R 3107:2019
(1)
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 2
3 用語及び定義 ··················································································································· 2
4 記号及び添字 ··················································································································· 3
4.1 記号 ···························································································································· 3
4.2 添字 ···························································································································· 3
5 基礎式···························································································································· 4
5.1 概要 ···························································································································· 4
5.2 放射熱コンダクタンス ···································································································· 5
5.3 気体熱コンダクタンス ···································································································· 5
6 基礎的な材料物性値 ·········································································································· 6
6.1 放射率の値 ··················································································································· 6
6.2 気体の物性値 ················································································································ 6
6.3 気体熱コンダクタンス計算に用いる値················································································ 6
7 室外側・室内側の表面熱伝達率 ··························································································· 6
8 算定に用いる値 ················································································································ 7
8.1 板ガラスの熱伝導率の値 ································································································· 7
8.2 中空層の熱コンダクタンスの計算に用いる温度及び温度差の値 ··············································· 7
9 報告······························································································································· 7
附属書A(規定)放射率の決定方法及び気体の物性値 ································································· 8
附属書JA(規定)真空層の熱コンダクタンスの計算方法 ···························································· 10
附属書JB(規定)フィルム材で分割した中空層の熱コンダクタンスの計算方法 ······························ 12
附属書JC(参考)ガラス温度の収束計算結果の例 ····································································· 14
附属書JD(参考)JISと対応国際規格との対比表 ······································································ 16
附属書JE(参考)技術上重要な改正に関する新旧対照表 ···························································· 18
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(2)
まえがき
この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,板硝子協会(FGMAJ)
及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出
があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。
これによって,JIS R 3107:1998は改正され,この規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
日本工業規格 JIS
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建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法
Calculation of thermal transmittance of glazing
序文
この規格は,1994年に第1版として発行されたISO 10292を基とし,技術的内容を変更して作成した日
本工業規格である。
