2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 9204-1994
木製松葉づえ
Wooden axilla crutches
1. 適用範囲 この規格は,主として成人に用いる木製の松葉づえについて規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 0205 メートル並目ねじ
JIS B 1185 ちょうナット
JIS K 5531 ニトロセルロースラッカー
JIS K 5533 ラッカー系シーラー
JIS K 6804 酢酸ビニル樹脂エマルジョン木材接着剤
JIS T 0101 福祉関連機器用語〔義肢・装具部門〕
2. この規格の中で { } を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって参
考として併記したものである。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS T 0101によるほか次による。
(1) 横木 脇を支え側弓の上部を固定する木部。
(2) 横木カバー 横木を覆うカバー。
(3) 側弓 横木に固定し,握りを挟んでいる2本の木部。
(4) 握り 2本の側弓の間にある握り部分。
(5) 下端部 2本の側弓が互いに接合したところより下の部分。
(6) 伸展棒 伸縮形における側弓に挟まれ,長さを調節する下端部にある棒。
(7) まち 2本の側弓の下部の結合部分に挟まれる木部。
(8) つえ先ゴム 下端部の先端に取り付けるゴム。
(9) 踏み面 つえ先ゴムの床と接する面。
3. 各部の名称 松葉づえの各部の名称は,図1による。
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図1 各部の名称
4. 種類 松葉づえは固定形松葉づえ(以下,固定形という。)及び伸縮形松葉づえ(以下,伸縮形という。)
の2種類とし,更に全長(木部)によって表1のとおりに区分する。
表1 種類及び区分
単位mm
種類
固定形
伸縮形
区分
全長(木部)
全長(木部)
最低
最高
L
1 273±2
1 150±2
1 325±2
M
1 152±2
1 070±2
1 210±2
S
−
915±2 1 060±2
5. 性能 松葉づえは,次の規定を満足しなければならない。
(1) 松葉づえは,十分な強度と安全が保たれていること。
(2) 松葉づえは,9.2.2(1)に規定する方法によって試験したとき,裂け,割れ,緩みを生じないこと。
(3) 松葉づえは,9.2.2(2)に規定する方法によって試験したとき,たわみが50mmを超えないこと。
6. 構造及び寸法 松葉づえの各部の構造及び寸法は,次の規定を満足しなければならない。
(1) 固定形の形状は付図1,寸法は付表1によって,伸縮形の形状は付図2,寸法は付表2による。
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(2) 各部品は適当に面取りを行い,手ざわりがよいこと。
(3) 身体に触れる部分には鋭い突起又はかどがないこと。
(4) 結合部は,緩みを生じない構造となっていること。
(5) 塗装面は光沢,色調が均一で,塗りむら,たれ,ピンホールなどがなく平滑であること。
7. 材料 使用する木材は,次の規定を満足しなければならない。
(1) 木材はぶな,ほうなどのむく材又はこれと同等以上の強度をもつ一等材とし,水分含有率15%(電気
含水計による)まで乾燥させたものであること。
(2) 木材は,すべて次の欠陥がないこと。
(a) 腐食
(b) 虫害
(c) 節穴
(d) 割裂,き裂
(e) あて
(f) もめ
(g) 脂つぼ
(h) いりかわ(入皮)
(i) 反り
(j) 目やせ
(k) 表面硬化
(3) 節 木材には節がないこと。ただし,使用上支障のない程度の直径3mm以下の活節は,この限りで
ない。この場合,穴をあける部位に節があってはならない。
(4) 年輪 年輪の数は放射状に測って25mmにつき4〜16の数があるものを使用すること。
(5) 木理 むく材の木理こう(勾)配はできるだけ小さく,そろっていること。
8. 製造方法
8.1
固定形 固定形の製造方法は,付図1及び付表1によるほか次のとおりとする。
(1) 横木 横木のうち体のわき(脇)で支える部分はわきに合わせるためにくびれを作り,面取りをする
こと。
(2) 側弓
(a) 側弓の材料は9.1に規定する試験を行い,強度及び弾性が互いに適合するものを組み合わせて使用
すること。
(b) 横木との結合部は15×15mmの角ほぞによって,接着剤使用のうえ横木にくぎで確実に固定するこ
と。
(c) 2本の側弓は下端部を互いに接着剤使用のうえ,皿木ねじ2,3本で確実に固定し,木ねじ穴は同質
の木材で埋めること。
(d) 側弓の下端部先端は,つえ先ゴムが取り付けやすいように面取りをすること。
(e) 握り用の調節穴は40mm間隔で,直径6mm以下の穴を5個あけること。
(f) 結合部以外のところは,すべて面取りすること。
(3) 握り
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(a) 握りの材料は,高衝撃用ABS樹脂又は同樹脂と木材を組み合わせたものとすること[付図1(d)参照。
この付図は組合せの場合を示す。]。
(b) 握りの形はたる形とし,回転止めを付けること。
