>サイトトップへ >このカテゴリの一覧へ

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

(1)

目  次

ページ

序文

1

1

  適用範囲

1

2

  引用規格

2

3

  用語及び定義

3

4

  品質マネジメントシステム

9

4.1

  文書化

9

4.2

  経営者の責任

9

4.3

  製品実現

9

4.4

  測定,分析及び改善−不適合製品の管理

9

5

  滅菌剤の特性

9

5.1

  滅菌剤

9

5.2

  微生物殺滅効果の有効性

10

5.3

  材料への影響

10

5.4

  環境への配慮

10

6

  プロセス及び装置の特性

10

6.1

  プロセスの特性

10

6.2

  装置の特性

11

7

  製品の定義

11

7.1

  一般

11

7.2

  製品の安全性及び性能

12

7.3

  微生物学的品質

12

7.4

  文書化

12

8

  プロセスの定義

12

9

  バリデーション

13

9.1

  据付適格性の確認(IQ)

13

9.2

  運転適格性の確認(OQ)

13

9.3

  稼働性能適格性の確認(PQ)

13

9.4

  載荷形態の変更

15

9.5

  バリデーションのレビュー及び承認

15

10

  日常監視及び管理

16

11

  滅菌からの製品のリリース

17

12

  プロセス有効性の維持

18

12.1

  一般

18

12.2

  装置のメンテナンス

18

12.3

  適格性の再確認

18


T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)  目次

(2)

ページ

12.4

  変更の評価

18

附属書 A(規定)滅菌プロセスの致死率の決定−バイオロジカルインジケータ及び

    バイオバーデンアプローチ

20

附属書 B(規定)安全率を見込んだ滅菌プロセスの致死率の決定−オーバーキル・アプローチ

23

附属書 C(参考)この規格の使用上の指針

25

参考文献

40


T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

(3)

まえがき

この規格は,工業標準化法第 12 条第 1 項の規定に基づき,日本医療機器学会(JSMI)及び財団法人日本規

格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会

の審議を経て,厚生労働大臣が制定した日本工業規格である。

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責

任はもたない。


T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)  目次

(4)

白      紙


日本工業規格

JIS

 T

0801-1

:2010

(ISO 11135-1

:2007

)

ヘルスケア製品の滅菌−エチレンオキサイド−

第 1 部:医療機器の滅菌プロセスの開発,

バリデーション及び日常管理の要求事項

Sterilization of health care products

−Ethylene oxide−

Part 1: Requirements for development, validation and

routine control of a sterilization process for medical devices

序文

この規格は,2007 年に第 1 版として発行された ISO 11135-1 を基に,技術的内容及び対応国際規格の構

成を変更することなく作成した日本工業規格である。

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。

医療機器を滅菌するためのエチレンオキサイド滅菌プロセスにおいて,この規格に適合することで適切

な微生物の殺滅を実施できる。さらに,この要求事項に適合することで,この作業自体の信頼性及び再現

性を保証し,それによって一定の信頼度をもって滅菌処理後の製品上に生育可能な微生物の存在する確率

が低いことを,あらかじめ知ることができる。

附属書 に参考として示す指針は,規定事項ではなく,また,監査員のためのチェックリストとして作

成されたものでもない。指針は,要求事項に適合するための適切な手段とみなすことができる方法を示す

ものである。この規格の要求事項への適合性を達成することに有効なら,指針で示す以外の方法を使用し

てもよい。

1

適用範囲

この規格は,医療機器のエチレンオキサイド滅菌プロセスの開発,バリデーション及び日常管理の要求

事項について規定する。

注記 1  この規格の適用範囲は医療機器に限定しているが,ここで規定する要求事項及び提供する指

針は,その他のヘルスケア製品にも適用してよい。

この規格の要求事項に従ってバリデートし,管理する滅菌プロセスは,スクレイピー,牛海綿状脳症,

クロイツフェルト・ヤコブ病のような海綿状脳症の病原物質を不活性化するのには,適用しない。

注記 2  例として ISO 22442-1ISO 22442-2 及び ISO 22442-3 参照。

注記 2A  クロイツフェルト・ヤコブ病などの発症因子で汚染された危険性のある材料を処理するのに

は,幾つかの国々で固有の勧告がある。平成 9 年 4 月 24 日薬機第 71 号厚生省薬務局医療機


2

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

器開発課長通知“クロイツフェルト・ヤコブ病感染防止のための医療用具の消毒について”

参照。

この規格は医療機器を“無菌”又は“滅菌済み”と表示するための特定の要求事項の詳細は規定しない。

注記 3  医療機器を“無菌”又は“滅菌済み”と表示するための国又は地域の規制要求事項に注意を

払う必要がある。例えば,欧米では EN 556-1 又は ANSI/AAMI ST67 を参照。

この規格は,医療機器を製造するプロセスのすべての工程を管理するための品質マネジメントシステム

を規定するものではない。

注記 4  定義及び文書化した手順の効果的な実施は,医療機器の滅菌プロセスの開発,バリデーショ

ン及び日常管理に必要である。このような手順は,一般的には品質マネジメントシステムの

要素として考慮する。製造,又は再加工で完全な品質システムを構築することはこの規格の

要求事項ではないが,滅菌プロセスを管理するために最小限必要な品質マネジメントシステ

ムの要素は,この規格に適切に規定として参照している(特に箇条 参照)

注記 4A  医療機器の製造所は,平成 16 年 12 月 17 日厚生労働省令第 169 号,“医療機器及び体外診断

用医薬品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令”に適合していることが製造販売承認

(認証)の要件とされている。

この規格は,労働安全にかかわる設計及びエチレンオキサイド滅菌施設の操作についての要求事項は規

定しない。

注記 5  安全の詳細な情報は,参考文献,法令及び条例を参照する。

注記 6  エチレンオキサイドは,毒性があり,可燃性で爆発性がある。従事者へのエチレンオキサイ

ドのばく露については,労働安全衛生法などの関連する法規に従わなければならない。

この規格は,個々の包装容器にエチレンオキサイド又はエチレンオキサイドを含む混合物を直接注入す

る技術又は連続滅菌プロセスには適用しない。また,残留エチレンオキサイド及び/又はその反応生成物

の量を測定する分析方法にも適用しない。

注記 7  詳細な情報は,ISO 10993-7 を参照する。

注記 8  残留ガス濃度については,平成 10 年 3 月 31 日医薬審第 353 号厚生省医薬安全局審査管理課

長通知“エチレンオキサイドガス滅菌における残留ガス濃度の限度値の取扱いについて”参

照。

(この通知は,ISO 10993-7 に整合していない。

注記 9  この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。

ISO 11135-1:2007

,Sterilization of health care products−Ethylene oxide−Part 1: Requirements for

development, validation and routine control of a sterilization process for medical devices

(IDT)

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1 に基づき,

“一致しているこ

と”を示す。

2

引用規格

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの

引用規格のうちで,西暦年を付記してあるものは,記載の年の版を適用し,その後の改正版(追補を含む。


3

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

は適用しない。西暦年の付記がない引用規格は,その最新版(追補を含む。

)を適用する。

JIS Q 13485:2005

  医療機器−品質マネジメントシステム−規制目的のための要求事項

注記  対応国際規格:ISO 13485:2003,Medical devices−Quality management systems−Requirements

for regulatory purposes (IDT)

JIS T 0993-1

  医療機器の生物学的評価−第 1 部:評価及び試験

注記  対応国際規格:ISO 10993-1:2003,Biological evaluation of medical devices−Part 1: Evaluation and

testing (IDT)

ISO 10012

,Measurement management systems−Requirements for measurement processes and measuring

equipment

ISO 10993-7

,Biological evaluation of medical devices−Part 7: Ethylene oxide sterilization residuals

ISO 11138-1:2006

,Sterilization of health care products−Biological indicators−Part 1: General requirements

ISO 11138-2:2006

,Sterilization of health care products−Biological indicators−Part 2: Biological indicators

for ethylene oxide sterilization processes

ISO 11140-1

,Sterilization of health care products−Chemical indicators−Part 1: General requirements

ISO 11737-1

, Sterilization of medical devices− Microbiological methods− Part 1: Determination of a

population of microorganisms on products

ISO 11737-2

,Sterilization of medical devices−Microbiological methods−Part 2: Tests of sterility performed

in the validation of a sterilization process

ISO 14161

,Sterilization of health care products−Biological indicators−Guidance for the selection, use and

interpretation of results

ISO 14937:2000

,Sterilization of health care products−General requirements for characterization of a

sterilizing agent and the development, validation and routine control of a sterilization process for medical

devices

3

用語及び定義

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。

3.1

エアレーション(aeration)

滅菌プロセスの一部であって,エチレンオキサイド及び/又はその反応生成物が,あらかじめ定められ

た水準に達するまで,医療機器から脱離する操作。

注記  滅菌器の中及び/又はそれとは別のチャンバ又は部屋において実施してもよい。

3.2

エアレーションエリア(aeration area)

エアレーションを行うチャンバ又は部屋。

3.3

バイオバーデン(bioburden)

製品及び/又は無菌バリアシステムの上又は内部に存在する生育可能な微生物群(ISO/TS 11139 定義

2.2

参照)

3.4

バイオロジカルインジケータ(biological indicator)


4

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

ある特定の滅菌プロセスに対して,あらかじめ定めた抵抗性を示す生育可能な微生物を含む試験システ

ム(ISO/TS 11139  定義 2.3 参照)

3.5

校正(calibration)

計器若しくは測定系の示す値,又は実量器若しくは標準物質の表す値と,標準によって実現される値と

の間の関係を確定する一連の作業(JIS Z 8103 の 4342 参照)

注記  校正には,計器を調整して誤差を修正することは含まない。

3.6

ケミカルインジケータ(chemical indicator)

プロセスにばく(曝)露することで生じる化学的又は物理的な変化に基づき,あらかじめ定義した一つ

又は複数の滅菌プロセス変数の変化を表すシステム(ISO/TS 11139  定義 2.6 参照)

3.7

コンディショニング(conditioning)

エチレンオキサイドの導入前にあらかじめ定められた温度及び相対湿度に到達させるために製品に施す

処理。滅菌サイクルに含まれる。

注記  滅菌サイクル中のこの部分は,大気圧又は減圧下で実施することができる。3.25(プレコンデ

ィショニング)も参照。

3.8

D

値(D value)

D

10

値(D

10

 value)

定められた条件下で,試験に用いる微生物数の 90

%を不活性化するのに要する時間又はばく(曝)露

量(ISO/TS 11139  定義 2.11 参照)

注記  この規格では,値はばく露時間のことである。

3.9

開発(development)

仕様を作り上げる行為(ISO/TS 11139  定義 2.13 参照)

3.10

確立(establish)

理論的評価によって決定し,実験によって確認すること(ISO/TS 11139  定義 2.17 参照)

3.11

エチレンオキサイド導入時間(ethylene oxide injection time)

エチレンオキサイドをチャンバに最初に導入することによって始まり,エチレンオキサイド又はその混

合ガスの追加を終了することによって終わる時間。

3.12

ばく(曝)露時間(exposure time)

プロセスパラメータを,それぞれにあらかじめ定めた許容範囲内に維持した時間(ISO/TS 11139  定義

2.18

参照)

注記  この規格では,エチレンオキサイドの導入を終了してからエチレンオキサイドの除去が始まる

までの滅菌サイクルの時間。


5

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

3.13

許容外(fault)

あらかじめ定めた許容範囲から一つ又は複数のプロセスパラメータが外れること(ISO/TS 11139  定義

2.19

参照)

3.14

フラッシング(flushing)

次のいずれかの方法によって,滅菌負荷及び滅菌チャンバからエチレンオキサイドを除去する手順。

a)

滅菌チャンバへのろ過した空気又は不活性ガスの注入と抜気とを交互に繰り返す。

b)

滅菌負荷及び滅菌チャンバに,ろ過した空気又は不活性ガスを連続的に通す。

3.15

部分サイクル(fractional cycle)

あらかじめ定めた滅菌プロセスに対して,ばく露時間を減少させたプロセス。

3.16

ハーフサイクル(half cycle)

滅菌プロセスに対して,ばく露時間を 50  %に減少させた滅菌サイクル。

3.17

ヘルスケア製品[health care product(s)]

体外診断用医療機器を含む医療機器,又は生物製剤を含む医薬品(ISO/TS 11139  定義 2.20 参照)

3.18

据付適格性の確認(IQ) [installation qualification(IQ)]

装置がその要求仕様に適合して提供され,かつ,据え付けられたことの証拠を取得して文書化するプロ

セス(ISO/TS 11139  定義 2.22 参照)

3.19

医療機器(medical device)

