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T 8161-1:2020  

(1) 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 聴覚保護具の遮音値測定 ···································································································· 3 

4.1 試験信号 ······················································································································ 3 

4.2 試験場所 ······················································································································ 3 

4.3 試験装置 ······················································································································ 5 

4.4 被験者 ························································································································· 6 

4.5 試験手順及び被験者への指示 ··························································································· 6 

4.6 聴覚保護具遮音値の決定及び計算······················································································ 7 

5 加力······························································································································· 7 

5.1 イヤーマフ ··················································································································· 7 

5.2 セミインサートタイプ耳栓 ······························································································ 7 

6 データの報告 ··················································································································· 8 

附属書A(規定)聴覚保護具遮音値測定の不確かさ ···································································· 9 

附属書B(参考)二つの聴覚保護具遮音性能測定の評価 ······························································ 12 

附属書C(参考)試験信号の最小音圧レベル及び最大音圧レベル·················································· 15 

参考文献 ···························································································································· 16 

附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 17 

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まえがき 

この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,公益社団法人日本保安用品協会(JSAA)及

び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出が

あり,日本産業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本産業規格である。

これによって,JIS T 8161:1983は廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の

特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

JIS T 8161の規格群には,次に示す部編成がある。 

JIS T 8161-1 第1部:遮音値の主観的測定方法 

JIS T 8161-2 第2部:着用時の実効A特性重み付け音圧レベルの推定 

日本産業規格          JIS 

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聴覚保護具(防音保護具)− 

第1部:遮音値の主観的測定方法 

Acoustics-Hearing protectors- 

Part 1: Subjective method for the measurement of sound attenuation 

序文 

この規格は,2018年に第2版として発行されたISO 4869-1を基とし,使用上の利便性を考慮するため,

技術的内容を変更して作成した日本産業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一

覧にその説明を付けて,附属書JAに示す。 

適用範囲 

この規格は,聴覚いき(閾)値を用いて聴覚保護具の遮音値を主観的に測定する方法について規定する。

この規格が対象とする聴覚保護具は,耳にばく露する騒音を減少させるために一般的に使用される耳栓,

イヤーマフなどがある。 

この測定方法は,測定条件を管理することによって,再現可能な値を得られるようにした実験室的方法

である。得られた値は,供試品について実施する方法と同じ方法で使用者が聴覚保護具を着用する場合に

だけ,その遮音性能を示している。 

現場における実際の遮音性能を,より的確に表示するためには,ISO/TS 4869-5に記載された方法を使

用することができる。 

この測定方法では,聴覚いき(閾)値に近い低音圧レベルで収集したデータが得られるが,より大きな

音圧レベルでの聴覚保護具の遮音値も表している。ただし,ある音圧レベルを超えると,音圧レベルに依

存した特性の影響が現れるような,その振幅に敏感な聴覚保護具には,この規格を適用できない。 

注記1 低周波(500 Hz未満)では,遮音値は,聴覚保護具を着用した耳において,試験中に生理学

的雑音によって引き起こされるマスキングの結果として,数デシベル(dB)過大評価される

ことがある。 

注記2 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 4869-1:2018,Acoustics−Hearing protectors−Part 1: Subjective method for the measurement of 

sound attenuation(MOD) 

なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”

ことを示す。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

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引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 1514 オクターブ及び1/Nオクターブバンドフィルタ 

注記 対応国際規格:IEC 61260-1:2014,Electroacoustics−Octave-band and fractional-octave-band filters

−Part 1: Specifications 

ISO 8253-2,Acoustics−Audiometric test methods−Part 2: Sound field audiometry with pure-tone and 

narrow-band test signals 

IEC 60263,Scales and sizes for plotting frequency characteristics and polar diagrams 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

聴覚保護具(hearing protector) 

聴覚器を騒音から保護するために,外耳道内若しくは耳介内に取り付けられる装置,又は耳若しくは頭

の大部分を覆って取り付けられる装置。 

注記 旧規格では,“防音保護具(ear protector)”と定義していた。聴覚保護具は通信用の電子器具,

及び/又は聴覚保護具と鼓膜との間の騒音レベルを能動的に低減するように設計された機器を

含む。 

3.2 

イヤーマフ,耳覆い(earmuff) 

左右の耳介に押し当てる耳載せ形イヤーカップ(supra-aural),又は耳介の周囲の頭部に押し当てる耳覆

い形イヤーカップ(circumaural)からなる聴覚保護具。イヤーカップは,特別なヘッドバンド,ネックバ

ンド,又はヘルメット若しくは他の装置への取付器具によって頭部に押し当てることができる。 

3.3 

耳栓(earplug) 

外耳道内に着用するか,又は外耳道の入口に当てて耳甲介くう(腔)に着用する聴覚保護具。 

3.4 

ヘルメット(helmet) 

頭の大部分を覆う器具。頭部に装着することによって,衝撃エネルギーを吸収して頭部障害を軽減する

ことを目的とするもの。 

3.5 

聴力レベル(hearing level) 

ある音において,定められた形のイヤホンにおいて,また,その装置方法において,指定されたカプラ

又は人工耳でそのイヤホンによって得られたその音の音圧レベルから定められた標準聴覚いき(閾)値に

対応するイヤホンで得られた音圧レベルを差し引いた値。 

3.6 

聴覚いき(閾)値レベル(hearing threshold level) 

片側又は両側耳で聞いた提示音に対する,ある人の聴覚いき(閾)値から基準とされている聴覚いき(閾)

値を差し引いた値のデシベル表示。 

3.7 

聴覚いき(閾)値(threshold of hearing) 

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指定された音が,評定者が聞き取ることのできる音の最小音圧レベル。他の音源から出て両耳のいずれ