(c) 握りはボルト及びちょうナットで固定し,側弓との間に回転が起きないこと。
(4) まち
(a) 下まちは側弓接合部に組み込まれ,最低130mm以上の長さをもつこと。
(b) まちと側弓は,接着剤使用のうえ,皿木ねじ2本で確実に固定し,木ねじの穴は同質の木材で埋め
ること。
(5) 横木カバー
(a) 横木カバーは横木に確実に適合し,使用中はずれない構造とすること。
(b) 横木カバーは輪郭が滑らかで,体との接触に注意して設計されていること。
(c) 横木カバーには良質のクッションを入れること。
(d) 横木カバーは無毒性,非吸湿性の汚れにくいものとし,原則として軟質塩化ビニルを使用するもの
とする。
(6) つえ先ゴム
(a) つえ先ゴムは耐久性に優れ,しなやかで適度の硬さをもっこと。
(b) つえ先ゴムは下端部先端に密着し,底面の直径は下端部先端の直径より,少なくとも10mm以上大
きい踏み面をもつこと。
(c) つえ先ゴムの踏み面の溝の深さ又は突起の高さは2mm以上で,ほどよい把持力をもっていること。
(d) 松葉づえ下端部先端がつえ先ゴムを突き破らないように,先端の直径に合致する1.2mm以上の厚さ
の金属製座金を入れること。
(e) つえ先ゴムの座金の下の厚さは,踏み面の溝又は突起を除き6mm以上であること。
(f) つえ先ゴムの踏み面は,床などに吸着しないように成形されていること。
(7) ボルト
(a) ボルトはJIS B 0205に規定する直径5mm以上のもので,めっきを施してあること。
(b) ボルトは衣服や身体にきずをつけないように,鋭い縁は除いておくこと。
(c) ボルトの長さは,ナットを締め付けたとき,ねじ山が二つ残ること。ただし,ねじ山はちょうナッ
トの翼部からはみださない長さであること。
(8) ちょうナット及び座金
(a) ちょうナットはJIS B 1185に規定するメートルねじ1種を使用し,めっきを施してあること。
(b) ちょうナットは,衣服や身体にきずをつけないように鋭い縁は除いておくこと。
(c) ボルトとかみ合うねじ山の長さは5mm以上とすること。
(d) 座金は金属平座金とし,直径8mm以上,厚さ1.0mm以上であること。
(e) 座金は衣服や身体にきずをつけないよう,鋭い縁がないものでめっきを施してあること。
(9) 接着剤 組立てに使用する接着剤は,JIS K 6804に規定する接着剤又はこれと同等以上のものを使用
すること。
(10) 仕上げ
(a) 素地仕上げは衣服及び身体にきずをつけたり,使用者に不快感を与えぬよう,すべて面取りしたう
え,研磨紙で滑らかに仕上げること。
(b) 組立ては側弓の木理,色合などが合致するよう選定し,確実に固定すること。
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8.2
伸縮形 伸縮形の製造方法は,付表2及び付図2によるほか次のとおりとする。
(1) 横木 横木は8.1(1)による。
(2) 側弓 側弓の材料,横木との結合部,側弓の下端部先端及び握り用の調節穴は8.1(2)による。
また,伸展棒との結合用穴の数は2個とする。
(3) 伸展棒 伸展棒の先端は,つえ先ゴムが取り付けやすいよう面取りをすること。
(4) 握り 握りは8.1(3)による。
(5) 横木カバー 横木カバーは,8.1(5)による。
(6) つえ先ゴム つえ先ゴムは,8.1(6)による。
(7) ボルト ボルトは,8.1(7)による。
(8) ちょうナット及び座金 ちょうナット及び座金は,8.1(8)による。
(9) 接着剤 接着剤は,8.1(9)による。
(10) 仕上げ 仕上げは,8.1(10)による。
8.3
素地処理及び塗装 素地処理及び塗装は,次による。
(1) 固定形では組立て後,伸縮形では組立て前に素地の汚れを十分除去し,研磨紙で平滑にすること。
(2) 下塗り塗料にはJIS K 5533に規定するもの,JIS K 5531に規定するラッカーエナメル又はこれと同等
以上のものを1回塗ること。
(3) 仕上げ塗料にはJIS K 5531に規定するクリアラッカー又はこれと同等以上のものを使用し,2回以上
塗ること。
9. 試験 松葉づえの試験は,次によって行う。
9.1
側弓 側弓の試験は,次による。
(1) 図2に示す側弓試験用固定具を用意する。
(2) 図3に示す試験方法によって,次の順序で試験を行う。
(a) 側弓一組を固定具に入れる[図3(a)参照]。
(b) 側弓の遊離端を互いに開いて離す。その離開の長さは伸縮形Lは45cm,Mは40cm,Sは30cmま
でとする[図3(b)参照]。
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図2 側弓試験用固定具(伸縮形の場合を示す。)
図3 側弓試験方法(伸縮形の場合を示す。)
(c) 握り(5個の握り穴の中央の穴のところ)部に試験用握り(Lは11cm,Mは10cm,Sは8cmの長さ
とする。)を挿入し,側弓遊離端が互いに接触するまで接近させる[図3(c)参照]。
(d) 固定形の場合は下まちの全部が固定具に入るようにして,伸縮形と同様な試験を行う。
9.2
完成品
9.2.1
試験の準備
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(1) 伸縮形では組立ての長さを最大にしておくこと。
(2) 試験は温度20±10℃,相対湿度 (50±30) %の環境条件において行う。
9.2.2
強度試験
