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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 一般的原則 ······················································································································ 2
4.1 多様な利用者,多様なニーズ及び多様な使用環境への配慮 ····················································· 2
4.2 分かりやすさ及び取扱いのしやすさ··················································································· 2
4.3 多様な利用者のニーズへの公平な配慮・調整 ······································································· 2
5 配慮事項························································································································· 3
5.1 情報表示 ······················································································································ 3
5.2 操作・取扱い ················································································································ 7
5.3 取扱説明 ····················································································································· 10
5.4 適切な環境 ·················································································································· 10
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まえがき
この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本
工業規格である。
これによって,JIS S 0012:2000は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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アクセシブルデザイン−
消費生活用製品のアクセシビリティ一般要求事項
Accessible design-Accessibility requirements for consumer products
序文
この規格は,2000年に制定され,その後1回の改正を経て今日に至っている。2017年にJIS Z 8071が
改正され,アクセシビリティ環境の変化に対応するために改正した。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,高齢者をはじめとするより多くの利用者が消費生活用製品(以下,製品という。)を使いや
すく,かつ,扱いやすくするために,それらの製品を設計する際に基本的に留意すべきアクセシビリティ
配慮事項について規定する。ただし,設備用,業務用,専門家用などの特殊な用途に使用する製品は対象
としていない。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS S 0013 高齢者・障害者配慮設計指針−消費生活製品の報知音
JIS S 0103 消費者用図記号
JIS T 0103 コミュニケーション支援用絵記号デザイン原則
JIS T 0921 アクセシブルデザイン−標識,設備及び機器への点字の適用方法
JIS Z 8071 規格におけるアクセシビリティ配慮のための指針
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用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Z 8071によるほか,次による。
3.1
操作
