日本工業規格
JIS
T
7327
-1989
医療用電動式吸引器
Electric Suction Eqipment for Medical Use
1.
適用範囲 この規格は,医療用電動式吸引器について規定する。ただし,採血用のもの,歯科用吸引
器,眼科用吸引かん(灌)流器,超音波吸引かん流器,中央パイピング用の大形室外吸引器及び低圧持続
吸引器を除く。
備考 この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって規格
値である。
引用規格:
JIS B 7505
ブルドン管圧力計
JIS T 1001
医用電気機器の安全通則
JIS T 1002
医用電気機器の安全性試験方法通則
JIS T 1003
医用電気機器の電気的安全性試験方法
JIS T 1004
医用電気機器の機械的安全性試験方法
JIS T 1005
医用電気機器取扱説明書の様式
関連規格:JIS B 8316 油回転真空ポンプ性能試験方法
JIS Z 8203
国際単位系 (SI) 及びその使い方
JIS Z 8751
液柱差を使う真空計による真空度測定方法
2.
用語の意味 この規格で用いる主な用語の意味は,JIS T 1001(医用電気機器の安全通則)の用語の
意味によるほか,次のとおりとする。
(1)
医療用電動式吸引器 手術及び処置のために,吸引ポンプ(以下,ポンプという。)によって吸引容器
内に,血液・のう(膿)汁・その他の分泌物など(以下,吸引物という。
)を吸引する機器(以下吸引
器という。
)
。
(2)
吸引接続口 吸引器に吸引物を吸引するためのホース(以下,吸引ホースという。)の接続口。
(3)
吸引器の吸引圧 吸引器の吸引接続口を閉じて,ポンプを作動させ,圧力が安定したときの値。
(4)
ポンプ排気口 ポンプ本体の空気吐出口。
(5)
吸引ポンプの排気流量 ポンプ排気口を通って,単位時間に流れる気体の体積。
(6)
吸引容器 吸引物を収容する容器。
(7)
真空計 負のゲージ圧を指示する圧力計。
(8)
ポンプ吸気口 ポンプ本体の空気吸込口。
(9)
吸引圧調整器 吸引容器に吸引する圧力を調整する調整器。
(10)
吸引器排気口 吸引器の空気排出口。
2
T 7327-1989
(11)
吸引器の吸引流量 吸引接続口から単位時間に流れる蒸留水の体積。
3.
安全
3.1
電気的安全 電気的安全は,JIS T 1001 の 6.による。
なお,電撃に対する保護の形式及び程度は,それぞれ JIS T 1001 に規定された次の分類に適合するもの
とする。
(1)
電撃に対する保護の形式 クラス I 機器,クラス II 機器,又は内部電源機器。
(2)
電撃に対する保護の程度 B 形機器又は BF 形機器。
3.2
機械的安全 機械的安全は,JIS T 1001 の 7.による。
3.3
過熱,発火その他の危険に対する保護 過熱,発火その他の危険に対する保護は,JIS T 1001 の 8.
による。
3.4
動作の安全性 動作の安全性は,JIS T 1001 の 9.による。
4.
性能
4.1
吸引器の吸引圧 吸引器の吸引圧は,6.3.1 の規定によって試験を行ったとき,真空計によって−
40.0kPa {
−30.0cmHg} 以上でなければならない。
4.2
吸引器の吸引流量 吸引器の吸引流量は,6.3.2 の規定によって試験を行ったとき,蒸留水 200ml を
6
秒以下で吸引しなければならない。
4.3
吸引容器 吸引容器は,6.3.3 の規定によって試験を行ったとき,内破したり,永久的な変形をして
はならない。
5.
