T 5752:2020
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義··················································································································· 2
4 分類······························································································································· 3
5 要求事項························································································································· 3
5.1 一般 ···························································································································· 3
5.2 放射発散度 ··················································································································· 3
5.3 電気的安全性 ················································································································ 4
5.4 その他の安全性 ············································································································· 4
5.5 ユーザビリティ ············································································································· 4
5.6 取扱説明書 ··················································································································· 4
5.7 技術解説 ······················································································································ 4
5.8 表示 ···························································································································· 4
5.9 包装 ···························································································································· 4
6 サンプリング··················································································································· 5
7 試験方法························································································································· 5
7.1 一般 ···························································································································· 5
7.2 検査 ···························································································································· 5
7.3 ライトガイド(照射チップ)又はライトガイド(照射チップ)をもたない
重合用光照射器の光照射断面積の測定 ················································································ 5
7.4 放射発散度の測定 ·········································································································· 6
8 製造業者が提供する情報 ··································································································· 13
8.1 照射距離及び照射方向 ··································································································· 13
8.2 技術情報 ····················································································································· 13
8.3 追加技術情報(クラス1ハロゲンランプの場合) ······························································· 14
8.4 追加技術情報[クラス2発光ダイオード(LED)ランプの場合] ·········································· 14
9 表示······························································································································ 14
10 包装 ···························································································································· 14
参考文献 ···························································································································· 15
附属書JA(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 16
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(2)
まえがき
この規格は,産業標準化法第12条第1項の規定に基づき,日本歯科器械工業協同組合(JDMMA)及び
一般財団法人日本規格協会(JSA)から,産業標準原案を添えて日本産業規格を制定すべきとの申出があ
り,日本産業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣が制定した日本産業規格である。
歯科診療に用いる重合用光照射器のJISの対応国際規格において,光源がハロゲンランプの規格である
ISO 10650-1と発光ダイオード(LED)ランプの規格であるISO 10650-2とが,ISO 10650として統合され
たことに対応して,この規格を制定した。
これによって,JIS T 5752-1:2015及びJIS T 5752-2:2015は廃止され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。厚生労働大臣及び日本産業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本産業規格 JIS
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歯科−重合用光照射器
Dentistry-Powered polymerization activators
序文
この規格は,2018年に第2版として発行されたISO 10650を基とし,我が国の実状に合わせて技術的内
容を変更して作成した日本産業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。変更の一
覧表にその説明を付けて,附属書JAに示す。
1
適用範囲
この規格は,歯科診療において,光重合用レジン材料を380 nm〜515 nmの波長領域で重合することを
意図した重合用光照射器に対する要求事項及び試験方法について規定する。
この規格は,ハロゲンランプ及び発光ダイオード(LED)ランプに適用し,内部電源(充電式電池)を
用いる重合用光照射器及び外部電源(商用電源)に接続する重合用光照射器に適用する。
この規格は,レーザ照射器又はプラズマアーク照射器には適用しない。また,間接修復物,ベニア,義
歯,又は他の口くう(腔)内装置の技工製作に使用する重合用光照射器にも適用しない。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 10650:2018,Dentistry−Powered polymerization activators(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。)
は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS T 0601-1:2017 医用電気機器−第1部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項
注記 対応国際規格:IEC 60601-1:2005,Medical electrical equipment−Part 1:General requirements for
basic safety and essential performance及びAmendment 1:2012
JIS T 0601-1-2 医用電気機器−第1-2部:基礎安全及び基本性能に関する一般要求事項−副通則:電
磁妨害−要求事項及び試験
注記 対応国際規格:IEC 60601-1-2,Medical electrical equipment−Part 1-2: General requirements for
basic safety and essential performance−Collateral Standard: Electromagnetic disturbances−
Requirements and tests
JIS T 0993-1 医療機器の生物学的評価−第1部:リスクマネジメントプロセスにおける評価及び試験
2
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JIS T 5507 歯科−歯科器械用図記号