なお,この規格で側線又は点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格を変更している事項である。
変更の一覧表にその説明を付けて,附属書JDに示す。また,技術上重要な改正に関する旧規格との対照
表を附属書JEに示す。
1
適用範囲
この規格は,建築物の外皮に使用される板ガラス1)の中央部の熱貫流率(U値)の算定方法について規
定する。ただし,中央部の熱貫流率には,複層ガラスのスペーサー及び真空ガラスのエッジシールの熱橋
(ヒートブリッジ)並びに窓枠の熱橋によるエッジ効果を含まない2)。
この算定方法による板ガラスの中央部の熱貫流率によって,建築物の窓ガラスを通過する熱損失を評価
することができ,その他の部位を通過する熱損失とともに,暖冷房機器の容量を決定することができる。
さらに,この算定方法と同じ手順を用いて,次の事項を推定することができる。
a) 夏期の貫流による熱取得
b) ガラス表面の結露
c) 建築物のエネルギー消費量の計算における窓ガラスを通過する期間熱損失
d) 日射熱取得率の算定における吸収日射量の寄与
この算定方法は,精度を確保しながら,できるだけ簡易なものとなっている。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 10292:1994,Glass in building−Calculation of steady-state U values (thermal transmittance) of
multiple glazing(MOD)
なお,対応の程度を表す記号“MOD”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“修正している”
ことを示す。
注1) 板ガラスは,次のものをいう。
a) 主としてソーダ石灰ガラスを材料とし連続成形工程によって製造された板ガラス。型板ガ
ラスなどの拡散透過性のガラスは含まれる。
b) a)の表面に波長選択反射の光学薄膜を加工したもの。例えば,熱線反射ガラスなど日射の
波長域の反射ガラス,及び低放射ガラスなど常温熱放射の波長域の反射ガラス(以下,
Low-Eガラスという。)をいう。
c) a)又はb)を飛散防止,高強度化などの目的で加工したもの。例えば,合わせガラス,強化
2
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ガラス,倍強度ガラス及び耐熱強化ガラスをいう。
d) a)〜c)のガラス板を材料とする複層ガラス及び真空ガラス。ただし,中空層に格子部材な
どの内在物をもつものを除く。
注2) 窓全体の熱貫流率を計算する場合は,複層ガラスのスペーサー及び真空ガラスのエッジシール
の熱橋並びに窓枠の熱橋によるエッジ効果を考慮する(JIS A 2102-1 [1]参照)。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用
規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS R 3106 板ガラスの透過率・反射率・放射率の試験方法及び建築用板ガラスの日射熱取得率の算
定方法
3
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
熱貫流率,U値(thermal transmittance)
建築物の外皮の窓において,室外温度と室内温度との差1 K当たりの,1枚ガラス板,又は複層ガラス
及び真空ガラスのエッジの効果を含まないガラス中央部を貫流する熱流束。W/(m2・K)の単位で表す。
3.2
熱コンダクタンス(thermal conductance)
板ガラスの両表面間,又は複層ガラスの中空層及び真空ガラスの真空層に接する2面間の温度差1 K当
たりの熱流束。
3.3
熱抵抗(thermal resistance)
熱コンダクタンスの逆数。板ガラスの両表面の間,又は複層ガラスの中空層及び真空ガラスの真空層に
接する2面の間に生じる熱流束1 W/m2当たりの温度差。
3.4
表面熱伝達率(surface heat transfer coefficient)
板ガラスの室外側の表面温度と室外温度との差,又は板ガラスの室内側の表面温度と室内温度との差1
K当たりの熱流束。
注記 この定義における理論モデルでは,ガラス表面と放射熱を交換する周囲の物体,天空などの温
度と空気温度とは,等しいものとする。
3.5
修正放射率(corrected emissivity)
複層ガラスの中空層及び真空ガラスの真空層に接する2面間の熱放射の交換,又は建築物の外皮の窓に
おける板ガラスの室外側若しくは室内側の表面と周囲の物体,天空などとの間の熱放射の交換におけるガ
ラス板表面の放射率。
注記 板ガラス及び光学薄膜を加工した板ガラスの表面では,射出角度によって放射率の値が異なる。
一般には,周囲物体との熱放射の交換の計算では半球放射率(hemispherical emissivity)の値を
用い,複層ガラスの中空層に接する2面間の熱放射の交換では有効放射率(effective emissivity)
3
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の値を用いる。この規格では,両者を区別することなく,垂直放射率(normal emissivity)の測
定値に修正係数を掛けて換算した値を用い,これを修正放射率という。
4
記号及び添字
4.1
記号
この規格で用いる数量の記号及び単位は,表1による。
表1−記号及び単位
記号
量
単位
A
中空層の傾斜角及び熱流方向によって決まる数値
−
c
中空層の気体の定圧比熱
J/(kg・K)
d
ガラス板の厚さ又は合わせガラスの中間膜の厚さ
m
Gr
グラスホフ数
−
h
熱コンダクタンス又は表面熱伝達率
W/(m2・K)
N
中空層の数
−
Nu
ヌセルト数
−
Pr
プラントル数
−
s
中空層の厚さ
m
T
絶対温度
K
∆T
温度差
K
U
熱貫流率
W/(m2・K)
ε
放射率
−
θ
温度
℃
λ
熱伝導率
W/(m・K)
μ
中空層の気体の粘度
N・s/m2=kg/(m・s)
ρ
中空層の気体の密度
kg/m3
σ
ステファン・ボルツマン定数(=5.67×10−8)
W/(m2・K4)
C
対流効果係数
−
K
構成するガラス板及び合わせガラスの中間膜の枚数
−
n
中空層の傾斜角及び熱流方向によって決まる数値
−
F
中空層のそれぞれの気体の容積割合
−
r
半径
m
l
間隔
m
α
2枚のガラス表面の適応係数
−
γ
比熱比
−
cp
気体の定圧比熱
J/(kg・K)
cv
気体の定積比熱
J/(kg・K)
R
気体定数(=8.313)
J/(mol・K)
P
気体の絶対圧力
Pa
M
気体のモル質量
kg/mol
q
熱流束
W/m2
J
放射熱流束
W/m2
4.2
添字
添字は,表2による。
4
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表2−添字
記号
意味
g
中空層の気体
ext
室外側
int
室内側
m
平均
n
垂直
r
放射
s
中空層
t
合計
1, 2, ...
1番目,2番目,...
k
構成するガラス板及び合わせガラスの中間膜の番号
c
修正
v
真空層(Cvは除く)
p
ピラー列(Cpは除く)
a
真空層内の気体
f
樹脂製フィルム
5
