R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
R 7603 : 1999
(ISO 10119 : 1992)
炭素繊維−密度の試験方法
Carbon fiber−Determination of density
序文 この規格は,1992年に第1版として発行されたISO 10119, Carbon fiber−Determination of densityを
翻訳し,原国際規格の様式によって作成した日本工業規格であるが,規定内容の一部を我が国の実情に即
して変更した。
なお,この規格で下線(点線)を施してある箇所は,原国際規格の規定内容を変更した事項又は原国際規
格にはない事項である。
1. 適用範囲
1.1
この規格はサイジング剤を除去した炭素繊維の密度を測定する4方法について規定する。
A法:液置換法
B法:浮沈法
C法:密度こう配管法
D法:比重瓶法(1)
密度の測定は,受渡当事者間の協定によって,サイジング剤の付着した炭素繊維について行ってよい。
サイジング剤付着率が1%以下の場合にはサイジング剤の付着していない炭素繊維と同等とみなしてよい。
注(1) 比重瓶法は受渡当事者間で採用されている方法のため追加した。
2. 引用規格
次の規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この規格の発行
時点では,ここに示す版の規格が有効である。すべての規格は改訂されることがあるのでこの規格の使用
者は,引用規格の最新版を適用できるかどうか検討するのが望ましい。IEC及びISOの加盟機関は国際規
格の最新版の登録簿を維持している。
ISO 291 : 1977, Plastics−Standard atmospheres for conditioning and testing.
ISO 1675 : 1985, Plastics−Liquid resins−Determination of density by the pyknometer method.
備考1. サンプリング法を削除したためISO 1886 : 1990は引用しない。
ISO 10548 : 1994 Carbon fiber−Determination of size content.
2. ISO 10548は1994年に出版されたので追加した。
3. 定義
この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
2
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
3.1
密度 (Density)
指定された温度での物質の単位体積当たりの質量。この特性値は指定された温度でのg/cm3又はkg/m3
で表示する。温度としては23 ℃が望ましい。
4. 試験場所の状態調節
試験に先立って,試験片はISO 291に規定する標準試験雰囲気中に保ち,試験中も装置及び試験片は同
じ条件下に維持する。条件としては23℃±2℃,(50±5)%RHが望ましい。またJIS K 7100(プラスチック
の状態調節及び試験場所の標準状態)に定める23℃±5℃,(
)
20
10
50+−
%RHを採用してもよい。(2)
注(2) JIS R 7601にはJIS K 7100が使用されているので,この規格に定める条件の採用を追加した。
5. 試験片の数
基本単位(スプールなど)当たり少なくとも2個以上(3)の試験片をとる。
注(3) JIS R 7601規格に合わせた。
6. 試験方法
6.1
A法:液置換法
6.1.1
原理
試験片を大気中で量り,次いで試験片の密度より少なくとも0.2g/cm3以下の密度既知の液中で量る。こ
の二つの媒体中での質量差はアルキメデス原理に基づく。この質量差を,使用した液体の密度で除した値
が試験片の体積となる。大気中の試験片の質量をこの体積で除した値が試験片の密度となる。
6.1.2
装置及び器具
6.1.2.1
はかり 最小0.1mgまで測定できるものとする。
6.1.2.2
試験片支持具 直径0.4mm又はそれ以下のステンレス鋼製のワイヤ,若しくは浸せき液中に容易