あらゆる計器,器械,用具,機械,器具,埋込み用具,体外診断薬,検定物質,ソフトウェア,材料又

はその他の同類のもの若しくは関連する物質であって,単独使用か組合せ使用かを問わず,製造業者が人

体への使用を意図し,その使用目的が次の一つ以上であり,

−  疾病の診断,予防,監視,治療,又は緩和

−  負傷の診断,監視,治療,緩和,又は補助

−  解剖学的又は生理学的なプロセスの検査,代替,又は修復

−  生命支援又は維持

−  受胎調整

−  医療機器の殺菌

−  人体から採取される標本の体外試験法による医療目的のための情報提供

薬学,免疫学,又は新陳代謝の手段によって体内又は体表において意図したその主機能を達成すること

はないが,それらの手段によって機能の実現を補助するものである(JIS Q 13485  定義 3.7 参照)

3.20

微生物(microorganism)

細菌,真菌,原虫及びウィルスを包含する微小体(ISO/TS 11139  定義 2.26 参照)

注記  ある種の規格によっては,滅菌プロセスのバリデーション及び/又は日常管理において,上記


6

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

で定義したすべてのタイプの微生物の不活化の滅菌プロセスの有効性を立証することを要求し

ないこともある。

3.21

運転適格性の確認(OQ) [operational qualification (OQ)]

据え付けられた装置をその操作手順に従って用いたとき,あらかじめ定めた限度内で作動する証拠を取

得し,文書化するプロセス(ISO/TS 11139  定義 2.27 参照)

3.22

オーバーキル(overkill)

製品のバイオバーデンと同等以上の抵抗性のあるバイオロジカルインジケータに対して,少なくとも,

12

芽胞対数減少(SLR)を与えることが証明されている滅菌プロセス(3.36 参照)

3.23

パラメトリックリリース(parametric release)

プロセスパラメータがあらかじめ定められた許容範囲内に与えられたことを証明する記録に基づいて,

製品が滅菌済みであると宣言すること(ISO/TS 11139  定義 2.29 参照)

注記  このリリースの方法は,バイオロジカルインジケータを使用しない。

3.24

稼働性能適格性の確認(PQ) [performance qualification (PQ)]

操作手順に従って据え付けられ,運転されている装置が,あらかじめ定めた判断基準に恒常的に適合し

て稼働し,その結果仕様に適合する製品を生産することができるという証拠を取得し,文書化するプロセ

ス(ISO/TS 11139  定義 2.30 参照)

3.25

プレコンディショニング(preconditioning)

滅菌サイクルに導入する前に,製品を温度及び相対湿度があらかじめ定めた限度内になるように部屋又

はチャンバ内で処理すること。

3.26

プロセスチャレンジデバイス(PCD) [process challenge device (PCD)]

滅菌プロセスに対する定義した抵抗性を示すように設計された,滅菌プロセスの性能を評価するために

用いられる物(ISO/TS 11139  定義 2.33 参照)

3.27

プロセスパラメータ(process parameter)

あらかじめ定めたプロセス変数の値(ISO/TS 11139  定義 2.34 参照)

注記  滅菌プロセスの仕様には,プロセスパラメータ及びその許容範囲が含まれる。

3.28

プロセス変数(process variable)

滅菌プロセスの条件で,その変化が微生物の殺滅効果に変動を与えるような条件。

例えば,時間,温度,圧力,濃度,湿度(ISO/TS 11139  定義 2.35 参照)

3.29

製品(product)

プロセスの結果(ISO 9000  定義 3.4.2

注記  この規格では,製品は有形のものであり,原料,中間品,半組立品及びヘルスケア製品でもあ


7

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

り得る。

3.30

製品負荷容積(product load volume)

製品に占有された有効チャンバ容積(3.47 参照)内の定義した空間。

3.31

公的微生物保存機関(recognized culture collection)

特許手続上の微生物の寄託の国際的承認に関するブタペスト条約に基づく国際的保存機関。我が国では

製品評価技術基盤機構バイオテクノロジー本部・生物遺伝資源部門(NBRC)など(ISO/TS 11139  定義 2.38

参照)

3.32

標準菌(reference microorganism)

公的微生物保存機関から得られる菌株(ISO/TS 11139  定義 2.39 参照)

3.33

適格性の再確認(requalification)

定義した滅菌プロセスが引き続き許容できるものであることを確認するために,バリデーションの一部

分を反復実施すること(ISO/TS 11139  定義 2.40 参照)

3.34

サービス(services)

外部から供給を受けるもので,装置が機能を発揮するのに必要なもの。

例えば,電気,水,圧縮空気,排水(ISO/TS 11139  定義 2.41 参照)

3.35

あらかじめ定める(specify)

承認を受けた文書の中で詳細を明記すること(ISO/TS 11139  定義 2.42 参照)

3.36

芽胞対数減少(SLR) [Spore Log Reduction (SLR)]

あらかじめ定めた条件でばく露されたバイオロジカルインジケータの胞子の数の減少を,10 を底とした

対数(常用対数)で表した数。

注記 SLR は,バイオロジカルインジケータの最初の菌数の対数から,最後の菌数の対数を減じて計

算できる。

SLR

=logN

0

−logN

u

ここに,

N

u

バイオロジカルインジケータの最後の菌数

N

0

バイオロジカルインジケータの最初の菌数

生残がない場合は,SLR は計算できない。計算の目的で一陽性と仮定した場合は,SLR は

log N

0

“より大きい”と記録する。

3.37

無菌(sterile)

生育可能な微生物が存在しないこと(ISO/TS 11139  定義 2.43 参照)

3.38

無菌性(sterility)

生育可能な微生物が存在しない状態。


8

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

注記  実際には,そのような微生物が存在しない絶対的な状態を証明することはできない[3.40(滅

菌)を参照]

ISO/TS 11139  定義 2.45 参照)

3.39

無菌性保証水準(SAL) [sterility assurance level (SAL)]

滅菌後に,生育可能な 1 個の微生物が製品上に存在する確率[3.29(製品)を参照]

ISO/TS 11139  定

義 2.46 参照)

注記 SAL は定量値として一般的に,10

3

又は 10

6

と表す。この定量値を無菌性保証に適用すると

きは,10

6

の SAL は 10

3

の SAL よりも小さい値であるが,より高い無菌性保証を与える。

3.40

滅菌(sterilization)

製品を生育可能な微生物が存在しない状態にするために用いる,バリデートされたプロセス[3.39(無

菌性保証水準)を参照]

ISO/TS 11139  定義 2.47 参照)

注記  滅菌プロセスでは,微生物の不活化は指数関数で表現される。したがって,個々の製品に生残

する生育可能な微生物は,確率論の観点から表現が可能である。この確率は,非常に低い数に

減らすことはできるが,決してゼロに低減することはできない。

3.41

滅菌サイクル(sterilization cycle)

密閉された滅菌チャンバ内で実施する,脱気,コンディショニング(実施する場合)

,エチレンオキサイ

ド導入,エチレンオキサイドによるばく露,エチレンオキサイドの除去,並びにフラッシング(実施する

場合)及び空気又は不活性ガスの追加からなる処理。

3.42

滅菌負荷(sterilization load)

滅菌プロセスを用いて一緒に滅菌される,又はされた製品(ISO/TS 11139  定義 2.48 参照)

3.43

滅菌プロセス(sterilization process)

あらかじめ定めた無菌性についての要求事項を達成するための一連の活動又は操作(ISO/TS 11139  定義

2.49

参照)

注記  この一連の活動又は操作には,前処理(必要な場合),決定したコンディション,必要な前処理

下でのエチレンオキサイドへのばく露,エチレンオキサイドの除去及び製品の取出しを含む。

滅菌プロセスに先立つすべての洗浄,消毒又は包装操作は含まない。

3.44

滅菌剤(sterilizing agent)

あらかじめ定めた条件下で,無菌性を達成するために十分な殺菌作用をもつ物理的若しくは化学的媒体

又はその組合せ(ISO/TS 11139  定義 2.50 参照)

注記  この規格においては,滅菌剤とはエチレンオキサイド又はエチレンオキサイドと希釈剤との混

合物のことである。

3.45

生残曲線(survivor curve)

定められた条件下での滅菌剤へのばく露の増加に対応する微生物数の不活化を図式的に表現したもの

ISO/TS 11139  定義 2.51 参照)


9

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

3.46

無菌性の試験(test of sterility)

開発,バリデーション又は適格性の再確認の一部として実施する技術的操作で,製品又はその一部に生

育可能な微生物の存在の有無を判定するために行う試験(ISO/TS 11139  定義 2.54 参照)

3.47

有効チャンバ容積(usable chamber volume)

固定部品又は可動部品によって制限されない,滅菌負荷を入れることができる滅菌チャンバの使用でき

るあらかじめ定めた空間。

例  決まった寸法のパレット上の使用できる空間

注記  チャンバ内の循環のための空間は,含まない。

3.48

バリデーション(validation)

プロセスが,恒常的にあらかじめ定めた仕様に適合する製品を得ることができることを確立するために,

要求される結果を得て,記録し,解釈するための文書化した手順(ISO/TS 11139  定義 2.55 参照)

4

品質マネジメントシステム

4.1

文書化

4.1.1

開発,バリデーション,日常管理及び滅菌からの製品リリースの手順をあらかじめ定めなければな

らない。

4.1.2

この規格が要求する文書及び記録は,あらかじめ指名した職員(4.2.1 参照)によってレビュー及

び承認されなければならない。文書及び記録は,JIS Q 13485 の該当する箇条によって管理しなければなら

ない。

4.2

経営者の責任

4.2.1

この規格の要求事項を実施し,これに適合するための責任及び権限をあらかじめ定めなければなら

ない。責任は,JIS Q 13485 の該当する箇条によって,力量のある職員に割り当てなければならない。

4.2.2

この規格の要求事項を,他の品質マネジメントシステムの組織によって実行する場合は,それぞれ

の組織の責任及び権限をあらかじめ定めなければならない。

4.3

製品実現

4.3.1

購買の手順をあらかじめ定めなければならない。これらの手順は,JIS Q 13485 の該当する箇条に

適合しなければならない。

4.3.2

製品の識別及びトレーサビリティの手順をあらかじめ定めなければならない。この手順は,JIS Q 

13485

の該当する箇条に適合しなければならない。

4.3.3

この規格の要求事項に適合するために,試験用の計器を含むすべての機器の校正について,JIS Q 

13485

又は ISO 10012 の該当する箇条に適合したシステムを構築しなければならない。

4.4

測定,分析及び改善−不適合製品の管理

不適合と認定した製品の管理,修正,是正処置及び予防処置の手順をあらかじめ定めなければならない。

これらの手順は,JIS Q 13485 の該当する箇条に適合しなければならない。

5

滅菌剤の特性

5.1

滅菌剤


10

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

滅菌剤の組成,貯蔵条件及び有効期限をあらかじめ定めなければならない。

5.2

微生物殺滅効果の有効性

一般に認められた組成外のエチレンオキサイド又は新規の希釈剤を使用する場合は,これらの微生物殺

滅効果の有効性についてのデータを作成(開発)しておかなければならない。

注記  エチレンオキサイドの微生物の不活化については多くの文献がある。これらの文献には,微生

物の不活化に影響するプロセス変数についての情報が記載されている。ただし,この規格では

このような微生物不活化についての一般的な研究を参照することは要求しない。

5.3

材料への影響

医療機器の製造に用いる様々な材料に対してエチレンオキサイドが与える影響については,包括的な文

献があり,これらの文献は,エチレンオキサイドで滅菌される医療機器の設計及び開発に携わる者に有用

である。この規格では,材料に及ぼす影響についての個別の検討を行うことは要求しないが,製品自体に

対するエチレンオキサイドの影響については,検討を行うことを規定している(箇条 参照)

。この場合,

すべての材料及び試験結果並びに材料の特性を評価した基準について記録しなければならない。

5.4

環境への配慮

5.4.1

滅菌プロセスを実施することによって環境が被る潜在的な影響について評価するとともに,環境を

保護する方法を明確にしなければならない。潜在的な影響,管理するための方法など,評価にかかわる事

項は文書で記録しておかなければならない。

5.4.2

エチレンオキサイドの使用者は,エチレンオキサイド及びその希釈物の放出及び廃棄については,

“特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律”

(PRTR 法)などの関連す

る法規に従わなければならない。

6

プロセス及び装置の特性

6.1

プロセスの特性

6.1.1

滅菌プロセス変数の範囲及び安全で再現性のある滅菌プロセスを提供するのに必要な装置は,定義

及び文書化しなければならない。

6.1.2

プロセスの特性には,次の項目を含まなければならない。

a)

プレコンディショニング(行う場合)

b)

滅菌サイクル

c)

エアレーション(行う場合)

6.1.3

滅菌サイクルの特性には,次の項目を含めなければならない。

a)

空気除去

b)

コンディショニング(行う場合)

c)

エチレンオキサイド導入

d)

ばく露時間の間,定めた条件の維持

e)

エチレンオキサイドの除去

f)

フラッシング(行う場合)

g)

