T 6524:2019
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 種類······························································································································· 2
5 要求事項························································································································· 2
5.1 生体適合性 ··················································································································· 2
5.2 物理的特性 ··················································································································· 2
6 サンプリング ··················································································································· 2
7 試験方法························································································································· 2
7.1 目視確認 ······················································································································ 2
7.2 試験条件 ······················································································································ 2
7.3 試料の調製 ··················································································································· 2
7.4 操作時間(クラス1) ····································································································· 2
7.5 硬化時間(クラス1) ····································································································· 4
7.6 光硬化深さ(クラス2) ·································································································· 5
8 包装,表示及び添付文書 ···································································································· 6
8.1 包装 ···························································································································· 6
8.2 表示 ···························································································································· 6
8.3 添付文書 ······················································································································ 6
参考文献 ····························································································································· 8
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································· 9
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第16条において準用する同法第12条第1項の規定に基づき,日本歯科材料
工業協同組合(JDMA)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格
を改正すべきとの申出があり,日本産業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣が改正した日本産業規格
である。これによって,JIS T 6524:2005は改正され,この規格に置き換えられた。
なお,この規格の改正公示日から3年間までJIS T 6524:2005を適用することができる。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。厚生労働大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
注記 工業標準化法に基づき行われた申出,日本工業標準調査会の審議等の手続は,不正競争防止法
等の一部を改正する法律附則第9条により,産業標準化法第12条第1項の申出,日本産業標準
調査会の審議等の手続を経たものとみなされる。
日本産業規格 JIS
T 6524:2019
高分子系歯科小か(窩)裂溝封鎖材
Dentistry-Polymer-based pit and fissure sealants
序文
この規格は,2015年に第3版として発行されたISO 6874を基とし,我が国の実情に合わせて要求事項
など技術的内容を一部変更して作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,高分子系歯科小か(窩)裂溝封鎖材(以下,シーラントという。)について規定する。この
規格は,化学重合型及び光重合型のシーラントに適用できる。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 6874:2015,Dentistry−Polymer-based pit and fissure sealants(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS T 0993-1 医療機器の生物学的評価−第1部:リスクマネジメントプロセスにおける評価及び試験
JIS T 6001 歯科用医療機器の生体適合性の評価
ISO 1942,Dentistry−Vocabulary
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,ISO 1942によるほか,次による。
3.1
化学重合型シーラント(self-curing sealants)
開始剤及び促進剤を混合することによって硬化が開始するシーラント。
3.2
光重合型シーラント(light-curing sealants)
光照射によって硬化が開始するシーラント。
2
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4
種類
シーラントは,重合方式によって次のように分類する。
a) クラス1 化学重合型シーラント
b) クラス2 光重合型シーラント
5
要求事項
5.1
生体適合性
生体適合性は,JIS T 0993-1及びJIS T 6001によって生物学的安全性を評価する。
5.2
物理的特性
5.2.1
操作時間(クラス1の場合)
クラス1のシーラントの操作時間は,7.4によって試験したとき,40秒以上でなければならない。
5.2.2
硬化時間(クラス1の場合)
クラス1のシーラントの硬化時間は,7.5によって試験したとき,5分以下でなければならない。
5.2.3
光硬化深さ(クラス2の場合)
クラス2のシーラントの光硬化深さは,7.6によって試験したとき,1.5 mm以上でなければならない。
色調が複数ある場合は,全ての色調がこの値を満足しなければならない。
6
サンプリング
試験試料は,同一ロットから採取し,その量は繰返し試験を含めて,規定された全ての試験を完了する
のに十分な量(20 g以上)でなければならない。
7
試験方法
7.1
目視確認
箇条8(包装,表示及び添付文書)で規定した項目の確認は,目視によって行う。
7.2
試験条件
試験は,製造販売業者の指定がない場合には,温度23±2 ℃,相対湿度30 %以上で行う。シーラントが
冷蔵保管されている場合には,シーラントの温度が23±2 ℃になってから試験を行う。
クラス2のシーラントの試験に用いる光照射器は,製造販売業者が推奨する光照射器を使用する。光照
射器は,正常な作動状態になければならない。
注記 光照射器は,JIS T 5752-1又はJIS T 5752-2を参照。
7.3
試料の調製
試料は,製造販売業者が指定する方法によって調製する。
7.4
操作時間(クラス1)
7.4.1
測定装置
測定装置は,図1の操作時間及び硬化時間の測定装置を用いる。
この装置は,ポリエチレン製(又は同等の材質)のチューブ(A)及びポリアミド製(又は同等の材質)
のブロック(B)からなり,ブロックには孔があり,熱電対(D)を先端に固定したステンレス鋼管(C)
が挿入されている。
チューブは,長さ6 mm,内径4 mm,厚さ1 mmとする。ブロックのはめ込み部分は,直径4 mm,高さ
2 mmとする。この二つの部品を組み立てることによって,高さ4 mm,直径4 mmの試料収容部を形成す
3
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る。試験後の試料の除去を容易にするため,熱電対の先端は,円すい状で,試料収容部の底部に1 mm突
き出す構造とする。前記の寸法の許容差は,±0.1 mmとする。
熱電対は,温度変化を0.1 ℃単位で検出できる素材[例えば,銅−銅及びニッケルを主とした合金(コ
ンスタンタン)]を用いて作製した直径0.25±0.05 mmのワイヤからなる。この熱電対を,温度を0.1 ℃単
位で記録できる装置(例えば,電圧計又はレコーダ)に接続する。
注記 既製の同様なサイズ及び能力の熱電対を用いることができる。
単位 mm
A ポリエチレン製チューブ
B ポリアミド製ブロック
C ステンレス鋼管
