2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 8202-1997
一般用風速計
Anemometer for general use
1. 適用範囲 この規格は,事務所,工場,地下街などの自然換気及び人工換気における空気流の速さを
測定し,風速値を指示する一般用風速計(以下,風速計という。)について規定する。ただし,気象用,航
空機・船舶用,鉱山防爆用など,他に規格が制定されている風速計を除く。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
(1) 風速 空気の流れの単位時間当たりの直線的移動距離の大きさ。
(2) 気流温度 測定対象の空気の温度。
(3) 風洞装置 風速を試験するのに十分な性能をもつ送風設備。ただし,静止した空気中で物体を運動さ
せることによって相対的な気流を発生する装置(走行台車など)も含まれる。
(4) 零風速 静止した空気の風速。
(5) 風速測定範囲 この規格に規定された精度で測定することが可能である風速指示値の範囲。
(6) 使用温度範囲 この規格に規定された精度で風速を測定することが可能である気流温度の範囲。
(7) 標準試験温度範囲 風速計の試験を行う標準的な気流温度の範囲。ここでは18〜28℃とする。
(8) 応答時間 測定対象の風速をある値から他の値へ瞬間的に変化させたときに,風速計の指示値が,あ
る指示値から他の定常状態の90%の値に達するまでに要する時間。
3. 性能 風速計の性能は,次の各項の条件を満足しなければならない。
(1) 指示精度 5.3(1)に規定する試験を行ったとき,指示精度は,風速指示値と基準値の差が±(指示値の
5%+0.1m/s)以内であること。ただし,標準試験温度範囲のいずれの温度,風速測定範囲のいずれの
風速においても,この精度が満たされること。
また,風速測定範囲の下限での指示精度は,風速指示値と基準値の差が±(指示値の100%)以内
であること。ただし,原理的に零風速が測定できるものは除く。
(2) 安定度 5.3(2)に規定する試験を行ったとき,指示精度は3.(1)に適合すること。
(3) 気流温度変化による影響 使用温度範囲が標準試験温度範囲より広い場合には,5.3(3)(a)又は5.3(3)(b)
に規定する試験を行い,その結果が以下の条件を満足すること。
(a) 5.3(3)(a)の方法を用いた場合,指示精度は,風速指示値と基準値の差が3.(1)に規定する値に気流温
度変化による許容付加誤差(δUt)を加算した値を超えないこと。
(b) 5.3(3)(b)の方法を用いた場合には,気流温度変化による風速指示変化(δUr)が許容指示変化(δUm)
を超えないこと。
(4) 応答時間 5.3(4)に規定する試験を行ったとき,応答時間は10秒以下であること。
4. 構造 風速計は,次の各項の条件を満足しなければならない。
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T 8202-1997
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) 直読できる風速指示部をもつこと。
(2) 方向性のあるものは,風向マークを付けること。
(3) 風速測定範囲が風速指示部付近に明示されていること。又は指示値が風速測定範囲外になったときに
警告表示を行う機能をもつこと。
5. 試験
5.1
試験環境 試験に用いる装置及び試験される風速計の本体の設置場所(試験場所)の温度は,18〜
28℃,湿度は結露のないこととする。
なお,気圧,湿度によって指示値が影響を受ける場合は,湿度65%,気圧1 013hPaでの値に補正するこ
と。
5.2
風洞装置 ここで用いる風洞装置は,十分整えられた気流を発生する装置で,測定箇所の気流温度
分布が±0.5℃以内,同一の風速における測定時間内での気流温度変動が±0.5℃以内であること。ただし,
静止した空気中で物体を運動させることによって相対的な気流を発生する装置(走行台車など)も含まれ
る。
5.3
試験方法 次の方法によって試験を行う。
なお,方向性をもつ風速計を試験する場合は風向マークを気流の上流方向に向けて検出部を設置する。
また,試験の記録には試験時の気流方向を明示すること。
(1) 指示精度試験 風洞装置を用い,風速計検出部を標準試験温度範囲の温度の気流にさらして風速の基
準値と比較し,その指示精度を調べる。
風速の基準値は,国家標準にトレーサブルに値付けられた風洞装置によって指示される値,又は風
洞装置内に被試験風速計とともに置かれた国家標準にトレーサブルな風速計(ピトー管を含む。)の指
