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T 8010:2017  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 1 

2 引用規格························································································································· 1 

3 用語及び定義 ··················································································································· 1 

4 試験方法の種類及び適用 ···································································································· 2 

4.1 試験方法の種類 ············································································································· 2 

4.2 試験方法の種類の適用 ···································································································· 2 

5 試験条件························································································································· 3 

5.1 試験室の標準状態 ·········································································································· 3 

5.2 供試品の試験準備 ·········································································································· 3 

6 試験装置及び器具 ············································································································· 3 

6.1 耐電圧試験装置 ············································································································· 3 

6.2 測定計器 ······················································································································ 3 

6.3 電極 ···························································································································· 3 

6.4 散水器具 ······················································································································ 5 

7 試験方法························································································································· 5 

7.1 試験電圧の測定方法 ······································································································· 5 

7.2 試験電圧 ······················································································································ 5 

7.3 試験時間 ······················································································································ 5 

7.4 充電電流の測定方法 ······································································································· 5 

7.5 沿面距離 ······················································································································ 5 

7.6 試験時における供試品及び電極の配置と状態 ······································································· 5 

8 記録······························································································································· 6 

附属書A(参考)沿面距離 ····································································································· 7 

附属書B(参考)充電電流の測定 ···························································································· 8 

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(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,公益社団法人日本

保安用品協会(JSAA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格

を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業大臣が改正

した日本工業規格である。これによって,JIS T 8010:2001は改正され,この規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の

特許出願及び実用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

T 8010:2017 

絶縁用保護具・防具類の耐電圧試験方法 

Testing method for withstand voltage of personal protective equipment and 

insulating devices 

序文 

この規格は,1972年3月1日に制定され,その後3回の改正を経て今日に至っている。前回の改正は2001

年で,以来15年が経過しているため,今回内容の全面的検討が行われた。 

なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。 

適用範囲 

この規格は,7 000 V以下の電線路の活線作業,その近接作業などで,感電などの危害を防止するために

用いる絶縁用保護具,絶縁用防具及び絶縁用防護具の一般商用周波数における耐電圧試験及び充電電流の

測定方法について規定する。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS C 0920 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード) 

JIS C 1102-2 直動式指示電気計器 第2部:電流計及び電圧計に対する要求事項 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

