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R 1643 : 2002  

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日

本工業規格である。 

この規格の一部が,技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は出願公開後の

実用新案登録出願に抵触する可能性があることに注意を喚起する。主務大臣及び日本工業標準調査会は,

このような技術的性質をもつ特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権,又は,出願公開後の実用新案

登録出願にかかわる確認について,責任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格          JIS 

R 1643 : 2002 

長繊維強化セラミックス複合材料の 

層間せん断強さ試験方法 

Testing methods for interlaminar shear strength of  

continuous fiber-reinforced ceramic composites 

1. 適用範囲 この規格は,機械材料,構造材料などに使用される長繊維強化セラミックス複合材料の室

温における層間せん断強さ測定法のうち,目違いノッチ導入試験片を圧縮する試験法(1),短いスパン上で

行う3点曲げ試験法(2),及びイオシペスク試験法(3)について規定する。 

適用可能な材料としては,長繊維による強化が1方向(1D材),2方向(2D材)の場合が該当する。 

3方向的に強化されている材料(3D材),短繊維又はウィスカーで強化された複合材(強化効果が等方

的に発現されている材料)には適用できない。 

注(1) 目違いノッチ導入試験片を圧縮する試験法(CDN法:shear test by compression loading of 

double-notched specimens)角柱状試験片の相対する面に一定間隔のノッチを導入し,ノッチ面と

垂直方向から圧縮して,ノッチ先端間でせん断破壊させる試験法。 

(2) 短いスパン上で行う3点曲げ試験法[SB法:shear test by short-span bending (three-point)]角柱状

試験片を比較的短いスパン上で曲げて,試験片の中立軸周辺からせん断破壊させる方法。 

(3) イオシペスク試験法(IP法:shear test by the iosipescu method)角柱状試験片に左右非対称とな

る交互方向からの4点負荷を与え,中央部に試験片の長手方向と垂直なせん断応力を発生させ

る試験法。 

2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す

る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS B 0601 製品の幾何特性仕様 (GPS) −表面性状:輪郭曲線方式−用語,定義及び表面性状パラメ

ータ 

JIS B 7502 マイクロメータ 

JIS B 7503 ダイヤルゲージ 

JIS B 7507 ノギス 

JIS R 1600 ファインセラミックス関連用語 

JIS Z 8401 数値の丸め方 

3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS R 1600によるほか,次による。 

a) 長繊維強化セラミックス複合材料 セラミックス系の連続繊維又はその織物で強化し,基材もセラミ

ックス系である複合材料。強化繊維の配向状態によって,1方向強化(1D材),2方向強化(2D材),

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及び板厚方向を含む3方向強化(3D材)と呼ぶものとする。 