利用者が目的を達成するために,製品に対して(利用者が)行う行為。
3.2
情報表示
操作の状態,結果,操作の仕方,操作方向,操作手順,製品の状態などを示す表示。
例 ランプ,メータ,表示文字,図記号,スピーカー,ディスプレイ,タッチパネルなど。
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3.3
操作要素
利用者が製品を操作するために直接力を加える部分,又は操作する個々の部分。
例 ボタン,つまみ,取っ手,タッチパネルなど。
3.4
操作部
操作要素と情報表示との集合体。
例 操作パネルなど。
3.5
消費生活用製品
主に個人用として,利用者が生活において使用する製品。
注記 製品本体,附属品,説明書・添付物,包装(箱・容器)などで構成される(消費生活用製品安
全法を参照)。
3.6
アクセシビリティ
特定の使用状況において,特定の目標を達成するために,特性及び能力の異なる,より多くの人々が,
製品,システム,サービス,環境及び施設を使用できる程度(ISO 26800 [9],ISO/TR 9241-100 [10]及びISO/TR
22411 [11]を参照)。
注記 標準化における“アクセシビリティ”という用語には,幾つかの定義が存在するが,一般的に
はこの用語は,広い意味で使用されている。
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一般的原則
4.1
多様な利用者,多様なニーズ及び多様な使用環境への配慮
高齢者及び障害のある人々が製品を操作できるように,製品及び環境に対する適正な配慮をしなければ
ならない。多様な利用者,多様なニーズ及び多様な使用環境への配慮は,次による。
a) 情報表示のための複数の方法の併用。
例1 図記号,絵記号,点字,触知記号,音声,振動など。
b) 操作のための複数の方法の併用。
例2 片手だけで操作できる,音声で入力できる,足,腕など手以外で操作できるなど。
4.2
分かりやすさ及び取扱いのしやすさ
分かりやすさ及び取扱いのしやすさは,次による。
a) 製品を扱う及び操作するためには,その動き又は内容が理解できるようにしなければならない。
b) 製品形状は,製品の上下・左右の向きが確認できなければならない。
注記 特に視覚障害のある人々にとっては,製品の向きが分かることは重要である。
4.3
多様な利用者のニーズへの公平な配慮・調整
多様な利用者の異なるニーズで相反する場合,配慮・調整が必要となる。
例 キャップの大きさが小さいものは,手の自由が利きにくい人にとっては操作が難しいが,口で操
作する人にとっては使いやすい場合がある。
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配慮事項
5.1
情報表示
5.1.1
文字
文字は読みやすい大きさ,書体,文字間隔及び線の太さに配慮する。また,ロービジョン(弱視),加齢
などによって文字が読みにくい人々に対しては,大きな文字,反転文字,浮き出し文字(触知文字)を用
いるなどの配慮をすることが望ましい(JIS S 0032及びJIS S 0052参照)。
5.1.2
図記号及び絵記号
図記号及び絵記号の情報表示は,JIS S 0103及びJIS T 0103によるほか,次による。
a) 図記号及び絵記号を使用する場合は,利用者の理解がより促進される方法とする。規格化された図記
号・絵記号又は一般的に普及している図記号・絵記号を優先的に使用し,一般に普及していない図記
号・絵記号を使用する場合には,操作表示用語を併記するなど,よく吟味して使用しなければならな
い[JIS S 0103の4.2(案内用図記号と共用する形)参照]。
注記 複雑な文章の場合には,できるだけ図記号・絵記号を用いるのがよい。
b) 図記号・絵記号は記号の種類・使用環境を考慮し,見やすい大きさとする。
c) 印刷された注意表示では,簡単な図記号・絵記号及びイラストレーションを添えるのがよい。
d) 製品本体又は取扱説明書の注意表示には,文章だけでなく,はっきり目的の分かる記号又はイラスト
レーションを併記して製品の組立及び利用を容易にする。同じ記号の付いた部分を合わせることによ
って組立ができるように工夫したり,操作部の表示に記号を用いたりするのがよい。
5.1.3
色
色の情報表示は,次による。
a) 文字,図記号・絵記号及び絵文字は,背景との識別が明瞭になるよう,見やすい配色・コントラスト
に配慮する。
b) 色を用いて伝えようとする情報は,色以外の他の表示手段も併用して表示するのがよい。また,情報
を伝える,応答を表示する,又は視覚的要素を見分ける手段として,色だけを利用することは避ける
ことが望ましい。
例 テレビ用リモコンの4色ボタンにおける色及び文字の併用。
注記1 YESを意味する表示として青色ランプ,NOを意味する表示として赤色ランプというよう
な,ランプの色だけでの表示は避けることが望ましい。
