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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

(1) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

目 次 

ページ 

序文 ··································································································································· 1 

1 適用範囲························································································································· 2 

2 引用規格························································································································· 3 

3 用語及び定義 ··················································································································· 3 

4 ライフサイクルアセスメント(LCA)方法論の枠組み····························································· 8 

4.1 一般要求事項 ················································································································ 8 

4.2 目的及び調査範囲の設定 ································································································· 8 

4.3 ライフサイクルインベントリ分析(LCI) ········································································· 12 

4.4 ライフサイクル影響評価(LCIA) ··················································································· 17 

4.5 ライフサイクル解釈 ······································································································ 24 

5 報告······························································································································ 27 

5.1 一般要求事項及び考慮事項 ····························································································· 27 

5.2 第三者向け報告書のための追加的な要求事項及び手引 ·························································· 28 

5.3 一般に開示することを意図する比較主張のためのより詳細な報告要求事項 ······························· 30 

6 クリティカルレビュー ······································································································ 30 

6.1 一般 ··························································································································· 30 

6.2 内部又は外部の専門家によるクリティカルレビュー ····························································· 31 

6.3 利害関係者の委員会によるクリティカルレビュー ································································ 31 

附属書A(参考)データの収集シートの例 ··············································································· 32 

附属書B(参考)ライフサイクル解釈の例················································································ 35 

参考文献 ···························································································································· 44 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

(2) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

まえがき 

この規格は,工業標準化法に基づき,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本

工業規格である。 

この規格及びJIS Q 14040:2010は,JIS Q 14040:1997,JIS Q 14041:1999,JIS Q 14042:2002及びJIS Q 

14043:2002を再編するものである。 

この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。 

この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に

抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許

権,出願公開後の特許出願,実用新案権及び出願公開後の実用新案登録出願にかかわる確認について,責

任はもたない。 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

日本工業規格 

JIS 

Q 14044:2010 

(ISO 14044:2006) 

環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−

要求事項及び指針 

Environmental management-Life cycle assessment- 

Requirements and guidelines 

序文 

この規格は,2006年に第1版として発行されたISO 14044を基に,技術的内容及び構成を変更すること

なく作成した日本工業規格である。 

なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。 

環境保護の重要性及び製造され消費される製品に付随して生じ得る影響に対する意識の高まりが,それ

らの影響をより良く理解し,対応するための方法の開発への関心を増大させている。この目的のために開

発された技法の一つが,ライフサイクルアセスメント(以下,LCAという。)である。 

注記1 この規格では,“製品”という用語には,サービスを含む。 

LCAは,次の事項を支援できる。 

− 製品のライフサイクル中の種々の時点における環境パフォーマンスの改善余地の特定 

− 産業界,政府又は非政府機関(NGO)における意志決定者への情報提供(例えば,戦略的な計画立案,

優先順位の設定,製品若しくは工程の設計又は再設計を目的とする情報提供。) 

− 測定の技法を含む環境パフォーマンスの適切な指標の選択 

− マーケティング(例えば,環境ラベル制度の実施,環境主張の実施,又は製品の環境宣言の作成。) 

LCAは,原材料の取得から製造,使用及び使用後の処理,リサイクル及び最終処分(すなわち,ゆりか

ごから墓場まで)に至るまでの製品のライフサイクルの全体を通じた環境側面及び潜在的な環境影響(例

えば,資源利用及びリリースによる環境影響。)を取り扱う。 

注記2 “潜在的な環境影響”は,実際の影響と比較した表現である。それらは,製品システムの機

能単位に関連する。 

LCA調査には,次の四つの段階がある。 

a) 目的及び調査範囲の設定の段階 

b) インベントリ分析の段階 

c) 影響評価の段階 

d) 解釈の段階 

システム境界及び詳細の程度を含むLCAの調査範囲は,その調査の課題及び意図している用途による。

LCAの深さ及び広がりは,そのLCAの目的によって大幅に異なることがある。 

ライフサイクルインベントリ分析(以下,LCIという。)の段階は,LCAの第二の段階である。この段

階は,調査対象システムに関連するインプット/アウトプットのデータの収集分析の段階に当たる。この

段階は,設定された調査の目的を達成するのに必要なデータの収集を含む。 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ライフサイクル影響評価(以下,LCIAという。)の段階は,LCAの第三の段階である。LCIAの段階の

目的は,製品システムにかかわるライフサイクルインベントリ分析結果(以下,LCI結果という。)の環境

面の重要度をより良く理解するために,その結果の評価に資する追加情報を提供することである。 

ライフサイクル解釈は,LCAの手順の最終の段階である。この段階においてLCI若しくはLCIAの結果

のいずれか,又はその両方が,目的及び調査範囲の設定に従って,結論,提言及び意志決定のための根拠

として要約され,かつ,議論される。 

LCAの目的がインベントリ分析及び解釈だけの実施によって達成されてもよい。これは,通常,ライフ

サイクルインベントリ調査(以下,LCI調査という。)という。 

この規格は,2種類の調査を扱う。すなわち,LCA調査及びLCI調査である。LCI調査は,LCA調査に

類似しているが,LCIAの段階を除外する。LCIは,LCA調査のLCIの段階と混同してはならない。 

一般的に,一つのLCA調査又はLCI調査で得られた情報は,より包括的な意志決定のプロセスの一部

として利用することができる。異なるLCA調査又はLCI調査の結果は,それぞれの調査の前提条件及び

分析方法が同等の場合にだけ比較可能である。この規格は,これらの事柄の透明性を確実にするための幾

つかの要求事項及び提言を含む。 

LCAは,幾つかある環境マネジメントの技法(例えば,リスクアセスメント,環境パフォーマンス評価,

環境監査及び環境影響評価)のうちの一つであり,あらゆる状況下で最適の技法として利用できるもので

はない。LCAは,一般に製品の経済的又は社会的な側面を取り扱うものではないが,この規格で説明する

ライフサイクルアプローチ及び方法論は,これらの他の側面に適用してもよい。 

この規格は,他の規格と同じく非関税障壁を設けたり,又はいかなる組織の法的な義務をも増大させ,

若しくは変更するために用いることを意図するものではない。 

適用範囲 

この規格は,次の事項を含むLCAに関する要求事項を規定し,かつ,指針を提供する。 

a) LCAの目的及び調査範囲の設定 

b) LCIの段階 

c) LCIAの段階 

d) ライフサイクル解釈の段階 

e) LCAの報告及びクリティカルレビュー 

f) 

LCAの限界 

g) LCAのそれぞれの段階の間の関係 

h) 価値観の選択及び任意の要素の使用のための条件 

この規格では,LCA調査及びLCI調査を扱う。 

LCA結果又はLCI結果の意図した用途は,目的及び調査範囲の設定によって考慮されるが,用途自体は,

この規格の適用範囲の外である。 

この規格は,契約若しくは法令の目的,又は登録及び認証を意図するものではない。 

注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。 

ISO 14044:2006,Environmental management−Life cycle assessment−Requirements and guidelines

(IDT) 

なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ

とを示す。 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

引用規格 

次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。この引用

規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。 

JIS Q 14040 環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠組み 

注記 対応国際規格:ISO 14040,Environmental management−Life cycle assessment−Principles and 

framework(IDT) 

用語及び定義 

この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。 

注記 これらの用語及び定義は,JIS Q 14040からの引用であり,この規格の利用者のため再録した。 

3.1 

ライフサイクル (life cycle) 

連続的で,かつ,相互に関連する製品システムの段階群,すなわち,原材料の取得,又は天然資源の産

出から最終処分までを含むもの。 

3.2 

ライフサイクルアセスメント,LCA (life cycle assessment) 

製品システムのライフサイクルの全体を通してのインプット,アウトプット及び潜在的な環境影響のま

とめ,並びに評価。 

3.3 

ライフサイクルインベントリ分析,LCI (life cycle inventory analysis) 

製品に対する,ライフサイクルの全体を通してのインプット及びアウトプットのまとめ,並びに定量化

を行うLCAの段階。 

3.4 

ライフサイクル影響評価,LCIA (life cycle impact assessment) 

製品システムに対する,製品のライフサイクルの全体を通した潜在的な環境影響の大きさ及び重要度を

理解し,かつ,評価することを目的とした,LCAの段階。 

3.5 

ライフサイクル解釈 (life cycle interpretation) 

インベントリ分析若しくは影響評価のいずれか,又はその両方から得られた知見を,LCAの結論及び提

言を得るために,設定した目的及び調査範囲に関して評価するLCAの段階。 

3.6 

比較主張 (comparative assertion) 

ある製品と同一の機能をもつ競合の製品に対する優越性又は同等性に関する環境主張。 

3.7 

透明性 (transparency) 

開かれた,包括的で分かりやすい情報の提示。 

3.8 

環境側面 (environmental aspect) 

環境と相互に影響し得る,組織の活動,製品又はサービスの要素。 

[JIS Q 14001:2004の3.6] 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.9 

製品 (product) 

すべての製品又はサービス。 

注記1 製品は,次のように区分することができる。 

− サービス(例えば,輸送) 

− ソフトウェア(例えば,コンピュータプログラム,辞書) 

− ハードウェア(例えば,エンジン機械部品) 

− 素材製品(例えば,潤滑剤) 