構造
5.1
一般 吸引器の構造は,吸引接続口を通じて吸引できる構造であって,吸引器排気口を利用して噴
霧などができる構造であってはならない。
5.2
ポンプ本体 ポンプ本体は電動機に直結又はベルト掛けしており,次の形式のいずれかのもので,
ポンプ吸気口及びポンプ排気口を備えていなければならない。
(1)
回転翼形ポンプ ばね又はロータ(回転子)の回転する遠心力によってステータ(外囲器)に押し付
けられている数枚の翼板(しゅう動板)の回転によって,翼板,ロータ及びステータで囲まれた空間
の容積を変化させて,気体輸送を行う容積移送式ポンプ。
(2)
ダイヤフラム形ポンプ ゴム製などのダイヤフラムの往復運動によって気体輸送を行う容積移送式ポ
ンプ。
(3)
ピストン形ポンプ シリンダ内でのピストンの往復運動によって気体輸送を行う容積移送式ポンプ。
(4)
カム形回転ポンプ 偏心ロータ(カム)がステータに付いている翼板(しゅう動板)によって押さえ
付けられながら回転し,翼板,ロータ及びステータで囲まれた空間の容積を変化させて,気体輸送を
行う容積移送式ポンプ。
5.3
吸引接続口 吸引接続口は,吸引ホースが容易に脱落しない構造でなければならない。
5.4
吸引容器 吸引容器は,内部が観察でき,通常の使用によって製造業者の指定する吸引器の吸引圧
を最高にした状態でも十分耐えるものでなければならない。
5.5
真空計 真空計を装着する場合は,JIS B 7505(ブルドン管圧力計)に規定する 1.5 級又はこれと同
等の性能をもつものでなければならない。
3
T 7327-1989
5.6
吸引圧調整器 吸引圧調整器を装着する場合は,回路内の吸引圧を円滑に調整できるものを用い,
強弱の表示を明記しなければならない。
5.7
吸引器排気口 吸引器排気口を装着する場合は,吸引器排気口は吸引ホースを接続できない形状で
あり,排出空気が床の上に直接放出されてはならない。
6.
試験
6.1
試験条件 試験条件は,JIS T 1002(医用電気機器の安全性試験方法通則)の 4.による。
6.2
安全性試験
6.2.1
電気的安全性試験 電気的安全性試験は,JIS T 1003(医用電気機器の電気的安全性試験方法)に
よる。
6.2.2
機械的安全性試験 機械的安全性試験は,JIS T 1004(医用電気機器の機械的安全性試験方法)に
よる。
6.3
性能試験
6.3.1
吸引器の吸引圧 吸引器の吸引圧,吸引器の吸引接続口に閉管水銀マノメータ又はこれと同等の性
能をもつ計器を接続し,吸引圧調整器を最高にして測定する。
6.3.2
吸引器の吸引流量 吸引器の吸引流量は,メスシリンダなどで計量した蒸留水 200ml を容器に入れ,
内径 8mm,長さ 1.3m の吸引ホースの一方を吸引器の吸引接続口に接続し,他方を蒸留水 200ml の容器に
入れ,吸引圧調整器を最高にしてポンプを作動させ,蒸留水 200ml の容器が空になる時間を測定する。
6.3.3
吸引容器の内破試験 吸引容器にポンプなどを接続し,−94.9kPa {−71.2cmHg} 又は製造業者が
表示している吸引器の吸引圧のいずれか大きい方の吸引圧をかけて,5 分間保持し,開放する。この試験
をもう一度繰り返し,目視する。
7.
表示 吸引器の表示は,次による。
(1)
吸引器には,JIS T 1001 の 12.に規定する事項のほか,吸引器の吸引圧及びポンプの排気流量を銘板で
表示すること。
備考 ポンプの排気流量は,ポンプ排気口にフロート形面積流量計又はこれと同等の性能をもつ計器
を接続し,その値を測定する。この場合,測定のための配管用ホースは,排気流量に影響を及
ぼしてはならない。
なお,脈動を安定させるためのテストドームを中央に接続してもよい。
(2)
“採血用に使用してはならない。
”の文字を,外部の見やすい場所に表示すること。
8.
附属文書 吸引器には,次の文書を附属しなければならない。
(1)
性能に関する事項
(2)
取扱説明書 取扱説明書は,JIS T 1005(医用電気機器取扱説明書の様式)による。
9.
使用条件 使用条件は,JIS T 1001 の 3.による。
4
T 7327-1989
医療安全用具部会 医用器械専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
榊 原 欣 作
名古屋大学医学部附属病院高気圧治療部
大 場 琢 磨
日本医療用プラスチック協会
渡 辺 徹
厚生省薬務局
前 田 勲 男
工業技術院標準部
平 井 慶 徳
順天堂大学
水 野 明
東京大学医学部
沢 桓
東京医科歯科大学医学部
宮 坂 久 基
株式会社千代田製作所
河 西 輝 久
株式会社河西医療電機製作所
池 田 玉 治
川崎重工業株式会社神戸工場
石 丸 裕 康
トミー精工株式会社
若 井 秀 治
泉工医科工業株式会社
佐々木 磨
アトム株式会社
(事務局)
柾 谷 栄 吾
工業技術院標準部電気・情報規格課
根 上 雄 二
工業技術院標準部電気・情報規格課