S 0015:2018
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目 次
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序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 一般要求事項 ··················································································································· 2
5 音声案内の仕様に関する留意事項 ························································································ 3
5.1 聞き取りやすさに関する留意事項······················································································ 3
5.2 分かりやすさに関する留意事項 ························································································ 3
5.3 操作性に関する留意事項 ································································································· 3
6 音声案内を設定する事項 ···································································································· 4
7 音声案内機能の評価 ·········································································································· 4
附属書A(規定)音声案内の音量設定方法 ················································································ 5
附属書B(規定)音声案内の評価方法······················································································· 6
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まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本
工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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アクセシブルデザイン−
消費生活用製品の音声案内
Accessible design-Spoken instructions for consumer products
序文
近年,家庭電化製品,情報通信機器,ガス燃焼機器,玩具,衛生設備機器,健康器具,写真機などの消
費生活用製品には,音声案内機能を備えたものが多く見られるようになってきた。音声案内は,加齢性難
聴のある高齢者を始め,できるだけ多くの使用者にとって容易に聞き取れ,案内の内容を適切に理解でき
るように設計しなければならない。特に,視覚的情報を利用することが困難な使用者にとって,音声案内
は消費生活用製品の操作に不可欠なものである。
この規格は,消費生活用製品で用いる音声案内について,使用者によって異なる様々なニーズに応じた
設計指針を示すことによって,消費生活用製品のアクセシビリティを向上させることを目的として制定し
たものである。ただし,この規格は,音声案内だけを手がかりに消費生活用製品の操作ができることを求
めるものではない。
この規格は,アクセシブルデザインの基本規格であるJIS Z 8071及びISO/TR 22411の指針に基づいて
作成している。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
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適用範囲
この規格は,視覚又は聴覚の障害の有無にかかわらず,使用者が消費生活用製品(以下,製品という。)
を使用する際に,その操作又は状態を知らせる手段として用いられる音声案内について規定する。この規
格は,製品の種類及び使用条件(例 製品が公共の場で使用される場合など)に応じて適切に適用するこ
とが望ましい。
この規格で規定する音声案内の音声は,人の発した音声を録音し編集した録音音声,又はテキストから
合成した合成音声とする。ただし,この規格は,火災警報装置における避難誘導音声など,法令などで規
制されている音声案内又は音声放送,及び設備用,業務用,専門家用など,特定用途に限定される機器の
音声案内又は音声放送には適用しない。
この規格では,音声案内機能と併せて使用される報知音も規定する。
注記 報知音の一般要求事項については,JIS S 0013を参照。
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引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 8106 音響用語