基礎式
5.1
概要
板ガラスの中央部の熱貫流率Uの計算は,式(1)による。
int
t
ext
1
1
1
1
h
h
h
U
+
+
=
···································································· (1)
ここに, hext: 室外側の表面熱伝達率[W/(m2・K)]
hint: 室内側の表面熱伝達率[W/(m2・K)]
ht: 板ガラスの熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
板ガラスの熱コンダクタンスhtは,式(2)による。右辺の第1項は,中空層の熱抵抗であって,1枚のガ
ラス板ではこれを0とする。第2項は,ガラス板及び合わせガラスの中間膜の熱伝導抵抗である。
∑
∑
+
=
K
k
k
N
λ
d
h
h
s
t
1
1
···································································· (2)
ここに,
hs: 中空層の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
N: 中空層の数(−)
K: 構成するガラス板の枚数(−)
合わせガラスでは,それを構成するガラス板及び中間膜の枚
数を含める。
dk: 構成するガラス板の厚さ又は合わせガラスの中間膜の厚さ
(m)
λk: 構成するガラス板の熱伝導率又は合わせガラスの中間膜の熱
伝導率[W/(m・K)]
中空層の熱コンダクタンスhsは,式(3)による。
hs=hr+hg ················································································· (3)
ここに,
hr: 放射熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
hg: 気体の伝導及び対流による熱コンダクタンス(気体熱コンダ
クタンス)[W/(m2・K)]
中空層が真空層の場合は附属書JAによって真空層の熱コンダクタンスhvを,樹脂製フィルムを含む中
空層の場合は附属書JBによって熱コンダクタンスhsを求める。中空層が真空層の場合は,hs=hvとする。
5
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5.2
放射熱コンダクタンス
中空層の放射熱コンダクタンスhrは,式(4)による。
3
m
1
2
c,
1
c,
r
1
1
1
4
T
ε
ε
σ
h
−
+
=
−
····················································· (4)
ここに,
σ: ステファン・ボルツマン定数=5.67×10−8[W/(m2・K4)]
εc,1,ε c,2: 中空層に接する二つのガラス面の修正放射率(−)(6.1参
照)
Tm: 中空層に接する二つのガラス面の絶対温度の平均値(K)
板ガラス温度をJIS R 3106の9.4(ガラス板の間の中空層の熱コンダクタンス)によって求める場合に
は,2枚のガラス板の温度の平均値を中空層に接する二つのガラス面の絶対温度の平均値Tmとする。
注記 中空層の気体が常温熱放射の波長域5〜50 μmに吸収帯をもつときは,hrの値が式(4)で計算し
た値より小さくなる。しかし,一般的な複層ガラスの中空層の気体の吸収率は,小さいことが
多いので,このような場合にも式(4)を用いる。
5.3
気体熱コンダクタンス
中空層の気体熱コンダクタンスhgは,式(5)による。
s
λ
C
h =
g
················································································· (5)
ここに,
s: 中空層の厚さ(m)
λ: 中空層の気体の熱伝導率[W/(m・K)]
C: 対流効果係数(−)
対流効果係数Cは,中空層の気体のヌセルト数Nuの大きさに応じて,次に示す数値とする。
Nu≦1のとき C=1
Nu>1のとき C=Nu
注記 C=1の場合は,式(5)は対流がない状態の熱伝導による熱コンダクタンスとなる。
中空層の気体のヌセルト数Nuの計算は,式(6)による。
Nu=A・(Gr・Pr)n ········································································· (6)
ここに, A,n: 中空層の傾斜角及び熱流方向によって決まる数値(−)
Gr: グラスホフ数(−)[式(7)によって求める。]
Pr: プラントル数(−)[式(8)によって求める。]
2
m
2
3Δ
81
.9
μ
T
ρ
T
s
Gr
′
=
·································································· (7)
λ
c
μ
Pr =
················································································· (8)
ここに,
∆T: 中空層に接する2面間の温度差(K)
ρ: 中空層の気体の密度(kg/m3)
μ: 中空層の気体の粘度[N・s/m2=kg/(m・s)]
c: 中空層の気体の定圧比熱[J/(kg・K)]
T'm: 中空層の気体の平均温度(K)
板ガラス温度をJIS R 3106の9.4によって求める場合には,2枚のガラス板間の温度差を中空層に接す
る2面間の温度差ΔTとする。また,2枚のガラス板の温度の平均値を中空層の気体の平均温度T'mとする。
6
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6
基礎的な材料物性値
6.1
放射率の値
式(4)によって中空層の放射熱コンダクタンスhrを計算するための修正放射率εc,1及びε c,2の値は,A.2に
よる。
6.2
気体の物性値
気体熱コンダクタンスを求める式(5),グラスホフ数Grを求める式(7)及びプラントル数Prを求める式(8)
において,中空層の気体の密度ρ,粘度μ,熱伝導率λ及び定圧比熱cの値は,表A.2による。
なお,混合気体の物性値は,式(9)〜式(12)によって計算する。
ρ=F1・ρ1+F2・ρ2+… ································································· (9)
μ=F1・μ1+F2・μ2+… ······························································· (10)
λ=F1・λ1+F2・λ2+… ·································································(11)
c=F1・c1+F2・c2+… ································································ (12)
ここに, ρ1,ρ2,…: それぞれの気体の密度(kg/m3)
μ1,μ2,…: それぞれの気体の粘度[N・s/m2=kg/(m・s)]
λ1,λ2,…: それぞれの気体の熱伝導率[W/(m・K)]
c1,c2,…: それぞれの気体の定圧比熱[J/(kg・K)]