c) 色の選択は,理解のしやすさ及び見やすさにとって重要となるので,多様な色覚特性のある人々を考
慮し,識別しやすい色の組合せとする。
注記2 多様な色覚特性のある人々の中には,赤と緑とが区別しにくい人々がいることに注意が必
要である。
d) 目的又は環境に応じた見やすい色の組合せに配慮する。黄及び淡い灰色の地に黒は,強いグレアなし
にはっきりと見える組合せの代表例である。淡い背景に淡い色,淡い灰色の地に赤い文字又は記号は,
見にくいため,避けることが望ましい(JIS S 0033参照)。
5.1.4
報知光
報知光の情報表示は,次による。
a) 報知光は,点灯,消灯及び点滅が明確になるように,大きさ,輝度,色及び光点滅における輝度の変
化並びに点滅の周波数を適切に設定するのがよい。
b) 報知光の輝度は,加齢による視覚の衰え,ロービジョン(弱視)などの視覚障害,隣接する領域の輝
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度,使用する環境の照度などを考慮し,下限値(見える最低限のレベル)から上限値[まぶ(眩)し
さが生じるレベル]までの間で適切に設定する。
c) 白色背景,微小報知光(視角20分以下)及びロービジョン(弱視)に対しては,より高い輝度レベル
を設定する。
d) 報知光の色は,背景から識別しやすい色とする。同一光源で色が変化する場合には,多様な色覚特性
のある人々を考慮し,色の変化が分かるよう配色などを工夫する,又は色の変化が分からなくても情
報が伝わるようにする。
注記 多様な色覚特性のある人々の中には,赤と緑とが区別しにくい人々がいることに注意が必要
である。
e) 報知光以外に他の報知手段を併用するのがよい。
f)
報知光の意味を表示する場合は,報知の対象となる操作要素の近傍に分かりやすく配置する。
5.1.5
グレア(まぶしさ)
グレアの可能性を抑えるように配慮する。表示板が光を反射したり,取扱説明書,包装の表示部分の紙
質に光沢をもたせるなどは,避けることが望ましい。
5.1.6
音・音声
音・音声の情報表示は,次による。
a) 音・音声は,明瞭で適切な音量とする。
b) 音・音声による表示のほかに,必要に応じて視覚的な表示及び触覚的な表示も併用するのがよい。
c) 音声言語による情報表示の際には,伝えたい内容が確実に伝わるように文を構成する。
d) 注意表示は,製品ごとに道理にかなった順序で情報を提供する。重要な部分は,繰り返し示すことに
よって強調するのがよい。
注記 音声による注意表示の音量が小さかったり,声が高すぎたり低すぎたりすると,聴覚障害の
ある人々は,より大きな危険及び不利にさら(曝)されることになる。
e) より多くの人にとって利用しやすくするために,音が出る機器類には,音量,音質などの調整機能を
組み込むのがよい。
5.1.7
報知音
報知音の情報表示は,JIS S 0013によるほか,次による。
a) 報知音は,聴覚の衰え,報知すべき距離,周囲の環境音などに配慮し,過不足のないよう,音量,音
質及び音の持続時間を適切に設定するのがよい。
注記1 警報・報知音の音量が十分でなかったり,音の高さが高すぎたり低すぎたりすると,視覚
障害のある人々は,より大きな危険及び不利にさらされることになる。
注記2 騒音下における報知音の音量の設定及び調整の詳細な方法については,JIS S 0014 [2]を参
照。
b) 報知音には,二つ以上の周波数成分をもつ音を用いるのがよい。
c) 音量の急激な変化を避けることが望ましい。
d) 可能な限り“入”,“切”の機能及び音量調節機能を設けることが望ましい。
e) 操作の確認,操作の誤りなどを報知する音は,操作及び報知になるべく時間差がないようにする。
f)
報知音の種類,区分及び組合せは極力シンプルにし,容易に判別しやすくする。
5.1.8
触覚表示
触覚表示の情報表示は,次による。
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a) 製品の基本機能を開始させる操作部は凸点とし,製品の基本機能を停止/キャンセルさせる操作部に
は凸バーを表示する。また,基本機能の開始,停止を兼用する入切スイッチなどの操作部には凸点だ
けとする[JIS S 0011の箇条3(凸点及び凸バーを表示する操作部)参照]。
注記 凸点及び凸バーは,視覚障害のある人々にとって特に有効な情報となる。
b) 容器,袋などに,触覚による警告表示を付けて,毒性のある物質,腐食性物質など危険物質及び調整
物の識別を可能とする[JIS S 0025及びJIS Z 8071の7.2.4(触覚)参照]。
c) 視覚的な表示のほかに,必要に応じ,触知図形,触覚識別表示など触覚による表示を設けるのがよい
(JIS S 0022-3及びJIS S 0052参照)。
d) 視覚障害のある人々が,製品の各部の区別及び操作要素を探しやすいように,それと分かる触感をも
つ部品及び/又は素材を採用し,本体は触感の異なる素材を使用するのがよい。
