T 8033:2008
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 試験方法の原理 ················································································································ 2
5 試験方法 ························································································································· 2
5.1 装置 ···························································································································· 2
5.2 試験液 ························································································································· 2
5.3 試験片の準備 ················································································································ 3
5.4 手順 ···························································································································· 3
5.5 試験結果の計算式 ·········································································································· 5
6 試験報告書 ······················································································································ 5
附属書JA(参考)JISと対応する国際規格との対比表 ································································· 7
T 8033:2008
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,社団法人日本保安用品協会(JSAA)及び財団
法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業
標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,
このような特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認に
ついて,責任はもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 8033:2008
化学防護服−防護服材料の液体化学物質に対する
耐浸透性試験方法
Protective clothing-Protection against liquid chemicals-
Test method for resistance of materials to penetration by liquids
序文
この規格は,2005年に第3版として発行されたISO 6530を基に作成した日本工業規格であるが,使用
上の利便性を考慮して技術的内容を変更して作成した日本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,化学防護服材料の液体化学物質(主に低揮発性化学物質の少量,低圧の飛まつ)に対する
浸透率,吸収率及び反発率の試験方法について規定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 6530:2005,Protective clothing−Protection against liquid chemicals−Test method for resistance of
materials to penetration by liquids (MOD)
なお,対応の程度を表す記号 (MOD) は,ISO/IEC Guide 21に基づき,修正していることを
示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS T 8115 化学防護服−分類,表示及び性能要求事項
JIS T 8122 生物学的危険物質に対する防護服−種類及び試験方法
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS T 8115によるほか,次による。
3.1
浸透 (penetration)
化学物質が化学防護服の多孔質材料,縫合部,ピンホール,その他の不完全な部分などを非分子レベル
で通過するプロセス。
注記 ピンホール,その他の不完全な部分などは,機械的損傷も含む。
3.2
2
T 8033:2008
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
透過 (permeation)
材料の表面に接触した化学物質が,吸収され,内部に分子レベルで拡散を起こし,裏面から離脱するプ
ロセス。
3.3
反発性 (repellency)
材料の表面に滴下された液体をはじき流す能力。
4
試験方法の原理
試験の原理は,傾斜したとい(樋)に取り付けた材料表面に細流又はジェット流で一定量の試験液を流
す。
試験液が試験片に浸透した割合,吸収した割合及び表面ではじかれた割合を測定し,浸透率,吸収率及
び反発率を算出する。これらの測定値から,その材料の耐浸透性能を評価する。
5
試験方法
5.1
装置
装置は,次による。
− 内径125±5 mm,長さ300±2 mm及び傾斜角度45°の硬質透明の半円筒形のとい(図1参照)。
− 長さ270 mm,外径105±5 mm及び質量140±7 gの半円筒形の硬質カバー。
− 口径0.8±0.02 mmの注射針。鋭い先端は除去し,末端は平たんに研磨する。
− 10±0.5 mLの試験液を送出することができる注射器又は同等品。
− 10±0.5 mLの試験液を注射針による切れ目のない細流又はジェット流によって滴下時間10±1秒で放
