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Q 9023:2018  

(1) 

目 次 

ページ 

0 序文······························································································································· 1 

0.1 一般 ···························································································································· 1 

0.2 他の規格との一貫性 ······································································································· 1 

0.3 JIS Q 9001とJIS Q 9004との関係 ····················································································· 2 

0.4 他のマネジメントシステムとの両立性················································································ 2 

1 適用範囲························································································································· 2 

2 引用規格························································································································· 2 

3 用語及び定義 ··················································································································· 2 

4 方針管理のプロセス ·········································································································· 4 

5 部門における方針管理の進め方 ··························································································· 6 

5.1 中期計画の策定 ············································································································· 6 

5.2 方針の策定及び展開 ······································································································· 6 

5.3 方針の実施及びその管理 ································································································ 13 

5.4 期末のレビュー ············································································································ 14 

5.5 管理者の心構え ············································································································ 16 

6 組織全体の方針管理の進め方 ····························································································· 18 

6.1 トップマネジメントのリーダーシップ··············································································· 18 

6.2 中長期経営計画の策定 ··································································································· 18 

6.3 組織方針の策定 ············································································································ 19 

6.4 組織方針の展開 ············································································································ 20 

6.5 方針の実施及びその管理 ································································································ 21 

6.6 トップマネジメントによる診断 ······················································································· 21 

6.7 期末のレビュー ············································································································ 22 

7 方針管理の推進 ··············································································································· 24 

7.1 方針管理の教育 ············································································································ 24 

7.2 方針管理のための標準,帳票及びツールの整備 ··································································· 25 

7.3 方針管理の評価 ············································································································ 26 

7.4 部門及び個人の評価とのリンク ······················································································· 26 

附属書A(参考)総合的品質管理における方針管理の役割及び位置付け ········································· 27 

附属書B(参考)方針管理の基本的考え方················································································ 30 

附属書C(参考)方針の構成要素 ··························································································· 35 

附属書D(参考)方針管理のための様式例 ··············································································· 36 

附属書E(参考)方針管理の自己評価······················································································ 40 

参考文献 ···························································································································· 45 

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(2) 

まえがき 

この規格は,工業標準化法第14条によって準用する第12条第1項の規定に基づき,一般社団法人日本

品質管理学会(JSQC)及び一般財団法人日本規格協会(JSA)から団体規格(JSQC-Std 33-001:2016)を

基に作成した工業標準原案を具して日本工業規格を改正すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審

議を経て,経済産業大臣が改正した日本工業規格である。これによって,JIS Q 9023:2003は改正され,こ

の規格に置き換えられた。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意

を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実

用新案権に関わる確認について,責任はもたない。 

日本工業規格          JIS 

Q 9023:2018 

マネジメントシステムのパフォーマンス改善− 

方針管理の指針 

Performance improvement of management systems- 

Guidelines for Policy Management 

序文 

0.1 

一般 

顧客及び社会のニーズ,それらを満たす製品及びサービスを提供するために必要となる技術,組織で働

く人々の価値観,知識及び技能,パートナ(供給者,関係会社など)との連携など,組織が置かれている

状況は常に変化している。組織が事業を継続し,発展させていくためには,これらの変化を的確に把握し,

迅速に改善及び革新を行っていくことが求められる。このため,トップマネジメントは組織の内外の状況

を基に目指す姿を定め,各部門はこれを達成するために必要な改善及び革新を実践することが大切である。 

しかし,多くの人が働く組織においては,トップマネジメントの考え及び策定した目標が組織の第一線

まで伝わらなかったり,改善及び革新のための取組みが日常業務のために後回しにされたり,複数の部門

の間で密接な連携が図られなかったり,第一線の情報が目標及び計画の策定にい(活)かされなかったり

する場合が多い。このような状況になると,せっかくの取組みが期待どおりの効果を発揮できない。こう

した問題に対応するために,品質管理の世界で培われた“品質を工程で作り込む”(狙いどおりの製品及び

サービスを経済的に生み出すために,プロセスを定め,それに従って仕事を行う。)の考え方に基づいて,

プロセスの改善及び革新を組織的に促進するために生み出された活動が“方針管理”である。方針管理が

適切に行われれば,挑戦的な取組みが活発に行われるようになり,人の成長及び働く喜びにもつながる。

方針管理は,変化を乗り越えるための,さらには変化を事業の発展に結び付けるための組織運営の基軸で

あり,この良否によって組織の持続的な成功が大きく左右される。したがって,組織全体としてその強化

を図る必要がある。 

この規格は,方針管理の基本的な考え方及びプロセス,方針管理の進め方に関する指針,並びに方針管

理を組織的に推進する場合の指針をまとめたものである。 

なお,対応国際規格は現時点で制定されていない。 

0.2 

他の規格との一貫性 

この規格は,方針管理を対象としており,独立して使用することを意図して作成されているが,マネジ

メントシステムのパフォーマンス改善に関する一連の規格である,日常管理を対象とするJIS Q 9026,改

善活動を対象とするJIS Q 9024,並びに品質保証を対象とするJIS Q 9025及びJIS Q 9027と整合性のある

規格として相互に補完して使用することもできる。特に,方針管理は,日常管理と合わせて実施するのが

効果的なため,JIS Q 9026と合わせて使用するのがよい。 

なお,総合的品質管理(TQM:Total Quality Management)における方針管理,日常管理,小集団改善活

動,品質管理教育及び品質保証の役割を,附属書Aに示す。また,この規格は,JIS Q 9005に規定された

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品質マネジメントに関する支援技法として使用することを想定して作成している。 

0.3 

JIS Q 9001とJIS Q 9004との関係 

この規格は,組織がJIS Q 9001及びJIS Q 9004に基づくマネジメントシステムを,効果的かつ効率的に

運営管理するための支援技法として使用することを想定して作成している。 

0.4 

他のマネジメントシステムとの両立性 

この規格は,環境マネジメント,労働安全衛生マネジメント,財務マネジメントなどのマネジメントシ

ステムに関する固有な支援技法として作成してはいないが,関連するマネジメントシステムのパフォーマ

ンス改善を支援する技法として組織が使用することができる。 

適用範囲 

この規格は,品質管理の主要な活動の一つである方針管理に関する次の三つの指針を示す。 

− 方針管理を実践する中核となる各部門の管理者を対象にした,各部門における方針管理の具体的な進

め方の指針 

− トップマネジメント,及び組織全体の方針管理に責任をもつ人を対象にした,組織全体としての方針

管理の進め方の指針 

− トップマネジメント,及び組織全体の方針管理に責任をもつ人を対象にした,方針管理を組織的に推

進するための教育,ツール及び評価の指針 

この規格は,製造業及びサービス業だけでなく,プロジェクトで行う事業,複数の組織が連携して行う

事業,営利を目的としない事業など,あらゆる業種及び業態に適用できる。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Q 9000 品質マネジメントシステム−基本及び用語 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,JIS Q 9000によるほか,次による。 

3.1 

方針管理 

方針を,全部門及び全階層の参画の下で,ベクトルを合わせて重点指向で達成していく活動。 

注記 方針には,中長期方針,年度方針などがある。 

3.2 

方針 

トップマネジメントによって正式に表明された,組織の使命,理念及びビジョン,又は中長期経営計画

の達成に関する,組織の全体的な意図及び方向付け。 

注記1 方針には,一般的に,次の三つの要素が含まれる。ただし,組織によってはこれらの一部を

方針に含めず,別に定義している場合もある。 

a) 重点課題 

b) 目標 

c) 方策 

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注記2 トップマネジメントの方針を受けて,組織内の責任者が表明した方向付けを方針と呼ぶこと

がある。 

例 事業部長方針,支店長方針,部長方針 

注記3 特定のマネジメント領域の方針であることを示すために,修飾語を用いることがある。 

例 品質方針,環境方針 

3.3 

重点課題 

組織として優先順位の高いものに絞って取り組み,達成すべき事項。 

3.4 

目標 

目的を達成するための取組みにおいて,追求し,目指す到達点。 

3.5 

方策 

目標を達成するために,選ばれる手段。 

3.6 

実施計画 

方策を実施して目標を達成するために必要な資源及びその運用プロセスを定めることに焦点を合わせた

計画。 

3.7 

管理項目 

目標の達成を管理するために,評価尺度として選定した項目。 

3.8 

管理水準 

安定した又は計画どおりの,プロセスの状態を表す値又は範囲。 

注記1 管理水準と実際の値とを比較することでプロセスが安定した状態,又は計画どおりの状態に

あるかどうかを判定できる。 

注記2 管理水準は,次の式などで表すことができる。 

s

x3

±

ここに, 

x: 平均値 

s : 標準偏差 

3.9 

部門 

特定の使命及び役割を割り付けられた,組織を構成する各々の単位。 

注記1 部門は,典型的には,その統括を行う管理者及び複数の構成員から成る。 

注記2 一つの部門はより細かい部門に分けられる場合が多い。部門には,部,課,グループなどが

含まれる。 

3.10 

部門横断チーム 

部門単独では解決が困難な重点課題に対処するために,異なった部門から,活用できる全ての関連知識

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及び技能を結集し,編成されたチーム。 

注記1 部門横断チームには,組織の設計,技術,製造,営業及びサービスの部門並びに他の該当す

る部門の要員を含む。また,顧客又はパートナを含めてもよい。 

注記2 部門横断チームは,改善チームの一つの形態である。 

方針管理のプロセス 

方針管理のプロセスを図1に,時間的な流れを表1に示す。 

なお,方針管理を進めるに当たっては,その基本を事前に理解しておく必要がある。方針管理の基本的

な考え方を附属書Bに,方針管理において重要な役割を果たす方針の構成要素を附属書Cに示す。 

方針管理のプロセスの中核となるのは,中長期経営計画を踏まえて実施される次の四つの事項である。 

− 組織方針の策定 

− 組織方針の展開 

− 組織方針の実施及びその管理 

− 期末のレビュー 

このうち,組織方針の策定では,中長期経営計画,経営環境の分析,前期の期末のレビューの結果など

を踏まえて,当該の期(年度など)において組織として達成すべき方針(重点課題,目標及び方策)を定

める。また,組織方針の展開では,策定した組織方針を,組織の階層に従って下位の方針に展開する。こ

のとき,上位の管理者及び下位の管理者(複数)が集まってすり合わせを行い,上位の方針と下位の方針

とが一貫性のあるものになるようにする。このために,上位の管理者は自分の方針を説明し,下位の方針

への分解及び具体化を行うとともに,下位の管理者は自分が担当する部門の状況を踏まえて提案を行い,

上位方針に対する追加及び修正を行う。さらに,下位に展開された方針(方策)が確実に実施されるよう,

具体的な実施計画及びその進捗状況を評価するための管理項目を設定する。期中においては,実施計画ど

おり活動を進め,計画どおり進んでいないことが明らかになった場合には,原因を追究し,方針及び実施

計画の変更を含む必要な処置をとる。期末においては,各方針及び実施計画の達成状況及び実施状況を評

価し,その期における組織方針の達成状況及び実施状況を総合的にレビューする。レビューの結果につい

ては,経営環境の変化などを考慮した上で,次期の方針に反映する。 

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Q 9023:2018  

トップダウン

ボトムアップ

説明

分解及び

具体化

提案

追加及び修正

すり合わせ

一貫性

方針展開

組織の使命,理念及びビジョン

中長期経営計画の策定

実施計画の策定
管理項目の設定

実施計画に基づく

実施

管理項目による
結果の評価

方針及び実施計画の見直し

期末のレビュー

経営環境の分析

経営環境の分析

組織レベル

部レベル

部門の中期計画策定

トップダウン

ボトムアップ

説明

分解及び

具体化

提案

追加及び修正

すり合わせ

一貫性

方針展開

組織方針の策定

・重点課題
・目標
・方策

課及びグループレベル

トップダウン

ボトムアップ

説明

分解及び

具体化

提案

追加及び修正

すり合わせ

一貫性

方針展開

経営環境の分析

課・グループ方針の策定

・重点課題
・目標
・方策

部方針の策定

・重点課題
・目標
・方策

次期方針の策定

注記1 この図では,組織全体が組織−部−課及びグループという3階層によって構成する場合を例示している。組

織によっては,2階層の場合もあれば,より多くの階層に分かれている場合もある。 

注記2 下位については,実施計画だけで,方針を策定しないこともある。また,上位の組織及び部が,方針を下位

に展開せず,実施計画を直接策定することもある。 

図1−方針管理のプロセス 

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表1−方針管理の時間的な流れ 

期 

前期:n−1期 

当期:n期 

次期:n+1期 


中 

n−1期の実施計画に基づく実施, 

管理項目による結果の評価,並びに
方針及び実施計画の見直し 

n期の実施計画に基づく実施,管理

項目による結果の評価,並びに方針
及び実施計画の見直し 

n+1期の実施計画に基づく実施,

管理項目による結果の評価,並びに
方針及び実施計画の見直し 


末 

期末のレビュー 
 

n期方針の策定

及び展開,並び
に実施計画の策
定 

期末のレビュー 
 

n+1期方針の策

定及び展開,並
びに実施計画の
策定 

期末のレビュー 
 

n+2期方針の策

定及び展開,並
びに実施計画の
策定 

注記1 期の単位は,組織の運営方法によって,1年,半年,3か月などがある。 
注記2 期末のレビューは,期を1年とした場合,期の終わる約2〜3か月前から開始する場合が多い。 