注記 対応国際規格:ISO 9687,Dentistry−Graphical symbols for dental equipment
JIS T 62366-1 医療機器−第1部:ユーザビリティエンジニアリングの医療機器への適用
注記 対応国際規格:IEC 62366-1,Medical devices−Part 1: Application of usability engineering to
medical devices
JIS T 80601-2-60 医用電気機器−第2-60部:歯科器械の基礎安全及び基本性能に関する個別要求事
項
注記 対応国際規格:IEC 80601-2-60,Medical electrical equipment−Part 2-60: Particular requirements
for the basic safety and essential performance of dental equipment
ISO 1942,Dentistry−Vocabulary
ISO 15223-1,Medical devices−Symbols to be used with medical device labels, labelling and information to be
supplied−Part 1: General requirements
ISO 17664,Processing of health care products−Information to be provided by the medical device
manufacturer for the processing of medical devices
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS T 0601-1:2017,JIS T 80601-2-60及びISO 1942によるほか,
次による。
3.1
重合用光照射器(powered polymerization activator)
主に380 nm〜515 nmの波長領域の光を発生して光重合用レジンの充塡・修復・合着材料を重合させる
もので,チェアサイドで使用する機器。
3.2
発光ダイオード(LED)ランプ[light-emitting diode (LED) lamps]
半導体の発光素子を用いたランプ。
3.3
満充電電池(fully charged battery)
試験開始時に完全充電の100 %が,あらかじめ充電されている電池。
3.4
放射発散度(radiant exitance)
その点を含む表面要素から出ていく放射束を,その表面要素の面積で除した量。
3.5
放射照度(irradiance)
その点を含む表面要素に入射する放射束を,その表面要素の面積で除した量。
3.6
放射束(radiant flux)
放射の形で放出される,伝ぱ(播)する,又は受け取られるエネルギー。
3.7
ライトガイド(照射チップ)[light guide (light emitting tip)]
重合用光照射器の先端に装着し,光を伝搬し,照射する導光部品。
3
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4
分類
重合用光照射器は,ランプ及び電源によって,次のとおり分類する。
a) クラス1:ハロゲンランプ
− タイプ1:商用電源を用いる重合用光照射器
− タイプ2:充電式電池を用いる重合用光照射器
b) クラス2:発光ダイオード(LED)ランプ
− タイプ1:商用電源を用いる重合用光照射器
− タイプ2:充電式電池を用いる重合用光照射器
5
要求事項
5.1
一般
5.1.1
設計
重合用光照射器の構造は,安全で確実な操作を提供するものでなければならない。
現場で修理できる重合用光照射器の場合は,容易に入手できる工具又は製造業者によって供給する工具
を使用して保守及び修理のために容易に分解でき,かつ,再組立ができなければならない。
適合性の試験は,7.2.1による。
注記 “製造業者”とは,JIS Q 13485:2018の3.10をいう。
5.1.2
接続
重合用光照射器は,清掃,消毒及び滅菌のために,電源から切り離すことができ,かつ,電源に再度接
続できなければならない。
適合性の確認は,7.2.2による。
5.1.3
操作制御部
操作制御部は,誤作動が最小限となるように設計し,かつ,配置しなければならない。
適合性の確認は,7.2.1及び7.2.2による。
5.1.4
清掃,消毒及び滅菌
清掃,消毒及び滅菌は,JIS T 0601-1:2017の該当箇条による。ただし,患者に接触する部分は,滅菌で
きなければならない。
適合性の確認は,7.2.3による。
注記 JIS T 0601-1:2017では,11.6.6及び11.6.7で規定している。
5.1.5
過度の温度上昇
過度の温度上昇は,JIS T 80601-2-60の該当箇条による。
適合性の確認は,7.2.3による。
注記 JIS T 80601-2-60:2014では,201.11.1.1で規定している。
5.2
放射発散度
放射発散度は,製造業者が指定する時間,連続照射モード又はパルスモードで試験を行ったとき,要求
事項を満足しなければならない。時間が指定されていない場合は,20秒とする。
タイプ1の重合用光照射器の場合は,動作電圧(定格電圧)でこの要求事項を適用する。
タイプ2の重合用光照射器の場合は,満充電電池を用いたものだけにこの要求事項を適用する。
5.2.1
380 nm〜515 nmの波長領域における放射発散度
380 nm〜515 nmの波長領域における放射発散度は,40 000 W/m2(4 000 mW/cm2)以下でなければなら
4
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ない。
試験は,7.4による。
製造業者は,7.4のいずれかの試験方法によって特定するこの領域の放射発散度の情報を提供しなければ
ならない。放射発散度の変動は,製造業者が示す値の±20 %を超えてはならない[8.2 n)参照]。
適合性は,7.2.3による。
5.2.2