示する値とする。風洞装置内に被試験風速計とともに置かれた風速計の指示値を用いる場合には,風
洞装置内の風速分布が十分均一であることと風速計相互の間の干渉による誤差が発生していないこと
を確認しなければならない。
参考 風速計は,定期的に校正を行うことが望ましい。
(2) 安定度試験 風速計の電源を入れて5分後及び10分後に5.3(1)に規定する試験を行う。ただし,この
試験は風速測定範囲中の1点の風速だけで行えばよい。
(3) 気流温度変化による影響の試験
(a) 絶対値法 風洞装置を用い,風速検出部を次に規定する試験温度と試験風速の気流にさらして風速
の基準値と比較し,その指示精度を調べる。風速の基準値は5.3(1)に準じる。
気流温度変化による許容付加誤差(δUt)は次の式によって求める。
T
U
U
a
t
∆
×
×
=003
.0
δ
ここに,
Uaは 風速の基準値 (m/s)
また,△T=
18 ℃-試験温度
(試験温度が標準試験温度範囲より低い場合)
試験温度−28℃
(試験温度が標準試験温度範囲より高い場合)
ただし,上の式で算出されるδUtが0.05m/s以下の場合は,δUtを0.05m/sとする。
試験温度は使用温度範囲の上限とT1の間の点,及び使用温度範囲の下限とT2の間の点を含むこ
と。ただし,T1及びT2は次の式で定義される。
(
)
℃の高い方
又は
℃
28
15
max
1
−
=T
T
3
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(
)
℃の低い方
又は
℃
8
1
15
min
2
+
=T
T
ここに, Tmax,Tminは,それぞれ使用温度範囲の上限と下限を示す。
試験風速は,測定風速範囲の中の5点以上とする。この内の1点は測定風速範囲の下限と上限の
平均値になるべく近く,2点はそれぞれ測定風速範囲の下限と上限になるべく近いこと。
(b) 相対値法 同一風速とみなせる条件のもとで,標準試験温度範囲内の任意の温度の気流に対する風
速計指示値 (Us) と,試験温度の気流に対する風速計指示値 (Ur) を記録する。次の式によって気流
温度変化による風速指示変化(δUr) 及び許容指示変化(δUm) を求める。
s
r
r
U
U
U
−
=
δ
T
U
U
s
m
∆
×
×
=003
.0
δ
ここに,△T= 18℃−試験温度
(試験温度が標準試験温度範囲より低い場合)
試験温度−28℃
(試験温度が標準試験温度範囲より高い場合)
ただし,上の式で算出されるδUmが0.05m/s以下の場合は,δUmを0.05m/sとする。
試験温度及び試験風速は5.3(3)(a)に準じる。
(4) 応答試験 風速計の検出部を風洞装置に入れ,風速を0.1m/s以下から1m/s以上まで急に増大させた
ときの応答時間を調べる。
6. 検査 5.で規定する試験方法で試験をしたときに3.の性能に適合しなければならない。
7. 表示 風速計には適当な箇所に,次の事項を表示しなければならない。
(1) 名称。ただし,名称が“微風速計”である場合,又は名称が“微風速計”を含む場合は,風速測定範
囲に0.1〜1m/sの範囲を含まなければならない。
(2) 風速測定範囲
(3) 使用温度範囲
(4) 製造年月又はその略号
(5) 製造業者名又はその略号
8. 取扱説明書 風速計には,次の事項について記載した取扱説明書を添付しなければならない。
(1) 風速測定範囲及び精度
(2) 計器の取扱方法及び保守の方法
(3) 温度以外の環境状態(気圧,湿度など)によって指示値が影響される場合は,補正方法
(4) 使用温度範囲及び気流温度の変化が指示値に与える影響
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原案作成委員会委員構成表
氏名
所属
(委員長)
房 村 信 雄
早稲田大学名誉教授
尾 添 博
労働省労働基準局
古 市 正 敏
工業技術院標準部
加 山 英 男
財団法人日本規格協会
高 本 正 樹
工業技術院計量研究所
寺 尾 吉 哉
工業技術院計量研究所
山 本 和 義
中央労働災害防止協会
木 村 啓之介
社団法人日本作業環境測定協会
木 村 栄 一
財団法人ビル管理教育センター
片 桐 拓 郎
財団法人日本品質保証機構
鈴 木 国 夫
株式会社テクノ菱和技術本部
谷 澤 邦 夫
オリックス・レンテック株式会社技術本部
岡 村 勝 郎
集塵装置株式会社技術部
尾 野 溢 夫
リオン株式会社音測技術部
渡 辺 幸 吉
柴田化学器械工業株式会社開発部
佐 藤 行 成
日本科学工業株式会社開発部
梶 谷 廸 彦
株式会社日吉電機製作所
吉 田 政 史
株式会社カイジョー計測システム事業部
(事務局)
三 上 圭 二
社団法人日本保安用品協会