に沈められるように穴のあいたガラス又はステンレス鋼製の容器(図1参照)。
6.1.2.3
比重瓶又は比重浮ひょう 最小0.001g/cm3まで測れるものとする。
6.1.2.4
ビーカー ほうけい酸ガラス製のものとする。
6.1.2.5
支持架台 はかり(6.1.2.1)を用いるのに適したもの(図2参照)とする。
6.1.2.6
真空ポンプ(必要に応じて)
6.1.2.7
超音波発信器(必要に応じて)
6.1.2.8
デシケーター シリカゲル,塩化カルシウム,酸化りん (V) などの適当な乾燥剤を含むものとす
る。(4)
注(4) 原国際規格には乾燥剤の具体的例示はないが,ISO 10548には示されているので,両規格の内容
を一致させるために付け加えた。
6.1.2.9
浸せき液浸 せき液の例(5)を次に示す。
エタノール
ρ23=0.79g/cm3
アセトン
ρ23=0.79g/cm3
メタノール
ρ23=0.80g/cm3
ジクロロエタン
ρ23=1.25g/cm3
o−ジクロロベンゼン
ρ23=1.31g/cm3
ジクロロメタン(6)
ρ23=1.33g/cm3
3
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
トリクロロエタン
ρ23=1.35g/cm3
トリクロロメタン
ρ23=1.48g/cm3
四塩化炭素(7)
ρ23=1.59g/cm3
注(5) JIS K 1600[1, 1, 1-トリクロルエタン]に規定する試薬を用いる。
JIS K 4102[o-ジクロロベンゼン(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 8034[アセトン(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 8102[エタノール(95)(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 8161[ジクロロメタン(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 8322[トリクロロメタン(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 8465[1, 2-ジクロロエタン(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 8891[メタノール(試薬)]に規定する試薬を用いる。
注(6) この浸せき液は,受渡当事者間で採用の実績があるので追加した。
(7) 我が国では,四塩化炭素の使用は禁じられているが,他国でこれを使用して測定したデータに
ついては有効と認める。
注意事項 これらの液体を取り扱う際には,必要な安全策を講じること。
6.1.3
試験片 試験片については,特に規定がなければ,受渡当事者間の協定に従った方法でサイジング
剤を除去し,少なくともその0.2gを取り出し,それらを取扱いやすい形状,例えば,ちょう(蝶)結びと
する。
6.1.4
手順
6.1.4.1
ISO 1675に基づく比重瓶法(6.1.2.3)か又は比重浮ひょう法で試験温度における浸せき液の密度を
測る。
6.1.4.2
大気中で試験片支持具を0.1mg (m1) まで量る。
6.1.4.3
ビーカー(6.1.2.4)中の浸せき液に試験片支持具又はワイヤを浸す。試験片の質量を試験片支持具
(図1参照)上で量るときに,試験片が10mm浸せきするようにビーカーの液面レベルを調節する。浸せ
き液中で試験片支持具を0.1mgまで量る (m2)。
6.1.4.4
試験片を試験片支持具に取り付け,大気中で0.1mgまで量る (m3)。
6.1.4.5
浸せき液の入ったビーカー中に試験片支持具に取り付けた試験片を浸せきし,ガラス棒でビーカ
ーの側壁に試験片を押し付けるか若しくは真空ポンプ(6.1.2.6)又は超音波発信器(6.1.2.7)を用いて気泡を取
り除く。
6.1.4.6
浸せき液深さを6.1.4.3の場合と同じレベルにして,試験片と試験片支持具を浸せき液中に浸し,
その質量を0.1mgまで量る (m4)。
6.1.5
計算及び結果の表示
6.1.5.1
