T 8153:2002
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣,厚生労働大
臣が改正した日本工業規格である。これによってJIS T 8153:1990は改正され,この規格に置き換えられ
る。
T 8153:2002
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
1. 適用範囲 ················································································ 1
2. 引用規格 ················································································ 1
3. 定義 ···················································································· 1
4. 種類及び形式 ············································································ 1
5. 性能 ···················································································· 2
5.1 面体の漏れ率 ··········································································· 2
5.2 低圧部の気密性 ········································································· 2
5.3 呼気弁の作動気密性 ····································································· 2
5.4 吸気時の面体内の圧力 ··································································· 2
5.5 通気抵抗 ··············································································· 2
5.6 送風機 ················································································· 3
5.7 送風機形ホースマスクの粉じん捕集効率 ··················································· 3
5.8 ALマスクの最高使用圧力 ································································ 3
5.9 一定流量形エアラインマスクの空気供給量 ················································· 3
6. 構造 ···················································································· 3
6.1 構造一般 ··············································································· 3
6.2 種類別構造 ············································································· 3
6.3 各部の構造 ············································································· 7
7. 材料 ··················································································· 10
8. 試験 ··················································································· 10
8.1 性能試験 ·············································································· 10
8.2 構造試験 ·············································································· 12
9. 検査 ··················································································· 13
10. 表示 ·················································································· 13
11. 取扱説明書 ············································································ 13
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日本工業規格 JIS
T 8153:2002
送 気 マ ス ク
Supplied-air respirators
1. 適用範囲 この規格は,工場,鉱山などの事業場,火災現場,船舶,トンネル[ずい(隧)道]その
他の場所において,酸素欠乏空気,粒子状物質,ガス,蒸気などを吸入することによって人体に有害のお
それがあるときに使用する送気マスク(以下,マスクという。)について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の一部を構成する。こ
れらの規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS B 9809 スプレーガン
JIS K 6330-2 ゴム及び樹脂ホース試験方法―第2部:耐圧性試験
JIS T 8001 呼吸用保護具用語
JIS T 8142 溶接用保護面
JIS T 8155 空気呼吸器
JIS T 8159 呼吸用保護具面体の漏れ率試験方法
JIS Z 8731 環境騒音の表示・測定方法
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS T 8001によるほか,次のとおりとする。
a) ALマスク エアラインマスク及び複合式エアラインマスクの総称。
b) ALマスクの最高使用圧力 製造業者が定めたALマスクを使用する場合の最高圧力。
c) ALマスクの最低使用圧力 製造業者が定めたALマスクを使用する場合の最低圧力。
d) 最長のホース 製造業者が定めた最長のホースマスク用のホース。
e) 最長の中圧ホース 製造業者が定めた最長のALマスク用の中圧ホース。
4. 種類及び形式 マスクの種類及び形式は,表1のとおりとする。
表 1 マスクの種類及び形式
種類
形式
使用する面体等の種類
ホースマスク
肺力吸引形
面体
送風機形
電動
面体,フェイスシールド,フード
手動
面体
ALマスク
エアラインマスク 一定流量形
面体,フェイスシールド,フード
デマンド形
面体
プレッシャデマンド形
面体
複合式エアライン
マスク
デマンド形
面体
プレッシャデマンド形
面体
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5. 性能
5.1
面体の漏れ率 マスクに使用する面体の漏れ率は,8.1.1に規定する方法によって試験したとき,表
2に適合しなければならない。
表 2 面体の漏れ率
単位 %
種類
形式
漏れ率
ホースマスク
肺力吸引形
0.3 未満
送風機形
電動
1 未満
手動
1 未満
ALマスク
エアラインマスク 一定流量形
3 未満
デマンド形
0.3 未満
プレッシャデマンド形
0.3 未満
複合式エアライン
マスク
デマンド形
0.3 未満
プレッシャデマンド形
0.3 未満
5.2
低圧部の気密性 面体を用いたマスクの低圧部の気密性は,8.1.2に規定する方法によって試験した
とき,漏気を認めないものでなければならない。
なお,マスクの低圧部は,次のとおりとする。
a) 肺力吸引形ホースマスクでは,ホース末端の空気取入口から面体まで。
b) 送風機形ホースマスクでは,流量調節装置のホース連結口から面体まで。
c) ALマスクでは,流量調節装置又は供給弁の出口側から面体まで。
5.3
呼気弁の作動気密性 プレッシャデマンド形以外の形式に使用される面体に附属する呼気弁の作動
気密性は,8.1.3に規定する方法によって試験したとき,次の各項に適合しなければならない。