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用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8106によるほか,次による。
3.1
音声案内
製品の操作又は状態を音声によって使用者に説明する案内機能及びその音声。
注記1 音声案内には,人の発した音声を録音し編集した録音音声と,テキストから合成した合成音
声とがある。
注記2 音声案内には,JIS S 0013に規定する報知音は含まれない。
3.2
注意音声案内
製品の使用者に注意を促す音声案内。
注記 注意音声案内は,JIS S 0013に規定する注意音と同等の機能をもつ。
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一般要求事項
一般要求事項は,次による。
a) 音声案内は,視覚情報に頼らずに,容易に“入・切”できるようにする。ただし,製品の使用上の安
全に関わる音声案内は切ることができないようにすることが望ましい。
b) 音声案内の音量は,他の音響出力(報知音を含む。)とは独立に調整できることが望ましい。
注記1 他の音響出力の設定状態にかかわらず,音声案内を聴取できるようにする必要がある。
c) 音声案内の出力機能は,報知音とは独立に“入・切”できることが望ましい。
注記2 煩わしさなどの理由から,音声案内を不要に感じる使用者及び音声案内も報知音も不要に
感じる使用者がいる。また,音声案内も報知音も不要に感じる使用者にとっては,両方が
一度に切れることが便利な場合がある。
d) 音声案内は,聞き直しができるように,使用者が繰り返し聞ける機能をもつことが望ましい。
注記3 例えば,音声案内を繰り返し再生するためのスイッチを設けることが有効である。
e) 音声案内の動作状態及び音声案内の代替として鳴らす報知音の動作状態は,視覚,触覚など他の感覚
でも認識できるようにすることが望ましい。
注記4 聴覚障害者は,音声案内及び報知音の出力状態を音として確認できないことがある。
f)
音声案内に対して使用者の注意を特に喚起する必要がある場合には,音声案内の開始直前に報知音を
鳴らすことが望ましい。
g) 音声案内の出力途中であっても,次に行う操作を受け付ける機能をもつことが望ましい。このとき,
出力途中の音声案内は,直ちに中断することが望ましい。
h) 注意音声案内は,使用者が操作しない限り,注意の原因が存在している間,繰り返して発することが
望ましい。
注記5 繰返しの頻度及び継続時間は,注意すべき内容の程度に応じて決定するとよい。
i)
使用者が操作を誤ったことを知らせる音声案内は,誤りを指摘するだけでなく,使用者が次に行うべ
き操作を適切に案内することが望ましい。
j)
音声案内が他者への騒音源とならないようにするために及び/又は製品の使用者のプライバシーを確
保するために,音声案内はイヤホンなどを通して使用者だけが聴取できる機能を設けることが望まし
い。
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k) 音声案内は,補聴器,人工内耳などにも対応していることが望ましい。
l)
音声案内の用語及び表現は,視覚的に表示されたもの,点字・触覚記号によって表示されたもの,及
び取扱説明書に記載されたものと同等でなければならない。ただし,音声案内の表現が使用者に同じ
操作をガイド(誘導)する内容であれば,視覚的に表示されたものなどと異なっていてもよい。
注記6 操作部に表示する略語表記の点字及び図式化された視覚表示(アイコン)は,音声案内の
用語及び表現と一致できない場合がある。
m) 詳細に説明する音声案内と簡潔に説明する音声案内とを備え,使用者がそれらを切り替えられること
が望ましい。
注記7 詳細に説明する音声案内は,使用者によっては煩わしく感じる場合がある。
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音声案内の仕様に関する留意事項
5.1
聞き取りやすさに関する留意事項
音声案内の聞き取りやすさに関する次の事項に留意する。
a) 音声案内は,明瞭な発音の音声又は高い明瞭度の音で合成した音声でなければならない。
b) 音声案内の出力周波数帯域は,できるだけ広く取ることが望ましい。
注記1 年齢にかかわらず,出力周波数帯域の上限が5 kHzを下回ると,音声案内の聞き取りやす
さが低下する。
c) 音声案内の音量は,使用者の聴力,製品からの距離,周囲の環境音などの影響に応じて,使用者が聞
き取りやすいように調整できることが望ましい。音声案内の音量設定方法は,附属書Aによる。
d) 音声案内の発話速度は,使用者の個人差(認知機能障害などによる差を含む。)を考慮して適切な値に
設定できる,又は適切な範囲で調節できることが望ましい。
注記2 高齢者は,話速が遅い音声を好む傾向にある。
注記3 視覚障害者には,1秒当たり十数モーラ(拍)の速い話速を好む者が少なくない。
5.2
分かりやすさに関する留意事項
任意の文(テキスト)を読み上げる場合を除いて,音声案内の分かりやすさに関する次の事項に留意す
る。
a) 一つの操作に対応する音声案内は,一つ又は二つの文で構成し,全体で20モーラ程度の長さとするこ
とが望ましい。また,その中に含まれる重要語句は,多くならないようにすることが望ましい。
b) 異聴が生じやすい語句及び同音異義語があるために誤解を生じやすい語句の使用は避けなければなら
ない(例1及び例2参照)。
例1 語頭の子音は聞き間違いを生じやすい。例えば,数の7は,“しち”と読むと“いち(1)”と
