S 0043:2018
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 取扱説明書の記述形態 ······································································································· 2
5 取扱説明書の提供方法 ······································································································· 2
6 取扱説明書の配慮事項 ······································································································· 2
6.1 一般的配慮事項 ············································································································· 2
6.2 点字版作成のための配慮事項 ··························································································· 3
6.3 墨字版作成のための配慮事項 ··························································································· 3
6.4 電子データ版作成のための配慮事項··················································································· 3
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まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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アクセシブルデザイン−視覚に障害のある人々が
利用する取扱説明書の作成における配慮事項
Accessible design-Considerations for preparation of instructions for
use of consumer products used by persons with visual impairment
序文
身の回りの製品を使用するためには,取扱説明書は不可欠なものである。消費生活用製品は機能が高度
化しており,操作方法は複雑になっているが,その製品の使用方法の説明は,簡潔で分かりやすいものが
求められている。特に,視覚に障害のある人々は,墨字で書かれた取扱説明書を利用することが困難なた
め,製品を適切に使用することができない場合があることに加え,使用上,安全性を確保することができ
ない場合がある。
様々な人が利用しやすい取扱説明書の作成は,企業にとって重要な課題であるが,視覚に障害のある人々
に対する配慮については標準化されていない。そこで,視覚に障害のある人々が製品を安全かつ適切に使
用できるようにするために,取扱説明書に対する配慮事項を定める必要がある。
この規格は,製品の製造業者などが取扱説明書を作成する際に必要な配慮事項を示すことによって,視
覚に障害のある人々にとっての取扱説明書及び製品のアクセシビリティを向上させることを目的として制
定されたものである。
1
適用範囲
この規格は,消費生活用製品(以下,製品という。)の取扱説明書(点字版,墨字版及び電子データ版)
作成に関する視覚に障害のある人々(加齢によって視力が低下した人を含む。)に対する配慮事項について
規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS T 0921 アクセシブルデザイン−標識,設備及び機器への点字の適用方法
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS T 0921によるほか,次による。
3.1
スクリーンリーダー
全盲の人が,テキスト情報を合成音声又は点字で読み取るために使用しているソフトウェア[JIS X
8341-3のA.6(支援技術)の例参照]。
2
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3.2
点字版
文字に代わり,視覚に障害のある人々が読む符号を用いて作成したもの。
3.3
墨字版
点字版に対して,文字を印刷したもの。
3.4
電子データ版
音声データ,文字データ(点字データを含む。)又は画像データで作成したもの。
3.5
触知図形,触図
凹凸のある点,線及び面で構成され,触覚を通して知覚する図形(JIS S 0052及びJIS T 0922参照)。
3.6
拡大文字
文字が見えにくい人のために見やすいように拡大した文字(JIS S 0042の3.6参照)。
3.7
代替テキスト
画像などの非テキストコンテンツと同等の情報を提供するテキスト。スクリーンリーダーが,その文字
列を合成音声で読み上げる(JIS X 8341-3参照)。
4
取扱説明書の記述形態
取扱説明書は,点字版(触知図形を含む。),墨字版(図,拡大文字を含む。),及び電子データ版による
記述形態がある。
5
取扱説明書の提供方法