注記2 サービスには,有形及び無形の要素がある。サービスの提供は,例えば,次のものがある。 

− 顧客が提供した有形の製品に対して行われる活動(例えば,自動車の修理) 

− 顧客が提供した無形のものに対して行われる活動(例えば,税金の還付に必要な収入情報

の整理) 

− 無形のものの提供(例えば,知識を伝達するという意味をもつ情報の提供) 

− 顧客のための雰囲気造り(例えば,ホテル及びレストラン内) 

ソフトウェアは,情報で構成され,一般に無形であり,アプローチ,処理又は手順の形

をとり得る。 

ハードウェアは,一般に有形で,その量は整数で数えることができる特性をもつ。素材

製品は一般に有形で,その量は,整数で数えられない連続的な特性をもつ。 

注記3 用語の定義は,JIS Q 14021:2000及びJIS Q 9000:2006から引用。 

3.10 

共製品 (co-product) 

同一の単位プロセス又は製品システムからもたらされる二つ又はそれ以上の製品のうちのそれぞれの製

品。 

3.11 

プロセス (process) 

インプットをアウトプットに変換する,相互に関連する又は相互に作用する一連の活動。 

[JIS Q 9000:2006の3.4.1(注記を除く。)] 

3.12 

基本フロー (elementary flow) 

調査対象のシステムに入る物質若しくはエネルギーで,事前に人為的な変化を加えずに環境から取り込

まれたもの,又は調査対象のシステムから出る物質若しくはエネルギーで,事後に人為的な変化を加えず

に環境へリリースされるもの。 

3.13 

エネルギーのフロー (energy flow) 

単位プロセス又は製品システムへのインプット又はそこからのアウトプットで,エネルギー単位で定量

化されるもの。 

注記 インプットであるエネルギーのフローは,エネルギーのインプットと呼ばれることがある。ま

た,アウトプットであるエネルギーのフローは,エネルギーのアウトプットと呼ばれることが

ある。 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.14 

フィードストックエネルギー (feedstock energy) 

製品システムへの原材料のインプットのうち,エネルギー源としては使われない燃焼熱,高位発熱量又

は低位発熱量で表現される。 

注記 原材料のエネルギー含有量が,二重に計算されないことを確実にするための注意が必要である。 

3.15 

原材料 (raw material) 

製品を製造するために使用される一次材料又は二次材料。 

注記 二次材料には,リサイクル材料が含まれる。 

3.16 

補助のインプット (ancillary input) 

製品を生産する単位プロセスで使用される物質のインプットであるが,製品の含有物にならないもの。 

3.17 

配分 (allocation) 

プロセス又は製品システムのインプット又はアウトプットのフローを,調査対象の製品システムと一つ

以上の他の製品システムとに振り分けること。 

3.18 

カットオフ基準 (cut-off criteria) 

調査から除外されている,物質若しくはエネルギーのフローの量又は単位プロセス若しくは製品システ

ムにかかわる環境面での重要度の仕様。 

3.19 

データ品質 (data quality) 

設定された要件への適合性を示すデータの特性。 

3.20 

機能単位 (functional unit) 

製品システムの性能を表す定量化された参照単位。 

3.21 

インプット (input) 

単位プロセスに入る製品,物質又はエネルギーのフロー。 

注記 製品及び物質には,原材料,中間製品及び共製品を含む。 

3.22 

中間フロー (intermediate flow) 

調査されている製品システムの単位プロセス間で発生する製品,物質又はエネルギーのフロー。 

3.23 

中間製品 (intermediate product) 

システム内で更に加工・変化を必要とし,他の単位プロセスにインプットされる単位プロセスからのア

ウトプット。 

3.24 

ライフサイクルインベントリ分析結果,LCI結果 (life cycle inventory analysis result) 

システム境界を横断するフローを一覧し,かつ,LCIAの出発点となるLCIの成果。 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

3.25 

アウトプット (output) 

単位プロセスから出る製品,物質又はエネルギーのフロー。 

注記 製品及び物質には,原材料,中間製品,共製品及びリリースを含める。 

3.26 

プロセスエネルギー (process energy) 

単位プロセス内の設備又はプロセスを作動させるのに必要なエネルギーのインプットであり,そのエネ

ルギー自体の生産及び輸送のためのエネルギーのインプットを除くもの。 

3.27 

製品のフロー (product flow) 

別の製品システムからの製品の流入又は別の製品システムへの流出。 

3.28 

製品システム (product system) 

基本フロー及び製品のフローを伴い,一つ以上の定義された機能を果たし,かつ,製品のライフサイク

ルをモデル化した単位プロセスの集合体。 

3.29 

基準フロー (reference flow) 

機能単位で表される機能を満たすために必要とされる,製品システム内のプロセスからのアウトプット

を定量的に表した量。 

3.30 

リリース (releases) 

大気への排出物,並びに水及び土壌への放出物。 

3.31 

感度分析 (sensitivity analysis) 

方法及びデータに関して行った選択が調査の成果へ及ぼす影響を見積もるための系統的な手順。 

3.32 

システム境界 (system boundary) 

単位プロセスが製品システムの一部であることを規定する一連の基準。 

注記 システム境界という用語は,この規格ではLCIAに関連して使用されていない。 

3.33 

不確実性分析 (uncertainty analysis) 

モデルの不適格さ,インプットの不確かさ,及びデータの変動性の累積効果によってLCIの結果に生じ

た不確かさを,定量化するための系統的な手順。 

注記 結果の不確かさの確認には,変動範囲又は確率分布のいずれかが用いられる。 

3.34 

単位プロセス (unit process) 

インプット及びアウトプットのデータが定量化される,LCIで考慮する最小要素。 

3.35 

廃棄物 (waste) 

保有者が処分しようとするか,若しくは処分を要求される物質又は物体。 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 定義は,“有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約”(1989年

3月22日)から採用されているが,この規格では,有害廃棄物に限定されない。 

3.36 

影響領域内エンドポイント (category endpoint) 

着目されている環境関連事項を特定する自然環境,人の健康若しくは資源の属性又は側面。 

3.37 

特性化係数 (characterization factor) 

LCI結果を,領域指標の共通の単位に換算するために適用する特性化モデルから導かれる係数。 

注記 共通の単位によって,結果として得られる領域指標の計算が可能となる。 

3.38 

環境メカニズム (environmental mechanism) 

一つの任意の影響領域において,LCI結果を領域指標及び影響領域内エンドポイントへ結び付ける物理

学的,化学的及び生物学的なプロセスのシステム。 

3.39 

影響領域 (impact category) 

LCI結果が割り振られる,着目されている環境関連事項の分野。 

3.40 

影響領域指標 (impact category indicator) 

影響領域を定量化して表現したもの。 

注記 略称である“領域指標”は,この規格において,読みやすさを改善するために使用している。 

3.41 

完全性点検 (completeness check) 

LCAの段階からの情報が,目的及び調査範囲の設定に従った結論を導くのに十分であることを検証する

プロセス。 

3.42 

整合性点検 (consistency check) 

結論に達する前に,前提条件,方法及びデータが,調査の全体にわたって一貫して適用され,かつ,目

的及び調査範囲の設定に従っていることを検証するプロセス。 

3.43 

感度点検 (sensitivity check) 

感度分析から得られた情報が,結論を導き,かつ,提言を示すのに適切であることを検証するプロセス。 

3.44 

評価 (evaluation) 

LCAの結果に対する信頼を確立することを意図するライフサイクル解釈の段階における要素。 

注記 評価には,調査の目的及び調査範囲の設定に従って要求されるであろう完全性点検,感度点検,

整合性点検,及びその他の妥当性確認を含む。 

3.45 

クリティカルレビュー (critical review) 

LCAと,LCAに関する規格の原則及び要求事項との間の整合性を確実にすることを意図したプロセス。 

注記1 原則は,JIS Q 14040の4.1で規定されている。 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記2 要求事項は,この規格で規定されている。 

3.46 

利害関係者 (interested party) 

