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R 3257 : 1999 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,実用新案権,又は出願公開後の実用新案登録出願に抵触

する可能性があることに注意を喚起する。通商産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような技術的性

質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案,又は出願公開後の実用新案登録出願にかかる確認に

ついて,責任をもたない。

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

R 3257 : 1999 

基板ガラス表面のぬれ性試験方法 

Testing method of wettability of glass substrate 

序文 液晶ディスプレイ,プラズマディスプレイなどの基板に基板ガラスが広く用いられるようになって

おり,基板ガラス表面のぬれ性は,ディスプレイ素子などの性能に大きな影響を及ぼすので,試験方法の

標準化を行い,ディスプレイ素子などの性能の向上を図ることとした。 

1. 適用範囲 この規格は,基板ガラス(表面)の水に対するぬれの尺度としての水の接触角の試験方法

について規定する。 

備考 この規格の中で{ }を付けて示してある単位及び数値は,従来単位によるものであって,参

考として併記したものである。 

2. 定義 この規格で用いる用語の定義は,次による。 

a) 接触角 固体,液体及び気体(一般的には空気,以下空気という。)の接する部位から,液体の曲面に

接線を引いたとき,この接線と固体表面のなす角度。 

b) 前進接触角 固体表面と空気が接している面に,新たに液体が接触するときに作られる接触角。 

c) 後退接触角 液体にぬれていた,固体表面の上に作られる接触角。 

d) 静滴法 固体表面上に液滴を静置して,接触角を求める方法。 

e) 垂直板法 固体の一部を垂直に液体中に浸せき(漬)するときに形成される前進接触角,及びこれを

垂直に引き上げるときに形成される後進接触角を求める方法。 

3. 試験方法の種類 試験方法の種類は,次による。 

a) 静滴法 

b) 垂直板法 

4. 試験片 試験片は,次に示す方法で採取する。 

a) 試験片の採取 切断が必要な場合,ガラス切り又は切断装置で基板ガラスから採取する。切断時の基

板ガラス及び切断し採取した試験片の取り扱いは,清浄な手袋をはめ,かつ,試験面に触れないよう

にして行う。切断装置からの汚染のないよう十分注意する。 

b) 試験片の寸法 静滴法及び垂直板法ともに,使用測定器で測定可能な大きさ以内とする。 

5. 試験片の保管 試験片を採取したら速やかに接触角の測定を行うことが望ましいが,保管をしておく

ことが必要なときには,例えば,図1に示すようなガラスの容器(1)内の2本の清浄なガラス棒の上に載置

する(2)。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図1 ガラス製のデシケータ 

注(1) 密閉性のよいガラス容器。例えば,ガラス製のデシケータ。デシケータは使用前に清浄にして

おく。乾燥剤やグリースなどは使用しない。 

(2) 保管期間すなわち接触角測定までの時間は,少ないほどよい。長くとも5時間以上は置かない。

表面汚染を防ぐため,採取後の試験片は清浄なピンセットなどにより取り扱う。 

6. 静滴法 

6.1 

試験原理 水平に置かれた試験片上に図2のように水滴を静置する。水滴の容量が4μl以下の場合

には,水滴の形状は球の一部とみなせるので,接触角θと水滴の形状との間には,次のような関係が成り

立つ。 

r

h

1

tan

2

=

θ

············································································· (1) 

ここに,rは,水滴の試験片に接している面の半径 (mm),hは,試験片表面から水滴の頂点までの高さ 

(mm) である。 

図2 水滴の形状からの接触角 

rとhの測定から式(1)によって接触角を求める。 

rとhから求める方法のほかに,図3に示した光学的読取装置を用い,その視野の中の水滴の像に,図2

に示す線ABを引き,線ABと試験片表面の間の角θ/2を直読し,これを2倍して接触角θを求めてもよい。

なお,図2のB点は水滴の頂点である。 

6.2 

試験装置と器具 測定装置は,図3に示した基本構成をもち,次の試料台,光源,光学的読取装置

から構成する。 

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図3 静滴法による接触角測定装置の基本構成 

a) 試料台 試験片を置く台。光源と光学的読取装置の光軸の中心に,試験片上に静置した水滴がくるよ

うに試料台の位置が上下,左右に可動な機構を備えていること。 

b) 光源 試験片上の水滴の像を,光学的読取装置の視野の中に作らせるための照明装置。緑のフィルタ

ーを備えていることが望ましい。 

c) 注射器 水滴を試験片上に形成させる器具。図4に示す。注射筒の容量は1ml以下であることが望ま

しい。 

図4 試験片上に水滴を形成させるための注射器 

6.3 

ぬれ性試験 

6.3.1 

試験条件 試験条件は,次による。 

a) 室温25±5℃,湿度50±10%とする。 

b) 水滴の容量は,1μl以上4μl以下とする。 

c) 測定時間は,水滴を試験片上に静置してから1分以内とする。 

d) 使用する水は,蒸留水とする。 

6.3.2 

試験操作手順 

a) 試験装置に定められた方法で,試験装置の校正を行う。 

b) 試験片を試料台に置く。 

c) 清浄なガラス製ビーカーに蒸留水を入れ,この蒸留水を注射器の中に採取する。 

d) 注射器内の蒸留水を,試料台上の試験片上に水滴として静置する。速やかに水滴のrとhを測定する

か,θ/2を読み取る。 

e) 測定場所は,図5に示すように最低5か所以上とする。 

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図5 試験片上に水滴を置く位置(例) 