部門における方針管理の進め方 

5.1 

中期計画の策定 

使命及び役割を果たすために,中長期的視点で活動を実施する必要がある部門の場合,期ごとに方針を

策定しているだけでは継続性が得られない。このため,このような部門を統括する管理者は,組織の中長

期経営計画を踏まえた上で,市場の環境及び部門の現状を分析し,部門独自の中期計画を策定するのがよ

い。 

特に,新製品及び新技術の開発,顧客及び販路の開拓及び深耕,サプライチェーンのグローバル展開,

情報システムの構築,人材育成など,結果が出るまでに数箇年を要する活動には,3か年程度の計画を策

定するのがよい。 

中期計画の策定は,組織の中長期経営計画の策定の方法(6.2参照)に準じて行うのがよい。 

注記 ここでいう部門とは,部,課,グループなどに対応する。 

5.2 

方針の策定及び展開 

5.2.1 

方針の策定及び展開のアウトプット 

部門を統括する管理者は,上位方針,部門の中期計画,前期のレビューの結果,部門を取り巻く経営環

境の分析の結果などに基づいて,次の三つを策定又は作成するのがよい。 

なお,方針書,実施計画及び管理帳票の様式の例を図D.1〜図D.3に示す。 

− 部門の方針:部門が当該の期に取り組む重点課題,達成すべき目標,及び目標を達成するための方策

をまとめたもの 

− 実施計画:部門が実施する各々の方策について実施する項目を時系列に展開し,実施できるレベルま

で具体化したもので,誰が,何を,いつ,どこで,どのように行うかを示したもの 

− 進捗を管理するための管理項目,管理水準及び管理帳票:方針及び実施計画が計画どおり進捗してい

るかどうかを評価するための尺度として選定した項目,その達成状況が適切かどうかを判断するため

の基準として設定した水準(期の途中における目標値及び管理限界値),更にこれらの水準及び実際の

値,並びに水準が未達成の場合の原因及び処置を書き込み,関係者が進捗の状況をすぐに把握できる

よう,グラフ又は表にしたもの 

これらのアウトプットの相互関係,並びに上位方針,部門の中期計画,前期のレビューの結果,部門を

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取り巻く経営環境の分析の結果などとの関係を図2に示す。 

− 部門の方針は,上位の方針,関連する他部門及びパートナの方針,並びに下位の方針と一貫性がなけ

ればならない。また,前期のレビューの結果,及び部門を取り巻く経営環境の分析の結果を考慮した

ものでなければならない。 

− 実施計画は,そのとおり実行することで,対応する方針の目標が達成できるものになっていなければ

ならない。また,その実現のために必要となる資源を確保していなければならない。 

− 管理項目は,期末における目標の達成の可能性を高める視点で選んだもので,対応する方針及び実施

計画の進捗を期中に適宜評価できるものでなければならない。また,管理水準は,実施計画の内容と

時間的に整合のとれたものでなければならない(実施計画の進行に応じて段階的に変わっていかなけ

ればならない。)。 

実施計画

方針の展開
すり合わせ

組織の使命,理
念及びビジョン





必要
資源

連携

組織の
中長期
経営計画

部門の
中期計画

資源の準備

入手

関連部門の方針

上位方針

重点課題,目標

及び方策

実施計画

下位の方針

経営環境の分析

部門の方針

重点課題,目標

及び方策

期末のレビュー

管理項目,管理水準及び管理帳票

 一点鎖線は自部門を示す。 

図2−方針の策定及び展開における主なアウトプット及び相互関係 

5.2.2 

部門として目指す姿の明確化−部門方針の策定 

部門を統括する管理者は,当期の上位方針の達成に貢献するために,また,中長期経営計画を達成する

上で部門の使命及び役割をより効果的かつ効率的に果たせるようになるために,部門として当該の期に目

指す姿を明確に示した方針を策定するのがよい。この方針では,重点課題,目標及び目標を達成するため

の方策を明確にする。 

部門を統括する管理者は,目指す姿の明確化の議論において,次の視点を考慮するのがよい。 

− 顧客の満足及びその他の利害関係者(社会,地域など)の満足 

− 財務結果と方針の実施状況との関係 

− 成功要因及び失敗要因の業務プロセスの視点からの分析,並びに成功及び失敗から学習した改善案 

− 人材の育成,並びに従業員及びパートナ(供給者,関係会社など)の満足 

Q 9023:2018  

a) 重点課題の決定 部門が置かれている内外の状況を分類及び整理して,取り組むべき重要な課題(重

点課題の候補)を抽出し,絞込みを行って重点課題を決定するのがよい。 

重点課題の候補は,次の各側面について検討し,抽出するのがよい。重点課題の候補は,当該部門

の実態に基づいた具体的な表現にするのがよい。“AA(対象)をBB(作用)する”と表現すると具

体的になる。 

− 上位の方針:提示されている組織の重点課題,目標及び方策を確認し,それと部門の使命及び活動

領域を照らし合わせて,関係する項目を明確にする。 

− 部門の中期計画:部門の中期計画を策定している場合,この中から当該の期に実施すべき項目を明

確にする。 

− 経営環境の分析から出てきた課題:部門を取り巻く経営環境を分析し,機会及びリスクを明らかに

する。また,部門の能力及び特徴の分析,その結果と競合他組織の能力及び特徴との比較分析を行

い,部門の強み及び弱みを明らかにする。 

− 期末のレビューから出てきた課題:前期において,目標が未達成で現在に持ち越してしまった課題,

及びトップマネジメントなど上位者によるレビューで指摘された項目を整理する。 

− 下位からの提案,関連部門からの依頼事項:下位から提案のあった項目,及び関連部門から依頼さ

れた事項を整理する。 

抽出した重点課題の候補は,次の手順で絞り込むのがよい。 

− 類似したもの又は因果関係にあるものをあらかじめグルーピングしてまとめる。 

− 重要性及び緊急性を評価し,3〜5項目を目安に絞り込む。部門が担当する業務範囲によっては,取

り上げたい課題が多くなることがあるが,課題を確実に達成するためには,資源を集中して対応す

る課題を重点指向で絞り込む。 

絞り込んだ部門の重点課題を上位の管理者へ提案し,関連部門との連携を含めた上位者の意向を踏

まえて重点課題を決定するのがよい。 

b) 目標の設定 目標は,決定した重点課題ごとに設定するのがよい。この場合,次の事項に注意する。 

− 達成すべき状態及び達成期日を明確にする。 

− 上位方針,及び策定している場合は,部門の中期計画を勘案し,一貫性のあるものにする。 

− 上位の管理者,関係部門,該当する部門横断チームなどとすり合わせ(5.2.3参照)を行い,必要な

場合は当初に設定した目標を見直す。 

目標値の設定は,次の手順で行うのがよい。 

− 過去数年間の実績の推移,競合する他組織の水準などを調査する。必要に応じて,製品及びサービ

スの種類別などの層別を行う。 

− 現状の実績値及び競合する他組織の水準を考慮しながら,上位方針の目標値から必要とされる水準

を確実に達成できるように設定する。 

− 部門の中期計画において目標値が設定されている場合には,必要とされる水準を達成できる目標値

であるかを確認する。 

c) 目標達成のための方策の立案 目標を達成するための方策の立案は,決定した重点課題ごとに,次の

手順で行うのがよい。 

Q 9023:2018  

− 要因の明確化:現状を調査及び把握したり,将来の結果を予想したりすることで,重点課題に関す

る業務プロセスにおいて,目標の達成に重要な影響を与える要因を見極める。 

− 方策の確定:重要な要因を望ましい状態にする手段を検討及び列挙し,絞り込みを行い,方策とし

て実施するものを確定する。 

要因の明確化に当たっては,次の事項を考慮するのがよい。 

− 現場で現物を見ながら現実的に考えることを基本とする(この基本的な考え方を三現主義というこ

とがある。)。 

− 要因について,関係する組織の人,施設及び設備,実施方法,使用する部品,材料及びサービスな

どの側面から検討する。“なぜなぜ”を繰り返すことで検討が深まる。 

方策の確定に当たっては,次の事項を考慮するのがよい。 

− 関係者を集めて,目標を達成するための方策(手段)についてアイデアを出し合う。方策は,“XX

(手段)によって,AA(対象)をBB(作用)する”と表現すると具体的になる。 

− 一つの重要な要因に対して,考え出した手段を,更にそのためにどのようにするかを繰り返し,実

施可能な複数の具体的な方策にブレークダウンする。 

− 方策は,業務プロセスの改善に焦点を当てて検討する。 

− 考え出した各方策の効果,及び実施に当たって生じると思われる障害を評価する。また,投入が必

要な人,施設及び設備,財務資源などを割り出し,費用対効果を事前に評価する。これらの結果に

基づいて,方策として実施するものを絞り込む。 

− 確定した方策の実施に必要な投資予算を計上し,必要とする時期に入手できるようにする。 

部門を統括する管理者は,部門が将来目指す方向及びそのために必要な行動を方針として明示し,

部門の人々を指揮し,適切な方向に導くためのリーダーシップを発揮するのがよい。リーダーシップ

を発揮する上で,次の事項を考慮するのがよい。 

− 組織の目的及び方向と部門の目的及び方向とを一致させる。 

− 組織の使命,理念及びビジョン,並びに中長期経営計画を実現するために,部門最適ではなく,全

体最適に視点を置き,関係者と連携した協働を率先垂範する。 

− 上位者,関係部門,部門横断チームなどへ建設的な提案及び進言を行い,また,下位の管理者及び

担当者,パートナなどからの提案を積極的に聴き,十分な意思疎通の下で部門の方針を合意形成す

る。 

− 部門の方針の達成へ向けて,部門の人々全員が,学習及び改善への参画並びに自己実現できる内部

環境を作り,維持する。 

5.2.3 

すり合わせ 

部門を統括する管理者は,部門の方針,実施計画などを策定するに当たって,上位の管理者,下位の管

理者及び担当者,部門の方針達成に関係する他部門及びパートナなどとすり合わせを十分に行うのがよい

(図3参照)。これによって上位から下位までの方針の展開がより一貫したものになる。 

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10 

Q 9023:2018  

組織

上位の
管理者

自部門

関係部門

組織外の部門

パートナ

部門を統括する

管理者

下位の管理者及び

担当者

図3−すり合わせの対象者 

上位の管理者が招集する,上位の管理者,並びに関連する他部門及びパートナとのすり合わせにおいて

は,次のことを行うのがよい。 

− すり合わせに先立ち,期末のレビューのときに,自部門の重点課題及び自部門が次期に実施したいこ

とをまとめて,上位の管理者に報告及び説明する。併せて,次期に上位の管理者に重点課題として取

り上げてほしいことを提案する。 

− 上位の方針案及びその意図を理解する。 

− 上位の方針案を受けた自部門の方針案及びその根拠を明確にし,説明する。 

− 自部門の方針案に対して上位から示された要望及び期待について自部門の状況と対比し,ギャップが

ある場合には,対応を検討するとともに,上位の管理者と相談する。 

− 自部門の方針案及び中期計画の達成に必要となる経営資源を要望する。 

− 自部門の方針案の達成に必要となる関連する他部門及びパートナの支援を要請する。 

− 関連する他部門及びパートナの方針案について理解し,協力する。 

部門を統括する管理者は,自分が招集する,下位の管理者及び担当者,並びに関連する他部門及びパー

トナとのすり合わせにおいて,次の事項を行うのがよい。 

− 下位の管理者及び担当者,並びに関連する他部門及びパートナが参加するすり合わせのための場(会

議など)を設ける。 

− 上位の方針案及び部門の方針案の意図を十分説明するとともに,下位の管理者及び担当者からそれぞ

れの職場の実状を踏まえて,方針案に対する意見を提案してもらい,双方向の議論の場とする。 

− 下位の管理者及び担当者が,上位の方針案及び部門の方針案に対する理解を深め,連携して取り組み,

方針についての責任者となり目標を達成していくよう,自覚を促す。 

− 部門の方針に関わる下位の方針及び実施計画に責任をもつ者を指名し,具体的な案を立案させる。下

位の方針案及び実施計画案に対する要望及び期待を伝える。 

− 関連する他部門及びパートナとの連携の必要性を明確にし,連携する内容と連絡者を決定する。必要

に応じて協力を要請し,他部門及びパートナと連携して活動を計画する。 

− 一部門だけでは解決できない課題に対して,部門横断チームが結成され,チームメンバーへの参加が

要請された(又は要請する)場合は,部門横断チームにおける役割及び参画の仕方を確認した上で,

適任者を選任する(又は適任者の選任を依頼する。)。 

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11 

Q 9023:2018  

− 方策が確定できない場合など,必要に応じて,下位の管理者及び担当者,関連する他部門,パートナ

などをメンバーとする横断チームを編成し,目標の達成に関わる情報の分析,方策の立案及び実施な

どを担当させる。 

− 部門の方針案と,これを展開した下位の方針案及び実施計画との連携がとれていることを確認する(図

4参照)。下位の方針案及び実施計画が達成された場合に部門の方針(目標)が達成されるか,どの下

位の方針及び実施計画の寄与度が大きいかを検討する。また,部門の方針案から下位の方針案に,更

に実施計画になるにつれてより具体的になっているか確認する。系統図,マトリックス図などの技法

が活用できる。 

− 方策を実施するために必要な資源と利用可能な資源とを対比し,目標を達成する上での障害の除去を

検討する。 

重点課題
及び目標

方策1

方策2

方策3

方策1−1

方策1−2

重点課題

及び目標1

上位の管理者

下位の管理者

及び担当者

注記 方策の全てが展開されるわけではなく,例えば,“方策3”のように,上位の管理者が自ら実施する方策もある。 

図4−方針の展開 

5.2.4 

実施準備 

部門を統括する管理者は,下位の管理者及び担当者と協力し,期がスタートする前に,実施のための準

備として次の事項が確実に行われているようにするのがよい。 

− 資源の準備 

− 実施計画の立案 

− 管理項目及び管理水準の設定,並びに管理帳票の準備 

a) 資源の準備 部門の方針に基づいて展開した方策を計画どおり達成できるように,予算を含む必要な

資源を適切な時期までに準備するのがよい。また,方針の実施に必要な固有技術及び管理技術(改善

の手順,技法など)の教育及び訓練を行うのがよい。 

注記1 準備する資源には,人,施設及び設備,業務環境,情報,知的資源,供給者などのパート

ナ,財務資源などを含む。 

注記2 改善の手順としては,課題達成型QCストーリー(主に,新規課題の達成に適用できる。),

問題解決型QCストーリー(主に,慢性的な問題の解決に適用できる。)などがある。 

b) 実施計画の立案 部門の方針に基づいて導かれた方策のうち,更に下位に展開しないものについては,

実施計画を立案するのがよい。 

12 

Q 9023:2018  

実施計画を立案するに当たっては,当該の方策を実施する上でぶつかると考えられる障害及び不測

事態,並びにそれらの影響を洗い出し,これらに対応するための活動が含まれるようにするのがよい。 

実施計画では,次の事項を明確にするのがよい。 

− 実施計画の責任者,並びにその責任及び権限 

− 対応する上位の方針,並びにその目標値及び達成期限 

− 月単位など,あらかじめ定められた期間に実施する具体的な活動項目及び主担当者。活動項目には,

調査及び分析,改善活動などの実施を含む。 

− 実施計画の進捗を管理するために用いる管理項目,管理水準及び管理帳票 

− 計画どおりに進まなかった場合に,必要な処置をとる責任者 

− 自部門の活動がもたらす他部門への影響及び協力内容に基づく,必要な支援体制 

実施計画の内容については,具体的な活動を行うに当たって,事前に部門内外の関係者に説明し,

理解を深めておくのがよい。 

部門を統括する管理者は,実施計画に関係する人々の実施計画に対する合意を確実にし,一人一人

の業務計画に反映させるのがよい。また,実施計画達成に対する関与及び結果によって貢献度を評価

するのがよい。 

c) 管理項目及び管理水準の設定,並びに管理帳票の準備 期の途中及び期末における方針,方策及び実

施計画の達成状況及び実施状況を評価するために,管理項目及び管理水準を設定するのがよい。管理

項目及び管理水準を設定するに当たっては,次の事項を考慮するのがよい。 

− 管理項目は,期の途中段階において定期的にチェックできるものを選ぶ。結果で確認していたので

は処置が遅くなる場合は,結果を導く要因を総合的に評価する尺度を代替的な管理項目として用い

る。また,管理項目の定義が明確であり,効率的に測定できるものであり,達成状況及び実施状況

の傾向が把握できるものを選ぶ。 

− 管理項目については,期中のそれぞれの時期における管理水準(目標値及び管理限界値)を定める。

また,管理項目の推移を確認する時期又は頻度,及び確認する責任者を明確にしておく。 

注記3 方針において数値化された目標を設定している場合は,それがそのまま管理項目になるこ

とが多い。また,方策及び実施計画については,その実施段階での重要な節目を設け,節

目までに実施しなければならない活動に対する進捗度合いを管理項目とすることが多い。 

注記4 管理項目は,結果をチェックする結果系管理項目(管理点)と要因をチェックする要因系

管理項目(点検点又は点検項目)との区別に留意するのがよい。上位の職位は,主に目標

の達成状況を表す結果系管理項目を用いて管理し,下位の職位は,方策及び実施計画の実

施状況を表す要因系管理項目を用いて管理することが多い。 

注記5 管理項目は,方針管理及び日常管理で用いられるが,両者の管理水準の性格は異なる。 

方針管理の管理項目は,部門の方針及び実施計画と密接に関連し,その達成状況及び傾

向を適時に判断できることが必要である。方針管理の管理水準(目標値及び管理限界値)