a) 空気を吸引したとき,吸気に対して直ちに内部減圧を示さなければならない。
b) 内部の圧力が常圧に戻るまでの時間は,15秒以上でなければならない。
5.4
吸気時の面体内の圧力 デマンド形及びプレッシャデマンド形のALマスクの吸気時の面体内の圧
力(以下,面体内圧力という。)は,8.1.4に規定する方法によって試験したとき,表3の値に適合しなけ
ればならない。
表 3 面体内圧力
マスクの形式
吸引流量
l/min
面体内の圧力
Pa
デマンド形
30
−250 〜 0
115
−550 〜 0
プレッシャデマンド形
0
100 〜 600
0 〜115(1)
0以上
注(1) 吸引流量を0 l/minから次第に増加させることを意味し,流量0 l/minは含まれない。
5.5
通気抵抗
5.5.1
肺力吸引形ホースマスクの吸気抵抗 肺力吸引形ホースマスクの吸気抵抗は,8.1.5に規定する方
法によって試験したとき,85 l/minの吸気に対し,500 Pa以下でなければならない。
5.5.2
面体をもつマスクの呼気抵抗 面体をもつマスクの呼気抵抗は,8.1.5に規定する方法によって試
験したとき,その形式によって,表4の値に適合しなければならない。
3
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表 4 マスクの呼気抵抗
マスクの形式
送気流量
l/min
呼気抵抗
Pa
肺力吸引形ホースマスク
85
250以下
送風機形ホースマスク
115
250以下
一定流量形エアラインマスク
デマンド形エアラインマスク
85
250以下
プレッシャデマンド形エアラインマスク
85
900以下
5.6
送風機 送風機は,8.1.6に規定する方法によって試験したとき,面体等の吸入口において,面体を
用いるものにあっては50 l/min以上,フェイスシールド及びフードを用いるものにあっては,120 l/min以
上の風量があり,かつ,軸受けその他の作動部分に異常があってはならない。
この試験において手動送風機の送気口1個当たりの消費エネルギーは150 Wを超えないものとする。
5.7
送風機形ホースマスクの粉じん捕集効率 送風機形ホースマスクの粉じん捕集効率は,8.1.7に規定
する方法によって試験したとき,80%以上でなければならない。
5.8
ALマスクの最高使用圧力 ALマスクの最高使用圧力は,0.9 MPa以下とする。
5.9
一定流量形エアラインマスクの空気供給量 一定流量形エアラインマスクの空気供給量は,8.1.8に
規定する方法によって試験したとき,使用する面体等の種類によって,表5に適合しなければならない。
表 5 空気供給量
単位 l/min
使用する面体等の種類
空気供給量
面体
85以上
フェイスシールド
120以上
フード
6. 構造
6.1
構造一般 マスクは,空気源(肺力吸引形の場合は空気取入口)からの空気をホース又は中圧ホー
ス,面体等を通じて着用者に送気する構造のもので,かつ,次の各項に適合しなければならない。
a) 丈夫で使いやすく,できるだけ軽量であって,長時間の使用に耐え,かつ,容易に故障や破損がない
ようになっているもの。
b) 空気が流れる接続部分は,確実に結合され,漏気のおそれがないもの。
c) 取扱いの際に考えられる衝撃に対し,使用上の性能に支障がないもの。
d) マスクの各部は,取扱いが簡単で容易に破損することなく,装着によって異常な圧迫を与えないもの。
6.2
種類別構造
6.2.1
ホースマスク ホースマスクは,その種類によって,次の各項に適合しなければならない。
a) 肺力吸引形ホースマスクは,ホースの末端を呼吸に適する空気中に固定し,ホース及び面体を通じ着
用者自身の吸引力によって吸気させる構造のもので,ホースは内径19 mm以上,長さ10 m以下のも
の(参考図1参照)。
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参考図 1 肺力吸引形ホースマスク
b) 送風機形ホースマスクは,電動又は手動の送風機を呼吸に適する空気中に固定し,ホース及び面体等
を通じて送気する構造のもので,中間に送気を適切な風量に調節するための流量調節装置(手動送風
機を用いる場合は,なくてもよい。)及び交換可能なフィルタ(2)を備えたもの(参考図2及び参考図3
参照)。
なお,送風機が事故によって停止した場合でも,着用者自身の吸引力によって呼吸できるもの。
注(2) 送風機にフィルタを備える目的は,送風機を設置した場所で,偶発的に粉じんが発生した場合
に対応できるようにするためである。
したがって,粉じん濃度が高くなることが明白な場所に設置して使用してはならない。
