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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 用語及び定義 ··················································································································· 1
4 測定環境························································································································· 2
5 試料······························································································································· 2
6 測定原理························································································································· 2
7 測定装置························································································································· 3
7.1 装置の構成 ··················································································································· 3
7.2 装置の校正 ··················································································································· 3
8 測定条件························································································································· 3
9 測定手順························································································································· 4
9.1 ベースライン補正 ·········································································································· 4
9.2 ミニチャンバーの光軸合わせ ··························································································· 4
9.3 分光透過率の測定 ·········································································································· 4
10 測定結果の表し方 ··········································································································· 5
11 測定結果の報告 ·············································································································· 6
附属書A(参考)ミニチャンバーの構造及び機能 ······································································· 7
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本ファインセラミックス協会
(JFCA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の
審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
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ファインセラミックス薄膜の湿度環境下における
分光透過率の測定方法
Measurement of spectral transmittance of fine ceramic thin films under
humid condition
序文
ファインセラミックス薄膜は,光学用途で反射防止膜,赤外線センサ用カットフィルタ,X線センサ用
カットフィルタ,医療分析装置用バンドパスフィルタなどの多くの分野で使用されている。これら薄膜の
分光特性は,商取引での仕様として扱われるようになっているが,薄膜に水分などが吸着すると屈折率が
変化して光学特性が変化することがある。このため,過酷な環境下,広い温湿度範囲での信頼性を評価で
きる規格が求められている。この規格は,湿度環境の影響に対するセラミックス光学薄膜の信頼性を正確
かつ簡単に評価できる測定方法を提供し,試験方法の速やかな普及を通じて,産業発展に資することを目
的に制定した。
なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。
1
適用範囲
この規格は,干渉フィルタ,反射防止膜などの光学部品として使用する光学用ファインセラミックス薄