JIS Z 8703 試験場所の標準状態 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

3.1 

絶縁用保護具・防具類 

絶縁用保護具・防具類とは,絶縁用保護具,絶縁用防具及び絶縁用防護具の総称。 

3.2 

絶縁用保護具 

活線作業,活線の近接作業などで,作業者の感電などの危害を防止するために,当該作業者が着用する

絶縁性のもの1)。 

注1) 絶縁用保護具には,電気用安全帽,電気絶縁用手袋,電気用袖カバー,電気用絶縁衣,電気用

長靴などがある。 

T 8010:2017  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.3 

絶縁用防具 

活線作業,活線の近接作業などで,作業者の感電を防止するために,電線路の充電部,支持物などに装

着する絶縁性のもの2)。 

注2) 絶縁用防具には,電気用絶縁管,電気用絶縁シート,電気用絶縁カバー,接地体用の絶縁カバ

ーなどがある。 

3.4 

絶縁用防護具 

建設作業において,建設物周辺の電線路に建設機械器具,作業者又はその取扱物が接近又は接触するこ

とによる作業者の感電を防止するために,当該電線路の充電部,支持物などに装着する絶縁性のもの3)。 

注3) 絶縁用防護具には,建設用防護管,建設用防護シート,建設用防護カバーなどがある。 

3.5 

水中試験 

供試品の内部に水を満たして水槽中に保持し,当該供試品の内外面の水を電極として行う試験。 

3.6 

気中試験 

供試品の内外面に導電性の金属又は導電性の液体4)を含浸した布地などを導電体として密着させ,両面

の導電体をそれぞれ電極として行う試験。 

注4) 導電性の金属としては,銅,黄銅,アルミニウム,ニッケル,ステンレスなどがあり,導電性

の液体としては,水道水,石けん溶液,水溶性シリコーンなどがある。 

3.7 

沿面距離 

水中試験又は気中試験において,二つの電極間に介在する供試品の表面に沿った最短距離。 

試験方法の種類及び適用 

4.1 

試験方法の種類 

試験方法の種類は,次による。 

a) 水中試験 

b) 気中試験 

c) 散水後に行う気中試験 

4.2 

試験方法の種類の適用 

試験方法の種類の適用は,供試品の構造及び形状によって,次のいずれかによる。 

a) 供試品の内外面に規定の沿面距離を保ち,その内外の水位が同一になるまで水を満たすことができる

構造のものは,水中試験を行う。 

例1 電気用安全帽,電気絶縁用手袋,電気用長靴など 

b) 水中試験を行うことが不可能なものは,気中試験を行う。 

例2 電気用絶縁シート,電気用絶縁管,建設用防護管など 

c) 散水後に行う気中試験は,建設用防護管に適用する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

試験条件 

5.1 

試験室の標準状態 

この試験は,特に指定する場合を除いて,JIS Z 8703に規定する常温(20±15) ℃,常湿[相対湿度(65

±20) %]の室内で行う。 

5.2 

供試品の試験準備 

試験準備は,次のとおり行う。 

a) 水中試験及び気中試験においては,供試品は,試験実施前,少なくとも1時間以上5.1に規定する標

準状態の試験室内に置いたものを用いる。 

b) 散水後に行う気中試験においては,供試品は,JIS C 0920の6.(第二特性数字で表される水の浸入に

対する保護等級)の第二特性数字3(散水)に規定する試験方法によって散水を行ったものを用いる。 

試験装置及び器具 

6.1 

耐電圧試験装置 

耐電圧試験装置は,主に変圧器,回路遮断器,電圧調整装置などからなり,各装置の性能は,次による。 

a) 変圧器 変圧器は,供試品の充電電流に対して適正容量以上のもので,かつ,試験電圧の1/2以上で,

波高率が1.34〜1.48の範囲内でなければならない。また,三次巻線をもったものは,その精度が±1 %

以内でなければならない。 

なお,二次側に保護抵抗を挿入する場合は,その電圧降下による誤差が無視できる程度でなければ

ならない。 

b) 回路遮断器 回路遮断器は,供試品の絶縁破壊によって流れる電流から変圧器及び電極を保護するた

め,破壊によって自動的にかつ速やかに作動しなければならない。 

c) 電圧調整装置 電圧調整装置は,ほぼ一定の電圧上昇速度が得られるものを用い,1)可変比単巻変圧

器,2)抵抗分圧器又は3)誘導電圧調整器による方法のうちのいずれかによるものとし,電圧の調整の

ときに回路を遮断してはならない。 

6.2 

測定計器 

試験電圧,充電電流の測定などに用いる測定機器は,次のような精度をもち,測定値が定格値の15〜85 %

の範囲でなければならない。 

なお,測定機器は,正しく取り付け,電圧計及び電流計に関しては,少なくとも1年に1回以上,その

性能について検査を実施し,校正しなければならない。 

a) 電圧計 試験電圧を測定するための電圧計は,実効値を表示するものであって,その精度は,JIS C 

1102-2に規定する0.5級以上のものでなければならない。ただし,静電電圧計を用いる場合には,2.5

級以上のものでよい。 

b) 電流計 充電電流を測定するための電流計は,実効値を表示するものであって,その精度は,JIS C 

1102-2に規定する1.0級以上のものでなければならない。 

c) 周波数計 試験装置に用いる電源の周波数を測定したい場合に用いるものであって,その許容差は,

±1 %でなければならない。 

6.3 

電極 

電極は,次による。 

a) 水中試験の場合には,供試品の内外面の水(水道水)を電極とする。 

なお,内面の電極は,導電性の小球5)を用いてもよい。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注5) 導電性の小球には,直径4 mm又は5 mmの金属球又はプラスチック球がある。 