かに達した音は,無視されると仮定している。 

3.8 

遮音値(sound attenuation) 

所与の試験信号で,被験者が聴覚保護具を所定位置に着用した場合と着用しなかった場合との聴覚いき

(閾)値のデシベル単位の差。 

3.9 

ピンクノイズ(pink noise) 

周波数の逆数に比例するパワースペクトル密度をもつ雑音。 

3.10 

基準点(reference point) 

全ての客観的音場測定の基準となる試験室内の空間の定点。被験者が測定のために座ったと仮定したと

き,被験者の外耳道開口を結ぶ線の中点と一致する。 

3.11 

残響時間(reverberation time) 

音源が停止してから音圧レベルが60 dB低下するのに必要な時間。 

注記 ISO 354 [1]を参照 

3.12 

白色雑音,ホワイトノイズ(white noise) 

本質的に周波数に依存しないパワースペクトル密度をもつ雑音。 

注記 ANSI S12.6を参照 

聴覚保護具の遮音値測定 

4.1 

試験信号 

試験信号はJIS C 1514によって規定された中心周波数の1/3オクターブバンドでフィルタリングしたピ

ンクノイズ又は白色雑音から得た信号からなる。試験は,次の中心周波数で測定する。 

125 Hz,250 Hz,500 Hz,1 000 Hz,2 000 Hz,4 000 Hz及び8 000 Hz 

4.2 

試験場所 

4.2.1 

一般事項 

試験場所での音場は,多方向からの音の入射が必要である。そのような音場は,4.2.2〜4.2.4の要件を満

たす場合に十分に近似できる。これらの測定は,被験者及び被験者が座る椅子がない状態で実施しなけれ

ばならない。 

4.2.2 

音圧レベル及び音圧レベル変動 

音圧レベル及び音圧レベル変動は,次による。 

a) 基準点から前後,左右及び上下軸上の15 cmの位置で全指向性マイクロホンで測定される音圧レベル

は,基準点で測定した音圧レベルから±2.5 dB以内で,左右の音圧差は3 dBを超えてはならない。ま

た,各々の位置でマイクロホンの向きは同じに保たれていなければならない。 

b) 音場の指向性は,中心周波数が500 Hz以上の試験信号で基準点において評価する。測定は自由音場に

おいて標準的な指向性である両指向性マイクロホン又は単一指向性マイクロホンを用いて行う。なお,

これらマイクロホンは,1/3オクターブ試験信号を用いたときに,両指向性マイクロホンでは正面感

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度レベルに対して90°の感度レベル差が10 dB以上でなければならない。また,単一指向性マイクロ

ホンでは正面感度レベルに対して180°の感度レベル差が10 dB以上でなければならない。マイクロ

ホンは,基準点で,水平面内で360°回転できる必要がある。それぞれの試験信号における観測され

た音圧レベルの変動は,表1の許容変動内とする。音圧レベルは,マイクロホンを回転する場合に,

15°の角度間隔で測定してもよい。 

表1−両指向性マイクロホン又は単一指向性マイクロホンの自由音場における感度・レベル差に対する 

音圧レベルの許容変動 

単位 dB 

マイクロホンの正面感度に対して 

90°又は180°の感度・レベル差 

許容変動 

25以上 

20 

20以上 25未満 

15 

15以上 20未満 

10 

10以上 15未満 

 5 

10未満 

マイクロホンとして不適 

注記 ランダム入射音場でマイクロホンが回転するような場合のマイクロホン応答の変動は,マイクロホンの指向

性及び測定される場のランダム性の度合いと関係し,許容音場変動は,マイクロホンの自由音場指向性に関
係する。マイクロホン特性は,マイクロホン製造業者から入手するか,又は自由音場で測定できる。 

4.2.3 

残響時間 

試験空間の残響時間は,被験者及び被験者が座る椅子がない状態で,それぞれの試験信号に対して1.6

秒を超えてはならない。 

4.2.4 

周囲雑音レベル(環境騒音レベル) 

