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(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 原理······························································································································· 2
5 装置及び材料 ··················································································································· 3
5.1 装置 ···························································································································· 3
5.2 試薬 ···························································································································· 4
6 試料及び前処理 ················································································································ 4
6.1 試料 ···························································································································· 4
6.2 前処理 ························································································································· 4
7 手順······························································································································· 4
7.1 試験装置の準備及び洗浄 ································································································· 4
7.2 試験手順 ······················································································································ 5
7.3 ターゲットプレートを用いた試験手順················································································ 5
8 試験報告書 ······················································································································ 6
附属書A(参考)試験装置のパーツリスト ··············································································· 10
附属書B(規定)人工血液の調製方法······················································································ 11
附属書C(参考)流速及び噴出時間に関する式の導出 ································································ 12
参考文献 ···························································································································· 16
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 17
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本保安用品協会(JSAA)及び財
団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日
本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
また,令和2年10月26日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本産業標準調査会は,
このような特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確
認について,責任はもたない。
日本産業規格
JIS
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感染性物質に対する防護服−フェースマスク−
人工血液に対する耐浸透性試験方法
(一定量,水平噴出法)
Clothing for protection against infectious agents-Face masks-
Test method for resistance against penetration by synthetic blood
(fixed volume, horizontally projected)
序文
この規格は,2004年に第1版として発行されたISO 22609を基とし,技術的内容を変更して作成した日
本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,血管から噴出する血液又はその他の体液との接触から防護しようとするフェースマスクに
対する試験方法について規定する。試験液は,血液等を模擬した人工血液とし,そのスプラッシュ[飛ま
つ(沫)]に対する,フェースマスクの耐浸透性を測定するための試験方法について規定する。
この規格は,主としてフェースマスクに使用される材料又は複合材料に対する試験方法の明確化を目的
としている。この試験方法は,フェースマスクのデザイン,構造,インタフェース,又は全体的な防護機
能(ろ過効率,圧力低下など)に影響を及ぼすことのあるその他の要因を評価するものではない。
この試験方法は,浮遊粒子ばく露経路に対する防護性能,又はフェースマスクに付着したエアロゾル状
体液の浸透に対する防護性能を評価するものではない。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 22609:2004,Clothing for protection against infectious agents−Medical face masks−Test method
for resistance against penetration by synthetic blood (fixed volume, horizontally projected)(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 8839 2-プロパノール(試薬)
2
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3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
エアロゾル状体液 (aerosolized body fluids)
微小液滴として空気中に浮遊している体液。
3.2
浮遊粒子ばく露経路 (airborne exposure pathways)
吸入で空気中を浮遊している微粒子に,ばく露する経路。
注記 吸入でばく露する経路には,傷から噴出する血液又はその他の体液は含まれない。
3.3
血液媒介性病原体 (blood-borne pathogen)
分泌又は排出された感染性バクテリア,ウイルス若しくは血液,又はその他の体液を介して,疾病を誘
発する病原体。
3.4
体液 (body fluid)
体内で作られるすべての液体。
3.5
擬似体液 (body-fluid simulant)
人体の体液モデルとしての機能を果たす液体。
3.6
浸透 (penetration)
粒子又は液体状物質が,防護服材料の多孔質材料,縫合部,ピンホール又はその他の不完全な部分を通
過するプロセス。
注記 この規格での浸透液は,人工血液とする。
3.7
フェースマスク (face masks)
医療現場等において,着用者の顔(少なくとも鼻及び口の粘膜)を血液及びその他の体液から防護する
ようにデザインされた保護具の一品目。
3.8
人工血液 (synthetic blood)
アマランス色素,界面活性剤,増粘剤,無機塩類及び蒸留水の混合液で,血液及び幾つかの体液を代表
する表面張力及び粘度をもつ液体。
注記 この規格における人工血液は,実際の血液又はその他の体液の特性(色,凝固性,細胞物質の
構成など)を模擬するものではない。
4
原理
血液が人の傷口などからフェースマスクに飛散する状態を模擬し,擬似体液として,一定量の人工血液
を水平に吹き付けたときの“ぬれ”の有無を観察する。
人工血液が,フェースマスクの裏面に浸透した何らかの形跡があれば,“ぬれ”と判定し,結果は,“ぬ
れ”として報告する。
3
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フェースマスクの“ぬれ”の有無は,人の血圧80 mmHg,120 mmHg及び160 mmHgに相当する10.6 kPa,
16.0 kPa及び21.3 kPaの3種類の圧力で評価する。
5