は,重点課題の解決に望ましい現状打破の挑戦的な水準を設定し,多くの場合はよいプロ

セスへの改善を狙っている。このため,それぞれの時期における管理水準は,実施計画で

定められた実施事項と整合するよう,最終の目標値に到達するように変えるのがよい。 

一方,日常管理の管理項目は,部門の業務分掌と密接に関連し,業務の異常を早く確実

に検出できることが必要である。日常管理の管理水準(中心値及び管理限界値)における

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Q 9023:2018  

中心値は,現状で達成している水準を基に設定し,管理限界値はプロセスが安定状態かど

うかを客観的に判定する値とし,安定したプロセスの維持を狙っている。このため,それ

ぞれの時期における管理水準は,一定又は従来の延長線とするのがよい。 

管理項目及び管理水準は,グラフ又は表にし,実際の値を打点又は記入できるようにしておくのが

よい。また,それぞれの時期(月,週など)に実施すべき内容,実施した内容,管理水準を外れた場

合の原因追究の結果,これに基づいてとった処置などを記入できるような欄を設けた管理帳票を用意

しておくのがよい。これによって,方針及び実施計画の達成状況及び実施状況が関係者にとって分か

りやすいものになり,タイムリーにPDCAサイクルを回せるようになる。 

注記6 目標線及び管理限界値を記入した推移グラフは,“管理グラフ”と呼ぶことがある。 

注記7 管理限界は,“処置限界”と呼ぶことがある。 

5.3 

方針の実施及びその管理 

5.3.1 

実施計画に基づく実施 

部門を統括する管理者は,実施計画で定めた実施事項に関して,実施計画の担当者,責任者,上位管理

者及び関係者と連携し,月単位などの設定した期間でPDCAサイクルを回して方針達成のための活動を進

める。 

5.3.2 

実施状況の確認 

部門を統括する管理者は,方針を理解し,所期の計画どおりに目標を達成するように努める。そのため

に,実施計画の進捗を定められた頻度で確認し,最終目標を達成する上で異常はないかどうかを確認する。 

確認に当たっては,次の事項を行うのがよい。 

− 自分が責任をもっている管理項目について,管理水準(目標値及び管理限界値)を記入した推移グラ

フなどを用いて,実績と目標値及び管理限界値とを比較し,達成状況を確認する。 

− 関連する下位の方策及び実施計画について,その進捗状況を定期的に確認する。このとき,方針の浸

透度合いを,現場,現物及び現実で確認する。また,担当者の課題達成能力及び問題解決能力が十分

かどうかについても確認する。 

− 下位に対して,各人が責任をもっている管理項目が管理限界を外れたり,外れることが懸念されたり

する場合には,必ず報告するように指示する。 

− 適宜,状況報告及び相談を受け,部門及び部門横断チーム全体の関係者が連携し,協力して目標を達

成するように全体の進捗を管理する。 

5.3.3 

実施状況確認結果に対する処置 

部門を統括する管理者は,方針及び実施計画の管理項目が管理限界値から外れたり,外れることが懸念

されたりする場合,次の事項を行うのがよい。 

− 原因を究明する。その上で,その時点までの差異及び遅れをばん(挽)回するための処置をとる。 

− 必要に応じて,上位管理者又は関係者に必要資源の投入などの支援を要請する。 

− 方針管理の運営管理の側面での原因(実施計画を作っていない,資源の割当てをしていない,方針及

び実施計画が関係者に伝わっていない,担当者に対する必要な教育及び訓練が不足している,管理項

目及び管理水準が不適切であるなど)について,再発防止を行う。 

− 当初の方策及び実施計画では目標の達成が困難であることが判明し,新たな方策及び実施計画が必要

な場合,また,5.3.4に該当するような場合,方策及び実施計画の変更を考慮する。 

5.3.4 

変化点管理(内的要因及び外的要因の変化への対応) 

組織が方針管理で対象とする期間は,半年間又は1年間が一般的である。この期間に,次の変化に対応

14 

Q 9023:2018  

して,当初の方針,方策及び実施計画を変更する必要が生じることが考えられる。 

− 上位の方針が変わる,合併などで組織が変わる,経営資源の確保に支障が出る,想定していなかった

問題及び固有技術的な課題が発生するなどの内的要因の変化 

− 為替レートの大幅な変動,競合状況の変化,顧客及び社会のニーズ及び期待の変化,供給者,パート

ナなどの変更,地震,台風などの自然災害などの外的要因の変化 

部門を統括する管理者は,このような兆候を感度良く把握するとともに,その影響を評価し,部門の方

針の達成に可能な限り影響しないように,方策及び実施計画を変更するのがよい。また,部門の方針を変

更することが必要な場合には,そのことを上位管理者及び関係部門に速やかに伝え,方針の策定及び展開

と同様なプロセスで連携を図る。 

5.4 

期末のレビュー 

部門を統括する管理者は,部門の方針管理の状況について集約して総合的にレビューし,次期に取り組

むべき課題を明確にする。レビューに当たっては,次の事項を行うのがよい。 

− 部門の方針のうち,下位に展開したものについて,期末の報告書を基にレビューする。 

− 部門の方針について,目標と実績との差異を分析する。 

− 目標の達成状況と方策及び実施計画の実施状況との対応関係に基づいて,部門の方針管理の運営につ

いて見直す。 

− 部門の期末のレビューの結果を報告書にまとめて,上位管理者によるレビューを受ける。 

5.4.1 

下位に展開した方針についてのレビュー 

部門を統括する管理者は,下位に展開した方針の達成状況及び実施状況を下位の管理者及び担当者が作

成した期末の報告書に基づいてレビューをするのがよい。このとき,次の事項を考慮するのがよい。 

− 下位の管理者及び担当者,並びに関連する他部門及びパートナが集まってレビューを行うための場を

設定する。 

− 5.2.3の図4に示したような方針の展開の構造に基づき,部門の重点課題ごとに報告及び議論を行う。 

− 下位の管理者及び担当者が認識している今後取り組むべき課題を聞く。 

− 方針の達成状況及び実施状況に加え,方針管理の運営状況についても確認する。 

− 自分の指示及び支援,並びに経営資源の提供が適切だったかどうかを確認する。 

− 報告内容について不明な事項が生じた場合には,現場で,現物を,現実に確認する。 

5.4.2 

個別の方針ごとの目標と実績との差異分析及び原因分析 

部門を統括する管理者は,方針として取り上げた目標と達成した実績との差異分析を行い,当該の方針

に関わる領域において,次期の方針で取り組むべき課題を抽出するのがよい。差異分析に当たっては,次

の事項を考慮するのがよい。 

− 目標と実績とを時系列で比較する。また,平均だけでなく,データのばらつきに着目して分析する。 

− 目標と実績との差異を層別及びパレート分析し,差異を生じさせた重要な要因を見極める。 

− 目標の実績と方策及び実施計画の実施状況との対応関係,並びに目標と実績との差異を方針の展開の

構造に基づいて分析し,目標に対する方策の寄与の度合いを明確にする。 

− 方策及び実施計画に掲げながら実施できなかったことについて,実施できなかった理由を“なぜなぜ”

を繰り返して追究し,業務プロセスにおける原因を明確にする。 

− 競合他組織の実状を調査及び分析し,自組織の実績と比較する。 

注記 分析のための技法は,JIS Q 9024を参照することができる。 

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15 

Q 9023:2018  

5.4.3 

方針管理の面からの分析(目標の達成状況と方策及び実施計画の実施状況との対応関係の分析) 

部門を統括する管理者は,各々の重点課題に対して,当期の目標を達成したかどうか,対応する方策及

び実施計画が計画どおり実施されたかどうかを組合せで評価するのがよい。評価結果に基づいて,表2に

示す四つのタイプ(タイプA〜タイプD)のいずれであるかを判定する。 

表2−方針の達成状況及び実施状況のタイプ 

目標 

方策及び実施計画 

タイプA 

○(達成) 

○(実施) 

タイプB 

○(達成) 

×(未実施) 

タイプC 

×(未達成) 

○(実施) 

タイプD 

×(未達成) 

×(未実施) 

表2のそれぞれのタイプについて,次の事項を考慮して,分析を実施する。 

a) タイプA:方策及び実施計画を計画どおり実施し,目標も達成したタイプである。成功要因を分析す

るのがよい。目標を達成するために取り上げた方策及び実施計画のうち,目標の達成に大きく寄与し

たものは何か,方策及び実施計画が計画どおり実施できたポイントは何かを明らかにする。 

b) タイプB:方策及び実施計画を計画どおり実施しなかったにもかかわらず,目標を達成したタイプで

ある。策定した方策及び実施計画以外の要因で目標を達成したのであるから,結果よければ全てよし

とはせずに,方針策定時点で考慮し損なった要因及びその目標への寄与の度合いを把握する。例えば,

考慮し損なった要因としては,経営環境の変化,為替変動のような外的要因などが考えられる。方針

策定段階でこれらをなぜ考慮し損なったのかを追究する。また,なぜ方策及び実施計画が計画どおり

実施できなかったのか又はしなかったかの要因を追究する。 

c) タイプC:タイプBとは反対に,方策及び実施計画は計画どおり実施したが,目標が未達成なタイプ

である。方策及び実施計画は計画どおり実施したのであるから,目標達成のための方策及び実施計画

が見当違いであったのか,寄与の度合いが予想より小さかったのかなどを明らかにする。目標が未達

成の理由を外的要因又は他部門の責任に帰することは避け,自責要因の部分に着目することを基本と

する。 

d) タイプD:タイプAとは反対に,方策及び実施計画を計画どおり実施せず,目標も未達成だったタイ

プである。方策及び実施計画を計画どおり実施できなかった又はしなかった原因を追究する。 

部門を統括する管理者は,上記の判定及び分析の結果を部門として総合的に分析し(分布,推移など),

自部門における方針管理のプロセスについてレビューする。レビューに当たっては,次の点に着目するの

がよい。 

− 上位の方針,自部門の中期計画,前期のレビュー,経営環境の分析などを踏まえて,重点課題を絞り

込んだか,明確な目標を設定したか。 

− 自部門の特徴及び組織能力を十分に考慮して目標を設定したか。 

− 目標を達成するための方策が,目標と方策との関係を正しく考慮したものであったか,具体的であっ

たか。 

− 方策の実施に当たって,完了予定日,役割分担などを明確にした実施計画を定めていたか。 

− 目標の達成状況,並びに方策及び実施計画の実施状況を正しく評価できる管理項目を定めたか。途中

16 

Q 9023:2018  

の確認及び処置を確実に行ったか。 

− 必要な経営資源が適時かつ適切に充当できたか。 

− 関連する部門との連携はよかったか。 

5.4.4 

分析結果に基づく処置の検討 

部門を統括する管理者は,目標と実績との差異分析,及び目標の達成状況と方策及び実施計画の実施状

況との対応関係の分析に基づき,次の視点からとるべき処置を検討するのがよい。 

a) 次期以降の部門の方針及び中期計画に,分析の結果から必要と考えられる事項を反映する。 

− 引き続き取り組む必要のある方針は,次期の方針の重点課題の候補とする。 

− 中期計画は,期ごとに更新する場合,又は計画開始年度から完了年度まで計画を継続する場合のい

ずれの方式でも,関連する方針の分析結果に基づいて見直し,必要があれば更新する。 

b) 自部門が担当している技術及び管理に関して改善すべき事項は,固有技術及び管理技術の側面から再

発防止の処置をとる。例えば,技術標準の制定及び改訂,デザインレビューの仕組み及びプロセスの

見直しなど。 

c) 品質保証,原価管理,納期管理,安全管理,人事管理などの組織全体のマネジメントシステムに関し

て改善すべき事項は,トップマネジメントによる期末のレビューの機会などに当該事項を主管する部

門へ提案する。例えば,品質保証体系,原価管理体系などの仕組みに関わる改善事項など。 

d) 所期の目的を達成して次期への課題にならなかった方針(重点課題,目標及び方策)は標準化を行い,

次項を考慮して日常管理へ移行する。 

− 目標の達成状況を評価した管理項目が,日常管理の管理項目でなかった場合は,日常管理の管理項

目として追加し,達成した実績値を基に管理水準を定める。また,日常管理の管理項目であった場

合は,従来の管理水準を達成した実績値を基に改訂する。 

− 目標の達成に有効だった方策は,業務プロセスに反映し,プロセスフローチャート,作業標準,技

術標準などの関係標準の制定及び改訂を行うとともに,その教育及び訓練を行い,日常業務で確実

に遂行できるようにする。 

e) 自部門の方針管理のプロセスに関して改善すべき事項(5.4.3の分析に基づいて明らかになった事項)

