T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 要求事項························································································································· 2
4.1 一般 ···························································································································· 2
4.2 光学性能 ······················································································································ 3
4.3 構造及び機能 ················································································································ 3
4.4 光ハザードからの保護 ···································································································· 3
5 光学性能検査方法 ············································································································· 4
5.1 一般事項 ······················································································································ 4
5.2 検査図票の条件 ············································································································· 4
5.3 眼底カメラ光学系の解像力検査方法··················································································· 5
5.4 撮影画角検査 ················································································································ 5
5.5 撮影倍率検査 ················································································································ 5
5.6 眼底におけるセンサの画素間距離の確認············································································· 5
6 附属文書························································································································· 6
7 表示······························································································································· 6
附属書A(規定)光ハザードの値及び計算に関する指針 ······························································ 7
附属書B(参考)眼底カメラの安全使用のための指針 ································································· 12
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,日本医用光学機器
工業会(JMOIA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改
正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣が改正した日本工業規格であ
る。これによって,JIS T 7320:1988は改正され,この規格に置き換えられた。
また,令和2年10月26日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。厚生労働大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
T 7320:2015
(ISO 10940:2009)
眼底カメラ
Fundus cameras
序文
この規格は,2009年に第2版として発行されたISO 10940を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本産業規格である。
1
適用範囲
この規格は,JIS T 15004-1:2013及びJIS T 15004-2:2013とともに用いて,画像情報を診断に提供する目
的で,人間の眼の眼底を観察,写真撮影,又は電子撮像するために用いる眼底カメラの要求事項及び試験
方法について規定する。
この規格は,次の機器には適用しない。
− 検査の間に眼に接触するもの
− 走査式レーザ光源を使うもの
JIS T 15004-1:2013及びJIS T 15004-2:2013と差異が生じている場合は,この規格を優先する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 10940:2009,Ophthalmic instruments−Fundus cameras(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)は適用しない。
JIS T 0601-1:2012 医用電気機器−第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項
注記 対応国際規格:IEC 60601-1:2005,Medical electrical equipment−Part 1: General requirements for
basic safety and essential performance(MOD)
JIS T 15004-1:2013 眼光学機器−基本的要求事項及びその試験方法−第1部:全ての眼光学機器に適
用される一般的要求事項
注記 対応国際規格:ISO 15004-1:2006,Ophthalmic instruments−Fundamental requirements and test
methods−Part 1: General requirements applicable to all ophthalmic instruments(IDT)
JIS T 15004-2:2013 眼光学機器−基本的要求事項及びその試験方法−第2部:光ハザードからの保護
注記 対応国際規格:ISO 15004-2:2007,Ophthalmic instruments−Fundamental requirements and test
methods−Part 2: Light hazard protection(IDT)
2
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
眼底カメラ光学系の眼底での解像力(resolving power of the fundus camera optics on the fundus)
眼底上の2本の隣接した線の認識できる最小間隔。1 mm当たりの線対の数(Lp/mm)で表す。
3.2
撮影画角,FOV(angular field of view, FOV)
像面の最大寸法2rが,眼の射出瞳に対して張る角度(図1参照)。
3.3
撮影倍率(magnification of image)
光軸中心の撮像面における,物体の大きさと物体の眼底での大きさとの比率。ただし,眼が正視であり,
かつ,空気中において17 mmの焦点距離をもつと仮定する。
3.4
眼底における画素間距離(pixel pitch on the fundus)
眼底に投影されるデジタルイメージセンサの,2画素(画素中心から中心まで)の理論的な距離。眼が
正視で,かつ,それが空気中において17 mmの焦点距離をもつと仮定し,マイクロメートル(μm)で表
す。
3.5
ハイアイポイント接眼レンズ(high eye point eyepiece)
射出瞳が,接眼レンズから十分に離れており,眼鏡の使用が可能な接眼レンズ。
2
r
r
r
r
1
撮影画角
2
光学系の入射瞳/眼の射出瞳
図1−様々な形体における寸法rの意味
4
要求事項
4.1
一般
眼底カメラは,JIS T 15004-1:2013及びJIS T 15004-2:2013に規定する要求事項に適合しなければならな
い。
3
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4.2
光学性能
眼底カメラは,表1に規定する要求事項に,適合しなければならない。
撮像のために近赤外光(NIR)を使う場合(例えば,インドシアニングリーン蛍光眼底造影)は,要求
事項の解像力の限界値を係数1.6で除した数値を用いる。
30°以下の撮影画角をもつ眼底カメラの場合,網膜周辺の観察又は撮像のために乱視補正機構をもつこ
とが望ましい。
表1−光学性能に対する要求事項
基準
要求事項
眼底カメラ光学系の
眼底での解像力a)
画角
≦30°
中心部
≧80 Lp/mm
中間部(r/2)
≧60 Lp/mm
周辺部(r)
≧40 Lp/mm
画角
>30°
中心部
≧60 Lp/mm
中間部(r/2)
≧40 Lp/mm
周辺部(r)
≧25 Lp/mm
撮影画角許容値
±5 %
撮影倍率許容値b)
±7 %
眼底における画素間距離許容値c)
±7 %
光学式ファインダー視度調整範囲
(光学式ファインダーのある場合)