空気及び/又は不活性ガスの注入

6.1.4

負荷の内部をあらかじめ定めた温度及び湿度とするため製品の(前)処理は,管理した条件下で実

施し,プレコンディショニング及び/又はコンディショニングによって完了しなければならない。製品の

(前)処理では,蒸気によって発生させた湿気を用いなければならない。


11

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

6.1.5

温度,湿度,エチレンオキサイド濃度,圧力/真空度,時間及びその他必要なプロセス変数の許容

範囲を確立し,あらかじめ定めなければならない。

6.1.6

プロセス変数の監視・管理の手法をあらかじめ定めなければならない。

6.2

装置の特性

6.2.1

使用する機器の仕様を決定し,文書化しなければならない。この仕様には,プレコンディショニン

グ区域(使用する場合)

,滅菌器及びエアレーションの環境を含まなければならない。

注記  装置設計のある部分は,法令及び規制,又は規格による影響を受けることがある。

6.2.2

仕様には,次の事項を含まなければならない。

a)

装置,構成部材の材質など,すべての必要な附属設備についての記載

b)

滅菌剤の組成,及びチャンバへ滅菌剤を供給する方法

c)

プロセスで用いるすべてのガス,及びチャンバへガスを供給する方法についての記載

d)

蒸気が装置及び製品に使用できるものであることを示す蒸気の純度及び品質

e)

センサーの特性,配置など,滅菌プロセスを監視,制御及び記録するための計装装置の記載

f)

滅菌器によって認識される許容外(3.13 参照)

g)

作業者及び環境の保護などの安全機能

h)

該当する場合は,排出物の管理など,据付けにかかわる要求事項

6.2.3

そのプロセスの管理及び/又は監視に用いるソフトウェアは,ソフトウェアがその設計仕様に適合

していることを示す文書化した証拠を提供できるように品質システムの要素に従って作成し,バリデート

しなければならない。

注記  追加の情報は,ISO/IEC 90003 に注意を払うとよい。

6.2.4

制御機能の不全の場合でも,無効なプロセスを有効と判定するようなプロセスパラメータの誤記録

が起こらないような手段を設定しておかなければならない。

注記  これは制御及び監視を独立のシステムとする又は制御及び監視をクロスチェックして,すべて

の不一致及び許容外を判別することによって達成することが可能である。

7

製品の定義

7.1

一般

7.1.1

新規に設定されたか若しくは一部が変更された製品,包装,又は負荷パターンを適用する場合は,

導入に先立って,製品の定義を実施しなければならない。

7.1.2

以前にバリデートした製品,包装又は負荷パターンの同等性(滅菌プロセスへのチャレンジを参照

することで)の立証は,7.1.1 の要求事項に適合するように考慮しなければならない。すべての同等性は文

書化しなければならない。

7.1.3

製品は,最も滅菌しにくい部位に,湿気及びエチレンオキサイドが浸透できるように設計しなけれ

ばならない。

7.1.4

包装は,空気の除去並びに湿気及びエチレンオキサイドが浸透できるように設計しなければならな

い。

7.1.5

製品の最も滅菌しにくい部位においても,あらかじめ定めた滅菌プロセスが有効であることを立証

しなければならない。この立証は,以前にバリデートした製品か,又は滅菌プロセスの適格性確認に使用

したプロセスチャレンジデバイス(PCD)との同等性を示すことで達成できる場合がある。同等性は,新規

製品のプロセスの定義及びバリデーションを実施することで立証できる場合もある。


12

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

7.2

製品の安全性及び性能

7.2.1

製品/包装に最も厳しいプロセスパラメータで定義した滅菌プロセスを適用した後でも,製品及び

その包装が,安全性,品質及び性能について規定された要求事項に適合していることを確認しなければな

らない。この場合は,プロセスパラメータの許容範囲の影響を考慮しなければならない。

注記  設計管理は,ISO 14971 で対応している一局面である。

7.2.2

複数回の滅菌サイクルを認める場合は,このようなプロセスが,製品及びその包装へ与える影響を

評価しなければならない。

注記  ISO 17664 参照。

7.2.3

滅菌プロセスにばく露された後の製品の生物学的安全性は,JIS T 0993-1 に従って確立しなければ

ならない。

7.2.4

エチレンオキサイドで滅菌した医療機器の残留エチレンオキサイドの最大許容限度は ISO 10993-7

に規定されている。処理した製品が ISO 10993-7 の要求事項に適合するような,エチレンオキサイドの残

留水準を減じる手段を確立しなければならない。

注記  箇条 の注記 参照。

7.3

微生物学的品質

7.3.1

滅菌操作に供する製品の微生物学的品質及び清浄度が管理されており,かつ,滅菌プロセスの有効

性を損なわないようにするための,システムをあらかじめ定め,維持しなければならない。

7.3.2

7.3.1

によって定義したシステムの有効性を立証しなければならない。単回使用の医療機器の場合

は,この立証にはあらかじめ定めた間隔で ISO 11737-1 によるバイオバーデンの推定を含める必要がある。

再使用可能な医療機器については,この立証にはあらかじめ定めた洗浄方法及び該当する場合は消毒プロ

セスの有効性の評価を含めなければならない。さらに,有機物質及び無機物質による汚染についての評価

も含めなければならない。

注記  再滅菌可能な医療機器の再処理のために提供される情報に対する要求事項は,ISO 17664 に規

定されている。

7.4

文書化

製品の定義の結果は,文書化しなければならない。

8

プロセスの定義

8.1

新規に設定されたか,又は一部が変更された製品,包装,載荷パターンを適用する場合は導入に先

立って,バリデートする滅菌プロセスを定義しなければならない。

8.2

プロセスの定義の作業は,据付適格性の確認(IQ)及び運転適格性の確認(OQ)が完了した滅菌チャン

バで実施しなければならない(9.1 及び 9.2 参照)

。プロセスの定義は,研究用滅菌器又は製品を滅菌する

のに用いる装置で実施してもよい。

8.3

定義した製品に適用できる滅菌プロセスを確立しなければならない。

8.4

プロセス仕様で定義したプロセスパラメータ及びその許容範囲の有効性は,文書化及び記録で妥当

性を示さなければなければならない。

8.5

サイクルの不活化速度は,

附属書 A,附属書 に規定した方法,又は要求される無菌性保証水準

(SAL)

を立証するバリデートされた他の方法のうちの一つを用いて決定しなければならない。

8.6

滅菌プロセスの確立で用いるバイオロジカルインジケータは,次の事項に適合するものでなければ

ならない。


13

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

a)  ISO 11138-2

の箇条 及び 9.5 に適合する。

b)

少なくともエチレンオキサイドに対して,滅菌する製品のバイオバーデンと同等の抵抗性を示す。

c)

配置場所は,滅菌条件を達成するのが最も困難な製品内の部位又は PCD の中とする。

プロセス定義,バリデーション,又は日常監視及び管理に PCD を用いる場合は,PCD の適切さを

立証しなければならない。PCD は,プロセスに対して製品の最も滅菌が困難な部位と同等又はそれ以

上に滅菌が困難なものでなければならない。

注記  バイオロジカルインジケータの選定,使用及び解釈の情報は,ISO 14161 を参照。

8.7

滅菌プロセスの設定に用いる市販されているバイオロジカルインジケータは,ISO 11138-1 の該当す

る箇条に適合したものを用いるとよい。

8.8

ケミカルインジケータを滅菌プロセスの定義の一部として使用する場合,ISO 11140-1 に適合しなけ

ればならない。

ケミカルインジケータを,滅菌プロセス確立の唯一の方法として用いてはならない。

8.9

無菌性の試験を滅菌プロセスの確立のために用いる場合は,ISO 11737-2 に適合しなければならない。

9

バリデーション

9.1

据付適格性の確認(IQ)

9.1.1

据付適格性の確認(IQ)では,滅菌器及びその附属機器すべてが,それらの仕様書どおりに供給され,

据え付けられたことを立証しなければならない。

9.1.2

附属装置を含めたエチレンオキサイドの供給に用いるすべての装置を確立し,文書化しなければな

らない。

9.1.3

装置の操作手順を定めなければならない(6.2 参照)

。これらの操作手順には,次を含むが,これら

に限定しない。

a)

各段階の運転方法

b)

許容外の状態及びそれを表示する方式,並びにそれに対して取るべき対応

c)

保守及び校正の方法

d)

技術サポートのための連絡先

9.1.4

必要なすべてのサービスを含め,装置を据え付ける設置場所の仕様を定めなければならない。特別

な注意事項及び準備事項のすべてを明確にしなければならない。

例  エチレンオキサイドの貯蔵条件が供給業者の示す要求事項,法令及び規制に合致することを検証

する。

9.1.5

据付けの指示は,文書化しなければならない。その中には,従事者の健康及び安全に対する適切な

指示を含まなければならない。

9.1.6

設置する装置,配管及びその他の附属機器の図面を IQ の間に確定しなければならない。

9.2

運転適格性の確認(OQ)

9.2.1

運転適格性の確認(OQ)の実施前に,すべての監視,制御,表示又は記録用の計器(すべてのテス

ト計器を含む。

)が校正済みであることを確認しなければならない(4.3.3 参照)

9.2.2

運転適格性の確認(OQ)は,据え付けた装置が,定義したプロセス(箇条 参照)の定義した許容

範囲内で運転する能力があることを立証しなければならない。

OQ

は,滅菌負荷のない状態で,又は適切なテスト材料を用いた,いずれかの条件下で実施する。

9.3

稼働性能適格性の確認(PQ)


14

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

9.3.1

一般

9.3.1.1

新規又は変更した製品,包装,載荷パターン又は滅菌プロセスを導入するに当たっては,以前に

バリデートした製品,包装又は載荷パターンの組合せとの同等性が立証されていない限り,稼働性能適格

性の確認(PQ)を実施しなければならない。そのような同等性の立証は,文書化しなければならない。

PQ

は,その製品を滅菌する装置を用いて実施する。

9.3.1.2 PQ

は,滅菌器があらかじめ定められた基準を満足して定常的に稼働し,そのプロセスが滅菌済

みの製品を製造できることを立証するために,PQ は製品を用いて実施しなければならない。

9.3.1.3 PQ

で使用する負荷は,日常的に滅菌される製品を代表するものであり,日常処理される負荷の

中で最も滅菌困難なものに基づいてあらかじめ定めなければならない。

その負荷は,日常的に滅菌する負荷と同等の特性の製品又は材料を含むものでもよい。

注記  バリデーションを販売する製品を用いて行う場合は,7.2 及び 11.3 を参照。

製品以外のものを用いる場合は,少なくとも滅菌プロセスに対して,製品と同等又はそれ以上に滅菌し

にくいものでなければならない。

使用した負荷をバリデーションサイクルに再度使用する場合は,負荷中の残留エチレンオキサイドがバ

イオロジカルインジケータに影響しないように,ばく露とばく露との間で適切にエアレーションするとよ

い。

負荷の適切性について,あらかじめ定めた頻度で再評価をしなければならない。

9.3.1.4

製品の負荷パターンなど,製品の滅菌への供給方法を定めなければならない。

9.3.1.5 PQ

の一部にケミカルインジケータを使用する場合,これらは ISO 11140-1 に適合しなければなら

ない。

ケミカルインジケータは,PQ で唯一の確認法として用いてはならない。

9.3.2

稼働性能適格性の確認−微生物学的(MPQ

注記  C.13 及び C.14 参照。

9.3.2.1

微生物学的な PQ は,滅菌プロセスの適用において,あらかじめ定めた無菌性に対する要求事項

を満足することを立証しなければならない。この立証には,生産用チャンバを用い,あらかじめ定めた滅

菌プロセスより低い致死性を与えるように定めたプロセスパラメータを適用して実施しなければならない。

微生物学的な PQ では,一つ以上のプロセス変数(例えば,EO 濃度,温度,湿度)の設定を日常滅菌に

用いられる設定値より低くして実験するのが一般的である。定義されたパラメータは,日常管理における

定めた最低水準又はそれ以下となる場合もある。

9.3.2.2

微生物学的な PQ では,生産用滅菌器の中の製品/負荷の組合せについて,定義したプロセスの

有効性を確認しなければならない。

9.3.2.3

サイクルの致死率は,

附属書 A,附属書 に規定した方法,又は要求される無菌性保証水準(SAL)

を立証するバリデートした他の方法のうちの一つを用いて決定しなければならない。

9.3.2.4

プロセスを研究用チャンバで定義した場合,微生物学的 PQ では,研究用チャンバで得られたデ

ータを確認できる生産用滅菌器で少なくとも 3 回の部分又は 3 回のハーフサイクル(

附属書 参照)を含

まなければならない。

すべてのバイオロジカルインジケータは,1 回以上,これらのバリデーションサイクルで不活化しなけ

ればならない。

注記  この意味は,

“更に追加の 1 回以上の日常の滅菌条件でのバイオロジカルインジケータの全死滅

の結果を求めている。

”ということである。


15

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

9.3.2.5 IQ

及び OQ を実施した同じプロセスパラメータを示す滅菌器は,次のいずれかを確認しなければ

ならない。

a)

最初のチャンバと同じに PQ をすべて実施する。

b)