380 nm未満の波長における放射発散度
380 nm未満の波長における放射発散度は,2 000 W/m2(200 mW/cm2)以下でなければならない。
試験は,7.4による。
5.2.3
515 nmを超える波長における放射発散度
515 nmを超える波長における放射発散度は,1 000 W/m2(100 mW/cm2)以下でなければならない。
試験は,7.4による。
5.3
電気的安全性
電気的安全性は,JIS T 0601-1:2017,JIS T 0601-1-2及びJIS T 80601-2-60による。
重合用光照射器は,歯科用制御装置などと接続又は組み込んで使用できる場合には,それらの機器と接
続又は組み込んだ状態で,JIS T 0601-1:2017,JIS T 0601-1-2及びJIS T 80601-2-60に適合しなければなら
ない。
適合性は,7.2.3による。
5.4
その他の安全性
機械的安全性は,JIS T 0601-1:2017及びJIS T 80601-2-60に適合しなければならない。
材料の生体適合性評価は,JIS T 0993-1による。
適合性は,7.2.1〜7.2.3による。
5.5
ユーザビリティ
ユーザビリティは,JIS T 62366-1を適用しなければならない。
試験は,7.2.3による。
5.6
取扱説明書
取扱説明書には,重合用光照射器の操作,操作者が行う保守,安全対策及び付帯サービスについて記載
しなければならない。
箇条8への適合性の確認は,7.2.3による。
5.7
技術解説
技術解説は,JIS T 0601-1:2017を適用しなければならない。
適合性は,7.2.3による。
注記 JIS T 0601-1:2017では,7.9.3で規定している。
5.8
表示
表示は,箇条9による。
適合性は,7.2.3による。
5.9
包装
包装は,箇条10による。
適合性は,7.2.3による。
5
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6
サンプリング
試験の試料は,重合用光照射器1台を用いる。附属のライトガイド(照射チップ)を全て用いて適合性
を評価しなければならない。ライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器は,通常の使用状態
で試験をする。
7
試験方法
7.1
一般
7.1.1
試験に関する一般規定
この規格で規定する全ての試験は,形式試験である。形式試験は,各モデルシリーズの代表的サンプル
1台について行う。
試験は,製造業者が指定する時間,連続照射モード又はパルスモードで行う。照射時間を指定していな
い場合には,20秒としなければならない。また,製造業者の取扱説明書に記載している異なる放射発散度
を放つ各照射モードでも試験を行う。
重合用光照射器に附属する各ライトガイド(照射チップ)についても試験を行う。
この規格において,特に規定がない限り,試験は反復しない。
7.1.2
環境条件
重合用光照射器を通常使用状態に準備し,次の条件で試験しなければならない。
a) 周囲温度(23±5)℃
b) 相対湿度(50±20)%
7.2
検査
7.2.1
重合用光照射器の目視検査
重合用光照射器の適合性の確認は,目視検査で行う。
7.2.2
重合用光照射器の手動検査
重合用光照射器の適合性の確認は,実際に操作して検査を行う。
7.2.3
製造業者の文書の目視確認
製造業者の文書,試験報告書又は取扱説明書の適合性の確認は,目視検査で行う。
7.3
ライトガイド(照射チップ)又はライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器の光照射
断面積の測定
7.3.1
機器
7.3.1.1
マイクロメータ又はノギス
マイクロメータ又はノギスは,表示がミリメートル単位で,精度が0.1 mm以上のものを使用する。
7.3.2
手順
ライトガイド(照射チップ)又はライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器の光照射断面
が円形の場合は,有効直径を7.3.1.1によって,±5 %の精度で測定する。ライトガイド(照射チップ)又
はライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器の光照射断面がだ(楕)円形の場合は,有効な
内側の長軸及び短軸を測定する。
光照射断面積(Z)を算出する。
6
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7.4
放射発散度の測定
7.4.1
方法A(分光計を使用)
7.4.1.1
機器
7.4.1.1.1
分光計
分光計は,350 nm〜700 nmの波長領域内で均一の分光感度をもつもの。
7.4.1.1.2
積分球(ウルブリヒト球)
積分球(ウルブリヒト球)は,分光計(7.4.1.1.1)と互換性のあるものであり,開口部は,重合用光照射
器のライトガイド(照射チップ)又はライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器の出射面(出
力部)からの照射光を漏れなく捕らえるだけの大きさがなければならない。
7.4.1.1.3
電圧可変電源
電圧可変電源は,重合用光照射器に定格電源電圧を供給できるもの。
7.4.1.1.4
電圧計
電圧計は,定格電源電圧の±10 %の範囲内で±1 Vまでの電圧を測定できるもの。電圧計の校正は,一
次標準器までトレーサビリティがなければならない。
7.4.1.1.5
タイマ
タイマは,精度が±1秒のもの。
7.4.1.2
手順
7.4.1.2.1
一般
− タイプ1(商用電源を用いる重合用光照射器):定格電源電圧の100 %で放射発散度を測定する。
− タイプ2(充電式電池を用いる重合用光照射器):満充電電池で放射発散度を測定する。
重合用光照射器を電圧可変電源へ接続する。重合用光照射器への入力電圧を測定できるよう,電圧計は,
図1に示すように電圧可変電源の出力側に接続する。