製品システムの環境パフォーマンス若しくはLCAの結果にかかわりをもつか,又はそれらによって影響

を受ける個人又は団体。 

ライフサイクルアセスメント(LCA)方法論の枠組み 

4.1 

一般要求事項 

LCAを実施するときは,原則及び枠組みを記載したJIS Q 14040を参照する。 

LCA調査には,目的及び調査範囲の設定,インベントリ分析,影響評価,並びに結果の解釈を含めなけ

ればならない。 

LCI調査には,目的及び調査範囲の設定,インベントリ分析,並びに結果の解釈を含めなければならな

い。この規格の要求事項及び推奨事項は,影響評価に関するそれらの規定を除いて,LCI調査にも適用さ

れる。 

LCI調査は,一般に開示することを意図する比較主張において用いようとする比較のために,単独で使

用してはならない。 

LCAの結果を単一の包括的な評点又は数値に換算する科学的な根拠は,存在しないと認識することが望

ましい。 

4.2 

目的及び調査範囲の設定 

4.2.1 

一般 

LCAの目的及び調査範囲は,明確に設定し,かつ,その意図した用途に整合しなければならない。 

LCAの反復的な性質によって,調査の実施中に調査範囲を修正しなければならない場合がある。 

4.2.2 

調査の目的 

LCAの目的を設定するときは,次の事項を明確に記述しなければならない。 

− 意図する用途 

− 調査をするための理由 

− 意図する伝達先,すなわち,調査の結果を伝えようとしている相手 

− 一般に開示することを意図する比較主張において結果を用いようとするかどうか 

4.2.3 

調査範囲 

4.2.3.1 

一般 

LCAの調査範囲を設定する場合は,次の事項を考慮し,かつ,明確に記述しなければならない。 

− 調査対象の製品システム 

− 製品システム又は比較調査のときは,複数の製品システムがもつ機能 

− 機能単位 

− システム境界 

− 配分の手順 

− LCIAの方法論及び影響の種類 

− 使用される解釈 

− 要求されるデータ 

− 前提条件 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− 価値観の選択及び任意の要素 

− 限界 

− データ品質要件 

− 実施される場合には,クリティカルレビューの種類 

− 調査に要求される報告書の種類及び書式 

場合によっては,予期しない限界若しくは制約によって,又は追加情報の結果として,調査の目的及び

調査範囲を変更してもよい。このような修正は,その根拠とともに文書化することが望ましい。 

上記の幾つかの事項については,4.2.3.2〜4.2.3.8で詳細に規定されている。 

4.2.3.2 

機能及び機能単位 

LCAの調査範囲は,調査対象にあるシステムの機能(性能特性)を明確に規定しなければならない。機

能単位は,目的及び調査範囲に整合していなければならない。機能単位の主目的の一つは,インプットデ

ータ及びアウトプットデータを正規化(数学的な意味で)する基準を与えることである。したがって,機

能単位は,明確に設定し,かつ,計測可能としなければならない。 

機能単位を選択した後,基準フローを設定しなければならない。システム間の比較は,同一の機能に基

づいて行わなければならず,その機能は,それぞれの基準フローによって形成される同一の機能単位によ

って定量化されなければならない。機能単位の比較において,システムのいかなる付加機能も考慮されな

い場合は,これらの省略について説明し,かつ,文書化しなければならない。その代わりに,両システム

の比較可能性を高めるために,この機能を提供するシステムを他のシステムの境界内に加えてもよい。い

ずれの場合も,選択した手順を説明し,かつ,文書化しなければならない。 

4.2.3.3 

システム境界 

4.2.3.3.1 

システム境界は,どの単位プロセスがLCAに含まれなければならないかを決定する。システム

境界の選択は,調査の目的に整合しなければならない。システム境界を設定する場合に使用する基準を,

調査範囲を設定するときに特定し,かつ,説明しなければならない。 

どの単位プロセスを調査に含めるかについて決定し,かつ,それらの単位プロセスの詳細の程度を調査

しなければならない。 

ライフサイクルの段階,プロセス,インプット又はアウトプットの削除は,調査の包括的な結論に重大

な変更がない場合に限って認められる。ライフサイクルの段階,プロセス,インプット又はアウトプット

を省略する決定を下す場合,明確に記述し,かつ,それらの省略の理由及び示唆する事柄の設定について

説明しなければならない。 

含めなければならないインプット及びアウトプットについても決定し,かつ,LCAの詳細の程度を明確

に記述しなければならない。 

4.2.3.3.2 

単位プロセス及びその相互関係を示すプロセスのフロー図を使ってシステムを記述すること 

は,有用である。それぞれの単位プロセスは,次の事項を設定するために,最初に明確に記述されること

が望ましい。 

− 原材料又は中間製品の受入れという視点での,単位プロセスが始まっているところ 

− 単位プロセス内で生じる変化及び操作の性質 

− 中間製品又は最終製品の行き先という視点での,単位プロセスが終わっているところ 

理想的には,製品システムは,その境界におけるインプット及びアウトプットが基本フロー及び製品の

フローであるようにモデル化することが望ましい。どのインプット及びアウトプットを,境界外の環境ま

でたどるべきか,換言すれば,インプットを生じる単位プロセス(又はアウトプットを受け取る単位プロ

10 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

セス)のうち,どれを調査対象の製品システムに含めるべきかを特定するのは,反復的なプロセスである。

この初期の特定は,利用可能なデータを使用して行われる。追加データが調査の過程で収集された後,イ

ンプット及びアウトプットは,より完全に特定され,かつ,感度分析にかけられることが望ましい(4.3.3.4

参照)。 

物質のインプットのためには,分析は,調査対象のインプットの初期の選択から始まる。この選択は,

モデル化されるそれぞれの単位プロセスに関連するインプットを特定することに基づくことが望ましい。

この努力は,特定の事業所又は公表された情報源から集められたデータを用いて行ってもよい。この目的

は,それぞれの単位プロセスに関する重要なインプットを特定することである。 

エネルギーのインプット及びアウトプットは,LCAにおける他のインプット又はアウトプットと同様に

扱わなければならない。種々のエネルギーのインプット及びアウトプットは,モデル化するシステムの中

で使われる燃料,フィードストックエネルギー及びプロセスエネルギーの生産,並びに配送に適したイン

プット及びアウトプットを含まなければならない。 

4.2.3.3.3 

インプット及びアウトプットの初期の算入のためのカットオフ基準,並びに設定したカットオ

フ基準の前提条件は,明確に記述されなければならない。選択されたカットオフ基準が調査成果に及ぼす

影響も,評価し,かつ,最終報告書に記述しなければならない。 

LCAの実施で,質量,エネルギー及び環境面での重要度のような,どのインプットが評価に含まれるべ

きかを判断するために,幾つかのカットオフ基準が使われる。インプットの初期の特定を質量の寄与だけ

に基づいて行うと,重要なインプットが調査から除かれてしまうことがある。したがって,このプロセス

では,エネルギー及び環境面での重要度もカットオフ基準として用いることが望ましい。 

a) 質量 質量を評価基準として使用するとき,モデル化される製品システムの質量のインプットについ

て設定された比率よりも大きく累積的に寄与するすべてのインプットを調査に含めることが,適切な

判断として要求される。 

b) エネルギー 同様に,エネルギーを評価基準として使用するとき,製品システムのエネルギーのイン

プットの設定された比率よりも大きく累積的な寄与が大きくなるようなインプットを調査に含めるこ

とが,適切な判断として要求される。 

c) 環境面での重要度 カットオフ基準に関する判断は,環境的に適切であることから特別に選択された,

製品システムのある個別データの推定量に追加して設定される量よりも大きく寄与するインプットを

含めることが望ましい。 

類似したカットオフ基準は,例えば,最終の廃棄物の処理プロセスをシステム境界に含めることによっ

て,どのアウトプットをそのシステムの環境までたどることが望ましいかを特定することにも使用しても

よい。 

一般に開示することを意図する比較主張において調査を用いようとする場合,インプット及びアウトプ

ットのデータの最終的な感度分析には,合計に対する設定量(例えば,比率)以上に大きく累積的に寄与

するすべてのインプットが調査に含まれるように,質量,エネルギー及び環境面での重要度の基準を含め

なければならない。 

このプロセスを通じて特定した,すべての選択したインプットは,基本フローとしてモデル化すること

が望ましい。 

配分を想定するフローを含めて,どのインプット及びアウトプットのデータが他の製品システムまで追

跡されなければならないかを決めることが望ましい。他のLCA実施者が同じインベントリ分析を行うこと

ができるように,システムは,十分に詳細に,かつ,明確に記述することが望ましい。 

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.2.3.4 

LCIA方法論及び影響の種類 

どの影響領域,領域指標及び特性化モデルが,LCA調査に含まれるかが決定されなければならない。LCIA

手法で使用される影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択は,4.4.2.2で規定したように調査の目的に

整合し,かつ,考慮しなければならない。 

4.2.3.5 

データの種類及び情報源 

LCAのために選択されたデータは,調査の目的及び調査範囲に依存する。そのようなデータは,システ

ム境界における単位プロセスに関する生産現場から収集するか,又はその他の情報源から入手若しくは計

算してもよい。実際,すべてのデータには,測定,計算又は推定されたデータを混在して含んでもよい。 

インプットには,鉱物資源の使用を含めてもよいが,これだけに制限されない(例えば,鉱石又はリサ

イクルからの金属,輸送又はエネルギー供給のようなサービス,及び潤滑剤又は肥料のような補助材料の

使用)。 

大気への排出の一部として,一酸化炭素,二酸化炭素,硫黄酸化物,窒素酸化物などの排出が個別に特

定されてもよい。 

大気への排出,並びに水及び土壌への放出は,しばしば,公害防止装置を経た後のポイント又は拡散源

からリリースされる。重要であれば,データに漏えい(洩)物も含めることが望ましい。指標の変数には

次のものを含めてもよいが,これらだけに制限されない。 

− 生物化学的酸素要求量(BOD) 

− 化学的酸素要求量(COD) 

− 吸着性有機ハロゲン化合物(AOX) 

− 全有機ハロゲン含有量(TOX) 

− 揮発性有機化学物質(VOC) 

さらに,騒音及び振動,土地の利用,放射線,悪臭並びに廃熱を表すデータを収集してもよい。 

4.2.3.6 

データ品質要件 

4.2.3.6.1 

データ品質要件は,LCAの目的及び調査範囲を満足するように規定しなければならない。 

4.2.3.6.2 

データ品質要件は,次の事項を扱うことが望ましい。 

a) 時間に関する範囲 データの取得からの経過時間,及びデータを収集することが望ましい最低限の期

間 

b) 地理的な範囲 調査の目的を満たすため,単位プロセスに関するデータを収集することが望ましい地

理的な広がり 

c) 技術の範囲 特定の技術又は技術の組合せ 

d) 精度 示されたそれぞれのデータのための,データ値の変動性の尺度(例えば,分散) 

e) 完全性 測定されるか,又は見積もられるフローの比率 

f) 

