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日本工業規格

JIS

 S

2053

-1994

ステンレス鋼製まほうびん

Stainless steel vacuum bottles

1.

適用範囲  この規格は,主として飲用水の保温,保冷を目的として屋外に携帯するもので・内びんが

ステンレス鋼製で,かつ,内びんの内口径が内びんの胴内径より小さい,真空二重びんを用いた携帯用ま

ほうびん(以下,まほうびんという。

)について規定する。

備考  この規格の引用規格を,次に示す。

JIS G 3141

  冷間圧延鋼板及び鋼帯

JIS G 4305

  冷間圧延ステンレス鋼板及び鋼帯

JIS H 8617

  ニッケルめっき及びニッケル−クロムめっき

JIS K 6717

  メタクリル樹脂成形材料

JIS L 0803

  染色堅ろう度試験用添付白布

JIS L 0848

  汗に対する染色堅ろう度試験方法

JIS S 2029

  プラスチック製食器

JIS Z 1522

  セロハン粘着テープ

JIS Z 8401

  数値の丸め方

JIS Z 8703

  試験場所の標準状態

2.

用語の定義  この規格で用いる主な用語の定義は,次のとおりとする。

(1)

外装  本体及びコップを含む器具全体の外郭。ただし,外びんが外装を兼ねるものがある。

(2)

本体  びんが装置された部分。

(3)

びん  外びん及び内びんからなる真空二重びん。

(4)

内びん  ステンレス鋼製で,内容物に触れる部分。

(5)

中栓  びんの開口部を閉止する機能をもつ部分。

(6)

コップ  本体に附属して,まほうびんの内容物を入れる容器。

3.

主要部の名称  まほうびんの主要部の名称は,表 1,図 及び図 のとおりとする。


2

S 2053-1994

表 1  主要部の名称

番号

名称

コップ(外コップ)

コップ(内コップ)

中栓

中栓ゴム

口金(プラスチック製の場合がある。

口ゴム

びん

外びん(外装を兼ねる場合がある。

内びん

ハンドル(取っ手)

下げひも

つり手

締上げねじ

内びんの内口径

内びんの胴内径

図 1  まほうびん(例 1


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S 2053-1994

図 2  まほうびん(例 2

4.

性能

4.1

使用性能  まほうびんは,次の項目に適合しなければならない。

(1)

ねじ部のあるコップ及び中栓は,その機能が確実に保持され,かつ,作動が円滑であること。

(2)

注水時に,水が外装の内部に入ることなく,かつ,水切りが良好であること。

(3)

下げひものあるまほうびんは,下げひも及びその附属品は堅ろうで,使用中に容易に外れないこと。

4.2

品質性能  まほうびんは,8.によって試験したとき,表 に適合しなければならない。


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S 2053-1994

表 2  性能 

項目

性能

試験方法

容量(

1

)

表示容量に対して±5%であること。

8.3

保温効力(

2

)

表 に適合すること。

8.4

落下衝撃

8.5.1

耐衝撃性

振子衝撃

湯漏れ及びき裂,破損などの使用上有害な欠点がなく,保温効

力が

表 に適合すること。

8.5.2

中栓の取付けはめ合い  注水時に中栓が外れて落ちないこと。

8.6

中栓の臭気及び内容湯
の味

中栓に臭気がなく,かつ,内容湯に味がないこと。ただし,臭
気は,わずかに感知できるものは差し支えない。

8.7

印刷塗装の密着性

碁盤目が 90 個以上残留すること。

8.8

鉄鋼素地上のめっき

ニッケル−クロムめっきを施した場合,めっきは光沢が良好
で,はん点数は 5 点/cm

2

未満であること。

8.9

口ゴム及びその他のゴ
ム製品の耐熱水性(

3

)

粘りつき及び外観上の著しい変化がないこと。

8.10

ハンドル(取っ手)及
びつり手の取付け強度

異常がないこと。

8.11

下げひもの強度

異常がないこと。

8.12

袋及び下げひもの染色
堅ろう度

添付白布の汚染が 3 級以上であること。

8.13

湯漏れ

湯の漏れがないこと。

8.14

(

1

)

容量とは,内びんに中栓を施した場合の最大容量をいう。ただし,複数の内びんをもつもの

は,各々の内びんについて適用する。

(

2

)

複数の内びんをもつものの保温効力は,各々の内びんについて適用する。

(

3

)