は,次期のプロセスに反映する。 

5.4.5 

レビュー報告書をまとめ,上位管理者のレビューを受ける 

部門を統括する管理者は,当期の重点課題ごとに期末のレビューの結果を整理した報告書を作成し,次

期への課題を明確にするのがよい。期末のレビュー報告書の様式の例を図D.4に示す。 

上位管理者による期末のレビューへのインプットとして,期末のレビュー報告書及び実務で使用してい

る帳票を用いて,方針管理の重点課題,目標及び方策に関する計画と実績との差異分析結果を報告すると

ともに,次期への課題提案などを行う。 

上位管理者による期末のレビューにおける指摘事項については,次期の方針及び活動に反映させる。 

5.5 

管理者の心構え 

5.5.1 

管理者としてもつべき認識 

部門を統括する管理者は,次のような認識をもつのがよい。 

− 統括している部門の方針管理を実施する全責任を負っている。また,部門の方針の達成なくして,組

織全体の方針は達成できない。関係する上下左右の職位及び職場との調整,各種予想されるリスクの

事前回避などの全てにわたって配慮する必要がある。 

− 経営資源は与えられるものではなく,方針の必達に向けての必要な要件を自分の努力で獲得していく

17 

Q 9023:2018  

ことが管理者の役割である。 

なお,人的資源はすぐに獲得するのが難しいことが多いため,中長期的な視点に立って教育及び訓

練を始めることも必要である。 

− 組織にとって必要な自部門の方針を上位に提案することが重要である。そのためには,a) 自部門の現

状を客観的に把握した上で,b) 将来の究極的なありたい姿,c) 半年先,1年先,2年先などの有期限

での目指す姿,並びにa)〜c) と組織の目的及び目標との関わりを日頃から熟慮していることが必要と

なる。これらの事項を上位に提案して上位の方針に反映する活動が組織全体の活性化につながり,当

該組織の方針の達成確率向上にもつながっていく。 

− 方針を部下(下位の管理者及び担当者)に割り当てて,管理者として管理側面に徹するだけが管理者

の役割ではない。緊急度及び難易度が最も高い課題を管理者自身が中心となって担い,所期の目標を

達成していくことによって,自分の力量アップとなるばかりでなく,部下の育成の場となり,リーダ

ーシップを発揮しやすい環境作りにもつながる。 

5.5.2 

管理者としての部下への対応 

効果的かつ効率的な組織運営のためには,部下一人一人が最大限に能力発揮することができるような配

慮及び環境整備が重要となる。部門を統括する管理者は,方針の策定に当たって,部下の意見及び提案を

求めていることを明示し,十分に引き出せるような機会及び時間をとり,部下が進言しやすい場作りを心

掛けるのがよい。また,方針の展開に当たって次の事項に配慮するのがよい。これらによって,部下のモ

チベーションの向上につながり,結果として方針の達成にもつながる。 

− 方策及び実施計画の担当を決める際に,部下一人一人の特性及び希望を十分に考慮し,それらに応じ

た割当てを行う。 

− 日頃から,部下一人一人が自分の強みをいかせるように,各自がどの領域でどのような価値を発揮し

ていくかというキャリアプランの作成を支援する。 

− 方策及び実施計画を割り当てるときには,部下に単に内容だけを指示するのでなく,“なぜこの方策及

び実施計画が部門にとって重要なのか”,“なぜこの方策及び実施計画をあなたに割り当てることに決

めたのか”,“それによって,あなた自身のキャリアプランのどの部分がどのように伸びると思ってい

るか”を説明し,理解できていることを確認する。 

− その上で,部下一人一人を組織の構成員としてなくてはならない価値ある存在として見ていることを

明確に伝える。 

部門を統括する管理者は,全て自分で行う,又は信頼できる人を集めて行うという考え方に固執せず,

部下に重要な方策及び実施計画を任せるのがよい。スピードが要求される現在の組織運営では,実務を行

いながら教育及び訓練し,OJT(日常業務の中での従業員教育)でやらせてみながら壁を乗り越えさせる

ことが現実的であり,この動きが組織力向上へつながる。その上で,最後は自分が全て責任をとるという

強い意識と姿勢をもって,部下に任せても要所要所で成功に導くようにフォローしていくことが,管理者

の重要な役割である。 

部門を統括する管理者は,環境の整備に関して次の事項を考慮するのがよい。 

− 様々な業務の優先順位を明確にする。 

− 外部及び関連する部門から必要な情報が入手できるように,協力及び支援が得られるようにする。 

− 必要な経営資源が活用できるようにする。 

− 果敢に挑戦した上で失敗することを容認する職場風土を作る。 

− 部下の取組み姿勢及びプロセス,得られた成果を評価し,人事考課へ反映できるようにする。 

18 

Q 9023:2018  

− 必要な知識及び能力を身に付けるための教育及び研修を受けられるようにする。 

5.5.3 

報告,提案及び相談における管理者としての配慮 

部門を統括する管理者は,上位管理者へ報告,提案及び相談する場合,又は下位から報告,提案及び相

談を受ける場合,次の事項を考慮するのがよい。 

− 目的,並びに立場及び役割を常に意識する。 

− 重点課題,目標及び方策を示し,目標と実績との差異だけにとどまらず,方策及び実施計画の実施状

況及び目標への寄与度を述べた上で,現状の問題点及び期末見込みを明示する。 

− 事実及びデータに基づいて行う。事実及びデータは,スポット的ではなく,上昇か下降か,過去との

対比などの傾向を見る。また,データは層別し,どんぶり勘定又は平均だけで見ることで内容が不明

確にならないようにする。 

− 論理の一貫性及び有効性を高めるために,QCストーリーを活用する。 

組織全体の方針管理の進め方 

6.1 

トップマネジメントのリーダーシップ 

組織全体のパフォーマンスを改善するためには,組織が目指す方向についての共通の認識を形成し,そ

の実現に向けてボトルネックとなる課題を通出し,全員の参加を得て確実に解決していくことが重要であ

る。トップマネジメント(組織の社長,役員,事業部長など)は,このような状況を作り上げるために,

方針管理が役立つことを組織に認識させ,その導入及び活用を図るとともに,その実践に深く関わり,有

効に機能させていくのがよい。 

具体的には,次のことを行うのがよい。 

a) 組織の使命,理念,ビジョン,経営環境などに基づいて中長期経営計画を策定する(6.2参照)。 

b) 中長期経営計画に基づいて組織全体の期ごとの方針(組織方針)を策定する(6.3参照)。 

c) 組織方針を組織全体に展開する(6.4参照)。 

d) 方針の実施に必要な予算,人,インフラストラクチャなどの資源を確保する(6.4及び6.5参照)。 

e) 各部門又は部門横断チームとの直接のコミュニケーションを通じて,方針の展開及び実施のプロセス,

並びに方針の達成状況を診断する(6.6参照)。 

f) 

方針の達成の状況及びそのプロセスを,期の途中に適宜評価するとともに,期末にレビューする(6.7

参照)。 

g) 人々が組織の方針を達成することに十分に参画できる内部環境を作り出し,維持する。 

h) 方針管理を推進するための組織化を行う。組織の規模が大きく,機能又は部門の数が多い場合は,方

針管理に関する仕組みを構築し,必要な教育を行い,進捗状況をトップマネジメントに報告する推進

部門を設置又は任命する。 

6.2 

中長期経営計画の策定 

方針管理の進め方は,箇条5にも記載したように,期ごとに,組織方針を策定し,これを組織全体に展

開して実施し,期末にレビューを行って次期の組織方針に反映することが基本である。ただし,これだけ

では,経営環境の変化に伴って期によって方針が大きく変わる可能性があるため,技術開発,人材育成,

新事業開拓など,成果が数年後に出るような活動については適切な方向付けが難しくなる。このため,組

織は,中長期経営計画を策定し,これを基に期ごとの組織方針を策定するのがよい。 

中長期経営計画とは,組織によって正式に策定された,事業を将来的にどう進めるかに関する計画であ

り,顧客に対してどのような価値を提供するのか,それをどのような方法で実現するのかに関する戦略で

19 

Q 9023:2018  

ある。通常,中期は3〜5年,長期は5〜10年を意図している場合が多い。内容としては,次の項目を含め

るのがよい。 

− 対象とする顧客,並びにそのニーズ及び期待 

− 提供する製品及びサービス,並びにこれらを通して顧客に提供する価値 

− 製品及びサービスを提供する方法及びタイミング 

− 競合する他の組織をりょうが(凌駕)する方策 

− 人,インフラストラクチャ,作業環境,情報,供給者及びパートナ,天然資源,財務資源などの必要

資源 

− バリューチェーン(顧客に価値を提供するプロセス)を構成する各機能(技術開発,生産,物流,販

売など)に対する方向付け,及び機能の実現において鍵となる基盤(人材育成,情報通信技術など)

に対する方向付け 

中長期経営計画の策定に当たっては,次の手順に沿って進めるのがよい。 

a) 組織の使命,理念及びビジョンを確認する。 

b) 市場,顧客,社会動向など組織を取り巻く外部環境の変化を分析する。顧客視点でニーズ及び期待の

変化を把握するとともに,社会における関連固有技術及び情報通信技術の進展の方向を確認する。そ

れを基に,組織の使命,理念及びビジョンを達成する上での機会及びリスクを明らかにする。 

c) 組織の経営資源(技術,人材,財務など)の実態,特に今までの中長期経営計画の達成及び実施状況

に基づく反省点を明らかにし,競合する他の組織と比較して強み及び弱みを把握する。 

d) 環境が変化する中で,不確実性の高い要因がある場合には,複数の起こり得るシナリオを描く。 

e) 複数のシナリオに対し,競合分析,リスク分析などを行い,どのシナリオが起こってもリスクを回避

できる方向を検討する。 

f) 

資源配分を考慮して,ビジョンを達成する計画を決定する(将来のありたい姿の実現を目指す。)。 

なお,組織による中長期経営計画の策定に伴い,技術開発,人材育成,新事業開拓,情報システムなど,

結果が出るまでに数箇年を要する活動を担当する部門は,各部門の中期計画を立案し,トップマネジメン

トへ提言を行い,すり合わせを行うのがよい(5.1参照)。 

策定した中長期経営計画については,時期を決めて見直しを行うのがよい。見直しの方法としては,計

画開始年度から完了年度まで計画を固定して完了年度に次の期間の計画を定める方式,長期の計画を策定

した上で期ごとに見直すローリング方式(変化の激しい場合に有効である。)などがある。 

注記 中長期経営計画の策定を効果的かつ効率的に進めるための手法には,マクロ分析,業界構造分

析,プロダクトポートフォリオ分析,市場分析,バランストスコアカード(BSC),ベンチマー

キング,SWOT分析,シナリオプランニング,戦略要因分析などがある。 

6.3 

組織方針の策定 

組織は,次の事項を考慮し,組織全体として目指す方向をより具体化した組織方針を期ごとに策定する

のがよい。これによって,中長期経営計画の達成に向けた着実な取組み及び経営環境の変化への迅速な対

応が可能となる。 

− 中長期経営計画の中で当期に実施すべき項目 

− 組織が置かれている経営環境の分析において特定された機会及びリスク(顧客のニーズ及び期待の変

化など),並びに組織能力の分析又は競合する他の組織との能力比較において明らかとなった組織の強

20 

Q 9023:2018  

み及び弱み(技術,人材,財務などの強み及び弱み)。 

− 前の期において,目標未達となった重点課題,並びに期末のレビュー及び過去数年間の実績の分析に

よって明らかになった組織の課題。 

組織方針の策定に当たっては,その内容をより具体的なものにするために,重点課題,目標及び方策の

三つを明確にする。重点課題,目標及び方策をセットで示すことで,組織として目指す方向が明確となる。 

− 重点課題を多く挙げすぎると,方針の達成が困難となる。従来の延長線上で達成できるものは除き,

大幅な改善及び革新を狙うものだけに絞り込む(5.2参照)。従来の水準を維持する項目を合わせて示

すことは,方針管理の位置付けを曖昧にするために好ましくない。どうしても一緒に示したい場合に

は,重点課題がどれかが分かるよう印を付けるなどの工夫を行う。 

− 目標については,顧客のニーズ及び期待,事業分野(製品及びサービスの種類),競合他組織などの時

間的変化を把握した上で,策定した中長期経営計画から必要とされる期の水準を,確実に達成できる

ように設定する(5.2参照)。また,達成できたかどうかが客観的に判断できることが大切である。 

− 方策については,詳細な方策を指示するのでなく,下位が方策を検討するための方向性を示すものに

とどめる(5.2参照)。これによって,組織全体に方針を展開する過程において,様々な方策を検討す

る自由度が生まれる。これは最上位の方針である組織方針では特に重要である。 

組織方針の策定は,組織方針の展開が期の開始前に終了するよう,今期の事業見込みの予想及び来期の

事業計画の立案に伴って開始するのがよい(例えば,期の開始の2〜3か月前から)。 

策定した組織方針については,説明会,説明資料,ビデオなどを活用して,トップマネジメント自ら説

明し,組織の全員に周知するのがよい。このとき,方針の意図,方針と各人が担当する業務とのつながり

が明確に理解できるようにするのがよい。 

6.4 

組織方針の展開 

組織方針は,組織内部の各部門,外部の関係組織などに展開することによって具体的な改善及び革新の

計画となる。組織は,組織方針の展開に当たり,次のことを確実にするのがよい。 

− 上位者が方針の意図を関連する下位者を集めて十分説明し,下位者が方針及びその意図,並びに達成

に向けた自分の役割を理解し,目標を達成するための具体的な方策についてのアイデアを出し合い,

相互に連携を図ることのできる場を設ける。 

− 方針に最も寄与の大きい部門が,必要に応じて他部門又は関係する他組織の協力を要請しながら,重

点的に活動に取り組む。ただし,一つの部門では解決が困難な場合,又は目標と方策との因果関係若

しくは方策が明確でない場合には,関係する部門及び組織で部門横断チームを結成する。このチーム

は,目標達成に関する様々な情報を分析し,方策を立案し,実施する(5.2参照)。 

− 結果として得られた方針の展開が,各階層の上位と下位で,目標と方策との因果関係に基づいて密接

につながっているとともに,下位になるに従って,より具体的になっている。また,各階層の重点課

題の数は3〜5項目程度に重点化されている。 

− 方針の展開によって導かれた個々の活動について,具体的な実施計画が策定されている。また,策定

された計画がそのとおり実施されているかどうか,結果として目標が達成されたかどうかを評価し,

問題がある場合には遅滞なく処置をとれるよう,管理項目及び管理水準が設定され,これらを用いた

進捗状況の確認の場が計画されている(5.2参照)。 

− 実施に必要な資源(人,インフラストラクチャ,作業環境,情報,供給者とパートナ,天然資源,財

21 

Q 9023:2018  

務資源,固有技術,マネジメントシステムなど)について,必要な時期までに準備できるよう計画さ

れている。 

組織は,上記のような方針の展開が,組織の第一線まで行われているかどうかを確認するために,方針

の展開に関わる帳票などを整理し,系統図,マトリックス図などを用いてつながりを可視化するのがよい。

これらの資料を基に,トップマネジメントが,直接各部門から当該部門における方針の展開の状況及び結

果をヒアリングするのも有効である。 

6.5 

方針の実施及びその管理 

方針の展開によって導かれた実施計画を組織全体として確実に実施することで,事業又は業務プロセス

の改善及び革新が進む。また,設定した管理項目をチェックし,管理水準から外れている場合に迅速な処

置をとることで,新たな知見の獲得及び環境変化に応じた柔軟な対応ができる。このため,組織は,展開

された組織方針の実施に当たり,次の事項が確実にできるようにするのがよい。 

− 担当者が実施計画に沿って着実に改善及び革新の活動を行っている。各部門を統括する管理者,他部

門及び他組織からの支援及び協力が適切に得られている。 

− 管理項目に基づいて実施計画の進捗,及び目標の達成状況を定期的に確認し,管理水準を外れた場合

には,その原因が追究され,必要な見直しが行われ,実施計画に織り込まれている(5.3参照)。 

− 経営環境の変化などによって,実施計画どおりの実施若しくは目標の達成が困難な場合,又は目標を

上回る大幅な達成が予想される場合には,必要な責任及び権限をもつ上位管理者への報告を行い,組

織方針の展開に関する見直しが行われている。 

− 上位者が,下位者の方針管理の実施状況を把握及び評価し,必要な指導を行っている。 

6.6 

トップマネジメントによる診断 

トップマネジメントは,組織の人々に方針を浸透させ,参画意識をもたせるために,各部門における方

針の展開状況及び実施状況の診断を行うのがよい。この診断は,現場,現物及び現実による診断を通じて,

トップマネジメントが,各部門の課題及び問題,方針達成のためのプロセス,並びに方針の達成状況を把

握するためにも有効である。 

トップマネジメントによる診断は,次の手順で実施するのがよい。 

a) 目的に応じて,期の適切な時点で,各部門又は部門横断チームに対して診断を実施するよう計画する。 

b) 診断者は,対象部門又は部門横断チームの診断に必要な組織のトップマネジメント数名で構成する。

被診断者は,対象部門及び部門横断チームの責任者,並びにその部門又は部門横断チームの管理者及

び担当者で構成する。 

c) 被診断者である部門又は部門横断チームの責任者は,トップマネジメントに対して,組織方針に沿っ

た部門又は部門横断チームにおける,方針の展開及びその実施状況を説明する。その後,トップマネ

ジメントは,実施状況を現場,現物及び現実で確認する。 

d) トップマネジメントは,診断の結果から,組織方針の浸透度合いを把握するとともに,部門又は部門

横断チームの管理能力及び問題解決能力を評価する。また,部門又は部門横断チームの課題及び問題

を把握し,トップマネジメントの立場から指摘及び助言を行う。 

e) 部門又は部門横断チームは,診断で明らかとなった課題及び問題について,改善を実施するとともに,

必要に応じて報告を行う。 

トップマネジメントは,組織方針の策定及び展開の前提としていた経営環境に常に注意を払い,大きく

22 

Q 9023:2018  

変わったと判断した場合には,遅滞なく組織方針及びその展開を見直し,組織が経営環境の変化に対して

すばやく対応できるようにリーダーシップを発揮するのがよい。  

注記 トップマネジメントによる診断は,方針管理だけでなく,日常管理の実施状況,人材の育成状

況,従業員の意欲などの実態を的確に把握する上で有効である。 

6.7 

期末のレビュー 

組織は,期末には,組織方針及びその展開に基づく各部門又は部門横断チームの実施計画の実施状況及

び方針の達成状況を集約し,次期の組織方針の策定及び展開に反映させるのがよい。これによって,実施

結果を踏まえて期単位でPDCAサイクルを回すことが可能となる。組織は,期末のレビューを行うに当た

って,次のことを確実にするのがよい。 

− 各部門又は部門横断チームにおいて実施計画の実施状況及び目標の達成状況の評価を行い,予定どお

り実施できなかったもの,定められた期日までに目標値を達成できなかったものを明らかにする。ま

た,目標の達成状況と関連する方策及び実施計画の実施状況とを対応付けて評価する(5.4参照)。 

− 達成できなかったもの及び実施できなかったものについて,事実及びデータに基づいて,関連する事

業又は業務プロセスの観点からの原因の追究を行い,次期以降に取り組むべき課題を明確にする(5.4

参照)。 

− 目標の達成状況と関連する方策及び実施計画の実施状況とを対比し,方針の展開並びに方針の実施及

びその管理の視点からの原因追究を行い,次期以降の方針管理において改善すべき点を明確にする。 

組織全体の方針管理に責任をもつ人は,表2の判断基準に基づく図5のような資料を用い,方針管理の

展開並びに方針管理の実施及びその管理の実態を把握するのがよい。組織全体として,タイプA〜タイプ

Dのどれが多いかを明らかにすることで,方針の展開並びに方針の実施及びその管理の方法の弱さが明ら

かとなる。また,部門及び階層による層別を行うことで,どの部門又はどの階層の展開及び実施が弱いの

かを明らかにすることができる。原因追究によって明らかとなった方針の展開及び実施のプロセスにおけ

る弱さについては,その克服のための方法を検討し,次期の方針の展開及び実施にいかすのがよい。例え

ば,タイプB及びタイプCが多く,方針の展開において十分な議論が行うことができていないことが明ら

かになった場合には,議論の仕方に関する工夫を行う。また,タイプB及びタイプDが多く,方針の実施

において十分な進捗管理が行えていないことが明らかになった場合には,進捗管理の方法に関する工夫を

行う。 

トップマネジメントは,当期末に,各部門による期末のレビューの報告を受け,次期の組織方針の策定

及び中長期経営計画の見直しに反映させるべき事項を把握するのがよい。この際,単に成果だけを見るの

ではなく,そのための各部門の取組みのプロセスにも着目するのがよい。また,顧客の満足,その他の利

害関係者(従業員,関係組織,供給者など)の満足,人材育成,関連固有技術及び情報通信技術の獲得及

び活用,組織の社会的責任などの多面的な視点から今後取り組むべき事項を把握する機会とするのがよい。 

期末のレビューは,組織の第一線から最上位に向かって順次行うのがよい。方針の策定及び展開と連動

して,前倒しで実施するのがよい(例えば,期の開始の2〜3か月前から)。この時点では,実績がまだ出

ていないが,実績見込みを予想して行うのがよい。 

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23 

Q 9023:2018  

組織全体 

〇〇部門 

□□部門 


織 

部 










注記 〇〇部門は,課及びグループレベルのタイプDが多く,方針の実施における進捗管理が十分に行えてい

ないと考えられる。他方,□□部門は,組織−部,並びに部−課及びグループにおけるタイプCが多く,
方針の展開において十分な議論が行うことができていないと考えられる。 