温度θでの試験片の密度ρθ (g/cm3) は,次の式によって算出する。
L
m
m
m
m
m
m
ρ
ρθ
×
−
−
−
−
=
)
(
)
(
)
(
2
4
1
3
1
3
ここに, m1: 大気中での試験片支持具の質量 (g)
m2: 浸せき液中の試験片支持具の質量 (g)
m3: 大気中での試験片支持具と試験片の質量 (g)
m4: 浸せき液中の試験片支持具と試験片の質量 (g)
ρL: 浸せき液の密度 (g/cm3)
4
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.1.5.2
試験は,2個以上の試験片について行い,その平均値を小数点以下3けたで求め,JIS Z 8401(数
値の丸め方)によって2けたの位に丸める。(8)
注(8) 原国際規格に欠落しているので追加した。
6.2
B法:浮沈法
6.2.1
原理
炭素繊維と同じ密度をもつ混合液中での炭素繊維の平衡状態を観察する方法。これには2方法がある。
B1法 試験片を安定な浮遊状態に保てるように2液の混合割合を徐々に変えていく方法。
B2法 細かく切断した試料を一連の異なる密度既知の混合液中に挿入する方法。
6.2.2
装置及び器具
6.2.2.1
真空ポンプ(9) 1.3kPa (10mmHg) 以下に脱気できるものとする。
注(9) 原国際規格の6.2.4.1.2の記述が不適切なので訂正したが,それに合わせてこの項も訂正,追加し
た。
6.2.2.2
温度計
6.2.2.3
比重瓶又は比重浮ひょう 最小0.001g/cm3まで測れるものとする。
6.2.2.4
試験管又はサンプル管 容量5cm3の,栓の付いたものとする。
6.2.2.5
メスシリンダー 容量250cm3のものとする。
6.2.2.6
恒温水槽 試験管中の溶液の温度を23 ℃±0.5 ℃に保てるものとする(10)。
注(10) 密度測定において要求される精度を満たす条件としては,温度の管理幅を±0.1℃から±0.5℃に
広げても支障ないため訂正した。
6.2.2.7
ピンセット
6.2.2.8
切断用刃物
6.2.2.9
フラスコ 容量250 cm3の,真空ポンプに接続できる栓の付いたものとする。
6.2.2.10 浸せき液 次の各液から2液を選び,必要とする密度の範囲をカバーできる混合液を調製する。
アセトン,メタノール,エタノール
ρ23=0.8g/cm3
ミネラルスピリット(11)
トリクロロエタン
ρ23=1.35g/cm3
四塩化炭素(7)
ρ23=1.59g/cm3
ジブロモエタン
ρ23=2.17g/cm3
ブロモホルム
ρ23=2.89g/cm3
注(11) JIS K 2201(工業用ガソリン)の4号塗料用に規定するものを用いる。
注意事項 これらの液体を取り扱う際には必要な安全策を講じること。
6.2.3
試験片
質量で約10mgから20mgのフィラメント試験片(B1法)又は約100μgの細かく切断した試験片(B2
法)を用いる。
6.2.4
手順
6.2.4.1
B1法
6.2.4.1.1
浸せき液(6.2.2.10)から2種類を選び試料よりも小さい密度の混合液をフラスコ(6.2.2.9)中に調製
する。これを十分に混合し,23℃±0.5℃(12)にして,その温度に保持する。
6.2.4.1.2
ちょう結びした試験片を混合液中に入れ真空ポンプを用いて脱気し,少なくとも2分間1.3kPa
(10mmHg) に保持する。
5
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.2.4.1.3
この混合液に高密度液を滴下し,試験片がフラスコの中心に位置するまでかき混ぜ続ける。5
分後,試験片が沈むようであれば高密度液を更に滴下し,浮上するようであれば低密度液を滴下するとい
う操作を試験片が静止するまで続け,その液体の密度を比重瓶又は比重浮ひょうで測定し,試験片の密度
とする。
6.2.4.2
B2法
6.2.4.2.1
必要な密度範囲をカバーする浸せき液(6.2.2.10)を0.02g/cm3きざみで調製し,各々の混合液の
23℃±0.5℃での密度を比重瓶又は比重浮ひょうを用いて測定する。このとき必要であれば少量のぬれ剤を
用いてもよい。
6.2.4.2.2