D 熱電対
E ろう着部
図1−操作時間及び硬化時間の測定装置
A
C
B
D
E
4
1
1
4
2
4
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7.4.2
手順
製造販売業者が指定する方法によって練和し,練和開始から計時する。試料収容部の温度を23±1 ℃に
保ち,練和開始から30秒後に,試料収容部に練和したシーラントを入れ,シーラントの温度(T0)を記録
する。装置を23±1 ℃に維持し,シーラントの温度がピークを過ぎるまで,連続して記録する。練和開始
から温度上昇が開始するまでの時間(tw)を記録する。この測定を5回行う。
注記 典型的な温度曲線を,図2に示す。シーラントを試料収容部に入れると,すぐに温度が僅かに
低下し,その後一定温度(T1)になり,その後上昇し始める。温度が上昇し始める点は,硬化
反応の開始,すなわち,操作時間の終了を表している。結果は極めて温度依存性が大きく,許
容範囲内の僅かな温度変動でも数秒程度のばらつきを起こす。
T0 シーラント塡入時の温度
T1 塡入後すぐに僅かに低下した温度
T2 最高温度
tw 塡入からT1で硬化反応が開始する時間であり,操作時間を示す。
ts
塡入から最高温度に達する時間であり,硬化時間を示す。
図2−操作時間及び硬化時間を決定するための典型的な温度変化の記録例
7.4.3
評価
操作時間の評価は,次による。
a) 5個の値のうち,4個以上が40秒以上のときは,合格とする。
b) 5個の値のうち,3個以上が40秒未満のときは,不合格とする。
c) 5個の値のうち,3個が40秒以上のときは,再試験を行う。再試験の結果の全てが40秒以上のときは,
合格とする。その他の場合は,不合格とする。
7.5
硬化時間(クラス1)
7.5.1
測定装置
測定装置は,7.4.1による。
5
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7.5.2
手順
測定装置の試料収容部の温度を37±1 ℃に維持するほかは,7.4.2による。
練和開始から,最高温度(T2)を示すまでの時間を記録し,硬化時間(ts)とする。
この試験を5回行う。
7.5.3
評価
評価は,次による。
a) 5個の値のうち,4個以上が5分以内のときは,合格とする。
b) 5個の値のうち,3個以上が5分を超えたときは,不合格とする。
c) 5個の値のうち,3個が5分以内のときは,再試験を行う。再試験の結果の全てが5分以内のときは,
合格とする。その他の場合は,不合格とする。
7.6
光硬化深さ(クラス2)
7.6.1
器具及び機器
器具及び機器は,次による。
a) ステンレス製の型 長さ6 mm,直径4 mmの円柱状試験片を作製する型
注記 試験片の取出しを容易にするために,硬化反応を妨げない離型材(例えば,ポリビニルエー
テルワックスの3 %へキサン溶液)を型の表面に用いてもよい。
b) スライドガラス(2枚) 型の片面を覆うのに十分な寸法のもの。
注記 標準の顕微鏡用スライドガラスを用いてもよい。
c) 白色ろ(濾)紙
d) フィルム 有効波長域の光が透過し,厚さが50±30 µmのもの(例えば,ポリエステルフィルム)。
e) 光照射器 製造販売業者が指定するもの。
f)
マイクロメータ 最小目盛が0.01 mm以下のもの。
g) プラスチック製スパチュラ
7.6.2
手順
手順は,次による。
a) スライドガラス上のフィルムの上に型を置き,製造販売業者が指定する方法によって調製したシーラ
ントを,気泡が入らないように注意して型にやや過剰に充塡する。
b) その上をフィルムで覆い,次いでスライドガラスを載せる。次に,スライドガラスの上から加圧して,
過剰のシーラントを押し出す。
c) 型を白色ろ紙の上に置いて,上側のスライドガラスを取り除き,光照射器の照射口をフィルムに軽く
当て,照射する。照射時間は,硬化深さが1.5 mm以上になるとして製造販売業者が指定する時間と
する。
d) 照射終了後直ちに,試験片を型から取り出し,未硬化シーラントをプラスチック製スパチュラで取り
除く。硬化したシーラント円柱の高さをマイクロメータを用いて,0.1 mm単位で求め,光硬化深さと
する。
この試験を3回行う。
7.6.3
評価
3個の値全てが1.5 mm以上のときは,合格とする。1個以上の値が1.5 mm未満のときは,不合格とす
る。
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8
包装,表示及び添付文書
注記 製造販売業者の任意又は法令の定めによって,追加事項を含めてよい。
8.1
包装
シーラントは,十分に保護し,シーラントの品質に悪影響を及ぼさない容器又はカプセル1) に入れて供
給しなければならない。
この容器又はカプセルの複数を1単位として,保護するための包装を用いてもよい。
注1) “容器又はカプセル”とは,シーラントの直接の被包のことをいう。
8.2
表示
8.2.1
カプセル又は1回分入り容器
注記 1回分入り容器とは,0.5 mL以下のシーラントを入れた小シリンジをいう。
a) カプセル又は1回分入り容器には,色調を表示しなければならない(複数の色調がある場合)。
b) カプセル又は1回分入り容器には,製品が特定できる表示をしなければならない。
c) カプセル又は1回分入り容器は,1包装単位で提供しなければならない。
d) 製造販売業者が推奨する条件で保管した場合の使用期限を表示する。
8.2.2
外装
シーラントの外装には,次の事項を表示しなければならない。
a) 製品名
b) 製造販売業者名及び所在地
c) シーラントの種類(クラス)及び色調(複数の色調がある場合)
さらに,外装及び/又は添付文書に,次の事項を表示しなければならない。
d) ロット番号