試験空間内の試験場所での周囲雑音レベルは,表2の値を超えてはならない。周囲雑音レベルは,被験

者がいない場合の音圧レベルを測定することによって決定する。 

注記 周囲雑音レベルは,部屋の中に存在する周囲雑音,及び試験信号が出ていないときの試験装置

の雑音を含む。 

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表2−最大許容周囲雑音レベル 

中心周波数 

Hz 

1/3オクターブバ

ンド音圧レベル 

dB 

中心周波数 

Hz 

1/3オクターブバ

ンド音圧レベル 

dB 

63 

25 

1 000 

80 

21 

1 250 

100 

18 

1 600 

125 

14 

2 000 

160 

11 

2 500 

200 

3 150 

−1 

250 

4 000 

−4 

315 

5 000 

−2 

400 

6 300 

500 

8 000 

10 

630 

10 000 

20 

800 

注記 聴覚いき(閾)値レベルより10 dB下までの試験であるため,それぞれのレ

ベルは,ISO 8253-1に関係して設定されている。 

4.3 

試験装置 

4.3.1 

試験信号の再生能力 

試験装置は,試験場所で112 Hz〜9 000 Hzの試験信号を再生できなければならない。 

注記 112 Hzは,125 Hz 1/3オクターブバンドの下限周波数で,9 000 Hzは,8 000 Hz 1/3オクターブ

バンドの上限周波数である。 

試験装置は,基準点において,正常聴覚いき(閾)値より10 dB下の最小試験信号音圧レベルから,聴

覚保護具着用時の正常聴覚いき(閾)値より10 dB上の最大試験信号音圧レベルまでを再生する能力がな

ければならない。これらの例については附属書Cに示す。帯域レベルはJIS C 1514に規定するフィルタを

用いて測定する。試験音は,ひずみ(歪)又は異音がないように再生されなければならない。試験装置が,

最大音圧レベル(附属書C)の1/3オクターブバンド試験信号を再生するとき,試験信号の1オクターブ

下から低周波側に63 Hzまで,及び試験信号の1オクターブ上から高周波側に16 kHzまでの1/3オクター

ブバンド音圧レベルが,試験信号の音圧レベルよりも少なくとも40 dB下でなければならない。 

注記 音圧レベル測定器における内部ノイズの制約のため,低い音圧レベルは電気的測定に基づき計

算できる。 

4.3.2 

減衰器 

減衰器は,それぞれの試験信号に対して少なくとも90 dBの変化幅をもたなければならない。また,減

衰変化幅刻みは2.5 dB以下とする。 

4.3.3 

試験信号の線形性 

単一の1/3オクターブバンド試験信号(4.1参照)で測定された減衰器の任意の二つの指示値の出力にお

ける差は,全範囲で2 dBを超えず,かつ,任意の80 dBの範囲では1 dBを超えてはならない。期待した

精度を達成できない場合,線形性からのずれに対して補正値を適用しなければならない。 

可能であれば,全ての信号チャンネルから再生される信号によって音響的に試験する。これによって,

潜在的に非線形である測定系の全ての部分を含むような,実際の試験を近似した条件で線形性が測定され

る。測定には,適切な時間平均が必要である。最も小さいレベルの試験信号で起き得るが,周囲雑音と音

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響的に測定された音圧レベルとの比が,20 dB未満の場合,信号の線形性は,スピーカ端子の電圧で測定

する。このとき,試験信号は純音又は1/3オクターブバンド試験信号を用いる。 

4.3.4 

周波数応答 

試験装置の周波数応答がそのダイナミックレンジの範囲で一定であることを確認するために,再生でき

る最大レベルから周囲雑音レベルまで,10 dBステップで周波数応答を測定しなければならない。この試

験のために,1/3オクターブバンド試験信号若しくは40 Hz〜10 kHzまでのピンクノイズ又は白色雑音を使

用しなければならない。全ての1/3オクターブバンド試験周波数に対する一連の周波数応答曲線は,線形

性からのずれが2 dB未満でなければならない。 

4.3.5 

監視装置 

試験室には,試験中いつでも被験者を観察するための,監視窓又は鮮明なビデオ装置を設置しなければ

ならない。 

被験者の鼻又は前額に対して小さな球をぶら下げるような頭部の位置決めを行う装置は,基準点での被

験者の頭部を一定の位置に保つために使用してもよい。頭部に振動が伝わることなどによって,いき(閾)

値決定に影響を与えることがなく,かつ,音場の均一性に影響を与えない,十分小さな装置であることが

望ましい。 

4.4 

被験者 

被験者は,次による。 

a) 被験者数は16名とする。 

b) 試験に参加する被験者は,左右いずれの耳においてもイヤホン聴取による純音聴力レベルが,2 000 Hz

以下の周波数で15 dB以下,2 000 Hzを超える周波数で25 dB以下とする。試験室内の周囲雑音が表2

に規定した最大の場合,その周波数での純音聴力レベルが−10 dBよりも低い被験者は除外する。 

c) 頭部及び耳の大きさ及び形状にかかわらず被験者を選択する。ただし,聴覚保護具の着用に影響する

明らかな異常を示す被験者は除外する。 

d) 試験に参加する被験者に関して,4.1で規定した試験信号において,3回の連続したいき(閾)値の判

定ができる能力をもつことを確認しなければならない。そのときの対応する中心周波数での各被験者

における,3回の聴覚いき(閾)値レベルの差は6 dBを超えてはならない。 

なお,訓練を受けていない被験者は,安定したいき(閾)値判定が行えるまで練習セッションを行

う必要がある。 

4.5 

試験手順及び被験者への指示 

4.5.1 

サンプル 

試験される聴覚保護具は,耳栓の場合,試行ごとに新品を使用する。イヤーマフの場合は,少なくとも

4人の被験者に対して一つのイヤーマフが必要である。サンプルは被験者に均等に配布する。被験者は試

験中同じ保護具を着用する。被験者が変わるときは,イヤーマフの取扱説明書に従い洗浄する。 

4.5.2 

説明 

被験者は試験状況及び手順について十分な説明を受けなければならない。試験者は,被験者に対して,

試験の目的は“聴覚保護具の通常の使用方法によって,適切に着用した場合に,得られる遮音値を決定す

る。”と説明する。遮音値の測定方法は4.6による。 

4.5.3 

試験手順 

試験者は,聴覚保護具の着用方法について,正しい着用方法を各被験者に指導する。複数のサイズの聴

覚保護具が供給されている場合,試験者は,適切なサイズのものを被験者に提供する。サイズの選択過程

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において,(ガイド又は判定基準として)予備的な遮音値測定は行わない。聴覚保護具の適切な着用を妨げ