参考図 2 電動送風機形ホースマスク
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参考図 3 手動送風機形ホースマスク
6.2.2
エアラインマスク エアラインマスクは,その種類によって,次の各項に適合しなければならない。
a) 一定流量形エアラインマスクは,空気圧縮機,圧縮空気管,高圧空気容器などのALマスク用の空気
源(3)からの圧縮空気を,中圧ホース,面体等を通じて着用者に送気する構造のもので,中間に送気を
適度な風量に調節するための流量調節装置を備え,かつ,圧縮空気中の粉じん,油ミストなどをろ過
するろ過装置を備えたもの(参考図4参照)。
参考図 4 一定流量形エアラインマスク
注(3) ALマスク用空気源の種類を例示すると,参考図5のとおりである。
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参考図 5 ALマスク用空気源の種類
b) デマンド形エアラインマスク及びプレッシャデマンド形エアラインマスクは,a)と同じように圧縮空
気を送気する形式のもので,供給弁を備え,着用者の呼吸の需要量に応じて面体内に送気するもの(参
考図6参照)。
参考図 6 デマンド形及びプレッシャデマンド形エアラインマスク
6.2.3
複合式エアラインマスク 複合式エアラインマスクは,通常の状態ではデマンド形エアラインマス
ク又はプレッシャデマンド形エアラインマスクとして使用するもので,万一,その給気が途絶したような
緊急時又は作業の必要に応じて,携行した高圧空気容器から給気を受け,空気呼吸器として使用できる構
造のもの(参考図7参照)。
なお,空気呼吸器として使用する場合の性能などは,JIS T 8155の規定に適合しなければならない。
7
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参考図 7 複合式エアラインマスク
6.2.4
ALマスク用安全弁 ALマスク用安全弁は,ALマスクの空気源から流量調節装置又は供給弁まで
の間に備えるものとする。安全弁の作動開始圧力は,ALマスクの最高使用圧力の110 %以下とする。
6.3
各部の構造
6.3.1
面体等 面体等は,次の各項に適合しなければならない。
a) 面体 面体は,全面形及び半面形の2種類(参考図8及び参考図9参照)とし,次のとおりとする。
参考図 8 全面形面体
参考図 9 半面形面体
1) 呼気弁を備えたもので,肺力吸引形用の面体は,吸気弁も備えたもの。
2) 装着が簡単で,しめひもは,長さの調節が可能なもの。
3) 全面形は,顔面を覆うもので,アイピースは透明で使用上支障となる映像のゆがみがなく,かつ,
曇りを防止する構造であって,8.2.1に規定する方法によって試験したとき,気密不良を生じないも
の。
4) 半面形は,面体が鼻及び口辺を覆うもの。
5) 吸気弁は,通常の呼吸に対して,鋭敏に作動するもの。
6) 呼気弁は,次の条件を満足しなければならない。
8
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− プレッシャデマンド形以外のマスクに用いられる呼気弁は,外圧によるひずみ又は損傷を受け
にくい構造で,内部及び外部の圧力が平衡の場合は,閉鎖状態を保つもの。
− プレッシャデマンド形のマスクに用いる呼気弁は,規定値以上の陽圧に対し,鋭敏,かつ,確
実に作動するもの。
7) しめひもの伸び率は,8.2.2に規定する方法によって試験したとき,全面形では50 %以下,半面形
では100 %以下であること。
8) しめひもとしめひもの面体取付部の強さは,しめひもと面体とを両端としたものを8.2.3に規定する
方法によって試験したとき,破断又は離脱しないこと。
9) 連結管 連結管は,次の各項に適合しなければならない。
9.1) 着用者の運動を妨げないもので,かつ,着用状態において,種々の状態に曲げても通気に支障の
ないもの。
9.2) あご又は腕の圧迫によって通気に支障を生じないもの。
9.3) 首部の運動が自由であるような長さをもつもの。
9.4) 面体からホース連結部までは,8.2.4に規定する方法によって試験したとき,破断又は離脱しない
もの。
b) フェイスシールド フェイスシールドは,参考図10に示すように,着用者の顔全体を覆う大きさのも
のであって,かつ,次のとおりとする。
参考図 10 フェイスシールド
1) 眼部を覆う部分は,透明なもの。
2) 内部は,軟質プラスチック製又はゴム製のほほ当て(フェイスシール)などで顔面を囲み,できる
