2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
T 1603-1995
人工心肺用電動式血液ポンプ
Electric motor driven blood pump
for cardiopulmonary bypass
1. 適用範囲 この規格は,主に開心術中の生命維持を目的とした血液の体外循環機能をもつ人工心肺装
置の血液ポンプのうち,電動機を動力源とするローラ形の血液ポンプ(以下,血液ポンプという。)につい
て規定する。
備考1. この規格の引用規格を,次に示す。
JIS C 1502 普通騒音計
JIS C 1505 精密騒音計
JIS T 1001 医用電気機器の安全通則
JIS T 1002 医用電気機器の安全性試験方法通則
JIS T 1005 医用電気機器取扱説明書の様式
JIS Z 8731 騒音レベル測定方法
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって参
考として併記したものである。
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS T 1001によるほか,次による。
(1) ローラポンプ ポンプ用管をローラで押圧し,送液方向に圧迫移動して,一定量の血液を密閉状態で
拍出させる構造のもの。
(2) ローラ ポンプ軸に固定された回転軸によって,一定の回転半径をもつように回転軸に固定された円
柱状の構造のもの。
(3) ポンプヘッド ポンプ用管を固定し,ローラが回転して血液を拍出する部分。
(4) ポンプ軸 電動機から伝達機構などを介して回転する軸。
(5) ポンプ周壁 ローラと一定の間げき(隙)を保つための円周状の壁。
(6) ポンプ用管 ローラポンプに使用するゴム管,ビニル管又は弾性をもつ管。
(7) 圧閉度 ローラがポンプ周壁に対してポンプ用管を圧迫する度合。
3. 使用条件 使用条件は,次による。
(1) 使用環境 血液ポンプの使用環境は,JIS T 1001の3.(2)の規定による。
(2) 保管環境 血液ポンプの保管環境は,JIS T 1001の3.(1)の規定による。
4. 種類 血液ポンプを,ローラの数によって区別する場合には,次による。
2
T 1603-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) 単ローラポンプ ローラの数が一つのもの
(2) 複ローラポンプ ローラの数が二つのもの
(3) 多ローラポンプ ローラの数が三つ以上のもの
5. 安全 安全に関する事項は,JIS T 1001の規定によるほか,次による。
(1) 電撃に対する保護の形式及び程度は,それぞれJIS T 1001に規定された次の分類に適合すること。
(a) 電撃に対する保護の形式による分類 クラスI機器又はクラスII機器
(b) 電撃に対する保護の程度による分類 B形機器又はBF形機器
(2) 絶縁及び耐電圧は,JIS T 1001の7.7(絶縁及び耐電圧)に規定の (A-a1), (A-a2), (A-f) 及び (B-a) とす
る。ただし, (B-a) については,電源端子とポンプ用管内容液との間とする。
(3) 外装にポンプ用管をきずつけるような突起物,ばりなどがあってはならない。
6. 性能
6.1
ローラの圧閉度 8.3.1によって試験を行ったとき,滴下数は,毎分1〜15滴でなければならない。
6.2
血液ポンプの回転性能 血液ポンプの回転性能は,次による。
(1) 血液ポンプの回転数誤差 8.3.2(1)によって試験を行ったとき,血液ポンプの回転数表示装置に表示さ
れた1分間当たりの回転数(以下,回転数という。)の誤差は,実測回転数の±5%でなければならな
い。
(2) 血液ポンプの回転数むら 8.3.2(2)によって試験を行ったとき,実用上有害なむらがあってはならない。
(3) 電源電圧変動による血液ポンプの回転数変動 8.3.2(3)によって試験を行ったとき,定格電圧の±10%
変動に対する回転数の変動は,定格回転数の±10%でなければならない。
(4) 連続運転による血液ポンプの回転数変動 8.3.2(4)によって試験を行ったとき,試験終了時の回転数の
変動は,試験開始時の回転数の±5%でなければならない。
(5) 負荷変動による血液ポンプの回転数変動 8.3.2(5)によって試験を行ったとき,負荷時の回転数の変動
は,無負荷時の回転数の±10%でなければならない。
(6) 血液ポンプの流量誤差 血液の流量表示装置をもつ血液ポンプでは,8.3.2(6)によって試験を行ったと
き,流量表示装置に表示された流量の誤差は,実測した流量の±5%でなければならない。
6.3
騒音 8.3.3によって試験を行ったとき,血液ポンプ1台当たりの騒音は50dB以下でなければなら
ない。
6.4
温度 8.3.4によって試験を行ったとき,JIS T 1001の11.1(過度の温度)に規定の値を超えてはな
らない。ただし,ポンプヘッドの各部分の温度は,55℃以下とする
7. 構成及び構造
7.1
構成 血液ポンプの構成は,次による。
(1) ポンプヘッド ポンプヘッドは,ポンプ軸,回転軸,ローラ,ポンプ周壁,ポンプ用管固定装置など
で構成する。
(2) 駆動部分 駆動部分は,電動機,電動機からの伝達機構,回転制御装置,回転数表示装置,電源回路