F1,F2,…: それぞれの気体の容積割合(−)
表A.2に規定しない気体の物性値は,それぞれの気体の密度,粘度,熱伝導率及び定圧比熱の値を用い
る。
6.3
気体熱コンダクタンス計算に用いる値
ヌセルト数Nuを計算する式(6)において,A及びnは,次による。
a) 中空層が垂直で熱流方向が水平の場合
A=0.035,n=0.38
b) 中空層が水平で熱流方向が上向きの場合
A=0.16,n=0.28
c) 中空層が45°で熱流方向が上向きの場合
A=0.10,n=0.31
熱流方向が下向きのときは,Nu=1とする。
7
室外側・室内側の表面熱伝達率
室外側・室内側の表面熱伝達率は,式(13)及び式(14)による。
hext=4.9・εext+16.3 ···································································· (13)
hint=5.4・εint+4.1 ······································································ (14)
ここに, hext: 室外側表面熱伝達率[W/(m2・K)]
hint: 室内側表面熱伝達率[W/(m2・K)]
εext: 室外側ガラス表面の修正放射率(−)
εint: 室内側ガラス表面の修正放射率(−)
ただし,常温熱放射の波長域で高い反射率をもつ薄膜加工品の修正放
射率の値は,薄膜面上の結露がない場合に限って用いる。
式(13)及び式(14)は,建築物の外皮の窓など垂直位置のガラスに限って適用する。垂直以外の傾斜角にお
けるU値を求めるときには,式(13)及び式(14)による表面熱伝達率ではなく,それぞれ適切なhext及びhint
の値を用いなければならない。
7
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8
算定に用いる値
8.1
板ガラスの熱伝導率の値
式(1)において,板ガラスの熱伝導率λ=1 W/(m・K)とする。
8.2
中空層の熱コンダクタンスの計算に用いる温度及び温度差の値
複層ガラスの中空層及び真空ガラスの真空層の熱コンダクタンスの計算に用いる温度及び温度差は,伝
熱理論式の数値解によって求める。一般的解法として,ガラス板の温度は,室外温度と室内温度との間の
伝熱系に基づく理論式と,この伝熱系における各部の熱抵抗をガラス板温度の関数とする理論式とを連立
して,反復循環収束による数値計算によって求める。このとき,室外温度は273 K(=0 ℃),室内温度は
293 K(=20 ℃)とする。反復循環収束による数値計算結果の例を,附属書JCに示す。
注記 ガラス板の温度の値を求める理論式は,JIS R 3106を参照。
なお,2枚のガラス板から成る複層ガラス及び真空ガラスの場合,中空層の熱コンダクタンスの計算に
用いる温度及び温度差に,次の値を用いてもよい。
− 中空層に接する二つのガラス面の平均温度
Tm=283 K (=10 ℃)
− 中空層の気体の平均温度
T'm=283 K (=10 ℃)
− 中空層に接する二つのガラス面間の温度差
∆T=15 K (=15 ℃)
9
報告
報告には,次のa)を,四捨五入によって有効数字2桁に丸めた数値で記載する。表A.2に規定しない気
体の物性値を用いる場合には,b)の事項を加える。式(13)及び式(14)によらない表面熱伝達率の値を用いる
場合には,c)の事項を加える。また,2枚のガラス板から成る複層ガラス及び真空ガラスについて,反復
循環収束による温度計算を行わずに8.2に規定する温度及び温度差を用いて中空層の熱コンダクタンスを
計算する場合には,その旨を付記する。
なお,受渡当事者間の協定によって,板ガラスの構成を表す情報としてd)〜f)の事項を加えてもよい。
a) 熱貫流率
b) 気体の密度,粘度,熱伝導率及び定圧比熱
c) 室外側・室内側の表面熱伝達率
d) ガラス板の厚さ及び修正放射率
e) 中空層の厚さ及び混合気体の容積割合
f)
合わせガラスを含む場合には中間膜の厚さ及び熱伝導率
8
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附属書A
(規定)
放射率の決定方法及び気体の物性値
A.1 垂直放射率の決定方法
垂直放射率の算定は,光学薄膜を施した面ではJIS R 3106の附属書JB(常温熱放射の波長域における
分光反射率及び分光透過率の測定方法並びに垂直放射率の算定方法)による。光学薄膜を施していない板
ガラスの表面では,0.89とする。
A.2 修正放射率の決定方法
修正放射率は,垂直放射率に表A.1に規定する係数を乗じた値とする。光学薄膜を施していない板ガラ
スの表面では,0.837とする。
表A.1−修正放射率を垂直放射率から計算するための係数
垂直放射率εn
係数εc/εn
0.03
1.22
0.05
1.18
0.1
1.14
0.2
1.10
0.3
1.06
0.4
1.03
0.5
1.00
0.6
0.98
0.7
0.96
0.8
0.95
0.89
0.94
表に示すεn以外の値における係数εc/εnは,刻み間を
直線とした内挿又は外挿によって求める。
A.3 気体の物性値
中空層に封入する気体の物性値は,表A.2による。
9
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表A.2−気体の物性値
気体
温度 θ
℃
密度 ρ
kg/m3
粘度 μ
10−5 kg/(m・s)
熱伝導率 λ
10−2 W/(m・K)
定圧比熱 c
103 J/(kg・K)
空気
−10
1.326
1.661
2.336
1.008
0
1.277
1.711
2.416
+10
1.232
1.761
2.496
+20
1.189
1.811
2.576
アルゴン
−10
1.829
2.038
1.584
0.519
0
1.762
2.101
1.634
+10
1.699
2.164
1.684
+20
1.640
2.228
1.734
六ふっ化硫黄
−10
6.844
1.383
1.119
0.614
0
6.602
1.421
1.197
+10
6.360
1.459
1.275
+20
6.118
1.497
1.354
クリプトン
−10
3.832
2.260
0.842
0.245
0
3.690
2.330
0.870
+10
3.560
2.400
0.900
+20
3.430
2.470
0.926
ヘリウム[2]
−10
0.185
1.823
14.248
5.193
0
0.178
1.870
14.620
+10
0.172
1.916
14.987
+20
0.166
1.962
15.350
ネオン[3]
−10
0.934
2.868
4.432
1.030
0
0.900
2.939
4.541
+10
0.868
3.008
4.649
+20
0.838
3.077
4.756
キセノン[4]
−10
6.121
2.078
0.494
0.161
0
5.897
2.152
0.512
+10
5.689
2.226
0.529
+20
5.495
2.299
0.546
表に示す以外の温度における物性値は,刻み間を直線とした内挿又は外挿によって求める。
10
R 3107:2019
附属書JA
(規定)
真空層の熱コンダクタンスの計算方法
JA.1 一般