だけ有害汚染物質が侵入しないような構造のもの。
3) 溶接作業に用いる場合は,JIS T 8142に規定する溶接用保護面に替えることができるもの。
4) 眼部などを覆う部分を前頭部に持ち上げることができる形式のものは,ぐらつかない構造のもの。
c) フード フードは,参考図11に示すように外部からの有害汚染物質の侵入を防止するため,頭部,眼,
顔面及びけい(頚)部全体を覆うものとし,けい部は,ひも,テープなどによって確実に締められる
か,又は気密良好な保護衣と一体となっている構造のもので,身体とのすきま又は排気弁から排気す
るものとし,かつ,次のとおりとする。
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参考図 11 フード
1) 着用中は,頭部を含めて,身体の運動にできるだけ支障のないもの。
2) 送気口は,その出口に遮風板を取り付けるなど,着用者に不快感を与えないもの。
3) 視野は広く,アイピースは透明で使用上支障となる映像のゆがみがなく,かつ,曇りを防止する構
造のもの。
4) 排気弁は,フード内の微弱な圧力変化に対しても鋭敏,かつ,確実に作動するもので,外力による
ひずみ及び損傷から保護されているもの。
5) フード内部の音圧レベルは,送気量200 l/minでJIS Z 8731の5.4.3(定常騒音)に規定する方法に
よって試験したとき,着用者の耳の近傍で80 dB(A)未満であること。
6.3.2
流量調節装置 流量調節装置は,空気流量を自由に調節できるものであって,着用者の通常の動作
によって調節が狂うおそれがないような構造のものでなければならない。エアラインマスク用流量調節装
置は,出口を全閉した場合に1 MPaの圧力に耐えるものでなければならない。
6.3.3
ホース及び中圧ホース ホース及び中圧ホースは,内径,肉厚ともに均整で,可とう(撓)性に富
み,使用上有害なきず,気泡,き裂,その他の欠点がないものであり,かつ,有害ガスなどによって容易
に侵されないものでなければならない。
また,次の各項に適合しなければならない。
a) 8.2.5 a)に規定する方法によって試験したとき,漏れ,き裂,変形などの異常を生じないもの。
b) 8.2.5 b)に規定する方法によって試験したとき,著しい変形がなく,かつ,通気に支障がないもの。
c) 8.2.5 c)に規定する方法によって試験したとき,通気に支障がないもの。
6.3.4
供給弁 供給弁は,次の各項に適合しなければならない。
a) 使用圧力に対して,十分な安全性と気密性をもち,外部からの衝撃に対して狂いが少ない構造のもの。
b) 供給弁は,呼吸によって鋭敏に作動する構造のもの。
c) プレッシャデマンド弁は,陽圧設定値に対して鋭敏に作動する構造のもの。
6.3.5
減圧弁 減圧弁は,使用圧力の範囲内に減圧できるものでなければならない。また,使用圧力に対
して十分な安全性をもち,外部からの衝撃に対して狂いが少ない構造でなければならない。
6.3.6
ろ過装置 ろ過装置は,圧縮空気中の粉じん,油ミストなどの粒子をろ過するものでなければなら
ない。
6.3.7
空気調節袋 空気調節袋は,内部にばね材などを入れて,通気が確保できる構造のもので,その空
気量は2 l以上のものでなければならない。
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6.3.8
空気取入口 肺力吸引形ホースマスクの空気取入口は,異物の侵入を防止する構造のもので,かつ,
ホースの末端を地上から離して固定するための保持具を備えていなければならない(参考図1参照)。
6.3.9
ホース及び中圧ホースの連結部 ホース及び中圧ホースの連結部(以下,ホース連結部という。)
の構造は,ねじ込み式,ワンタッチ式など又はこれらを併用できるものでなければならない。
ただし,複合式エアラインマスクの場合は,緊急時に素早く中圧ホースを切り離すことができるワンタ
ッチ式でなければならない。また,8.2.6に規定する方法によって試験したとき,異常がなく,かつ,分離
しないものとする。
6.3.10 ハーネス ハーネスは,着用者がホース又は中圧ホースを後方に引きながら作業できるような構造
及び堅ろうさをもつもので,着用者の体格に応じて調節ができ,継ぎ目,縫い目及びホース連結部は,そ
れぞれ1 kNの引張りに耐えるものでなければならない。
6.3.11 ケーブル 電動送風機に用いるケーブルは,引張強さが600 N以上のものでなければならない。
6.3.12 緊急時給気切換警報装置 エアラインマスク用の緊急時給気切換警報装置は,エアラインマスク使