などで構成する。
7.2
構造
7.2.1
ポンプヘッド ポンプヘッドの構造は,次による。
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T 1603-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(1) ポンプヘッドは堅ろうに製作され,長期間使用しても変化しない材料を使用し,手術室などの使用場
所の床に対し,常に安定した方法で設置できる構造でなければならない。
(2) ポンプヘッドには,ローラ,ポンプ用管,ポンプ周壁などの部分に他の器材などが誤って侵入しない
ような,内部が観察できるカバーを備えていなければならない。
(3) ローラの軸方向の長さは,通常の使用状態で,ポンプ用管を確実に圧閉するのに十分な長さとする。
(4) ローラの回転に伴って,ポンプ用管が変位又は移動しないように,ポンプヘッドにポンプ用管の固定
装置を設けるとともに,使用中にポンプ用管がポンプヘッドから外れない構造とする。
(5) ポンプ用管の圧閉度を調節するための機構をもったローラは,ポンプ用管を設置しない状態で圧閉度
を最大としたとき,ポンプ周壁に接触してはならない。
また,圧閉度の調節を行った後は,圧閉状態を維持するための保持機構を備えていなければならな
い。
(6) 人力によって,容易にポンプ軸を回転できる手回しハンドルを設けなければならない。
(7) 手回しハンドルは,停電などからの電源の復帰によってポンプ軸が回転し始めたとき,回転が手回し
ハンドルによって妨げられないように,容易に外せるか又は格納できる構造でなければならない。
(8) ポンプヘッドに短時間,少量の液体がかかった場合に駆動部分などに影響をもたらさない構造でなけ
ればならない。
(9) ポンプ軸は,人工心肺装置の移動などの場合に,外力によって影響されない構造でなければならない。
7.2.2
駆動部分 駆動部分の構造は,次による。
(1) ローラポンプごとに,電源スイッチ,電源表示装置,回転制御装置及び回転数表示装置を備え,回転
方向又は送液方向を表示しなければならない。
(2) 血液ポンプの回転数は,回転停止から定格最大回転数までの範囲を,容易に変更できる構造でなけれ
ばならない。
(3) 回転制御装置は,多数の血液ポンプを使用するとき,ポンプヘッドとの対応を容易に識別できなけれ
ばならない。
(4) 回転方向を変更できる機構をもつ血液ポンプでは,使用中に誤って回転方向を逆転できない構造とす
る。
8. 試験
8.1
試験条件 試験条件は,JIS T 1002の4.(試験の条件)の規定によるほか,次による。
(1) 試験用電源 試験用電源は,JIS T 1002の5.(試験用電源)の規定による。
(2) ポンプ用管 試験に血液ポンプで使用するポンプ用管は,10.(2)に示すものとする。
また,2種類以上のポンプ用管を使用できる場合は,最悪条件を与えるポンプ用管を取り付けて試
験すること。
(3) ポンプ用管の圧閉度 ポンプ用管の圧閉度は,規定がない限り6.1を満足するような適正圧閉とする。
(4) その他の条件 試験は,水,生理食塩液などを使用し,規定がない限り液体温度は35±2℃とする。
8.2
安全に関する試験 安全に関する試験は,JIS T 1002の規定による。
なお,漏れ電流の試験のうち,接地漏れ電流及び外装漏れ電流についてはJIS T 1002の12.4.3及び12.4.4
を適用し,患者漏れ電流-Iについては図1による。
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T 1603-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図1 患者漏れ電流-I測定回路
備考 ポンプ用管とローラなどとの接合部を装着部とみなして,JIS T 1002の12.4.5の規定を適用する。
8.3
性能試験
8.3.1
ローラの圧閉度試験 図2に示す回路によって,ポンプ軸を任意の位置に止め,ローラ1個ごとに
ついて,水,生理食塩液などを用いて滴下が毎分5〜10滴になるようにローラの圧閉度を調節し保持する。
次に,ローラの位置をポンプ周壁に対して45度以下おきに変化させ,滴下数を測定する。
図2 ローラの圧閉度試験回路
注*
昭和45年厚生省告示第301号 ディスポーザブル輸血セット及び輸液セット基準による。
8.3.2
血液ポンプの回転性能試験 血液ポンプの回転性能試験は,図3に示す試験回路を用いて行う。
なお,拍出側の側管圧は,規定がない限りポンプ用管の断面積を調節できる回路抵抗器で,10 kPa {0.1
kgf/cm2} 以上となるように調整する。
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T 1603-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図3 血液ポンプの回転性能試験回路
参考 圧力計は,JIS B 7505に規定の1.5級又はこれと同等以上の精度のものを使用する。
(1) 血液ポンプの回転数誤差試験 血液ポンプの回転数表示装置に表示された定格最大回転数,その21の
回転数及び101以下の回転数で血液ポンプを回転し,それぞれ実測した回転数と表示された回転数との
差を求める。
