S 0021 : 2000
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
日本工業規格
JIS
S
0021
: 2000
高齢者・障害者配慮設計指針
−包装・容器
Guidelines for all people including elderly and people with disabilities
−Packaging and receptacles
序文 身体機能が低下した高齢者,障害者を含むすべての人が用いる包装・容器に関し,識別性,使用性
の向上のため望ましい配慮事項について規定している。
1.
適用範囲 この規格は,消費生活製品の包装・容器(袋を含む。)について握力の低下又は視力の衰え
が見られる高齢者,視覚障害者を含むすべての人に対し,使用における識別性,使用性の向上を目的とし
て配慮する設計指針について規定する。
2.
定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
a)
触覚記号 手の指が物に触ったときに起こる感覚を利用した,文字,図形,テクスチュアによる記号
b)
切欠き 外周の一部を切り欠いた表示
c)
点字表示 目の不自由な人が読む,文字に代わる符号による表示
d)
凸記号 凸状の丸い点又は凸状の横バーなど凸状の記号
e)
ぎざぎざ 連続して並んだ凸記号
f)
絵文字 絵のような形で表した記号
g)
テクスチュア 素材表面の触感
h)
エンボス 浮き彫りによる表示
3.
包装・容器の表示などに対する配慮事項
3.1
開け口,開封部の場所を識別しやすくするための配慮事項 開け口,開封部の場所を識別しやすく
するための配慮事項は,次による。
a)
開け口,開封部の場所が視覚的に分かりやすいように,周囲と色彩,コントラストを変えて目立つよ
うにすること。
b)
開け口,開封部又はその近くに記号,絵文字又は文字による表示を見やすい適切な書体,サイズ,色
彩,コントラストで明示して分かりやすくする。
c)
開け口,開封部の場所が触覚で認識できるように,形状又はテクスチュアなどで周囲との明らかな差
異を付けること。
3.2
内容物の識別をするための配慮事項
a)
内容物の識別が視覚的に分かりやすいようにグラフィックデザインに配慮するとともに,文字による
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表示は見やすい適切な書体,サイズ,色彩,コントラストで明示する。
b)
内容物の識別が触覚的に分かりやすいように,触覚記号,切欠き,点字表示,凸記号など併せて明示
する。
3.3
同一又は類似形状の包装・容器の内容物識別のための配慮事項 同一又は類似形状の包装・容器の
内容物識別のための配慮事項は,次による。
a)
飲料用紙パック容器の場合は,開け口と反対側上部の一部を切り欠くなどで,同一形状の内容物の識
別を容易にする。
例 牛乳パック:扇状切欠き 1 個,ジュースパック:扇状切欠き 2 個(図 1 参照)
備考 切欠きの半径 R は,2.5mm 又は 6.5mm とする。
図 1 切欠き例
参考 切欠きは利用者からの強い要望によって牛乳及びジュースだけ切欠きを付けることとした。切
欠き表示の妥当性及び位置,寸法については調査中であり,図に示したものは検討案の一例で
ある。
b)
小さな凸,点字又はエンボス加工を入れる。
例 缶ビール,缶酒などの缶入り酒類(図 2 参照)
缶ビール,缶酒などの缶入り酒類
図 2 点字表示の例
c)
容器のふたのデザインを内容物の種類によって変化をもたせる。
例 調味料入れ(図 3 参照)
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図 3 容器ふたのデザインの例
d)
容器の側面にぎざぎざ状の触覚記号を施す。
例 シャンプーとリンスの識別には先に使用するシャンプーの容器にだけぎざぎざ状の触覚記号を付
ける(
図 4 参照)。
図 4 シャンプー表示の例
4.