−5 D〜+5 D
ハイアイポイント接眼レンズ
−4 D〜+4 D
患者の視度補正調整範囲
−15 D〜+15 D
注a) この表に従った解像力を達成するために,光学的手法を用いることが望
ましい。画像を撮影する場合には,適切な媒体の選択が必要である。
b) フイルムに記録する眼底カメラだけに適用する。
c) 撮像素子に記録する眼底カメラだけに適用する。
4.3
構造及び機能
4.3.1
一般
画像内の反射光及び迷光は,実用上差し支えない程度に設計しなければならない。
4.3.2
ハイアイポイント接眼レンズ
製造業者が,ハイアイポイント接眼レンズであることを宣言する場合は,射出瞳が接眼レンズ端部(ア
イカバーを除く。)から少なくとも17 mm以上離れていなければならない。
4.4
光ハザードからの保護
光ハザードからの保護は,JIS T 0601-1:2012の10.5〜10.7によるほか,眼底カメラは,次のグループ分
けを考慮した上で,JIS T 15004-2:2013に規定する光ハザードに関する要求事項に従わなければならない
(光ハザードの値及び計算に関する指針を,附属書Aに示す。)。
JIS T 15004-2:2013の箇条4に従い,眼底カメラがグループ1機器又はグループ2機器に該当するか否か
を決定しなければならない。眼底カメラに対する適切なJIS T 15004-2:2013の適用条項は,次による。
a) グループ1眼底カメラ
1) 要求事項は,JIS T 15004-2:2013の5.1,5.2及び5.4(5.4.3を除く)を適用する。複数の光源が眼の
同一部位を同時に照射するように設計した眼底カメラは,次のi)及びii)を満たさなければならない。
i)
光放射量は,複数光源の各単体の光源ごとに適用するそれぞれの限界値未満である。
ii) 複数光源からの各単体又は組み合わせの光放射は,JIS T 15004-2:2013の表2及び表3に示す限界
4
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値未満である。
2) 試験方法は,JIS T 15004-2:2013の6.1,6.2及び6.4を適用する。
装置が,グループ1眼底カメラの場合は,追加の要求事項はない。グループ1眼底カメラ以外の場合は,
b)の追加要求事項に適合しなければならない。
b) グループ2眼底カメラ
1) JIS T 15004-2:2013の5.1,5.3及び5.5(5.5.3を除く)を適用する。複数の光源が眼の同一部位を同
時に照射するように設計した眼底カメラは,次による。
i)
光放射量は,複数光源の各単体の光源ごとに適用するそれぞれの限界値未満である。
ii) 複数光源からの各単体又は組合せの光放射は,JIS T 15004-2:2013の表4〜表6に示す限界値又は
ガイドラインの値未満でなければならない。
iii) パルス光源及び連続光源を連続的に及び/又は同時に8時間以内で使用するとする場合は,分光
放射束の総和と,JIS T 15004-2:2013の表4〜表6に基づいて適応する限界値又はガイドラインと
の比率が1未満でなければならない。
2) 試験方法はJIS T 15004-2:2013の6.1〜6.5による。
3) JIS T 15004-2:2013の箇条7を満足する。
眼底カメラが,グループ2機器の規定値を超えた可視光又は赤外光放射を出す場合には,製造業者は取
扱説明書に潜在的なハザードについて記載することによって,ユーザに情報提供をしなければならない。
詳細を,附属書Bに示す。
5
光学性能検査方法
5.1
一般事項
光学性能に関する試験は,全て形式試験とする。
4.2の要求事項は,測定器具を使用して検証し,許容できる測定誤差は,決定すべき最小値の10 %未満
でなければならない。
5.2
検査図票の条件
5.2.1
検査図票の距離
眼底における光学解像力,撮影画角,撮影倍率及び画素間距離は,眼底カメラの入射瞳から前方に1 m
離れた位置に配置した検査図票を用いて検査しなければならない。また,距離1 mの許容誤差は5 mm以
下でなければならない。
5.2.2
検査図票の照明
図票を照明する光源は,眼底カメラの光源又は外部の白色光源を用いてもよい。いずれの場合において
も,照明光は,波長半値幅が80 nm未満で520 nmから560 nmの間に最大透過率をもつフィルタで,波長
の帯域を制限しなければならない。近赤外光を用いる場合は,波長半値幅が120 nm未満で790 nmから890
nmの間に最大透過率をもたなければならない。
5.2.3
解像力検査図票
解像力検査図票は,図2に示す白背景に黒線をもつ図票で,黒線は,白背景と同一幅であり,線長は,
線幅の5倍以上で,かつ,黒線と白背景との反射率の比は1.4以上でなければならない。また,図票は,
各々平行な3本線で互いに垂直な二つの組であり,中心部の図票は垂直及び水平方向に,周辺部の図票は
放射方向及びそれに対する接線方向に配置しなければならない。
5
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図2−解像力検査図票の例
5.3
眼底カメラ光学系の解像力検査方法
同一画面の中心部,中間部及び周辺部の3か所に相当する位置に,図2に示す解像力検査図票を配置し
なければならない。表1に示す解像力の要求事項は,撮像素子の規格ではなく,フィルム及び撮像素子を