る眼鏡,イヤリングなどは,試験中は外す。着用の指導は,通常,附属する製造業者の取扱説明書によっ

て行うが,必要に応じて,口頭での説明,着用の補助などを行う。被験者が正しく聴覚保護具を着用でき

ると試験者が判断したら,聴覚保護具を取り外す。試験が始まる前には,短時間の静かな時間を被験者に

与えてもよい。 

試験では,被験者は試験室に入り,再度聴覚保護具を着用し,着用の快適さを保った上で最良の遮音を

得るように調整する。試験者は試験室の外から着用具合を観察する。試験者は被験者に対して,定常騒音

を聴いている間に,聞こえる音が最も小さくなるように聴覚保護具を調整することを指示する。着用のた

めの雑音(fitting noise)は,広帯域ランダム雑音とし,被験者の頭の位置で,60 dB〜70 dBのA特性音圧

レベルで呈示される。被験者が最良の着用が得られたことを試験者に報告した後に,広帯域雑音を停止さ

せる。外耳道又は耳介に,聴覚保護具をなじませるために,特に長い時間を測定依頼者が指示しない限り,

聴覚保護具を着用後のいき(閾)値測定は,少なくとも2分以上の間隔を空けて始める。最終試験が行わ

れている時には,聴覚保護具へのいかなる操作も行ってはならない。 

なお,試験中に被験者が着用の変化に気が付いた場合,試験者に知らせるように指示し,試験を中止す

る。その場合,被験者は再着用し,最初から試験を始める。この事態が2度発生した場合は,試験は再着

用せずに最後まで行い,この遮音値データは,4.6に規定した計算において使用する。 

雑音の混入,信号のひずみ(歪)又は異常事態が発生した場合は,試験を終了して再び試験する。 

4.6 

聴覚保護具遮音値の決定及び計算 

4.6.1 

試験回数及び順序 

聴覚保護具を着用しない状態(非着用),及び聴覚保護具を着用した状態(着用)での聴覚いき(閾)値

をISO 8253-2に従って被験者ごとに1回測定する。被験者の半数に対しては,“非着用から着用”の順で

試験を行い,残りの半数には“着用から非着用”の順で試験を行う。 

4.6.2 

計算 

それぞれの被験者の遮音値は,聴覚保護具を着用した状態で測定した聴覚いき(閾)値と聴覚保護具を

着用しない状態で測定した聴覚いき(閾)値との差として,それぞれの試験信号に対して計算する。 

それぞれの試験信号に対する平均遮音値及び標準偏差は,それぞれの被験者から得られた遮音値から計

算する。 

加力 

5.1 

イヤーマフ 

イヤーマフは,ヘッドバンドによって両耳間に加えられる力を適切な測定装置で測定する。測定は,イ

ヤーマフクッションの向かい合う面を145 mm±1 mm離して行わなければならない。ヘッドバンドの中心

(内面)からイヤーカップの中心を結ぶ線の中央まで測定した寸法が130 mm±1 mmになるようにヘッド

バンドを調整する。ヘッドバンドは測定中自由に動かなければならない。測定された力はニュートン(N)

で表す。幾つかのタイプの製品,例えば,首の後ろ又は顎の下に位置するヘッドバンドの場合,前述した

以外の寸法を使用してもよく,実際の寸法を加力データと共に報告する。 

注記 適切な加力の測定装置及び測定法は,EN 13819-1 [6]を参照。 

5.2 

セミインサートタイプ耳栓 

セミインサートタイプ耳栓は,適切な加力測定装置で測定する。 

注記 適切な装置はANSI S12.6:2016のAnnex D [8]を参照する。 

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データの報告 

試験報告書は次の事項を含まなければならない。 

a) この規格に従って試験した旨の記載 

b) 聴覚保護具の種類及び交換部品についての記載 

c) それぞれの試験信号に対する個々の遮音値。これらのデータは,試験のそれぞれの状態(例えば,ヘ

ッドバンド位置,バンドの力の調整など)に対して報告されなければならない。 

d) c) における個々の遮音値の試験信号ごとの平均及び標準偏差 

e) 95 %の包含確率に対するデータの拡張不確かさ(附属書A参照) 

f) 

試験実施日 

g) 試験された聴覚保護具のサンプル数 

h) 大きさの異なる聴覚保護具がある場合は,試験されたサイズ及びそれぞれのサイズで試験された被験

者の数 

i) 

試験中に被験者に与えられた製造業者の取扱説明書のコピー 

j) 

再試験が行われた数及びそれぞれの再試験の理由 

k) イヤーマフ及びセミインサートタイプの場合,それぞれのサンプル及びそれぞれの聴覚保護具が試験

された状態に対する加力 

l) 

グラフ形式で表した平均遮音値。IEC 60263に従い,Y軸の50 dBに相当する長さが,X軸上の10倍

に相当する長さに等しくなければならない。遮音値は,Y軸の下向きに増加するように表示する。 

図1に平均遮音値のグラフ表示の例を示す。 

図1−聴覚保護具の平均遮音値の例 

試験信号中心周波数 



Hz 

dB 

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附属書A 

(規定) 

聴覚保護具遮音値測定の不確かさ 

A.1 一般事項 

この規格に従う聴覚保護具の遮音値測定における不確かさは,被験者集団の選択,被験者への聴覚保護

具の着用具合,被験者のいき(閾)値判定,試験者及び試験機関における,試験手順のばらつき,音場か

ら受ける影響,環境騒音,試験装置などの様々な原因によって引き起こされる。 

なお,測定における不確かさの表現ガイドは,ISO/IEC Guide 98-3 [9]を参照。 

不確かさを含む遮音値Aの計算モデルは,この規格において示された試験信号に対しては,次の式(A.1)

による。 

env

eq

meth

REAT

δ

δ

δ

+

+

+

=A

A

 ························································ (A.1) 

ここに, 

AREAT: この規格に従って測定した実耳の遮音値の結果 

δmeth: 被験者集団の選択,聴覚保護具の着用,被験者のいき

(閾)値決定の変動性,試験者及び手順の管理における
ばらつき,さらに,試験サンプルの変動性に起因するば
らつきを考慮に入れるための入力量 

δeq: 試験信号発生装置の性能における偏差を考慮に入れる

ための入力量 

δenv: 音場及び周囲雑音のような理想的でない,又は変動する

環境条件からの影響を考慮に入れるための入力量 

確率密度関数は,それぞれの不確かさの発生源に関連する。それぞれの発生源の最良推定値は,平均値

である。式(A.1)におけるδ項の平均値は,ゼロであると考えられ,AREATはAの最良推定値と考えられる。

それぞれの発生源iの標準偏差は,その標準不確かさuiの推定量で,その発生源と関連している。 

合成標準不確かさuは,全ての発生源からの標準不確かさuiとそれらの感度係数ciとによって決まる。

感度係数は,遮音値が,それぞれの入力量の変化によってどのように影響されるかを表す尺度である。合

成標準不確かさは,式(A.2)のとおり,感度係数によって重み付けされた独立した標準不確かさの二乗の合

計の平方根によって与えられる。 

(

)