開けやすくするための配慮事項 開けやすくするための配慮事項は,次による。
a)
フィルム容器の場合で,コーナーを切って内容物を出す方式のものは,手で簡単に切れるように,切
り口にはくさび形などの切り込みを入れる。
例 手で開けられるフィルム容器(図 5 参照)
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図 5 手で開けられるフィルム容器の例
b)
紙箱には,連続切込み部,短冊部を引くことによって容易に開けられること。
c)
軟包装材でシールされた容器は,十分な大きさの引きはがし用舌部を引っ張ることによって容易に開
けられること。
例 ゼリー,プリン容器(図 6 参照)
図 6 ゼリー,プリン容器の例
d)
缶のふたは,プルタブ(フルオープンともいう。
)構造とする。
例 プルタブ構造の容器(図 7 参照)
図 7 プルタブ構造の容器の例
e)
ねじ式容器の場合には,ふたの縦に大きな溝などを設け,手がぬれているときでも,滑ることがなく
容易に開封できること。
f)
ラッピングフィルム,
熱収縮フィルムは,
開封用短冊などを引くことによって容易に開けられること。
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5.
握力が低下した使用者においても使いやすい容器の形状 握力が低下した使用者においても使いや
すい容器の形状は,次による。
a)
容器を持ったときの滑り防止のために,全体の重さ・大きさに合った形状とする。
b)
容器の表面に手指が掛かりやすいよう凹凸のリブ,ら旋状のリブなどを設けること。
例 滑りにくくした容器(図 8 参照)
図 8 滑りにくくした容器の例
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高齢者・障害者配慮生活用品標準化委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
西 原 主 計
神奈川工科大学システムデザイン工学科
(委員)
高 橋 秀 郎
シャープ株式会社商品信頼性本部
佐々木 春 夫
社団法人日本包装技術協会
加 藤 久 明
日本デザイン学会
小 宮 敏 夫
株式会社レナウンアパレル科学研究所
大 澤 宏
株式会社リーガルコーポレーション(株式会社日本靴科学研究所)
中 田 誠
社団法人日本玩具協会
塩 崎 透
日本電気株式会社第一 C&C システム事業本部市場開発部
星 川 安 之
財団法人共用品推進機構
伊 藤 文 一
財団法人日本消費者協会
篠 崎 薫
社団法人日本社会福祉士会
江 木 和 子
消費者団体新宿区消団連アクティー
万 代 善 久
株式会社日本能率協会総合研究所
丹 敬 二
日本生活協同組合連合会
伊 東 依久子
消費科学連合会
星 珠 枝
社団法人日本消費生活アドバイザーコンサルタント協会
井 尻 時 雄
社団法人日本衛生材料工業連合会
馬 場 諭
家庭用ラップ技術連絡会
堀 木 敏 光
財団法人家電製品協会消費者部
中 野 義 彦
沖電気工業株式会社(日本人間工学会)
(関係者)
小 林 清 美
通商産業省機械情報産業局
安 西 久 子
通商産業省機械情報産業局
千 野 雅 人
通商産業省生活産業局
西 川 泰 蔵
工業技術院標準部
渡 邊 武 夫
工業技術院標準部
(事務局)
橋 本 進
財団法人日本規格協会技術部
石 垣 正 夫
財団法人日本規格協会技術部
パッケージ JIS 原案作成ワーキンググループ 構成表
氏名
所属
(主査)
丹 敬 二
日本生活協同組合連合会
(ワーキング委員)
星 川 安 之
財団法人共用品推進機構
酒 井 光 彦
社団法人日本包装技術協会
金 子 将 一
農林水産省食品流通局
菊 田 敬
印刷工業会
福 田
社団法人日本乳業協会
有 本 亨
日本化粧品工業連合会
三 島 進
社団法人日本缶詰協会
小 川 晋 栄
社団法人日本硝子製品工業会
永 井 愛 子
東京都老人クラブ連合会
西 山 篤
ビール酒造組合
馬 場 諭
家庭用ラップ技術連絡会
樋 浦 道 夫
財団法人視覚障害者食生活改善協会
河 辺 豊 子
社会福祉法人日本盲人会連合
(関係者)
渡 邊 武 夫
工業技術院標準部
安 西 久 子
通商産業省機械情報産業局
(事務局)
橋 本 進
財団法人日本規格協会技術部
石 垣 正 夫
財団法人日本規格協会技術部
(文責 丹 敬二)