図5−目標の達成状況と方策及び実施計画の実施状況とから見た方針管理の弱さの分析の例 

タイプA

52%

タイプB

10%

タイプC

17%

タイプD

21%

タイプA

53%

タイプB

12%

タイプC

10%

タイプD

25%

タイプA

50%

タイプB

8%

タイプC

25%

タイプD

17%

タイプA

60%

タイプB

9%

タイプC

13%

タイプD

18%

タイプA

50%

タイプB

13%

タイプC

10%

タイプD

27%

タイプA

70%

タイプB

5%

タイプC

15%

タイプD

10%

タイプA

67%

タイプB

5%

タイプC

8%

タイプD

20%

タイプA

55%

タイプB

5%

タイプC

10%

タイプD

30%

タイプA

80%

タイプB

5%

タイプC

5%

タイプD

10%

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24 

Q 9023:2018  

方針管理の推進 

方針管理はこれを適用しようとする組織全体で実践していく必要がある。このため,方針管理の推進に

ついて,中長期及び短期の推進計画を立案し,その下でPDCAサイクルを回していくのがよい。このよう

な方針管理の推進は,組織のトップマネジメントが率先して行う必要がある。 

なお,規模が大きい組織では,推進のための実務を経営企画部門,TQM推進部門など専門の部署が担当

することもある。 

推進計画の立案に当たっては,方針管理の推進時期を導入期,展開期及び運用期に分けて検討するのが

よい。このとき,組織の特徴,実状及び文化を考慮することが大切である。また,方針管理の導入期(準

備を含む。),展開期及び運用期によって,推進事項の重点を変えるのがよい。それぞれの期において,重

点を置くべき事項を表3に示す。 

方針の展開を通して明確となった課題及び問題への取組みは,それに責任をもつ既存の組織が担当する

のが基本となるが,課題及び問題ごとに編成する部門横断チーム又は部門ごとの改善チーム,職場ごとに

編成し,継続的に改善に取り組むQCサークルなどによって行われる場合もある。このため,方針管理を

有効に機能させるためには,これらの小集団活動に関する仕組みも合わせて整備し,推進するのがよい。 

また,方針管理の導入に当たっては,現場での日常管理の強化から始め方針管理へ進化させる場合と,

トップマネジメントの指揮の下方針管理から入る場合とがあり得る。どちらがよいかは,組織の状況によ

って見極めるのがよい。 

表3−導入期,展開期及び運用期における方針管理推進の重点 

期 

推進の重点 



組織の構成員が方
針管理の内容及び
意義を理解してい
ない 

・ 推進者は方針管理の仕組み,その他基本事項について十分に熟知しておく。 
・ 方針管理のための規定,指針,帳票などの仕組み作りを進める。 
・ 組織全体に方針管理に関する理解を浸透させるため,教育に重点を置き,成功例を

作る。 



方針管理を実践し,
成果の出た部門が
幾つかある 

・ 部門間における取組みのばらつき,うまくいっている部分とうまくいっていない部

分が明らかになるようにする。 

・ 活動の評価及び結果のフィードバックに重点を置く。 
・ 仕組みの弱さを顕在化させ,改善する。 



一通りの方針管理
が各部門で実施さ
れている 

・ より長期的,戦略的かつ部門横断的な取組みを目指して,仕組みを進化させる。 
・ 各部門において方針管理が確実に行われるよう,継続的教育(方針管理の意義など)

に重点を置く。 

7.1 

方針管理の教育 

方針管理を浸透させるためには,組織のあらゆる階層の人に方針管理に関する教育を計画的に行う必要

がある。特に導入当初の段階では,方針管理の目的と意義を組織全体に周知することが必要不可欠である。

また,方針管理の意義及び内容は,形式及び様式の中に埋もれて,いつしか忘れられていく傾向にあるた

め,方針管理の教育は一度行っただけでは十分とはいえず,繰り返し,継続的に行う必要がある。 

各階層に対して行うとよい主な教育内容を表4に示す。当然,方針管理の教育が有効に機能するために

は,方針管理の基礎となるTQMの教育が必要であり,表4にはこれらも合わせて示してある。 

方針管理の教育は,集合研修だけでは十分な効果を発揮しない。それぞれの部門の業務及びその直面し

ている課題に応じたOJT及び指導が必要である。上位管理者は,下位の管理者及び担当者の方針管理の実

施状況について把握し,指導及び支援を行うのがよい。このため,上位管理者に対する教育は特に徹底す

background image

25 

Q 9023:2018  

るのがよい。また,各部門が他の部門が行っている方針管理の良いところを相互に学ぶための機会を工夫

及び設定することも有効である。 

表4−方針管理に関する教育の対象者と主な内容 

対象者 

主な教育の 

機会 

方針管理の教育内容 

方針管理の基礎となる 

TQMの教育内容 

役員 

役員会議 

・ 方針管理の意義 
・ 方針管理におけるトップマネジメン

トの役割 

・ トップマネジメントによる実施状況

の診断における診断方法 

・ TQMの原則 

管理職 
(部課長
など) 

管理者研修 

・ 方針管理の基本(意義及び考え方) 
・ 方針管理の進め方 
・ 方針管理における管理者の役割 

・ TQMの原則 
・ 日常管理及び小集団活動(QCサーク

ル活動,チーム改善活動など)の仕組
みと実践及び指導方法 

・ 改善の手順(問題解決法,課題達成法) 

一般職 

階層別研修 
(5年次,10年
次など) 

・ 方針管理の基本(意義及び考え方) 
・ 方針管理の進め方 
・ 方針管理と小集団活動(QCサークル

活動,チーム改善活動など)との関係 

・ 改善の手順(問題解決法,課題達成法) 
・ QC七つ道具などのQC手法 
・ 日常管理及び小集団活動(QCサーク

ル活動,チーム改善活動など)の実践
方法 

新入社員 新入社員研修 

(集合教育) 

・ 課題及び問題を明確にする方法 
・ 課題及び問題に取り組む方法 

・ QC的ものの見方及び考え方 
・ 改善及び管理の進め方 

注記 上位の対象者は,下位の対象者の教育内容を理解しておくのがよい。 

7.2 

方針管理のための標準,帳票及びツールの整備 

方針管理は,部門間の連携が重要となるため,それぞれの部門が別々のやり方で実施するのは好ましく

ない。このため,方針管理の進め方を規定,指針などに定めて展開するのがよい。この規定及び指針は,

箇条5〜箇条7の内容を基に作成するのがよい。 

方針管理を効率的に進めるには,適切な帳票を定めて活用するのがよい。必要となる帳票としては次に

示すものがある。 

− 方針書 

− 実施計画書 

− 実施状況確認書 

− 期末のレビュー報告書 

附属書Dに典型的に用いられるこれらの帳票の例を示す。 

なお,規定及び指針並びに帳票を整えることは,一定の方法を浸透させる上では役立つ反面,どうして

も形式だけをまねる傾向に陥りやすいので注意が必要である。方針管理に関する教育を適切に行い,何の

ためにそうするのかということを教育し,理解及び納得してもらうのがよい。 

方針管理に関する実施計画の進捗状況及び管理項目の推移状況を確認し,計画どおりに進んでいない場

合及び管理水準を外れている場合,組織全体に共通する原因を追究したりするためには,様々な情報を横

断的に見る必要がある。このため,情報システムを整備し,上記の帳票類及びそれに関するデータ全体が,

これらの上で一括管理できるようにしておくのがよい。 

26 

Q 9023:2018  

7.3 

方針管理の評価 

組織全体及び各部門における方針管理レベルを向上させるためには,方針管理の実施状況について定期

的かつ体系的な評価を行うのがよい。 

評価に当たっては,方針管理による成果(方針が達成できているかどうか。)だけでなく,その成果を出

すための活動状況(プロセス)との対応関係も併せて評価するのがよい。また,人によって評価がばらつ

かないように,評価基準を明確にするのがよい。附属書Eに評価基準の例を示す。この表の評価項目は,

箇条5の各項に対応している。また,レベルは5段階で設定しており,考え方及び仕組みがない状況から,

良い工夫がされており,大いに役立っている状況までをカバーしている。各々の評価項目についてどのレ

ベルにあるのかをチェックすることによって,どのような点が遅れているのか進んでいるのかが客観的に

評価できる。また,部門ごとに適用し,部門間の差異を比較することで実態をより詳細に把握できる。 

評価は,自己評価が基本である。評価を行う場合には,帳票,実際の実施状況などの事実を確認し,そ

の結果に基づいて判断する。自己評価による偏りを防止するため,複数人による評価を行うのがよい。ま

た,各々の評価項目に重みを付けて点数化し,方針管理のプロセスごとの評価点をレーダーチャートに表

すことでどこに問題があるかを把握できる。このような評価を行うことで,それぞれの部門が自組織の方

針管理レベルを自覚し,改善目標を設定できる。さらに,これに方針管理推進部門などの第三者による評

価を組み合わせることによって,より客観性を増すことができる。 

評価結果については,年度による進捗具合及び部門間の相違をまとめ,それぞれの部門の強み及び弱み

を把握し,今後の支援策など方針管理レベルを向上させるためのデータとして活用する。また,組織全体

の集計結果についても,その傾向を評価し,今後の推進計画に反映する。 

上記のような評価基準を用いた自己評価に加えて,外部専門家による診断及び審査を受けることも有効

である。これによって,自分たちでは気が付かなかった不十分な点を明らかにすることができるとともに,

今後の改善に向けたヒントを得ることができる。 

7.4 

部門及び個人の評価とのリンク 

方針管理が事業又は業務プロセスの改善及び革新を促進するものであること,その成否によって中長期

経営計画の達成が左右されることを考えると,方針管理の実施状況の評価及び方針管理を通して達成され

た成果を部門及び個人の評価に反映するのは自然である。この点は,従来必ずしも明確にされてこなかっ

たが,グローバル化が進み,働き方が多様化している時代においては,方針管理と部門及び個人の評価と

の関係を明確にしておくのがよい。 

ただし,評価に当たっては,短期的な評価及び結果だけの評価では問題が生じるため,期間をどう設定

するか,プロセス系の評価をどのように行うか,目標値の妥当性及び部門間の比較を行うための評価をど

うするのかといったことを考慮するのがよい。 

27 

Q 9023:2018  

附属書A 

(参考) 

総合的品質管理における方針管理の役割及び位置付け 

A.1 総合的品質管理において中核となる活動 

TQMとは,顧客及び社会のニーズを満たす製品及びサービスの提供並びに働く人々の満足を通した組織

の長期的な成功を目的とし,プロセス及びシステムの維持向上,改善及び革新を,全部門及び全階層の参

加を得て行うことで,経営環境の変化に適した効果的かつ効率的な組織運営を実現する活動である。 

TQMの中で中核となる活動は,プロセス及びシステムの維持向上,改善及び革新である(図A.1参照)。

これらの説明を,次に示す。 

− 維持向上(狭い意味の管理) 目標を現状又はその延長線上に設定し,目標からずれないように,ず

れた場合にはすぐに元に戻せるように,更には現状よりも良い結果が得られるようにする活動である。 

− 改善 目標を現状より高い水準に設定して,問題又は課題を特定し,問題解決又は課題達成を繰り返

す活動である。 

− 革新 維持向上及び改善が組織の内部におけるプロセス及びシステムの運用並びに学習を通したノウ

ハウの向上に基づいているのに対し,組織の外部及び組織内の他部門で生み出された新たなノウハウ

の導入及び活用などによるプロセス及びシステムの不連続な変更である。 

なお,上記の維持向上及び改善をまとめて広い意味で“改善”という場合がある。 

維持向上,改善及び革新はバランスよく行うことが大切である。維持向上だけを行ってもプロセス及び

システムがもつ潜在能力を引き出すことができない。また,マンネリ化が進み,プロセス及びシステムに

対する関心が薄れ,次第にレベルが下がってくる。他方,改善及び革新だけを行っても成果を継続できな

い。また,そのことによって改善及び革新への意欲が薄れ,良い成果が得られなくなる。改善及び革新を

とおして得られた業務に関するノウハウが維持向上のインプットとなり,活用されること,逆に,維持向

上では解決が難しい課題及び問題が改善及び革新へのインプットとなることが大切である。 

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28 

Q 9023:2018  

改善

維持
向上

革新

改善

維持
向上

維持
向上

時間









図A.1−維持向上,改善及び革新の関係 

A.2 維持向上,改善及び革新の組織的推進 

全部門及び全階層の参加を得て維持向上,改善及び革新を絶え間なく実践するためには,更に,これら

を顧客及び社会のニーズを満たす製品及びサービスの提供と,働く人々の満足につなげるためには,次の

事項に組織的に取り組むことが必要である(図A.2参照)。 

− 品質保証 品質保証は,顧客及び社会のニーズを満たすことを確実にし,確認し,実証するために,

組織が行う体系的活動である。検査,クレーム処理,外部監査の対応などと誤解されている場合があ

るが,より広い意味をもつ。狙いとする製品及びサービスを効果的かつ効率的に生み出せるプロセス

を確立するための“プロセス保証”,顧客のニーズに合った新製品及び新サービスの開発を効果的かつ

効率的に行うための“新製品開発管理”が含まれる。品質保証が適切に行われるためには,そのベー

スとして,維持向上,改善及び革新が活発に行われることが必要である。 

− 日常管理 日常管理は,組織のそれぞれの部門において,日常的に実施されなければならない分掌業

務について,その業務目的を効率的に達成するために必要な全ての活動である。維持向上を実践する

ためには,業務及びそれを行うプロセス,並びに業務の出来栄えに影響する要因及びそれらを一定に

保つ方法を明確にし,確実に行うことのできるようにする必要がある。また,出来栄えを測定する方

法を考え,通常と異なる結果が得られた場合には,確実な原因追究及び対策を実施することが必要で

ある。 

− 方針管理 方針管理は,方針を,全部門及び全階層の参画の下で,ベクトルを合わせて重点指向で達

成していく活動である。組織の目標を達成する上で,維持向上だけでは足りない部分について,改善

及び革新を実践するためには,顧客のニーズ及び経営環境の変化に対応するための戦略及び目標を立

て,その達成に向けて重点課題,目標及び方策を展開し,計画,実施,チェック及び処置のサイクル

を継続的に回す必要がある。 

− 小集団活動(小集団改善活動) 小集団活動は,方針管理及び日常管理を通じて明らかとなった様々

な課題及び問題について,コミュニケーションが図りやすい少人数によるチームを構成した上で,特

定の課題及び問題についてスピードのある取組みを行い,その中で各人の能力向上及び自己実現,並

びに信頼関係の醸成を図るための活動である。部門横断チーム,部門ごとのプロジェクト活動,第一

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29 

Q 9023:2018  

線の従業員によるQCサークル活動などが含まれる。 

− 品質管理教育 品質管理教育は,顧客及び社会のニーズを満たす製品及びサービスを効果的かつ効率

的に達成する上で必要な価値観,知識及び技能を組織の構成員が身に付けるための,体系的な人材育

成の活動である。維持向上,改善及び革新が活発に行われるための前提として重要であり,階層別・

分野別教育体系を確立すること,実践教育の場を設けること,必要な能力の目標を設定し,計画的な

育成を図ることなどが含まれる。 

改善
及び革新

維持向上

小集団活動

方針管理

日常管理

品質管理教育

品質保証(顧客価値の創造)