要求された微生物学的致死性の水準を与えることを立証する PQ を一部省略して行う。一部省略した

適格性の確認の根拠を記録し,文書化しなければならない。

載荷形態の位置的な違いによる影響を評価するとよい。

9.3.3

稼働性能適格性の確認−物理的(PPQ

9.3.3.1

物理的 PQ では,次のことを立証しなければならない。

a)

プロセスの再現性。これには,計画した適格性の確認試験で少なくとも 3 回連続してあらかじめ定め

た合格基準に適合する。

b)

予定している日常のプロセス仕様で実行中に,

負荷全体があらかじめ定められた合格基準に適合する。

物理的 PQ の一部は,微生物学的 PQ の間に実施してもよい。a)

を微生物学的 PQ と並行して実施する

場合は,少なくとも 1 回の追加の適格性の確認を実施して,この要求事項への適合性を立証しなければな

らない。ある失敗がバリデートされたプロセスの有効性に関連しない要因の場合は,更に要求される 3 回

連続した物理的 PQ を行わないで,そのプロセスの実施と無関係であると文書化してよい。これらの例と

して,停電,サービスの停止,外部監視装置の故障などがあるがこれに限定しない。

9.3.3.2

物理的 PQ では,次のプロセスを確認しなければならない。

a)

定めたプレコンディショニング(行う場合)の終了時点で,滅菌負荷の温度及び湿度がプレコンディ

ショニングの仕様として文書化された範囲内にある。

b)

プレコンディショニング(行う場合)の終了と滅菌サイクルの開始との間の定めた最大経過時間が適

切である。

c)

ガス状のエチレンオキサイドが滅菌チャンバに導入されている。

d)

圧力の上昇及び使用したエチレンオキサイドの量[9.5.4 c)

参照]

,又は滅菌チャンバ内のエチレンオ

キサイドの濃度[9.5.5 b)

参照]は,あらかじめ定めた範囲内である。

e)

滅菌サイクルの間,チャンバの温度,湿度及び該当する場合は,その他のパラメータが滅菌プロセス

の仕様として文書化された範囲内である。

f)

ばく露中,製品負荷の温度は定めた範囲内である。

g)

エアレーションの間,滅菌負荷の温度があらかじめ定めた範囲内にある。

9.4

載荷形態の変更

種々の載荷形態の設定では,載荷形態が滅菌プロセスに影響する度合いを評価しなければならない。1

回のサイクルで滅菌するすべての製品が,要求される無菌性保証レベルを達成することを立証しなければ

ならない。

9.5

バリデーションのレビュー及び承認

9.5.1

この作業の目的は,滅菌プロセス計画書によって合否を確認するバリデーションデータのレビュー

を行い,文書に記録して,プロセス仕様を承認することである。

9.5.2

バイオロジカルインジケータ培養試験結果などの,製品の定義,プロセスの定義,IQ,OQ 及び PQ

において収集し,作成した情報は文書化し,合否判定のためレビューしなければならない(4.1.2 参照)

このレビューの結果は,記録しなければならない。

9.5.3

バリデーション報告書を作成しなければならない。この報告書は,権限のある者がレビュー及び承

認しなければならない。


16

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

9.5.4

バリデーション報告書は,バリデートされた特定の製品と,定義した載荷パターン及びエチレンオ

キサイド滅菌プロセスにかかわる文書化された仕様を記載,又は参照しなければならない。また,バリデ

ーション報告書には,次の事項に関する数値及び許容範囲を含まなければならない。

a)

プレコンディショニング(行う場合)

1)

チャンバ内又は区域での時間,温度及び湿度

2)

プレコンディショニングへ入れることができる製品の最低温度

3)

滅菌負荷の温度及び湿度

4)

プレコンディショニングからの取出しから滅菌サイクルの開始までの最大経過時間

b)

コンディショニング(行う場合)

1)

初期の減圧水準及びそれを達成する所用時間

2)

減圧保持時間

3)

チャンバ内での時間,温度,圧力及び湿度

4)

滅菌負荷の温度及び湿度

c)

エチレンオキサイドの導入及びばく露

1)

エチレンオキサイド導入時の圧力上昇,エチレンオキサイド導入時間及び最終圧力

2)

圧力上昇とは別に,次のいずれか一つを用いて算出したエチレンオキサイド濃度

2.1)

エチレンオキサイドの使用質量

2.2)

エチレンオキサイドの使用体積

2.3)

チャンバ内のエチレンオキサイド濃度の直接測定

3)

滅菌器チャンバ温度

4)

ばく露時間

5)

滅菌負荷の温度

6)

ばく露中におけるチャンバガス循環システム(行う場合)の運転状態が正常であったことの表示

d)

エアレーション(行う場合)

1)

時間及び温度

2)

(該当する場合)チャンバ及び/又は部屋の圧力変化

3)

空気又はその他のガスとの交換速度

4)

滅菌負荷の温度

9.5.5

パラメトリックリリースを用いる場合は,バリデーション報告書には,次の事項を記載しなければ

ならない。

a)

コンディショニング中のチャンバ内の湿度の直接測定による値及び許容範囲

b)

ばく露中の全期間にわたって要求される条件を検証するのに十分であるよう定めた間隔で,チャンバ

内雰囲気を直接分析することによって得られたエチレンオキサイド濃度の値及び許容範囲。

9.5.6

プロセスパラメータ及びそれらの許容範囲を含んだプロセス仕様を確認しなければならない。この

プロセス仕様には,特定の滅菌負荷に用いる個別の滅菌プロセスが適合するかどうかの判定基準も含めな

ければならない。

10

日常監視及び管理

10.1

それぞれの滅菌サイクルについて,滅菌プロセスの仕様に適合していたことを証明するために,デ

ータを記録し,保管しなければならない。これらのデータは,少なくとも次の事項を含まなければならな


17

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

い。

a)

プレコンディショニング(行う場合)に入れられた製品が,あらかじめ定めた要求される最低温度に

達したことの証拠。これは負荷をあらかじめ定めた最小時間の間,順応させることによって実施でき

る場合がある。

b)

規定した位置で監視及び記録したプレコンディショニングエリア(行う場合)の温度及び湿度。

c)

各滅菌負荷の,プレコンディショニング(行う場合)開始時刻及び取出し時刻。

d)

ガスばく露中のチャンバ内ガス循環システム(行う場合)の正常な運転をしていることの操作パネル

上などの表示。

e)

プレコンディショニング(行う場合)において滅菌負荷の取出しから滅菌サイクルの開始までの経過

時間

f)

滅菌サイクル中のチャンバ内の温度及び圧力

g)

コンディショニング実施中の圧力による湿度及び/又は直接監視によるチャンバ内の湿度。

h)

ガス状のエチレンオキサイドが滅菌チャンバ内へ導入されたことの証拠。

i)

滅菌チャンバ内の圧力の上昇,及び使用されたエチレンオキサイドの量又はチャンバ内のエチレンオ

キサイドの濃度。

j)

コンディショニング時間

k)

ばく露時間

l)

エアレーション中の時間,温度,圧力変化(ある場合はすべて)

,及び/又はエアレーションの間に行

う空気の供給(行う場合)

日常監視でバイオロジカルインジケータを用いる場合は,8.6 に適合しなければならない。

注記 1  8.7 も参照。

日常監視でケミカルインジケータを用いる場合は,8.8 に適合しなければならない。

注記 2  ケミカルインジケータは,製品のリリースにおいて,バイオロジカルインジケータの代替を

意図するものではない。

10.2

パラメトリックリリースを実施する場合は,次の追加データを記録し,保管しなければならない。

a)

滅菌サイクルを通して最低 2 か所のチャンバ内の温度。

b)

コンディショニング中の直接測定したチャンバ内の湿度。

c)

ばく露中を通して,要求される状態を検証するのに十分なあらかじめ定められた間隔で,チャンバ雰

囲気の直接分析によるエチレンオキサイド濃度。

11

滅菌からの製品のリリース

11.1

それぞれの滅菌負荷に使用した滅菌プロセスの適合性を示す基準は,文書化しなければならない。

これらの基準は,次の事項を含まなければならない。

a)

日常プロセスで記録されたデータが,滅菌プロセス仕様書に合致していることの確認。

b)

すべてのバイオロジカルインジケータ(行う場合)の試験微生物の生育を認めないことの確認。

11.2  11.1

の適合基準に適合しない場合,製品は不適合であると考慮しなければならない。さらに,JIS Q 

13485

の該当する箇条に従って取り扱わなければならない。

11.3

バリデーションを販売できる製品を用いて行った場合は,流通させる製品の出荷のための要求事項

をバリデーション活動の開始の前に作成しなければならない。


18

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

12

プロセス有効性の維持

12.1

一般

12.1.1

滅菌プロセスに提供する製品の状態を確実にするために,システムの継続的な有効性を立証しなけ

ればならない(7.3.1 参照)

。これには,例えば,製品のバイオバーデンの日常監視及び/又は洗浄プロセ

スの有効性の監視を含む場合がある。

12.1.2

滅菌プロセスの制御及び監視に使用する計器の正確度及び信頼性は,4.3.3 に従って定期的に検証

しなければならない。

12.2

装置のメンテナンス

12.2.1

予防メンテナンスは,文書化した手順で計画し及び実施しなければならない。すべての手順は,国

又は地方自治体の法令及び同様に滅菌器の製造業者の推奨によらなければならない。

12.2.2

あらかじめ定めたメンテナンス業務をすべて完遂し記録するまで,装置は製品の滅菌処理に使用し

てはならない。

12.2.3

メンテナンスの記録は,保管しなければならない(4.1.2 参照)

12.2.4

メンテナンスの計画,メンテナンスの手順及びメンテナンスの記録はあらかじめ指名した職員が定

めた実施頻度でレビューし,その結果は文書化しなければならない。

12.3

適格性の再確認

12.3.1

あらかじめ定めた装置で実施した滅菌プロセスの適格性の再確認は,適合基準及び文書化した手順

によって,定めた間隔で実行しなければならない。この間隔は,正当な理由付けをしなければならない。

12.3.2 IQ

,OQ,PQ 及びそれに続く適格性の再確認をレビューしなければならない。また,微生物学的実

験を通して,あらかじめ定めた SAL の確認など,要求される適格性の再確認の範囲を決定し文書化しなけ

ればならない。

12.3.3

製品のバイオバーデンと関連したバイオロジカルインジケータの適切性をあらかじめ定た間隔で

確認しなければならない(8.6 参照)

12.3.4

負荷及び載荷パターンはあらかじめ定めた頻度で適切性を再評価し,この再評価の結果を 4.1.2 

よって文書化しなければならない。

12.3.5

バリデートした滅菌プロセスは,プロセスの有効性に影響するような滅菌装置,及び/又は製品の

変更が行われた場合は,レビューしなければならない(8.1 参照)

12.3.6

適格性の再確認及び/又は日常の監視・管理中に,その滅菌プロセスがあらかじめ定めた SAL を

実現できないという不具合を示した場合は,その不具合の原因を究明しなければならない。この結果,プ

ロセスが適切ではないと判明した場合は,SAL を達成するように滅菌プロセスを修正及びバリデートしな

ければならない。

12.3.7

適格性の再確認データ,報告書,及びその結果実施した是正処置(要求される場合)のレビュー記

録は,保管しなければならない(4.1.2 参照)

12.3.8

パラメトリックリリースを用いる場合は,次の追加要求事項を適用しなければならない。

a)

適格性の再確認は,少なくとも年 1 回実施しなければならない。

b)

適格性の再確認は,微生物学的検討による,あらかじめ定めた SAL の確認を含まなければならない。

12.4

変更の評価

12.4.1

装置,製品,滅菌する製品の包装若しくは配置,載荷パターン,滅菌剤及び/又はその導入方法の

変更は,滅菌プロセスの有効性への影響を評価しなければならない。

12.4.2

変更の大きさを考慮してプロセス定義,IQ,OQ 又は PQ の実施範囲を決定しなければならない。


19

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

12.4.3

必要となる適格性の再確認の範囲を決定しなければならない。決定に至った理由を含めた評価結果

を,文書化しなければならない。


20

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

附属書 A

規定)