除いた眼底カメラの光学性能に対する要求事項であるので,メディアの解像力限界が,検査限界にならな
いように注意を払うことが重要である。そのため,像面での解像力検査は目視で行うことが望ましい。そ
れが不可能な場合は,適切な解像力をもつ撮像素子又はフィルムを選択しなければならない。
注記 眼底上における解像力は,正視眼の焦点距離17 mmを仮定して換算係数0.017を用いることで
求められる。
5.4
撮影画角検査
撮影画角は,眼底カメラの入射瞳位置から1 m離れた位置に置かれた,スケール,定規,メジャーテー
プなどの,目盛付きの検査図票を撮像することで検査する。図1に従い,視野の中心に眼底カメラの光軸
に対して垂直な検査図票を配置して,検査図票像の端から端までの距離2rをミリメートルで測定して,式
(1)によって画角(FOV)を決定しなければならない。
×
=
−
000
1
tan
2
1
r
FOV
······························································· (1)
全ての長さの精度は,5 mm以内でなければならない。
5.5
撮影倍率検査
撮影倍率は,眼底カメラの入射瞳位置から1 m離れた位置に置かれたスクリーン上に配置された100 mm
のスケール指標を撮影し,スケールの像面におけるスケール指標の長さLをミリメートルで計測すること
で検査しなければならない。像倍率Mは式(2)によって算出する。
7.1
L
M=
·················································································· (2)
注記 式(2)において,1.7は正視眼の焦点距離の17 mmを意味する。
5.6
眼底におけるセンサの画素間距離の確認
眼底上におけるセンサの画素間距離は,眼底カメラの入射瞳位置から1 m離れた位置に置かれたスクリ
ーン上に配置された100 mmのスケール指標を撮影することで検査しなければならない。スケールのデジ
タル画像上での画素数Nは,画像解析などを用いることによって測定する。画素間距離(μm)は式(3)に
よって求められる。
N
P
700
1
=
················································································· (3)
注記1 眼底カメラにおける画素間距離は,P=Ps/Mを使って求めてもよい。ここでPsは,センサの
販売元が提供する実際の画素間距離,Mは,5.5で定義する像倍率である。
6
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
注記2 1 700という数値は,眼の焦点距離が17 mmの正視眼という仮定から導かれたものである。
6
附属文書
眼底カメラには,使用上の説明を含む文書を添付しなければならない。文書には,特に次の項目を含ま
なければならない。
a) 製造業者名及び住所
b) 適合している場合は,出荷時のこん(梱)包状態の眼底カメラが,JIS T 15004-1:2013で規定している
輸送環境に適合している旨の表示
c) JIS T 0601-1:2012の7.9で規定する全ての追加文書
d) 製造業者又は販売業者が,この規格に適合していることを主張する場合は,この規格を適合している
旨の記載
e) 要求された場合,眼底カメラシステム(センサ込み)の解像力に関する情報
f)
機器の構造が原因で出現し得る画像上のアーチファクトに関する情報
g) 焦点距離17 mmの正視眼に対するフィルム上での像倍率,又は,眼底における(撮像素子の)画素間
距離に関する情報
h) 装置がJIS T 15004-2:2013の5.5.1.3〜5.5.1.5及び5.5.2.1〜5.5.2.3で規定するレベル以上の光放射を発
することができる場合,潜在的光ハザードについての情報
7
表示
眼底カメラには,次の事項を容易に消えない方法で表示する。
a) 製造業者又は販売業者の名称,及び住所
b) 眼底カメラの名称及び形式名称
c) JIS T 0601-1:2012が要求する表示
7
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附属書A
(規定)
光ハザードの値及び計算に関する指針
全ての検討事項は,リスク分析の原則に従い,強度,画角及び波長帯域に関しては,最悪条件で測定し
なければならない。最悪条件が限界値未満の場合は,波長帯域を狭めたり,光強度を下げた撮影モードで
の確認をする必要はない。
眼底カメラの単一モードごとの確認は必要としない。設計値又は保証された仕様が利用可能な場合は,
それらを測定値の代用として使用してもよい。
多くの眼底カメラは,眼底を一様に照明するために,いわゆる,マクスウェル視照明を搭載している。
被験眼に対して装置を正しくアライメントしている状態では,リング形又は長方形の光源像を瞳孔上に結
像する。マクスウェル視照明が当てはまらない場合は,放射照度測定の手引として,JIS T 15004-2:2013
の附属書D及び附属書Eを参照する。
図A.1を参照することで,試験で要求するパラメータの決定方法をまとめることができる。
手順の説明
1) 角膜が中心位置に適切に配置されている状態における平面(空気中)での照明面積の測定又は計算。