図A.2−維持向上,改善及び革新の実践における方針管理の役割及び位置付け 

30 

Q 9023:2018  

附属書B 

(参考) 

方針管理の基本的考え方 

B.1 

方針管理の目的及び範囲 

事業目的を達成するためには,従来の延長にない取組みが必要な場合が多い。これらの取組みを多数の

人で構成する組織において効果的かつ効率的に行うための活動が方針管理である。 

事業計画,日常管理及び方針管理は密接に関係するため,混同される場合が多い。ここでいう“事業計

画”とは,事業目的を達成するために組織として行うべき活動に関する全ての計画であり,中長期経営計

画,それを達成するための事業戦略,年度事業計画,各部門がそれぞれの日常の業務を行うための実行計

画なども含まれる。組織においては,事業計画に関する計画(Plan),実施(Do),チェック(Check)及

び処置(Act)を確実に回すことが必要となる。事業計画,日常管理及び方針管理の三つの関係については,

事業計画を実現するための活動が日常管理及び方針管理であると考えるのがよい(図B.1参照)。 

事業計画

日常管理

セットで実現

方針管理

図B.1−事業計画と日常管理と方針管理との関係 

上位の事業計画において目標が定まった場合,その達成のためには,次の二つが必要である。 

a) 既に実現できている部分を確実に担保する活動(維持向上) 

b) 不足している部分について新たに取り組む活動(改善及び革新) 

a) に対応するのが“日常管理”であり,b) の活動,すなわち日常管理だけでは足りない部分について,

取り組むべき課題及び問題を目的指向及び重点指向の原則に沿って明らかにし,達成及び解決するために

行う活動に対応するのが“方針管理”である(図B.2参照)。 

経営環境の変化に対応するためには,既存のプロセスを改善及び革新する必要がある。しかし,プロセ

スを変えると,大きな効果が期待できる反面,予想外の失敗及びトラブルが発生するリスクも高くなる。

このようなリスクを抑え込むためには,方針管理の中で事前の十分な検討及び対策を行うとともに,日常

管理として標準化,異常の検出及び処置などを徹底することが大切である。 

日常管理と方針管理との割合は,部門によって,同じ部門でも関連する事業の状況及びTQMの発展段

階から見た時期によって変わるのが普通である。ただし,日常管理が大半の領域をカバーし,それでカバ

ーしきれない部分を重点的に扱っているのが方針管理となることが多い。 

注記1 新製品開発などのプロジェクトで実施するもののうち,既存のプロセスで行うものについて

は,方針管理ではなく,日常管理(通常のプロジェクト管理)の対象とするのがよい。ただ

し,設計変更の大幅な低減,開発日程の大幅な短縮,新たな法的規制への対応など,既存の

background image

31 

Q 9023:2018  

プロセスで行うのが難しく,新たな技術及び設計方法の導入,他部門との連携の強化などの

プロセスの改善及び革新に取り組む必要があるものについては,方針管理の対象とするのが

よい。 

注記2 方針管理との関係で論じられるバランストスコアカードは,上記のような区別をしておらず,

事業計画の全体をカバーするものになっている。 


期末
必達目標

期末

時間

従来の
予測値

既存のプロセスを確実に行

うことでは足りない部分

既存のプロセスを確実に行

うことでカバーできる部分

日常管理が必要な部分

方針管理が必要な部分

図B.2−目的から見た日常管理と方針管理との関係 

進め方から見れば,SDCA(Standardize−Do−Check−Act)サイクルに沿って“日常管理”を行ってい

た業務について,目標を達成する上での不足が明確となると,日常管理に加え,PDCA(Plan−Do−Check

−Act)サイクルに沿って“方針管理”として課題達成及び問題解決に取り組むことになる。また,課題達

成及び問題解決が終了すると,得られた成果を基に標準化を行い,日常管理にいかすことになる(図B.3

参照)。 

現状把握

対策の検

討及び実施

計画の策定

要因解析

目標設定

効果の確認

テーマ選定

<日常管理>

<方針管理における

問題解決及び課題達成>

標準化及び
管理の定着

使命及び役
割の明確化

業務の分析

及び展開

業務のプロセ

スの明確化

プロセスの

標準化

管理項目及び

管理水準の設定

異常の検出及び

共有,並びに応急処置

異常原因の追究

及び再発防止

図B.3−進め方から見た日常管理と方針管理との関係 

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32 

Q 9023:2018  

方針管理は,事業計画の中の中長期経営計画及びその達成のための事業戦略などと密接に関係する。た

だし,方針管理は,中長期経営計画及び事業戦略そのものを策定するためのものではない。中長期経営計

画及び事業戦略は,トップマネジメントをはじめとする組織の経営的な判断によって決まる部分が大きい。

これらに基づいて実践する,期ごとの事業計画,特に改善及び革新に関わる部分をマネジメントするのが

方針管理である。 

注記3 中長期経営計画及び事業戦略の策定を含めて方針管理と呼んでいる場合もあるが,この規格

では,中長期経営計画及び事業戦略に基づいて期ごとの事業計画をマネジメントすることに

焦点を当てている。 

B.2 

方針管理の三つの流れ 

方針管理は,基本的に,次に示す“展開”,“集約”及び“環境変化への対応”の三つの流れで構成する

(図B.4参照)。 

− 展開 組織の階層に沿って,使命,理念,ビジョンなどの組織の最上位の目的を,目的−手段のつな

がりを基に,より具体的な手段へと展開する。基本的には,組織の階層の上位から下位に向かって展

開するが,上下左右の密接なすり合わせが必要になる。 

− 集約 各部門における目標の達成状況及び方策の実施状況を確認及び評価し,目的−手段のつながり

を基に下位の課題及び問題を上位の課題及び問題へと集約するとともに,上下間で展開時に想定,設

定及び仮定した整合性を確認及び評価する。基本的には,組織の階層の下位から上位に向かって集約

するが,課題及び問題に関する上下左右の密接な議論と共有が必要になる。 

− 環境変化への対応 組織の各階層において,方針に関係する外部及び内部の環境条件を定常的に監視

し,自部門の方針の達成及び実施に影響を与えるような変化が確認された場合は,上位及び下位の方

針との整合性を保ちながら,臨機応変に方針を変更する。 

上記のような基本構造は,目的達成のためのものであるので,それぞれの組織の状況に応じて柔軟に適

応させるのがよい。例えば,ある階層から次の階層に機械的に展開せずに,直接数階層下位の階層に展開

することもあれば,既存組織ではないプロジェクトチーム及び部門横断的な組織に展開してもよい。 

“目的と手段”の

論理的展開

目的

手段

目的

手段

目的

手段

目的

手段

図B.4−方針管理の三つの流れ 

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33 

Q 9023:2018  

B.3 

方針管理を構成する様々なタイプのPDCA 

方針管理は,基本的に,PDCAサイクルを継続的に回すことによって,一定の結果が確実に得られるよ

うなプロセス及びシステムを作り上げるという考え方に基づいて実施する。方針管理で回すべきPDCAサ

イクルは,期を単位とするものと,月,週,日などのより短い単位で行うものの幾つかのタイプがある。

表B.1に典型的な例を示す。 

表B.1−方針管理を構成する様々なタイプのPDCA 

期を単位とする,組織全体での
PDCA 

期中における,各部門及び各階層
でのPDCA 

期中における予想外の環境変化
に迅速に対応するためのPDCA 

計画 
(Plan) 

組織として,今期に達成しなけれ
ばならないことを方針として策
定するとともに,組織内に展開
し,その実現のための方策を具体
化する。また,その過程において,
各部門及び各階層の課題及び問
題を集約し,方針の策定及び展開
にいかす。 

各部門及び各階層として,今期に
達成すべき方針を策定するととも
に,その達成のために期中の各時
点で行うことに関する実施計画を
立てる。 

方針の達成に影響を与える組織
の外部及び内部の環境変化を予
測し,必要な対応策を計画する。 

実施 
(Do) 

定めた方策を確実に実施する。 

実施計画どおりに実施する。 

環境変化が起こった場合には,事
前に策定した対応策に従って対
応する。 

チェック 
(Check) 

期末において,各部門及び各階層
での目標の達成状況及び方策の
実施状況をレビューし,集約す
る。未達成及び未実施となったも
のについて原因を追究する。 

期中の各時点において,当該の部
門及び階層での目標の未達成及び
方策の遅れを適時に確実に捕捉
し,その原因を追究する。 

環境変化に適切に対応できたか
どうかを確認し,方針の達成に影
響を与える予想外の環境変化を
遅滞なく捉える。 

処置 
(Act) 

再発防止策を検討し,次期の方針
に反映させる。また,方針管理自
体についても改善すべき点を把
握し,次期の方針管理にいかす。 

目標の未達成及び方策の遅れに対
する応急対策及びばん(挽)回策
を遅滞なく計画及び実施するとと
もに,必要なすり合わせを行って,
方針及び実施計画を修正する。 

予想外の環境変化への対応策を
計画し,関連する方針及び実施計
画を修正する。 

B.4 

方針管理の基礎となるマネジメントの原則 

方針管理を適切に実施するためには,組織の全員が,方針管理の基礎となっているマネジメントの原則

について適切に理解し,これに基づいて行動する必要がある。基礎となるマネジメントの原則としては,

次のようなものがある。 

− リーダーシップ リーダーシップとは,目的及び方向を一致させ,人々が目標を達成することに十分

に参画できる内部環境を作り出し,維持することである。方針管理の遂行にはトップマネジメントに

よる強いリーダーシップが求められる。ただし,方針の策定,展開及び集約を行うためには,トップ

ダウンによる指示だけでなく,ボトムアップによる提案も勘案し,自らの方針を決定することによっ

て効果的かつ効率的な方針管理を実現することができる。 

− 重点指向 重点指向とは,目的及び目標の達成のために,要因が結果に及ぼす影響を予測及び評価し,

優先順位の高いものに絞って取り組むことである。方針を策定するに当たっては,影響の小さい要因

を諦めて,少数に絞り込むことが大切である。 

− 全員参加 全員参加は,組織の全構成員が,組織における自らの役割を認識し,組織目標の達成のた

34 

Q 9023:2018  

めの活動に積極的に参画し,寄与することである。方針管理を効果的かつ効率的に進めていくために

は,全部門及び全階層の参加が必要である。これは,経営への参画という意味においても重要である。

ただし,個々の方針について見れば,展開されない部門及び人もある。 

− プロセス重視 プロセス重視は,目標の達成状況だけではなく,結果に至ったプロセスを重視し,プ

ロセスを確立及び改善することによってパフォーマンスの向上を図ることである。方針策定に当たっ

ては,目標だけでなく,それを達成するための方策を具体化し,最適な方策を選択する必要がある。

また,期末のレビュー及び期中のチェックに当たっては,結果だけでなく,その方策の実施状況と対

応付けて考える必要がある。 

− 事実に基づく管理 事実に基づく管理は,経験及び勘だけに頼るのではなく,データに基づいてPDCA

サイクルを回すことである。方針の策定に当っては,事実に基づく分析によって定量的な目標を設定

する。また,思い込みではなく,目標と方策との因果関係の論理的な考察に基づいて議論し,方策を

決定する。さらに,現地及び現物に基づいて目標の未達成原因を追究する。 

B.5 

方針管理におけるマネジメントの対象 

方針管理においてマネジメントの対象となるものとしては,次のようなものがある。 

− 成果として得られる最終の結果(経営指標など) 

− 結果を継続的に生み出していくためのプロセス(インフラストラクチャ,設備などを含む。) 

− プロセスを計画及び実行する人及び部門 

− プロセスで使用する情報及び知的資源(ノウハウ,特許など) 

− 資金及び予算 

− 顧客,パートナなどのその他の利害関係者 

− 外部環境 

方針管理の対象を,成果として得られる最終の結果だけ,自組織だけなど狭く捉えることがあるが,方

針管理を効果的かつ効率的に進めるには,その対象を広く捉え,適切にマネジメントする必要がある。ま

た,品質だけを対象とするのではなく,コスト,量,納期,安全,環境,やる気など,全ての経営要素を

対象とするのがよい。 

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35 

Q 9023:2018  

附属書C 
(参考) 

方針の構成要素 

方針管理でいう“方針”とは,トップマネジメントによって正式に表明された,組織の使命,理念及び

ビジョン,又は中長期経営計画の達成を目指して,具体化した期単位の事業計画を達成するための,従来

の活動では足りない部分に関する組織及び部門の全体的な意図及び方向付けである。 

方針は,次に示す“重点課題”,“目標”及び“方策”の三つで構成する。重点課題,目標及び方策の例

を表C.1に示す。 

− 重点課題 重点課題とは,組織として重点的に取組み達成すべき事項とそれを取り上げた背景及び目

的である。組織及び部門の全体的な意図及び方向付けを誤解なく理解するためには,具体的な目標だ

けでなく,何に取り組むのか,何のために取り組むのかが明確になっている必要がある。 

− 目標 目標とは,重点課題の達成に向けた取組みにおいて,追求し,目指す到達点である。達成すべ

き事項,並びにその背景及び目的が明らかでも,いつまでに何を達成するのかについては人によって

理解が異なるのが普通である。到達したかしないかを客観的に判断できるようにする必要がある。 

− 方策 方策とは,目標を達成するために選ぶ手段である。目標を達成する手段は一つではない。各自

がばらばらに手段を考えたのでは,部門間の連携が難しくなる場合も多い。このため,方策について

の意図及び方向付けを行うことも必要である。 

表C.1−重点課題,目標及び方策の例 

重点課題 

目標 

方策 

新製品開発の強化 

新製品開発件数3件
(倍増) 

・ 新製品開発におけるデザインレビューの充実 
・ 顧客訪問によるニーズの把握 
・ C社との共同開発体制の整備 

市場クレームの低減 

A事業分野の市場クレ
ーム件数10件以下
(30 %減) 

・ 未然防止活動の徹底による製造品質の向上 
・ 調達先の開拓及び育成 
・ 部門横断改善活動のさらなる推進 

顧客支援サービスの強化 

サービス満足度4.0以
上(25 %向上) 

・ 新たなサービスの提供 
・ サービスセンターの整備及び拡充 

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36 

Q 9023:2018  

附属書D 
(参考) 

方針管理のための様式例 

方針管理を効果的かつ効率的に実施することを支援する様式の例を表D.1〜表D.4に示す。 

なお,方針の策定,展開,実施及びレビューの結果をまとめる様式だけでなく,これらのプロセスを見

える化し,議論及び検討を促進及び支援するための様式も大切である。これらについては,それぞれの組

織の実状に合ったものを工夫するのがよい。 

表中の①〜⑭の内容は,次のとおりである。 
① 様式名称,適用する期を明確にする。 
② 適用する部門の責任者の氏名及び承認日を明確にする。 
③ 作成者の役職及び氏名を明確にする。 
④ 作成日を明確にする。 
⑤ 修正日を明確にする。 
⑥ 総ページ数を記入する。 
⑦ 重点課題の番号 
⑧ 重点課題を記入する。方針,部門の中期計画,現在の課題及び環境の変化によって新たに発生した問題,下位

からの提案又は他部門から依頼された事項の中のどれに対応するか付記しておくのがよい。 

⑨ 重点課題に対する到達点を示す項目を設定し,その名称を記入する。項目の定義,計算式を付記しておくのが

よい。 

⑩ 目標として最終的に達成すべき値を記入する。期の途中目標を設定した場合は,途中段階での目標数値も記入

するのがよい。 

⑪ 期の途中で目標の達成状況を評価するための管理項目を記入する。 
⑫ 方策の番号 
⑬ 目標を達成するための方策を記入する。方策は複数となることが多い。 
⑭ 方策を実施する担当者名を記入する。 

図D.1−方針書の様式の例 

○○期

○○部門方針書

承認

氏名

日印

作成日

1版

日ページ

修正日

重点課題

目標

項目目標値

担当



No.