例 リモコン本体の形状部分は固い素材を採用し,操作ボタンは柔らかい素材にするなどの配慮が
よい。
5.1.9
触覚振動
触覚振動の情報表示は,次による。
a) 身体に装着する又は手指で触知する製品の触覚振動は,告知情報として重要な要素となるので,適切
に装備するのがよい。
b) 振動障害を生じる可能性もあるので,過度の振動は避けなければならない。
5.1.10 点字
点字の情報表示は,JIS T 0921によるほか,次による。
a) 視覚障害のある人々にとって,点字は情報を得るための有効な情報となる。製品に複数の操作ボタン
がある場合,その操作ボタンが示す内容が点字でも表記されていると操作がしやすくなる。
b) 点字表示は,適切な位置に表示する。
注記 墨字と点字とは重ならないように表示し,情報を得るときに邪魔にならないところに配置す
る。
5.1.11 言語・用語
言語・用語の情報表示は,次による。
a) 操作部の機能,働きなどを指し示す用語は,その機能,働きなどを容易にイメージでき,かつ,でき
る限り平易で一般的なものを用いる。曖昧な用語,専門的な用語又は技術的な用語を用いてはならな
い。また,略語を用いる場合は,一般的でないもの,別の意味が一般的なものはできるだけ使用しな
いことが望ましい。
b) 同一品目の基本機能及び働きを指し示す用語は統一し,これを使用する。
c) 他の代替様式に加え,可能な限り,情報を簡潔な文章にした形で整備するのがよい。
注記 長文及び複雑な文章を判読することが困難な人々にも,理解が容易になる。また,簡潔な文
章は他言語への翻訳が容易となる。
d) 限られたスペースに点字で用語を略語化して表示する場合,同一品目においては統一した略語を使用
する。
5.1.12 情報表示位置
情報表示位置は,次による。
a) 情報表示位置は,操作しようとする状態で,手などによって,操作に必要な表示が隠れないようにす
るのがよい。
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b) 操作部に関連する表示の位置は,できるだけ対象とする操作要素の近くに表示し関係性を分かりやす
くする。
c) 情報表示は,分かりやすい位置にする。
d) 情報表示は,視覚障害のある人々及び読むことに障害のある人々にとって気付きやすい位置にするの
がよい。
e) 情報表示は,立った姿勢でも,車椅子からでも見ることができ,かがまなくても簡単に使用できる場
所にするのがよい。このためには,表示又は操作要素の位置は,固定せず調整可能であるか,複数箇
所に配置することが望ましい。
5.1.13 情報表示速度
情報表示速度は,次による。
なお,その速度は,情報表示面上で文字,図形を動かして表示する速度,音声言語による情報表示する
速度などを対象としている。
a) 情報表示速度は,伝達内容の理解がしやすくなるように,調節できるようにするのがよい。
b) 情報表示速度で速さを必要とする場合は,情報を理解し実行に移すための余裕ができるように,個々
の情報表示に間(ま)をとるのがよい。
注記1 音及び音声の情報表示で伝達情報が速すぎると,聴覚障害又は学習障害のある人々にとっ
ての理解が困難になる。
注記2 視覚障害のある人々には,十数モーラ(拍)/秒の速い話速を好む者が少なくない。
c) 一時的に表示した後,消える情報の場合,提示時間の長さに配慮することが望ましい。
5.1.14 その他
5.1.14.1 使用期限・保証期限の表示
使用期限・保証期限は,明瞭に表示することが望ましい。
5.1.14.2 型式の表示
製品の型式(型番・品番)は,見やすい位置に配置し明確に表示するのがよい。
5.1.14.3 成分表示及びアレルゲンに関する警告
成分表示及びアレルゲンに関する警告は,次による。
a) 明瞭な成分表示とする。
注記1 有害となる可能性のある,薬品,ガス,気体,煙などに関する警告は,特に,視覚,味覚
及び嗅覚に障害のある人々にとって重要であり,食物アレルギー,接触アレルギーのある
人々にとっては,製品又は包装に明確な成分表示が付いていることが重要な表示となる。
既存の製品の成分変更が行われた場合,それを明瞭に知らせる。
b) 製品の“アレルギーテスト済み”を示す特定のラベルは,安全な利用及び操作のための明瞭な注意表
示を付けることと同様に有用なため,分かりやすく表示するのがよい。
c) アレルギー性及び毒性のある素材の回避は,味覚及び嗅覚に障害のある人々,接触アレルギー,食物
アレルギー及び気道アレルギーのある人々にとっては,重要となるため分かりやすく表示するのがよ
い。
d) 触覚に依存する視覚障害のある人々にとっても,アレルギーを引き起こす素材と接触することは危険
になるため,表示には配慮しなければならない。
注記2 アレルギーを引き起こすニッケル及びクロムを含む日常生活で使用するものの例として
は,ドアハンドル及び窓枠がある。