多くの場合,この照明野はリング形状である。
2) 眼底上の照明範囲Aの測定又は計算。多くの場合,これは均一に照明された球体の一部である。
照明の立体角ωが既知であるならば,照明範囲は式(A.1)で求めることができる。
ω
×
=
2)
cm
7.1(
A
····································································· (A.1)
立体角が分かっていなくても照明の全円すい(錐)角αが分かっていれば,照明の立体角は式(A.2)
で求めることができる。
×
×
=
4
sin
4
2α
π
ω
·································································· (A.2)
既知の距離での全円すい角は,空気中のビームウェストから既知の距離lにおける照明野の半径x
を測定することによって求めることができる。式(A.3)を使うとαは次のようになる。
×
×
=
−
l
x
1
tan
2
α
···································································· (A.3)
図A.2を参照する。
3) パルス発光時間の決定(当てはまる場合):これは,パルス機器に対する異なる限界値を計算するため
に必要となる。
4) 250 nm〜2 500 nmの波長に対する角膜面(JIS T 15004-2:2013のD.2参照)における放射照度E又は
放射露光量Hの測定{スペクトル幅が,フィルタなどで制限されている場合は,これよりも狭い帯域
でもよい[JIS T 15004-2:2013の5.2 b)参照]。}。
分光重み付け関数がその波長帯に全く適用されない場合,又は合計した結果が重み付けした限界値
未満であり,関連するスペクトル帯域内の重み付け係数が,1.0未満である場合は,分光分布の測定の
必要はない。
8
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
図A.1−分類のためのフローチャート
スタート
グループ1機器で遵守
すべき全ての限界値を算出して
示すことが可能か
グループ1
機器の全ての限界値に
適合しているか
Exx又はHxxの評価に必要な
単独又は複数の全ての放射
量を測定する
カメラは連続光源
だけをもっているか
適用される分光範囲
内におけるExxを測
定する
JIS T 15004-2:2013の5.4.1.1
から5.4.1.6で評価する
グループ1機器の
限界値を超えているか
適用される分光範囲
内におけるHxxを追
加して測定する
JIS T 15004-2:2013の5.4.2.1
から5.4.2.3で評価する
グループ1機器の
限界値を超えているか
グループ1機器
これ以上の評価は要求しない
JIS T 15004-2:2013の5.5.2.1から
5.5.2.3で評価する
連続光源との同時使用の場合は,4.4
b) 1) iii),JIS T 15004-2:2013の,
5.5.1.5及び5.5.2.1
5.5.1.3及び5.5.2.2
5.5.1.4及び5.5.2.3
で対応する項目を追加して評価する
グループ2機器の
限界値を超えているか
グループ2機器の
限界値を超えているか
JIS T 15004-2:2013の5.5.1.1
から5.5.1.6で評価する
グループ2機器
JIS T 15004-2:2013の箇条7で要求して
いる無水晶体眼に対する注記が必須で
ある
(最大時間,最大パルス数)
グループ2機器
無水晶体眼に対する注記に加えて,グ
ループ2機器の限界値を超える可能性
がある使用方法に関する情報を注記す
ることが必須である
はい
はい
はい
はい
はい
はい
はい
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
いいえ
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T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
a
1
網膜上での照明範囲A
2
光源像
3
眼底カメラ
a
αは全光束の円すい頂角
注記1 測定は模型眼がない空気中の平面で測定する。
注記2 装置の位置合わせが完全になされた場合,眼底照明光源像は瞳孔内に結像して,公称の眼底カメラ撮影画角
より広い範囲を一様に照明する。
図A.2−眼球におけるマクスウェル視照明条件
5) Exxに関連する全ての数値は,分光重み付け関数S(λ),A(λ)及びR(λ)を用いて計算し,所定の波長帯域
において積算する。網膜に関連する数値は,中心におかれた7 mmの開口を通過して眼内に入射する
放射輝度を,網膜を照明する面積で除すことによって算出する。角膜及び前眼部に関連する数値は,
眼に到達する放射輝度を,角膜面を照明する面積で除すことによって算出する。
6) 連続波機器に対する放射露光量Hxxは放射照度で,露光時間は通常7 200秒とする。
7) 単一及び複数にかかわらず,パルス作動モードにおいては,適用可能であれば20秒の時間範囲内で考
慮すべきである。繰返しパルスレーザの場合,JIS T 15004-2:2013の5.5.2.1の注記2にある補正係数
N−1/4を適用する(Nはパルス数:JIS T 15004-2:2013の表6の注記2参照)。