=

i

i

iu

c

u

2 ······································································ (A.2) 

ここに, 

u: 合成標準不確かさ 

ci: 感度係数 

ui: 標準不確かさ 

式(A.1)のモデルでは,標準不確かさuiの確率分布の全てが,正規分布であり,全ての感度係数ciは,1

であると仮定できる。 

標準不確かさは,ドイツ物理工学研究所[12],ブラジル個人保護具研究所[13],[14],北欧[10],[15]及び

ヨーロッパでのラウンドロビンテスト[16],並びに米国国立労働安全衛生研究所[17]及びオーストラリア国

立音響研究所[18],[19]での測定から推定され,経験的知識によって補足された。 

表A.1は,δmeth,δeq,δenvに対する入力量の一般的推定を示す。入力量δmethに関連する標準不確かさumeth

の値は,周波数に依存する。表A.2では,umethは三つの周波数範囲の試験信号に対して別々に規定される。

不確かさの値umethは,試験機関内よりも試験機関間で大きくなり,一般的にイヤーマフよりも耳栓に対し

background image

10 

T 8161-1:2020  

てのほうが大きくなる。ueq及びuenvの値は,周波数に独立であると仮定できる。 

この附属書に記載した標準不確かさの値は,標準的な聴覚保護具試験に使用される測定装置の代表的な

値と考えられる。 

表A.1−聴覚保護具遮音値決定のための不確かさバジェットの一般形 

量 

平均推定量 

dB 

標準不確かさ 

ui(dB) 

確率分布 

感度係数 

ci 

不確かさの寄与 

ui·ci(dB) 

δmeth 

umeth 

正規分布 

umeth 

δeq 

ueq 

正規分布 

ueq 

δenv 

uenv 

正規分布 

uenv 

拡張不確かさU95は,合成標準不確かさuに,正規分布に対してはA−U95〜A+U95の区間がAの95 %

を占めるような包含係数k=2を乗じることによって計算できる。 

A.2 試験機関内の不確かさ 

試験機関内の合成標準不確かさuは,平均遮音値の標準偏差である。これは,被験者の数の平方根,す

なわち,16=4で個々の遮音値の標準偏差を除算することで推定できる。 

A.1の調査から,一般に妥当な不確かさの値が与えられるといえる。表A.2は,耳栓及びイヤーマフ並

びに三つの異なる周波数範囲に対して,試験機関内の推定された不確かさの寄与を示す。 

表A.2−平均遮音値に対する試験機関内の不確かさの推定値 

単位 dB 

成分 

不確かさの寄与 

250 Hz未満 

250 Hz〜4 000 Hz 

4 000 Hz超え 

16名の被験者の個々の遮音値の平均の不確
かさumeth 
− 耳栓 
− イヤーマフ 

 
 

1.5 
1.0 

 
 

1.0 
0.6 

 
 

1.5 
1.0 

試験信号発生装置の不確かさueq 

0.2 

0.2 

0.2 

理想的な試験環境からの偏差の不確かさuenv 

0.5 

0.5 

0.5 

合成標準不確かさu 
− 耳栓 
− イヤーマフ 

1.6 
1.1 

1.1 
0.8 

1.6 
1.1 

拡張不確かさU95 
− 耳栓 
− イヤーマフ 

3.2 
2.3 

2.3 
1.6 

3.2 
2.3 

特定の被験者集団による,特定の試験場所における,特定の測定条件,及び特定の聴覚保護具に関する,

合成不確かさは個々の遮音値から計算できる。 

表A.3に,この規格に従って特定の試験機関で測定されたイヤーマフの例を示す。試験に基づく平均の

標準誤差,すなわち,合成標準不確かさu,及び拡張不確かさU95は,具体的な遮音値データから計算で

きる。 

background image

11 

T 8161-1:2020  

表A.3−特定の試験機関におけるイヤーマフ試験データの例 

単位 dB 

被験者番号 

周波数 

125 Hz 

250 Hz 

500 Hz 

1 000 Hz 

2 000 Hz 

4 000 Hz 

8 000 Hz 

9.6 

13.5 

27.5 

32.4 

35.2 

29.1 

28.5 

14.1 

20.2 

25.8 

32.0 

28.9 

35.3 

35.7 

21.8 

27.8 

28.3 

46.6 

37.4 

40.1 

38.7 

18.5 

22.2 

36.5 

44.8 

39.1 

30.6 

33.5 

15.6 

21.9 

31.8 

42.5 

38.9 

38.3 

37.1 

18.7 

28.6 

31.3 

39.0 

35.6 

35.3 

29.4 

23.0 

26.5 

34.0 

41.3 

40.8 

38.7 

35.9 

17.3 

21.7 

25.0 

30.7 

38.6 

37.9 

40.8 

19.4 

19.6 

28.0 

36.6 

40.7 

34.9 

39.4 

10 

11.6 

20.4 

22.6 

38.0 

39.2 

33.9 

30.3 

11 

20.5 

21.8 

29.2 

40.7 

36.2 

35.7 

38.4 

12 

18.3 

19.6 

26.2 

34.6 

32.7 

34.9 

26.6 

13 

15.1 

17.5 

30.1 

39.0 

39.4 

38.2 

39.5 

14 

21.7 

20.8 

28.3 

39.5 

38.1 

40.0 

38.4 

15 

15.9 

17.8 

26.0 

40.6 

38.0 

40.2 

37.2 

16 

11.8 

18.4 

29.6 

37.2 

40.8 

36.0 

29.9 

平均値 

17.1 

21.1 

28.8 

38.5 

37.5 

36.2 

35.0 

標準偏差(sd) 