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5.1.14.4 発作の防止
画面上の文字などの表示,又は画面全体をフラッシュさせる場合には,視覚刺激による発作を引き起こ
しやすい明滅速度を避けることが望ましい。
5.2
操作・取扱い
5.2.1
操作部の位置
操作部の位置は,次による。
a) 利用者の身体寸法,到達範囲及び動作範囲に配慮し,製品を使用中に身体の一部が意図しないで操作
部に接触して誤操作を起こさないようにするのがよい。
b) 製品の外形から操作部の位置が容易に判断できるようにしなければならない。その方法として,視覚
的,触覚的など複数の手法で操作部の位置が分かるのがよい。
c) 利用者の手などが操作部に届くようにする。
d) 目的とする操作に必要な操作要素と表示部分とが容易に区別できるようにする。
e) 視覚障害のある人々が,操作部の上下・左右を識別するために,操作部の形は,できる限りそれらの
向きが確認できるのがよい。
5.2.2
操作要素の配置
操作要素の配置は,次による。
a) 操作要素及び対応する機能・部位は,目的とする操作の実際の動きと関連性をもたせる[5.1.12のb)
参照]。
b) 操作要素は,いずれの手で製品を持っても,両手で扱っても,手の機能又は力に障害のある人々が独
自の持ち方をしても,隠れてしまわない位置に付けられるのがよい。
c) 操作要素は,使用頻度,操作手順などを配慮し,一貫性のある配置にする。
d) 操作要素は,機能ごとに形状,大きさ,色調などでグループ化しているのがよい。
5.2.3
操作要素の使いやすさ
操作要素の使いやすさは,次による。
a) 操作方向と操作によって起こる変化との間に,利用者が容易に理解でき,分かりやすい配慮がなされ
ていなければならない。
b) 押す,引く,回すなどの操作方法が容易に理解できる形状とする。
c) “入”・“切”及び“強”・“弱”の調節など,互いに関連する操作要素については,それらの操作の方
向について一貫性をもたせなければならない。
d) 視覚障害のある人々又は触覚に障害のある人々が,製品を見分け,部品の組立方を理解しやすいよう,
操作要素は区別しやすい形状を採用する。
注記1 認知機能に障害のある人々にとっては,慣れた形状のものは利用しやすい。
e) 手の動きの自由さに制約がある人々にとって,持ちやすく,また,操作がしやすいよう製品・素材の
表面は,滑りにくい仕上げとする。
f)
滑りやすい操作要素の場合は,適度な引っかかりを付けたり,指のかかりがよい形状とする。
g) シート状のキーのような操作要素は,表面に凹凸,凸記号などを付け,押す位置が触覚的にも判別で
きるようにしなければならない。
h) 同形状の操作要素を連続して配列する場合は,その中で基準となる操作要素を視覚,触覚などで読み
取ることができるようにしなければならない。
i)
押しながら回すなどの,複合的な動作を要求してはならない。ただし,安全の確保を優先する場合は
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この限りではない。
j)
誤操作を防止する目的以外で,二つの操作要素を同時に操作する操作方法を用いてはならない。
k) できる限り一つの操作要素には,一つの操作機能を割り当てる。
l)
やむを得ず一つの操作要素に複数の操作機能を割り当てる場合には,機能の働きの違いが容易に分か
るように適切な表示手段との連動を配慮しなければならない。
m) 操作要素は,互いに操作の邪魔にならない程度に間隔をあけて配置するのがよい。特に,接近して操
作要素を並べるときは,指が他の操作要素に当たらないような形状及び間隔とする。
n) 押す時間の長さで機能の使い分けをしないのがよい。
o) 軽く触れただけで作動しないのがよい。
p) 両手を同時に使わなければならない操作は,できるだけ避けるのがよい。
q) 安全性を犠牲にしない範囲で,可能な限り,製品には左右いずれの手でも片手で扱えるのがよい。
r) 操作部は抵抗力を最低限にし,手首を回す必要がないなど,様々な障害のある人々が容易に操作でき
るよう配慮するのがよい。
s)
より大きなてこ(梃)の力,又は助力装置のような代替の操作要素の提供を考慮するのがよい。
注記2 操作要素をねじる,回す,押す又は引っ張る場合の必要な力は,様々な障害のある人々に
よってはより多くの力を必要とする。
t)
操作要素の一連の操作を事前にプログラム設定できるようにし,操作の負担を減らす,また,個人が
好むように設定及び変更ができるのがよい。
注記3 これは,特に認知機能に障害のある人々に対して有効である。
5.2.4
手順の分かりやすさ
手順の分かりやすさは,次による。
a) 基本機能を開始及び終了させる操作は,操作部から容易に理解及び判別しやすいようにする。
b) 操作の手順を,選択肢を重ねた階層構造とする場合は,その階層構造が複雑にならないようにしなけ
ればならない。