この附属書は,真空ガラスの真空層の熱コンダクタンスの計算方法について規定する[5]。
JA.2 計算方法
中空層が真空層の場合の熱コンダクタンスは,式(JA.1)による。
hv=hp+hr+ha ······································································· (JA.1)
ここに,
hv: 真空層の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
hp: ピラー列1)の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
hr: 放射の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
ha: 真空層内の気体の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
注1) ピラー列は,2枚のガラス板の間の真空層を大気圧に抵抗して維持するようにガラス板の全面
に配置する小さなスペーサー部材(以下,ピラーという)の配列をいう。
ピラー列の熱コンダクタンスhpは,式(JA.2)〜式(JA.4)による。
pcond
spreading
p
1
1
1
h
h
h
+
=
····························································· (JA.2)
2
p
p
g
spreading
2
l
r
λ
h
=
································································· (JA.3)
2
p
2
p
p
p
pcond
l
r
π
d
λ
h
=
··································································· (JA.4)
ここに,
hspreading: ガラス中の広がり抵抗2)による熱コンダクタンス
[W/(m2・K)]
hpcond: ピラーの熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
rp,dp,lp: ピラーの半径,厚さ,間隔3)(m)
λg,λp: ガラス及びピラー材料の熱伝導率[W/(m・K)]
注2) 広がり抵抗は,ガラスとピラー列との接触部分に関連する熱抵抗をいう。
注3) ピラーの間隔は,ピラー配列の中の隣り合うピラーの中心間距離とする。
放射による熱コンダクタンスhrは,式(JA.5)による。
3
m
1
2
c,
1
c,
r
1
1
1
4
T
ε
ε
σ
h
−
+
=
−
················································· (JA.5)
ここに,
σ: ステファン・ボルツマン定数=5.67×10−8 W/(m2・K4)
εc,1,ε c,2: 真空層に接する二つのガラス面の修正放射率(−)(6.1
参照)
Tm: 真空層に接する二つのガラス面の絶対温度の平均値(K)
真空層内の気体の熱コンダクタンスhaは,式(JA.6)による。
11
R 3107:2019
m
a
π
8
1
1
T
M
P
R
γ
γ
α
h
′
−
+
=
······················································ (JA.6)
ここに,
α: 2枚のガラス表面の適応係数4)(−)
γ: 比熱比(=cp/cv)
cp: 気体の定圧比熱[J/(kg・K)]
cv: 気体の定積比熱[J/(kg・K)]
R: 気体定数[=8.314 J/(mol・K)]
P: 気体の絶対圧力(Pa)
M: 気体のモル質量(kg/mol)
T'm: 気体の平均温度(K)
注4) 適応係数は,気体分子と固体との熱の授受における効率を表す係数をいう[6]。
真空層内の熱コンダクタンスhaは,概算で0.4Pとなる5) [7]。詳細な情報がない場合には,この値を使用
してもよい。
注5) 真空層内の気体が空気の場合,適応係数α=0.33,定圧比熱Cp=1 008[J/(kg・K)],定積比熱Cv
=720[J/(kg・K)],モル質量M=0.029 (kg/mol),気体の温度T'm=283 [K]によって,式(JA.6)は,
ha=0.4P[W/(m2・K)]となる。
12
R 3107:2019
附属書JB
(規定)
フィルム材で分割した中空層の熱コンダクタンスの計算方法
JB.1 一般
この附属書は,複層ガラスの中空層をガラス板ではない1枚の樹脂製フィルム材で2分割した中空層の
熱コンダクタンスの計算方法について規定する。ここでは,フィルム材の常温熱放射の波長域(以下,長
波放射という。)の透過を考慮する。
なお,この附属書の計算方法を拡張することで,2枚以上のフィルム材によって中空層を3分割以上に
する場合にも適用することができる。
注記 この計算方法は,ISO 15099に規定する多層ガラスのエネルギーバランスの解法を参照[8]。
JB.2 計算方法
2枚のガラス板に挟まれた中空層が1枚のフィルム材で仕切られている場合,その二つの中空層の熱コ
ンダクタンスは,式(JB.1)及び式(JB.2)による(図JB.1参照)。
1
g
f
1,s
1,s
T
T
q
h
−
=
········································································ (JB.1)
f
2
g
2,s
2,s
T
T
q
h
−
=
······································································· (JB.2)
ここに, hs,1: 中空層1の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
hs,2: 中空層2の熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
qs,1: 中空層1の熱流束(W/m2)
qs,2: 中空層2の熱流束(W/m2)
Tg1: ガラス1の絶対温度(K)
Tf: フィルム材の絶対温度(K)
Tg2: ガラス2の絶対温度(K)
二つの中空層の熱流束は,気体の伝導及び対流の成分並びに放射成分を合計し,式(JB.3)及び式(JB.4)に
よる。
qs,1=hg,1・(Tf−Tg1)+J2−J1 ························································ (JB.3)
qs,2=hg,2・(Tg2−Tf)+J4−J3 ························································ (JB.4)
ここに, hg,1: 中空層1の気体熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
hg,2: 中空層2の気体熱コンダクタンス[W/(m2・K)]
J1: ガラス1からフィルムへの放射熱流束(W/m2)
J2: フィルムからガラス1への放射熱流束(W/m2)
J3: フィルムからガラス2への放射熱流束(W/m2)
J4: ガラス2からフィルムへの放射熱流束(W/m2)
中空層1及び中空層2の気体熱コンダクタンスは,5.3による。
ガラスからフィルム又はフィルムからガラスに向けて射出される放射熱流束は,フィルムの長波放射の