出するための動力式注射器駆動装置,液圧式ポンプ又は他の加圧システム。手動及び自然落下による
送出は行ってはならない。
注記1 試験中に装置内圧力が高くなること及び液体化学物質の高圧噴出に注意する必要がある。こ
れらの可能性がある場合には,必要な予防措置をとることが望ましい。
− 注射針及びアタッチメントを必要な位置に維持するための取付装置。
− 小さなビーカ
− 感度0.01 g以上の天びん
− 試験液に耐性のある透明フィルム
− 厚さ0.15 mm〜0.2 mmの吸収紙1)
− 精度0.1秒以上のストップウォッチ
− 試験を環境温度以外の温度で実行するための温度制御室又はキャビネット。
注記2 透明フィルムは,といを保護し,といの洗浄を不要とするために用いる。
注記3 吸収紙の質量変化は,試験片を浸透する試験液があればこれを示す。半円筒のカバーは,試
験液を放出した後,試験液で汚染された試験片と吸収紙との均一な接触を維持するために用
いる。
注1) JIS P 3801に規定する1種のろ紙がこの目的のために適している。
5.2
試験液
5.2.1
試験液の選択
試験液には,防護対象となる液体(又は複数の液体)を選択し使用する。
3
T 8033:2008
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
必要であれば,特に安全上の理由のために,結果が防護対象となる化学物質と類似していることを証明
できれば,代替物を用いてもよい。
揮発性液体の試験は,蒸発損失によって再現性のある試験結果にはならない。その場合には,定量分析
可能な揮発性液体に溶かした物質(例えば,蛍光又は可視の色素トレーサ)によって再現性のある試験結
果を得ることができる。ただし,これらの物質は,試験片の性能(すなわち,その耐浸透性及び反発性)
に影響を与えるものであってはならない。
注記 (30×10−3±3×10−3) Nm−1の表面張力に調節した水は,試験片をスクリーニングするために便
利で安全な試験液である。
5.2.2
試験温度
試験液は,指定試験温度に調節する。特に指定がなければ,温度23±3 ℃及び相対湿度(60±10) %で試
験する。
5.3
試験片の準備
試験片は,耐液体浸透性の防護服に使用されているか若しくは使用が検討されている防護服材料又は防
護服完成品の平らな試料から採取する。試験片は,JIS T 8115,JIS T 8122などこの規格を試験規格として
引用する関連規格で規定する手順によって前処理を行う(例えば,水洗及び洗浄による前処理)。
環境条件,前処理,劣化などが耐浸透性に影響を及ぼす可能性がある場合には,未処理の標準試験片(コ
ントロール試験片)を確保しておくことが望ましい。
5.4
手順
5.4.1 各試験液ごとに,防護服又は防護服材料から (360±2 mm)×(235±5 mm) の6枚の試験片を採取し,
0.01 gの単位まで質量をはかる。
織布の場合には,たて糸方向に3枚,よこ糸方向に3枚の試験片を採取する。不織布の場合には,製造
の方向が確認できる場合には,その方向に3枚,それと直角方向に3枚の試験片を採取する。
製造の方向が確認できない場合には,試料採取の前に任意の方向を割り当て,試験報告書にその内容を
記載する。
5.4.2 試験片の長手方向の下30 mmを折り畳み,適切な手段によって折り畳みの両端をそろえる。試験片
のすべてのしわを除去する。
5.4.3 吸収紙及び透明フィルムをそれぞれ (300±2 mm)×(235±5 mm) の長方形に切り取り,これら2枚
を重ねて0.01 gの単位まで質量をはかる。
5.4.4 装置,試験液,試験片などが要求された試験温度に調整されていることを確認する。
5.4.5 注射針を通して送出される試験液の容積が,指定限度内であることを確認する(5.1参照)。
5.4.6 とい内にひょう(秤)量した透明フィルム,吸収紙及び試験片を,この順に置く。試験液が試験片
の接触面(外側表面)に当たるように,試験片を取り付けるのがよい。試験片の上端をといの上端にそろ
え,また,試験片の折り返された端が下を向いて下端から30 mm突出していることを確認する(図1参照)。
各層のすべてのしわを除去し,すべての表面が均等に接触していることを確認し,クリップで固定する。
5.4.7 ビーカの質量を,0.01 gの単位まではかる。試験片表面から流れ落ちる試験液を収集するため,ビ
ーカを試験片の折り返された端の下に置く(図1参照)。
5.4.8 注射針の先端がといの斜面から100±2 mmにくるように,といの頂上の両端をつなぐ仮想線の中心
を垂直に通るように注射針を取り付ける(図1参照)。
4
T 8033:2008
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
単位 mm
1 とい(樋)
2 透明フィルム
3 吸収紙
4 試験片
5 クリップ
6 注射針
7 ビーカ
図1−試験装置の概略図
5.4.9 ストップウォッチを始動すると同時に,注射針を通して試験片の表面に試験液(10 mL)を滴下時
間10±1秒で放出する。遅滞なく半円筒のカバーを試験片の上部中央に置いて,カバー及びといの下端の
位置をそろえる。
揮発性化学物質による試験は,蒸発損失の可能性を考慮することが望ましい。蒸発損失は,完全な物質
5
T 8033:2008
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
収支が行われない限り,指数を低下させる可能性がある。
この確認のために,試験片,吸収紙及びフィルムの質量変化並びにビーカの質量変化を試験液の全質量
と比較する。
5.4.10 試験液の放出開始から60秒後,試験片の折り返された端から垂れているあらゆる滴を取り除くた
めに,といを軽くたたく。次いで,流出を避けるためにカバー及び試験片を慎重に取り除き,素早く次の
質量を0.01 g単位まで測定する。
− 吸収紙及びフィルム
− ビーカ
− 試験片
5.5
試験結果の計算式
各試験片及び各試験液の,浸透率,吸収率及び反発率は,次の式によって求める。
a) 浸透率 (IP)は,次による。 (
)100
/
t
p
P
×
=
M
M
I
····································································· (1)
ここに,
IP: 浸透率
Mp: 吸収紙及びフィルムに蓄積された試験液の質量(g)
Mt: 試験片上に放出された試験液の質量(g)
b) 吸収率 (IA)は,次による。
(
)100
/
t
a
A
×
=
M
M
I
····································································· (2)
ここに,
IA : 吸収率
Ma: 試験片に吸収された試験液の質量(g)