装置及び材料
5.1
装置
装置は,次による。
5.1.1
試験装置 図1に示すように,フェースマスクを取り付ける試料取付金具,人工血液の容器である
タンク,人工血液をフェースマスクの試験部位に吹き付けるカニューレ付きバルブ,バルブの作動時間な
どを制御するバルブコントローラ及びバルブコントロールスイッチで構成する。
試験装置の寸法を図2に示す。試験装置のパーツリストは附属書Aに示す。同一の操作特性が得られる
ならば,異なるデザインの試験装置でもよい。
試料取付金具の寸法を図3に示す。これは凸状のもので,試料をバルブのカニューレの先端から300 mm
の位置にしっかり固定しつつぴんと張らせるため,緩やかに圧力を加える。金属製クリップ又は弾性のあ
るカフを用いて試料を金具に当てて保持してもよいが,この場合はこれらの器具が試験部位から離れてい
て,試料に損傷を加えないことが条件となる。
注記 図2及び図3に示す試料取付金具は,片側の開いた透明なプラスチックボックスに固定された
台に取り付けられている。この台には,バルブを保持するために使用する縦形のバルブ用クラ
ンプが付いている。ボックスの前面には,試料を置く外側のドアの凸状の試料取付金具に合う
孔があけてある。この外側のドアは試料があるときには閉められ,試料はボックスの壁とドア
との間に保持される。ドアは磁石によって,ボックスの上部とドアに沿って閉まった状態に保
持される。凸状の試料取付金具の中心及びドアには孔があけられており,試料であるフェース
マスクの内側に液体が浸透した場合に,これを視認できる。
5.1.2
空気圧源 空気をゲージ圧700±25 kPaで供給できるもの。
5.1.3
メスシリンダ 0.1 mLの精度で液体を測定できるように校正された目盛付きのもの。
5.1.4
はかり(秤) 精度が少なくとも0.01 gで,校正済みのもの。
5.1.5
温度・湿度記録計 試験中に周囲温度(±0.5 ℃)及び湿度(±1 %)のモニタリングができるも
の。
5.1.6
恒温恒湿器又は恒温恒湿室 試料の前処理用に指定された温度及び湿度条件を維持できるもの。
5.1.7
ターゲットプレート 試験装置に追加することを推奨するもので,図3及び図4に示すような直径
0.5 cmの孔が1個あいたプレート。このプレートは,孔を通過する液滴がフェースマスクの中心に当たる
ように,フェースマスクとカニューレとの間で,フェースマスクよりおよそ1 cm手前の位置に孔を合わせ
るように,位置をセットする。ターゲットプレートは,高圧になっている液滴の先端部をブロックし,定
常状態の流れだけがフェースマスクに当たるようにするもので,これによって,フェースマスクに当たる
流速の精度及び再現性を向上させる。ターゲットプレートを使用する場合の試験手順は,7.3による。
ターゲットプレートにぶつかった液滴は,使い捨てのプラスチックカップの底に適切な大きさの孔をあ
けたものを使用することで飛散を抑えることができる。このカップは,口の部分をノズルに向け,適切な
方法で水平に取り付ける。図4のカップは,ポリカーボネート樹脂のプレートで支えられている。このカ
ップは,ポリカーボネート樹脂にあいた孔がカップの底の径と等しいので,この孔にはめる。ポリカーボ
ネート樹脂は,これを直立状態に保持するため,ノッチ付きのスタンドにセットする。流出液を受けるた
めに,ターゲットカップの口の下にカップをもう一つ置いてもよい。
4
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5.2
試薬
5.2.1
人工血液 人工血液の調製方法は,附属書Bによる。
5.2.2
2-プロパノール JIS K 8839に規定する2-プロパノールを用いて,人工血液が接触したカニューレ
及び表面を洗浄する。
6
試料及び前処理
6.1
試料
フェースマスクを試料として使用する。
フェースマスクの各場所によって異なる材料又は材料の厚さが指定されている場合は,それぞれの材料
について試験を行う。フェースマスクの縫合部も,基材と同じ防護機能を果たすことが求められている場
合には,縫合部についても別々に試験を行う。
6.2
前処理
各試料について,恒温恒湿器又は恒温恒湿室を使用して温度21±5 ℃,相対湿度(85±5)%の環境下
に少なくとも4時間置いて状態を整える。
7
手順
7.1
試験装置の準備及び洗浄
試験装置を次の手順に従って準備し,洗浄する。
a) 長さが12.7 mm,内径が0.84 mmの清潔なカニューレをバルブの前面に取り付ける。
b) タンクに新しい人工血液を満たす(約1 L)。
c) 表1に従って評価対象となる血圧に応じてバルブ時間をセットする。非標準的圧力,液体容積(2 mL)
又はカニューレ寸法(内径0.84 mm)の場合には,バルブ時間を附属書Cの式(C.4)及び式(C.7)を使用
して求める。
表1−標準試験圧力用バルブ時間
圧力
kPa
速度
cm/s
標準の試験装置及び液滴に
おけるバルブ時間
s
10.6
450
0.80
16.0
550
0.66
21.3
635
0.57
注記 この試験方法においては,少なくとも3種類の10.6 kPa,16.0 kPa及び21.3 kPaの圧力に対応
する速度で評価を行う。
d) 選択したバルブ時間で,2 mLが流れるように,必要に応じてタンク圧力を調整する。