b) 層間せん断破壊 強化層間の積層面などに平行方向にせん断力を与えた場合に生じる破壊。この規格

では1方向強化材の強化繊維間を連ねて平面的に生じる破壊にも層間せん断という用語を適用する。 

c) 最大せん断荷重 せん断試験中の破壊完了までに試験片に加わった最大荷重 (N)。 

d) ゲージ部 試験片で破断が生じることを期待されている部分。 

e) 中立軸 曲げ試験片の中央付近に出現するせん断応力最大面。 

4. 試験装置及びジグ 

4.1 

試験機 試験機には,クロスヘッド移動速度が一定に保て,荷重と時間又は変位が計測できる材料

試験機で,荷重の検出精度は±1%以内,時間又は変位の記録精度はフルスケールの±1%以内,最小応答

速度は0.1秒以下のものを使用する。 

4.2 

ジグ CDN法には図1に示すような2個の支持ジグを上下に使用する。SB法には図2の条件を満

たした3点曲げ試験ジグを使用する。IP法の際の負荷は図3に示すジグを使って非対称4点で曲げ負荷を

与える。これらのジグの材質は,試験条件下における弾性率が150GPa以上のものを用い,試験片と接触

する部分の表面粗さは,JIS B 0601に規定する0.4Ra以下に仕上げる。 

図1 CDN試験法の概要 

図2 SB試験法の概要 

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図3 IP試験法の概要 

5. 試験片 

5.1 

試験片形状 CDN法,SB法及びIP法には,それぞれ図4,図5及び図6に示す試験片を用いる。

IP法では,試験片にタブを接着することによって,短い寸法の材料も試験可能となるが(図7),局所破壊

又は試験片のねじれを避けるために,タブ材料の弾性率は試験片と等しい,又は近いことが要求される(4)。

また,その際に,接着面はゲージ部から5mm以上離しておくことが望ましい。 

注(4) 試験片の弾性率との差が20%以内をめどとする。 

5.2 

試験片作製 母材からの試験片の切出しは,強化繊維の配向方向及び製造時の成形方向を十分念頭

において行い,その条件を記録する。また,試験片上下面の平行度は0.02mm以下とし,試験片への損傷

が避けられる加工法を選択しなければならない。加工後の取扱いや環境による劣化にも十分配慮する必要

がある。同一条件下で10個以上の試験片作製を行い,破壊の状態が規定を満足する結果10個以上につい

て統計的に整理する。試験片の寸法は,試験前にあらかじめJIS B 7502で規定するマイクロメータ,JIS B 

7503で規定するダイヤルゲージ又はJIS B 7507で規定するノギスを用いて0.02mmの精度で測定する。 

図4 CDN試験片の形状及び寸法 

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図5 SB試験片,ジグの形状及び寸法 

図6 IP試験片の形状及び寸法 

図7 タブを接着したIP試験片の例(1D材の場合) 

6. 試験方法 試験片のゲージ部寸法の測定は,試験前に行い,計測時の損傷を避けるために十分注意を

払いながら,JIS B 7502で規定するマイクロメータ又は光学的手法(万能投影機など)によって0.02mm

の精度で計測する。やむを得ず破壊後に計測するときは,せん断強さを計算するために使用する破面寸法

を投影法で計測する。 

いずれの試験法においても変位制御方式で試験を行い,負荷の開始から10〜30秒間にせん断破壊を完了

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させる。同時にそのときの試験環境条件を記録する。 

備考 およそ0.05mm/min程度のクロスヘッド速度が適切である。 

6.1 

CDN法の手順 十分に緩めたジグ中に試験片を差し込み,試験片の中心軸とジグの中心を合わせた

後,試験中に試験片が座屈しないように,ジグの試験片固定用ねじを軽く締める。締め過ぎるとせん断強

さの過大評価を招く。締付け具合が不安定な場合には,試験片側面とジグとの間に薄いテフロンシート,

アルミニウムはくなどを挟み込んで,試験片の安定化を図ることが推奨される。その後ゆっくりとクロス

ヘッドをジグ上面まで降下させ,試験機とジグの中心軸を合わせる。 

6.2 

SB法の手順 下部支持点間のスパンはあらかじめJIS B 7507で規定するノギスを用いて測定し,そ

の後,通常の曲げ試験と同様の手順で試験片を置いて中央への負荷を行う。荷重点ジグの曲率半径が小さ

いと応力集中の影響で,荷重点近傍に座屈が生じやすい。また,せん断強さが引張強さに近い場合には,

引張面上からの破壊が起こる。これらの破壊がせん断破壊と同時進行すると正確なせん断強さが得られな

いから,試験中には側面から試験片を観察し,中立軸周辺でせん断破壊が開始し,それが進展して試験片

を破断することを確認する。せん断破壊が生じたかどうかの判定は,図8のような外観の観察から推定で

きる(5)。 

注(5) ただし,試験片がぜい(脆)性的に激しく破壊する場合もあるから,観察者と試験系の間には

透明プラスチック板を置くなどの対応は必要である。 

図8 SB試験片に観察される各種の破壊モード 

6.3 

IP法の手順 ジグ固定側のくさび調整ねじを緩めて,試験片のゲージ部が中央(荷重点直下)にく

るように軸合せし,ねじを軽く締める。次に移動側(負荷側)のねじを締める。この操作を慎重に繰り返

すが,きつく締め過ぎると試験片に損傷が進行することがある。また,作業中にやむを得ず試験片ゲージ

部に負荷がかかる場合でも,その値は,せいぜい50N程度にとどめる配慮は必要である。ジグを試験機の

負荷中心に置き,負荷を行って試験片を破断させる。ゲージ部以外で破壊したデータは除外する。破壊様

式及び破壊開始位置を光学的手法で観察することは重要である。 

7. 計算 

7.1 

CDN法によるせん断強さ CDN法のせん断強さは,個々の試験片についての測定結果から,次の式

(1)によって算出する。 

R 1643 : 2002  

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N

CDNbl

P

τ

 ··············································································· (1) 

ここで, 

τCDN: CDN法によるせん断強さ (N/m2)  

P: 最大せん断荷重 (N) 

b: 試験片幅 (m) 

lN: ノッチ間距離 (m) 

7.2 

SB法によるせん断強さ SB法によるせん断強さは,個々の試験片についての測定結果から,次の

式(2)で求める。 

bh

P

SB

4

3

τ

 ················································································· (2) 