6本の容量5cm3の試験管(6.2.2.4)に前記の混合液を2.5cm3入れ,これに約100μgの細かく切断
した試験片を加え,栓をして十分振とうした後,混合液の密度測定をした温度で静置する。
6.2.4.2.3
60分後に,試験管中の繊維の位置(状態)を観察する。
6.2.4.2.4
ほとんど大部分の繊維が浮遊状態となっている混合液の密度をもって試験片の密度とする。
6.2.5
計算及び結果の表示
6.2.5.1
炭素繊維の密度はg/cm3で表示する。
6.2.5.2
試験は,2個以上の試験片について行い,その平均値を小数点以下3けたまで求め,JIS Z 8401
によって2けたの位に丸める。
6.3
C法:密度こう配管法
6.3.1
原理
直線的な密度こう配をもつ液管中における試験片の平衡位置を読み取る方法。
6.3.2
装置及び器具
6.3.2.1
ガラス円筒 長さ約1m,直径40mmから50mmで少なくとも85cmの長さにわたってmm目盛
を記してあり,その上部にすり合わせのキャップが付き,23℃±0.5℃に保持できるよう水ジャケットが付
いて温度コントロールのできるもの。同じ結果が得られるならば,他の寸法のガラス円筒でもよい。恒温
水槽(6.2.2.6)を用いる場合は水ジャケットが付いていなくてもよい。
6.3.2.2
標準フロート 23℃において,密度差が0.001g/cm3で,かつ,望ましい密度範囲をカバーする直
径が約3mmから6mmの中空ガラス球(12)。
注(12) 中空ガラス球の直径は,この規格とJIS R 7601とで規定する領域をカバーする範囲として3mm
から6mmとした。
6.3.2.3
ガラス容器 同一直径のもので,容量約200mlのもの2個。
6.3.2.4
ビュレット
6.3.2.5
浸せき液 混合液の例(5)(13)(14)を次に示す。
アセトン,臭化エチレン(14)(密度範囲0.77g/cm3から2.18g/cm3まで)
アセトン,ブロモホルム(14)(密度範囲0.77g/cm3から2.89g/cm3まで)
エタノール,ブロモホルム(密度範囲0.81g/cm3から2.89g/cm3まで)
キシレン,臭化エチレン(14)(密度範囲0.86g/cm3から2.18g/cm3まで)
キシレン,ブロモホルム(14)(密度範囲0.86g/cm3から2.89g/cm3まで)
塩化亜鉛,水(密度範囲1.00g/cm3から2.00g/cm3まで)
トリクロロエタン,エチレンジブロマイド(密度範囲1.35g/cm3から2.18g/cm3まで)
四塩化炭素(7),エチレンジブロマイド(密度範囲1.59g/cm3から2.18g/cm3まで)
四塩化炭素(7),ブロモホルム(密度範囲1.59g/cm3から2.89g/cm3まで)
6
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
注(13) JIS K 8271[キシレン(試薬)]に規定する試薬を用いる。
JIS K 81111[塩化亜鉛(試薬)]に規定する試薬を用いる。
(14) これらの混合液は受渡当事者間で採用の実績があるので追加した。
6.3.2.6
湿潤液メタノール又はエタノール(15)
注(15) 原国際規格に欠落しているため追加した。
注意事項 これらの液体を取り扱う際には必要な安全策を講じること。
6.3.3
試験片
試験片は,液に浸したときに気泡が付着しないようにするため,あらかじめ試験片の形状を脱気しやす
いように調整しておくことが望ましい。試験片はフィラメント又は細かく切断した繊維をちょう結びにし
たものとし,その質量は1mgから200mgとする(16)。
注(16) 試験片の質量範囲をJIS R 7601に合わせて1mgから200mgにした。
6.3.4
手順
6.3.4.1
密度こう配管を附属書Aに記したようにセットする。
6.3.4.2
試験片を,それより密度の低い液体又はメタノール若しくはエタノールでぬらした後,密度こう
配管の中に静かに投入する。
6.3.4.3
試験片が液体の中で平衡位置に達して静止したら(17),その中央部の高さを密度こう配管の目盛か
ら1mmまで読み取る。
注(17) 通常1時間以上必要とする。
6.3.4.4
6.3.4.3の結果を補正曲線と比較し,それぞれの測定結果に対応する密度を読み取る。