e) メスシリンダで測定して,人工血液の量が2 mLになることを確認する。これに替えて,はかり(秤)
で質量を測定し,人工血液の量を測定してもよい。比重が1.005の標準的液体の場合,2 mLの液体の
質量は2.010±0.040 gとなる。
f)
試料16個の試験が終わるごとに,d) 及びe) の校正手順を踏んで,2 mLの人工血液が試験装置から
噴出していることを確認する。
5
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g) 試験中に人工血液がカニューレを通過してから1時間以上の間,使用しない場合は,これを清潔なカ
ニューレと交換し,使用済みのカニューレは洗浄する。
h) カニューレの洗浄は,2-プロパノールに24時間浸してから蒸留水ですすぐ。
i)
試験後,試験装置のチューブ等及びタンクを蒸留水で洗浄する。2-プロパノール又はその他の溶剤は,
バルブが損傷するおそれがあるので,使用してはならない。
7.2
試験手順
フェースマスクの評価は,次の手順による。
a) 6.2によって,試料の前処理を行う。
b) 試験はすべて温度21±5 ℃,相対湿度(85±10)%の環境下で行う。
c) 予備のフェースマスクの内側に,人工血液の小滴(約0.1 mL)をたらす。たらした溶液が確実に視認
できなければならない。できない場合は,小滴の視認性を高めるために,フェースマスクの内側の面
にタルカムパウダーをかける。
d) 前処理の部屋から試料を取り出す。試料を試料取付金具に取り付け,人工血液がターゲットエリアに
当たるように試料の位置を合わせる。
フェースマスクにひだがある場合は,単一の層がターゲットエリアになるようにひだを伸ばして,
試験器具にフェースマスクを取り付ける。試料の中心をターゲットエリアとする。
バルブの端を,試料であるフェースマスクのターゲットエリアから300±10 mmの位置に置く。
e) 人工血液を試料であるフェースマスクに吹き付ける。人工血液がフェースマスクの試験部位に確実に
当たるようにする。試験は,前処理の部屋から試料を取り出した後,60秒以内に行う。
f)
人工血液をターゲットエリアに吹き付けてから10±1秒後,試料裏側への人工血液の浸透を検査する。
適切な照明を使用して,試料裏側の人工血液若しくはその他のぬれの形跡又はその両方が現れている
かどうかに注意を払う。
人工血液の浸透が視認可能かどうか疑わしい場合には,綿棒又はこれに類するものを用いて試験部
位を軽くこする。
g) 残りの試料について試験を行う。
7.3
ターゲットプレートを用いた試験手順
次の手順に従うことによって,フェースマスクに当たる液滴の流速精度を向上させる。
バルブがいったん開くと,先端の液滴の圧力は,液滴がチューブ,バルブ,カニューレを通って流れる
につれて,摩擦によって低下する。液滴の最初の部分の圧力は,目標の圧力の2倍から3倍になる可能性
がある。次の手順によって,こうした高圧の流れを遮って,目標の流速で飛散する液滴だけがフェースマ
スクに当たるようにする。
a) バルブ時間を0.5秒にセットする。
b) ノズルから噴出した人工血液をた(貯)めて,その量を測定する。
c) バルブ時間を1.5秒にセットする。
d) ノズルから噴出した人工血液をた(貯)めて,その質量を測定する。
e) 二つの人工血液の質量差を求める。試験液滴の比重が1.005のものについては,表2に目標となる質
量差と,目標の2 %以内の速度範囲における質量差の上限値及び下限値を示している。速度,カニュ
ーレの寸法又は比重が異なる液滴については,附属書Cを参照する。
6
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表2−圧力及び速度に対応する許容質量差
液滴の圧力
速度
cm/s
バルブ時間1秒間の人工血液の質量差
kPa
(参考)
mmHg
最小値
g
目標値
g
最大値
g
10.6
80
450
2.456
2.506
2.556
16.0
120
550
3.002
3.063
3.124
21.3
160
635
3.466
3.537
3.607
f)
タンク圧力を必要に応じて調整し,質量差が目標の範囲内に収まるまで,a)〜e) を繰り返す。
g) 一度,タンク圧力を設定したら,タンク及びノズルの相対的高さは変更しない。
h) ターゲットプレートは,ターゲットプレートの孔を通る液滴が,試料取付金具の孔の中心から0.6 cm
以内の位置に当たるように,マスクからおよそ1 cm離して置く。
i)
バルブアセンブリの照準を,定常状態にある液滴が,ターゲット孔を正確に通るように調整する。液
滴の最初の部分は孔の上に当たるようにする。
j)
バルブ時間を0.5秒にセットする。
k) ターゲットプレートの孔を通過する人工血液をた(貯)めて,その質量を測定する。
l)
バルブ時間を1.5秒にセットする。
m) ターゲットプレートの孔を通過する液滴をた(貯)めて,その質量を測定する。
n) 0.5秒間及び1.5秒間に,ターゲットプレートの孔を通過した液滴の質量差は,ノズルから噴出させた
質量差の+2
−5 %以内であることを確認する。
o) 孔を通過した質量差が,ノズルから噴出した質量差の95 %に満たない場合は,流れの照準を点検して
