2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 8143-1994
レーザ保護フィルタ及び
レーザ保護めがね
Filters and eye-protectors against laser radiation
1. 適用範囲 この規格は,波長180nmから1mmまでのレーザ放射に対して,作業者の目を保護するた
めに使用するレーザ保護フィルタ(以下,保護フィルタという。)及びレーザ保護めがね(以下,保護めが
ねという。)について規定する。ただし,医用のものは除く。
備考1. この規格の保護フィルタ及び保護めがねは,レーザ放射の拡散反射からの目の保護及び誤っ
て直接のレーザ放射露光を受けた場合に規定された範囲での目の保護を行うためのものであ
る。
2. この規格の引用規格及び対応国際規格を,次に示す。
引用規格
JIS B 7183 レンズメータ
JIS B 7538 オートコリメータ
JIS C 6801 レーザ安全用語
JIS C 6802 レーザ製品の放射安全基準
JIS G 3505 軟鋼線材
JIS Z 8120 光学用語
対応国際規格 ISO 6161 : 1981 Personal eye-protectors−Filters and eye-protectors against laser
radiation
3. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるもので参考とし
て併記したものである。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 6801,JIS C 6802及びJIS Z 8120によるほ
か,次による。
(1) フィルタ 保護フィルタ及び保護めがねに使用し,レーザ放射を減衰させる光学部材。
(2) フレーム 保護めがねのフィルタを保持する枠。
(3) 保護濃度 フィルタ又はフレームがレーザの照射を受けても目に有害な透過をもたらさないフィルタ
又はフレームの性能で,次の式で求められる値。この場合,小数点以下を切り捨てるものとする。
=
=
MPE
E
L
MPE
H
L
10
10
log
log
又は
ここに,
L: 保護濃度
H: MPEを超える放射をもたらさない最大の放射露光
E: MPEを超える放射をもたらさない最大の放射照度
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MPE: 最大許容露光量
3. 種類,形式及び記号 保護フィルタ及び保護めがねの種類,形式及び記号は,表1のとおりとする。
表1 保護フィルタ及び保護めがねの種類,形式及び記号
種類
形式
記号
保護フィルタ
−
−
LF
保護めがね
ゴグル形
−
LG
スペクタクル形
サイドシールドなし
LS
サイドシールド付き
LSS
フロント形
サイドシールドなし
LC
サイドシールド付き
LCS
備考 保護めがねの形式については,参考図1に示す。
参考図1 保護めがねの形式及び種類(図は一例を示す。)
4. 構造 保護めがねの一般構造は,次の規定を満足しなければならない。
(1) 取扱いが簡単で,容易に破損しないこと。
(2) 着用したときに著しく不快感を与えないこと。
(3) 着用者の行動を著しく阻害しないこと。
(4) 使用者に切傷や擦過傷を与えるおそれがない形のものであること。
(5) フィルタは,容易に交換できないこと。
(6) 著しく視野を妨げないこと。
(7) フレームは反射による危険を軽減させる構造であること。
5. 材料 保護めがねの各部(フィルタを除く。)に使用する材料は,次の規定を満足しなければならない。
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(1) 強さ,弾性などが用途に対して適切であること。
(2) 皮膚に接触する部分に使用する部材は,皮膚に有害な影響を与えないものであること。
(3) 金属部には,耐食性をもつもの又はさび止め処理を施したものを用いること。
6. 品質
6.1
フィルタ
6.1.1
フィルタの外観 7.1.1によって試験したとき,表面は平滑で,目に見えるようなすじ,色むら,
きず,脈理又は異物があってはならない。
6.1.2
保護濃度 保護濃度の決定は,7.1.2によって試験したとき,次の条件を満たさなければならない。
(1) 保護濃度は,レーザの波長又は波長範囲ごとに決定すること。
(2) レーザ放射の照射によってフィルタに変化が生じる場合にも,定められた時間又は回数の照射後に,
目に対してMPEを超える放射をもたらさないこと。
(3) 保護濃度が,レーザの発振形態のうち一部にだけ適合するか,又は発振形態によって保護濃度が異な
るフィルタの場合には,その適合する発振形態を限定するか,又はそれぞれの保護濃度を限定するこ
と。レーザの発振形態の種類及び記号は放出持続時間によって表2のとおりとする。
表2 レーザの発振形態の種類,記号及び放出持続時間
発振形態の種類
記号
放出持続時間T (s)
CW(連続波)発振
C
0.25≦T
長パルス発振
P
10−7≦T<0.25
短パルス発振