滅菌プロセスの致死率の決定−

バイオロジカルインジケータ及びバイオバーデンアプローチ

序文

この附属書は,バイオロジカルインジケータ及びバイオバーデンアプローチによる滅菌プロセスの致死

率の決定方法について規定する。

A.1

一般

この方法は,サイクルパラメータ(ばく露時間)を確立するために,あるプロセスでのバイオロジカル

インジケータの抵抗性の知見と,バイオバーデン数及び抵抗性の知見とを組み合わせた方法である。

この方法の採用は,製品のバイオバーデンレベルが長い間比較的一定で,バイオバーデンの抵抗性はバ

イオロジカルインジケータの抵抗性と同じか又は低いことの立証を要求する。

バイオロジカルインジケータの抵抗性は,そのプロセスを段階的なばく露時間で運転し,そのプロセス

の致死率(不活化率)を決定して証明する。この致死率,バイオバーデン数及びバイオバーデンの相対的

抵抗性の知見によって SAL を予想できるばく露時間を設定することができる。

この方法の指針については,ISO 14161 参照。

A.2

手順

A.2.1

製品中で無菌性を達成するのが最も困難な場所を確立する。

A.2.2

滅菌プロセスへのチャレンジは,エチレンオキサイドに対する既知の抵抗性・菌数をもつ微生物に

よるバイオロジカルインジケータを,製品内の滅菌条件の達成が最も困難な部位に置くことによって作成

する。このチャレンジの位置が最も滅菌の困難な部位以外の場合は,最も困難な部位との関係を確立しな

ければならない。

製品より滅菌プロセスに対する抵抗性が大きいと証明された PCD の使用は,この要求事項に合致する。

包装の影響及び PCD からの滅菌剤の除去に注意を払わなければならない。

A.2.3

上記に従って作成したチャレンジを,日常的に生産する製品と同じ方法で包装し滅菌負荷内に含め

る。

A.2.4

日常的に使用する条件(箇条 参照)より致死率が低く,すべての標準菌が死滅することのないよ

うな条件下で,滅菌負荷をエチレンオキサイドにばく露する。

A.2.5

ほかのすべてのパラメータは同じままで,段階的に設定した時間でエチレンオキサイドにばく露し

た後,プロセスの致死率は,次のいずれかの方法で決定できる。

a)

微生物の生残数の直接計数法(A.3.1 参照)

b)

フラクションネガティブ法(A.3.2 又は A.3.3 参照)

c)

a)

及び b)

の組合せ。


21

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

注記  フラクションネガティブ法は,部分的なガスばく露時間でばく露した後の PCD の無菌性の試

験の陽性−陰性データを用いる。

この結果から,標準菌の不活化率が計算できる。

A.2.6

製品のバイオバーデンに関する知見(ISO 11737-1 参照)

,滅菌プロセスに対するバイオバーデンの

抵抗性及び標準菌の不活化率から,あらかじめ定めた SAL の要求事項を達成するのに必要な処理の程度を

決定する。

A.3

プロセス致死率の決定方法

A.3.1

直接計数

A.3.1.1

滅菌サイクルの致死率は,生残菌の直接計数を用いた生残曲線を作成して決定しなければならな

い。

A.3.1.2

この方法の詳細は,ISO 14161,及び ISO 11138-1 の C.3 に規定されている。ISO 11138-1 の C.3

は次の最低 5 回のばく露時間を網羅するように要求している。

a)

滅菌剤のばく露を受けない 1 回のサンプルへのばく露(例  ばく露時間 0)

注記  滅菌剤なし又は不活性ガス若しくは媒体に置き換える場合がある。

b)

生育可能な菌数が初期接種菌数の 0.01

%減少(4 Log

10

減少)となる少なくとも 1 回のばく露。

c)

上記ばく露 a)

及び b)

の間の条件での最低 3 回のばく露。

A.3.2

ホルコム・スパーマン・カルバーの方法を用いたフラクションネガティブ法(HSKP)

エチレンオキサイド滅菌用のバイオロジカルインジケータは時間を除いたすべてのプロセスパラメータ

を一定に保った上で,段階的に設定した時間エチレンオキサイドへばく露する。ばく露後,試験サンプル

は適切な培地に直接浸漬させ評価する。培養後に陽性を示さないサンプルの比率を計算する。この方法の

詳細は,ISO 14161 及び ISO 11138-1 の D.3.1 (HSKP)

に規定されている。

ISO 11138-1

の D.3.1 は,次の最低 5 回のばく露を要求している。

a) 1

セット以上のテストしたサンプルすべてが陽性を示すもの。

b) 2

セット以上のサンプルの一部が陽性を示すもの(計数できる領域)

c) 2

セット以上のサンプルに陽性が観察されないもの。

変更 HSKP,及び限定ホルコム・スパーマン・カルバーの方法(LHSKP)は,各時間にばく露されるサン

プル数が同じで時間間隔が一定のときに用いる場合がある。詳細な指針は,ISO 11138-1 の D.3.2 参照

(LHSKP)

ISO 14161 の C.1 (HSKP),C.2 (L(H)SKP)参照]

A.3.3

ストゥンボ・マーフィー・コクランの方法を用いたフラクションネガティブ法(SMCP)

ストゥンボ・マーフィー・コクランの方法(SMCP)による計算では,フラクションネガティブ範囲の時間

(t)

を含めた 1 回の結果,陰性ユニットの数(r),フラクションネガティブ範囲内のばく露時間での試料数(n)

及び初発菌数(N

0

)

が必要である。

SMCP

を用いて有効なデータを得るために,ISO 11138-1 の D.3.3 (SMCP)は,再現性を確認するために,

フラクションネガティブ範囲で少なくとも 3 回の運転の平均で 値を計算することを要求している。

ISO 14161

の C.3 参照(LSMCP)。

注記 HSKP,SMCP などの対比を次に示す。

      規格

記載箇所

決定法

ISO 11138-1:2006

Annex C

直接計数

ISO 11138-1:2006

Annex D.3.1 HSKP


22

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

ISO 11138-1:2006

Annex D.3.2 LHSKP

ISO 14161:2000

Annex C.1 HSKP

ISO 14161:2000

Annex C.2 L(H)SKP

ISO 11138-1:2006

Annex D.3.3 SMCP

ISO 14161:2000

Annex C.3 LSMCP


23

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

附属書 B

規定)

安全率を見込んだ滅菌プロセスの致死率の決定−

オーバーキル・アプローチ

序文

この附属書は,オーバーキル・アプローチによる安全率を見込んだ滅菌プロセスの致死率の決定方法に

ついて規定する。

B.1

一般

B.1.1

このプロセス定義の方法は,標準微生物の不活化を基にしたプロセス定義であり,広く採用されて

いる。そのような状況下で実施される滅菌プロセスは,安全率を見込んだ方法であることが多く,無菌性

に関してあらかじめ定められた要求事項を達成するのに必要になる以上の処理をしてしまうことがある。

この方法の指針は,ISO 14161 参照。

B.1.2

プロセス定義には,次の a)

又は b)

のいずれかの方法を用いなければならない。

a)

ハーフサイクル法:最低ばく露時間を確認するために,バイオロジカルインジケータ(10

6

以上の菌数

で)のすべてが不活化の結果となるような計 3 回の連続した実験を実施しなければならない。定める

ばく露時間は,少なくともこの最低時間の 2 倍でなければならない。生残が回収できる短いサイクル

は,回収技術が十分に適切であることを証明するために実施しなければならない。

b)

サイクル計算法:A.3 に規定する方法の一つを用いて,バイオロジカルインジケータの 12 SLR を最低

限度与える日常プロセスパラメータを確立しなければならない。サイクルの回数は,用いた方法によ

って決まる。

B.1.3

バリデーション調査でのバイオロジカルインジケータの回収のための条件は,培養期間を含めて設

定し,文書化しなければならない。培養期間は,エチレンオキサイドにばく露された芽胞の生育遅れの可

能性に注意を払わなければならない。

B.1.4

バイオバーデンの抵抗性は,バイオロジカルインジケータの抵抗性より低いか又は同等であること

を示さなければならない。

B.2

手順

B.2.1

滅菌プロセスで,最も滅菌しにくい製品をワーストケースの製品又は PCD として特定する。

B.2.2

滅菌条件の達成が最も困難な製品内の位置を決定する。

B.2.3

滅菌剤に対して既知の抵抗性及び既知の数の微生物を含めた滅菌プロセスへのチャレンジを,次の

いずれかの方法で作成する。

a)

製品内の滅菌条件の達成が最も困難な位置にバイオロジカルインジケータを置く。又は PCD の中に置

く。

b)

製品内で滅菌条件の達成が最も困難な場所に適切な標準菌を接種する。

ISO 14937

表 A.1(試験微生物)を参照する。

このチャレンジの位置が最も滅菌しにくい位置以外の場合は,最も難しい位置との関係を確立しなけれ

ばならない。


24

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

B.2.4

上記のリストによって作成したチャレンジを,日常的に生産し滅菌負荷内に含める製品と同等の方

法で包装する。

B.2.5

滅菌負荷を,規定した滅菌プロセスより低い致死性を与えるように設定した条件下でエチレンオキ

サイドにばく露する。

B.2.6

既知の微生物数の不活化を A.3 によって確認した場合は,定めた SAL に注意を払いながら,生残

微生物の予想される確率を知るための外挿法による滅菌プロセスの処理の範囲を決める。


25

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

附属書 C 

参考)

この規格の使用上の指針

序文

この附属書は,本体の規定を補足するものであって,規定の一部ではない。

注記 1  この附属書に示す指針は,この規格に適合しているかを評価するためのチェックリストとし

て意図したものではない。この指針の意図するところは,規定された要求事項を達成するた

めの解説及び可能な方法を提示することで,この規格の統一的な理解及び実施するための手

助けとなることである。この指針で示す以外の方法を適用することも可能であるが,ほかの

方法を使用する場合には,この規格に適合することを立証することになる。

注記 2  参照を容易にするために,この附属書の箇条番号は,この規格の本体の箇条 1∼箇条 12 に対

応させている。例えば,箇条 の指針は C.8 に記載する。

附属書 及び附属書 の指針は,

C.13

及び C.14 にそれぞれ記載する。

C.1

適用範囲

指針はない。

C.2

引用規格

指針はない。

C.3

用語及び定義

指針はない。

C.4

品質マネジメントシステム(QMS

C.4.1

文書化

文書化及び記録の管理の要求事項は,JIS Q 13485 の 4.2.3 及び 4.2.4 にそれぞれ規定されている。

JIS Q 13485

では,文書化に対する要求事項は,文書(規格及び手順を含む)の作成,管理及び記録につ

いてである。

C.4.2

経営者の責任

責任及び権限にかかわる要求事項は,JIS Q 13485 の 5.5 に,人的資源にかかわる要求事項は,JIS Q 13485

の 6.2 に規定されている。

JIS Q 13485

では,経営者のコミットメント,顧客重視,品質方針,計画,責任,権限,コミュニケーシ

ョン及びマネジメントレビューについて規定している。

滅菌プロセスの開発,バリデーション及び日常管理は,幾つかの別々の組織を包含することがあり,そ

れぞれがある要素に責任をもつことがある。この規格では,組織が受け入れたそれぞれの責任を定め,そ

の定めた責任を文書化することを要求している。この定めた権限及び責任は,それぞれの組織の品質マネ

ジメントシステムの中で文書化する。各要素に責任をもつ組織は,これらの要素について,適切な訓練及

び資格認定によってその能力が立証された力量のある職員に割り当てることを要求している。


26

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

次の事項に責任をもつ者は,訓練を受け,資格認定を受けるとよい。

a)

微生物の試験

b)

装置の据付け

c)

機器のメンテナンス

d)

物理的 PQ

e)

日常の滅菌作業

f)

校正

g)

プロセスの設計

h)

装置仕様の決定

i)