口ゴム及びその他のゴム製品の耐熱水性は,内容物に触れる部分のゴム製品だけに適用す

る。 


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表 3  保温効力 

保温効力℃

びんの内口径

容量の区分 l

34mm

未満 34mm 以上

39mm

未満

39mm

以上

44mm

未満

44mm

以上

54mm

未満

54mm

以上

74mm

未満

74mm

以上

0.4

未満 40 以上 38 以上 36 以上 33 以上

0.4

以上  0.6 未満 42 以上 40 以上 38 以上 35 以上 32 以上

0.6

以上  0.9 未満 50 以上 48 以上 44 以上 41 以上 38 以上 34 以上

0.9

以上  1.2 未満 56 以上 53 以上 50 以上 47 以上 44 以上 40 以上

1.2

以上  1.5 未満 61 以上 58 以上 55 以上 52 以上 49 以上 45 以上

1.5

以上  1.8 未満 64 以上 61 以上 58 以上 55 以上 52 以上 48 以上

1.8

以上  2.5 未満 65 以上 63 以上 61 以上 58 以上 55 以上 51 以上

5.

構造  まほうびんの構造は,次の項目に適合しなければならない。

(1)

構造は,安全上欠点がないこと。

(2)

外装の形状は均整で,接合,組合せ,はめ合い状態が良好であること。

(3)

外装に使用するハンドル(取っ手)

,つり手,下げひも,びょうなどは堅ろうで,容易に外れないこと。

(4)

外装に耐食処理を必要とする材料を用いた場合は,表面に印刷塗装,めっきなどの耐食処理を施し,

また,鉄鋼素地のものは,内面(真空面を除く。

)にさび止めを施してあること。

(5)

作動部は,円滑であること。

(6)

びんは,正常に固定され,安定していること。

(7)

注水時に水が胴とびんの間に入らないこと。

(8)

底の取付けは,堅ろうであること。

また,製品のすわりは良好であること。

(9)

下げひもの付いたものは,

図 のようにひもの長さを測定したとき 40cm 以上で,かつ,長短を調節

できること。ただし,手下げ用のものは除く。


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S 2053-1994

図 3  下げひもの長さの測定方法

6.

外観  外観は,次の項目に適合しなければならない。

(1)

各部の仕上げは良好で,変形及びきずが目立たないこと。

(2)

外装金属の耐食処理は良好で,ばり,まくれ及びさびがないこと。

(3)

プラスチック部品の仕上げは良好で,き裂,かけ,ひび及び不足成形がないこと。

(4)

袋,装飾カバー,下げひも,その他本体と附属品とのはめ合い及び取付けが良好であること。

(5)

下げひもは,切れ,変色などの欠点がないこと。

(6)

中栓の開閉などの表示,文字及び装飾を目的とした部分は,見やすく,容易に消えないこと。

7.

材料  まほうびんに使用する材料は,次の項目に適合しなければならない。

なお,通常の使用状態において,食品に接する部分に用いる材料は,食品衛生法(昭和 22 年法律第 233

号)に基づく食品,添加物等の規格基準の規定に適合するものでなければならない。

(1)

外装  胴及び底に使用する材料並びにその厚さは,原則として表 による。ただし,これ以外の材料

を使用する場合は,

表 に規定する材料と同等以上の強さのあるものを使用しなければならない。

表 4  使用材料及びその厚さ

単位  mm

呼び厚さ

使用材料

1.2l

未満のもの

1.2l

以上のもの

JIS G 3141

に規定する鋼板又は鋼帯 0.25 以上 0.3 以上

JIS G 4305

に規定する鋼板又は鋼帯 0.25 以上 0.3 以上

JIS K 6717

に規定する材料を使用した成形品 0.5 以上 1.0 以上


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S 2053-1994

(2)

内びん  内びんに使用する材料は,JIS G 4305 に規定する SUS304 に適合するもの又はこれと同等以

上の品質をもつものとする。

(3)

中栓,口金及びコップ  これらに使用する材料は,次の項目に適合するもの又はこれらと同等以上の

品質をもつものとする。

(a)

プラスチック製のもの  JIS S 2029 に規定するもの。

(b)

ステンレス鋼製のもの  JIS G 4305 に規定するもの。

(4)

口ゴム及び中栓ゴム  これらに使用する材料は,耐熱水性をもつ合成ゴムとする。

8.

試験方法

8.1

試験の一般条件  試験の一般条件は,特に規定しない限り,JIS Z 8703 に規定する常温・常湿[温

度 20±15℃,相対湿度 (65±20) %]で行う。

8.2

数値の丸め方  試験結果は,規定の数値より 1 けた下の位まで求めて,JIS Z 8401 によって丸める。

8.3

容量  容量の試験は,まほうびんの内びんに水を満たして,中栓を施したときの製品の質量から,

水を入れないときの製品の質量を差し引いた値を容量換算(1g を 1ml とみなす。

)して,その製品の容量

を求め,表示された容量との差の百分率を求める。

8.4

保温効力  保温効力の試験は,次のとおり行う。

(1)