流れがターゲット孔を正確に通過することを確認する。
p) 孔を通過した質量差がノズルから噴出させた質量差の102 %を超える場合は,a)〜f) のた(貯)め及
び計量のプロセスを繰り返す。
q) 3回連続して2 mLの液滴が孔を通過するまで,タイマーの設定を調整する。密度が1.005 g/cm3の試
験用の液滴については,液滴の質量は2.01 gとする。
r) タイマー設定値を,以降の試験における最初の設定値として使用するため,記録する。
8
試験報告書
試験報告書には,次の情報を記載する。
a) 試験がこの規格に従って実施された旨の記述。
b) フェースマスクの名称及び試験対象となるフェースマスクの材料の名称。
c) 試験用として選択した圧力及び血液の量。また,使用した人工血液の速度がこの試験方法に指定され
たものとは異なる場合には,それぞれ選択した値。
d) 試験対象としたターゲットエリアの詳細情報。
e) フェースマスクのターゲットエリア表面とカニューレ先端との距離,及び空気式バルブのフェースマ
スクのターゲットエリアに対する角度がこの試験に規定するものと異なる場合には,それぞれの値。
f)
人工血液の視認性を高めるために採用した方法。
g) 前処理時及び試験時の温度及び相対湿度。
h) 採用した前処理。
7
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i)
各試料について,各試験圧力におけるぬれの有無。
j)
ターゲットプレート法の採用の有無。
1
供給部からコントローラまでの空気ライン
2
バルブコントローラ
3
バルブコントロールスイッチ
4
ターゲットプレート(図4参照)
5
透明プラスチックボックス(図2参照)
6
試料取付金具付きヒンジ式ドア(図3参照)
7
供給部からタンクまでの空気ライン
8
タンク圧力計
9
タンク
10 タンクからバルブまでの液滴を供給するチューブ
11 リングスタンド台に取り付けたカニューレ付きバルブ
12 コントローラからバルブまでの空気ライン
図1−試験装置全体の例
9
8
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単位 mm
1
透明プラスチックボックス
2
試料取付金具
3
空気ラインの中心線
4
試験装置用テーブル
5
ヒンジ式ドア
6
バルブ用クランプ
図2−試験装置
9
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単位 mm
1
ターゲットプレート
2
裏材
3
ヒンジ
4
保持リング
5
ゴム製カフ
6
磁石
7
孔
図3−試料取付金具(詳細図)
図4−集液カップ付きターゲットプレートの例
10
10
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附属書A
(参考)
試験装置のパーツリスト
数量
種類
パーツ番号
注
1
ピギーバック形のエアフィルタ/レギュレータ
7 000 kPa仕様,
コネクタ(入1個,出2個)
EFD No.2000F755
エアツリーNo.1116付き
1
空気注入ホース
EFD No.2310S
1
タンクライナー及びカバー
EFD No.615DRL
1
タンクスタンド
EFD No.61520
1
タンク
EFD No.615DT
a)
1
圧力ゲージ(最大105 kPa)
−
1
タンク内側用のディップチューブ
EFD No.61521
1
液体供給ライン
EFD No.2025
1
バルブコントローラ
EFD 1500XL
1
エア分配バルブ
EFD 725D
1
バルブコントロールスイッチ
−
10
18ゲージ,12.7 mmタイプカニューレ
(内径0.84 mm)高精度チップ
EFD No.5118-B
b)
1
試料ホルダー固定具
−
注a) 小さな圧力を正確に測定するためには,タンクに付いているゲージは,大きなゲー
ジに交換しておくことが望ましい。
b) チップは,動きが悪くなったりロスが出たりするので,すぐ交換できるように準備
しておくことが望ましい。
注記 この情報は,この規格の使用者への利便性を提供するが,これらの製品の保証をするものでは
ない。同等の結果が得られるならば,同等品を使用してもよい。
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附属書B
(規定)
人工血液の調製方法
B.1
試薬
次の試薬を用いて,人工血液1 Lを調製する。
− 高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用蒸留水(pH7.0±0.5) 最大1 L
− 増粘剤
25.0 g
− 赤色色素を含む着色剤及び界面活性剤入り蒸留水
10.0 g
B.2
調製手順
生物学的汚染を抑えるため,蒸留水1 Lを5分間煮沸させる。室温に冷やしてから,20±1 ℃で体積を
測定する。蒸留水に増粘剤を加えた後,室温で45分間,マグネティックスターラーでかくはんする。
色素入り蒸留水を混合後,15分間以上かくはんする。
B.3
表面張力,調整,保管及び使用
表面張力を正確に測定する。表面張力が0.042±0.002 N/mの範囲に入らない人工血液は使用しない。
