T 0305:2002
(1)
著作権法により無断での複製,転載等は禁止されております。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,厚生労働大臣及び経済産業
大臣が制定した日本工業規格である。
この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の
実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。厚生労働大臣,経済産業大臣及び日本
工業標準調査会は,このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願
公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。
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(2)
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目 次
ページ
1. 適用範囲 ················································································ 1
2. 引用規格 ················································································ 1
3. 定義 ···················································································· 1
4. 試験装置 ················································································ 1
4.1 装置の構成 ············································································· 2
4.2 装置及び測定回路のチェック ····························································· 3
5. 試料 ···················································································· 3
5.1 試験片の大きさ ········································································· 3
5.2 試験片の埋込み,表面仕上げ及び洗浄 ····················································· 3
6. 試験溶液 ················································································ 3
7. 試験方法 ················································································ 3
7.1 試験条件 ··············································································· 3
7.2 試料の設置 ············································································· 4
7.3 異種金属間接触腐食試験 ································································· 4
8. 試験回数 ················································································ 4
9. 結果の表示 ·············································································· 4
解 説 ····················································································· 6
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日本工業規格 JIS
T 0305:2002
擬似体液中での
異種金属間接触腐食試験方法
Testing method for galvanic corrosion in pseudo physiological solution
1. 適用範囲 この規格は,体内環境を模擬した溶液(擬似体液)中での異種金属間の接触腐食(ガルバ
ニック腐食ともいう。)を電気化学的に評価する方法について規定する。ただし,この規格は,試験片レベ
ルでの材料選択において必要となる異種金属間の接触腐食試験方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS C 1002 電子測定器用語
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 0213 分析化学用語(電気化学部門)
JIS T 0302 金属系生体材料のアノード分極試験による耐食性の評価方法
JIS T 0304 金属系生体材料の溶出試験方法
JIS Z 8802 pH測定方法
ISO/DIS 10993-15 Biological evaluation of medical devices−Part 15:Identification and quantification of
degradation products from metals and alloys
ASTM G71-81 Standard guide for conducting and evaluating galvanic corrosion tests in electrolytes
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS C 1002,JIS K 0213及びJIS T 0302によるほか,次
による。
a) ガルバニック電流 異種金属の接触(ガルバニック)によって流れる電流。
b) 異種金属間接触(ガルバニック)腐食 異なる2種類の金属が直接接続され,両者間に電位差を伴う
ガルバニック電流が流れたときに生じる腐食。
c) 無抵抗電流計 内部抵抗をゼロとみなすことができる電流計。
d) エレクトロメータ 参照(照合)電極基準などに対する電位を計測する装置。
4. 試験装置
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4.1
装置の構成 試験装置は,無抵抗電流計,試験用セル,恒温槽及びシールドケースを組み合わせた
ものを基本とし,入力インピーダンスの高いエレクトロメータ(ISO/DIS 10993-15に準じ,1011 Ω以上)
及び制御装置を必要に応じて組み合わせて用いる。図1に異種金属間の接触腐食試験装置を一例として示
す。試験用セルは,図2に示した例によるか又はJIS T 0302に準じルギン管の位置を変える。
なお,試験装置のアース接地をとる必要がある。また,ルギン管には,銅製の網などを巻きアース接地
するとよい。
参考 エレクトロメータの入力バイアス電流は,数10 pA以下が望ましい。
図 1 異種金属間の接触腐食試験装置の一例
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図 2 試験用セルの一例
