2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
R 1623-1995
ファインセラミックスの
高温ビッカース硬さ試験方法
Testing method for Vickers hardness of fine ceramics
at elevated temperatures
1. 適用範囲 この規格は,主として機械的,熱的及び化学的な用途に用いられるち密質ファインセラミ
ックスの,1 300℃以下の高温におけるビッカース硬さ試験方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS B 7725 ビッカース硬さ試験機
JIS B 7734 微小硬さ試験機
JIS R 1610 ファインセラミックスのビッカース硬さ試験方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
2. 用語の定義 この規格で用いる主な用語の定義は,次による。
(1) 高温硬さ 室温を超える一定の温度でくぼみの形成を行って得た硬さ。
(2) ビッカース硬さ 対面角が136°のダイヤモンド正四角すい(錐)圧子を用い,試験面にくぼみを付
けたときの試験荷重を,くぼみの対角線長さから求めた表面積で除した値。
(3) 硬さ記号 ビッカース硬さの記号HVに,試験荷重に比例する数値をつけた記号。
なお,硬さ記号と試験荷重の対応は,表1による。
表1 硬さ記号と試験荷重の対応
硬さ記号
試験荷重
N
硬さ記号
試験荷重
N
硬さ記号
試験荷重
N
HV0.01
0.098 07
HV0.2
1.961
HV2.5
24.52
HV0.02
0.196 1
HV0.3
2.942
HV3
29.42
HV0.025
0.245 2
HV0.5
4.903
HV5
49.03
HV0.05
0.490 3
HV1
9.807
HV10
98.07
HV0.1
0.980 7
HV2
19.61
HV20
196.1
(4) 試験温度 硬さを測定するときの試料の試験面温度。
3. 試験装置
3.1
試験機 高温硬さ試験に用いる試験機は,機枠,試料保持具,圧子,負荷装置,計測顕微鏡,加熱
装置,温度計測装置及び真空又は雰囲気調整装置を備えていなければならない。
また,試験機は,十分に安定性のある台上に置き,圧子の取付軸を鉛直にして使用する。
なお,試験機は使用頻度に応じ,日常点検を行うことが望ましい。日常点検は,あらかじめビッカース
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硬さ試験機又は微小硬さ試験機を用いて常温硬さを比較して,くぼみ形状,硬さ測定値などの異常の有無
を確かめるとともに加熱装置及び真空又は雰囲気調整装置に異常のないことを確かめる。
3.2
負荷装置 負荷装置は,試験荷重に応じ,JIS B 7725又はJIS B 7734の規定に適合したものでなけ
ればならない。
3.3
圧子 圧子はダイヤモンド圧子とする。ダイヤモンド圧子の形状及び仕上げは,試験荷重に応じ,
JIS B 7725又はJIS B 7734の規定に適合したものでなければならない。
3.4
計測顕微鏡 計測顕微鏡は,試験荷重に応じ,JIS B 7725又はJIS B 7734の規定に適合したものを
用いる。
3.5
試料保持具 試料保持具は,高温において寸法変化が少なく,化学的にも安定な材料を用い,かつ,
硬さの測定に影響のない構造にしなければならない。
また,試料保持具の材質及び形状を報告に付記することが望ましい。
3.6
加熱装置 加熱装置は,試験面が均一に加熱されるものを使用しなければならない。
4. 試料 試料は,次による。
(1) 試料の試験面は,平面とする。
(2) 試験面は,くぼみの対角線長さを,6.(1)で要求される精度で計測できる程度に研磨仕上げする。
(3) 試験面の仕上げには,硬さ測定値に影響を与えない方法を用いる。
(4) 試験面は,異物による汚れがあってはならない。
(5) 試料は十分な厚さのもので,くぼみが生じたためにその裏面に変化が認められてはならない。
5. 試験方法 試験方法は,次による。
(1) 試料の試験面が圧子取付軸に垂直になるように試料保持具に置き,試料が試験温度に達するまで加熱
する。ただし,試験温度は1 300℃以下とし,加熱は,不活性ガス雰囲気中又は真空中で行う。
(2) 試験温度が正確に計測できるように,温度計測位置を調整する。
また,温度の計測位置及び計測方法を報告に付記することが望ましい。
(3) 試料の予熱時間(1)は,約5分とする。
注(1) 試料の予熱時間とは,試料が試験温度に到達した後の時間をいう。
(4) 試験温度を安定に保つために,圧子の予熱を行う。圧子の予熱は,試験機に応じた適正な方法を用い
る。
備考 圧子の予熱には,予熱装置を用いる方法と用いない方法があるが,いずれを用いてもよい。予
熱装置を用いる場合は,試験機に指定された方法による。予熱装置を用いない場合は,試験面
を利用して予熱を行う。その方法の例として,くぼみ形成ごとに試験荷重と同じ荷重で5分間