赤色色素に含まれる過剰な油性成分は,しばしば人工血液の表面張力に,容認できない変化を起こす。
赤色色素に含まれる過剰な油性成分を除くため,90 %の2-プロパノールに,赤色色素25 gを混合後,汚
れている2-プロパノール80 %をデカンテーションで捨てる。その後,残った色素−2-プロパノールの溶液
を蒸発皿に入れて,2-プロパノールを完全に蒸発させる。
このとき,蒸発皿にはフィルタでカバーをする。完全に乾いた色素を使用する。
人工血液に含まれる過剰な油性成分を除くため,調製後24時間放置し,溶液の上10 %をデカンテーシ
ョンで捨てる。
保管は,室温できれいなガラス容器に入れて保管する。
分離を防ぐため,使用前によくかくはんする。
ゲルのような沈殿が形成される場合は,その溶液は廃棄する。
12
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附属書C
(参考)
流速及び噴出時間に関する式の導出
C.1 ベルヌーイの方程式
マスクに衝突する液滴の速度は,この試験方法では重要な変数である。
ベルヌーイの方程式の式(C.1)は,流れに沿った2個以上の点における,液体の状態を表すことができる。
式(C.1)の添字1及び2は,それぞれ位置1(血管の内側)及び位置2(血管の出口)を示す。
g
g
2
2
2
2
2
1
2
1
1
1
2
2
z
v
p
z
v
p
+
+
=
+
+
ρ
ρ
···················································· (C.1)
ここに,
p1: 血管の内側の液滴圧力
p2: 血管の出口の液滴圧力
v1: 血管の内側の流速
v2: 血管の出口の流速
z1: 血管の内側の高さ
z2: 血管の出口の高さ
ρ1: 血管の内側の液滴の密度
ρ2: 血管の出口の液滴の密度
g: 重力加速度 980.67 cm/s2
C.2 仮定
ベルヌーイの方程式とこの状況とを簡単化するため,血液の飛散の仕方を決め,次の仮定を行うと,ベ
ルヌーイの方程式は式(C.2)となる。
2
2
2
1
1
v
p=
ρ
·············································································· (C.2)
a) 血管(位置1)を通った血流の流速は,孔(位置2)から噴出する流れよりはるかに遅いと思われる。
したがって,v1は,無視できる。
b) 血管の高さと噴出する液滴の高さとが同じであるので,高さ(z1及びz2)の項は無視できる。
c) 血管の内部と外部との間には,摩擦損失の機会がほとんどないので,圧力損失は,式(C.1)に含まれて
いない。
d) 噴出された液滴のすぐ上の空気の流れによる摩擦損失は,小さいので,衝突時の流速は,血管から噴
出する速度と同じであるとする。
e) 空気中の液滴の自由な流れの圧力はゼロである。
C.3 圧力及び流速
式(C.2)を,孔から噴出する血液の流速v2で変形すると,式(C.3)となる。
1
1
2
2p
v =
ρ
········································································ (C.3)
よって,式(C.4)になる。
1
2
59
.
137
p
v=
······································································· (C.4)
13
T 8062:2010
ここに,
p1: kPa
ρ1: 1.056 5 g/cm3
v2: cm/s
表C.1−圧力及び流速
圧力
kPa
流速
cm/s
流速の近似値
cm/s
10.6
447.96
450
16.0
550.36
550
21.3
635.00
635
注記 5 cm/s刻みで丸めた流速に相当する圧力は,目標とする圧力の1 %以内に入っている。
C.4 流速の算定
圧力で,流速を任意に設定できる。しかし,流速を直接測定するのが難しいので,式(C.5)を用いて,オ
リフィスの面積及び時間並びに体積から求める。
tA
Q
v=
·················································································· (C.5)
ここに,
v: 流速
Q: 体積
t: 流れの持続時間
A: 孔の断面積
ここで,Aは,式(C.6)で算出できる。
4
π
2
d
A=
··············································································· (C.6)
ここに,
d: 孔の内径
C.5 バルブ時間
式(C.5)及び式(C.6)から,式(C.7)に変形でき,液滴の流れる時間,つまりバルブの開いている時間を算出
できる。
2
π
4
d
v
Q
t=
··············································································· (C.7)
ここに,
Q: 液滴2 mL
d: 0.084 cm
π: 3.141 6
よって,式(C.7)は式(C.8)になる。
v
t
89
.