3.9 

3.9 

3.5 

4.5 

3.2 

3.2 

4.6 

合成標準不確かさu 
(sd/N) 

1.0 

1.0 

0.9 

1.1 

0.8 

0.8 

1.1 

拡張不確かさU95 

2.0 

1.9 

1.7 

2.2 

1.6 

1.6 

2.3 

注記1 各被験者に対応する列のデータは,それぞれの試験信号周波数の遮音値を示す。 
注記2 全ての計算は最大精度で計算し,最後に小数点第一位へ四捨五入した。 

二つの聴覚保護具遮音性能測定の評価のガイドラインは,附属書Bを参照。 

12 

T 8161-1:2020  

附属書B 

(参考) 

二つの聴覚保護具遮音性能測定の評価 

B.1 

試験機関内の拡張不確かさの適用 

B.1.1 代表的な拡張不確かさを用いる場合 

表A.2における不確かさの値の適用例として,二つの遮音値の測定結果を比較して考察する。二つの異

なる耳栓の測定結果は,同じ試験機関で異なる時期に測定された。この二つの結果が有意に異なる結果と

なるかを確認する。 

二つの遮音値は,もし,平均値が2の平方根で除した拡張不確かさの2倍よりも小さな差ならば,統計

的に有意とはみなせない。有意と考えられる差になるためには,少なくとも式(B.1)で与えられる最小の差

が必要である。 

最小の差:

95

95

2

2

2

U

U

×

=

×

····················································· (B.1) 

表A.2から,250 Hz〜4 000 Hzの周波数範囲の耳栓に対する拡張不確かさは,2.3 dBである。その最小

の差は,概算で2×2.3=3.3 dBである。したがって,95 %の信頼水準で有意差があると考えるためには,

この二つの値が,この周波数範囲において少なくとも3.3 dBよりも大きな差をもつ必要がある。 

イヤーマフの最小の差は,250 Hz〜4 000 Hzの周波数範囲で2.3 dBとなる。 

B.1.2 特定の試験機関における試験データから得られた不確かさを用いる場合 

表B.1は,この規格に従って特定の試験機関で二つの試験条件(例えば,ヘッドバンド位置)に対して

測定されたイヤーマフの例を示す。それぞれの試験の平均値m,標準誤差sd,拡張不確かさU95が与えら

れる。拡張不確かさは,合成標準不確かさの2倍である。合成標準不確かさは,被験者数の平方根で標準

偏差を除したものである。試験1のデータは,表A.3のそれと同じである。 

平均値の有意差は,表B.1の最後の2行の平均値によって評価される。最後の行は,二乗した拡張不確

かさの和の平方根の計算を示す。平均値の差が,最後の行の値よりも大きいときに5 %の有意水準で有意

である。 

この例では,二つの試験条件で測定された遮音値は125 Hz〜4 000 Hzの範囲で有意差はない。8 000 Hz

では有意差が見られる。 

background image

13 

T 8161-1:2020  

表B.1−二つの測定から得られた平均値の比較 

単位 dB 

周波数 

125 Hz 

250 Hz 

500 Hz 

1 000 Hz 

2 000 Hz 

4 000 Hz 

8 000 Hz 

試験1 

平均値,m1 

17.1 

21.1 

28.8 

38.5 

37.5 

36.2 

35.0 

標準偏差,sd1 

3.9 

3.9 

3.5 

4.5 

3.2 

3.2 

4.6 

拡張不確かさ,U95,1 

2.0 

1.9 

1.7 

2.2 

1.6 

1.6 

2.3 

試験2 

平均値,m2 

16.8 

21.0 

28.3 

38.2 

35.5 

34.6 

38.9 

標準偏差,sd2 

3.1 

2.4 

2.7 

3.1 

3.0 

3.3 

4.9 

拡張不確かさ,U95,2 

1.6 

1.2 

1.4 

1.5 

1.5 

1.7 

2.5 

平均値の差,m1−m2 
(絶対値) 

0.3 

0.1 

0.5 

0.3 

2.0 

1.6 

4.0 

二乗の和の平方根 

)

(

2

2,

95

2

1,

95

U

U

+

2.5 

2.3 

2.2 

2.7 

2.2 

2.3 

3.4 

注記1 二つの拡張不確かさが同じ値であれば,最終行の計算値はB.2に示した計算結果と同じである。 
注記2 全ての計算は最大精度で計算し,最後に小数点第一位へ四捨五入した。 

B.2 

試験機関間の拡張不確かさの適用 

A.1で引用された調査から,一般的に妥当な不確かさの値が与えられる。表B.2は,耳栓及びイヤーマ

フの異なる周波数範囲に対して,試験機関間の推定された不確かさの寄与を示す。同様に,合成不確かさ

及び拡張不確かさも示す。 

表B.2−平均遮音値に対する試験機関間の不確かさの推定量 

単位 dB 

成分 

不確かさの寄与 

250 Hz未満 

250 Hz〜4 000 Hz 

4 000 Hz超え 

16名の被験者の個々の遮音値の平均の不確
かさumeth 
− 耳栓 
− イヤーマフ 

 
 

4.0 
1.8 

 
 

3.2 
2.3 

 
 