その他の該当する事項

C.4.3

製品実現

注記  JIS Q 13485 では製品実現に対する要求事項は,顧客要求事項の決定,設計・開発,購買,製造

管理,監視及び測定機器の校正からなる製品ライフサイクルが製品実現に関連している。

C.4.3.1  JIS Q 13485

の 7.4 において,購買にかかわる要求事項が規定されている。特に,JIS Q 13485 

7.4.3

の購買製品の検証にかかわる要求事項は,外部の組織から受け取るすべての製品及びサービスに適用

されることに注意するのがよい。

C.4.3.2

識別及びトレーサビリティにかかわる要求事項は,JIS Q 13485 の 7.5.3 に規定されている。

C.4.3.3

監視及び測定機器の校正にかかわる要求事項は,JIS Q 13485 の 7.6 に規定されている。

C.4.4

測定,分析及び改善−不適合製品の管理

不適合製品の管理及び是正処置の手順は,JIS Q 13485 の 8.3 及び 8.5.2 にそれぞれ規定されている。

JIS Q 13485

では,測定,分析及び改善の要求事項は,プロセス監視,不適合製品の管理,データの分析

及び改善(是正処置及び予防処置を含む)に関連している。

C.5

滅菌剤の特性

注記  箇条 の目的は,滅菌剤を定義し,その微生物への効果を立証し,微生物殺滅性に影響する因

子を特定し,滅菌剤へのばく露が材質に与える影響を評価して,作業者の安全及び環境保護に

ついての要求事項を明らかにすることである。この活動は,試験又は試作システムで実施して

よいが,最終的な装置仕様(6.2 参照)は,すべての試験又は試作システムを用いて実施した実

験的な検討と関連付けるとよい。

C.5.1

滅菌剤

指針はない。

C.5.2

微生物殺滅効果の有効性

指針はない。

C.5.3

材料への影響

指針はない。

C.5.4

環境への配慮

C.5.4.1

環境マネジメントシステムの原則は,エチレンオキサイド滅菌プロセスに適用できる。ISO 14001

は,環境マネジメントシステムの仕様を提供している。ISO 14040 は,ライフサイクルアセスメントの設

計の指針を示す。詳細は,ISO 14937 の E.3 参照。

C.5.4.2

指針はない。


27

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

C.6

プロセス及び装置の特性

注記  箇条 の目的は,滅菌プロセス変数の範囲,及び安全で再現性のよい滅菌プロセス変数を提供

するのに必要な装置を特性づけることである。

C.6.1

プロセスの特性

プロセスの特性は,次を含む。

−  プロセスの定義に含むのが望ましいプロセス変数の識別

−  各プロセス変数の範囲の定義

−  プロセス変数,及び理論的知識に基づくその定義した範囲の文書化

箇条 及び箇条 に続く検討は,次のいずれかである。

−  プロセス変数の仕様の妥当性を確認する。

−  レビュー及び再定義するのがよいプロセス変数の範囲を立証する。

C.6.2

装置の特性

C.6.2.1

指針はない。

C.6.2.2

次の事項は,装置仕様を準備するとき考慮するとよい。

注記  エチレンオキサイドについて化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)などの

関連する法規に従わなければならない。

−  エチレンオキサイド又はエチレンオキサイド混合ガスのボンベ,タンク又はカートリッジの保管に使

用されているエリアは,施錠され,排気設備を備えるとよい。

−  周囲の環境が,供給者によって推奨される温度範囲から外れるところでは,エチレンオキサイド容器

の保管エリアは,温度制御する設備を設けるのがよい。

−  定期的に補充される貯蔵タンクからエチレンオキサイドを滅菌器に供給する場合,タンクは,分析の

ためのサンプルをとるため,タンクからエチレンオキサイドを完全に取り除くため,及び汚染による

クリーニング又は重合物の過剰な蓄積時のクリーニングのための,各装置を備えるのがよい。

−  滅菌器にエチレンオキサイドを導入するシステムは,液状のエチレンオキサイドが滅菌器に導入され

ないように気化器を備えているのがよい。

−  滅菌チャンバへの気化器からのエチレンオキサイドガスの温度は,ガス状のエチレンオキサイドが生

成されていることを証明するために測定するとよい。

−  チャンバの温度を測定するには,最低 2 個のプローブを使用するのがよい。

注記  二つの別々のプローブを用いる目的は,一つのセンサーによる負荷の誤った値を受け入れてし

まうことを防ぐためである。二つの別々の温度センサーの温度比較は,一つのセンサーの故障

を検出することが可能である。二重素子の温度プローブの使用は,この必要性に合致している。

−  滅菌器チャンバ内の状態の均一性は,強制かくはん(撹拌)装置による達成が望まれる。ガスかくは

んシステムは,かくはんが無効であるときにはそのことを示す監視装置を備えているとよい。ファン

又はポンプのパワーオンを監視する装置では,不十分である。要求されるガスの流れが保持されてい

ることが監視されている証明が必要である。

C.6.2.3

指針はない。

C.6.2.4

指針はない。

C.7

製品の定義

注記  箇条 の目的は,滅菌前の製品の微生物学的品質及び製品の包装,滅菌に供する方法など,滅


28

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

菌する製品を定義することである。

C.7.1

一般

新しい又は変更した製品(製品化予定を含む)が,以前にバリデートされた製品より滅菌サイクルに対

して滅菌しにくい場合は,その製品の導入リスクを最小にするために C.7.1.1C.7.1.3 を実施するとよい。

C.7.1.1

バリデートされた製品及び/又は既存の EO プロセスをバリデートするのに用いた PCD との比較

による新しい滅菌対象製品の技術的レビューを実施する。この比較には,要求される SAL に影響を与える

可能性のある製品の製造,製造方法,施設,立地,原料タイプ及びその原料の由来のような,製品のバイ

オバーデンへ影響する可能性のある因子の試験も含めるのがよい。

C.7.1.2

滅菌対象製品の技術的レビューで,以前にバリデートされた製品に類似,及び明らかに重大な差

異がないことが分かった場合は,追加の研究なしに以前バリデートされた EO プロセスに適用してもよい。

滅菌対象の製品の形態,密度,又は載荷形態及びその包装が,以前にバリデートされた製品より滅菌しに

くい場合は,温度,湿度の浸透の検討及びサイクルの致死率の検討を行うのがよい。

C.7.1.3

その滅菌対象の製品の構造,形状及びその包装は,EO,熱及び湿気の浸透を妨げる可能性のある

どの部分についても注意深く試験するのがよい。

C.7.1.4

指針はない。

C.7.1.5

指針はない。

C.7.2

製品の安全性及び性能

滅菌を意図した医療機器の設計において,その機器のすべての部分にエチレンオキサイドが効果的に行

き渡ることを確実にするために,包装材料を含めた製品の機能,設計許容値,製品形状及び構成に注意す

るとよい。

滅菌中に,製品は,減圧及び加圧の変化,温度上昇及び相対湿度の変化のような様々な環境のストレス

を受ける。製品は,エチレンオキサイド及び/又は用いられたどんな希釈剤とでも反応するかもしれない。

製品設計は,機能及び安全性が予想できる範囲でばく露される滅菌条件によって損なわれないことを保証

する必要がある。

材料組成  あるプロセス条件は,医療機器及び包装の完全性(機能)に悪影響を与える。幾つかの包装

材料及び医療機器は,その滅菌プロセスを妨げることもある。したがって,滅菌プロセスでの材料及び設

計した特性への影響,並びに包装形態及び材料の影響を評価する。この評価は,通常,製品開発の間に実

施し,その結果は文書化するとよい。

予想できる滅菌条件の範囲内で滅菌剤,及び/又は希釈剤による滅菌中の化学的並びに物理的変化に適

切な抵抗性を示す材料を選択することは重要である。物理的強度,通気性,物理的寸法及び弾性のような

製品性能の安全性についての要求事項に適合するために要求される材料の性質は,滅菌後も使用に耐える

材料であることを保証できるかの評価をする。滅菌プロセスにばく露して,ひび割れ,ぜい(脆)化のよ

うな,性能低下を測定し抵抗性のある材料を特定(指定)するとよい。材料は,十分エチレンオキサイド

が行き渡り,又は浸透して目的の表面及び材料が滅菌されることを保証(確認)するとよい。その材料は,

適切な時間内にエアレーション(行う場合)ができ,生物学的安全性を保持するとよい。適用する場合は,

多数回滅菌プロセスにばく露したときの影響を評価する。

包装の考慮  滅菌する医療機器の包装の大きな役目は,使用時まで製品の無菌性を保証することである。

滅菌中,包装は製品品質全体に悪影響を与えることなしに,プロセス条件に耐えることを意図している(例

えば,微粒子の発生)

滅菌する製品の一次包装を選定するときは,重要な設計及び製造因子は,その滅菌プロセスに注意して


29

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

検討する。エチレンオキサイド浸透性を確認すること,及び特有な滅菌環境での包装の透過性は最も重要

である。空気の除去が滅菌プロセスの一部である場合は,その包装はまた,損傷及び破裂することなく排

気ができなければならない。

二次,三次包装を用いる場合は,顧客が取り扱うとき及び配送時の製品の保護能力を立証するのがよい。

二次包装が滅菌プロセスにばく露される場合は,その製品を保護する能力を失わずに,プロセスに耐える

ことのできる二次包装であることを保証する。

包装材料への考慮は,ISO 11607-1 及び ISO 11607-2 に詳細に規定している。

C.7.3

微生物学的品質

指針はない。

C.7.4

文書化

指針はない。

C.8

プロセスの定義

注記  箇条 の目的は,微生物学的試験で定義された製品(箇条 参照)に適用する滅菌プロセスの

詳細な仕様を取得することである。

C.8.1

滅菌プロセスの選定

個別の医療機器滅菌プロセスの開発は,その医療機器に効果的で適合性があるプロセスを確立すること

が必要である。それで,製品適合性への初期検討は,滅菌プロセスを実験で特定,及び/又は最適化する

こととともに,製品設計のときに実施する場合もある。

医療機器に用いる滅菌プロセスの選定には,次の点を含めてプロセスの効果に影響するすべての要素の

検討をするのがよい。

a)

滅菌器の滅菌能力の有効性

b)

滅菌器の能力内で実施できる条件の範囲

c)

すでに他の製品で用いられている滅菌プロセス

d)

残留エチレンオキサイド及び/又はその反応生成物の限度の要求事項

e)

プロセス開発実験の結果

C.8.2

プロセスの定義

プロセスの定義には,幾つかの要素を含んでいる場合もある。

a)

プレコンディショニング時(プレコンディショニングが用いられる場合)の温度及び湿度の規定した

条件を実現するために要求される時間の測定

b)

滅菌プロセス変数の限度値の範囲測定

注記  サイクル致死性の検討の指針は,プロセスの定義の部分として要求される場合もある。C.9.3.2

参照。

c)

製品のバイオバーデンを知ることによって,PQ 及び日常管理(行う場合)に用いるバイオロジカル

インジケータの適切さが確認できる。バイオロジカルインジケータの適切さは,ほとんど致死に近い

(短い)サイクルに製品(バイオバーデンのある)とバイオロジカルインジケータとをばく露して致

死率を測定するとよい。上記試験でバイオロジカルインジケータ及び製品のバイオバーデンの致死率

が比較できる。

注記  バイオバーデンの推定の要求事項及びガイダンスは,ISO 11737-1 に規定されている。

d)

エチレンオキサイド及び/又はその反応生成物の限度は,ISO 10993-7 によって確立した水準以下と


30

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

なるように,あらかじめ定めた条件で十分な脱ガスを達成する最小エアレーション時間を設定する。

これは生産条件で最大負荷にして実施するとよい。

注記  箇条 の注記 参照。

プロセス開発実施結果として,滅菌プロセスが定義できる。この滅菌プロセスの適切性は,生産用チャ

ンバの PQ で立証できる。

C.8.3

プレコンディショニング,及び/又はコンディショニング

エチレンオキサイドによる不活化に対する微生物の抵抗性は,それらのもつ水分に影響される。この理

由のため,局部的条件での微生物の水分含有を平衡にするためにばく露する製品の大気中の湿度を管理し

監視することが常識的な事項である。滅菌サイクルを開始する前に,定めた温度及び湿度で製品をプレコ

ンディショニングするのが通例である。

そのようなプレコンディショニングは,滅菌サイクルの時間を短縮できる。

負荷を加湿するために 30

%を超えるチャンバ内の相対湿度を一般的に用いる。あらかじめ定めた相対

湿度は,滅菌する製品による。過剰の相対湿度が原因となる潜在的な製品及び包装の性質(能力)へのい

た(傷)みについて検討するとよい。

適用する場合,プレコンディショニングエリアからの負荷の取出しから滅菌プロセスの開始までの間の

許容最大時間を設定する必要がある。60 分以下の移し変え時間が一般的である。

再現性のある製品の温度及び含水率を確立するためガスにばく露する前に,製品の加熱及び加湿を行う。

最短荷置き期間の設定実験で,要求される条件に到達することが分かる。滅菌負荷への結露を避ける必要

な予防措置を取るのがよい。

プレコンディショニングの終了時の滅菌負荷内の実際の温度及び湿度の範囲を,PQ 時に立証するのが

よい。

C.8.4

滅菌

考慮すべき滅菌プロセス中の性能因子には,次を含むとよい。

a)

減圧の到達度及び速度(時間)

b)

チャンバの漏れ速度(大気圧以下のサイクルの減圧下,又は大気圧以上のサイクルの加圧下のいずれ

かで実施される。

c)

コンディショニングの間の蒸気注入時の圧力の上昇

d)

エチレンオキサイドの導入による定めた圧力までの到達圧力及び圧力到達速度,並びにエチレンオキ

サイド濃度を監視するために使用する方法との関係

e)

エチレンオキサイドを除去する減圧の到達圧力及び到達速度(時間)

f)

空気(又は滅菌サイクルのこの段階に用いられる他のガス)の導入による圧力上昇及び圧力到達速度

g)

最後の 2 段階 e)

及び f)

は繰り返す。その繰返し回数は変動する。

ばく露中に,滅菌剤に代えて不活性ガスを追加する場合は,要求される SAL が達成されることを確実に

するための最終サイクルパラメータの設定において,ガス濃度の影響を考慮に入れることが重要である。

エチレンオキサイド及び空気は,静止状態ではよく混合しないので,滅菌チャンバ及び滅菌負荷を通し

て分散するエチレンオキサイドの再現性を達成するため,滅菌剤を導入する前の残留するチャンバの空気

の含有量を管理する。積極的なチャンバ雰囲気の循環を提供することが必要な場合がある。


31

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

C.8.5

エアレーション

残留しているエチレンオキサイド及びその反応生成物は,危険な場合がある。製造業者は,製品への残

留の可能性に注意することが重要である。

温度,滞留時間,強制空気循環,負荷特性,製品及び包装材料は,すべてエアレーションの効率に影響

する。

エアレーションは,滅菌器内,別の区域,又は両者の組合せで実施する場合がある。

製造業者は,バイオロジカルインジケータより製品バイオバーデンの抵抗性が低いことを証明する目的

のために,部分サイクルを使用して PCD の抵抗性を立証しなければならない。

注記  この相対的抵抗性評価は,製品の無菌性の試験で製品がすべて無菌及び複数の陽性となる PCD

によって立証される。

C.9

バリデーション

注記  バリデーションの目的は,プロセス定義(箇条 参照)で確立した滅菌プロセスが効率よく,

及び再現性よく滅菌負荷へ提供できることを立証することである。バリデーションは,据付適

格性の確認,運転適格性の確認及び稼働性能適格性の確認の段階で構成する。

C.9.1

据付適格性の確認(IQ

据付適格性の確認(IQ)は,滅菌器及びすべての附属品も供給され,仕様に従って据え付られたことを立

証する。

C.9.2

運転適格性の確認(OQ

運転適格性の確認(OQ)は,滅菌プロセスを提供する装置の能力を証明する。

C.9.2.1

プレコンディショニング

プレコンディショニングについての指針は,次による。

a) IQ

及び OQ は,設計基準に見合っていることを確立するために,プレコンディショニングエリアを空

にして実施する。

b)