6.3.4.5
管内からバスケットで分散した試験片を取り除く。管中の液が乱れないようにこの操作はゆっく
り行うこと。
6.3.5
計算及び結果の表示(18)
6.3.5.1
炭素繊維の密度はg/cm3で表示する。
6.3.5.2
試験は,2個以上の試験片について行い,その平均値を小数点以下3けたまで求め,JIS Z 8401
によって2けたの位に丸める。
注(18) A法及びB法の試験法の記述に合わせた。
6.4
D法:比重瓶法(ビクノメーター法)
6.4.1
原理
比重瓶を使用して試験片の大気中の質量を量る。ついで比重瓶に入れた試験片の密度より少なくとも0.2
g/cm3以下の密度既知の液中で試験片の質量を量る。後者の質量を,使用した液の密度で除した値が試験片
の体積となる。大気中の試験片の質量をこの体積で除した値が試験片の密度となる。
6.4.2
装置及び器具
6.4.2.1
はかり 最小0.1mgまで測定できるもの。
6.4.2.2
温度計
6.4.2.3
比重瓶(ビクノメーター) 望ましくは約40mlのもの。
6.4.2.4
真空デシケーター
6.4.2.5
恒温水槽 23℃±0.5℃の温度に調節できるもの。
6.4.2.6
乾燥機
6.4.2.7
ピンセット
7
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.4.2.8
デシケーター シリカゲル,塩化カルシウム,酸化リン (V) などの適当な乾燥剤を含むものとす
る(4)。
6.4.2.9
浸せき液 浸せき液は試験片に対してぬれ性が高く,かつ,蒸発しにくい有機溶剤,例えば,1-
ブタノール(n-ブチルアルコール)(19)を使用する。
注(19) JIS K 8810に規定している試薬を用いる。
6.4.3
試験片
試験片は,液に浸したときに気泡が付着しないようにするため,あらかじめ試験片の形状を脱気しやす
いように調製しておくことが望ましい。
6.4.3.1
試験片は,次のいずれかの形状(フィラメントをちょう結びにしたもの又は細かく切断した繊維)
で,その質量は1〜200mgとする。
6.4.3.2
サイジング剤については付着したままでもよい。サイジング剤付着率が1%以下の場合にはサイ
ジング剤の付着していない試験片と同等とみなしてよい。
6.4.4
手順
6.4.4.1
あらかじめ十分に乾燥した比重瓶の質量を0.1mgまで量る。
6.4.4.2
上記比重瓶に23℃±0.5℃の温度で,その標線まで正確に浸せき液を満たし,その質量を0.1 mg
まで量る。
6.4.4.3
次に,その比重瓶を空にして乾燥してから,底部に試験片(110℃±0.5℃の空気中で約2時間乾
燥し,デシケーター中で室温まで冷却したもの)を入れ,その質量を量る。
6.4.4.4
これに,あらかじめ20分間以上2.0〜2.7kPa (15〜20mmHg) の減圧下に保ってある1-ブタノール
を静かに加えて,試験片が完全に浸された状態で軽い振動を与えて大きな気泡を除去し,真空デシケータ
ー中に入れ,徐々に排気して2.0〜2.7kPa (15〜20mmHg) とし,20分間以上保つ。
6.4.4.5
気泡の発生が止まった後取り出し,更に1-ブタノールを滴下し,栓をして恒温水槽に15分間以
上浸し,次にこれを取り出して外部をよくぬぐって室温まで冷却した後質量を量り,更にこれを再び恒温
水槽に入れ,同様の操作を繰り返して4回の平均値をとる。
6.4.5
計算及び結果の表示
6.4.5.1
試験片の密度ρθ (g/cm3) は,次の式によって算出する。
L
m
m
m
m
m
m
ρ
ρθ
×
−
−
−
−
=
)
(
)
(
)
(
2
4
1
3
1
3
ここに, m1: 試験片を入れた比重瓶の質量 (g)
m2: 比重瓶の質量 (g)
m3: 試験片及び浸せき液を入れた比重瓶の質量 (g)
m4: 浸せき液を入れた比重瓶の質量 (g)
ρL: 浸せき液の密度 (g/cm3)
6.4.5.2
試験は,2個以上の試験片について行い,その平均値を小数点以下3けたまで求め,JIS Z 8401
によって2けたの位に丸める。
7. 精度
この試験方法の精度は試験室間のデータがないので不明である。精度はそのデータが得られた時点で,