代表性 データセットが,対象としている真の母集団をどの程度反映しているかを示す定性的な評価

(すなわち,地理的な範囲,期間及び技術的な範囲) 

g) 整合性 調査方法論が分析の種々の構成要素に均一に適用されているか否かを示す定性的な評価 

h) 再現性 該当の調査から独立したLCA実施者が,記述されている方法論及びデータ値に関する情報に

よって,調査で報告されている結果をどの程度再現できるかを示す定性的な評価 

i) 

データ源 

j) 

情報の不確かさ(例えば,データ,モデル及び前提条件) 

一般に開示することを意図する比較主張において調査を用いようとする場合には,上記のa)〜j)のデー

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

タ品質要件を扱わなければならない。 

4.2.3.6.3 

欠落データの取扱いについては,文書化しなければならない。欠落データが特定されたそれぞ

れの単位プロセス及び報告現場に対して,欠落データ及びデータ欠損を次のいずれかのように扱うことが

望ましい。 

− 説明された“非ゼロ”のデータ値 

− 説明された場合は,“ゼロ”のデータ値 

− 類似の技術を採用している単位プロセスから報告された値に基づいて計算された値 

データ品質は,データの収集及び統合に用いる方法とともに,量的及び質的な両側面から特徴付けるこ

とが望ましい。 

4.3.3.4に規定する感度分析で決定するように,調査対象システムの物質及びエネルギーのフローの大部

分に寄与する単位プロセスに対しては,特定の現場のデータ又は代表的な平均のデータを用いることが望

ましい。可能な場合には,環境に関連するインプット及びアウトプットをもつと考えられる単位プロセス

に対しても,特定の現場からのデータを用いることが望ましい。 

4.2.3.7 

システム間の比較 

比較調査の場合,結果を解釈する前に,比較対象のシステムの同等性が評価されなければならない。し

たがって,調査範囲は,システムを比較できるように設定されなければならない。システムは,同一の機

能単位で,しかも同様の方法論的な考察によって比較されなければならない。方法論的な考察には,例え

ば,性能,システム境界,データ品質,配分の手順,インプット及びアウトプットを評価する判断の規則,

並びに影響評価が含まれる。これらの変数に関してシステム間のいかなる差異も明示され,かつ,報告さ

れなければならない。一般に開示することを意図する比較主張のために調査を用いようとする場合には,

利害関係者は,この評価をクリティカルレビューとして実施しなければならない。 

LCIAは,一般に開示することを意図する比較主張において用いようとする調査のために実施しなけれ

ばならない。 

4.2.3.8 

クリティカルレビューにかかわる考慮事項 

調査範囲では,次の事項を設定しなければならない。 

− クリティカルレビューが必要かどうか,もし,必要ならどのように実施するか 

− 必要とされるクリティカルレビューの種類(箇条6参照) 

− レビューの実施者及びその専門知識のレベル 

4.3 

ライフサイクルインベントリ分析(LCI) 

4.3.1 

一般 

調査の目的及び調査範囲の設定は,LCAのLCIの段階を実施するための初期の計画となる。LCIのため

の計画を実行するとき,図1に概要を示す実施のステップを実行することが望ましい(幾つかの反復的な

ステップが,図1では示されていないことに注意することが望ましい。)。 

4.3.2 

データ収集 

4.3.2.1 

インベントリに含まれる定性的及び定量的なデータは,システム境界内に含まれるそれぞれの単

位プロセスに対して収集しなければならない。収集したデータは,測定されたか,若しくは計算されたか,

又は見積もられたかを問わず,単位プロセスのインプット及びアウトプットを定量化するために使用する。 

公表情報源からデータを収集したときには,その情報源を明記しなければならない。調査の結論に対し

て重要なデータとなる可能性があるデータに関しては,関連するデータ収集の手順,及びデータ収集の時

期に関する詳細,並びにデータ品質の指標に関する詳細な情報が記述されなければならない。そのような

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

データがデータ品質要件に適合しない場合には,その旨を記述しておかなければならない。 

(例えば,収集されたデータの妥当性確認又は再使用のときに二重に計算されるような)誤用のリスク

を減らすために,それぞれの単位プロセスの記述を記録しなければならない。 

データ収集は,幾つかの報告現場及び公開された文献にまで及ぶので,モデル化される製品システムに

対して統一的かつ整合性のある理解が得られるような措置をとることが望ましい。 

4.3.2.2 

これらの措置には,次の事項を含むことが望ましい。 

− モデル化されるすべての単位プロセスを,それらの相互関係を含めて輪郭を示す明確なプロセスのフ

ロー図の作成 

− インプット及びアウトプットに影響を及ぼす要因に関するそれぞれの単位プロセスの詳細な記述 

− それぞれの単位プロセスにかかわる運転状況に関連するフロー及びデータのリスト作成 

− 使用される単位を明示したリストの作成 

− すべてのデータのために必要なデータ収集及び計算の技法の記述 

− 提供データにかかわる特殊事情,不規則性又は他の事項を明確に文書化するための指示書の提供 

データの収集シートの例を,附属書Aに示す。 

4.3.2.3 

データを分類できる基礎となる主要な項目には,次のものが含まれる。 

− エネルギーのインプット,原材料のインプット,補助のインプット,その他の物理的なインプット 

− 製品,共製品及び廃棄物 

− 大気,水,及び土壌へのリリース 

− その他の環境側面 

これらの項目では,個別的なデータを調査の目的を達成するために,更に詳細に記述しなければならな

い。 

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

図1−単純化したインベントリ分析のための手順 

4.3.3 

データ計算 

4.3.3.1 

一般 

すべての計算の手順は,明確に文書化するとともに設定された前提条件は明確に記述し,かつ,説明し

なければならない。調査を通じて同じ計算の手続を一貫して用いることが望ましい。 

生産に関する基本フローを決定するとき,消費される様々な種類の資源を反映させるために,可能な場

合には,実際の生産構成を使用することが望ましい。例えば,電力の生産及び供給については,電源構成,

並びに燃料燃焼,変換,送電及び配電損失の効率を考慮しなければならない。 

可燃物(例えば,石油,ガス又は石炭)に関するインプット及びアウトプットは,それぞれの発熱量を

かけることによって,エネルギーのインプット又はアウトプットに変換できる。ここで,高位発熱量又は

低位発熱量のいずれを用いたかを報告しなければならない。 

データの計算には,幾つかの実施の手順が必要である。これは,4.3.3.2〜4.3.3.4及び4.3.4において規定

している。 

単位プロセスごとに 
妥当性確認されたデータ 

機能単位ごとに 
妥当性確認されたデータ 

要求された追加的なデータ 
又は単位プロセス 

目的及び調査範囲の設定 

データ収集の準備 

データ収集 

データの妥当性確認 

データの単位プロセスへの関連付け 

データの機能単位への関連付け 

データの集約 

システム境界の精査 

再利用及びリサイ
クルを含む配分 

データの収集シートの改正 

データの収集シート 

収集されたデータ 

妥当性確認されたデータ 

計算されたインベントリ 

完成したインベントリ 

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.3.3.2 

データの妥当性確認 

意図された用途についてのデータ品質要件が満たされたという証拠を確認し,かつ,提供するために,

データ収集のプロセスで,データを妥当性確認しなければならない。 

妥当性確認には,例えば,物質収支,エネルギー収支の確認,及び/又は排出係数の比較分析を含んで

もよい。各単位プロセスは,質量及びエネルギーの保存の法則に従うため,物質収支及びエネルギー収支

は,単位プロセスの記述の妥当性に関する有用な検証を提供する。こうした妥当性確認の手順から明らか

に異常なデータが発見された場合には,4.2.3.5のデータ選択に適合する代替のデータが必要となる。 

4.3.3.3 

データの単位プロセス及び機能単位への関連付け 

それぞれの単位プロセスに対して,適切なフローを決定しなければならない。単位プロセスの定量的な

インプット及びアウトプットを,このフローと関係付けて計算しなければならない。 

フロー図及び単位プロセス間のフローに基づいて,すべての単位プロセスのフローは基準フローに関連

している。計算によって,システムのすべてのインプット及びアウトプットが機能単位に関連付けられる

ことが望ましい。 

製品システムにおいてインプット及びアウトプットを集約しているときには注意することが望ましい。

集約のレベルは,調査の目的と整合しなければならない。同等の物質及び類似の環境影響に関連するデー

タ以外を集約すべきでない。さらに,詳細な集約の規則が求められる場合は,調査の目的及び調査範囲の

設定の段階でそれらを説明するか,又は以後の影響評価の段階にゆだねることが望ましい。 

4.3.3.4 

システム境界の精査 

LCAの反復的な性質を考慮して,評価にどのデータを含めるかは,4.2.3.3に概説した初期の分析を検証

しながら,その重要性を決める感度分析に基づかなければならない。初期のシステム境界を,調査範囲を

設定するときに設定したカットオフ基準に従って,適切に変更しなければならない。この精査のプロセス

及び感度分析の結果を,文書化しなければならない。 

感度分析によって,次のいずれかの結果を得る場合がある。 

− 感度分析によって重要性がないことが見出された場合,該当するライフサイクルの段階又は単位プロ

セスの除外 

− 調査結果に対して重要な影響を及ぼさないインプット及びアウトプットの除外 

− 感度分析で重要性が示された新しい単位プロセス,インプット及びアウトプットの追加 

この分析によって,以後のデータの取扱いは,LCAの目的に対して重要であると判定されたインプット

及びアウトプットデータに限定できる。 

4.3.4 

配分 

4.3.4.1 

一般 

インプット及びアウトプットは,明確に記述された手順に従ってそれぞれの製品に配分されなければな

らず,また,これらの手順は,配分の手順とともに文書化し,かつ,説明しなければならない。 

単位プロセスの配分されたインプット及びアウトプットの合計は,配分する前のその単位プロセスのイ

ンプット及びアウトプットに等しくなければならない。 

幾つかの代替的な配分の手順が適用可能と考えられる場合には,選択されたアプローチからのかい(乖)