空気循環のパターンを滅菌負荷によって,占められるエリア全体にわたって測定するのがよい。これ

は,空気置換率及び風力測定による計算と組み合わせたスモークテストによって実施してもよい。

c)

温度及び湿度は,それらの値が要求される範囲内であることを立証するために,十分に長い時間プレ

コンディショニングエリアの全体にわたって監視するのがよい。プレコンディショニングエリア全体

にわたって分散させた多くの場所の温度及び湿度を測定するのがよい。

注記  温度及び湿度のセンサーの推奨数は,表 C.1 及び表 C.2 参照。

C.9.2.2

滅菌

IQ

又は OQ では,ガスにばく露中の有効チャンバ容積内で記録された温度範囲は,サイクル使用内であ

り,平均温度の±3

℃以下が観測されるとよい。記録された温度範囲は,プロセス仕様内であればよい。

滅菌については,次の指針による。

a)

不活性ガスをエチレンオキサイドの代わりに使う場合は,結果を評価するとき,比熱容量の違いを考

慮するのがよい。

b)

温度センサーは,加熱しないチャンバの部分及び扉の近くの位置並びに,蒸気及びガスの導入口の近

くの位置のような最も温度差が現れるような位置に配置するとよい。残りの温度センサーは,滅菌器

チャンバの有効体積全体にわたって均等に配置するのがよい。

注記  推奨するセンサー数は,表 C.1 参照。


32

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

空のチャンバで運転限界を設定するために,滅菌プロセスの物理的性能因子を測定するとよい。これら

の因子には,次を含む。

−  減圧の到達度及び到達速度

−  チャンバの漏れ速度(大気圧以下のサイクルの減圧下,又は大気圧以上のサイクルでのその圧力下の

いずれかで実施する。

−  コンディショニング中の蒸気導入における圧力上昇

−  導入したガスの温度は,液体ではなく,ガスとして導入したことを立証するために,設定した温度以

上であることを確認する。

−  エチレンオキサイドの導入による圧力上昇及び到達速度,並びにそれらとエチレンオキサイド濃度及

び監視するための因子との関係。

−  エチレンオキサイドの除去に使用する減圧の到達真空度及び到達速度

−  空気(又はその他のガス)の導入による定めた圧力までの到達圧力及び到達速度

−  これらの最後の 2 段階の回数は,何回かのこの連続した繰返しの変化である。

OQ

では関連する補助システムの性能も測定するとよい。例えば,供給する蒸気の質,最低ガス導入温

度を達成するための気化器の能力,滅菌器に供給するろ過した空気及び水の信頼性,及び最大の滅菌負荷

の下で定めた品質の供給を維持するための蒸気発生器の能力を立証するとよい。

制御の再現性を立証するためにサイクルの繰返しを行うのがよい。

エアレーションを実施するとき,エアレーションエリアの温度プロフィルは,プレコンディショニング

エリアで推奨したのと同じ方法で測定するのがよい。エリアの空気の流速及び流れのパターンも測定する

のがよい。エアレーション中の相対湿度の測定は,必要としない場合がある。

C.9.3

稼働性能適格性の確認(PQ

C.9.3.1

一般

稼働性能適格性の確認(PQ)は,装置があらかじめ定めた基準に従って定常的に運転し,その仕様に合致

した製品をプロセスが生産することを立証する。

重要な変更の例は,以下の適格性の確認を含むのがよい。

−  包装

−  製品設計

−  滅菌載荷形態又は密度(C.9.4 参照)

−  滅菌器

−  滅菌プロセス

プレコンディショニング及びエアレーションを含めた滅菌プロセスの全段階で,上記のような変更の影

響を測定するのがよい。

C.9.3.2

稼働性能適格性の確認−微生物学的(MPQ

注記  微生物学的不活化検討は,定めた条件下でエチレンオキサイドにばく露したとき,必要とする

SAL

を達成することを立証するために行う。

この規格の箇条 及び箇条 は,サイクルの致死率の測定を参照する。

附属書 及び附属書 は,プロ

セス定義,又は微生物学的 PQ に要求される微生物学的不活化検討の指針を示す。プロセスの定義,並び

に該当する場合は据え付け及び OQ の間に取得した結果も,微生物学的 PQ のパラメータを設定するのに

用いるとよい。

バイオロジカルインジケータは,製品中で最も滅菌が困難な部位に置くとよい。製品設計によってバイ


33

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

オロジカルインジケータを滅菌が最も困難な部位に入れることができないような場合がある。このような

ときは,製品に既知の数量の生育可能な芽胞懸濁液を接種する,又は最も滅菌の困難な部位との関係が設

定できる位置にバイオロジカルインジケータを置くのがよい。

バイオロジカルインジケータ又は接種した製品は,滅菌負荷に均一に分散させるのがよいが,最も実施

しにくい滅菌コンディションの位置を含めてもよい。微生物学的 PQ は,滅菌負荷をとおして微生物学的

失活を立証するとよい。用いる位置は,温度監視に選定した位置を含めるとよい。さらに,2 個のバイオ

ロジカルインジケータを各温度監視位置に近い位置においてプロセス有効性を深く見てもよい。

ガス導入及び除去時の不活化は,生残曲線の直線性に影響する。

バイオロジカルインジケータ(

表 C.3 参照)は,サイクルの終了時にできるだけ早く滅菌負荷から取り

出し,培養するとよい。すべての回収復元の遅延の影響,特に残留 EO のばく露の影響を評価するとよい。

注記  職員のエチレンオキサイドによるばく露に関しては,労働安全衛生法などの関連する法規に従

わなければならない。

バイオロジカルインジケータのサンプルサイズの補足的指針は,

表 C.3 参照。

C.9.3.3

稼働性能適格性の確認−物理的(PPQ

C.9.3.3.1

指針はない。

C.9.3.3.2

プレコンディショニング又はコンディショニングは,次による。

− PQ は,文書化した手順に定めた載荷パターン及びパレットの配置で実行するとよい。ワーストケー

スの負荷は,バリデートするのがよい。

−  滅菌負荷内の温度及び湿度のプロファイルは,滅菌負荷があらかじめ決められた最低の温度及び湿度

に到達するために必要な時間中にわたって評価するとよい。センサーの数量の指針は

表 C.1 及び表 C.2

による。

−  温度及び湿度のセンサーは,滅菌器内に置くことを意図した包装内に置くとよい。

滅菌については,次の事項を適用する。

−  コンディショニングのプロセスの妥当性が立証されていることを保証するために,これらの PQ の検

討に使用する製品は,滅菌器に入れるときあらかじめ定めた温度になっているとよい。プレコンディ

ショニングを行う場合,製品は定めた時間でプレコンディショニングするとよい。

−  負荷パターン,又はパレットは滅菌器ごとに文書化するとよい。負荷パターンに許容できる製品の組

合せは,文書化するとよい。

−  新しい製品は,プロセスをバリデートしたときの参照負荷の PCD と比較するとよい。滅菌がより困難

であると判断する場合は,PQ すべてを実施するのがよい。

−  滅菌負荷の温度プロファイルは,各載荷パターン又は標準負荷について測定するとよい。PQ では,

滅菌負荷は,要求される不活化を与えるのに必要な最低温度に到達又は超過するとよいが,滅菌負荷

及び包装機能への悪影響となる最高温度を超えないのがよい。

−  エアレーションプロセス中の滅菌負荷内の温度は,滅菌負荷の温度が安定するために必要な時間測定

するとよい。

C.9.4

載荷形態の変更

変更する負荷をバリデートするときは,ワーストケースの標準負荷を定義するとよい。定義したワース

トケースの標準負荷は,例えば,医療機器のルーメンのサイズ変更,長さ,異なった材料,包装,及び存


34

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

在する滅菌プロセスにチャレンジする“ワーストケース”を代表する物理的量の変更で構成する。それに

伴い,すべての関係するファクターの評価を考慮するとよい。これらには,次を含むが限定しない。

a)

エチレンオキサイドの吸収

b)

曲がりくねった回路

c)

熱力学的プロファイル

C.9.5

バリデーションのレビュー及び承認

注記  9.5 の目的は,滅菌プロセスが受け入れられることを確認し,そのプロセス仕様の承認を確認す

るためにバリデーションデータのレビューを行い文書化することである。

C.9.5.1

指針はない。

C.9.5.2

指針はない。

C.9.5.3

指針はない。

C.9.5.4

バリデーションプログラムの終了時には,試験結果をバリデーション報告書に加えるのがよい。

バリデーション報告書は,次を含むか,又は参照先を示すとよい。

−  滅菌した製品の詳細(包装,及び滅菌器中の負荷パターンを含む。

−  滅菌器の仕様

− IQ・OQ データ

−  物理的及び微生物学的 PQ 運転すべての記録

−  すべての圧力計,記録計などが PQ 期間中に校正した範囲内であったことの表示

−  将来の見直し及び適格性の再確認の準備

−  バリデーション計画書

−  使用した文書化された手順

−  プロセス管理限界を含めた文書化した操作手順

−  メンテナンス及び校正手順

−  微生物学的又は装置の不具合が生じた場合は,発生した事実及び実施した是正処置

−  計画書からの逸脱が起きた場合は,その逸脱の詳細並びにその計画書及び結果への影響の評価

C.9.5.5

指針はない。

C.9.5.6

指針はない。

C.10

日常監視及び管理

注記  日常監視及び管理の目的は,バリデートし,定義した滅菌プロセスがその製品に適用されてい

ることを証明することである。

C.10.1

  バリデートした滅菌プロセスの有効性の確証のために,温度・湿度などのプロセスの変動を示すパ

ラメータを監視するとよい。

バイオロジカルインジケータ(行う場合)は,最も滅菌しにくいことが分かっている位置,又はその位

置との関係が分かっている位置を含めて,その負荷の間に分散させるとよい。バイオロジカルインジケー

タ(行う場合)は,プレコンディショニングの前に入れるとよい。

バイオロジカルインジケータを用いる場合は(

表 C.3 参照),そのサイクルが完了次第,それらを滅菌負

荷から取り出し,すぐに培養するとよい。すべての回収遅延の影響,及び残留エチレンオキサイドへのば

く露の影響について,評価するとよい。

注記  エチレンオキサイドに対する職員へのばく露については,労働安全衛生法などの関連する法規


35

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

に従わなければならない。

物理的プロセス規定に適合しなかったことに由来しないバイオロジカルインジケータ陽性が観察された

場合,綿密に検討するとよい。これはバリデーションをやり直す必要があることもある。

エチレンオキサイド導入段階での圧力上昇によって,滅菌器チャンバ内のエチレンオキサイド濃度を間

接的に測定することができる。エチレンオキサイド濃度は,滅菌プロセスの効率に影響する重要な因子で

あるので,圧力上昇が実際にエチレンオキサイド導入によるものであることを立証する独立した第二のシ

ステムを提供することが重要である。

C.10.2

  パラメトリックリリースは,バリデートされた滅菌プロセスについてバイオロジカルインジケータ

の結果によらず,物理的プロセスパラメータの測定及びその文書化によってだけ,日常プロセスが妥当で

あると宣言することである。

パラメトリックリリースを用いるときは,10.2 に規定するプロセス変数の測定が必要である。

C.11

滅菌からの製品のリリース

製品のリリースにおいて,滅菌プロセスの適合性を評価するために,物理的プロセス因子及びバイオロ

ジカルインジケータ(行う場合)の培養結果をレビューする。パラメトリックリリースでは,これより多

くのデータを記録する(10.2 参照)

。すべてのデータ記録は,滅菌プロセスの適合性を評価するためにレビ

ューするとよい。

物理的仕様に適合していない場合,又は培養後のバイオロジカルインジケータ(行う場合)陽性の場合

は,滅菌負荷を隔離場所に置き,不具合の原因を調査するとよい。調査は文書化され,製品の処置は,文

書化した手順及び JIS Q 13485 の適切な項に従って行うのがよい。

C.12

プロセス有効性の維持

C.12.1

  一般

指針はない。

C.12.2

  装置のメンテナンス

指針はない。

C.12.3

  適格性の再確認

注記  適格性の再確認は,不注意なプロセスの変更がその滅菌プロセスの有効性を損なわないことを

確認することである。

C.12.3.1

  バリデーション及びそれに続くすべての再バリデーションのデータ並びに日常プロセスデータ

は,少なくとも一年に一度レビューするとよい。必要な再バリデーションの範囲は,定義し文書化すると

よい。レビューの手順は,文書化するとよい。

C.12.3.2

  適格性の再確認は,次の検証を含むが,これに限定しない。

a)