b) 気中試験の場合には,供試品の形状及び寸法に適合し,かつ,供試品の表面に密着する導電性金属(縁

部を丸く仕上げた構造)に織布,フェルト,ウレタンフォームなどを内張したものを電極とする。 

ただし,供試品の形状などによって電極の一部は織布,フェルト,ウレタンフォーム,導電性金属

又は導電性プラスチックだけであってもよい。特に,供試品の表面が平滑シート状のもの若しくは管

状のもので試験時に供試品にひずみを与えず,かつ,電極が供試品の表面に密着できる構造の場合,

又は供試品が耐オゾン性に富み,オゾンによって劣化,亀裂などの変質のおそれのない場合には,導

電性金属又は導電性プラスチックだけであってもよい。また,管状のものに対して棒状電極を使用す

る場合はできるだけ密着させることが望ましい。織布,フェルト,ウレタンフォームを用いる場合に

は,導電性液体を十分含浸させる。袋状の供試品にあっては,内面の電極は導電性の小球5)を用いて

もよい。 

なお,以上のものを総合した耐電圧試験装置の結線の一例を図1に示す。 

 Tr:試験用変圧器 

SVR:可変比単巻変圧器 
Hz:周波数計 
PL1:電源表示灯 

S1:電源開閉器 
CB:回路遮断器 
PL2:表示灯 

V:電圧計 
A:電流計 
S2:短絡開閉器 

図1−耐電圧試験における試験装置と供試品の結線例 

〜 

〜 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.4 

散水器具 

散水器具は,JIS C 0920の付図4[散水及び飛まつに対する試験装置:第二特性数字3及び4(オシレー

ティングチューブ)]に示すオシレーティングチューブ又は付図5[散水及び飛まつに対する手持試験装

置:第二特性数字3及び4(散水ノズル)]に示す散水ノズルとする。 

試験方法 

7.1 

試験電圧の測定方法 

試験電圧の測定方法は,次のいずれかの方法による。 

a) 試験用変圧器の三次巻線に電圧計を接続する。 

b) 高圧側に静電電圧計を接続する。 

c) 計器用変圧器の二次側に電圧計を接続する。 

d) 一次側の電圧から換算する。ただし,この場合,試供品の静電容量及び変圧比の関係から,あらかじ

め試験装置ごとに特性を確認しておく。 

7.2 

試験電圧 

試験電圧は,最初低い電圧を加え,規定試験電圧値に達するまで,約1 000 V/秒の速度で昇圧する。 

なお,手動昇圧の耐電圧試験機を使用する場合では,規定試験電圧値の約75 %まで速い速度で昇圧させ,

以後は約1 000 V/秒の速度で昇圧させてもよい。 

7.3 

試験時間 

試験時間は,規定試験電圧値に達したときから起算して連続印加する時間とする。 

7.4 

充電電流の測定方法 

耐電圧試験中に流れる充電電流を測定する場合には,一般に接地側に接続した電流計によって測定する。

測定値の丸め方は,JIS Z 8401の規則Aによる。多数同時に並列して耐電圧試験を行う場合の充電電流は,

算術平均で示す。 

注記 試験電源周波数の違いによる充電電流の換算方法を次に示す。 

試験電源周波数が50 Hzで測定された充電電流を60 Hzに換算したい場合には,次の式によ

る。 

なお,測定値の丸め方は,JIS Z 8401の規則Aによる。 

60

50

50

60

×

=I

I

ここに, 

I60: 60 Hzにおける充電電流(mA) 

I50: 50 Hzにおける充電電流(mA) 

7.5 

沿面距離 

試験の際の沿面距離は,沿面放電を生じない限度において,できる限り小さくする。水中試験では,供

試品の形状によって沿面距離を均等にとれない場合もあるが,このような場合には,沿面距離が最短とな

る箇所を測定する。気中試験では,できる限り沿面距離が均一になるように電極形状を工夫する。 

なお,受渡試験の場合には,試験を容易にするために,沿面距離を多少緩和してもよい。 

注記 沿面距離の目安を,附属書Aに示す。 

7.6 

試験時における供試品及び電極の配置と状態 

7.6.1 

水中試験 

水中試験を実施するときの留意事項は,次による。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 供試品は,縁の部分を上にして水槽中に保持し,試供品の沿面部分が水槽に接触しないようにする。 