G
10−9≦T<10−7
極短パルス発振
M
T<10−9
6.1.3
光学的性質 フィルタは,次の規定を満足しなければならない。
(1) 平行度 7.1.3(1)によって試験したとき,61cm/m {61プリズムDptr} 以下であること。
(2) 屈折力 7.1.3(2)によって試験したとき,どのような経線においても0±0.125m−1 {0±0.125Dptr} 以下
であり,更に,どのような2経線間においても屈折力の差が0.125m−1 {0.125Dptr} 以下であること。
6.1.4
耐熱性 7.1.4によって試験したとき,異常があってはならない。
6.1.5
耐久性 7.1.5によって試験したとき,異常があってはならない。
6.2
フレームの保護濃度 7.2によって試験したとき,フィルタと同様に保護濃度は6.1.2(1)〜(3)の条件
を満たさなければならない。ただし,サイドシールドがないものについては除く。
6.3
完成品
6.3.1
外観 7.3.1によって試験したとき,保護めがねは使用上支障のあるようなきず,汚れがなく,各
部は完全に組み立てられていなければならない。
6.3.2
各部の難燃性 7.3.2によって試験したとき,炎を出して燃え続けてはならない。
7. 試験
7.1
フィルタ
7.1.1
外観 目視によって試験する。
7.1.2
保護濃度 保護濃度は,次による。
(1) フィルタが保護しようとしている波長及び発振形態のレーザで,放射露光又は放射照度がMPE×10L
以上のレーザ放射を,表3の照射時間又は照射回数の照射後に光学濃度を分光光度計,レーザ放射を
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用いた測定器などで測定する。
フィルタは,その面が試験用レーザの光軸に対し90±10°になるように設置する。
光学濃度の測定は,入射角1°以下で測定する。ただし,干渉膜を備えたフィルタは,1°から30°
までの入射角度以内で得られた最も光学濃度の小さな測定値を採用する。
表3 照射時間又は照射回数(フィルタ)
レーザの形式
照射時間又は照射回数
CWレーザ及び準CWレーザ
(パルス繰返し周波数10Hz以上)
3秒間
パルスレーザ
(パルス繰返し周波数10Hz未満)
100パルス
(2) 400nm以上の波長では,特定のレーザの波長で保護濃度が決定した後,次の2条件を満たす範囲でそ
の同じ保護濃度を採用できる波長範囲を決定する。
(a) 分光光度計などによって測定された光学濃度が,保護濃度を決定した波長での光学濃度より大きく,
かつ,連続している波長範囲であること。
(b) 保護濃度を決定した波長より短い波長範囲であること。
7.1.3
光学的性能 装着時ほぼ目の位置に当たる部分について,平行度試験,屈折力試験を行う。いずれ
の試験についても,装置は光軸を合わせ,被検レンズは光軸に直角に置く。
(1) 平行度 望遠鏡又はオートコリメータなどを用いて測定する。
(a) 望遠鏡による方法の1 望遠鏡を用い,被検レンズは対物レンズの直前に置く。望遠鏡とターゲッ
トとの距離は,望遠鏡の対物レンズからターゲットまでの距離とする。被検レンズは光軸と直角に
なるようにジグを用いてもよい(参考図2参照)。
参考図2 望遠鏡による方法の1
(b) 望遠鏡による方法の2 望遠鏡とコリメータを組み合わせて測定する。被検レンズは望遠鏡の対物
レンズの直前に置く。被検レンズは光軸と直角になるようにジグを用いてもよい(参考図3参照)。
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参考図3 望遠鏡による方法の2
(c) オートコリメータによる方法 JIS B 7538に適合するオートコリメータを用いて測定する。光軸と
反射鏡は直角に調整する。被検レンズは,光軸と直角になるようにジグを用いてもよい(参考図4
参照)。
参考図4 オートコリメータによる方法
(2) 屈折力 望遠鏡,オートコリメータ,レンズメータなどを用い,次のいずれかの方法によって屈折力
を測定する。
(a) 望遠鏡による方法の1 (1)(a)と同じ装置を用いる。望遠鏡は被検レンズのないときに焦点調整を行
い焦点の合った位置を0m−1とする。被検レンズを置いて望遠鏡の焦点を再度合わせ,このときの
望遠鏡の焦点調整の移動距離から屈折力を測定する。
(b) 望遠鏡による方法の2 (1)(b)と同じ装置を用いる。被検レンズのない状態を0m−1とし,被検レン
ズを入れたときの望遠鏡の焦点調整の移動距離から屈折力を測定する。
(c) オートコリメータによる方法 (1)(c)と同じ装置を用いる。被検レンズのない状態を0m−1とし,被
検レンズを入れたときの接眼部の焦点調整のレンズ移動距離から屈折力を測定する。
(d) レンズメータによる方法 JIS B 7183に適合するレンズメータを用い屈折力を測定する。
7.1.4
耐熱性 67±2℃の温水中で3分間熱した後,直ちに4℃以下の水中に投入し,7.1.2及び7.1.3の試
験を行い異常の有無を調べる。ただし,単一ガラスについては省略してもよい。
7.1.5