室温が 20±2℃で無風に近い状態の部屋に 2 時間以上開栓して放置したまほうびんの内びんに,中栓

を施したときの中栓の最下端部まで沸騰水を入れ,湯の温度が 95±1℃になったときに中栓をする。

ただし,複数の内びんをもつものは,一方の内びんには沸騰水を,他方の内びんには冷水 (4±1℃)  を

入れ,内容湯の温度が 95±1℃になったときに中栓をする。

(2)

通常使用される状態(

4

)

で 24 時間放置した後,内容湯の温度を測定する。

なお,複数の内びんをもつものは,各々の内びんについて行う。

(

4

)

通常使用される状態とは,中栓とコップを取り付けて鉛直に置いた状態をいい,ねじ締めによ

って固定される中栓をもつものは,中栓を100N・cm で締め付けるものとする。

なお,締め付ける器具は,当分の間,締め付ける力が従来単位によって表示されたものを使

用してもよい。この場合,締め付ける力は,10kgf・cm とする。

8.5

耐衝撃性

8.5.1

落下衝撃  落下衝撃の試験は,常温においてまほうびんに満水容量の水を入れ,通常使用される状

(

4

)

にして

図 4(1)のように,40cm の高さから垂直状態で,水平に固定した厚さ 3cm 以上の硬質の木板上

に落下させて水の漏れ及び外観上の変化を調べ,さらに,8.4 の試験を行う。ただし,横づり及び横置きで

きるものについては,別の試料を用いて

図 4(2)のように水平状態で同様の試験を行う。


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図 4  落下衝撃試験

8.5.2

振子衝撃  振子衝撃の試験は,常温においてまほうびんに満水容量の水を入れ,通常使用される状

(

4

)