b) 供試品の内側の水電極に挿入する導電体は,先端の滑らかな金属棒又は金属製鎖を用い,供試品内面

をきずつけたり,供試品に変形を与えないもので,供試品の沿面部分に接触しないようにする。 

c) 多数同時に並列して試験する場合には,供試品相互が接触しないよう適切な間隔を保つ。 

d) 沿面部分は,濡れていてはならない。 

e) 耐電圧試験の試験電圧値が低い場合(例えば,電気絶縁用手袋J00),破壊の判定が難しい場合がある。 

このようなときには,試験後に空気テスト6)等,供試品を引っ張ってピンホールがあるか否かを目

視で確認する。 

注6) 手袋の袖口を密着させて丸めていき,手袋内部の空気を加圧して手袋を膨らませ,空気漏れ

を見つけるテスト。 

7.6.2 

気中試験 

気中試験を実施するときの留意事項は,次による。 

a) 電極は,供試品の変形を加えることなく,供試品の内面及び外面にできるだけ密着させる。 

b) 多数同時に並列して試験を行う場合には,電極間の放電を避ける。 

c) 沿面部分は,濡れていてはならない。 

d) 連結部分を試験する場合は連結部分を確実に連結する。また,内部電極は連結部分においてもできる

だけ密着貫通させ,外部電極は連結部分全体を覆うように密着させる。連結部分の耐電圧試験方法の

一例を図2に示す。 

図2−連結部分の試験例 

7.6.3 

散水後に行う気中試験 

供試品は,散水によって付着した水滴を拭き取らずに,供試品の内面及び外面に電極を密着させる。 

記録 

試験成績書には,次の事項を記録しなければならない。 

a) 試験年月日 

b) 試験室の温度及び湿度 

c) 試験電圧及び試験時間 

d) 試験結果(充電電流を測定した場合には,充電電流値も含む。) 

e) その他の必要事項 

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附属書A 

(参考) 
沿面距離 

A.1 一般 

沿面距離は,試験電圧及び試験の種類によって異なるが,このほかに供試品の種類によっても多少変え

る必要がある。現状の国内外の規格を基に,絶縁用保護具・防具類における沿面距離の目安は,次による。 

a) 電気絶縁用手袋,電気用長靴,絶縁シートなどの絶縁用保護具・防具類については,試験電圧及び試

験の種類の違いによって,表A.1に示す沿面距離を目安とすることが望ましい。 

表A.1−沿面距離 

単位 mm 

試験電圧 kV 

沿面距離 

水中,気中試験の場合 

散水後の気中試験の場合 

3以下 

30以下 

40以下 

 3を超え 10以下 

40以下 

50以下 

 10を超え 15以下 

50以下 

−a) 

15を超えるもの 

70以下 

−a) 

注a) 沿面放電が生じない最小の距離とする。 

b) 電気絶縁用手袋は,沿面距離について表A.2[JIS T 8112の表9(手袋開口部から水面までの沿面距離)]

に示すような数値を示しているが,形式検査においては,その最小値を用いて行い,全数検査のよう

な大量の試験を実施する場合だけ,その数値を緩和する。 

表A.2−手袋開口部から水面までの沿面距離(JIS T 8112の表9) 

単位 mm 

手袋の種類(クラス) 

開口部から水面までの沿面距離 

J00 

15〜40 

J0 

20〜40 

J01 

35〜40 

J1 

35〜65 

注記1 袖ぐりのある手袋については,袖ぐりの最もえぐられた

部分を手袋の縁とする。 

注記2 JIS T 8112の沿面距離は,手袋の開口部から水面までの

距離をいい,この規格でいう沿面距離の半分である。 

c) 電気用安全帽のように,沿面距離をあまり大きくすると耐電圧試験をする部分が小さくなるため,JIS 

T 8131に示すように,試験電圧が15 kVを超える場合は60 mm以内とする。 

T 8010:2017  

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附属書B 

(参考) 