聞き間違えやすいため,“なな”と読むのがよい。
例2 漢字表記では分かりやすくても,音として聞いたときに分かりにくい語句もある。例えば,
“入・切”は,“いりきり”と音で聞いたときに分かりにくいので,“おんおふ(ON・OFF)”
とするのがよい。
c) 一般的に認知されている平易な用語を用いることが望ましい。
d) 一つの製品において使用する音声案内の用語及び構文は,できるだけ統一することが望ましい。
5.3
操作性に関する留意事項
音声案内機能の操作性に関する次の事項に留意する。
a) 操作の確認,操作の誤りなどを知らせる音声案内は,操作との間に時間差がないようにすることが望
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ましい。
b) 音声案内が次に行おうとする操作に影響することがないように,音声案内の長さ及びタイミングを考
慮しなければならない。
注記 迅速な操作を可能にするために,簡潔な構文の音声案内が好まれる場合がある。
c) 使用者の一つの操作に対応する音声案内が複数ある場合は,使用者の手順に沿って案内を行うことが
望ましい。ただし,それらの音声案内の優先度が異なる場合は,優先度の高いものから案内を行わな
ければならない。
d) 対話形式で設定画面を切り替えながら操作を行う製品の場合,次の画面に進むための音声案内だけで
なく,やり直しのために前の画面に戻るための音声案内も行うことが望ましい。
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音声案内を設定する事項
次の事項について,視覚的に表示したものと同等の内容を音声案内し,使用者が的確に理解でき,かつ,
操作できるようにすることが望ましい。
a) 使用上の安全に関わる説明
b) 操作部のスイッチの機能,配置などに関わる説明
c) 動作設定状態の表示内容
注記 この内容には,使用者が操作を行った直後にそのフィードバックとして表示される内容,及
び設定した動作条件などの一覧表示の内容の二つがある。
d) 動作状況の確認情報(電源の“入・切”状態を含む。)
e) 操作方法の説明(ヘルプ機能)
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音声案内機能の評価
製品の使用に当たって,音声案内機能が適切であることを確認するための評価を行うことが望ましい。
評価方法は,附属書Bによる。
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附属書A
(規定)
音声案内の音量設定方法
A.1 音量の設定方法
音声案内の音量は,通常,製品を操作する位置における使用者の頭部の中心に当たる位置を測定点とし
て設定する。このときの音量(等価騒音レベル)は,次による。
なお,等価騒音レベルの平均時間は,音声案内の開始時から終了時までの時間とし,音声案内中の空白
時間も含める。
a) 使用者が音量をコントロールできる場合には,音声案内の音量を55 dB以上65 dB未満の範囲を含ん
で変えられるようにしなければならない。
注記1 通常の生活環境における騒音の影響を考慮すると,一般に音声案内の音量は55 dB以上65
dB未満が好まれる。
注記2 周囲に騒音がない静かな環境では,55 dBを下回る音量が望ましいこともある。
b) 音声案内の聴取を妨げる顕著な騒音がある場合でも,音声案内の音量は75 dBを超えないことが望ま
しい。
注記3 音声案内の聴取を妨げる騒音には,当該製品の動作音も含まれる。
注記4 年齢にかかわらず,聴覚障害者は75 dBを超える音量を必要とすることがある。
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附属書B
(規定)
音声案内の評価方法
B.1
評価方式
評価方式は,音声案内機能のある評価対象製品を評価者が操作して行う。
B.2
評価者
評価者は,当該評価対象製品を使用した経験のない者とする。評価者には,高齢者,視覚障害者,聴覚
障害者など,音声案内に対して異なるニーズをもつ者から適切に選択する。
B.3
評価項目
評価者は,次の項目について評価を行う。
a) 通常の生活環境における騒音がある場合でも,音声案内が聞き取りやすい音量であるかどうかを確認
する。また,全ての音声案内を,異聴することなく正しく聞き取れるかどうかを確認する。
b) 全ての音声案内の内容が正しく理解できるかどうかを確認する。
c) 視覚的な表示(操作部のディスプレイなど)を利用することなく,音声案内に従って製品を適切に操
作できるかどうかを確認する。
B.4
結果の記録
記録には,次の事項を記載する。
a) 製品名
b) 評価者の構成(人数,年齢,障害特性など)
c) 評価年月日
d) 評価項目ごとの評価
参考文献
[1] JIS S 0013 高齢者・障害者配慮設計指針−消費生活製品の報知音
[2] JIS Z 8071 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針
[3] ISO/IEC Guide 71,Guide for addressing accessibility in standards
[4] ISO/TR 22411,Ergonomics data and guidelines for the application of ISO/IEC Guide 71 to products and
services to address the needs of older persons and persons with disabilities