(1) 静的圧縮試験 松葉づえを図4のように据える。1 569N {160kgf} の静的荷重を10分間加えた後,5.(2)
の規定を満足するかどうかを調べる。
図4 静的圧縮試験方法
(2) たわみ試験 松葉づえを図5のように据える。握りは最下端に調節し,686N {70kgf} の荷重を握りの
中心に垂直に加える。負荷しないときの位置からの最大たわみを測定し,5.(3)の規定を満足するかど
うかを調べる。
図5 たわみ試験方法
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10. 検査 検査は性能,構造及び材料について行い,5.〜7.に規定する事項に適合しなければならない。
なお,検査は材料については全数検査を行い,性能及び構造については合理的な抜取り方法で行う。
11. 表示 製品には横木下面に容易に消えない方法で,次の事項を表示する。ただし,焼印又は抜きは使
用しないこと。
(1) 松葉づえの種類及び区分
(2) 製造年月
(3) 製造業者名又はその略号
12. 製品の呼び方 松葉づえの呼び方は,種類,区分及び規格名称による。
例 固定形 L 木製松葉づえ
13. 使用説明書 松葉づえには次の事項を記載した使用説明書を添付しなければならない。
(1) 使用上の注意事項
(2) 部品の交換時期
(3) 保守点検
付表1 固定形(基本寸法)
単位mm
部品名
項目
寸法
L
M
横木
長さ
180
180
幅
33
33
厚さ
20
20
側弓
長さ
1 268
1 147
幅
27
27
厚さ
16
16
上端から握り調節中心穴までの距離
375
295
調節穴間の距離
40
40
握り
全体の長さ
127
117
木部の長さ(組合せの場合)
85
75
握り部分の長さ
101
91
握り部分の最大太さ
30
30
握り部分の最小太さ
26
26
上まち
直径
20
20
下まち
長さ
130
130
幅(側弓に接する面)
27
27
横木カバー
長さ
190
190
幅
38
38
高さ(最高部)
47
47
高さ(最低部)
39
39
クッションの厚さ
18以上
18以上
つえ先ゴム
内径
26
26
全長
60
60
底面の直径
50
50
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付図1 固定形
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付図1 (続き)
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付図1 (続き)
付表2 伸縮形(基本寸法)
単位mm
部品名
項目
寸法
L
M
S
横木
長さ
180
180
180
幅
33
33
33
厚さ
20
20
20
側弓
長さ
950
870
740
幅
27
27
27
厚さ
16
16
16
上端から握り調節中心穴までの距離
375
295
240
調節穴間の距離
40
40
40
伸展棒との結合用穴間の距離
120
120
120
下端から結合用下穴までの距離
30
30
30
伸展棒
長さ
550
520
450
太さ
27
27
27
調節用穴間の距離
40
40
40
調節用穴の数
10個
9個
8個
握り
全体の長さ
127
127
117
木部の長さ(組合せの場合)
85
85
75
握り部分の長さ
101
101
91
握り部分の最大太さ
30
30
28
握り部分の最小太さ
26
26
25
横木カバー
長さ
190
190
190
幅
38
38
38
高さ(最高部)
47
47
47
高さ(最低部)
39
39
39
クッションの高さ
18以上
18以上
18以上
つえ先ゴム
内径
26
26
26
全長
60
60
60
底面の直径
50
50
50
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T 9204-1994
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図2 伸縮形
備考 横木,握り,回転止め,横木カバー及びつえ先ゴムの形状は付図1による。
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医療安全用具部会 松葉づえ専門委員会 構成表(昭和57年4月1日制定のとき)
氏名
所属
(委員長)
今 田 拓
宮城県立拓杏園
山 浦 紘 一
通商産業省生活産業局
板 山 賢 二
厚生省社会局
田 村 修 二
工業技術院標準部
大 川 嗣 雄
横浜市立大学医学部病院
加倉井 周 一
東京都補装具研究所
初 山 泰 弘
国立身体障害者リハビリテーションセンター
小 原 正次郎
小原工業所
小山田 松 生
金剛株式会社
亀 田 守 弘
株式会社啓愛義肢材料販売所
川 村 一 郎
パシフィックサプライ株式会社
草 間 秀 夫
有限会社フジ薬品
根 本 力 男
有限会社根本木工所
沢 村 誠 志
兵庫県リハビリテーションセンター
武 智 秀 夫
岡山大学医学部
新 田 輝 一
全国脊髄損傷者連合会
細 田 多 穂
東京医科歯科大学
矢 谷 令 子
国立療養所東京病院附属リハビリテーション学院
(事務局)
川 口 廣 美
工業技術院標準部電気規格課
中 川 真 一
工業技術院標準部電気規格課
(事務局)
津 金 秀 幸
工業技術院標準部電気規格課(平成6年3月1日改正のとき)
青 山 直 充
工業技術院標準部電気規格課(平成6年3月1日改正のとき)