ここで, 

τSB: SB法によるせん断強さ (N/m2)  

P: 最大せん断荷重 (N)  

b: 試験片幅 (m)  

h: 試験片厚さ (m)  

7.3 

IP法によるせん断強さ IP法によるせん断強さは,個々の試験片についての測定結果から,次の式

(3)で求める。 

t

W

P

h

IP=

τ

 ················································································· (3) 

ここで, 

τIP: IP法によるせん断強さ (N/m2)  

P: 最大せん断荷重 (N)  

Wh: ゲージ幅 (m)  

t: 試験片厚さ (m)  

7.4 

測定結果の平均値と分散 測定結果の平均値と分散は,次の統計的な式で求める。 

(

)

n

i

i

X

n

X

1

/1

 ······································································· (4) 

(

)(

)

n

i

i

n

X

X

S

1

2

1

 ····························································· (5) 

ここで, 

X: 平均値 (N/m2)  

Xi: 個々の測定値 (N/m2)  

S: 標準偏差 (N/m2)  

n: 試料数 

7.5 

数値の丸め方 測定値の有効数字は3けたとし,JIS Z 8401によって丸める。 

8. 報告 試験結果報告には,次の項目を記載する。 

a) 試験材料の詳細(強化繊維,マトリックス,積層及び繊維の配列構造,積層厚さ及び繊維束の幅,材

料の密度) 

b) 試験片(繊維配向方向,及び成形方向と切出し方向の関係,加工・表面仕上げ法,形状・寸法,試験

片数) 

c) 試験条件(ジグの詳細,雰囲気,温度及びクロスヘッド速度) 

d) 試験結果[せん断破壊した試験数,各試験片のせん断強さ,及びそれらの平均値と標準偏差,代表的

な破壊の様子と破面観察結果(写真など),代表的な荷重−時間(変位)関係] 

R 1643 : 2002  

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

e) 試験日,試験場所,試験者の所属及び氏名 

JIS R 1643(長繊維強化セラミックス複合材料の層間せん断強さ試験方法) 

原案作成委員会 構成表 

氏名 

所属 

(委員長) 

○ 西 田 俊 彦 

京都工芸繊維大学 

○ 安 田 栄 一 

東京工業大学 

○ 宮 原   薫 

石川島播磨重工業株式会社 

○ 石 川 敏 弘 

宇部興産株式会社 

○ 大 石   学 

株式会社東レリサーチセンター 

○ 野 尻 邦 夫 

三菱重工業株式会社 

小 林 禧 夫 

埼玉大学 

東 田   豊 

財団法人ファインセラミックスセンター 

中 山   明 

京セラ株式会社 

平 井 隆 己 

日本ガイシ株式会社 

大 林 和 重 

日本特殊陶業株式会社 

加賀田 博 司 

松下電器産業株式会社 

高 木   斉 

株式会社村田製作所 

太 田 健 一 

大阪大学 

宇佐見 初 彦 

名城大学 

阪 口 修 司 

名古屋工業技術研究所 

福 原 幹 夫 

東芝タンガロイ株式会社 

鈴 木   孝 

株式会社レスカ 

石 川 隆 司 

航空宇宙技術研究所 

武 田 展 雄 

東京大学 

八 田 博 志 

宇宙科学研究所 

守 屋 勝 義 

石川島播磨重工業株式会社 

渋 谷 昌 樹 

宇部興産株式会社 

亀 田 常 治 

株式会社東芝 

梅 澤 正 信 

日本カーボン株式会社 

渋 谷 寿 一 

東京工業大学 

岩 田 宇 一 

財団法人電力中央研究所 

本 田   整 

岡野バルブ製造株式会社 

春 木 仁 朗 

関西電力株式会社 

山 本   力 

日本ガイシ株式会社 

岡 部 永 年 

愛媛大学 

黒 崎 晏 夫 

電気通信大学 

佐久間 俊 雄 

財団法人電力中央研究所 

小 川 光 恵 

財団法人ファインセラミックスセンター 

梶   正 己 

京セラ株式会社 

松 山 豊 和 

東芝セラミックス株式会社 

○ 戸 井 朗 人 

通商産業省生活産業局 

○ 八 田   勲 

通商産業省工業技術院 

○ 橋 本   進 

財団法人日本規格協会 

○ 菅 野 隆 志 

ファインセラミックス国際標準化推進協議会 

○ 渡 辺 一 志 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

(事務局) 

○ 高 橋   孝 

社団法人日本ファインセラミックス協会 

備考 ○印は小委員会委員を兼ねる。 

(文責 原案作成小委員会)