4.2
装置及び測定回路のチェック 同一の金属の組合せで試験と同じ溶液にセットし,閉回路状態で流
れる電流値を測定する。電流量が大きい場合には,接触電流がほとんど流れなくなるまで調整する。
5. 試料
5.1
試験片の大きさ 試験片の大きさによって,ガルバニック電流が変化するので,使用環境を考慮し
て最適な表面積(例えば,ASTM G71-81に準じ1 cm2以上)とする。測定電流値をそのまま電流密度とす
る場合には,試験片の表面積を1 cm2にするとよい。ただし,組み合わせる試料の試験片の表面積は,同
じ表面積を基本とするが,必要に応じて異なった表面積の試料を組み合わせてもよい。この場合,注目す
る試料の表面積を用いて,電流密度に換算する。
試験片の切断などの作製方法は,JIS T 0302による。
5.2
試験片の埋込み,表面仕上げ及び洗浄 試験片の埋込み,表面仕上げ及び洗浄方法は,JIS T 0302
による。
備考 表面改質処理した材料など,埋込み及び注水(流水)下で研磨ができない場合には,最適な方
法で行う。
6. 試験溶液 試験溶液は,使用環境を考慮し体内環境を模擬した溶液とする。体内を模擬した溶液の例
は,JIS T 0304又はJIS T 0302による。試験溶液の量は,試験片及びセルの大きさを考慮し,最適な量と
する。また,JIS Z 8802に準じ試験溶液のpHを測定する。
なお,細胞培養液など腐敗しやすい溶液を使用する場合には,必要に応じて防腐剤(0.3質量%アジ化ナ
トリウム又は抗生物質など)を添加する。
7. 試験方法
7.1
試験条件
4
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a) 試験溶液の温度は,37±1 ℃とする。
b) 静止した条件での測定を基本とする。必要に応じてバブリング,回転子などによって溶液をかくはん
(攪拌)してもよい。かくはんする場合の条件は,使用環境又は試験溶液を考慮して決めることとす
る。
備考 pH又は溶存酸素濃度を一定に保つため,かくはんしながら試験する場合には,発泡,雑菌の混
入及びルギン管先端での気泡の停滞並びに試験溶液の蒸発に注意する必要がある。
c) 試験溶液中の溶存酸素濃度は,使用環境を考慮して,大気飽和 (O2 : 6〜7 ppm),溶存酸素濃度を低く
した条件などから決めることとする。ただし,脱気しすぎると異種金属間接触腐食(ガルバニック腐
食)が生じない溶液では,必要以上に脱気しない。
d) 測定時間の間隔及び測定時間の長さは,試験片の大きさ,試験試料の組合せ,使用環境及びガルバニ
ック電流の変化を考慮して決める。
参考 測定時間の長さについては,ガルバニック電流値が,接触初期(数秒程度)の値の1/100以下
に減少するまで又はJIS T 0304に準じ,7日間を目安として測定する。
7.2
試料の設置
a) 超音波洗浄した試料を試験用セルにセットし,電気的な接続を行う。
b) 二つの試料間の距離は,1〜3 cm程度で可能な限り試料の測定面が互いに平行で向かい合うようにセ
ットし,試験中は試料間の距離が常に一定になるようにする。
c) ルギン管の先端と試料表面間の距離は,1〜2 mm程度とする。可能であれば,試験用セル,参照(照
合)電極をシールドケースなどに入れ電気的ノイズを除去するとよい。
7.3
異種金属間接触腐食試験
a) 試験に必要な溶存酸素濃度を得るため,バブリング,回転子などによって試験溶液をかくはん(例え
ば,20分間程度)する。この際には,溶存酸素濃度を測定することが望ましい。
b) 試料表面での安定性を考慮し試験溶液中に30分〜1時間程度開回路の状態で保持することを基本とす
る。ただし,保持中はかくはんしなかったのか,又は保持中も連続してかくはんしたのかを結果に付
記する。
c) 回路を閉回路状態にし,そのとき流れるガルバニック電流を計測する。可能であれば閉回路状態での
試料の自然浸せき電位[塩化カリウム・塩化銀・銀電極などの参照(照合)電極基準の電位]を測定
するとよい。
d) 実際に臨床的に使用されている材料(参照材料)と比較する場合には,それらの組合せで同様に試験
し比較する。
e) 試験後,試料面を観察し,試料と被覆材の間に明らかな異状が認められる場合には,試験結果から除
外する。
f)
可能であれば試験溶液中の金属濃度を測定し,ガルバニック腐食によって溶出した金属の量を比較す
るとよい。金属濃度の分析は,JIS K 0116,JIS K 0121及びJIS T 0304に準じる方法又は類似する方
法で行う。
7.4
試験条件が上記と異なる場合には,結果にその旨を付記する。
8. 試験回数 試験回数は,同一条件で3回以上とする。
9. 結果の表示 試験結果の表示は,次による。
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a) ガルバニック電流値を試料の表面積で除することによって,各測定時間におけるガルバニック電流密
度を表示する。自然浸せき電位を測定した場合には,接触させた状態での各測定時間における値を表
示する。
b) 必要に応じて,参照材料の組合せで試験した結果とガルバニック電流密度の大きさ,接触させた状態
での自然浸せき電位の値,ガルバニック電流が接触初期の1/100以下に減少するまでの時間などを比
較する。
c) さらに,異種金属間の接触腐食によって溶出した金属の溶出量を分析した場合には,JIS T 0304に準
じ,単位表面積当たりの金属の溶出量を算出し,異種金属を接触させないで同様に試験した場合の溶
出量又は臨床的に利用されている材料の組合せでの金属の溶出量と比較する。
d) 次の試験条件については,試験結果に付記する。
1) 試験試料の化学組成及び製造(鋳造,鍛造,熱処理及び加工)条件
2) 試験溶液の種類,化学組成,量及び防腐剤の添加の有無(防腐剤を使用した場合には,種類と添加
量),試験前及び試験後の溶液のpH
3) 試験片の形状,大きさ,表面積及び試験片の埋込みに使用した被覆材の種類並びに被覆方法
4) 表面仕上げ条件,洗浄条件,洗浄後及び試験を行うまでの時間
5) 試験条件(静止又はかくはんの条件),かくはんの条件である場合には,かくはん条件(かくはん方
法,バブリングの場合は,ガスの種類,純度及び流量,回転子の場合には,回転子の大きさ,形状,
回転数及びかくはん時間)
6) 試験溶液中の保持時間,保持期間中のかくはんの有無及び測定した場合には,試験開始前の溶存酸
素の濃度
7) 特記事項(試験後の試料表面の様子,測定した場合には,同じ材料の組合せで測定した試験結果,
かくはんによる蒸発量など)
8) 自然浸せき電位を測定した場合には,参照(照合)電極の種類
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日本工業標準調査会標準部会 医療用具技術専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
菊 地 眞
防衛医科大学校医用電子工学講座
(委員)
相 川 直 樹
慶應義塾大学医学部
青 山 理恵子
社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会
石 谷 薫
日本歯科器械工業協同組合
井 上 政 昭
日本医療機器関係団体協議会
大 村 昭 人
帝京大学医学部附属溝口病院
小 倉 英 夫
日本歯科大学新潟歯学部
片 倉 健 男
日本医療器材工業会
亀 水 忠 茂
日本歯科材料工業協同組合
添 田 直 人
財団法人医療機器センター
田 中 良 明
日本大学医学部
土 屋 利 江
国立医薬品食品衛生研究所
堤 定 美
京都大学再生医科学研究所
豊 島 聰
医薬品医療機器審査センター
西 田 輝 夫
山口大学医学部
根 本 幾
東京電機大学情報環境学部
萩 原 敏 彦
社団法人電子情報技術産業協会
平 野 昌 弘
社団法人日本ファインセラミックス協会
堀 江 孝 至
日本大学医学部
村 上 文 男
社団法人日本画像医療システム工業会