3.2 
3.2 

試験信号発生装置の不確かさueq 

0.3 

0.3 

0.3 

理想的な試験環境からの偏差の不確かさuenv 

0.8 

0.8 

0.8 

合成標準不確かさu 
− 耳栓 
− イヤーマフ 

4.1 
2.0 

3.3 
2.5 

3.3 
3.3 

拡張不確かさU95 
− 耳栓 
− イヤーマフ 

8.2 
4.0 

6.6 
4.9 

6.6 
6.6 

表B.2における不確かさの適用例として,二つの遮音値測定の比較を検討する。二つの測定は,同じタ

イプの耳栓を二つの異なる試験機関でなされている。この二つの結果が有意に異なる結果となるかを確認

する。 

二つの遮音値は,B.1.1と同様となり,式(B.1)で与えられる最小の差が必要である。 

14 

T 8161-1:2020  

表B.2から,250 Hz〜4 000 Hzの周波数範囲の耳栓に対する拡張不確かさは,6.6 dBである。その最小

の差は,概算で2×6.6=9.3 dBである。したがって,95 %の信頼水準で有意差があると考えるためには,

この二つ値が,この周波数範囲において少なくとも9.3 dBよりも大きな差をもつ必要がある。 

イヤーマフの最小の差は,250 Hz〜4 000 Hzの周波数範囲で6.9 dBとなる。 

background image

15 

T 8161-1:2020  

附属書C 
(参考) 

試験信号の最小音圧レベル及び最大音圧レベル 

C.1 一般事項 

この附属書は,スピーカを含む装置が,標準的な聴覚保護具の遮音値測定のために再生することが可能

な音圧レベルの例を示す。その音圧レベルは,必須ではなく参考情報であり,聴覚保護具試験には広いダ

イナミックレンジが必要であることを表している。 

最小値は,試験被験者の聴覚いき(閾)値より少なくとも10 dB下までのレベル変化量をもつ必要があ

るため設定される。上昇法[5],Békésy法[7]又は他の一般的に認められている方法と独立に,聴覚いき(閾)

値の上下両方のレベルを提示できることが望ましい。例えば,聴覚保護具を着用しない場合,1 000 Hzで,

音圧レベル−10 dBの聴覚いき(閾)値をもつ被験者を試験可能にするには,最小値のレベルは−20 dBに

設定する。 

表C.1に示す最大値は,非常に高い遮音値の聴覚保護具を測定するために必要とされるレベルを示す。

最大レベルでの装置のひずみ(歪)は,聞き取れないレベルであることが望ましく,これは,主に低周波

数に対する問題である。最小レベルでは,耳栓及びイヤーマフを組み合わせて耳を塞いでいるときに見ら

れるように45 dB〜55 dB以上の遮音値になり,被験者の空気伝搬音に対する骨導いき(閾)値付近である

と考えられる。 

さらに,高い遮音値は,頭部を完全に包み込むヘルメットと組み合わせて聴覚保護具を着用している被

験者で観測される。例えば,2 000 Hz以上の高周波数で最大25 dBの許容限界の聴覚いき(閾)値をもつ

試験被験者に対しては,聴覚保護具着用耳の聴覚いき(閾)値が約70〜80 dBになる。したがって,聴覚

いき(閾)値決定には,少なくとも10 dBの余裕が必要となる。 

表C.1−試験信号のための最小及び最大音圧レベル 

中心周波数 

(Hz) 

最小及び最大信号音圧レベル 

(dB) 

  125 

−5〜70 

  250 

−10〜70 

  500 

−15〜80 

1 000 

−20〜80 

2 000以上 

−20〜90 

低い音圧レベルは,電気的測定に基づいて計算してもよい。 

16 

T 8161-1:2020  

参考文献 

[1] ISO 354,Acoustics−Measurement of sound absorption in a reverberation room 

[2] ISO 389-1,Acoustics−Reference zero for the calibration of audiometric equipment−Part 1: Reference 

equivalent threshold sound pressure levels for pure tones and supra-aural earphones 

[3] ISO/TS 4869-5,Acoustics−Hearing protectors−Part 5: Method for estimation of noise reduction using fitting 

by inexperienced test subjects 

[4] ISO 7240-24,Fire detection and fire alarm systems−Part 24: Fire alarm loudspeakers 

[5] ISO 8253-1,Acoustics−Audiometric test methods−Part 1: Pure-tone air and bone conduction audiometry 

[6] EN 13819-1:2002,Hearing protectors−Testing−Part 1: Physical Test methods 

[7] ANSI S3.20:2015,Bioacoustical terminology 

[8] ANSI S12.6:2016,Methods for Measuring the Real-Ear Attenuation of Hearing Protectors 

[9] ISO/IEC Guide 98-3,Uncertainty of measurement−Part 3: Guide to the expression of uncertainty in 

measurement (GUM:1995) 

[10] POULSEN, T. and HAGERMAN, B. A Nordic Round Robin Test on hearing protectors. The influence of the 

sound field on measured REAT attenuation. ACUSTICA−Acta-Acustica, Vol. 90, pp 838-846, 2004 

[11] JENSEN, N.S. and POULSEN, T. On the sound field requirements in the hearing protector standard ISO 

4869-1. ACUSTICA−Acta Acustica, Vol. 85, p. 825-831, 1999 

[12] BRINKMANN, K. and RICHTER, U. Repeatability and reproducibility of sound attenuation measurements on 

hearing protectors according to ISO 4869. Internal Report. Physikalisch-Technische Bundesanstalt, 

Braunschweig, Germany, F.R., 1988 

[13] GERGES, R.N.C. and GERGES, S.N.Y. Uncertainty calculation for hearing protector noise attenuation 

measurements for one specific brand in one laboratory. Paper 843, Proceedings of the 44th Inter.Noise 2015, 

San Francisco, USA, 9-12 August 2015 

[14] LIMA, F., GERGES, S., ZMIJEVSKI, T, BENDER, D., and GERGES, R. Uncertainty calculation for hearing 

protector noise attenuation measurements by REAT method. J. of the Braz. Soc. of Mech. Sci. & Eng. Vol. 