次の改訂版に追加する。
8. 報告
8
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
報告には,次の事項を記載する。
a) この規格の番号
b) 試料の明細(サイジング剤付着の有無など)
c) 試験方法(A法,B1法,B2法,C法又はD法)及びその明細
d) 試験片の数
e) 0.01g/cm3にまで丸めた密度の平均値
f)
その他特記すべき事項
図1 試験片支持具の例
9
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図2 液置換法による密度測定装置の例
10
R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
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附属書A 密度こう配管の作り方
A.1 原理
C法に使用する密度こう配管の作り方は,次の3方法がある。
備考1. 原国際規格には密度こう配管の作り方について2方法が規定されているが,これにJIS R 7601
で採用されている積み重ねによる方法を追加した。
A.1.1 第1の方法は(図A.1.a)ガラス円筒の上部から密度の高い液から注ぎ入れ,徐々に密度の低い液を
満たす方法である。
密度の低い液は器壁を伝わり落ち,既に注がれ終わった密度の高い液の上層に位置するようになる。
A.1.2 第2の方法は(図A.1.b)ガラス円筒の底部から密度の低い液を注ぎ入れ,徐々に密度の高い液を満
たす方法である。既に注がれ終わった密度の低い液は密度の高い液によって押し上げられ入れ替わる。
A.1.3 第3の方法は,あらかじめ用意したn種類の密度の異なる液を,密度の高い液から順次ガラス円筒
の上部から満たし,積み重ねる方法である。
A.2 手順
A.2.1 サイホンを利用する方法
A.2.1.1 図A.1.a又は図A.1.bに示す装置を組み立て,温度調節器を23℃±0.1℃に調節する。水ジャケット
がないガラス円筒の場合は,23℃±0.1℃の恒温水槽を使ってもよい。
A.2.1.1.1 ガラス円筒底部に補正済み標準フロート(好ましくは8個,6.3.2.2)を入れたバスケット(6.3.2.1)
を置く。(標準フロートは密度差の0.01g/cmにつき1個以上が適当であり,ガラス円筒に入れた場合に少
なくとも10cmから20cmの間隔に並ぶことが望ましい。)。
A.2.1.2 マスター液L1(高密度)とL2(低密度)を用意する。
このマスター液に6.3.2.5で述べた浸せき液だけを使用するか,又は異なった二つの浸せき液の混合液を
使用するかで測定の精度が異なる。
A.2.1.2.1 高精度を要求する場合は狭い密度範囲が選ばれる。その代表的な密度範囲は70cm長さのガラス
円筒当たり0.05g/cm3である。
A.2.1.2.2 必要とする高密度こう配管を作るためには,次の式(1)によってρAを求める。
V
VB
A
)
(2
2
1
1
ρ
ρ
ρ
ρ
−
−
=
······························································ (1)
ここに, ρA: 図A.1.aのガラス容器A中の液の最初の密度 (g/cm3)
ρ1: 図A.1.aのガラス容器B中の液の最初の密度で,必要とする最
高の標準フロートの密度より0.005g/cm3大きいように選ぶ
(g/cm3)。
ρ2: 密度こう配管の最上部における液の密度で,必要とする最低の
標準フロートの密度より0.01g/cm3小さいように選ぶ (g/cm3)。
VB: 図A.1.aのガラス容器B中の最初の液の容量 (ml)
V: 密度こう配管内の全液量 (ml)
備考2. 式(1)は原国際規格にないが,マスター液L1及びL2を決めるとき有効であり,かつ,JIS R 7601
案で採用されてるので追加した。
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R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A.2.1.3 ガラス容器A,Bに図A.1.a又は図A.1.bに示した液L1,L2をそれぞれ満たす。各々のガラス容