膜の分光透過率を,環境の相対湿度を変化させて,分光光度計によって測定する方法について規定する。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS Z 8701 色の表示方法−XYZ表色系及びX10Y10Z10表色系
JIS Z 8730 色の表示方法−物体色の色差
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用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
3.1
1/2透過率波長[λT1/2]
特定の波長範囲で,試料の分光透過率が最大値と最小値の中間値となる波長。
3.2
ミニチャンバー
試料を分光測定するために,真空中又は高湿度・低湿度環境で試料を保持する密閉用容器。
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3.3
透過率
試料に入射した光と,透過した光の量の強度比を百分率で表した値。
3.4
モノクロメーター
白色光から任意の波長成分の光を取り出す機器。
3.5
分光光度計
光源部,モノクロメーター,試料室,測光部,信号処理部,データ処理部,及び表示・記録・出力部で
構成され,選択された波長における試料の透過率,又は反射率の測定を行う装置。
3.6
ダブルビーム方式分光光度計
分光光度計のうち,更に光源からの光を試料側と参照側とに分岐させる光学系をもち,透過率測定又は
反射率測定に用いる光を参照用及び試料用の2光線として参照光を基準光として用いる方式をもつ装置。
3.7
積分球
分光光度計の測光部に用いられ,検出器が設置された球の内面に硫酸バリウムなどの拡散反射性の白色
物質を塗布し試料物質の透過光を立体角内全体にわたって集光し検出することができる装置。
4
測定環境
測定環境は,次に示す環境条件で行うことが望ましい。
a) 温度 23±2 ℃。
b) 相対湿度 70 %以下。
注記 環境温度が低いと,高湿度測定時に恒温恒湿槽からミニチャンバーを取り出した際にミニチ
ャンバー内が結露するので注意を要する。
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試料
試料は,板状若しくはフィルム状の基板上に形成されたセラミックスの単層又は多層薄膜とする。基板
の材質はガラス又は高分子材料などであり,通常の板ガラス程度の透明性があれば制限はない。ミニチャ
ンバー内に設置できれば,試料の寸法及び形状は任意とする。
6
測定原理
セラミックス薄膜は微細な柱状構造をもつことが多いため,柱状組織の隙間に大気中の水分が吸着する。
水分の吸着によって薄膜の屈折率が変化して,光反射・透過特性が変化するので,この影響が分光透過率
の変化に現れる。この水分の吸脱着は急激におこるとともに,水分の吸脱着による屈折率の変化はセラミ
ックス薄膜試料の環境履歴により影響される。したがって,セラミックス薄膜試料における水分吸脱着に
よる分光特性の変化を評価するためには,真空環境下において吸着水分を脱離することにより履歴の影響
を低減するとともに,当該試料を所定の湿度環境を維持した状態において測定することが必要となる。得
られたデータ分光透過率データより1/2透過率波長[λT1/2]のシフトなどを算出するとともに,真空環境下
における測定により得られた値と比較することにより,雰囲気湿度に対するセラミックス薄膜試料の安定
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性を定量的に求められる。
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測定装置
7.1
装置の構成
装置の構成は,次による。
a) 分光光度計 ダブルビーム方式で,波長正確さは紫外可視域±0.2 nm以下,近赤外域±1.0 nm以下,
波長設定繰返し精度は紫外可視域±0.1 nm以下,近赤外域±0.5 nm以下の分光光度計を用いる。分光
光度計は測光部に積分球を搭載したものが望ましい。測定可能な波長範囲は,300〜2 500 nmである
ことが望ましい。
b) ミニチャンバー 試料を内部に固定した状態で分光透過率を測定するための透明な石英ガラス製窓を
2か所設ける。また,吸気口及び排気口を設け,それぞれに栓を設ける。栓を閉めた状態で,容器は
真空も(洩)れのないことが必要である。分光透過率測定の装置構成を,図1に示す。ミニチャンバ
ーの構造例を,附属書Aに示す。
図1−分光透過率測定の装置構成
c) 排気装置 ロータリーポンプ,ドライポンプなどを用いて到達圧力が40 Pa以下とする。
d) 恒温恒湿槽 温度23 ℃で相対湿度が40 %〜80 %の範囲で設定が可能なものを使用する。湿度計を使
用して,試料近傍の湿度を計ることが望ましい。
7.2
装置の校正
分光光度計の波長目盛の校正を行う。波長目盛の校正は,JIS K 0115に輝線を用いる方法及びガラス製
光学フィルタを用いる方法が規定されているが,この規格ではそのうちガラス製光学フィルタを用いる方
法が望ましい。
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測定条件
測定は,試料をミニチャンバー内に設置して行う。設置した試料は,取り出すことなく次のb),c)及び
参照光
ミニチャンバー
光源部
波長選択部
(モノクロメーター)
測光部
信号処理部
データ処理部
表示・記録・出力部
試料光
試料
分光光度計
試料部
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d)の環境で一連の測定を行う。試料の湿度環境履歴の測定値への影響を最小とするために,必ず真空環境
下における吸着水分の脱離を行う必要がある。測定条件は,次による。
a) 測定部位 試料の中心部を測定する。試料寸法がミニチャンバーの窓直径より大きい場合は,光学絞
りは不要である。
b) 真空環境 ミニチャンバーの排気口だけを開栓して,真空排気する。排気時間は30分以上とする。
c) 高湿度環境 温度23±2 ℃かつ高湿度に保った恒温恒湿槽中に,ミニチャンバーの吸気口及び排気口