360
=
············································································· (C.8)
標準の試験圧力におけるバルブ時間は,表C.2のとおりとなる。
14
T 8062:2010
表C.2−バルブ時間
流速
cm/s
相当する血圧
kPa
バルブ時間
s
450
10.6
0.80
550
16.0
0.66
635
21.3
0.57
液滴の密度又は比重が分かっている場合は,液滴の噴出量は,式(C.9)を使って質量を測定できる。
m=Qρ ·················································································· (C.9)
ここに,
m: 液滴の質量
Q: 液滴の体積
ρ: 液体の密度
試験液滴の比重が1.005 g/cm3であるならば,2 mLの液滴の質量は,2.010 gとなる。
C.6 定常状態の流速
式(C.8)及び表C.2で,液滴の速度は,C.2 c)のとおり,全液滴に対して一定であると仮定していること
は重要である。
血管から外へ噴出する血液の飛散距離が,血管壁の厚さだけに関係するというのは正しい仮定である。
これは,試験装置にとっては,よい仮定ではない。血液が長いチューブを流れていると,バルブ及びカニ
ューレによる摩擦による液滴抵抗が発生する。
一方,タンク内の圧力は,レギュレータによって一定に保たれるが,カニューレ出口の圧力は,定常状
態の流速に達するまで,低下する。この圧力低下は,約0.1秒である。
噴出している間で,液滴が衝突する垂直方向の位置が変化することは,よく観察される。
初期の衝突位置は,定常状態の流れより,1 cm以上高くなっている。
衝突位置(高さ)が変化する液滴を,カニューレとマスクとの間のターゲットプレートの孔(直径0.5 cm)
を通して,マスクに衝突させるようにすると,定常状態の液滴だけを衝突させることができる。
もし,孔を通して定常状態だけの液滴を衝突させられるならば,高速の液滴の部分は,孔の上のプレー
トの部分に衝突して,遮断することができる。
式(C.7)及び式(C.9)から,式(C.10)となり,定常状態の流速を推定することができる。
(
)
(
)
4
1
2
2
1
2
t
t
d
v
m
m
−
=
−
ρ
··························································· (C.10)
ここに,
m1: 時間t1で放出された液滴の質量
m2: 時間t2で放出された液滴の質量
t1及びt2: 液滴の流れを定常状態になるに十分な長い時間(>0.1s)
式(C.10)を式(C.11)に変換する。
(
)
(
)
C
t
t
v
m
m
1
2
1
2
−
=
−
································································ (C.11)
2
π
4
d
C
ρ
=
············································································ (C.12)
実用的な観点から,これらの式は,t2−t1=1とセットすると更に簡単になる。
mをgで,vをcm/sで表し,d=0.84 mm,ρ=1.005 g/cm3とすると
C=179.55となる。
15
T 8062:2010
Cの値は,比重が0.995より小さいか,1.015より大きいとき,又はカニューレの内径が0.84 mmと異な
るときは,再計算すべきである。
式(C.11)と適切なCの値を用いて,標準の装置を使う場合の,特別な流速に対する液滴の目標質量及び
その許容範囲の表を作成するために使用できる(表C.2参照)。
C.7 バルブ・タイマの設定
溶液タンクの圧力は,規定内の速度にある液滴の質量差になるように調節する。ターゲットプレートの
孔を通り抜ける定常状態の液滴の質量差は,液滴が適切にねら(狙)われているかを保証するためのチェ
ックとなる。
ターゲットプレートの孔を通り抜けてマスクに到達する液滴の量は,測定した質量が体積に合うように
バルブ・タイマを調整する。ターゲットプレートの孔を通り抜けてマスクに達する液滴の質量は,1.005
g/cm3の密度の液滴2 mLで,2.01 gとなる。
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T 8062:2010
参考文献
[1] LENTNER, C., Ed., Geigy Scientific Tables, Volume 1−Units of Measurement, Body Fluids, Composition of
Blood, Hematology, Somatometric Data (1984) Medical Education Division, Ciba-Geigy Corporation, West
Caldwell, NJ
[2] BARACH, P. G., CULLEN, B. F. and STOELTING, R. K. Handbook or Clinical Anesthesia, J. B. Lippincott