e) 推奨する条件で保管した場合の使用期限
f)
推奨する保管条件
g) 内容量(カプセル又は1回分入りの容器の数)
h) その他の法定表示事項
8.3
添付文書
シーラントには,次の事項を記載した文書を添付しなければならない。
a) ポリマー基材の主要成分
b) 特別な指示又は警告(必要な場合)
c) 薬理活性成分[薬理活性成分を含有し,その薬効を標ぼう(榜)する場合]
d) 構成品及び硬化したシーラントの外観
e) シーラントの調製方法及びシーラントに悪影響を与える使用環境条件に関する情報(例えば,温度,
湿度,光など)
f)
シーラントの使用方法
g) 操作時間及び硬化時間(クラス1)
h) 光照射器及び照射時間(クラス2)
i)
歯の表面処理方法
j)
調製後のシーラントの使用時間の制限,特に光重合型シーラントへの環境光の影響
k) 推奨する保管条件(例えば,冷蔵の必要性など)
l)
使用上の警告及び副作用に関する情報。特にシーラントの未重合層に関する情報。
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m) シーラントの色調又は色調の説明
n) その他の法定表示事項
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参考文献
[1] JIS T 5752-1 歯科−重合用光照射器−第1部:ハロゲンランプ
注記 対応国際規格では,ISO 10650-1,Dentistry−Powered polymerization activators−Part 1: Quartz
tungsten halogen lampsを記載している。
[2] JIS T 5752-2 歯科−重合用光照射器−第2部:発光ダイオード(LED)
注記 対応国際規格では,ISO 10650-2,Dentistry−Powered polymerization activators−Part 2:
Light-emitting diode (LED) lampsを記載している。
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附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS T 6524:2019 高分子系歯科小か(窩)裂溝封鎖材
ISO 6874:2015,Dentistry−Polymer-based pit and fissure sealants
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範囲 化学重合型及び光重合
型
1
化学重合型及び外部エ
ネルギー重合型
変更
“外部エネルギー重合型”を“光重
合型”に変更した。
流通している製品に対応させた。
3 用語及び
定義
3.1 化学重合型シーラ
ント
3.2 光重合型シーラン
ト
−
−
追加
“用語及び定義”を追加した。
適用範囲を明確にするとともに,
この規格の2005年版とも整合さ
せた。
5 要求事項 5.1 生体適合性
4.1
生体適合性
変更
JIS T 0993-1及びJIS T 6001によっ
て評価することを規定した。
他のJISに整合させた。
国内事情による。
7 試験方法 7.2 相対湿度30 %以上
6.2
相対湿度30 %を超え
る。
変更
“30 %を超える”を“30 %以上”
に変更した。技術的差異はない。
30 %が試験条件に含まれること
を明確にした。
ISO規格改訂時に提案する。
7.2
注記 JIS T 5752-1又
はJIS T 5752-2を参照。
6.2
注記 ISO 10650の全て
を参照。
変更
“JIS T 5752-1又はJIS T 5752-2”
に変更した。
使用者の利便性を考慮し,具体的
に記載した。
7.4.2
シーラントの温度(T0)
注記 一定温度(T1)
6.4.2
シーラントの温度(T1)
注記 一定温度(T0)
変更
T0及びT1を図2に合わせて変更し
た。
図と説明とが一致していない。
ISO規格改訂時に提案する。
7.6.3
1.5 mm以上のとき
6.6.3
1.5 mmを超えるとき
変更
“1.5 mmを超える”を“1.5 mm以
上”に変更した。技術的差異はない。
1.5 mmも合格であることを明確
にした。ISO規格改訂時に提案す
る。
2
T
6
5
2
4
:
2
0
1
9
10
T 6524:2019
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
の評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
8 包装,表
示及び添付
文書
8.2.1 d) 使用期限を表
示する。
7.2.1 d)
ISO 8601に従って使用
期限を表示する。
削除
“ISO 8601に従って”を削除した。 ISO規格の表示方法に限定しな
い。
8.2.2 c) シーラントの
種類(クラス)及び色
調(複数の色調がある
場合)
7.2.2 c)
シーラントのクラス
追加
“色調(複数の色調がある場合)”
を追加した。
外装に色調を記載するのが適当で
ある。使用者の利便性を考慮した。
8.2.2 h) その他の法定
表示事項
−
−
追加
“その他の法定表示事項”を追加し
た。
国内事情による。
8.3 n) その他の法定表
示事項
−
−
追加
“その他の法定表示事項”を追加し
た。
国内事情による。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 6874:2015,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
T
6
5
2
4
:
2
0
1
9