(2) 血液ポンプの回転むら試験 定格最大回転数の101以下の回転数で血液ポンプを回転したとき,回転む
らの有無を目視によって試験する。
(3) 電源電圧変動による血液ポンプの回転数変動試験 定格最大回転数,その21の回転数及び101の回転数
で血液ポンプを回転し,それぞれの回転数のとき,定格電圧を±10%変動させ,回転数の変動を調べ
る。
(4) 連続運転による血液ポンプの回転数変動測定試験 定格最大回転数の21の回転数で,24時間血液ポン
プを回転したとき,試験開始時の回転数に対する試験終了時の回転数の変動を調べる。
(5) 負荷変動による血液ポンプの回転数変動試験 拍出側の回路抵抗を開放とし,定格最大回転数の21の
回転数で血液ポンプを回転する。回路抵抗器を用いて側管圧を除々に増加し,40kPa {0.4 kgf/cm2} と
なったときの回転数を測定する。
(6) 血液ポンプの回転数−拍出流量特性 血液ポンプの回転数と拍出流量の関係を10.(2)に示すポンプ用
管ごとに測定する。血液ポンプの回転数は,少なくとも定格最大回転数,その21の回転数及び101以下
の回転数の3点を測定点とし,拍出側の回路抵抗を開放して測定する。
なお,血液の流量表示装置をもつ血液ポンプでは,それぞれの回転数のとき,血液ポンプに表示し
た流量と測定した流量との差を求める。
8.3.3
騒音試験 騒音試験は,正常使用状態で機器の表面から1mの距離において,JIS C 1502又はJIS C
1505による騒音計を用いて測定する。測定方法はJIS Z 8731による。
8.3.4
温度試験 温度試験は,JIS T 1002の15.(温度)の規定に基づき,図3に示した回路によって,
定格最大回転数で8時間以上の連続運転を行い,供試血液ポンプの各部分の温度を測定する。
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T 1603-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
9. 表示 表示は,JIS T 1001の15.(表示)によるほか,次による。
(1) 銘板表示 血液ポンプには,見やすいところに次の事項を,銘板によって表示しなければならない。
(a) 名称及び形名
(b) 定格電源周波数 (Hz) 及び定格電源電圧 (V)
(c) 電源入力(A, VA又はW)
(d) 電撃に対する保護の形式及び程度
(e) 製造業者名及び所在地
(f) 製造番号
(2) その他の表示 血液ポンプには,外部の見やすいところにラベルなどで,次の注意事項を表示しなけ
ればならない。
(a) 使用中ポンプヘッドのカバーを不用意に開けない旨の注意事項
(b) その他特に注意を喚起する必要がある事項
10. 附属文書 血液ポンプには,取扱説明書及び検査合格書を添付しなければならない。取扱説明書は,
JIS T 1005の規定によるほか,次の事項を記載しなければならない。
(1) 血液ポンプの定格最大回転数及び定格最小回転数
(2) 血液ポンプに使用できるポンプ用管の種類並びに外径及び内径
(3) 血液の流量表示装置をもたない血液ポンプには,8.3.2(6)で求めたローラポンプの回転数と拍出流量の
関係の試験成績書
関連規格 JIS B 7505 ブルドン管圧力計
関連法規
昭和45年厚生省告示第301号 ディスポーザブル輸血セット及び輸液セット基準
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T 1603-1995
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
電子部会 ME機器専門委員会 構成表(平成元年5月15日制定のとき)
氏名
所属
(委員会長)
菊 地 眞
防衛医科大学校
斎 藤 正 男
東京大学医学部
都 築 正 和
東京大学附属病院
井 出 正 男
武蔵工業大学
小 川 絜以知
東京都立工業技術センター
小 野 哲 章
三井記念病院
須 磨 幸 藏
東京女子医科大学附属第二病院
古 幡 博
東京慈恵会医科大学
早 川 弘 一
日本医科大学
柄 川 順
国立ガンセンター病院
本 田 幸 雄
通商産業省機械情報産業局
渡 辺 徹
厚生省薬務局
前 田 勲 男
工業技術院標準部
越 智 秀 夫
財団法人機械電子検査検定協会
市 河 鴻 一
株式会社アイカ
篠 原 輝 雄
日本光電工業株式会社
太 田 善 久
日本電気三栄株式会社
繁 村 直
株式会社東芝
山 根 巌
日立メディコ株式会社
楡 木 武 久
社団法人日本電子工業振興協会
小 島 正 男
社団法人日本電子機械工業会
(関係者)
若 井 秀 治
泉工医科工業株式会社
(事務局)
吉 田 厚
工業技術院標準部電気・情報規格課
早 野 幸 雄
工業技術院標準部電気・情報規格課
(事務局)
津 金 秀 幸
工業技術院標準部電気規格課(平成7年6月15日改正のとき)
青 山 直 充
工業技術院標準部電気規格課(平成7年6月15日改正のとき)
血液ポンプ規格委員会 構成表(昭和57年当事)
氏名
所属
(委員長)
榊 原 欣 作
名古屋大学高気圧治療部
水 野 明
東京大学胸部外科
川 島 康 生
大阪大学第一外科
殿 倉 喜八郎
トノクラ医科工業株式会社
(幹事)
岩 井 秀 治
泉工医科工業株式会社
R. S. デュフレーン 日本トラベノール株式会社