8) パルス光源,及び連続光源を連続的に,及び/又は同時に8時間以内で使用するとする場合は,分光
放射束の総和と,JIS T 15004-2:2013の表4〜表6に基づいて適応する限界値,又はガイドラインとの
比率が1未満でなければならない。その際には,光化学ハザード,熱ハザード及び無水晶体眼に対す
る光化学ハザードのうち同種類のハザードにおける比率だけで評価する。
実施例
連続照明用として,ハロゲンランプ,及び撮影用としてフラッシュ光源を使用する眼底カメラを評価す
る。測定による角膜面でのリング状瞳の面積は,0.2 cm2とする。照明系の全円すい角は,46°と分かって
いる。関連する立体角は,ω=4×π・sin2(46°/4)=0.5とする。計算された網膜上の照明範囲は,A=(1.7 cm)2
×0.5=1.44 cm2とする。最大フラッシュレベルでのパルス時間は,0.01秒とする。保証されている紫外,
及び赤外を遮断するフィルタを搭載しているため,400 nm以下,及び1 200 nmを超える光が放出されな
10
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
い。最悪のシナリオは,スペクトル幅が最大である“カラーモード”である。“カラーモード”における,
最大動作レベル,及び最悪条件によるJIS T 15004-2:2013に関する測定結果を次に示す。
連続照明(ハロゲンランプ)及びグループ1機器の場合:
JIS T 15004-2:2013
の細分箇条
内容
結果
説明
5.4.1.1
S(λ)で重み付けした紫外光に
よる放射照度
ES-CL, (250 nm〜400 nm):
−
測定不要(カットフィルタ)
5.4.1.2
重み付けしていない紫外光に
よる放射照度
EUV-CL, (360 nm〜400 nm):
−
測定不要(カットフィルタ)
5.4.1.3
A(λ)で重み付けした紫外光に
よる放射照度
EA-R, (305 nm〜700 nm):
1 300 μW/cm2
グループ1機器の限界値である220
μW/cm2を超えている。ただし,グループ2
機器としての計算では
1 300 μW/cm2×7 200 s=9.36 J/cm2である。
この計算結果はグループ2機器のガイドラ
イン10 J/cm2未満である。
5.4.1.4
重み付けしていない赤外光に
よる放射照度
EIR-CL, (770 nm〜2 500 nm):
9.2 mW/cm2
限界値未満
5.4.1.5
重み付けしていない収束放射
照度
EVIR-AS, (380 nm〜1 200 nm):
0.15 W/cm2
限界値未満
5.4.1.6
R(λ)で重み付けした熱放射照
度
EVIR-R, (380 nm〜1 400 nm):
0.014 W/cm2
限界値未満
パルス照明(フラッシュ光)t=0.01 sの場合:
JIS T 15004-2:2013
の細分箇条
内容
結果
コメント
5.4.2.1
R(λ)で重み付けした熱放射露
光量
HVIR-R, (380 nm〜1 400 nm):
1パルス当たり
0.05 J/cm2
結果は,10 msの1パルス当たりとして算
出した限界値の0.19 J/cm2未満である。本
眼底カメラは20秒以内に,10パルスの繰
返し照射ができる。10パルスでの限界値は
1.06 J/cm2である。10パルスでの結果は,
0.50 J/cm2となり限界値未満である。
5.4.2.2
重み付けしていない赤外光に
よる放射露光量
HIR-CL, (770 nm〜2 500 nm):
1パルス当たり
0.006 J/cm2
結果は,1パルス当たりでの限界値である
0.57 J/cm2未満である。10パルスでの限界
値は,1.01 J/cm2である。10パルスの結果
は,0.06 J/cm2となり限界値未満である。
5.4.2.3
重み付けしていない収束放射
露光量
HVIR-AS, (380 nm〜1 200 nm):
1パルス当たり
0.41 J/cm2
結果は,1パルス当たりでの限界値である
7.91 J/cm2未満である。10パルスの結果と
しての露光量は4.1 J/cm2であり,10パルス
での限界値は,14.0 J/cm2である。
複数光源の場合:
各光源単体の放射は,適用限界値未満とする。8時間以内のパルス光源及び連続光源の連続及び/又は
同時使用を目的とし,指定されている波長範囲を超えて放射する光学放射と,適用限界値又はガイドライ
11
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
ン値との比率の合計は1未満とし,同種の光源の比率だけを検討する。照明光を使用しながら最大フラッ
シュレベルで,同一の眼を5回ずつ撮影する10分間の検査の一例である。次に示す比率をグループ2眼底
カメラに適用する。
JIS T 15004-2:2013の
− 5.5.1.5及び5.5.2.1の場合,
未満)
(1
42
.0
J/cm
62
.0
J/cm
25
.0
W/cm
7.0
W/cm
0.014
2
2
2
2
=
+
− 5.5.1.3及び5.5.2.2の場合,
未満)
(1
13
.0
J/cm
85
.0
J/cm
03
.0
mW/cm
100
mW/cm
9.2
2
2
2
2
=
+
− 5.5.1.4及び5.5.2.3の場合,
未満)
(1
18
.0
J/cm
87
.