試料中に圧子を保持した後に試験する方法(図1参照),及び試験荷重と同じ荷重での5分間の
圧子保持の後にくぼみの形成を連続的に行い,くぼみ測定を後にまとめて行う方法(図2参照)
がある。
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図1 高温硬さ試験のプログラム例
図2 高温硬さ試験のプログラム例
(5) 試験荷重は,試験機及び試料の材質,形状に応じた適正な荷重を選択する。
(6) 荷重は,衝撃を伴うことなく,しかも運動部分の慣性による誤差を無視できる程度に徐々に増加して
規定の大きさにする。
備考 負荷速度の適正値は,試験機の構造によって異なるため,その試験機に指定された負荷条件に
よる。
(7) 荷重を規定の大きさに保つ時間は,30秒とする。これ以外の時間を用いたときは報告書に明記する。
(8) 試料の試験位置は,既にあるくぼみの中心から,そのくぼみの対角線長さの4倍以上で,かつ,試料
の縁から2.5倍以上であること(図3参照)。ただし,くぼみの形成に伴い発生するき裂が互いに連結
しているときは,試験位置を離さなければならない。
(9) 試験中にくぼみの形状に異常が認められたときは,直ちに試験を中止し,圧子の異常を調べる。
図3 試料の試験位置
6. くぼみの測定及び高温ビッカース硬さの計算 くぼみの測定及び高温ビッカース硬さの計算は,次に
よる。
(1) 試験荷重を除去した後,くぼみの2方向の対角線長さを,その対角線長さの0.4%又は0.2μmのうち,
いずれか大きい値を有効数字として読み取る。ただし,受渡当事者間の協定によって誤差が許容され
ている場合は,1μmを有効数字とした読取りでよい。
備考1. くぼみの測定をビデオモニターを利用して行う場合,くぼみの読取りは,最大測定値の0.3%
以下とする。
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2. くぼみの対角線長さの測定は,くぼみ形成を行った温度で引き続き行うか,又はくぼみ形成
後,試料温度を室温まで下げた後に行う。
(2) くぼみの2方向の対角線長さの平均値を求め,JIS R 1610の規定による次の式によってビッカース硬
さを計算する。
2
2
1
189
.0
2
sin
2
102
.0
102
.0
d
F
d
F
S
F
HV
=
=
=
θ
ここに, HV: ビッカース硬さ
F: 試験荷重 (N)
S: くぼみの表面積 (mm2)
d: くぼみの対角線の長さの平均 (mm)
θ: ダイヤモンド圧子の対面角 (136゚)
(3) 試験は,同条件で原則として5点測定を行い,平均値及び標準偏差を求める。
(4) 高温ビッカース硬さは,JIS Z 8401の規定によって,有効数字3けたに丸める。
(5) 標準偏差は,次の式によって計算し,JIS Z 8401の規定によって有効数字2けたに丸める。
1
)
(
1
2
−
−
=∑
=
n
X
X
S
n
i
i
ここに,
S: 標準偏差
Xi: 測定点個々の硬さの計算値
X: 硬さの平均値
n: 測定点の数
7. 高温ビッカース硬さの表示 高温ビッカース硬さは,硬さの値,硬さ記号及び試験温度 (℃) の順に
表示する。
例 1000HV1 (800℃)
高温ビッカース硬さ1 000,試験荷重9.807N,試験温度800℃のとき
8. 報告 試験結果の報告には,次の項目について記載しなければならない。
(1) 試料材質
(2) 試験条件
(a) 試験荷重
(b) 試験温度
(c) 試験雰囲気
(d) 荷重保持時間
(e) 圧子の予熱方法
(3) 試験結果
(a) 高温ビッカース硬さ(平均値)
(b) 標準偏差
(c) 測定点の数
備考 このほか,試験条件に関する次の項目について,報告に付記することが望ましい。
(a) 試料厚さ
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
(b) 試料表面の状態(研磨方法,表面粗さなど)
(c) 試験機の種類
(d) 昇温速度
(e) 試料予熱時間
(f) 試料保持具の材質及び形状
(g) 試験温度の計測位置及び計測方法
ファインセラミックスの高温ビッカース硬さ試験方法 原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○ 阪 口 修 司
工業技術院名古屋工業技術研究所
○ 佐々木 武 三
東京都立工業技術センター
○ 岩 崎 昌 三
株式会社アカシ
○ 秋 山 俊 夫
株式会社ニコン
○ 前 田 豊 一
株式会社島津製作所
○ 大 下 知 之
東芝タンガロイ株式会社
小 林 英 男
東京工業大学
岡 部 永 年
株式会社東芝
牧 野 琢 磨
日本ガイシ株式会社
小坂井 守
住友大阪セメント株式会社
高 坂 祥 二
京セラ株式会社
河 野 顕 臣
株式会社日立製作所
○ 平 野 正 樹
通商産業省生活産業局
○ 岡 林 哲 夫
工業技術院標準部
○ 菅 野 隆 志
ファインセラミックス国際標準化推進協議会
○ 山 田 貞 夫
社団法人日本ファインセラミックス協会
(事務局)
○ 杉 本 克 晶
社団法人日本ファインセラミックス協会
備考 ○印は小委員会委員
文責 原作作成小委員会