Co., Philadelphia (1994) Appendix A
[3] TELFORD, G. L. and QUEBBEMAN, E. J. Assessing the Risk of Blood Exposure in the Operating Room,
American Journal of Infection Control, (21/6) December 1993, pp. 351-356
[4] ASTM F1862-00a,Standard Test Method for Resistance of Medical Face Masks to Penetration by Synthetic
Blood (Horizontal Projection of Fixed Volume at a Known Velocity)
[5] JIS T 8060 血液及び体液の接触に対する防護服−防護服材料の血液及び体液に対する耐浸透性の求
め方−人工血液を用いる試験方法
注記 対応国際規格:ISO 16603,Clothing for protection against contact with blood and body fluids−
Determination of the resistance of protective clothing materials to penetration by blood and body
fluids−Test method using synthetic blood(MOD)
[6] JIS T 8061 血液及び体液の接触に対する防護服―防護服材料の血液媒介性病原体に対する耐浸透性
の求め方−Phi-X174バクテリオファージを用いる試験方法
注記 対応国際規格:ISO 16604,Clothing for protection against contact with blood and body fluids−
Determination of resistance of protective clothing materials to penetration by blood-borne pathogens
−Test method using Phi-X 174 bacteriophage(MOD)
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T 8062:2010
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS T 8062:2010 感染性物質に対する防護服−フェースマスク−人工血液に
対する耐浸透性試験方法(一定量,水平噴出法)
ISO 22609:2004 Clothing for protection against infectious agents−Medical face masks−
Test method for resistance against penetration by synthetic blood (fixed volume, horizontally
projected)
(Ⅰ)JISの規定
(Ⅱ)
国際
規格
番号
(Ⅲ)国際規格の規定
(Ⅳ)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごとの評価及
びその内容
(Ⅴ)JISと国際規格との技
術的差異の理由及び今後の
対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 用語及び
定義
3.2 浮遊粒子ばく露
経路
3.2
浮遊粒子ばく露経路
変更
定義を明確にするため,文言を追加。
実質的な差異はない。
−
3.8
防護服
削除
定義しなくても,理解できるため削除。
4 原理
ぬれ
4
合否
変更
試験方法の規格なので,合否の判定ではなく,
“ぬれ”という結果を報告することとした。
ISOに提案した。
−
備考
削除
本体から削除した。
5 装置及び
材料
5.2.2 2-プロパノール
5.2.2
イソプロパノール
変更
試薬のグレード及び名称をJIS適合品とし,
明確にした。
6 試料及び
前処理
6.1 試料
6
試料
変更
ロット管理の考え方であるAQL 4.0 %に関す
る記述は削除し,試料数は規定しないことと
した。
ISOに提案した。
6.2 前処理
変更
他の前処理方法は,認めないこととした。
7 手順
7.2 a)
7
−
追加
試験手順を明確にするため,文言を追加。
実質的な差異はない。
8 試験報告
書
i) 各試験圧力におけ
るぬれの有無
8
i) 各試験圧力におけ
る合否
変更
試験方法の規格なので,合否の判定ではなく,
結果を報告することとした。
ISOに提案した。
−
j) AQL 4 %を合格した
最高圧力
削除
同上
同上
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 22609:2004,MOD
2
T
8
0
6
2
:
2
0
1
0
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注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
T
8
0
6
2
:
2
0
1
0