透過成分を考慮し,式(JB.5)〜式(JB.8)による。
J1=ε1・σ・Tg14+ρ1・J2 ································································ (JB.5)
J2=ε2・σ・Tf4+τ2・J4+ρ2・J1 ························································ (JB.6)
J3=ε3・σ・Tf4+τ3・J1+ρ3・J4 ························································ (JB.7)
13
R 3107:2019
J4=ε4・σ・Tg24+ρ4・J3 ································································ (JB.8)
ここに,
εi: 面iの修正放射率(−)
σ: ステファン・ボルツマン定数[=5.67×10−8 W/(m2・K4)]
ρi: 面iの長波放射の反射率(−)
τi: 面iの長波放射の透過率(−)
注記1 長波放射の反射率及び透過率は,JIS R 3106のJB.2.2(垂直放射率の計算)及びJB.3.2(透
過率の計算)による常温熱放射の波長域における反射率及び透過率をいう。
図JB.1−フィルム材で分割した中空層の熱伝達モデル
放射熱流束J1〜J4は,式(JB.5)〜式(JB.8)を連立方程式とし,式(JB.9)によって求めることができる。
−
−
−
−
−
−
=
−
4
2
g
4
4
f
3
4
f
2
4
1
g
1
1
4
3
3
2
2
1
4
3
2
1
1
0
0
1
0
0
1
0
0
1
T
σ
ε
T
σ
ε
T
σ
ε
T
σ
ε
ρ
ρ
τ
τ
ρ
ρ
J
J
J
J
······························ (JB.9)
ここで,式(JB.9)中の温度Tg1,Tf及びTg2は未知数であるので,8.2と同じく,反復循環収束による数値
計算を行う。
なお,フィルム材を挟む二つの中空層の熱流束には,式(JB.10)に示す熱平衡条件を加える。
qs,1−qs,2=0 ··········································································(JB.10)
注記2 式(JB.10)は,熱貫流率の計算のために板ガラスが受ける日射量をゼロとした場合のものであ
る。JIS R 3106に従って日射熱取得率を計算する場合は,式(JB.10)の代わりに,式(JB.11)を
用いる。
qs,1−qs,2=I・αe,f ····································································· (JB.11)
ここに,
I: 日射強度(W/m2)
αe,f: フィルム材の日射吸収率(−)
Tf
Tg1
Tg2
J1
J2
J3
J4
qs,1
qs,2
ρ1
ρ2
ρ3
ρ4
τ2
τ3
ガラス1
ガラス2
室外
室内
中空層1
中空層2
フィルム材
面1
面2 面3
面4
14
R 3107:2019
附属書JC
(参考)
ガラス温度の収束計算結果の例
JC.1 一般
この附属書では,8.2の中空層の熱コンダクタンスの計算に用いるガラス板及び中空層の温度の反復循環
収束による数値計算結果の例を示す。
JC.2 2枚のガラス板から成る複層ガラスの場合
ガラス構成は,室外側から順にLow-Eガラス3ミリ+空気層12ミリ+透明フロート板ガラス3ミリと
する。Low-EガラスのLow-E膜は,中空層側に配置されるとし,垂直放射率0.11(修正放射率0.125)と
する。室外側・室内側の表面熱伝達率及び温度は,箇条7及び箇条8による。計算結果の例を表JC.1に示
す。
表JC.1−2枚のガラス板から成る複層ガラスの数値計算結果の例
厚さ
mm
温度
℃
熱伝達率又は熱コンダクタンス
W/(m2・K)
室外
−
0.00
20.401
Low-Eガラス3ミリ
3.00
1.83
333.333
中空層12ミリ
12.00
8.75
2.691
透明フロート板ガラス3ミリ
3.00
15.68
333.333
室内
−
20.00
8.620
JC.3 3枚のガラス板から成る複層ガラスの場合
ガラス構成は,室外側から順にLow-Eガラス3ミリ+アルゴンガス層9ミリ+透明フロート板ガラス3
ミリ+アルゴンガス層9ミリ+Low-Eガラス3ミリとする。Low-EガラスのLow-E膜は,中空層側に配置
するとし,垂直放射率0.11(修正放射率0.125)とする。アルゴンガス層は,アルゴンガス85 %と空気15 %
との混合気体とする。室外側・室内側の表面熱伝達率及び温度は,箇条7及び箇条8による。計算結果の
例を表JC.2に示す。
表JC.2−3枚のガラス板から成る複層ガラスの数値計算結果の例
厚さ
mm
温度
℃
熱伝達率又は熱コンダクタンス
W/(m2・K)
室外
−
0.00
20.401
Low-Eガラス3ミリ
3.00
1.06
333.333
アルゴンガス層9ミリ
9.00
5.25
2.574
透明フロート板ガラス3ミリ
3.00
9.44
333.333
アルゴンガス層9ミリ
9.00
13.47
2.678
Low-Eガラス3ミリ
3.00
17.50
333.333
室内
−
20.00
8.620
15
R 3107:2019
参考文献 [1] JIS A 2102-1 窓及びドアの熱性能−熱貫流率の計算−第1部:一般
[2] NIST (National Institute of Standards and Technology) -Chemistry WEB Book
McCarty, R.D.; Arp, V.D., A New Wide Range Equation of State for Helium., Adv. Cryo. Eng.,
1990, 35, 1465-1475.
Hands, B.A.; Arp, V.D., A Correlation of Thermal Conductivity Data for Helium, Cryogenics, 1981,
21, 12, 697-703.
Arp, V.D.; McCarty, R.D.; Friend, D.G., Thermophysical Properties of Helium-4 from 0.8 to 1500
K with Pressures to 2000 MPa, Technical Note 1334, National Institute of Standards and
Technology, Boulder, CO, 1998, 0.
[3] NIST (National Institute of Standards and Technology)-Chemistry WEB Book, Katti, R.S.;
Jacobsen, R.T.; Stewart, R.B.; Jahangiri, M.,Thermodynamic Properties for Neon for Temperatures
from the Triple Point to 700 K at Pressures to 700 MPa, Adv. Cryo. Eng., 1986, 31, 1189-1197.