器にはガラス円筒の容積の1/2以上の液を入れておく。
A.2.1.3.1 ガラス容器Bをかき混ぜ機でかき混ぜながら,その中の液をサイフォンS1,S2によって,また
止め栓R1,R2によってガラス円筒内に2時間掛けて注ぎ入れる。この操作によってガラス容器B中の液
の高さが低下するので,ガラス容器中の液が順次ガラス容器Bに流入することになる。このようにしてガ
ラス製円筒内の液は連続的な密度こう配を示すことになる。
A.2.1.3.2 図A.1.aの方法では標準フロートは液面とともに上昇し,密度が低くなるに従って互いに分離す
る。図A.1.bの方法では標準フロートはガラス円筒の底部から密度の増加に従って相次いで上昇し,液レ
ベルの上昇に従い分離する。
A.2.1.4 密度こう配管を23℃±0.1℃の温度に静置し,24時間経過してからこう配管中の標準フロートの中
心の高さを1mmまで密度こう配管目盛から読み取り,標準フロートの密度と密度こう配管の目盛との補
正曲線を作る。
A.2.1.4.1 この補正曲線が直線とならない場合は,手順を繰り返す。
A.2.1.4.2 補正曲線が直線性を示す寿命は,約1か月である。
A.2.2 積み重ねによる方法
A.2.2.1 必要とする密度こう配管を作るためには,ρ1,ρ2……ρnのn種類の密度の異なる液を作る。
なお,ρ1は,必要とする最高の標準フロートの密度より0.005g/cm3大きいように,またρnは必要とする
最低の標準フロートの密度より0.01g/cm3小さいように選ぶ。液の種類の数nは,それぞれの液が円筒内で
占める空間の高さが1〜2cm程度になり,それらの全体としての高さが,必要とするこう配管の高さに等
しくなるように決める。n種類の液の密度は正確に等間隔になるように作ることが必要である。
A.2.2.2 A.2.2.1で作られた液を密度の高いもの,すなわち,ρ1から順にビュレットを使用して20mlずつ静
かに管壁を伝わらせながらガラス円筒に注ぎ入れる。
A.2.2.3 標準フロートをメチルアルコールなどで洗浄した後,最低の密度の液で濡らしてからガラス円筒に
静かに入れ密度こう配管とする。
A.2.2.3.1 標準フロートの選択は,A.2.1.1に示したとおりとする。
A.2.2.4 次の操作は,A.2.1.4と同様に行う。
a) 上部注入方式
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R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 低部注入方式
図A.1 密度こう配管の作り方
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R 7603 : 1999 (ISO 10119 : 1992)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
JIS R 7603(炭素繊維−密度の試験方法)原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
宮 入 裕 夫
東京医科歯科大学
(委 員)
福 永 健 文
通商産業省生活産業局窯業建材課
増 田 優
通商産業省基礎産業局化学課
岡 林 哲 夫
工業技術院標準部
剣 持 潔
物質工学工業技術研究所
橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
奥 田 謙 介
奥田技研
山 内 啓 司
NSテクノサービス
三 好 一 雄
三菱電気株式会社
秋 元 剛
横浜ゴム株式会社
菅 原 憲 明
富士重工業株式会社
室 井 國 昌
ヤマハ株式会社
矢 作 雅 男
炭素繊維協会
松 井 醇 一
東レ株式会社
安 藤 正 人
東邦レーヨン株式会社
伊 藤 正
ドナック株式会社
松 岡 慶 典
三菱レイヨン株式会社
鍵 崎 正 己
三菱化学株式会社
野 崎 春 夫
呉羽化学工業株式会社
磯 部 鴻 一
日本カーボン株式会社
鹿 毛 紀久雄
財団法人科学技術戦略推進機構
渡 部 恵 三
硝子繊維協会
田 村 正 勝
日本プラスチック工業連盟