取扱説明書の提供方法は,製品への添付による提供,ウェブサイトからの提供,及び使用者からのリク
エストによる個別提供とする。
6
取扱説明書の配慮事項
6.1
一般的配慮事項
一般的配慮事項は,次による。
a) 取扱説明書の構成を分かりやすくするために,見出しには,固有の番号又は記号を付加しなければな
らない。
b) 目的の箇所を探しやすくするために,目次を付けなければならない。
c) 製品の各部分の説明をする場合,まず基準になる置き方を設定し,製品の正面,裏面,右側面など,
それぞれの面ごとに説明することが望ましい。
注記 説明されている箇所が実際の製品のどの部分に当たるのか,図を用いずに言葉だけで誤りな
く伝えるには,製品の向きと置き方を定めた上で説明を行うことが有用である。
d) 視野に障害のある人を考慮し,表は単純な構造とし,適切な大きさに整えなければならない。
e) 索引を付けることが望ましい。
3
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f)
取扱説明書の内容が長く複雑な場合には,要約版も準備することが望ましい。
6.2
点字版作成のための配慮事項
点字版作成のための配慮事項は,次による。
a) 点字の表記は,明確で正確に行う。
注記 点字の表記には,日本点字委員会が発行する“日本点字表記法”がある。
b) 触知図形を用いる場合は,単純化することが望ましい。
6.3
墨字版作成のための配慮事項
墨字版作成のための配慮事項は,次による。
a) 文字(手書きを含む。)は,読みやすい大きさ,書体,文字間隔,行間隔及び線の太さに配慮しなけれ
ばならない(JIS S 0032参照)。
注記 弱視者の中には,拡大文字の取扱説明書を必要とする人がいる。
b) 文字,図記号・絵記号及び絵文字は,背景との識別が明瞭になるよう,見やすい配色・コントラスト
に配慮しなければならない(JIS S 0032及びJIS S 0033参照)。
c) 図形を用いる場合は,単純化することが望ましい。
d) 紙面は単純なレイアウトとし,操作の順番,内容を把握しやすくすることが望ましい。
e) 説明に用いられる図,イラストなどの内容が,画像を見ることのできない人にも伝わるように,画像
に説明文を付加することが望ましい。
6.4
電子データ版作成のための配慮事項
6.4.1
構成及び検索性
構成及び検索性は,次による。
a) 電子データ版の名称は,取扱説明書であることが分かる名前にしなければならない。
b) 電子データ版を初期状態で開いたとき(続きを読む以外),最初に商品名,製造業者名及び型番を記載
し,そのファイルが取扱説明書であることが分かるようにしなければならない。
c) 目次は,構造化し,階層付けを明確にしなければならない。見出しの項目番号は“章”,“節”などの
見出しの段階を付加する。
注記 大見出しに“##”,小見出しに“$$”などを付けて,検索しやすくする場合もある。
d) 目次から各コンテンツに飛べるようにし,各コンテンツの区切りには,目次へ戻ることのできるリン
クを付けることが望ましい。
e) 必要な箇所を参照できるように,リンク・検索機能を活用できることが望ましい。
f)
目次,見出しタイトルなど,項目ごとに移動ができるように,階層構造にすることが望ましい。
g) ヘッダー,フッターを各ページに使用する場合は,スクリーンリーダーで読み飛ばせるようにする。
h) PDF形式で提供する場合は,スクリーンリーダーで読み上げることができる形式とする。
6.4.2
文字
文字は,次による。
a) 不適切な文字を使用してはならない。
例1 文字間隔を調節するために語の途中に空白文字を挿入しない。
例2 音引き“ー”のためにハイフン“−”を使用しない。
例3 “○(丸印)”として“0(アラビア数字のゼロ)”を使用しない。
例4 小数点として“.”の代わりに“・(中点)”を使用しない。
b) 機種依存文字は,使用してはならない。
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6.4.3
画像
画像には,文章中に単語又は記号の代わりに画像を入れる場合を含めて,代替テキストを付与しなけれ
ばならない(JIS X 8341-3参照)。
6.4.4
その他
その他の事項は,次による。
a) 電子データ版を作成するときは,ページのレイアウトにかかわりなく正しい順序で通読できるように
するのが望ましい。
b) ウェブサイト上では,ズーム機能を付け,画面上で画面全体が拡大・縮小できるようにすることが望
ましい。
c) 文字の色及び背景色を変えられることが望ましい。
参考文献
JIS S 0012 アクセシブルデザイン−消費生活用製品のアクセシビリティ一般要求事項
JIS S 0032 高齢者・障害者配慮設計指針−視覚表示物−日本語文字の最小可読文字サイズ推定方法
JIS S 0033 高齢者・障害者配慮設計指針−視覚表示物−年齢を考慮した基本色領域に基づく色の組合
せ方法
JIS S 0042 高齢者・障害者配慮設計指針−アクセシブルミーティング
JIS S 0052 高齢者・障害者配慮設計指針−触覚情報−触知図形の基本設計方法
JIS S 0137 消費生活用製品の取扱説明書に関する指針
JIS T 0922 高齢者・障害者配慮設計指針−触知案内図の情報内容及び形状並びにその表示方法
JIS X 8341-3 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−
第3部:ウェブコンテンツ
JIS X 8341-7 高齢者・障害者等配慮設計指針−情報通信における機器,ソフトウェア及びサービス−
第7部:アクセシビリティ設定