c) 製品は,短時間で利用でき,操作の余計な繰返しを要求しないのがよい。
d) 筋力に障害のある人々にとって,ある作業を行うのに,同じ動作を頻繁に繰り返すことがないよう配
慮するのがよい。
e) 誤操作した場合でも,操作のやり直しがしやすいように,分かりやすい手順で戻ることができる操作
手段を設ける。
f)
操作中に入力の制限時間を設ける場合には,操作に慣れない利用者でも頻繁に制限に至ることのない
よう,適度な制限時間を設ける。さらに,利用者に制限時間の存在を示し,制限時間に至る過程を知
らせる手段を設けるのがよい。また,可能な限り利用者自身が設定できることが望ましい。
5.2.5
取扱いのしやすさ
取扱いのしやすさは,次による。
a) 包装の開封及び製品の組立・取付け又は操作は,簡単で分かりやすく,理にかなった手順でできるの
がよい。
注記1 特に,視覚又は認知機能に障害のある人々にとって有用となる。
b) 製品の組立・取付け及び設置が容易な構造とする。また,配線などの接続がしやすいのがよい。
c) 季節製品などの収納のときに,収納箇所,収納順序などが分かりやすいようにこん(梱)包に絵表示
を入れるなどの配慮をするのがよい。
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d) 扉又は蓋があるものは,開閉時に利用者が負担にならないような重量バランスのよい構造とする。
e) 密閉包装などは,製品の品質を保証する範囲で,可能な限り弱い力でも開閉できるのがよい。
f)
容器は,開閉しやすいように,適切な形,大きさ及び表面仕上げとするのがよい。
g) 持ち運びできるものにあっては,製品重量のバランスのよい箇所に取っ手などを設ける。また,重量
物にはキャスタなどを設けるのがよい。
h) 持ち上げる,手に持つ,運ぶといった動作がしやすいよう,製品の大きさ,形及び重さに配慮しなけ
ればならない。
i)
日常の手入れを必要とする製品は,分解,組立が容易であり,汚れが付着しても容易に清掃しやすい
素材を採用する。
j)
鋭い角及び縁の存在は,避けなければならない。
注記2 特に,視覚及び触覚に障害のある人々にとっては取扱いがしにくいためでもある。
5.2.6
適切なフィードバック
適切なフィードバックは,次による。
a) “正常に受付”,“エラー”などの操作に対する結果を利用者に明確に伝えるためには,視覚,聴覚,
触覚などのいずれの感覚にも対応できる方法によってフィードバックを行うことが望ましい。また,
操作要素が今どのような状態にあるのか,複数の感覚器官を通じて利用者に知らせる仕組みとするの
がよい。
b) 一連の操作のうちの個々の操作が完了した場合には,適切なフィードバックを操作直後に出すように
配慮するのがよい。操作開始から結果までに時間がかかる場合は,動作状態(機能が動作しているか
否か)も知らせることが望ましい。
c) 複数の段階を踏んで操作するものについては,現在どの段階にいて,かつ,何をしているのかを知ら
せるのがよい。
d) 一連の操作に対する反応時間には,極端な偏りがないようにする。
e) フィードバックの方法は,利用者の知覚,認知,運動などの特性を配慮して設定するのがよい。
f)
同一の操作によって,設定値,設定モードなど複数の選択肢を一定の順番で切り換える(サイクリッ
ク)操作方法においては,基点において音及び音声を発する,視覚表示するなど適切にフィードバッ
クする補助手段を設けるのがよい。
g) つまみの回転量など操作量と表示量との関係は,利用者の知覚,認知,運動特性などを配慮して設定
する。
h) 報知音などのフィードバックは,重大な危険を知らせる場合を除いて,製品操作の妨げとならないよ
う,その出力途中であっても利用者が出力を停止できる又は次の操作に移れるようにするのがよい。
5.2.7
誤操作の対処・防止
誤操作の対処・防止は,次による。
a) 誤った組立,誤った取付けなどが起こった場合,製品又はシステムは利用者の危険とならないように,
起動しない又は安全に停止する設計にしなければならない。
b) 誤操作した場合は,その状況が利用者に直ちに分かるように表示,報知音,ランプなど,なるべく利
用者の複数の感覚に訴える注意及び警告を行わなければならない。また,誤操作によって利用者に危
険が及ぶ場合,注意及び警告とともに,製品又はシステムが安全に停止する設計にしなければならな
い。
c) 不用意に操作してはならない重要な操作要素は,他の操作要素から離して配置し,ロック機構,チャ
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イルド・レジスタンス1)及びシニア・フレンドリー2)(Child Resistance and Senior Friendly)に配慮し,
カバーなどを設けなければならない。
注1) 例えば,51か月未満の幼児による操作を困難とするなどの機能[JIS S 4803 [8]の3.1(チャイ
ルドレジスタンス機能)参照]。