離がもたらす結果を示すために感度分析をしなければならない。 

4.3.4.2 

配分の手順 

調査は,他の製品システムと共有されるプロセスを特定し,かつ,次の段階的な手順に従って取り扱わ

なければならない。 

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

注記 正式には,ステップ1は,配分の手順の一部ではない。 

a) ステップ1 可能な場合は,次のいずれかによって配分を回避することが望ましい。 

1) 配分対象の単位プロセスを二つ以上の数の小プロセスに細分割して,これらの小プロセスに関連す

るインプット及びアウトプットのデータを収集する。 

2) 4.2.3.3の要求事項を考慮して,共製品に関連する追加機能を含めるよう製品システムを拡大する。 

b) ステップ2 配分が回避できない場合,システムのインプット及びアウトプットを,異なる製品又は

機能の間でそれらの間に内在する物理的な関係を反映する方法で分割して配分することが望ましい。

すなわち,そのシステムによって提供される製品又は機能の量的な変化に伴って,インプット及びア

ウトプットが変化するような方法であることが望ましい。 

c) ステップ3 物理的な関係だけを配分の根拠として使用できない場合,インプット及びアウトプット

は,製品と機能との間でその他の関係を反映する方法によって,配分することが望ましい。例えば,

環境上のインプット及びアウトプットのデータは,共製品の間で,製品の経済価値に比例させて配分

してよい。 

アウトプットは,部分的に共製品であり,かつ,部分的に廃棄物である場合がある。その場合,インプ

ット及びアウトプットは,共製品の部分に対してだけ配分しなければならないから,共製品と廃棄物との

間の比率を特定することが必要である。 

配分の手順は,対象のシステムの類似のインプット及びアウトプットに対して,統一的に適用しなけれ

ばならない。例えば,システムから流出する使用可能な製品(例えば,中間製品又は使用済みの製品)に

対して配分が行われるとき,配分の手順は,システムに流入する製品に使用される配分の手順と同様の手

順を適用しなければならない。 

インベントリは,インプットとアウトプットとの間の物質収支に基づくものである。したがって,配分

の手順は,そのような基本的なインプット/アウトプット関係及び特性をできる限り近づけることが望ま

しい。 

4.3.4.3 

再使用及びリサイクルのための配分の手順 

注記 幾つかの国及び地域において,リサイクルには,再使用,物質の再生及びエネルギーとしての

回収が含まれる。 

4.3.4.3.1 

4.3.4.1及び4.3.4.2の配分の原則及び配分の手順は,再使用及びリサイクルの場合にも適用する。 

物質の固有の特性の変化を,考慮しなければならない。さらに,特に元の製品システムとそれに引き続

く製品システムとの間にある再生プロセスについては,4.3.4.2に示された配分の手順に従っていることを

確認して,システム境界を特定し,かつ,説明しなければならない。 

4.3.4.3.2 

しかし,これらの場合には,次の理由によって詳細な説明の追加が必要となる。 

− 再使用及びリサイクル(コンポスト化,エネルギー回収,及びその他の再使用/リサイクルとみなせ

る処理だけでなく)は,原材料の抽出及び処理,並びに製品の最終処分に対する単位プロセスに関連

したインプット及びアウトプットが,一つ以上の製品システムによって共有されることを意味する場

合がある。 

− 再使用及びリサイクルは,以後の利用のときに物質の固有の特性を変化させる場合がある。 

− 再生プロセスに関するシステム境界を設定するときには,特別な注意を払うことが望ましい。 

4.3.4.3.3 

再使用及びリサイクルに対しては,幾つかの配分の手順が適用できる。この幾つかの手順の適

用を図2で概念的に示し,いかにして上記の制約に対応できるかを説明するために,次のように区分する。 

a) 閉ループ形の配分の手順は,閉ループ形の製品システムに対して適用される。また,再使用された物

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17 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

質の固有の特性に変化がない場合には,この手順は開ループ形の製品システムにも適用できる。その

場合,二次材料の使用が原(一次)材料の使用と置き替わるため,配分の必要がなくなる。しかし,

適用可能な開ループ形の製品システムにおける原材料の最初の使用は,b)に概説する開ループ形の配

分の手順に従う場合がある。 

b) 開ループ形の配分の手順は,物質が他の製品システムに再使用され,かつ,その物質の固有の特性が

変化を受けるような開ループ形の製品システムに適用される。 

4.3.4.3.4 

4.3.4.3に述べた対象となる単位プロセスに対する配分の手順には,配分のための基本として,

次のいずれかをできるだけ順番に従って使用することが望ましい。 

− 物理的な特性(例えば,質量) 

− 経済価値(例えば,一次材料の市場価値と関連しているスクラップ材料又はリサイクルされた物質の

市場価値) 

− リサイクルされた物質の以後の使用回数(ISO/TR 14049参照) 

図2−製品システムの技術的な記述とリサイクルのための配分の手順との違い 

4.4 

ライフサイクル影響評価(LCIA) 

4.4.1 

一般 

LCIAは,機能単位に基づく相対的なアプローチであるため,環境パフォーマンス評価,環境影響評価

及びリスクアセスメントのような他の技法とは異なる。LCIAには,これらの他の技法によって集められ

た情報を使用してもよい。 

LCIAの段階は,LCA調査の目的及び調査範囲を達成するために注意深く計画しなければならない。 

LCIAの段階は,省略及び不確かさの原因となり得る次の事項を考慮するためにLCAの他の段階との調

整が図られなければならない。 

a) LCIデータ及びLCI結果の品質が,調査の目的及び調査範囲の設定に従ってLCIAを実施するのに十

分であるかどうか。 

b) システム境界及びデータカットオフの判断は,LCIAの結果として得られた指標を計算するために必

要なLCI結果の利用可能性を確実にするために十分に再レビューされているかどうか。 

c) LCIA結果の環境との関連性が,LCI機能単位での計算,システム全体の平均値計算,集計及び配分に

よって弱められているかどうか。 

LCIAの段階には,異なった影響領域の結果として得られた指標を収集したものが含まれ,それらを一

製品システムの技術的な記述 

リサイクルのための配分の手順 

閉 

ループ 

開 

ループ 

物質は,固有の特性を変えること
なくリサイクルされている。 

リサイクルされた物質は,固有の
特性に対する変化を受ける。 

製品システムからの物質が,
同じ製品システムにおいて 
リサイクルされている。 

製品システムからの物質が,
異なる製品システムにおいて
リサイクルされている。 

開ループ 

閉ループ 

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

つにまとめたものが製品システムのLCIAプロフィールとなる。 

LCIAは,必す(須)要素及び任意の要素から構成される。 

4.4.2 

ライフサイクル影響評価(LCIA)の必す(須)要素 

4.4.2.1 

一般 

LCIAの段階には,次の必す(須)要素を含めなければならない。 

− 影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択 

− 選択された影響領域へのLCI結果の割り振り(分類化) 

− 結果として得られた領域指標の計算(特性化) 

4.4.2.2 

影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択 

4.4.2.2.1 

影響領域及び領域指標及び特性化モデルをLCAにおいて選択した場合,関連する情報及び出典

を,参照しなければならない。このことは,新しい影響領域,領域指標又は特性化モデルを設定した場合

にも適用する。 

注記 影響領域の例は,ISO/TR 14047において記述されている。 

影響領域及び領域指標には,正確で,かつ説明的な名称を与えなければならない。 

影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択は,その妥当性が示されると同時に,LCAの目的及び調査

