S 0052:2011
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 触知図形の設計方法 ·········································································································· 2
4.1 触知記号の種類及び要件 ································································································· 2
4.2 触知文字の種類及び要件 ································································································· 3
4.3 触知図形の大きさ ·········································································································· 3
4.4 触知図形の線幅 ············································································································· 4
4.5 触知図形の高さ ············································································································· 4
4.6 触知図形の線の断面形状及び面の立ち上がり角度 ································································· 4
4.7 その他の事項 ················································································································ 4
5 触覚の加齢変化及び触知経験の影響に対する配慮事項 ····························································· 4
6 その他の配慮事項 ············································································································· 5
附属書A(参考)点及び線による触知図形テクスチュアの設計方法················································ 6
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,独立行政法人産業技術総合研究所(AIST)
から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経
て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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日本工業規格 JIS
S 0052:2011
高齢者・障害者配慮設計指針−
触覚情報−触知図形の基本設計方法
Guidelines for all people including elderly and people with disabilities-
Tactile information-Basic design methods for tactile patterns
序文
高齢者及び障害者に対する社会的配慮が進む中で,視覚障害者を含むより多くの人々が使いやすい製品
及び環境の設計が進められている。とりわけ,浮き上がり文字,点字などの触覚を介した情報は視覚障害
者にとって重要な情報伝達手段であり,その必要性及び活用はますます増加している。しかしながら,触
覚情報の利用においては,必ずしも人間の触覚特性を踏まえた人間工学的知見に基づいて適切に設計され
ているわけではない。
この規格は,視覚障害者を含むより多くの人々に触覚を用いて情報を表示及び伝達する際に用いられる
触知記号及び触知文字について,人間の触知能力に関する基本特性及びその加齢変化,更には,触知経験
の影響を考慮して,適切に設計するための指針として作成したものである。
1
適用範囲
この規格は,交通機関・移動用機器(電車,エレベータなど),公共サービス機器(ATM,自動販売機
など),住宅設備(ドア,手すりなど),包装・容器及び消費生活製品(家電製品など)において,視覚障
害者を含むより多くの人々のために,情報伝達手段として用いられる触知図形の種類,サイズ,線幅,高
さ,断面形状などを人間の触覚の基本特性,加齢変化及び触知経験の影響を考慮して,適切に設計するた
めの基本的方法について規定する。
対象とする触知図形は凸形の図形で,指先の触覚を利用して認識するものであり,腕,足裏などの指以
外の触覚を利用するものには適用しない。図形の形状は,単純記号及び単純な構成による文字を対象とす
る。画数の多い漢字などの複雑な文字による触知文字及び点字などのコード化された触知記号,更に振動
並びに時間的変化を伴う触知記号又は触知文字には適用しない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS S 0011 高齢者・障害者配慮設計指針−消費生活製品の凸記号表示