から

図 のように,下げひもの長さを 40cm こして 45℃位置に持ち上げ,鉛直に固定した厚さ 3cm 以

上の硬質の木板に衝突させて水の漏れ及び外観上の変化を調べ,さらに,8.4 の試験を行う。

図 5  振子衝撃試験


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8.6

中栓の取付けはめ合い  中栓の取付けはめ合いの試験は,ねじ締めによって固定する中栓で,その

ねじを回すことによって取り外さずに内容物を注ぎ出すことができる中栓を使用するまほうびんについて,

容量の約 50%の水を入れ,中栓を閉めた状態から中栓のねじを 270°開いた状態にして,水を注ぎ出した

ときの中栓の外れの有無を調べる。

8.7

中栓の臭気及び内容湯の味  中栓の臭気及び内容湯の味の試験は,まほうびんに 95±1℃の熱湯を満

たし,十分に洗浄した中栓を施して約 30 分間放置した後,開栓して,中栓の臭気の程度及び内容湯の味の

有無を調べる。ただし,臭気は,わずかに感知できるものは“臭気がない”とする。

なお,判定は,5 名中 3 名以上が臭気及び味を感じないとき“中栓に臭気がなく,かつ,内容湯に味が

ない”とする。

8.8

印刷塗装の密着性  印刷塗装の密着性の試験は,試験片の印刷塗装面に,鋭利な刃物で角度約 30°

で素地に達する 1mm

2

の碁盤目 100 個 (10×10)  を作り,その上に JIS Z 1522 に規定するセロハン粘着テ

ープをはり付け,表面に直角に一気に引き離して,はく離しないで残留する碁盤目の個数を求める。ただ

し,文字及び装飾を目的とした部分は除く。

8.9

鉄鋼素地上のめっき  鉄鋼素地上のめっきの試験は,JIS H 8617 の 7.4(3)(フェロキシル試験)によ

って行う。

8.10

口ゴム及びその他のゴム製品の耐熱水性  口ゴム及びその他のゴム製品の耐熱水性の試験は,試料

図 に示すような,還流冷却器を取り付けた容器に入れ,4 時間煮沸した後取り出し,粘りつきの有無

を調べる。さらに,常温で 2 時間放置した後,外観上の変化を目視で調べる。

図 6  口ゴム及びその他のゴム製品の耐熱水性試験

8.11

ハンドル(取っ手)及びつり手の取付け強度  ハンドル(取っ手)及びつり手の取付け強度の試験

は,まほうびんに水を満たして中栓及びコップを取り付けたときの質量をはかり,おもりをかけるときは

その質量の約 6 倍のおもりを,引張試験機を用いるときはその質量の約 6 倍に相当する荷重を,本体に 5

分間,

図 のように静かにかけ,異常の有無を調べる。

備考  引張試験機は,当分の間,荷重が従来単位によって表示されたものを使用してもよい。


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図 7  ハンドル(取っ手)及びつり手の取付け強度試験 

8.12

下げひもの強度  下げひもの強度の試験は,まほうびんに水を満たして,中栓及び附属品を取り付

けたときの質量をはかり,おもりをかけるときはその質量の約 10 倍のおもりを,引張試験機を用いるとき

はその質量の約 10 倍に相当する荷重を,本体に 5 分間,

図 のように静かにかけ,異常の有無を調べる。

ただし,下げひもの長さを調節できるものは,その長さを最大にして試験するものとし,縦づり横づり兼

用のものは,別々の試料を用いて,

図 (1)及び(2)によって試験を行うものとする。

備考  引張試験機は,当分の間,荷重が従来単位によって表示されたものを使用してもよい。

図 8  下げひもの強度試験


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8.13

袋及び下げひもの染色堅ろう度  袋及び下げひもの染色堅ろう度の試験は,JIS L 0848 の A 法によ

って行う。ただし,この場合の試験は,JIS L 0803 に規定するナイロンを第 1 添付白布とし,綿を第 2 添

付白布として行うものとする。

8.14

湯漏れ  湯漏れの試験は,まほうびんに 90℃以上の湯を容量の約 50%入れ,通常使用される状態(

4

)

にし,口を上にして上下に大きく 10 回振った後,コップを取り去り,湯漏れの有無を調べる。

9.

検査方法

9.1

形式検査  まほうびんは,新しく設計,改造又は生産技術条件が変更されたときに,次の検査を行

わなければならない。

(1)

試料のとり方及び大きさは,最初の製造ロットからランダムに 2 個以上の試料をとる。

(2)

検査項目は,4.及び 5.とする。

(3)

試験方法は,8.による。

(4)

合否の判定基準は,試料のすべてが 4.及び 5.に適合したとき合格とする。

9.2

製品検査  まほうびんは,次の項目について検査を行う。この場合,検査は,全数検査又は合理的

な抜取検査方式によって行う。

(1)

外観

(2)

保温効力

(3)

使用性能

9.3

記録  検査を行ったときには,次の記録を保管しなければならない。

(1)

形式検査の場合

(a)

検査機関名

(b)

検査担当者名

(c)

検査年月日

(d)

検査条件

(e)

検査結果

(f)

表示事項及び取扱説明書の確認結果

(2)

製品検査の場合

(a)

検査年月日

(b)

検査担当者名

(c)

検査方式(ロットの大きさ,試料の大きさ,合否の判定基準)

(d)

検査条件

(e)

検査結果

10.

表示  まほうびんには,次の事項を表示しなければならない。

なお,(1)は,(3)によって表示される場合に限り省略してもよい。

(1)

製造業者名又はその略号

(2)

製造年月又はその略号

(3)

家庭用品品質表示法に基づく表示

参考  家庭用品品質表示法による表示項目は,次のとおりである。

(1)

品名


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S 2053-1994

(2)

容量

(3)

保温効力

(4)

材料の種類

(5)

使用上の注意

(6)

表示した者の氏名又は名称

11.

取扱い上の注意事項  まほうびんには,取扱説明書などに次の事項を記載しなければならない。ただ

し,該当しない事項は,これを省略してもよい。

なお,記載事項の主旨を変えない範囲であれば,その表現は自由とする。

(1)

中の内容物が流れ出ないように,中栓を確実に締めること。

(2)

火のそばに置くと軟化し又は変化することがあること。

(3)

ドライアイスや炭酸飲料を入れないこと。

(4)

使用後は丸洗いをしないで,内びんをよく洗うこと。

(5)

内容物を中栓の下端以下に入れること。

(6)

中栓の取替えについての注意事項。

(7)

強い衝撃を与えると性能が劣化することがある旨の注意事項。

(8)

製造業者名及び所在地又は連絡先

(9)

その他,必要とする事項

原案作成委員会  構成表

氏名

所属

(委員長)

山  下  博  志

工業技術院大阪工業技術試験所

(委員)

高  松      明

通商産業省生活産業局

地  崎      修

工業技術院標準部

村  上  義  則

通商産業省通商産業検査所大阪支所

四  方  光  市

財団法人日本文化用品安全試験所大阪事業所

市  川  博  邦

ステンレス製まほうびん協議会

伊  藤  精  一

日本酸素株式会社

曽  谷  明  和

象印マホービン株式会社

松  下  義  平

タイガー魔法瓶株式会社

高  木  二  弘

ピーコック魔法瓶工業株式会社

桜  井  啓  吉

兵庫県立生活科学研究所

八  木  繁  子

吉  村  幸  子

大阪府地域婦人団体協議会

松  本  房  子

大阪市地域婦人団体協議会

荻  野  正  一

財団法人関西消費者協会

西  野  正  美

近畿百貨店協会

遠  藤  英  機

日本チェーンストア協会関西支部

(事務局)

中  上  照  明

ステンレス製まほうびん協議会