範囲に整合しなければならない。 

影響領域の選択は,目的及び調査範囲を考慮した上で,調査対象の製品システムに関連した包括的な一

連の環境関連事項を反映しなければならない。 

LCI結果を領域指標に関連付け,かつ,特性化係数の基礎を提供する,環境メカニズム及び特性化モデ

ルを記述しなければならない。 

調査の目的及び調査範囲に照らし合わせて,領域指標を導き出すために使われる特性化モデルの適切性

を記述しなければならない。 

LCAに含まれる質量及びエネルギーのフローのデータ以外のLCI結果(例えば,土地の利用)を特定し,

かつ,対応する領域指標との関係を明確にしなければならない。 

ほとんどのLCA調査では,既存の影響領域,領域指標又は特性化モデルが選ばれる。ただし,LCAで

設定された目的及び調査範囲を満たすためには,既存の影響領域,領域指標又は特性化モデルでは不十分

であり,新たなものを設定しなければならない場合がある。新たな影響領域,領域指標又は特性化モデル

を設定する場合にも,この箇条における推奨事項を適用する。 

環境メカニズムに基づく領域指標の概念を,図3に示す。図3は,例として“酸性化”の影響領域を示

す。それぞれの影響指標には,独自の環境メカニズムがある。 

特性化モデルは,LCI結果,領域指標及び場合によっては,影響領域内エンドポイントの間の関係を記

述することで環境メカニズムを説明する。特性化モデルは,特性化係数を導き出すために用いる。環境メ

カニズムは,影響の特性化に関連する環境的なプロセスの総体である。 

4.4.2.2.2 

それぞれの影響領域について,LCIAの必要な構成部分は,次を含む。 

− 影響領域内エンドポイントの特定 

− 特定した影響領域内エンドポイントに対する領域指標の設定 

− 選択した領域指標と特定した影響領域内エンドポイントとを考慮に入れ,影響領域に割り振ることが

できる適切なLCI結果の特定 

− 特性化モデル及び特性化係数の特定 

この手順は,適切なLCI結果の収集,割り振り及び特性化モデルの作成を円滑にする。また,このこと

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19 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

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が特性化モデルにおいて科学的かつ技術的な妥当性,前提条件,価値観の選択及び精度の程度を強調する

上で有用である。 

図3−領域指標の概念 

領域指標は,環境メカニズムに沿って,LCI結果と影響領域内エンドポイントとの間のどこかで選択す

ることができる(図3参照)。表1は,この規格において用いる用語の例を示したものである。 

注記 詳しい例は,ISO/TR 14047において記述されている。 

環境との関連性には,結果として得られた領域指標と影響領域内エンドポイントとの間の,例えば,高

位,中位又は低位の関連性といった関連性の度合いの定性的な評価を含める。 

表1−用語の例 

用語 

例 

影響領域 

気候変動 

LCI結果 

機能単位当たりの温室効果ガスの量 

特性化モデル 

気候変動に関する政府間パネルの100年のベースラインモデル 

領域指標 

赤外線放射力(W/m2) 

特性化係数 

それぞれの温室効果ガスの地球温暖化係数 
(kg CO2換算/kgガス) 

結果として得られたそれぞれの
領域指標 

機能単位当たりのCO2換算kg 

影響領域内エンドポイント 

さんご礁,森林,農作物 

環境との関連性 

赤外線放射力は,排出が引き起こす総合的な大気熱の吸収時及び吸熱
時にわたる分散によって左右される,気候への潜在的な影響を代表す
るものである。 

環境との関連性 

LCI結果 

影響領域に割り振られた 

LCI結果 

領域指標 

影響領域内エンドポイント 

影響領域 

特性化モデル 

例 

SO2,HClなど 
(kg/機能単位) 

酸性化 

酸性化物質の排出 
(酸性化物質としての
NOx,SO2など) 

プロトンのリリース 
(水素中の水素イオン)

− 森林 
− 草木 
− その他 





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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.4.2.2.3 

4.4.2.2.1の要求事項に加えて,次の推奨事項を,影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択

に適用する。 

a) 影響領域,領域指標及び特性化モデルは,国際的に受け入れられたものであること,すなわち,国際

的な同意に基づくか,又は所管の国際的な団体が承認したものであることが望ましい。 

b) 影響領域は,領域指標を経由した,影響領域内エンドポイントにおける製品システムのインプット及

びアウトプットの集合的な影響を表していることが望ましい。 

c) 影響領域,領域指標及び特性化モデルの選択に当たり,価値観の選択及び前提条件は,最小限にする

ことが望ましい。 

d) 目的及び調査範囲の設定で必要でないならば,例えば,調査範囲に人の健康と発がん性との両者が含

まれている場合のように,影響領域,領域指標及び特性化モデルでは,二重計算を避けることが望ま

しい。 

e) それぞれの領域指標の特性化モデルは,科学的かつ技術的に妥当で,明確に特定できる環境メカニズ

ム及び再現可能な実証された観測に基づいていることが望ましい。 

f) 

特性化モデル及び特性化係数が,科学的かつ技術的に妥当であることの程度を明確にすることが望ま

しい。 

g) 領域指標は,環境との関係があることが望ましい。 

環境メカニズム,目的及び調査範囲によっては,LCI結果を領域指標に関連付ける特性化モデルの空間

的かつ時間的な差異も考慮することが望ましい。物質の寿命及び移動は,特性化モデルの一部に含めるこ

とが望ましい。 

4.4.2.2.4 

領域指標又は特性化モデルの環境との関連性を,次の事項に照らして明確に記述することが望

ましい。 

a) 領域指標が,LCI結果から影響領域内エンドポイントに至る影響を定量的に説明する能力(少なくと

も定性的に説明すること。) 

b) 影響領域内エンドポイントに関して,次に示す環境データ又は情報を,特性化モデルに付け加える。 

− 影響領域内エンドポイントの状態 

− 影響領域内エンドポイントにおける評価された変化の相対的な強度 

− 面積及び尺度のような空間的な側面 

− 持続期間,残留時間,持続性,時期などのような時間的な側面 

− 環境メカニズムの可逆性 

− 領域指標と影響領域内エンドポイントとの関連性の不確かさ 

4.4.2.3 

選択された影響領域へのLCI結果の割り振り(分類化) 

LCI結果を影響領域に割り振る場合には,次の点を考慮するが,目的及び調査範囲から別の要求がある

ときには,それによる。 

a) 一つの影響領域だけに限定されるLCI結果の割り振り 

b) 二つ以上の影響領域にかかわるLCI結果の特定で,次の事項を含む。 

− 平行するメカニズムの区別[例えば,二酸化硫黄(SO2)は,人の健康と酸性化との二つの影響領

域に割り振られる。] 

− 連続したメカニズムへの割り振り[例えば,窒素酸化物(NOx)は,地上レベルのオゾン形成と酸

性化との両方に寄与するものとして分類される。] 

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Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.4.2.4 

結果として得られた領域指標の計算(特性化) 

結果として得られた領域指標の計算(特性化)では,LCI結果の共通の単位への換算,及び同じ影響領

域内での換算の結果の集計を行う。この換算においては,特性化係数を使う。この計算の成果が数的な結

果として得られた指数となる。 

使用した価値観の選択及び前提条件を含めて,結果として得られた指標の計算方法を明確化し,かつ,

文書化しなければならない。 

LCIAにとって,調査の目的及び調査範囲を達成するためにLCI結果が入手できないか,又はデータ品

質が不十分な場合には,繰り返してデータ収集を行うか,又は目的及び調査範囲の調整が必要になる。 

設定した目的及び調査範囲に関する結果として得られた指標の有用性は,特性化モデル及び特性化係数

の精度,妥当性及び特性によって決まる。領域指標の特性化モデルで使用する単純化した前提条件及び価

値観の選択の数及び種類は,影響領域の間で異なり,また,地理的な範囲による。特性化モデルの単純化

と精度との間には,トレードオフが存在する場合が多い。影響領域における領域指標の品質の変動は,例

えば,次の差異がもとでLCAの全体的な精度に影響を与えることがある。 

− システム境界と影響領域内エンドポイントとの間の環境メカニズムの複雑性 

− 空間的かつ時間的な特性,例えば,環境中の物質の持続性 

− 用量反応の特性 

環境の状態に関する追加的なデータは,結果として得られた指標の意義及び有用性を高めることができ

る。この点については,データ品質の分析においても対処してよい。 

4.4.2.5 

特性化の後に生じるデータ 

特性化の後,及び4.4.3で規定する任意の要素の前に,製品システムのインプット及びアウトプットは,

例えば,次のように表される。 

− LCIAのプロフィールといわれる,異なる影響領域に関するLCIAの結果として得られた領域指標の個

別のまとまり 

− 基本フローであるが,影響領域に割り当てられなかった(例えば,環境との関連性が欠如しているた

めに)一連のインベントリの結果 

− 基本フローではない一連のデータ 

4.4.3 

LCIAの任意の要素 

4.4.3.1 

一般 

4.4.2.2に記載したLCIAの要素に加えて,次に記載する任意の要素及び情報が存在し得る。これらは,

LCAの目的及び調査範囲に応じて使用することができる。 

a) 正規化 参照情報に対する結果として得られた領域指標の強度を計算すること。 

b) グルーピング 影響領域を並べ替え,可能であれば順位付けをする。 

c) 重み付け 価値観の選択に基づく数的な要因を用いて,結果として得られた指標を換算し,可能であ

れば影響領域にわたって集計する。重み付け以前のデータは,利用できるように保持しておくことが

望ましい。 

d) データ品質の分析 結果として得られた指標の集合であるLCIAプロフィールの信頼性を,より理解

する。 

LCIAの任意の要素では,LCIAの枠組み外から得た情報を使用してもよい。このような情報の使用を説

明し,かつ,その説明を報告することが望ましい。 

正規化,グルーピング及び重み付け方法の適用及び使用は,LCAの目的及び調査範囲に整合し,かつ,

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完全に透明でなければならない。使用するすべての方法及び計算を,透明性を提供するために文書化しな