No.

作成者役職

日1

管理
項目

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37 

Q 9023:2018  

表中の①〜⑮の内容は,次のとおりである。 
① 様式名称,適用する期及び適用する部門を明確にする。 
② 適用する部門の責任者の氏名及び承認日を明確にする。 
③ 作成者の役職及び氏名を明確にする。 
④ 作成日を明確にする。 
⑤ 修正日を明確にする。 
⑥ 総ページ数を記入する。 
⑦ 方策の番号 
⑧ 方針書に示された方策を転記する。 
⑨ 方策の実施状況を評価するための管理項目を記入する。 
⑩ 管理項目の実績を期の途中段階で確認する時期及び周期を記入する。 
⑪ 実施事項の具体的活動の進捗,管理項目の実績を期の途中段階で確認し,計画どおり進まなかった場合に必要

な処置をとる責任者の氏名を記入する。 

⑫ 方策を,目標達成期限までの期間にどのような手順で進めるか,月単位などに区切り,具体的な実施事項を記

入する。実施事項は,複数となる場合が多い。 

⑬ 実施事項を行う担当者名を記入する。 
⑭ 実施事項ごとに,活動期間のスケジュールを月単位などで記入する。活動する期間の位置に棒線を引く。 
⑮ 実施事項の担当者の支援者を記入する。また,実施事項の進捗及び管理項目の実績を記録し,確認するための

表,グラフなどの資料の名称を記入する。 

図D.2−実施計画書の様式の例 

承認

氏名

日印

作成日

1版

日ページ

修正日

方策

実施事項

管理項目

チェック頻度

担当



No.

○○期

○○部門実施計画書

実施日程(月)

責任者

支援体制

管理資料

作成者役職

456789

background image

38 

Q 9023:2018  

表中の①〜⑩の内容は,次のとおりである。 
① 様式名称,適用する期,適用する部門を明確にする。 
② 方策の番号 
③ 責任者を明確にする。 
④ 担当者を明確にする。 
⑤ 管理項目の実績を,時間を追って見るための管理グラフを記入する。目標値及び管理限界は,あらかじめ月単

位など,実施計画書に記入されたチェック頻度に基づいてチェックを行う段階ごとに設定する。 

⑥ 実施計画書に示した実施事項を記入する。 

なお,実施の途中において,前月の見直しと対策,上司コメントによって翌月以降の計画を修正する場合は

追記する。 

⑦ 当月に実施した内容を記入する。 
⑧ 実績が管理限界からの外れ,又は実施の遅れがある場合は,その原因を究明し記入する。 
⑨ ⑧項の原因に対する対策を検討し記入する。 
⑩ 上位者に当月の⑦項〜⑨項について報告して評価を受け,今後の進め方の修正の有無など記入してもらう。 

図D.3−実施状況確認表の様式の例 

○○期

○○部門実施状況確認表

方策No.

責任者

担当

管理グラフ

目標:−○−実績:−●−
処置限界:−・−

ステップ

4月

5月

6月

7月

8月

9月

実施内容

解析・反省

対策

上司コメント

(月)

456789

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39 

Q 9023:2018  

表中の①〜⑱の内容は,次のとおりである。 
① 様式名称,適用する期及び適用する部門を明確にする。 
② 適用する部門の責任者の氏名及び承認日を明確にする。 
③ 作成者の役職及び氏名を明確にする。 
④ 作成日を明確にする。 
⑤ 総ページ数を記入する。 
⑥ 重点課題の番号 
⑦ 方針書の対応する重点課題を転記する。 
⑧ 方針書の対応する目標となる項目を転記する。 
⑨ 方針書の対応する目標値を転記する。 
⑩ 目標値に対する期末の実績値を記入する。 
⑪ 目標の達成状況の判定結果を○,△,×などで記入する。 
⑫ 方策の番号 
⑬ 方針書の対応する方策を転記する。 
⑭ 方策の管理項目を記入する。 
⑮ 方策及び実施計画の実施状況の判定結果を○,△,×などで記入する。 
⑯ 目標の達成状況と方策及び実施計画の実施状況とを総合的に判断し,表2のタイプA〜タイプDのいずれに該

当するかを記入する。 

⑰ 目標の達成状況と方策及び実施計画の実施状況との関係について差異分析し,成功要因,失敗要因を見極めて

記入する。また,成果については,当期の活動を通して改善又は新たに開発した業務の仕組み,固有技術など
を記入する。 

⑱ ⑰項の内容を踏まえて,次期への課題として取り上げるべき事項を記入する。 

図D.4−期末のレビュー報告書の様式の例 

○○期

○○部門期末のレビュー書

承認

氏名

日印

作成日

ページ

重点課題

目標

項目目標値実績

方策

原因の分析/
得られた成果



No.



No.

作成者役職

⑧ ⑨

⑩⑪⑫

達成
状況

管理
項目

実施
状況



次期への課題

40 

Q 9023:2018  

附属書E 

(参考) 

方針管理の自己評価 

方針管理を組織的に推進するためには,定期的にその実施状況を評価し,その結果に基づいてどのよう

な側面を重点化すべきかを判断することが必要である。表E.1は,このような評価に役立つ一つの枠組み

を提供している。この表は,この規格の本体で推奨する活動のステップに応じた評価項目を示しており,

この各々について“第1段階(悪い)”から“第5段階(良い)”のどのレベルにあるのかを確認すること

によって,どのような点が遅れているのか,進んでいるのかが客観的に評価できるようになっている。 

評価の実施に当たっては,複数人による確認を行い,その平均値,メジアンなどを用いる工夫をすると

よい。また,各々の評価項目に重みを付けて点数化し,ステップごとの平均値を求めてレーダーチャート

に表すことでどこに問題があるかを把握できる。さらに,部門間の点数の差異を比較することで実態をよ

り詳細に把握できる。 

なお,表E.1は,あくまでも方針管理の“活動面”に焦点を合わせている。方針が達成されているかど

うか,方針とした項目について大幅な改善が達成されているか,競合他組織をりょうが(凌駕)するレベ

ルを達成しているか,方策が計画どおり実施されているかなどの結果系についても併せて評価を行い,活

動面のレベルアップに応じて狙いとする成果が得られているかどうかについても確認することが必要であ

る。 

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41 

Q 9023:2018  

表E.1−方針管理のレベル評価基準 

区分 

評価項目 

評価基準 

レベル1 

レベル2 

レベル3 

レベル4 

レベル5 

5.1 

部門が責任をもつ項目に
関する中期計画は,組織
の中長期経営計画と密接
な関連をもっているか? 

部門が責任をもつ項目に関
する中期計画を定めていな
い。 

部門が責任をもつ項目に関する
中期計画を定めているが,内容
は組織の中長期経営計画と関連
の薄いものになっている。 

部門が責任をもつ項目に関して,組織の
中長期経営計画と関連する中期計画を
定めている。しかし,両者の関連はそれ
ほど強くなく,互いに矛盾する又は関係
が明確でない内容が含まれている。 

トップマネジメントとの密接なすり合わ
せを行っており,部門が責任をもつ項目に
関して,組織の中長期経営計画と密接に関
連する中期計画を定めている。ただし,他
部門とのすり合わせが十分でなく,他の項
目に関する中期計画とは十分な連携が図
られていない。 

部門が責任をもつ項目に関して,組織の中
長期経営計画と密接に関連する中期計画
を定めている。また,他の項目に関する中
期計画とも密接な連携が図られている。 

部門が責任をもつ項目に
関する中期計画は,将来
の方向付けを明確に示す
ものになっているか? 

部門が責任をもつ項目に関
する中期計画を定めていな
い。 

部門が責任をもつ項目に関する
中期計画を定めているが,抽象
的で具体性に乏しい。 

部門が責任をもつ項目に関する,具体性
のある中期計画を定めている。しかし,
内容は過去の実績の延長にすぎない。 

部門が責任をもつ項目に関する,具体性が
あり,挑戦的な中期計画を定めている。た
だし,十分重点化できていない。 

部門が責任をもつ項目に関する,具体性が
あり,挑戦的かつ重点化された中期計画を
定めている。 

市場の環境及び部門の現
状を分析し,部門が責任
をもつ項目に関する中期
計画に反映しているか? 

部門が責任をもつ項目に関
する中期計画を定めていな
い。 

部門が責任をもつ項目に関する
中期計画を定めているが,市場
動向,技術動向,社会動向など
の部門を取り巻く環境,及び部
門の経営資源の実態に関する情
報を収集できていない。 

部門が責任をもつ項目に関する中期計
画を定めるに当たって市場動向,技術動
向,社会動向などの部門を取り巻く環
境,及び部門の経営資源の実態に関する
情報を収集している。しかし,収集して
いる情報の量が限られており,必要な分
析ができていない。 

部門が責任をもつ項目に関する中期計画
を定めるに当たって市場動向,技術動向,
社会動向などの部門を取り巻く環境,及び
部門の経営資源の実態に関する情報を収
集し,分析している。ただし,時代ととも
に新たに浮かび上がってくる課題を明確
にできないなど分析が弱く,精度のよい予
測ができない。 

部門が責任をもつ項目に関する中期計画
を定めるに当たって市場動向,技術動向,
社会動向などの部門を取り巻く環境,及び
部門の経営資源の実態に関する情報を十
分収集し,的確な分析を行っている。また,
分析結果を中期計画に反映している。 

5.2.2 

部門方針は,組織の中長
期経営計画達成における
部門の使命及び役割を考
慮したものになっている
か? 

部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,内容

は,部門の使命及び役割と関連
が薄いものになっている。 

部門の使命及び役割と関連する部門方
針を定めている。しかし,組織の中長期
経営計画達成から見た場合,使命及び役
割のうち,何が重要かを十分考えること
ができていない。 

組織の中長期経営計画を達成する上で部
門が果たすべき使命及び役割を考え,これ
と密接に関連する方針を定めている。ただ
し,考慮が不足しているために,期ごとに
ふらついている部分がある。 

組織の中長期経営計画を達成する上で部
門が果たすべき使命及び役割を考え,これ
と密接に関連する方針を定めている。部門
方針は期ごとにふらつかず,一貫性のある
ものになっている。 

部門方針と上位方針との
関連は,明確か? 

部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,上位

方針を受ける形になっていな
い。 

上位方針を受けて部門方針を定めてい
る。しかし,すり合わせが不十分で両者
の関連が明確になっておらず,上位方針
と関連のない重点課題,目標及び方策が
多く含まれている。 

上位とのすり合わせを十分行い,上位方針
との関連を明確にした部門方針を定めて
いる。ただし,部門方針の上位方針に対す
る寄与の大きさが曖昧になっており,有効
性の少ないものが含まれている。 

徹底した上位とのすり合わせを行い,上位
方針との関連を明確にした部門方針を定
めている。また,部門方針の上位方針に対
する寄与度を明確にしている。結果とし
て,部門方針は上位方針の達成に有効なも
のになっている。 

部門方針と他部門の活動
との関連について検討し
ているか? 

部門方針を定めていない。  部門方針を定めているが,他部

門に与える影響,他部門から受
ける影響について考慮していな
い。 

部門方針が他部門に与える影響,他部門
から受ける影響について考慮している。
しかし,すり合わせが十分できておら
ず,連携が適切に図れていない。 

他部門とのすり合わせを十分行い,部門方
針が他部門に与える影響,他部門から受け
る影響について考慮している。ただし,考
慮が不足しており,必要な連携が図れてい
ない点がある。 

徹底した他部門とのすり合わせを行い,部
門方針が他部門に与える影響,他部門から
受ける影響の大きさを明確にしている。ま
た,影響が大きい点について密接な連携を
図っている。 

下位からの提案を検討し
ているか? 

部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,下位

からの提案を聞いておらず,ま
た,提案させることができてい
ない。 

部門方針を定める際に聞いており,ま
た,提案させることができている。しか
し,下位の提案を部門方針にいかしてい
ない。 

下位からの提案を聞いて部門方針にいか
している。ただし,提案の有効性及び相互
関係を考慮し,一貫性のある部門方針にす
ることができていない。 

下位からの提案を聞いて部門方針にいか
している。また,提案の有効性及び相互関
係を考慮し,一貫性のある部門方針にする
ことができている。  

部門方針は,挑戦的で,
重点化されているか? 

部門方針を定めていない。 部門方針を定めているが,抽象

的で具体性に乏しい。 

具体性のある部門方針を定めている。し
かし,内容は過去の実績の延長にとどま
っており,重点化されていない網羅的な
ものとなっている。 

具体性があり,挑戦的で,重点化された部
門方針を定めている。ただし,一部そうな
っていない部分がある。 

具体性があり,挑戦的で,重点化された部
門方針を定めている。 

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Q 9023:2018  

表E.1−方針管理のレベル評価基準(続き) 

区分 

評価項目 

評価基準 

レベル1 

レベル2 

レベル3 

レベル4 

レベル5 

5.2.3 

部門方針の展開におい
て,上下,左右のすり合
わせを行っているか? 

部門方針を展開していな
い。 

部門方針を展開しているが,上
下,左右のすり合わせの場を設
けていない。 

部門方針の展開に際して,上下,左右の
すり合わせの場を設けている。しかし,
議論が十分に行われず,上位者が方針を
押し付ける形となっている。結果とし
て,上位の方針の意図が十分理解されて
いなかったり,下位の実状及び意見を十
分に反映できていない。 

部門方針の展開に際して,上下,左右のす
り合わせの場を設けており,上位者は方針
を説明し,下位者は現場の実状及び意見を
提案する双方向の議論の場になっている。
ただし,上位者がリーダーシップを発揮し
て,議論をまとめることが十分できていな
い。 

上下,左右のすり合わせの場を設けてお
り,上位者は方針を説明し,下位者は現場
の実状及び意見を提案する双方向の議論
の場になっている。また,上位者がリーダ
ーシップを発揮して議論をまとめ,重点課
題,目標及び方策を連携のとれた形に決定
できている。 

下位の重点課題,目標及
び方策によって上位の重
点課題,目標及び方策が
効果的かつ効率的に達成
できるかを検討している
か? 