6.3.3 

ぬれ性の表示 ぬれ性は,式(1)に基づいて算出した接触角θ,又は直読したθ/2から求めた接触角θ

についての5か所以上のデータの平均値と標準偏差値で表示する。 

7. 垂直板法 

7.1 

試験原理 試験方法の原理を示す模式図を,図6に示す。 

図6 垂直板法による試験方法の模式図 

図6は,天びんの支点からの距離lに試験片をつるし,試験片の下面が水面に接触したときのバランス

の状態を示している。このバランス状態は,式(2)により表される。 

mG

L

F

+

=

θ

σcos

1

····································································· (2) 

ここに, F1: 試験片が水面に接触したときに,試験片に働く力とバランス

させるのに必要な力。 (N) 

σ: 水の表面張力 (N/M) 

m: 試験片の質量 (kg) 

G: 重力の加速度 (m/s2) 

L: 試験片の周囲長(きっ水線長) (m) 

次に,試験片が水中に深さHだけ入った状態でのバランスを,図7に示す。 

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図7 試験片が水中に深さH入ってバランスしている状態 

このバランス状態は,式(3)によって表される。 

b

F

mG

L

F

+

=

θ

σcos

2

 ······························································· (3) 

ここに, F2: 試験片が水面から深さH入ったときに,試験片に働く力とバ

ランスさせるために必要な力 (N) 

Fb: 浮力 (N) 

あらかじめ,水面に接触しない状態で試験片をバランスさせておけば,試験片にかかる重力mGは無視

できる。そのときのF2をFとすると, 

b

F

L

F

=

θ

σcos

 ······································································· (4) 

となる。水面を上昇させると浮力が増すため,天びんに作用する力Fは小さくなる。逆に,水面を下降

させると浮力が小さくなる。水面を上昇させたときと下降させたときの,天びんに作用する力と水面の位

置との関係を,実測例により図8に示す。 

図8 垂直板法による実測の例 

図8の例から,前進接触角θaと後退接触角θrは, 

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L

FA

a

θ

cos

 ··········································································· (5) 

L

FR

r

θ

cos

 ············································································ (6) 

から求められる。 

ここに, 

FA: 試験片を空中から水に接触させた瞬間(浮力はゼロ)に,試験

片に働く力にバランスさせるために必要な力。水面上昇の記録
線の外挿線が深さゼロに相当するときに示す力と空中バラン
ス点の力の差から得られる。 (N) 

FR: 試験片を水中から引き出した瞬間(浮力はゼロ)に,試験片に

働く力にバランスさせるために必要な力。水面下降の記録線が
深さゼロに相当するときに示す力と空中バランス点の力の差
から得られる。 (N) 

天びんに作用する力FA及びFRから接触角を求めるには,水に接している試験片の周囲長(きっ水長)L

と水の表面張力σの値が必要である。測定時の水の温度と表面張力との関係を表1に示す。接触角を測定

するときの水の温度に対応する表面張力値を用いる。 

表1 水の表面張力と温度 

温度 (℃) 

表面張力 [mN/m {dyn/cm}] 

20 

72.8 

25 

72.0 

30 

71.2 

7.2 

試験装置と器具 試験装置の基本構成を,図9に示す。 

図9 垂直板法による試験装置の基本構成 

7.3 

ぬれ性試験 

7.3.1 

試験条件 試験条件は,次による。 

a) 室温25±5℃,湿度50±10%とする。 

b) 使用する水は,温度25±5℃の蒸留水とする。 

c) ステージの移動速度は遅いことが望ましい。例えば,1mm/分。 

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7.3.2 

試験操作手順 試験操作手順は,次による。 

a) 蒸留水を試験装置に附属している容器に入れる。 

b) 蒸留水の温度を測定する。 

c) ステージに水を入れた容器を載せる。 

d) 試験片を天びんにセットする。 

e) ステージを上方に移動して,試験片を水中に入れる。 

f) 

ある位置までステージを移動したら,ステージを下方に移動させる。 

g) このような操作の過程で試験片にかかる力を,例えば,X・Yレコーダーで記録する。 

h) 試験片を変えて,同じ条件で3回以上行う。 

7.3.3 

ぬれ性の表示 ぬれ性は,式(5)及び式(6),又は直接観察から求められる前進接触角θaと後退接触

角θrについての試料数3個以上のデータの平均値及び標準偏差値で表示する。 

8. 報告 測定結果は,次の項目について報告する。 

a) 基板ガラスの製造業者及び種別 

b) 試験片の形状,大きさ及び厚さ 

c) 試験条件(室温及び湿度)(垂直板法のときは,水の温度及びステージの移動速度を追記) 

d) 表面ぬれ性の計算値としての接触角の平均値と標準偏差値 

e) 試験方法の種類 

関連規格 JIS K 6768 ポリエチレン及びポリプロピレンフイルムのぬれ試験方法 

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原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

角 田 光 雄 

文化女子大学家政学部 

(委員) 

福 水 健 文 

通商産業省生活産業局 

大 島 清 治 

工業技術院標準部 

矢 澤 哲 夫 

工業技術院大阪工業技術研究所 

黒 木 勝 也 

財団法人日本規格協会 

竹 田 諭 司 

旭硝子株式会社中央研究所 

峰 松 健 一 

コーニングジャパン株式会社静岡テクニカルセンター 

竹 内   和 

株式会社島津製作所試験計測事業部 

赤 松 佳 則 

セントラル硝子株式会社硝子研究所 

中 川 恒 文 

日本板硝子株式会社研究技術企画部 

山 本   茂 

日本電気硝子株式会社技術部 

内 藤   孝 

株式会社日立製作所日立研究所エネルギー素子研究部 

近 江 成 明 

HOYA株式会社R&Dセンター開発研究所 

(オブザーバー) 

亀 井 信 一 

協和界面化学株式会社 

(事務局) 

吉 井 純 行 

社団法人ニューガラスフォーラム 

伊勢田   徹 

社団法人ニューガラスフォーラム