を開栓したまま放置する。望ましい湿度環境は,相対湿度(80±2)%である。保持時間は,20分とす
る。
d) 低湿度環境 温度23±2 ℃かつ低湿度に保った恒温恒湿槽中に,ミニチャンバーの吸気口及び排気口
を開栓したまま放置する。望ましい湿度環境は,相対湿度(40±2)%である。保持時間は,20分とす
る。
e) 分光透過率の測定 測定波長範囲300〜850 nmを測定する場合は,測定波長間隔0.2 nm,波長走査速
度120 nm/min以下,レスポンスは高速,試料への光入射角度は0°とする。測定波長範囲850〜2 500
nmを測定する場合は,測定波長間隔0.2 nm,波長走査速度150 nm/min以下,レスポンスは高速,試
料への光入射角度は0°とする。
9
測定手順
9.1
ベースライン補正
測定波長範囲における分光透過率を装置のベースライン補正機能を用いて100 %に設定する。分光透過
率を100 %に設定する方法は,次に示すA法及びB法の二つがある。それぞれ目的に応じて使い分ける。
a) A法 試料及びミニチャンバーを設置しない状態で分光透過率を100 %に設定する。この方法は,試
料の波長シフトを厳密に測定する場合に使用する。
b) B法 試料を取り付けていないミニチャンバーを設置した状態で分光透過率を100 %に設定する。こ
の方法は,ミニチャンバーの影響を受けない試料単独の分光透過率が必要な場合に使用する。
9.2
ミニチャンバーの光軸合わせ
試料光の光軸の中心とミニチャンバーの窓の中心とを一致させる。積分球を用いない場合は,最大透過
率が得られているかをそのとき確認する。
9.3
分光透過率の測定
分光透過率の測定は,それぞれ次のように行う。
なお,高湿度測定及び低湿度測定では,測定の再現性を得るため,必ず真空排気した後に,所定の湿度
環境で保持する。
a) 真空測定 試料を圧力が40 Pa以下である真空環境に保持した後,排気口を閉栓して測定する。
b) 高湿度測定 試料を真空環境に保持した後,排気口を閉栓して高湿度環境の恒温恒湿槽に移し,吸気
口及び排気口を開栓して高湿度環境中で試料を保持した後に,吸気口及び排気口を閉栓して恒温恒湿
槽から取り出し,測定する。測定までの時間は10分以内を目安とする。
c) 低湿度測定 試料を真空環境に保持した後,排気口を閉栓して低湿度環境の恒温恒湿槽に移し,吸気
口及び排気口を開栓して低湿度環境中で試料を保持した後に,吸気口及び排気口を閉栓して恒温恒湿
槽から取り出し,測定する。測定までの時間は10分以内を目安とする。
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10 測定結果の表し方
薄膜の種類に特徴的な変化を,次に示す方法によって算出する。
a) 波長シフト量 測定した分光透過率曲線から,真空測定,低湿度測定及び高湿度測定での1/2透過率
波長[λT1/2]を算出する。図2に単層膜での算出法を,また,図3に多層膜での算出法を示す。高湿
度での波長シフト量は,真空環境の測定値と高湿度環境での測定値との差分とする。さらに,低湿度
での波長シフト量は,真空環境の測定値と低湿度環境での測定値との差分とする。
図2−単層膜フィルタでの1/2透過率波長[λT1/2]
図3−多層膜フィルタでの1/2透過率波長[λT1/2]
b) 最大透過率変化量 測定した光透過率スペクトルから,真空測定,低湿度測定及び高湿度測定での最
大透過率値を算出する。高湿度での透過率変化量は,真空環境の測定値と高湿度環境での測定値との
差分とする。また,低湿度での透過率変化量は,真空環境の測定値と低湿度環境での測定値との差分
とする。
c) 色度変化量 測定した分光透過スペクトルからJIS Z 8701の5.2(物体色の三刺激値)に規定する三
刺激値X,Y,Z又はX10,Y10,Z10及びJIS Z 8701の7.1(色度座標の求め方)に規定するx,y又はx10,
y10を求める。色差を求める場合には,JIS Z 8730の箇条7(色差の計算方法)に規定する方法を用い
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る。
11 測定結果の報告
測定の結果は,次の項目について報告する。
a) この規格の番号
b) 測定年月日,測定担当者及び気温・相対湿度
c) 試料の種類,材質及び形状
d) 測定装置の形式及び仕様
e) 測定条件(真空排気時間,高湿度環境・低湿度環境での設定湿度と保持時間。また,湿度計を使用し
た場合は,試料近傍の湿度を記載。高湿度測定及び低湿度測定では,栓を閉めてから測定までに要し
た時間。)
f)
測定データ(波長校正にガラス製光学フィルタを使用した場合は,フィルタの品名及び仕様,分光透
過率の分布曲線及び透過率値。真空測定,高湿度測定及び低湿度測定での分光透過率の分布曲線及び
透過率値。高湿度及び低湿度での波長シフト量,透過率変化量又は色度変化量。)
g) その他必要な事項(測定状況に関し特記する事項など)
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附属書A
(参考)
ミニチャンバーの構造及び機能
A.1 構造
図A.1にミニチャンバーの一例について,見取り図を示す。
A.2 機能
試料はウェーブワッシャによって固定する。2個のボールバルブを開閉することで,真空排気及び湿度
調整した空気の導入を行う。
A.3 要求性能
要求性能は,次による。
a) ボールバルブを閉めたときに真空環境及び湿度環境の変化がない。
b) チャンバー内は吸湿しない。
c) 窓は透明で,湿気による曇りが発生しない。
d) 光学的干渉の起きないよう,窓は試料に対してそれぞれ5°傾けて固定する。
e) それぞれの窓は光軸が変化しないよう,対称の角度で固定する。
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単位 mm
①試料,②チャンバー(SUS303),③窓枠(SUS303),④窓押さえ(黒POM),⑤窓(石英ガラス)
⑥,⑦Oリング,⑧ボールバルブ,⑨カラー(PTFE),⑩ウェーブワッシャ
⑪M4ボルト(窓押さえ固定用),⑫M5ボルト(窓枠固定用)
図A.1−ミニチャンバー