11
J/cm
05
.2
W/cm
20
W/cm
0.15
2
2
2
2
=
+
結論:
この眼底カメラは,JIS T 15004-2:2013の確認項目である5.4.1.3を除いて,グループ1機器の限界値を
満足する。よって,この眼底カメラはグループ2機器として定義され,JIS T 15004-2:2013の6.5に関する
無水晶体眼への光ハザードについての付加情報を提供する。
無水晶体眼の,網膜に対する露光量がガイドライン値に達するまでの最大時間は,次のとおりである。
s
692
7
cm
/
μW
300
1
cm
/J
10
)
(
2
2
R
-
A
max
=
=
E
t
フラッシュ光源が,0.007 8 J/cm2と測定されたとき,無水晶体眼の網膜に対する放射露光量(HA-R)がガ
イドライン値に達するまでの最大パルス数は,次のとおりである。
282
1
cm
/J 8
007
.0
cm
/J
10
)
(
2
2
R-
A
max
=
=
H
n
他の計算値又は測定値で,グループ2機器の限界値を超えるデータはない。したがって,限界値を超え
る条件に関するこれ以上の特定情報の提供は不要である。
12
T 7320:2015 (ISO 10940:2009)
附属書B
(参考)
眼底カメラの安全使用のための指針
眼底カメラが,グループ1機器として分類された場合,その眼底カメラは,光ハザードのない装置と考
えられる。眼底カメラが,グループ2機器と分類された場合,取扱説明書に無水晶体眼に対する光ハザー
ドに関する情報を提供しなければならない。
眼底カメラが,JIS T 15004-2:2013に記載されているグループ2機器の指定を超える放射量を放射可能で
ある場合,製造業者は付加情報を提供しなければならない。これは,眼底カメラの使用に伴う潜在的な光
ハザードの可能性について,使用者に通知するためである。病気診断に必要な可視光及び赤外光の限界値
を設定することは妥当ではない。臨床医によっては,眼の病気診断のために広範囲な眼の検査において,
危険の可能性がある露光レベルを超えて使用しなければならないことがある。
ガイダンスには,限界値以上となる可能性がある使用方法に関する情報を含むことが望ましい。例えば,
照明光,又はフラッシュ光の最大設定値,撮影画角,フィルタ設定など,及び露光量についての情報が含
まれる。JIS T 15004-2:2013にある特定の光ハザードの限界についての詳細な記載は不要である。
標準的な使用における,各使用モードの初期設定値を使用者に提供することが望ましい。
注意書き及び推奨設定値の記載例は,次による。
“注意−本眼底カメラが放出する光には潜在的な危険性があります。照射時間が長いほど,及び照射パ
ルス数が多いほど,眼を損傷するリスクは高くなります。次の設定で動作しているとき,本眼底カメラが
放出する光の露光量は,安全のためのガイドラインを超えることになります。
− _モードにおいて,フラッシュレベル_及び撮影画角_で10パルス以上!
− _モードにおいて,撮影画角_で光量を_のとき90分以上!”
通常検査の推奨設定値:
動作モード
初期設定値
照射時間
パルス数
カラーモード
照明光量:10
フラッシュレベル:12
撮影画角:狭角
3分
2〜3パルス
FA
(フルオレセイン蛍光眼底造影)
照明光量:22
フラッシュレベル:16〜24
撮影画角:標準
1回目は3分,
2回目は2分,
5分〜10分の中断
1回目は10〜15パルス,
2回目は5パルス
IA
(インドシアニングリーン蛍光眼底
造影)
照明光量:18
フラッシュレベル:18〜26
撮影画角:標準
1回目は3分,
2回目は2分,
5分〜10分の中断
1回目は10〜15パルス,
2回目は5パルス