重合用光照射器の電源を入れ,製造業者が指定する時間,準備運転を行う。試験を開始する前に,2回,
それぞれ製造業者が指定する時間,又は時間が指定されていない場合には20秒間,重合用光照射器を作動
させる。
1
重合用光照射器
2
電圧計
3
電圧可変電源
図1−電圧可変電源,電圧計及び重合用光照射器の電気接続概略図
7.4.1.2.2
分光計を使用した測定の配置
分光計及び積分球(ウルブリヒト球)を図2に示すように配置する。
7
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1
分光計
2
積分球(ウルブリヒト球)
3
光ファイバケーブル
4
重合用光照射器
積分球(ウルブリヒト球)の一方の側に重合用光照射器のライトガイド(照射チッ
プ)と合致する補助具を用いて取り付け,もう一方の側に分光計を取り付ける。
図2−放射発散度測定のための装置の接続概略図
7.4.1.2.3
放射束の測定
a) 分光計の波長測定領域をあらかじめ350 nm〜700 nmが測定可能な範囲に設定する。
b) 少なくとも20秒間,3回,硬化モードを起動させることで,重合用光照射器の準備運転を行う。
c) 次の三つの波長領域において,放射束の表示値を得るために全波長領域で測定を行う。
1) 380 nm未満の波長を測定し,測定値を(M)として記録する。
2) 380 nm〜515 nmの波長領域を測定し,測定値を(N)として記録する。
3) 515 nmを超える波長を測定し,測定値を(O)として記録する。
d) 測定は,更に2回繰り返し,合計で3回測定する。
e) (MM),(NN)及び(OO)の平均値を算出する。
7.4.1.2.4
放射発散度の算出
a) 平均値MMを用いて,MM/Zとして,380 nm未満の波長に対する単位断面積当たりの放射発散度を算
出する。
b) 平均値NNを用いて,NN/Zとして,380 nm〜515 nmの波長領域に対する単位断面積当たりの放射発散
度を算出する。
c) 平均値OOを用いて,OO/Zとして,515 nmを超える波長に対する単位断面積当たりの放射発散度を算
出する。
注記 使用されるソフトウェアによっては,1回の操作で全てを算出することもできる。
7.4.1.3
結果の処理
算出した値を次のように記載する(表1参照)。
8
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表1−結果のまとめ方
重合用光照射器:
クラス:
タイプ:
ライトガイド(照射チップ)の形状[直径/だ(楕)円形]:
ライトガイド(照射チップ)の断面積:
使用したモード(例:標準,出力,連続,パルス):
波長領域
nm
放射束
mW
放射発散度
mW/cm2
<380
380〜515
>515
− 複数のモードで試験を行った場合は,必要に応じて表を追加する。
− 重合用光照射器が,5.2の要求事項に適合しているかどうかを確認する。
7.4.1.4
分光(スペクトル)分布曲線
350 nm〜700 nmの波長領域における分光分布データを記録し,曲線を描く。
7.4.2
方法B(フィルタを使用)
7.4.2.1
機器
7.4.2.1.1
放射照度計
放射照度計は,校正したもので,照射出力[単位は,ワット(W)]の測定に用いる。
放射照度計は,200 nmから少なくとも800 nmまでの波長領域内で,入射角とは無関係にフラットな応
答性(均一なスペクトル感度)をもたなければならない。
放射照度計の受光開口部は,照射光を漏れなく測定できるよう,重合用光照射器の照射エリアの断面積
よりも広くなければならない。受光開口部の縁は,照射エリアの縁よりも2 mm以上広いことが望ましい。
7.4.2.1.2
フィルタタイプ
7.4.2.1.2.1
石英フィルタ
石英フィルタは,200 nmよりも長い波長の光を透過させ,図3の曲線で示すような光透過特性をもつも
の。
7.4.2.1.2.2
380 nmフィルタ
380 nmフィルタは,380 nmよりも長い波長の光を透過させ,図4の曲線で示すような光透過特性をも
つもの。
7.4.2.1.2.3
515 nmフィルタ
515 nmフィルタは,515 nmよりも長い波長の光を透過させ,図5の曲線で示すような光透過特性をも
つもの。
9
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X 波長(nm)
Y 透過率(%)
図3−石英フィルタの光透過特性
X 波長(nm)
Y 透過率(%)
Ti 入射面及び出射面での反射ロスを差し引いた透過率曲線
図4−380 nmフィルタの光透過特性
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X 波長(nm)
Y 透過率(%)
T
透過率曲線
Ti 入射面及び出射面での反射ロスを差し引いた透過率曲線
図5−515 nmフィルタの光透過特性
7.4.2.1.3
電圧可変電源
電圧可変電源は,重合用光照射器に定格電源電圧を供給できるもの。
7.4.2.1.4
電圧計
電圧計は,定格電源電圧の±10 %の範囲内で±1 Vまで電圧を測定できるもの。電圧計の校正は,一次
標準器までトレーサビリティがなければならない。
7.4.2.1.5
タイマ
タイマは,精度が±1秒のもの。
7.4.2.2
手順
7.4.2.2.1
一般
− タイプ1(商用電源を用いる重合用光照射器):定格電源電圧の100 %で放射束を測定する。
− タイプ2(充電式電池を用いる重合用光照射器):満充電電池で放射束を測定する。
重合用光照射器を電圧可変電源へ接続する。重合用光照射器への入力電圧を測定できるよう,電圧計は,
図1に示すように電圧可変電源の出力側に接続する。
重合用光照射器の電源を入れ,製造業者が指定する時間,準備運転を行う。試験を開始する前に,2回,
製造業者が指定する時間,又は時間が指定されていない場合には20秒間,重合用光照射器を作動させる。
11
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1
ライトガイド(照射チップ)
又はライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器
2
フィルタ
3
放射照度計の検出器
図6−放射発散度測定機器の配置概略図
7.4.2.2.2
方法
7.4.2.2.2.1
測定機器の配置
測定機器は,フィルタを検出器の上に配置する。図6に示すように,照射光を漏れなく検出器で測定で
きるよう,重合用光照射器のライトガイド(照射チップ)又はライトガイド(照射チップ)をもたない重
合用光照射器をフィルタ上に配置する。
7.4.2.2.2.2
照射器
タイプ1照射器は,電源電圧を定格電源電圧の100 %に設定する。タイプ2照射器は,満充電電池の照
射器を使用する。表2の順序に従い測定する。
12
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表2−定格電源電圧100 %のタイプ1照射器又は満充電電池のタイプ2照射器の測定方法
ステップ
電圧
%
フィルタ
照射時間
秒
操作
表示値
1
100
石英
0
電源電圧を確認し,照射を開始する。
20秒又は製造業者が指定
する準備運転時間経過後
測定値を記録する。電源電圧を確認す
る。
A
照射を終了する。フィルタを380 nm
のものに交換する。
ステップ2を開始する。
2
100
380 nm
0
電源電圧を確認し,照射を開始する。
20秒又は製造業者が指定
する準備運転時間経過後
測定値を記録する。電源電圧を確認す
る。
B
照射を終了する。フィルタを515 nm
のものに交換する。
ステップ3を開始する。
3
100
515 nm
0
電源電圧を確認し,照射を開始する。
20秒又は製造業者が指定
する準備運転時間経過後
測定値を記録する。電源電圧を確認す
る。
C
照射を終了する。
注記 表中の時間は,各操作における測定作業の経過時間を示している。例えば,“20秒”は,照射開始20秒
後に電源電圧を確認し,記録しなければならないことを示している。
7.4.2.3
結果の処理
7.4.2.3.1
一般
各ステップについて,5個の表示値を用いて平均放射束値(M)を求め,その平均値をそれぞれのステ
ップに対応させてMA〜MCとする。光照射断面積Zとともに,これらの平均値を用いて7.4.2.3.2にある各
値を求める。
7.4.2.3.2
指定(100 %)操作電圧での放射発散度の計算
a) 平均値を用いて,(MA−MB)/Zの計算式で,200 nm以上380 nm未満の波長領域に対する単位断面積当
たりの放射発散度を求める。
b) 平均値を用いて,(MB−MC)/Zの計算式で,380 nm〜515 nm波長領域に対する単位断面積当たりの放
射発散度を求める。
c) 平均値を用いて,MC/Zの計算式で,515 nmよりも長い波長に対する単位断面積当たりの放射発散度
を求める。
7.4.2.3.3
結果のまとめ
算出した値を次のように記載する(表3参照)。
13
T 5752:2020
表3−結果のまとめ方
重合用光照射器:
クラス:
タイプ:
ライトガイド(照射チップ)の形状[直径/だ(楕)円形]:
ライトガイド(照射チップ)の断面積:
使用したモード(例:標準,高出力,連続,パルス):
波長領域
nm
放射束
mW
放射発散度
mW/cm2
<380
380〜515
>515
− 複数のモードで試験を行った場合は,必要に応じて表を追加する。
− 重合用光照射器が,5.2の要求事項に適合しているかどうかを確認する。
8
製造業者が提供する情報
8.1
照射距離及び照射方向
適切に重合するための照射距離及び照射方向。
8.2
技術情報
クラス1(ハロゲンランプ)及びクラス2[発光ダイオード(LED)ランプ]の重合用光照射器には,次
の情報を記載した文書を添付しなければならない。
a) 製造業者の名称及び/又は商標並びに住所
b) 製品の名称及び形番
c) 電気特性[定格電圧,定格周波数,ヒューズ容量(該当する場合)]
d) パルス操作モードの詳細
e) 推奨する操作モード,分類及び環境条件
f)
重合用光照射器の性能を確認する方法
g) 青色波長光及び熱放射に関する注意事項
h) 照射光へのばく(曝)露を減ずるための歯科医,歯科助手及び患者が保護眼鏡(保護手段)を効果的
に使用するための推奨事項
i)
患者又は歯科用材料に接触する部分に対するISO 17664に従った清掃方法及び消毒方法(該当する場
合)
j)
ISO 17664に従った滅菌方法(製造業者が滅菌を指定する場合)
k) 重合用光照射器が現場で修理可能かどうかについての記載
l)
交換部品の注文情報(例えば,注文コード,部品番号)〔製造業者が部品[例えば,ライトガイド(照
射チップ)]の交換が可能であるとしている場合〕
m) ライトガイド(照射チップ)の交換方法
n) 連続照射モード又はパルスモードでの380 nm〜515 nm波長領域における(7.4に従って測定された)
放射発散度
o) 種々のライトガイド(照射チップ)又はライトガイド(照射チップ)をもたない重合用光照射器の照
射範囲及びそれぞれの直径又は断面積
p) 製造業者が推奨する附属品
14
T 5752:2020
q) タイプ2(充電式電池を用いる重合用光照射器)の場合:“電池残量低下又は出力低下”の表示につい
ての情報
r) タイプ2(充電式電池を用いる重合用光照射器)の場合:電池交換についての情報
s)
有効照射断面積の設計値(単位:cm2又はmm2)。照射断面が円形の場合は,断面の直径を示してもよ
い。
t)
電磁両立性(EMC)への適合
u) 連続操作による過熱への注意事項
8.3
追加技術情報(クラス1ハロゲンランプの場合)
クラス1ハロゲンランプは,8.2に加えて,次の情報を記載した文書を添付しなければならない。
a) 交換電球の形番
b) 交換電球のワット数
c) 電球の交換に関する指示
8.4
追加技術情報[クラス2発光ダイオード(LED)ランプの場合]
クラス2発光ダイオード(LED)ランプの場合は,8.2に加えて,次の情報を記載した文書を添付しなけ
ればならない。
a) 最大放射発散度[スペクトルピーク(単位例:mW/cm2/nm)]の波長及び/又はスペクトル分布(ス
ペクトル発散度)