2) 容器の蓋,紙器などの分野において高齢者にやさしく活用できる機能。
d) 認知機能に障害のある人々にとって,操作要素及び画面は,誤操作しても問題にならないよう配慮す
るのがよい。
e) 万一誤操作した場合は,操作の途中からでも元の状態に容易に復帰でき,やり直しができるようにす
る。
5.3
取扱説明
取扱説明は,次による。
a) 冊子の場合は,分量及び重さに配慮する。
注記 取扱説明書の大きさ,ページ数及び紙の重さは,手に持ったりページをめくったりといった
動作のしやすさに影響し,最終的には,その取扱説明書が活用される度合いに影響する。
b) 技術的用語及び専門用語で,一般化した日常語に置き換えることができない用語を使用する場合には,
取扱説明書などで用語の説明を行うなど,利用者が理解できるように工夫しなければならない。
c) 注意表示を複数の言語で提示する場合,印刷情報であれば1ページ中に言語を混在させずに言語ごと
に別ページとするのがよい。音声言語による情報の場合には,どの言語で話すかという分かりやすい
前置きをそれぞれの言葉で付けることが望ましい。
d) 操作部に表示する用語と取扱説明書で使用する用語とは必ず一致させる。
e) 冊子が同封されていない場合は,どの媒体で入手できるかを記載するのがよい。
例 DVD,ウェブサイトなど。
5.4
適切な環境
5.4.1
音響
音響には,磁気ループ,赤外線,無線を利用した(補聴)システムなどのコミュニケーション機器を設
置するのがよい。
注記 聴覚障害のある人々にとっては,音響設計の優れた場所であっても,遠くの音を捉えることは
難しい。
5.4.2
照明
照明は,使われる場所の明るさに配慮して設計するのがよい。
注記 テレビの操作要素(リモコンなど)は,暗い部屋で使われることがある。視覚障害のある人々
にとっては,適切な照明があれば,操作要素がより見やすくなる。また,適切な照明は,手話,
口話,読唇などによる聴覚障害のある人々のコミュニケーションにとっても有用になる。
5.4.3
温熱
温熱は,次による。
a) 通常の利用で触れてしまう表面は,素材に配慮し極端に熱くなったり,冷たくなったりしないように
配慮する。冷たくなりすぎない素材を使うなど,適切な断熱材を使用するのがよい。
b) 機能上極端に熱くなる部分及び冷たくなる部分がある場合は,接触禁止又は接触時の注意について警
告するのがよい。
注記 警告は,触覚に障害のある人々,視覚及び認知機能に障害がある人々にとって有用となる。
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また,注意を促す表示及び文章は,見付けやすく,理解しやすいように配慮するのがよい。
5.4.4
その他
5.4.4.1
換気
換気システムには,気道アレルギーを悪化させたり,息苦しさを引き起こすことのないように配慮する
のがよい。
5.4.4.2
素材の火災安全性
障害のある人々が利用する製品は,燃えにくい素材を採用するのがよい。
注記 たばこ,マッチなどの小さな火元から燃え上がってしまう素材は,燃えるときに有毒ガスを発
生したり,急速に燃え広がったりするので危険であることに注意が必要である。これは,素早
く移動することが困難な人々及び視力の弱い人々にとって,特に危険となる。
参考文献
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慮した音圧レベル
[3] JIS S 0022-3 高齢者・障害者配慮設計指針−包装・容器−触覚識別表示
[4] JIS S 0025 高齢者・障害者配慮設計指針−包装・容器−危険の凸警告表示−要求事項
[5] JIS S 0032 高齢者・障害者配慮設計指針−視覚表示物−日本語文字の最小可読文字サイズ推定方法
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[7] JIS S 0052 高齢者・障害者配慮設計指針−触覚情報−触知図形の基本設計方法
[8] JIS S 4803 たばこライター及び多目的ライター−操作力による幼児対策(チャイルドレジスタンス機
能)安全仕様
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[10] ISO/TR 9241-100,Ergonomics of human-system interaction−Part 100: Introduction to standards related to
software ergonomics
[11] ISO/TR 22411,Ergonomics data and guidelines for the application of ISO/IEC Guide 71 to products and
services to address the needs of older persons and persons with disabilities