無菌性に影響するような製品設計,製造材料,包装材料,PCD,供給者,製造区域及び施設,載荷形

態又は製造プロセスに重大な変更がなされていない。

b)

規定した SAL を無効にするような,重大な製品のバイオバーデンの増加,又はバイオバーデンの特性

の変化が起きていない。

c)

前の適格性の(再)確認以降,温度分布及びチャンバ操作で重大な変更がないことの立証。

d)

プレコンディショニングチャンバ若しくは部屋,又はエアレーション区域における温度プロファイル

及び循環チェックは,前の適格性の(再)確認以降,重大な変化を示さない。


36

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

e)

最新のバリデーションが再現性を立証してからの滅菌プロセスの履歴。

f)

変更管理及び予防的メンテナンスプログラムが,そのプロセスに影響する可能性のある滅菌器への修

正又は重大な変更がないことを示す。

g)

製品の無菌性に影響する可能性のある滅菌プロセスへの変更がない。

h)

滅菌プロセスの仕様を変更した場合は,滅菌プロセスの適格性の再確認に ISO 10993-7 に規定された

残留 EO の許容限度に製品が合致することを確認に含めるとよい。

C.12.3.3

  指針はない。

C.12.3.4

  指針はない。

C.12.3.5

  適格性の再確認で重大な変化を検知した場合は,IQ,OQ 及び PQ の要素を再び実施する必要が

あるかもしれない。すべての適格性の再確認,すべての追加の適格性の再確認の範囲,すべての理論的記

録及び是正処置の記録について保管するとよい。

C.12.3.6

  指針はない。

C.12.3.7

  指針はない。

C.12.3.8

  指針はない。

C.12.4

  変更の評価

指針はない。


37

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

表 C.1−推奨する温度センサーの最低数の例

IQ

・OQ の場合の数

(有効チャンバ容積/部屋の容積)

PQ

の場合の数

(製品負荷容積)

容積の例

(m

3

)

プレコンディ

ショニング

コンディショ
ニング/滅菌

エアレーション

プレコンディ

ショニング

コンディショ
ニング/滅菌

エアレーション

1 3

3

3

3

10 4  10

4

10

15 6  15

6

15

20 8  20

8

20

25 10

25

10

25

30 12

30

12

30

35 14

35

14

35

40 16

40

16

40

50 20

50

20

50

100 40  100

40

100

注記  この表に示した以外の容積については,次の計算を用いるとよい。

潜在的なホット,又はコールド位置となる部屋又はチャンバの熱分布図を作成するために,IQ 又は OQ の

間のプレコンディショニング及びエアレーションのための推奨数は,2.5 m

3

当たり 1 センサーを用いる。し

たがって,監視は一平面以上及び扉の近くの場所を含むとよい。

滅菌/コンディショニングの PQ 及び IQ/OQ のためのセンサーの数を求める式では,最低 3 個のセンサー

として,製品容積の 1 m

3

当たり 1 温度センサーを基本とする。

例  a) 2

m

3

の有効チャンバ容積:2 m

3

/2.5 m

3

=0.8。用いるセンサー数は,3 個以上(これは最低のセンサ

ー数である。

b) 9

m

3

の有効チャンバ容積:9 m

3

/2.5 m

3

=3.6。用いるセンサー数は,4 個以上。

c) 70

m

3

の有効チャンバ容積:70 m

3

/2.5 m

3

=28。用いるセンサー数は,28 個以上。

表 C.2−推奨する湿度センサーの最低数の例

IQ

・OQ の場合の数

(有効チャンバ容積/部屋の容積)

PQ

の場合の数

(製品負荷容積)

容積

(m

3

)

プレコンディ

ショニング

コンディショ
ニング/滅菌

エアレーション

プレコンディ

ショニング

コンディショ
ニング/滅菌

エアレーション

1 2

2

10 4

4

15 6

6

20 8

8

25 10

10

30 12

12

35 14

14

40 16

16

50 20

20

100 40

適用しない

40

適用しない

注記  この表に示した以外の容積については,次の計算を用いるとよい。

潜在的な湿度水準の変動となる製品の湿度分布図を作成するために,その推奨数は 2.5 m

3

当たり 1 センサ

ーを用いる。したがって,パレットの中心,角及び表面を含むとよい。センサーの最低数は 2 個である。

例  a) 6

m

3

の有効チャンバ容積:6 m

3

/2.5 m

3

=2.4。用いるセンサー数は,3 個以上(最小センサー数)

b) 60

m

3

の使用できるチャンバ容積:60 m

3

/2.5 m

3

=24。用いるセンサー数は,24 個以上。


38

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

表 C.3−推奨する BI/PCD の最低数の例

製品負荷容積

(m

3

)

微生物学的 PQ の場合の数

日常管理の場合の数

(用いる場合)

1 5 3

10 30 15

15 35 18

20 40 20

25 45 23

30 50 25

35 55 28

40 60 30

50 70 35

100 120  60

注記  この表に示した以外の容積については,次の計算を用いるとよい。

MPQ

について

10 m

3

以下(まで)

,BI の数は m

3

当たり 3 個,最低 5 個。

10 m

3

から 100 m

3

,追加する BI の数は m

3

当たり 1 個。

日常管理のための BI の数は,MPQ の間の BI 数の半数である。 
例  a) 3

m

3

の製品負荷容積:3×3=9。用いる BI の数は,MPQ のために 9 個以上

である。

日常管理:9/2=4.5。BI の数は少なくとも 5 個。

b) 18

m

3

の製品負荷容積:10×3+(18−10)×1=38。用いる BI の数は,MPQ

のために 38 個以上である。

日常管理:38/2=19。BI の数は 19 個以上。

C.13

附属書 の指針−滅菌プロセスの致死率の決定−BI/バイオバーデンアプローチ

C.13.1

  一般

製品のバイオバーデンを頻繁に試験し,その結果が一定である場合は,バイオロジカルインジケータ/

バイオバーデン組合せ法をサイクル開発に用いてもよい。

この方法は,バイオバーデンの抵抗性とバイオロジカルインジケータの抵抗性との関係が分かっている

ことを前提としている。この場合,BI の致死率の検討での SLR データは,製品のプロセスの有効性を証

明するために用いることができる。BI の菌数を直接計数したデータを収集した場合は,作成された生残曲

線から致死率として表される。

C.13.2

  プロセス致死率の決定

プロセス致死率は,しばしば 値で表される。微生物は,与えられたプロセスで一般的にほぼ対数的に

死滅するので,エチレンオキサイドガスへのばく露単位時間は(付着)菌数によらず,微生物数の 90

の減少結果を示す。これらの単位時間は,このプロセスでは 値として表される。

プロセス致死率又は 値は,一般的に用いられる二つのうちの一つの結果を用いて計算できる。一つ目

の方法(計数法)は,生残数の計数又は物理的計数からなる。二つ目の方法(フラクションネガティブ法)

は,部分的なサイクルで陽性・陰性を用いる。これらのいずれかの方法は,

附属書 又は附属書 を用い

てよい。値は,部分的サイクル,又は ISO 11138-1 及び ISO 14161 に規定された式の結果を用いて計算

してよい。

使用する方法によらず,次の事項が前提である。

a)

菌数は均一である。


39

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

b)

プロセスパラメータは,運転間で一定である。

c)

片対数の生残関係が存在する。

d)

ばく露及び未ばく露微生物も回収培地で同じ反応である。

すべての微生物学的試験法(無菌性の試験,計数など)は,ISO 11737-1 及び ISO 11737-2 に従ってバリ

デートするとよい。

C.13.3

  計数

BI

又は PCD の部分的滅菌サイクルへのばく露。その滅菌機からの BI 又は PCD の取出し。BI 又は PCD

の生残数の計数の実施からなる。計数した生残数は,生残曲線及び 値の計算に使うことができる。

は,回帰直線モデルを用いて計算する。

A.3.1

及び ISO 14161 参照。

C.13.4

  フラクションネガティブ法

フラクションネガティブ法分析は,滅菌サイクルを運転して,バイオロジカルインジケータのすべてで

はなく幾つかが不活化されることが必要である。これには,次を含む。

a)

ホルコム・スパーマン・カルバー法(HSK)手順

b)

限定ホルコム・スパーマン・カルバー法(LHSK)手順

c)

ストゥンボ・マーフィー・コクラン法(SMC)手順

附属書 及び ISO 14161 参照。

C.13.5

  サンプルサイズ

サンプルの数は,用いる方法及びサンプルを負荷の間に分散させておくか又は一か所に集中させるかに

依存する。一か所への集中した使用の場合は,サンプル間の結果の整合性を改善する場合がある。しかし,

チャンバで,できる限りの載荷形態で広範囲に分散させた温度分布測定調査によらない場合は,チャンバ

内の最悪位置を代表しない場合もある。

結果を評価するとき,繰返しチャレンジの間,ばく露条件の変動よりも菌数の変動が大きいために生残

微生物の数の違いを確認することについて考慮が必要である。

サンプルの最低数の指針は,ISO 11138-1 及び ISO 14161 参照。

バイオロジカルインジケータの数量の詳細指針は,

表 C.3 参照。

要求される結果を達成するために,そのサイクルのばく露時後の段階を短くする必要があるかもしれな

い。

C.14

附属書 の指針−安全率を見込んだ滅菌プロセスの致死率の決定−オーバーキル・アプローチ

この方法では,通常二つの方法を用いることができる。

第一法は,ハーフサイクル法である。その用法の相対的容易さ及び従来の SAL が得られるために,医療

機器製造業者及びヘルスケア施設で,この方法が一般的に用いられる。ハーフサイクルのばく露時間で 10

6

の BI をすべて不活化する証明である。EO ばく露の場合,ばく露時間を 2 倍にする時,12 SLR が与えられ

る。

第二法は,サイクル計算法であり,

附属書 AC.13 参照)に示す方法によって 12 SLR プロセスを達成

することである。


40

T 0801-1

:2010 (ISO 11135-1:2007)

参考文献

JIS Q 9000

  品質マネジメントシステム−基本及び用語

注記  対応国際規格:ISO 9000: 2005,Quality management systems−Fundamentals and vocabulary (IDT)

JIS Q 9001

  品質マネジメントシステム−要求事項

注記  対応国際規格:ISO 9001,Quality management systems−Requirements (IDT)

ISO/TS 11139:2006

,Sterilization of health care products−Vocabulary

ISO 11607-1

,Packaging for terminally sterilized medical devices−Part 1: Requirements for materials, sterile barrier

systems and packaging systems

ISO 11607-2

,Packaging for terminally sterilized medical devices−Part 2: Validation requirements for forming,

sealing and assembly processes

ISO 14001

,Environmental management systems−Requirements with guidance for use

ISO 14040

,Environmental management−Life cycle assessment−Principles and framework

ISO 14971

,Medical devices−Application of risk management to medical devices

ISO 17664

,Sterilization of medical devices−Information to be provided by the manufacturer for the processing of

resterilizable medical devices

ISO 22442-1

,Medical devices utilizing animal tissues and their derivatives−Part 1: Application of risk management

ISO 22442-2

,Medical devices utilizing animal tissues and their derivatives−Part 2: Controls on sourcing, collection

and handling

ISO 22442-3

,Medical devices utilizing animal tissues and their derivatives−Part 3: Validation of the elimination

and/or inactivation of viruses and transmissible spongiform encephalopathy (TSE) agents

ISO/IEC 90003

,Software engineering−Guidelines for the application of ISO 9001:2000 to computer software

IEC 61010-1

,Safety requirements for electrical equipment for measurement, control, and laboratory use−Part 1:

General requirements

IEC 61010-2-040

,Safety requirements for electrical equipment for measurement, control and laboratory use−Part

2-040: Particular requirements for sterilizers and washer-disinfectors used to treat medical materials

ANSI/AAMI ST67

,Sterilization of health care products−Requirements for products labeled ‘STERILE.’ AAMI,

Arlington, VA 2006

AAMI TIR16

, Process development and performance qualification for ethylene oxide sterilization −

Microbiological aspects. AAMI, Arlington, VA 2000

ATEX Manufacturers Directive 94/9/EC, European Parliament and Council, 1994, as amended, 1994

EN 556-1

,Sterilization of medical devices−Requirements for medical devices to be designated "STERILE"−Part

1: Requirements for terminally sterilized medical devices

Global Harmonization Task Force (GHTF)

−Study Group 1 (SG1), Document No. N029R11, 2 Feb., 2002

International Vocabulary of Basic and General Terms in Metrology (VIM) 1993