9
表示
表示に使用する図記号は,JIS T 5507及びISO 15223-1による。
重合用光照射器には,少なくとも次の情報を表示しなければならない。
a) 製造業者の名称又は商標
b) 製造番号
c) 形番又は品番
d) 周波数
e) 電圧
f)
ヒューズ容量
g) 消費電力又は消費電流
10 包装
包装は,輸送中に発生が予想される損傷に対して十分に保護するように包装しなければならない。
見やすい場所に,輸送中の包装品の取扱いに関する警告,注意及び/又は禁止事項を表示しなければな
らない。
15
T 5752:2020
参考文献
[1] JIS C 7550 ランプ及びランプシステムの光生物学的安全性
注記 対応国際規格:IEC 62471,Photobiological safety of lamps and lamp systems
[2] JIS Q 13485:2018 医療機器−品質マネジメントシステム−規制目的のための要求事項
[3] IEC 60050845:1987,International Electrotechnical Vocabulary Chapter 845: Lighting
[4] IEC 60601257,Medical electrical equipment−Part 2-57: Particular requirements for the basic safety and
essential performance of non-laser light source equipment intended for therapeutic, diagnostic, monitoring and
cosmetic/aesthetic use
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T 5752:2020
附属書JA
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS T 5752:2020 歯科−重合用光照射器
ISO 10650:2018,Dentistry−Powered polymerization activators
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
1 適用範囲 光重合用レジン材料
1
歯科用ポリマー系材
料
変更
呼称を変更した。
使用目的を明確にするための変更で
あり,実質的な技術的差異はない。
3 用語及び
定義
3
引用する規格を記載
追加
JIS T 80601-2-60を追加。
用語を引用するため。
用語及び定義のURL
情報を記載
削除
URL情報を削除。
JISの用語及び定義に対しては不適
切なURLのため削除した。
3.1 光重合用レジン材料
3.1
歯科用ポリマー系材
料
変更
呼称を変更した。
使用目的を明確にするための変更で
あり,実質的な技術的差異はない。
3.7 ライトガイド(照射チ
ップ)
−
−
追加
用語を追加した。
この規格の使用者の利便性を考慮し
た。
5 要求事項 5.1.2 接続
5.1.2
JISとほぼ同じ
追加
“清掃,消毒”を“清掃,消毒及
び滅菌”に変更した。
5.1.4と整合させるために“滅菌”を
追加した。
5.1.4 清掃,消毒及び滅菌
5.1.4
JISとほぼ同じ
追加
“ただし,患者に接触する部分
は,滅菌できなければならない。”
を追加した。
JIS T 0601-1の該当箇条と整合させ
た。実質的な技術的差異はない。
5.3 電気的安全性
5.3
JISとほぼ同じ
変更
“適合性は,7.2.2による。”を,
“適合性は,7.2.3による。”に変
更した。
電気的安全性における検査方法を明
確にした。
5.4 その他の安全性
5.4
JISとほぼ同じ
変更
追加
“材料の生体適合性評価は,JIS
T 0993-1による。”を追加したこ
とによって,題名も“その他の安
全性”に変更した。
旧規格(JIS T 5752-1)と整合させた。
5.5 ユーザビリティ
5.5
JISとほぼ同じ
変更
“試験は,7.2.2による。”を,“試
験は,7.2.3による。”に変更した。
ユーザビリティにおける検査方法を
明確にした。
2
T
5
7
5
2
:
2
0
2
0
17
T 5752:2020
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異の箇条
ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差異
の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
7 試験方法 7.3 ライトガイド(照射チ
ップ)又はライトガイド
(照射チップ)をもたない
重合用光照射器の光照射
断面積の測定
7.3
JISとほぼ同じ
追加
“又はライトガイド(照射チッ
プ)をもたない重合用光照射器”
を追加した。
その他の箇所も同様。
市場には,ライトガイド(照射チッ
プ)をもたないものが存在するため,
市場にある製品が該当できる内容に
変更した。
7.4.1.4 分光(スペクトル)
分布曲線
7.4.1.4 JISとほぼ同じ
変更
“350 nm〜770 nmの波長領域に
おける”を“350 nm〜700 nmの
波長領域における”に変更した。
誤記を修正した。
ISOの改訂時に提案する。
8 製造業者
が提供する
情報
8.2 m)
8.2 m)
JISとほぼ同じ
追加
“(照射チップ)”を追加した。
より理解しやすい内容に変更した。
9 表示
9 d)
9 e)
9 d)
9 e)
JISとほぼ同じ
削除
“(タイプI及びタイプIIの重合
用光照射器の場合)”を削除した。
この規格の使用者の利便性を考慮し
た。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 10650:2018,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
2
T
5
7
5
2
:
2
0
2
0