充電電流の測定 

B.1 

一般 

絶縁用保護具・防具類の耐電圧試験で充電電流を測定する理由として,次のことが考えられる。 

B.2 

電撃安全上の理由 

充電電流の測定は,一つには電撃危険に対する安全性の評価が考えられる。一般に,人体に商用周波数

の交流電流が流れた場合,0.5 mAで自身の人体に電流が流れていると感じ(感知電流という。),また,成

人男子であれば10 mA以上の電流が2秒以上人体に流れると,自分の意志で感電箇所から離れることがで

きず(10 mAを可随電流又は離脱電流という。),50 mAの電流が1秒以上人体に流れると心臓が微細な振

動(心室細動)を起こし,たとえ他人が電源を遮断しても心室細動を止めることができず,感電死する危

険性がある(心室細動電流の発生限界)。 

B.3 

物理的理由 

絶縁用保護具・絶縁用防具類の耐電圧性能は,それに使用されている絶縁材料(絶縁物又は誘電体とも

いう。)の絶縁性能に依存している。絶縁物の絶縁性能を評価する指標として,一般に,絶縁破壊電圧値(交

流,直流及びインパルスにおける),漏れ電流値(充電電流値)及び耐電圧値(試験電圧と印加時間)など

があり,充電電流の測定はその一つと考えられる。 

理想的な絶縁物は電気回路的に見れば一種のコンデンサであり,それに電圧Eを印加すれば,コンデン

サ(静電容量C)に流れる電流Icは,次の式から求められる。 

Ic=ωCE(ω=2πf,角周波数) 

コンデンサの面積をS,厚さをdとすれば,C=ρ(S/d)であるので,Cの値は面積に比例し,厚さに反比

例する(ρは誘電率)。すなわち,絶縁物(コンデンサ)に流れる電流Icは,同じ絶縁物であっても,面積

が大きいほど厚さが薄いほど大きな値になり,絶縁物の大きさと厚さを同一にしないと絶縁性能の評価は

できない。そのため,絶縁用保護具又は絶縁用防具が大きくなれば,その全面に電圧を印加して測定する

充電電流は10 mA,50 mAなどには収まらず,大きな値になる。しかし,通常使用時に絶縁用保護具又は

絶縁用防具が電源に触れる部分はほんの一部分であり,実際には試験時のような大きな電流が流れること

はなく,感電の危険はない。 

一般に,絶縁物に交流電圧を印加すると損失を生じる。この損失は漏れ電流による損失,誘電分極に基

づく損失などによるもので,このような損失のため電流位相は,理想的な絶縁物(コンデンサのみ)に流

れる無損失電流(Ic)より遅れの電流が流れる。すなわち,一般的な絶縁物は,等価回路で示せば,図B.1

のa)に示すようにコンデンサCと抵抗Rとの並列回路と考えることができ,実際に流れる漏れ電流Iは図

B.1のb)に示すような,無損失電流よりδだけ遅れの電流になり,常にI>Icである。δを誘電損角,その

正接を誘電正接(tanδ)という。このため,誘電正接が小さければ小さいほど理想絶縁物に近く漏れ電流

も小さくなり,誘電正接は絶縁物を評価する上で重要な指標の一つになる。同じ条件で絶縁物の充電電流

を測定すれば,充電電流の測定は誘電正接の大小を簡単に判定したことになる。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

a) 絶縁物の等価回路 

b) 漏れ電流(IcとI)のベクトル図 

図B.1−絶縁物の等価回路と漏れ電流との関係 

B.4 

試験実施上の理由 

試験実施者にとって,充電電流の測定は供試品の絶縁破壊(劣化)の判定の指標として利用できる。例

えば,耐電圧試験の試験電圧が低いと絶縁破壊しても漏れ電流が小さく,耐電圧試験装置の回路遮断器の

遮断設定値以下である場合が多く,絶縁破壊を判定できない。しかし,充電電流を測定することによって,

通常時測定している以上の充電電流が観測された場合,供試品が絶縁破壊(劣化)したかもしれないと予

測し,別途,供試品を取り出して,空気テストなどの方法で破壊を確認することができる。また,耐電圧

試験の試験電圧が高い場合,供試品が絶縁破壊すると耐電圧試験装置に大きな短絡電流が流れ,試験装置

が焼損するおそれがある。このような場合,供試品の充電電流値は試験装置が焼損しないように試験装置

の回路保護用遮断器の設定電流値を決定する目安になる。 

 
 

参考文献 JIS T 8112 電気絶縁用手袋 

JIS T 8131 産業用ヘルメット