向きの負荷を作用し,指こうに
ねじり力を作用させる。指こう先端が35 mm開いたところで除荷し,指こうを閉じる(図9参照)。
(b) 繰返し周期は,1.5〜2.5秒 (0.40〜0.67 Hz) とする。
(c) 繰返し試験数は,S及びSSは10万回,ALは5万回とする。
図9
(3) 指こう先端のずれの測定 耐久試験終了後指こう先端のずれを測定する。
(a) 試験機に試料を取り付けたままにし,指こう先端のずれ(⊿x)を測定する(図10参照)。これを無
負荷時の指こう先端のずれとする。
(b) 試料を試験機から外し,垂直に固定する。そして,軸に0.2 N・m {0.02 kgf・m} の負荷を作用させ,
指こう先端のずれを測定する。次に逆向きに同じ負荷を作用させ,ずれを測定する。両者の和を負
荷時の指こう先端のずれ(⊿y)とする(図11参照)。
図10
図11
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10. 検査方法
10.1 抜取検査 抜取検査は,性能及び形状・寸法について5.及び9.によって行い,4.及び5.の規定に適合
しなければならない。
なお,この場合の抜取方法は,受渡当事者間の協定による。
10.2 全数検査 全数検査は,外観について目視によって行い,6.の規定に適合しなければならない。
11. 包装 防水効果及び防食効果のあるものとし,運搬中及び保存中に損傷しないように包装しなければ
ならない。
また,次の事項を記入した表示を入れなければならない。
(1) 規格の名称
(2) 種類
(3) フックの長さ及び開き幅による区分
(4) 左右の別
(5) JIS B 0205に規定するメートル並目ねじ及びJIS B 0207に規定するメートル細目ねじ以外のねじ部品
を用いた場合は,ねじの径とピッチ
(6) 製造年月又はその略号
(7) 製造業者名又はその略号
12. 製品の呼び方 製品の呼び方は,規格の名称,種類,サイズ及び左右の別による。
13. 表示 フックには,見やすい箇所に,容易に消えない方法で次の事項を表示しなければならない。
(1) 製造年月又はその略号
(2) 製造業者名又はその略号
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付図1 フックの部品名称
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JIS原案作成委員会 構成表(昭和62年3月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員長)
加倉井 周 一
東京都補装具研究所
青 山 孝
労働福祉事業団労災リハビリテーション工学センター
秋 山 昌 英
株式会社小原工業所
朝 倉 健太郎
東京大学工学部
川 村 一 郎
株式会社パシフィックサプライ
久 保 茂
東京都補装具研究所
佐 藤 政 義
有限会社佐藤製作所
鈴 木 祥 生
労働福祉事業団労災リハビリテーション工学センター
鋤 園 栄 一
日本義肢装具技術者協会
数 藤 康 雄
国立身体障害者リハビリテーションセンター
田 沢 宗 吉
社団法人日本義肢協会
中 島 咲 哉
兵庫県リハビリテーションセンター附属中央病院
浜 田 哲 夫
株式会社啓愛義肢装具材料販売所
河 野 康 徳
厚生省社会局
松 本 邦 宏
労働省労働基準局
田 中 明 夫
厚生団
太 田 健一郎
工業技術院標準部
中 田 哲 雄
通商産業省機械情報産業局
矢 野 秀 昭
国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所