[4] EN 673:2011,Glass in building−Determination of thermal transmittance (U value)−Calculation
method
[5] ISO/FDIS 19916-1,Glass in building−Vacuum insulating glass−Part 1: Basic specification of
products and evaluation methods for thermal and sound insulating performance
[6] 富永五郎,辻泰:真空技術講座 I 真空工学の基礎,日刊工業新聞社,1964
[7] R. E. Collins, A. C. Fischer-Cripps and J. Z. Tang, Solar Energy, Vol. 49, No.5, pp.333-359, 1992
[8] ISO 15099:2003,Thermal performance of windows, doors and shading devices−Detailed
calculations
16
R 3107:2019
附属書JD
(参考)
JISと対応国際規格との対比表
JIS R 3107:2019 建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法
ISO 10292:1994,Glass in building−Calculation of steady-state U values (thermal
transmittance) of multiple glazing
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異
の箇条ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
3 用語及び
定義
5項目を規定。
2
熱貫流率だけ定義。
追加
用語を追加。
JISとして必要な用語を追加した。
4 記号及び
添字
32の記号,15の添字を規定。
3
24の記号,10の添字を規定。 追加
記号及び添字を追加。
附属書の追加に伴う記号及び添字
を追加した。
7 室外側・
室内側の表
面熱伝達率
hext=4.9・εext+16.3[W/(m2・
K)]
hint=5.4・εint+4.1[W/(m2・K)]
薄膜なしのガラス面の場合,
hext=20.4[W/(m2・K)]
hint=8.6[W/(m2・K)]
6
he=23[W/(m2・K)]
hi=4.4ε/0.837+3.6[W/(m2・K)]
薄膜なしのガラス面の場合,
he=23[W/(m2・K)]
hi=8[W/(m2・K)]
変更
JISとISO規格とで異な
る値を採用。
旧JISからの変更は市場に混乱を
招くおそれがあり,旧JISの値を
踏襲した。
なお,傾斜窓における表面熱伝達
率は,ISO規格にも規定されてお
らず,これをISO規格及びJISに
導入することは,今後の課題であ
る。
8 算定に用
いる値
8.2 中空層
の熱コンダ
クタンスの
計算に用い
る温度及び
温度差の値
中空層及び真空層の熱コン
ダクタンスの計算に用いる
温度及び温度差は,伝熱理論
式の数値解によって求める。
この場合,室外温度273 K,
室内温度293 Kとする。
ただし,2枚のガラスから成
る複層ガラス及び真空ガラ
スの場合は,規定値を用いて
もよい。
7
中空層の熱コンダクタンス
の計算に用いる温度及び温
度差は,2枚のガラスから成
る複層ガラスの場合は,JIS
と同じ規定値を用いる。
3枚以上のガラスから成る複
層ガラスの場合は,伝熱理論
式の数値解によって求める。
ただし,この場合の境界条件
は定められていない。
変更
JISでは,複層ガラス及
び真空ガラスのガラス板
の枚数によらず,熱コン
ダクタンスの計算に用い
るガラス温度及び温度差
を反復循環収束による数
値計算で求めることを標
準とした。また,ISO規
格では,境界条件が与え
られていないが,JISに
はこれを記載した。
JISでは,複層ガラスの中空層及
び真空ガラスの真空層の熱コンダ
クタンスの計算に一貫性をもたせ
るために,ガラス板の枚数によら
ず,反復循環収束による温度計算
を標準とした。また,市場に混乱
を生じさせないために,旧JISを
踏襲して境界条件を規定した。
3
R
3
1
0
7
:
2
0
1
9
17
R 3107:2019
(I)JISの規定
(II)
国際
規格
番号
(III)国際規格の規定
(IV)JISと国際規格との技術的差異
の箇条ごとの評価及びその内容
(V)JISと国際規格との技術的差
異の理由及び今後の対策
箇条番号
及び題名
内容
箇条
番号
内容
箇条ごと
の評価
技術的差異の内容
9 報告
U値は四捨五入によって有効
数字2桁に丸めた数値で記
載。
その他,受渡当事者間の協定
により報告する内容を規定。
7
U値は小数1桁に丸めた数値
で記載。
追加
ISO規格では,U値以外
の報告については規定さ
れていない。
JISは,国内市場の実態に即して
必要な規定内容を追加した。
附属書A
(規定)
垂直放射率の算定方法はJIS
R 3106の附属書JBに記載。
Annex
A
A.1
垂直放射率の算定方法を規
定。
削除
JISでは垂直放射率の算
定方法は,JIS R 3106の
附属書JBを引用し,本文
には記載していない。
JISでは市場に混乱を生じさせな
いために,旧JISを踏襲して,垂
直放射率の算定方法はJIS R 3106
に規定した。
A.3 気体の
物性値
7種の気体の物性値を規定。
A.3
4種の気体の物性値を規定。 追加
JISでは3種の気体を追
加した。
JISでは,国内の現状に即して必
要な気体及びEN 673に記載の気
体の物性値を追加した。
附属書JA
(規定)
真空層の熱コンダクタンス
の計算方法を規定。
−
−
追加
ISO規格では規定してい
ない。
JISでは,国内市場に対応するた
めに附属書を追加した。
附属書JB
(規定)
フィルム材で分割した中空
層の熱コンダクタンスの計
算方法を規定。
−
−
追加
ISO規格では規定してい
ない。
JISでは,国内市場に対応するた
めに附属書を追加した。
附属書JC
(参考)
中空層の熱コンダクタンス
の計算に用いるガラス板及
び中空層の温度の反復循環
収束による数値計算結果の
例を参考として記載。
−
−
追加
ISO規格では記載がな