JIS T 0922 高齢者・障害者配慮設計指針−触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法
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用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
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3.1
触知図形
凹凸のある点,線及び面で構成され,触覚を通して知覚する図形(JIS T 0922参照)。
3.2
触知記号
触知図形のうち記号を表すもの。
3.3
触知文字
触知図形のうち文字を表すもの。
3.4
触知図形の大きさ
触知図形の2次元の広がり。
3.5
触知図形の線幅
触知図形を構成する線の底面の幅。
3.6
触知図形の高さ
触知図形を構成する点,線及び面の底面からの高さ。
3.7
触知図形の断面
触知図形を構成する点,線及び面の断面形状。
3.8
触知図形のテクスチュア
複数の凹凸のある点,線及び単純な図形で埋められた触知図形の面の模様。
4
触知図形の設計方法
4.1
触知記号の種類及び要件
触知記号の種類及び要件は,次による。
a) 触知記号として,図形要素(点,線など)の少ない単純な幾何学的図形で,形状が正しく認識できる
ものを用いる(図1参照)。
例 点,直線,矢印,丸,三角,四角,ひし形など
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左:輪郭図形,右:塗りつぶし記号
図1−触知記号の例
b) 触知記号は,輪郭による触知図形(輪郭図形)及び輪郭内の領域を輪郭と同じ高さで一様に埋めた塗
りつぶした触知図形(塗りつぶし記号)を用いる(図1参照)。
c) 輪郭線は,実線のほか,点線,破線などを用いることができる。
d) 輪郭内部及び塗りつぶし図形の面には,識別のため触知図形のテクスチュアを用いることができる。
注記 識別しやすい点テクスチュア及び線テクスチュアの設計例を,附属書Aに示す。
e) 複数の記号を並べて用いる場合は,その間隔は隣接する記号及び文字の触知を妨げないよう十分な間
隔をとる。
f)
触知記号は,共通な意味をもたせて用いることが望ましい。
例 危険物の三角記号(JIS S 0025を参照)など
4.2
触知文字の種類及び要件
触知文字の種類及び要件は,次による。
a) 触知文字として,アラビア数字,片仮名,平仮名,ラテン文字(a b…z)など,構成の単純なもので,
文字として正しく認識できるもの(図2参照)。
図2−触知文字の例
b) 文字の形は飾りがなく,誤読のおそれが少なく,かつ,分かりやすいものとする。
例 ゴシック体など
c) 漢字は用いないことが望ましい。やむを得ず用いる場合には,画数の少ないものを用いる。
例 上,下,山など
d) 複数の記号及び文字を並べて用いる場合は,その間隔は隣接する記号及び文字の触知を妨げないよう
な間隔とする。
例 ANSI A117.1:2003では,角形断面形状の線の場合は,最小3.2 mm又はその他の断面形状の線
の場合は,1.6 mm。最大は線幅の4倍までと規定している。
4.3
触知図形の大きさ
触知図形の大きさは,次による。
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a) 触知図形の大きさは,線幅,高さなどを考慮して,触知しやすい適切な大きさとする。
b) 触知記号の大きさは,特に指定しない限り,10 mm以上30 mm以下の範囲で設計することが望ましい。
ただし,点及び線はこの限りではない。
c) 触知文字の大きさは,特に指定しない限り,15 mm以上45 mm以下の範囲で設計することが望ましい。
d) 触知記号及び触知文字を組み合わせて用いる場合の大きさは,触知文字の大きさに統一する。
e) 点の大きさ及び線の長さは,相互の混同を避けるため,JIS S 0011の規定によって,高さ及び線幅を
考慮して適切に定める。
f)
特に指定しない限り,点の大きさは1.5 mm以下,線の長さは5 mm以上が望ましい。
注記 触知図形の大きさは,外接する正方形の一辺又は外接する長方形の長辺の長さで表す。点の
場合は直径,線の場合は長さで表す。
4.4
触知図形の線幅
触知図形の線幅は,次による。
a) 触知図形の線幅は,図形の大きさ及び線の高さを考慮して,触知しやすい適切な線幅とする。
b) 触知図形の線幅は,特に指定しない限り,おおむね触知図形の大きさの1/10を目安とし,更に0.5 mm
〜3.0 mmの範囲で設計することが望ましい。
c) 同形の輪郭図形と塗りつぶし記号とを同時に用いる場合は,輪郭図形の線幅は塗りつぶし記号と混同
しない線幅に設定する。
4.5
触知図形の高さ
触知図形の高さは,次による。
a) 触知図形の高さは,図形の大きさ及び線幅を考慮して,触知しやすい適切な高さとする。
b) 触知図形の高さは,特に指定しない限り,0.3 mm〜1.5 mmの範囲とすることが望ましい。
c) 材質によって高くすることができない場合又は指先を傷つける危険性がある場合は,b) で指定する高
さより低く設定することができる。
例 危険物を知らせる三角形(JIS S 0025参照)。
d) 触知図形に触れる場合に,指先が底面に触れることができるように高さを設定することが望ましい。
4.6
触知図形の線の断面形状及び面の立ち上がり角度
触知図形の線の断面形状及び面の立ち上がり角度は,次による。
a) 触知図形の輪郭を構成する線の断面形状は,半円形又は台形が望ましい。
b) 触知図形の線幅の太い場合は,長方形の断面形状は避ける。
c) 指を傷つけるような鋭敏な角をもつ断面は避ける。
d) 輪郭図形の線及び塗りつぶし面の立ち上がりの角度は,触読しやすい角度とする。
4.7
その他の事項
触知図形を設計する際の底面に対する傾きは,触知図形が正しく認識できる傾きとする。