用時の安全性を特に高めたいときに用いる装置で,何らかの理由によって空気圧縮機又は圧縮空気管から
の給気が停止又は極端に少なくなった場合,自動的に空気源を高圧空気容器などに切り換えることによっ
て,その圧縮空気を着用者に送気できる構造のものでなければならない。また,この装置は,着用者及び
周辺作業者に緊急事態の発生を警報できるものでなければならない(参考図12参照)。
参考図 12 緊急時給気切換警報装置
7. 材料 マスクの各部に使用する材料は,次の各項に適合しなければならない。
a) 材料は,耐食性のあるもの又は耐食処理を施したもの。
b) 皮膚に接触する部分に使用する材料は,皮膚に有害な影響を与えないもの。
8. 試験
8.1
性能試験
8.1.1
面体の漏れ率試験 JIS T 8159に規定する試験方法によって試験を行う。
8.1.2
低圧部の気密性試験 呼気弁座及びホースの端末部などの低圧部の開口部を密そく(塞)した面体
を試験用人頭に装着し,その内部に1.5 kPaの空気圧を加え,漏気の有無を調べる。
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8.1.3
呼気弁の作動気密試験 呼気弁を気密試験器の弁座に装着し,空気を1 l/minの流量で吸引したと
き,呼気弁の閉鎖による内部の減圧程度を調べ,次に内部圧力を外部圧力より1.5 kPa低下させた後,漏気
によって内部の圧力が常圧に戻るまでの時間を測定する。
この場合,気密試験器の内部容積は,50±5 mlとする。
8.1.4
吸気時の面体内の圧力試験 試験用人頭に,デマンド形又はプレッシャデマンド形のALマスクに
使用している面体と同一仕様の試験用面体を装着し,面体内の圧力が600 Paのとき,試験用面体と試験用
人頭との接触部からの漏れ量が0.1 l/min以下となるようにシールを施し,この面体に供給弁を取り付け,
供給弁入口にALマスクの最高使用圧力及び最低使用圧力の空気を供給する。その後,表3に示す流量で
吸引したときの面体内の圧力(ノーズカップをもつものは,その外側の圧力)を測定する。
8.1.5
通気抵抗試験 マスクの面体を試験用人頭に,漏れが認められないように取り付け,所定の空気量
を吸気又は送気したときの通気抵抗を測定する。このとき,マスクによって付加する条件は,次のとおり
とする。
a) 肺力吸引形ホースマスクの場合は,最長のホースを接続する。
b) デマンド形エアラインマスク及びプレッシャデマンド形エアラインマスクには,ALマスクの最高使
用圧力及び最低使用圧力の空気を供給する。この場合,表4に示す送気流量が得られなければならな
い。
8.1.6
送風機試験 送風機試験は,送風機に最長のホース,流量調節装置及び面体等を最大人数分接続し
て,毎日連続6〜8時間,合計100時間以上運転を行い,面体の吸入口での風量を測定するとともに,軸受
その他の作動部分の異常の有無及び手動送風機を用いた場合は,消費エネルギーも調べる。この場合,電
動送風機は定格で運転し,手動送風機はクランクの回転数を毎分60回で運転するものとする。
8.1.7
送風機形ホースマスクの粉じん捕集効率試験 送風機を試験雰囲気の中に入れ,送風機に最長のホ
ース及び面体等を最大人数分を接続し,表6に示す試験条件の下で,送風機の吸気口付近の大気じんの濃
度及び面体等の吸入口から出る空気中の大気じんの濃度を測定し,次の式によって,粉じん捕集効率を算
出する。
粉じん濃度の測定には,光散乱方式によって粒径範囲が0.3〜0.5 μmの粒子個数濃度が計測できる装置
を用いる。
1
2
1
100
CC
F
C
−
=
×
ここに, F:粉じん捕集効率 (%)
C1:送風機の吸気口付近の大気じん濃度(個/l)
C2:面体等の吸入口から出る空気中の大気じん濃度(個/l)
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表 6 試験条件
項目
内容
C1測定における粒子数
100 000〜500 000個
試験雰囲気の温度及び湿度
温度23±5 ℃,相対湿度(50±10)%
送風機の運転条件
定格
面体等の吸入口1個当たりの送風量
50 l/min以上
測定時間
送風機稼働開始2分後から2分以内
8.1.8
一定流量形エアラインマスクの空気供給量試験 圧縮空気供給源に,ろ過装置,最長の中圧ホース,
流量調節装置及び面体等を最大人数分接続し,空気供給源の圧力を最低使用圧力とし,かつ,流量調節装
置を全開として空気を送気し,面体等の接続口において空気供給量を測定する。