ければならない。 

4.4.3.2 

正規化 

4.4.3.2.1 

正規化は,特定の参照情報に対する結果として得られた領域指標の強度を計算することである。

正規化のねらいは,調査対象である製品システムのそれぞれの結果として得られた指標の相対的な強度を

より良く理解することである。正規化は,任意の要素で,例えば,次の場合に有用な場合がある。 

− 整合性の欠如の点検 

− 結果として得られた指標の相対的な重要度に関する情報の提供及び伝達 

− グルーピング,重み付け又はライフサイクル解釈のような追加的な手順のための準備 

4.4.3.2.2 

正規化は,選択した参照値で,結果として得られた指標を除することによって,結果として得

られた指標を変換する。次に,幾つかの参照値の例を示す。 

− 地球規模的,地域的,国家的又は局所的な,ある特定の場所についてのインプットの総量及びアウト

プットの総量 

− 特定の場所における人口一人当たり又は類似の尺度に基づく,インプットの総量及びアウトプットの

総量 

− ある代替の製品システムで与えられたようなベースラインシナリオにおけるインプット及びアウトプ

ット 

この参照システムの選択では,環境メカニズム及び参照値の,空間的かつ時間的な尺度の整合性を考慮

することが望ましい。 

結果として得られた指標を正規化すると,LCIAの段階から導かれた結論が変化する場合がある。LCIA

の段階における必す(須)要素の成果への影響を示すためには,複数の参照システムを利用することが望

ましい場合がある。感度分析を行うと,参照情報の選択について更に情報が得られる場合がある。正規化

された結果として得られた領域指標を収集したものは,正規化されたLCIAプロフィールとなる。 

4.4.3.3 

グルーピング 

グルーピングとは,目的及び調査範囲の設定で事前に設定されたとおりに,一つ又は複数のセットに影

響領域を割り振ることであり,並び替え及び/又は順位付けが含まれてもよい。グルーピングは,任意の

要素で,次の異なるいずれかの方法が考えられる。 

− 影響領域を名目上の基準に従って並べ替える(例えば,インプット及びアウトプット,又は地球規模

的,地域的かつ局所的のような空間的な尺度による。)。 

− 影響領域をある階層構造によって順位付けする(例えば,優先順位の高,中及び低)。 

順位付けは,価値観の選択に基づいている。各々の個人,組織及び社会によって優先の傾向が異なる。

そのため,同一の結果として得られた指標,又は正規化された結果として得られた指標に基づいていても,

当事者によって順位付けの結果が異なることがある。 

4.4.3.4 

重み付け 

4.4.3.4.1 

重み付けとは,価値観の選択に基づいた数的な要因を使用することによって,様々な影響領域

の結果として得られた指標を換算するプロセスである。重み付けした結果として得られた指標を集約する

ことも含んでもよい。 

4.4.3.4.2 

重み付けは,次の二つの手順のうちのいずれかによる任意の要素である。 

− 選択した重み付けの係数を使用して,結果として得られた指標,又は正規化した結果を換算する。 

− 影響領域で,これらの換算した結果として得られた指標又は正規化した結果を集約する。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

重み付けのステップは,価値観の選択に基づくもので,科学的な根拠によるものではない。各々の個人,

組織及び社会が異なると優先する傾向が異なることがある。同一の結果として得られた指標,又は正規化

された結果として得られた指標に基づいていても,当事者によって重み付けの結果が異なることもあり得

る。LCAでは,幾つかの異なった重み付けの係数及び重み付けの方法を使うこと,並びに異なる価値観の

選択及び重み付けの方法がLCIA結果に与える影響を評価するために感度分析を行うことが望ましい場合

がある。 

4.4.3.4.3 

重み付けの前に得たデータ及び結果として得られた指標,又は正規化された結果として得られ

た指標は,重み付けの結果とともに入手可能にしておくことが望ましい。これによって,次のことが確実

になる。 

− トレードオフ及びその他の情報を,意志決定者及びその他の人が入手可能にしておく。 

− 利用者は,結果の全体及び細部の状況を理解できる。 

4.4.4 

追加的なLCIAのデータ品質の分析 

4.4.4.1 

追加的な技法及び情報が,次のいずれかの事項を満たすためのLCIA結果の重要性,不確かさ及

び感度をより良く理解するために必要となる場合がある。 

− 重要な差異が存在するかどうかの判断を支援する。 

− 無視できるLCI結果を特定する。 

− 反復的なLCIAのプロセスをガイドする。 

技法の必要性及び選択は,LCAの目的及び調査範囲を満たすのに必要な正確さ及び詳細の程度に依存す

る。 

4.4.4.2 

特定の技法及びその目的は,次による。 

a) 重要度分析(例えば,パレート分析)は,統計学的な手順で,結果として得られた指標への寄与が最

も大きいデータを特定する。確実に判断が下せるように,次にこれらの事項を優先度の高い事項とし

て調査してもよい。 

b) 不確実性分析は,データ及び前提条件の不確かさが計算においてどのように進行し,LCIAの結果の

信頼性にどのように影響するかを定めるための手順である。 

c) 感度分析は,データ及び方法論の選択の変更がLCIA結果にどのように影響するかを定めるための手

順である。 

LCAの反復的な性質によって,このLCIAのデータ品質の分析の結果は,LCIの段階の修正をもたらす

場合がある。 

4.4.5 

一般に開示することを意図する比較主張において用いようとするLCIA 

一般に開示することを意図する比較主張において用いようとするLCIAでは,十分に包括的な一連の領

域指標を採用しなければならない。比較は,領域指標ごとに実施しなければならない。 

LCIAに内在する限界の幾つかを克服するためには追加的な情報が必要であるため,LCIAは,全体的な

環境の優越性又は同等性に関して,一般に開示することを意図する比較主張の唯一の根拠を提供してはな

らない。価値観の選択,空間的かつ時間的,しきい(閾)値及び用量反応に関する情報の除外,相対的な

アプローチ,並びに影響領域の間の精度の変動が,このような限界の例である。LCIA結果は,影響領域

内エンドポイント,しきい(閾)値からの超過度,安全性の限界又はリスクへの影響を予測するものでは

ない。 

一般に開示することを意図する比較主張において用いようとする領域指標は,少なくとも次の事項を満

たさなければならない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− 科学的かつ技術的に妥当である。すなわち,明確に特定できる環境メカニズム及び/又は再現性のあ

る実証的な観測を使用している。 

− 環境との関連性がある。すなわち,これだけに限る訳ではないが,空間的かつ時間的な特性を含めて,

影響領域内エンドポイントと十分に明確なつながりをもつ。 

一般に開示することを意図する比較主張において用いようとする領域指標は,国際的に受け入れられた

ものであることが望ましい。 

4.4.3.4に規定されるように,重み付けは,一般に開示することを意図する比較主張において用いようと

するLCA調査に使用してはならない。 

一般に開示することを意図した比較主張において用いようとする調査では,感度及び不確かさに関する

結果の分析が,行われなければならない。 

4.5 

ライフサイクル解釈 

4.5.1 

一般 

4.5.1.1 

LCA調査又はLCI調査のライフサイクル解釈の段階は,次のように,図4に示すように幾つかの

要素からなる。 

− LCAのLCIの段階及びLCIAの段階の結果に基づく重要な事項の特定 

− 完全性点検,感度点検及び整合性点検を考慮した評価 

− 結論,限界及び提言 

解釈の段階とLCAの他の段階との関係を,図4に示す。 

LCAの目的及び調査範囲の設定の段階,及び解釈の段階は,調査の枠組みを作り,他方,LCAの他の段

階(LCI及びLCIA)は,製品システムに関する情報を生み出す。 

図4−解釈の段階における要素とLCAの他の段階との関係 

結論,限界及び提言 

目的及び調査 
範囲の設定 

インベントリ
分析 

影響評価 

直接の用途 
− 製品の開発及び

改善 

− 戦略的な計画立

案 

− 公共政策立案 
− マーケティング 
− その他 

次による評価 
− 完全性点検 
− 感度点検 
− 整合性点検 
− その他の点検 

 
 