例 四角か,又はひし形かを容易に区別できる傾き
5
触覚の加齢変化及び触知経験の影響に対する配慮事項
触覚の加齢変化及び触知経験の影響に対する配慮事項は,次による。
a) 高齢者に対する触知図形の設計においては,触覚の加齢による触知能力の変化を考慮して適切に設計
する。
b) 触知経験の多い視覚障害者に対する触知図形の設計においては,学習及び経験による触知能力の向上
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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を考慮して適切に設計する。
c) 触知経験の少ない高齢者に対しては,特に指定しない限り,触知図形の大きさは4.3で規定する大き
さの1.5〜2.0倍にすることが望ましい。
6
その他の配慮事項
その他の配慮事項は,次による。
a) 触知図形を表示する材料の表面形状及び劣化性については,JIS T 0922に規定する箇条8(触知案内
図に用いる材料)のa) 及びb) とする。
b) 触知図形を表示する材料の温度は,触れられる適切な温度範囲に設定する。
c) 触知図形を表示する材料は,汚れなどによる目詰まりを防止し,かつ,汚れの拭き取りなどが容易に
できるものとする。
d) 特別な目的で用いる触知記号は,この規格にかかわらず,独自に定めることができる。
例 触知案内図の現在地
e) 触知図形は,同じ図形を意味する視覚情報,点字情報など,他の情報と併用することが望ましい。
f)
ロービジョン者を配慮して,コントラスト又は文字サイズを適切に配慮し,見やすいものとする。
g) 触知図形を設置する場所,高さ,面の立ち上がり角度などは,触読しやすいように適切に定める。
h) 触覚に障害のある人に対しては,主として箇条4に示す設計方法に関して,特別に配慮することが望
ましい。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
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附属書A
(参考)
点及び線による触知図形テクスチュアの設計方法
A.1 適用範囲
この附属書は,触知図形の輪郭内部及び塗りつぶし部分に用いられる触知図形テクスチュアのうち,点
及び線によるテクスチュアの設計方法について記載する。
A.2 用語及び定義
この附属書で用いる用語及び定義は,次による。
a) 点テクスチュア 凸形の点を上下左右に繰り返し配置したもの。特に断らない限り一定の点間隔で配
置したものを意味する。
b) 線テクスチュア 凸形の線を繰り返し配置したもの。特に断らない限り一定の線間隔で配置したもの
(平行線)を意味する。構成する線の太さ及び高さは,指先で触知したとき指先が底面に触れるよう
に作成することが望ましい。
A.3 点テクスチュアの設計方法
触知図形に用いる点テクスチュアの設計方法は,次による。
a) 構成する点の大きさ及び高さは,指先で触知したとき指先が底面に触れるように作成することが望ま
しい。
b) 特に指定しない限り,点の大きさは,1.5 mm以下。高さは,0.3 mm 以上1.5 mm 以下が望ましい。
c) 点テクスチュアだけを使用して触知図形を識別させたい場合は,点密度を変えて設計することができ
る。異なる点密度のテクスチュアの選択及びその識別度については,図A.1によって決定する。
A.4 線テクスチュアの設計方法
触知図形に用いる線テクスチュアの設計方法は,次による。
a) 構成する線幅,高さ及び間隔は,指先で触知したとき指先が底面に触れるように作成することが望ま
しい。
b) 特に指定しない限り,線幅は,0.5 mm以上3.0 mm以下。高さは,0.3 mm以上1.5 mm以下が望まし
い。
c) 線テクスチュアだけを使用して触知図形を識別させたい場合は,線密度を変えて設計することができ
る。異なる線密度のテクスチュアの選択及びその識別度については,図A.2によって決定する。
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図A.1−二つの点密度の異なる点テクスチュア(テクスチュア1及びテクスチュア2)の識別範囲
図A.2−二つの線密度の異なる線テクスチュア(テクスチュア1及びテクスチュア2)の識別範囲
参考文献 JIS S 0025 高齢者・障害者配慮設計指針−包装・容器−危険の凸警告表示−要求事項
ANSI A117.1:2003,Accessible and useable buildings and facilities
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67 8 9 10
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識別しやすい範囲
やや識別しやすい範囲
識別しにくい範囲
若年者又は触知経験の多い人
触知経験の少ない高齢者
テ
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の
線
間
隔(
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テクスチュア1の線間隔(mm)
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識別しやすい範囲
やや識別しやすい範囲
識別しにくい範囲
若年者又は触知経験の多い人
触知経験の少ない高齢者
テ
ク
ス
チュ
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点
間
隔(
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)
テクスチュア1の点間隔(mm)