XXXII, no 1, page 28-36, 2010 

[15] POULSEN, T. Nordic round robin test in hearing protector measurements. Vol. 1, Internal Report No. 21. The 

Acoustics Laboratory, Technical University of Denmark, 1984 

[16] SHIPTON, M.S. Intercomparison of measurements on ear protectors by subjective and objective test methods. 

Final report on the 1982 EEC intercomparison. EUR 10575 E.N. Luxembourg, Office for Official Publications 

of the European Communities, 1986 

[17] MURPHY, W. J., BYRNE, D. C., GAUGER, D., AHROON, W. A., BERGER, E., GERGES, S.N.Y., 

McKINLEY, R. L., WITT, B., KRIEG, E. F. (2009). “Results of the National Institute for Occupational Safety 

and Health−U.S. Environmental Protection Agency interlaboratory comparison of American National 

Standards Institute S12.6-1997 Methods A and B,” J. Acoust. Soc. of Am., 125(5), 3262-77. 

[18] WILLIAMS, W., A different perspective on the analysis of hearing protector attenuation test data for NRR. 

Noise Control Engineering Journal, Vol. 54(5), pp 376-381, 2006 

[19] WILLIAMS, W., An explanation for the apparent poor performance of some hearing protectors. Acoustics 

Australia, Vol. 31(2), pp 31-62, 2003 

background image

17 

T 8161-1:2020  

附属書JA 

(参考) 

JISと対応国際規格との対比表 

JIS T 8161-1:2020 聴覚保護具(防音保護具)−第1部:遮音値の主観的測定方
法 

ISO 4869-1:2018,Acoustics−Hearing protectors−Part 1: Subjective method for the 
measurement of sound attenuation 

(I)JISの規定 

(II)国際 
規格番号 

(III)国際規格の規定 

(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容 

(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策 

箇条番号 
及び題名 

内容 

箇条 
番号 

内容 

箇条ごと 
の評価 

技術的差異の内容 

3 用語及び
定義 

3.12 白色雑音,ホワ
イトノイズ 

− 

− 

追加 

試験音をピンクノイズに加えて白
色雑音からも生成できるように追
加した。 

ANSI S12.6に規定されているよう
に,より広く使用されていて使い
やすい白色雑音も加えた。 

4 聴覚保護
具の遮音値
測定 

4.1 試験信号 

4.1 

JISにほぼ同じ 

変更 

63 Hz(オプション)を削除。 

周囲雑音の影響,63 Hz試験信号
の変動性が大きく,不確かさを排
除するために63 Hzの試験を除く
ことに合理性がある。 

試験音をピンクノイズに加えて白
色雑音からも生成できるように追
加した。 

ANSI S12.6に規定されているよう
に,より広く使用されていて使い
やすい白色雑音も加えた。 

4.2.2 音圧レベル及
び音圧レベル変動 

4.2.2 

JISにほぼ同じ 

変更 

表1の題名に,“両指向性マイクロ
ホン”と“単一指向性マイクロホン”
を追加し,ISO規格にある
Microphone free-field rejection (FFR) 
という用語が日本語に存在しない
ので,“マイクロホンの正面感度に
対して90°又は180°の感度・レベ
ル差”と意訳した。 

ISO規格の“指向性マイクロホン”
から具体的な“両指向性マイクロ
ホン”と“単一指向性マイクロホ
ン”を追加し,Microphone free-field 
rejection (FFR) の日本語を作成し,
具体的表現に変更した。 

4.2.4 周囲雑音レベ
ル 

4.2.4 

JISにほぼ同じ 

変更 

周囲雑音レベルは,試験音周波数の
1/2の周波数までを規定しているた
め,63 Hz試験信号に対応する表2
の周波数31.5,40,50 Hzを削除。
これに関する注記も削除。 

周囲雑音の影響,63 Hz試験信号
の変動性が大きく,不確かさを排
除するために63 Hzの試験を除く
ことに合理性がある。 

2

T

 8

1

6

1

-1

2

0

2

0

background image

18 

T 8161-1:2020  

(I)JISの規定 

(II)国際 
規格番号 

(III)国際規格の規定 

(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容 

(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策 

箇条番号 
及び題名 

内容 

箇条 
番号 

内容 

箇条ごと 
の評価 

技術的差異の内容 

4 聴覚保護
具の遮音値
測定 
(続き) 

4.3.1 試験信号の再
生能力 

4.3.1 

JISにほぼ同じ 

変更 

周波数63 Hzの試験信号を用いず,
125 Hzから試験する内容に変更し
たため,63 Hzの試験信号の下限周
波数が56 Hzである記述を削除。 

同上。 

4.3.5 監視装置 

− 

− 

追加 

試験室に被験者を観察するための
監視窓又はビデオ装置を設置する
規定を追加。 

日本の事情を考慮した技術的判断
による。今後ISOで議論する予定。 

4.5.1 サンプル 

4.5.1 

JISにほぼ同じ 

変更 

ISO規格では,少なくとも4個と規
定されているが,耳栓の場合は被験
者数と同じにした。差異はない。 

不確かさを少なくするためサンプ
ル数を明確にした。 
ISOへの提案を検討する 

4.5.4 

削除 

4.5.3 試験手順に記載。 

ISO規格では試験中に異常事態が
発生した場合の試験手順を別に記
載されているが,試験手順に関す
る内容であるため4.5.3に記載し
た。 

JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 4869-1:2018,MOD 

注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。 

− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。 
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。 
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。 

注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。 

− MOD ··············· 国際規格を修正している。 

2

T

 8

1

6

1

-1

2

0

2

0