Mt: 試験片上に放出された試験液の質量(g)
c) 反発率 (IR)は,次による。
)
(
100
/
t
r
R
×
=
M
M
I
····································································· (3)
ここに,
IR: 反発率
Mr: ビーカに収集された試験液の質量(g)
Mt: 試験片上に放出された試験液の質量(g)
また,IP,IA及びIRは,小数点以下1位まで表示する。
蒸発損失による補正を行うときは,それぞれの指数IP,IA及びIRの計算の前に,試験条件下で失われる
質量をMp,Ma又はMrに加算する必要がある。
6
試験報告書
試験報告書は,次の情報を記載する。
a) この規格の番号
b) 試験した材料の製造業者名,及び必要に応じて,試験片はどの製品のどの部位から採取したか,製品
名及びその部位名
c) 試験した材料の単位面積当たりの質量 (g/m2)
d) 試験した材料の前処理方法
e) 試験液の組成,商品名など
f)
液体又は混合物の最も高い揮発性の成分の沸点,及び蒸発損失(なければ,“なし”と記録する)
g) 試験温度及びその範囲 (℃)
h) すべての個別試験結果(浸透率,吸収率,反発率及び滴下時間)及び特記すべき環境条件,前処理,
6
T 8033:2008
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
劣化などの影響因子,並びに蒸発損失による補正を行ったときは,蒸発損失によって補正した値
i)
試験実施者のコメント
参考文献 JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
7
T
8
0
3
3
:
2
0
0
8
7
T
8
0
3
3
:
2
0
0
8
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書JA
(参考)
JISと対応する国際規格との対比表
JIS T 8033 : 2008 化学防護服−防護服材料の液体化学物質に対する耐浸透性試験方
法
ISO 6530 : 2005,Protective clothing−Protection against liquid chemicals−Test method
for resistance of materials to penetration by liquids
(Ⅰ)JISの規定
(Ⅱ)
国際規格
番号
(Ⅲ)国際規格の規定
(Ⅳ)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(Ⅴ)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び名称
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範
囲
1
対象となる液体化学物質
についての具体的な記
述。
削除
先行するパラグラフを追加説
明する内容であり,二重説明と
なるため削除し,内容は解説に
記載した。
2 引用規
格
3 用語及
び定義
2
定義
追加
ISO規格にはないJIS T 8115か
らの引用を追加した。
4 試験方
法の原理
3
原理
追加
ISO規格にはない“吸収した割
合”を追加した。
より正確な表現とするため追加し
た。次回改正時にISOに提案する。
5 試験方
法
5.1 装置 注1)
5.2.1 試験液の選
択 注記
5.2.2 試験温度
4.1 注a)
4.2.1
4.2.2
ろ紙として“ワットマン
No.1”を推奨している。
選択
ISO規格では適用温度を
温度20±2 ℃及び相対湿
度(65±5)%としている。
変更
変更
変更
“ワットマンNo.1”は商品名
であり,同等のJIS製品を推奨
することとした。
ISO規格では本文として記載
しているが,解説的要素であり
JISでは注記として記載した。
この規格を試験方法として採
用しているJIS T 8115(ISO
/FDIS 16602:2004)の材料試験
条件である温度23±3 ℃及び
相対湿度(60±10)%を採用し
た。
次回改正時にISOに提案する。
同一の試験について,製品規格で要
求する試験条件と方法規格で要求
する条件とが異なることは好まし
くない。JISでは先行して制定され
た製品規格JIS T 8115に条件を一
致させた。次回ISO規格の改正時
に条件を統一するよう提案する。
8
T
8
0
3
3
:
2
0
0
8
8
T
8
0
3
3
:
2
0
0
8
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(Ⅰ)JISの規定
(Ⅱ)
国際規格
番号
(Ⅲ)国際規格の規定
(Ⅳ)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(Ⅴ)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び名称
内容
箇条番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
5 試験方
法(続き)
5.3 試験片の準備
5.4.1
5.4.9
4.3
4.4.1
4.4.9
材料から試験片を採取す
ることとしている。
試料の試験する方向性に
ついての報告が推奨項目
となっている。
蒸発損失の計算が推奨項
目となっている。
追加
追加
変更
変更
試験目的の材料手当てができ
ない場合もあり,完成品からの
試料採取を可とした。
関連規格の具体例としてJIS T
8115及びJIS T 8122を記載し
た。
試験報告書に記載する項目で
あり,要求項目とした。
試験報告書に記載する項目で
あり,要求項目とした。
次回改正時にISOに提案する。
次回改正時にISOに提案する。
次回改正時にISOに提案する。
6 試験報
告書
h)
5 h)
追加
蒸発損失によって補正した値
を,その補正前の値と併記して
記載することとした。
試験結果の記載がより明確になる。
次回改正時にISOに提案する。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 6530:2005,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除……………… 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加……………… 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更……………… 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD………………国際規格を修正している。