い。
JISでは,国内の必要性を勘案し
て附属書を追加した。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価:ISO 10292:1994,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 削除 ················ 国際規格の規定項目又は規定内容を削除している。
− 追加 ················ 国際規格にない規定項目又は規定内容を追加している。
− 変更 ················ 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD ··············· 国際規格を修正している。
3
R
3
1
0
7
:
2
0
1
9
18
R 3107:2019
附属書JE
(参考)
技術上重要な改正に関する新旧対照表
現行規格(JIS R 3107:2019)
旧規格(JIS R 3107:1998)
改正理由
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
及び題名
内容
規格の名称 建築用板ガラスの熱貫流率の算定方法
Calculation of thermal transmittance of
glazing
規格の名
称
板ガラス類の熱抵抗及び建築における熱
貫流率の算定方法
Evaluation on thermal resistance of flat
glasses and thermal transmittance of glazing
適用範囲の変更に合わせて,規格の名称も変更し
た。
規格の構成
−
規格の構
成
−
可能な限り対応国際規格に整合させた。ただし,旧
規格から計算式の変更はない。
1 適用範囲 この規格は,建築物の外皮に使用される
板ガラスの中央部の熱貫流率(U値)の
算定方法について規定する。
1. 適用範
囲
この規格は,板ガラス類の熱抵抗及び板
ガラス類を建築物の外壁部の窓に用いた
場合の熱計算に必要となる熱貫流率(U
値)の算定方法について規定する。
近年は他のJIS,省エネルギー基準,各種制度など
において,熱貫流率だけが引用されている状況を考
慮し,対応国際規格に整合させて,熱抵抗に関する
記載を削除した。
8.2 中空層
の熱コンダ
クタンスの
計算に用い
る温度及び
温度差の値
複層ガラス及び真空ガラスの中空層の熱
コンダクタンスの計算に用いる温度及び
温度差は,室外温度及び室内温度を境界
条件とする伝熱理論式の反復循環収束に
よる数値計算によって求める。
なお,2枚のガラス板から成る複層ガラス
及び真空ガラスの場合,中空層の熱コン
ダクタンスの計算に用いる温度及び温度
差に既定値を用いてもよい。
5.4.1 中空
層の熱コ
ンダクタ
ンスの計
算に用い
る温度及
び温度差
の値
2枚のガラス板から成る複層ガラスの場
合,中空層の熱コンダクタンスの計算に
用いる温度及び温度差に既定値を用い
る。
3枚以上のガラス板から成る複層ガラス
では,室外温度及び室内温度を境界条件
とする伝熱理論式の反復循環収束による
数値計算で求める。
複層ガラス及び真空ガラスの構成によって計算方
法の取扱いが異なることは混乱を招くこと,2枚の
ガラス板から成る複層ガラス及び真空ガラスでも
実際には仕様によって温度分布が異なること,近年
はコンピュータプログラムによって収束計算が容
易に実施可能であることなどの理由によって,複層
ガラス及び真空ガラスを構成するガラス板の枚数
にかかわらず,温度収束計算を実施することを標準
の計算手順とした。
ただし,数値計算に不慣れな計算実施者のために,
2枚のガラス板から成る複層ガラス及び真空ガラス
のための標準温度を補助的に用いてもよいことと
した。
3
R
3
1
0
7
:
2
0
1
9
19
R 3107:2019
現行規格(JIS R 3107:2019)
旧規格(JIS R 3107:1998)
改正理由
箇条番号
及び題名
内容
箇条番号
及び題名
内容
附属書A
(規定)
放射率の決
定方法及び
気体の物性
値
表A.2に空気,アルゴン,六ふっ化硫黄,
クリプトン,ヘリウム,ネオン及びキセ
ノンの物性値を示す。
5.3.2 気体
の物性値
付表2に空気,アルゴン,SF6及びクリプ
トンの物性値を示す。
旧規格に記載の気体に加えて,ヘリウム,ネオン及
びキセノンの物性値を追加した。ヘリウム及びネオ
ンの追加は,防音性能を目的とした複層ガラス製品
の中空層に封入されることに対応するためのもの
である。キセノンを封入した複層ガラス製品は,い
まだ一般的ではないが,アルゴン及びクリプトンに
次ぐ低い熱伝導率の不活性ガスとして欧州規格EN
673には既に記載されているため,今回の改正で追
加した。
附属書JA
(規定)
真空層の熱
コンダクタ
ンスの計算
方法
真空ガラスの真空層の熱コンダクタンス
の計算方法について規定する。
−
−
国内市場に対応するために附属書を追加した。この
計算方法は,ISO/TC160/SC1/WG10にて原案作成さ
れ,間もなく発行が見込まれているISO/FDIS
19916-1,Glass in building−Vacuum insulating glass−
Part 1: Basic specification of products and evaluation
methods for thermal and sound insulating performance
に記載のものと同一のものである。
附属書JB
(規定)
フィルム材
で分割した
中空層の熱
コンダクタ
ンスの計算
方法
複層ガラスの中空層をガラス板ではない
1枚の樹脂製フィルム材で2分割した中空
層の熱コンダクタンスの計算方法につい
て規定する。
−
−
国内市場に対応するために附属書を追加した。
この計算方法は,ISO 15099を参考としたもので,
ガラス板とは異なり遠赤外域の常温熱放射を透過
する材料を含む複層ガラスの熱平衡を解く方法で
ある。
附属書JC
(参考)
ガラス温度
の収束計算
結果の例
中空層の熱コンダクタンスの計算に用い
るガラス板及び中空層の温度の反復循環
収束による数値計算結果の例を示す。
−
−
計算実施者が自作のコンピュータプログラムの計
算結果の妥当性を確認できるようにするため,附属
書を追加した。
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