耐久性 温度40±1℃,相対湿度95%以上の環境下に5時間放置し,7.1.2及び7.1.3の試験を行い
異常の有無を調べる。
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7.2
フレームの保護濃度 フィルタの保護濃度と同一の方法で試験を行う。ただし,照射時間又は照射
回数は表4のとおりとし,照射位置は,着用時を想定して,両眼を結んだ高さの側方部で,フィルタと眼
部のほぼ中央部分のフレーム上とする。照射位置の一例を参考図5に示す。
表4 照射時間又は照射回数(フレーム)
レーザの形式
照射時間又は照射回数
CWレーザ及び準CWレーザ
(パルス繰返し周波数10Hz以上)
10秒間
パルスレーザ
(パルス繰返し周波数10Hz未満)
100パルス3回
参考図5 フレームの保護濃度試験照射位置
7.3
完成品
7.3.1
外観 目視によって試験する。
7.3.2. 各部の難燃性試験 JIS G 3505の表2に規定した標準径6mmの線材を長さ約300mmとし,その先
端から長さ50mmまでをブンゼンバーナなどで赤熱させる。次に,保護フィルタ及び保護めがねの各部に
赤熱部分の中央が接触するようにして,線材の自重だけで10秒間圧着させる。10秒後線材を取り除いた
後,炎を出して燃え続けるかどうかを調べる。試験方法の一例を参考図6に示す。
なお,線材には,手元側長さ約50mmまで木製の柄を取り付けてもよい。
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参考図6 難燃性試験方法(図は一例を示す。)
8. 表示
8.1
製品表示 フィルタ又はフレームの視野の妨げにならないところに,次の事項を明りょうに容易に
消えない方法で表示しなければならない。
(1) フィルタの適用波長範囲
(2) 保護濃度(L値) フィルタの保護濃度とフレームの保護濃度をそれぞれに表示する。
例 L3
(3) 発振形態が限定される場合は,そのレーザ発振形態の記号
(4) 製造業者名又はその略号
(5) 製造年月又はその略号
8.2
包装表示 包装には,種類,形式及びこれらの記号を表示しなければならない。
9. 取扱説明書 取扱説明書には少なくとも次の事項を記載しなければならない。
(1) 保護濃度(L値)の説明
(2) フィルタの許容できる最大の放射露光又は放射照度
(3) 目視で判断可能な損傷が発生した保護フィルタ及び保護めがねの使用の禁止
(4) サイドシールドのないスペクタル形及びフロント形保護めがねを使用する場合の側方からのレーザ照
射に対する注意
(5) 発振形態の記号の説明
(6) 視感透過率 視感透過率は,備考による。
備考 可視部 (380〜780nm) における保護フィルタ及び保護めがねの視感透過率は,原則として分光
光度計によって測定する。ただし,簡便法として透過率計を用いてもよい。
(1) 分光光度計による方法 分光光度計を用いて波長380nm,390nm,400nm,……,780nmの
ように波長間隔10nmによって41波長点の分光透過率を測定し,次の式によって計算する。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
100
)
(
)
(
/)
(
)
(
)
(
780
380
780
380
×
=∑
∑
=
=
nm
nm
nm
nm
A
A
r
V
P
V
P
T
λ
λ
λ
λ
λ
τ
λ
λ
ここに,
PA(λ): 標準の光Aの分光分布の値
V(λ): 2度視野における明所視標準比視感度
τ(λ): 試験フィルタの分光透過率
Tr: 視感透過率 (%)
(2) 透過率計による方法 光電受光器に視感度合わせ用フィルタを組み合わせて,その分光感度
が標準比視感度V(λ)にほぼ一致するようにし,A標準光源に対する透過率測定を行う。
レーザ保護フィルタ及びレーザ保護めがねJIS原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
小 沢 哲 磨
東京逓信病院
入 江 宏 定
科学技術庁金属材料技術研究所組織制御
研究部
西 坂 剛
東京農工大学保健管理センター
○ 稲 葉 裕 俊
工業技術院標準部
山 本 和 義
労働省労働基準局安全衛生部
奥 野 勉
労働省産業医学総合研究所労働環境研究
部
田 中 映 男
通商産業省生活産業局
藤 沢 和 也
財団法人機械電子検査検定協会
武 市 武
財団法人光産業技術振興協会
田 野 豊
丸文株式会社第4事業本部
○ 中 沢 芳 男
日本電気株式会社マイクロ波管事業部第2
技術部
石 川 憲
株式会社東芝生産技術研究所
猿 渡 正 俊
日本電信電話株式会社NTT伝送システム
研究所光通信研究部
橘 川 彪
三菱電機株式会社名古屋製作所開発部
○ 三 須 肇
株式会社理研オプテック
○ 山 本 為 信
山本光学株式会社
○ 野 村 富美子
株式会社トーアボージン
○ 青 木 鶴 佳
ツルヨシトレーディング株式会社
○ 小坂部 恪 雄
株式会社日本光器製作所
○ 堤 高 志
大阪眼鏡硝子株式会社
○ 田 中 伍 睦
日本保護眼鏡工業会
(事務局)
○ 三 上 圭 二
社団法人日本保安用品協会
備考 ○印は小委員会委員