なお,1本の中圧ホースを着用者への送気とスプレーガンなどへの送気に共有する形式のものは,JIS B
9809に規定する吸上式・重力式S平吹1.2又はそれ以上の空気消費量をもつスプレーガンを,空気弁を全
開にした状態で取り付けて試験を行う。
8.2
構造試験
8.2.1
アイピース部衝撃試験 アイピースを面体に取り付けたままの状態で−10±2 ℃及び40±2 ℃の
恒温槽にそれぞれ30分間ずつ5回交互に入れた後,試験用人頭などに装着し,アイピースの中央部を水平
状態に保つ。次に直径22 mm,質量約45 gの鋼球を1.3 mの高さからアイピースの中央表面に自由落下さ
せた後,アイピース部の損傷などによる気密不良が生じたかどうかを8.1.2によって調べる。この場合,鋼
球は自然に落下できるパイプ(鋼球の直径の約2倍程度の内径をもつもの。)の中を落下させてもよい。
8.2.2
しめひもの伸び率試験 標線間の長さが,1 cm以上のしめひも(伸縮部分に限る。)の試験片を用
意し,0.98 N,ついで,9.8 Nの荷重をかけたときのそれぞれの標線間の長さを測定し,次の式によって伸
び率を算定する。
1
2
2
100
LL
e
L
−
=
×
ここに, e:伸び率(%)
L1:9.8 Nの荷重をかけたときの標線間の長さ(cm)
L2:0.98 Nの荷重をかけたときの標線間の長さ(cm)
8.2.3
しめひもと取付部の強さ試験 しめひも取付部分及びしめひもごとに,全面形の面体をもつマスク
にあっては50 N,半面形の面体をもつマスクにあっては25 Nの引張荷重をかけ,破断又は離脱の有無を
調べる。
8.2.4
面体からホース連結部までの強さ試験 面体の適当な部分と,ホースの空気流入側に接続している
部品を両端にして150 Nの力で引っ張り,破断又は離脱の有無を調べる。
8.2.5
ホース及び中圧ホースの耐圧,変形及び曲げ試験 次の試験を行う。
a) 耐圧試験 JIS K 6330-2の7.1(耐圧試験)に規定する方法によって試験する。この場合,試験圧力は,
次のとおりとする。
1) 中圧ホースの場合は,ALマスクの最高使用圧力の4.0倍とする。
2) ホースの場合は,1 MPaとする。
b) 変形試験 長さ1 m以上のホース及び中圧ホースの中央部を長さ10 cmの2枚の堅い板で挟み,常温
の下で700 Nの荷重を加え,変形及び通気について調べる。この場合,中圧ホースはホース内に最低
使用圧力をかけた状態で試験してもよい。
c) 曲げ試験 長さ1 m以上の試験片を用いて,常温の下でホース及び中圧ホースの内径の3倍の外径を
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T 8153:2002
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
もつ丸棒の周辺に180度屈曲させ,通気について調べる。この場合,中圧ホースはホース内に最低使
用圧力をかけた状態で試験してもよい。
8.2.6
ホース連結部試験 ホース連結部試験は,常温の下で1 kNの引張力を加え,異常の有無及び分離
するかどうかを調べる。
9. 検査 検査は,合理的な抜取検査方式によるものとし,8.に規定する試験を行い5.及び6.の規定に適
合しなければならない。
10. 表示 マスクの容器,包装などには,次の事項を表示しなければならない。ただし,d) 2)は送風機本
体に表示しなければならない。
a) マスクの種類及び形式
b) 製造業者名又はその略号
c) 製造年月又はその略号
d) 使用上の主な注意事項
1) ホース又は中圧ホースの通気性が,自動車などの重量物で損なわれることのないように留意する。
2) 送風機形ホースマスクの送風機を設置する場所は,次を満足する場所とする。
− 酸素濃度が18 %以上の場所
− 有毒なガス・蒸気が存在しない場所
− 有害な粉じんが常態として存在しない場所
3) ALマスクの給気源には空気を用い,酸素を用いてはならない。
4) 空気圧縮機の異常による一酸化炭素などの有毒ガスの発生を防止する。
11. 取扱説明書 マスクには,次の事項について記載した取扱説明書を添付しなければならない。
a) マスクを使用できる環境条件
b) マスクを使用してはならない環境条件及びその場合の対策
c) 使用方法(着脱方法,緊急時の対応方法など)
d) ホース及び中圧ホースの長さの限度
1) ホースマスクの場合 最長のホース
2) ALマスクの場合 最長の中圧ホース
e) ALマスクの最高使用圧力及び最低使用圧力
f)
使用上の注意事項
g) 使用前後の点検,整備及び保管についての注意事項
h) 面体等の消毒方法及び注意事項