部門方針を展開していな
い。  

部門方針を展開しているが,重
点課題,目標及び方策に関する
上位と下位の関連を議論してい
ない。  

下位の重点課題,目標及び方策によって
上位の重点課題,目標及び方策が達成さ
れるかどうかを検討している。しかし,
両者の関連が系統図などを用いて明確
にされておらず,定性的な議論にとどま
っている。結果として,両者は関連の薄
いものになっている。 

上位と下位の重点課題,目標及び方策の関
連を系統図などによって明確にした上で,
結果過去の実績の分析などを踏まえて,下
位の重点課題,目標及び方策によって上位
の重点課題,目標及び方策が達成されるか
どうかを検討している。ただし,両者の関
係について十分理解できておらず,効果的
かつ効率的でない重点課題,目標及び方策
がある。 

過去の実績の分析などを踏まえて,下位の
重点課題,目標及び方策によって上位の重
点課題,目標及び方策が達成されるかどう
かを徹底して検討している。両者の関係に
ついて十分理解できており,下位の重点課
題,目標及び方策が上位の重点課題,目標
及び方策を達成する上で効果的かつ効率
的なものとなっている。 

重点課題,目標及び方策
は,下位になるに従って,
より具体的になっている
か? 

部門方針を展開していな
い。 

部門方針を展開しているが,下
位の重点課題,目標及び方策の
内容は,上位の重点課題,目標
及び方策とほとんど変わりがな
い。 

下位の重点課題,目標及び方策は,上位
の重点課題,目標及び方策を分解又は要
因系に展開したものになっている。しか
し,最下位の方策を見ても具体的な実現
手段が示されていない。 

重点課題,目標及び方策は下位になるにつ
れて具体的なものとなっており,最下位の
方策を見ると具体的な実現手段が示され
ている。ただし,全ての方針が一律に最下
位の方策まで展開されている。 

重点課題,目標及び方策は下位になるにつ
れて具体的なものとなっており,最下位の
方策を見ると具体的な実現手段が示され
ている。また,必要に応じて上位における
プロジェクト活動などが計画されている。 

5.2.4 

最下位の方策について,
具体的な活動項目,日程
などを明確にした実施計
画書が作成されている
か? 

最下位の方策について実施
計画を検討していない。 

最下位の方策について実施計画
を検討しているが,検討した結
果を実施計画書としてまとめて
いない。 

最下位の方策について実施計画書を作
成している。しかし,各々の計画書の内
容を見ると,活動項目,日程,担当者,
計画どおりに進まなかった場合に処置
をとる責任者などが具体化されていな
いものが多い。 

最下位の方策について,活動項目,日程,
担当者,計画どおりに進まなかった場合に
処置をとる責任者などを明確にした実施
計画書を作成している。ただし,分析を行
って対策案を検討することが必要なもの
など,実施が難しいものとそうでないもの
を区別していない。 

最下位の方策について実施計画書を作成
しており,各々の計画書において活動項
目,日程,担当者,計画どおりに進まなか
った場合に処置をとる責任者などが具体
化されている。また,実施が難しいものに
ついては,他と区別している。 

実施計画を実施するため
に必要な人,費用,時間
などを検討しているか? 

最下位の方策について実施
計画を検討していない。  

最下位の方策について実施計画
を検討しているが,実施計画を
達成するためにどの程度の人,
費用及び時間が必要なのか議論
していない。 

実施計画を達成するためにどの程度の
人,費用及び時間が必要か検討してい
る。しかし,利用可能な人,費用及び時
間と対比し,問題を顕在化させていな
い。 

実施計画を達成するために必要な人,費用
及び時間と,利用可能な人,費用及び時間
とを対比させ問題がないか検討している。
ただし,明らかとなった問題に対する具体
的な対応策を,上位者を交えて議論し,決
めていない。 

各々の実施計画を達成するために必要な
人,費用及び時間と,利用可能な人,費用
及び時間とを対比させ問題がないか検討
している。また,明らかとなった問題に対
する具体的な対応策を,上位者を交えて議
論し,決めている。 

実施計画の実施におい
て,必要に応じて他部門
の協力を得ているか? 

最下位の方策について実施
計画を検討していない。 

最下位の方策について実施計画
を検討しているが,必要に応じ
て他部門の協力を要請していな
い。  

最下位の方策について実施計画を検討
しており,必要に応じて他部門の協力を
要請している。しかし,説得の資料及び
データが不十分なため要請された部門
の協力を得ることができていない。自部
門としても十分協力できていない。 

必要に応じて他部門の協力を要請してお
り,要請された部門の納得も得られてい
る。また,自部門としても協力している。
ただし,人,費用及び時間の制約があり,
思うように進んでいないところがある。 

必要に応じて他部門の協力を要請してお
り,要請された部門では対応する活動が実
施されている。また,必要に応じて部門間
にわたるプロジェクトチームを編成する
など人,費用及び時間の柔軟な運用を行っ
ている。 

各々の重点課題,目標及
び方策について,管理項
目の抜け落ち,重複なく
設定しているか? 

各々の重点課題,目標及び
方策について,管理項目を
設定していない。 

一部の重点課題,目標及び方策
について,管理項目を設定して
いるが,全体的には管理項目を
設定していないものが多い。 

各々の重点課題,目標及び方策につい
て,管理項目を設定している。しかし,
相互の関連についての検討が不十分で,
管理項目の重複及び抜け落ちが多い。 

各々の重点課題,目標及び方策について,
重複及び抜け落ちを考慮して管理項目を
設定している。ただし,尺度の作り方が適
切でなく,有効な管理項目となっていない
場合がある。 

各々の重点課題,目標及び方策について,
重複及び抜け落ちを考慮して管理項目を
設定している。また,尺度の作り方を工夫
することで,有効な管理項目となってい
る。 

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Q 9023:2018  

表E.1−方針管理のレベル評価基準(続き) 

区分 

評価項目 

評価基準 

レベル1 

レベル2 

レベル3 

レベル4 

レベル5 

5.2.4 

(続き) 

各々の管理項目は,目標
値,処置限界及び確認頻
度を定めているか? 

各々の重点課題,目標及び
方策について,管理項目を
設定していない。 

各々の重点課題,目標及び方策
について,管理項目を設定して
いるが,途中段階の目標値を定
めていないものが多い。 

重点課題,目標及び方策について,途中
段階の目標値を明確にした管理項目を
定めている。しかし,良すぎる場合を含
めた処置限界及び確認頻度については
適切に定めていない。 

各々の管理項目について,最終的な目標
値,途中段階の目標値,処置限界,確認頻
度を定めている。ただし,これらと実施計
画書の内容(項目及び時期など)とが密接
に関連付けられていない。 

各々の管理項目について最終的な目標値,
途中段階での目標値,処置限界及び確認の
頻度を決めている。また,これらと実施計
画書の内容(項目及び時期など)とが密接
に関連付けられている。 

結果系の管理項目と要因
系の管理項目とを,区別
しているか? 

各々の重点課題,目標及び
方策について,管理項目を
設定していない。 

各々の重点課題,目標及び方策
について,管理項目を設定して
いるが,結果系の管理項目と要
因系の管理項目とを区別してお
らず,片方の管理項目しかない
場合が多い。 

結果系の管理項目と要因系の管理項目
とを区別して設定している。しかし,両
者のバランスが悪く一方に偏っている。 

結果系の管理項目と要因系の管理項目と
を区別しており,両方をバランスよく設定
している。ただし,両者が各々の役割に適
したものになっていないものがある。 

結果系の管理項目と要因系の管理項目と
を区別しており,両方をバランスよく設定
している。また,両者は各々の役割に適し
たものになっている。 

5.3 

どのように重点課題,目
標及び方策の実施状況を
確認し,必要な処置を取
っているか? 

重点課題,目標及び方策の
実施状況を確認していな
い。 

重点課題,目標及び方策の実施
状況を確認しているが,計画ど
おり進んでおらず処置が必要な
ものを明確にしていない。 

重点課題,目標及び方策の実施状況を確
認しており,計画どおり進んでおらず処
置が必要なものを明確にしている。しか
し,これらのフォローが十分でなく,放
置されているものが多い。 

重点課題,目標及び方策の実施状況を確認
しており,計画どおり進んでおらず処置が
必要なものを明確にしている。また,これ
らのフォローを行っている。ただし,効果
的かつ効率的に確認及び処置できていな
いものがある。 

重点課題,目標及び方策の実施状況を確認
しており,計画どおり進んでおらず処置が
必要なものを明確にしている。また,これ
らのフォローを行っており,効果的かつ効
率的に確認及び処置できている。 

実施段階で明らかとなっ
た問題に対応して,重点
課題,目標及び方策の見
直し及び改訂を確実に行
っているか? 

重点課題,目標及び方策の
実施状況を確認していな
い。 

重点課題,目標及び方策の実施
状況を確認しているが,計画ど
おり進んでいないものを重点課
題,目標及び方策の悪さという
点から分析していない。 

重点課題,目標及び方策の実施状況を確
認しており,計画どおり進んでいないも
のを重点課題,目標及び方策の悪さとい
う点から分析している。しかし,必要な
重点課題,目標及び方策の改訂が確実に
行えていない。 

重点課題,目標及び方策の実施状況を確認
しており,計画どおり進んでいないものを
重点課題,目標及び方策の悪さという点か
ら分析し,必要な改訂を行っている。ただ
し,関連する重点課題,目標及び方策の改
訂の必要性については十分検討できてい
ない。 

重点課題,目標及び方策の実施状況を確認
しており,計画どおり進んでいないものを
重点課題,目標及び方策の悪さという点か
ら分析し,必要な改訂を行っている。また,
関連する重点課題,目標及び方策の改訂の
必要性についても適切に検討できている。 

組織の内的要因及び外的
要因の変化に応じて,重
点課題,目標及び方策の
見直し及び改訂を迅速に
行っているか? 

組織の内的要因及び外的要
因の変化を把握していな
い。 

組織の内的要因及び外的要因の
変化を把握しているが,それら
を重点課題,目標及び方策と対
応付けて考えていない。 

組織の内的要因及び外的要因の変化を
把握しており,それらを重点課題,目標
及び方策と対応付けて考えている。しか
し,必要な重点課題,目標及び方策の改
訂が迅速に行えていない。  

組織の内的要因及び外的要因の変化を把
握しており,それらを重点課題,目標及び
方策と対応付けて考え,必要な重点課題,
目標及び方策の改訂を迅速に行っている。
ただし,関連する重点課題,目標及び方策
の改訂の必要性については十分検討でき
ていない。 

組織の内的要因及び外的要因の変化を把
握しており,それらを重点課題,目標及び
方策と対応付けて考え,必要な重点課題,
目標及び方策の改訂を迅速に行っている。
また,関連する重点課題,目標及び方策の
改訂の必要性についても十分検討できて
いる。 

5.4 

部門の期末のレビューに
おいて,目標の達成状況,
方策の実施状況が明確と
なっているか? 

期末のレビューを行ってい
ない。 

期末のレビューを行っている
が,達成及び実施した状況を数
値的及び客観的に明らかにして
いないものが多い。 

期末のレビューを行って,達成及び実施
した状況を数値的及び客観的に明らか
にしている。しかし,これらと当初の目
標及び計画とを対比し,問題を顕在化さ
せていない。 

期末のレビューを行って,達成及び実施し
た状況を数値的及び客観的に明らかにし
ている。また,これらと当初の目標及び計
画とを対比し,問題を顕在化させている。
ただし,競合者との比較など,目標及び計
画そのものの妥当性については十分評価
できていない。 

期末のレビューを行って,達成及び実施し
た状況を数値的及び客観的に明らかにし
ている。また,これらと当初の目標及び計
画とを対比し,問題を顕在化させている。
さらに,競合者との比較など,目標及び計
画そのものの妥当性についても十分評価
できている。 

期末のレビューにおい
て,未達成及び未実施の
原因が追究されている
か? 

期末のレビューを行ってい
ない。 

期末のレビューを行っている
が,未達成及び未実施の重点課
題,目標及び方策について,原
因を分析していない。 

未達成及び未実施の重点課題,目標及び
方策について,原因を分析している。し
かし,定性的な議論にとどまっており,
データに基づいて原因を分析できてい
ない。 

未達成及び未実施の重点課題,目標及び方
策について,データに基づいて原因を分析
している。ただし,原因の掘下げ及び絞込
みが弱いところがある。 

未達成及び未実施の重点課題,目標及び方
策について,データに基づいて原因を分析
している。結果として,原因の掘下げ及び
絞込みを的確に行っている。 

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Q 9023:2018  

表E.1−方針管理のレベル評価基準(続き) 

区分 

評価項目 

評価基準 

レベル1 

レベル2 

レベル3 

レベル4 

レベル5 

5.4 

(続き) 

期末のレビューにおい
て,方針管理の進め方の
良さ及び悪さを分析及び
検討しているか? 

期末のレビューを行ってい
ない。 

期末のレビューを行っている
が,上下,左右の関連する重点
課題,目標及び方策の達成状況
と実施状況とを対応付けて分析
していない。 

期末のレビューを行っており,上下,左
右の関連する重点課題,目標及び方策の
達成状況と実施状況とを対応付けて分
析している。しかし,方針の策定,展開,
実施,処置など,方針管理の良さ及び悪
さという点から捉えておらず,個別の議
論に終始している。 

上下,左右の関連する重点課題,目標及び
方策の達成状況と実施状況とを対応付け
て分析している。また,方針の策定,展開,
実施,処置など,方針管理の良さ及び悪さ
という点から検討を行い,課題を明らかに
している。ただし,階層及び業務による層
別はできていない。 

上下,左右の関連する重点課題,目標及び
方策の達成状況と実施状況とを対応付け
て分析している。また,方針の策定,展開,
実施,処置など,方針管理の良さ及び悪さ
という点から検討を行い,課題を明らかに
している。さらに,階層及び業務による層
別もできている。 

期末のレビューの結果
を,次期の方針の策定,
展開及び実施にいかせて
いるか? 

期末のレビューを行ってい
ない。 

期末のレビューを行っている
が,その結果を,次期の方針の
策定,展開及び実施にいかして
いない。 

期末のレビューを基に,課題のまとめを
行って次期の方針の策定,展開及び実施
にいかしている。しかし,重要度付けを
行っておらず,単なる課題の列挙にとど
まっている。  

期末のレビューを基に,課題のまとめを行
って次期の方針の策定,展開及び実施にい
かしている。また,重要度付けを行い,課
題の絞り込みができている。ただし,絞り
込んだ課題についての対応策の検討が不
十分で,次期の方針の策定,展開及び実施
に十分いかせていない。 

期末のレビューを基に,課題のまとめを行
って次期の方針の策定,展開及び実施にい
かしている。また,重要度付けを行い,課
題の絞り込みができている。さらに,絞り
込んだ課題についての対応策を検討し,次
期の方針の策定,展開及び実施にいかして
いる。 

 レベルの基本的な考え方:レベル1. 考え方及び仕組みがない,レベル2. 正しく理解できていない,レベル3. 正しいが役に立っていない,レベル4. 役に立っている,レベル5. 良い工夫がされており大いに役立っている。 

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2

3

2

0

1

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Q 9023:2018  

参考文献 

[1] JIS Q 9001 品質マネジメントシステム−要求事項 

[2] JIS Q 9004 組織の持続的成功のための運営管理−品質マネジメントアプローチ 

[3] JIS Q 9005 品質マネジメントシステム−持続的成功の指針 

[4] JIS Q 9024 マネジメントシステムのパフォーマンス改善−継続的改善の手順及び技法の指針 

[5] JIS Q 9025 マネジメントシステムのパフォーマンス改善−品質機能展開の指針 

[6] JIS Q 9026 マネジメントシステムのパフォーマンス改善−日常管理の指針 

[7] JIS Q 9027 マネジメントシステムのパフォーマンス改善−プロセス保証の指針 

[8] Noriaki Kano (1993):“A Perspective on Quality Activities in American Firms,”California Management Review, 

Vol.35, No.3, pp.12-31