重要な事項の特定 

LCAの枠組み 

解釈 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

LCI又はLCIAの段階の結果は,調査の目的及び調査範囲に従って解釈されなければならず,更にその

解釈には,結果の不確かさを理解するために,重要なインプット,アウトプット,及び方法論の選択につ

いての評価及び感度点検が含まれなければならない。 

4.5.1.2 

解釈では,調査の目的に関連して,次のことも考慮しなければならない。 

− システムの機能,機能単位及びシステム境界の設定の適切性 

− データ品質の評価,及び感度分析によって特定された限界 

LCI結果及びLCIA結果から生じたデータ品質の評価,感度分析,結論及びあらゆる提言についての文

書を点検しなければならない。 

LCI結果は,インプット及びアウトプットのデータに言及しており,環境影響には言及していないため,

注意を払って解釈されることが望ましい。さらに,インプットの不確かさ及びデータの変動性の複合的な

影響として,不確かさがLCI結果にもち込まれる。範囲及び/又は確率分布によって,結果の不確かさを

特徴付けるアプローチがある。可能ならば,このような分析が,LCIの結論をより良く説明し,支持する

ために行われることが望ましい。 

ライフサイクル解釈の段階に関する更に詳しい情報及び例を,附属書Bに示す。 

4.5.2 

重要な事項の特定 

4.5.2.1 

この要素の目的は,重要な事項を決定するのを支援するために,調査の目的及び調査範囲の設定

に従って,また,評価要素と相互に関係させながら,LCI又はLCIAの段階の結果を体系化することにあ

る。この相互関係の目的は,配分の規則,カットオフの決定,影響領域,領域指標及びモデルの選定とい

った,先行する段階において使用した方法及び前提条件のかかわり合いを包含することにある。 

4.5.2.2 

重要な事項の例は,次のとおりである。 

− エネルギー,排出物,廃棄物などのようなインベントリデータ 

− 資源利用,気候変動のような影響領域 

− 輸送及びエネルギー生産といった個別の単位プロセス,又はプロセスのグループなどの,ライフサイ

クルの段階からのLCI結果又はLCIA結果への重要な寄与 

環境関連事項を特定し,それらの重要性を決定するために,様々な固有のアプローチ,方法及び手段が

利用できる。 

注記 例については,B.2を参照。 

4.5.2.3 

LCAの先行する段階から要求される情報には,次の4種類がある。 

a) 先行する段階(LCI及びLCIA)で得られた知見。この知見は,データ品質に関する情報とともに集め,

かつ,体系化しなければならない。 

b) 例えば,LCIにおける配分の規則及びシステム境界,並びにLCIAにおいて用いた領域指標及びモデ

ルのような方法論の選択 

c) 目的及び調査範囲の設定に見られるような調査で用いた価値観の選択 

d) 用途に関して,目的及び調査範囲の設定に見られる様々な利害関係者の役割及び責任,及び並行する

クリティカルレビューのプロセスが実施された場合には,そこからの結果 

先行する段階(LCI,LCIA)からの結果が調査の目的及び調査範囲の要求を満たすことが判明した場合

には,これらの結果の重要性をその時点で決定しなければならない。 

更なる分析のためには,データ品質に関する情報を含めて,この時点で入手できるすべての関連する結

果を収集し,かつ,整理しなければならない。 

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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4.5.3 

評価 

4.5.3.1 

一般 

評価要素の目的は,解釈の最初の要素において特定された重要な事項を含めたLCA調査又はLCI調査

の結果の確実性と信頼性とを確立し,強化することにある。評価の結果は,コミッショナー,その他の利

害関係者に対して,調査成果を明確に分かりやすく示すような形で提示されることが望ましい。 

評価は,調査の目的及び調査範囲に従って行われなければならない。 

評価では,次の三つの技法の使用を考慮しなければならない。 

− 完全性点検(4.5.3.2参照) 

− 感度点検(4.5.3.3参照) 

− 整合性点検(4.5.3.4参照) 

不確実性分析及びデータ品質の分析の結果によって,これらの点検を補完することが望ましい。 

評価は,調査結果の最終の意図された使用を考慮に入れることが望ましい。 

注記 例については,B.3を参照。 

4.5.3.2 

完全性点検 

完全性点検の目的は,解釈に必要なすべての関連情報とデータが入手可能であり,かつ,完全であるこ

とを確実にすることである。関連情報が欠落している場合,又は不完全である場合には,その情報がLCA

の目的及び調査範囲を満たすために必要か否かを検討しなければならない。ここで得られた知見及びその

根拠は,記録しなければならない。 

重要な事項を決定するために必要であると考えられる何らかの関連情報が,欠落している場合,又は不

完全である場合には,先行する段階(LCI,LCIA)をやり直すか,又はその代わりに目的及び調査範囲の

設定を修正することが望ましい。欠落した情報が不要と思われる場合には,その理由を記録することが望

ましい。 

4.5.3.3 

感度点検 

感度点検の目的は,最終的な結果及び結論が,データ,配分方法,結果として得られた領域指標の計算

などに伴う不確かさによってどのように影響されているかを判断することによって,最終結果及び結論の

信頼性を評価することである。 

先行する段階(LCI,LCIA)で感度分析及び不確実性分析が実施された場合,感度点検にはそれらの結

果を含めなければならない。 

感度点検においては,次の事項を考慮しなければならない。 

− 調査の目的及び調査範囲によってあらかじめ決定された事項 

− 調査の他のすべての段階から得られた結果 

− 専門家による判断及び過去の経験 

一般に開示することを意図する比較主張においてLCAを用いようとする場合,評価要素には,詳しい感

度分析に基づく解釈可能な記述を含めなければならない。 

感度点検で必要とされる詳細さの程度は,主にインベントリ分析において得られた知見,また,影響評

価が実施された場合には,影響評価において得られた知見に依存する。 

感度点検のアウトプットは,調査結果に及ぼされる明確な影響を示すだけでなく,より広範な及び/又

は精密な感度分析の必要性を決定する。 

感度点検によって,調査された異なる選択肢の間に存在する有意な差異を見出せなくても,このような

差異が存在しないと自動的に結論付けられるわけではない。有意な差異がなければ,それを調査の最終結

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果としてよい。 

4.5.3.4 

整合性点検 

整合性点検の目的は,前提条件,方法及びデータと,調査の目的及び調査範囲とが整合しているかどう

かを決定することである。 

LCA調査又はLCI調査に関連している場合,次の論点を扱わなければならない。 

a) 製品システムのライフサイクルに沿ったデータ品質の差異及び異なる製品システムの間でのデータ品

質の差異は,調査の目的及び調査範囲との整合性があるか否か 

b) 地理的及び/又は時間的な差異がある場合には,一貫して適用しているか否か 

c) 配分の規則及びシステム境界をすべての製品システムに一貫して適用しているか否か 

d) 影響評価の要素を一貫して適用しているか否か 

4.5.4 

結論,限界及び提言 

ライフサイクル解釈におけるこの部分の目的は,LCAの意図する伝達先に向けて,結論を導き出し,限

界を特定し,かつ,提言を行うことである。 

結論は,当該調査から導き出されなければならない。これは,ライフサイクル解釈の段階におけるその

他の要素と反復しながら導き出すことが望ましい。この方法に関する論理的な順序は,次のとおりとする。 

a) 重要な事項の特定 

b) 方法論及び結果に関する完全性,感度及び整合性の評価 

c) 予備的な結論を導き,この結論が,特に,データ品質要件,事前に設定した前提条件,及び価値観,

方法論及び調査の限界,並びに用途に固有の要求事項を含む,調査の目的及び調査範囲の要求事項と

整合していることを点検する。 

d) この結論の整合性が確認できた場合は,完全な結論として報告する。そうでなければ,適宜上記のス

テップa),b)又はc)に戻る。 

提言は,調査の最終的な結論に基づいていなければならず,かつ,最終的な結論から論理的かつ合理的

に導かれる結果を反映したものでなければならない。 

調査の目的及び調査範囲から見て適切な場合には,意志決定者に対して特定の提言について説明するこ

とが望ましい。 

提言は,意図した用途に関係付けられていることが望ましい。 

報告 

5.1 

一般要求事項及び考慮事項 

5.1.1 

報告書の種類及び書式は,調査範囲の段階において設定されなければならない。 

LCAの結果及び結論は,意図した伝達先に,完全かつ正確に,偏ることなく報告されなければならない。

LCAの結果,データ,方法,前提条件及び限界は,透明性がなくてはならず,かつ,そのLCAに固有の

複雑さ及びトレードオフが読者に理解されるように十分に詳細に示さなければならない。また,報告書は,

結果及び解釈が調査の目的と整合して使われることを可能とするものでなければならない。 

5.1.2 

5.1.1及び5.2 c) によるほか,次の事項が第三者報告書を作成するときに考慮されることが望まし

い。 

a) その根拠を添えた初期の調査範囲の修正 

b) 次を含むシステム境界 

− 基本フローとしてのシステムのインプット及びアウトプットの種類 

28 

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− 決定基準 

c) 次を含む単位プロセスの記述 

− 配分に関する決定 

d) 次を含むデータ 

− データに関する決定 

− 個別データに関する詳細 

− データ品質要件 

e) 影響領域及び領域指標の選択 

5.1.3 

報告書の一部としてLCI結果及びLCIA結果を図式的に表すことが有用な場合があるが,このこと

が暗黙の比較及び結論を導くということを考慮することが望ましい。 

5.2 

第三者向け報告書のための追加的な要求事項及び手引 

LCAの結果が第三者(すなわち,調査の責任者又は実施者以外の利害関係者)に伝達される場合,伝達

の形式にかかわらず,第三者向けの報告書を作成しなければならない。 

第三者向け報告書は,機密情報を含む調査の文書に基づくことができ,第三者向け報告書には,機密情

報を含まなくてもよい。 

第三者向け報告書は,参照可能な文書の一つとして,伝達がなされる第三者のだれもが利用できなけれ

ばならない。第三者向け報告書は,次の側面を含まなければならない。 

a) 一般的な側面 

1) LCAの責任者及びLCAの実施者(内部又は外部) 

2) 報告の日付 

3) 調査がこの規格の要求事項に従って実施されたことを示す記述 

b) 調査の目的 

1) 調査をした理由 

2) その意図した用途 

3) 対象とする報告先 

4) 調査が,一般に開示することを意図する比較主張を支持しようとする調査であるかどうかの記述 

c) 調査範囲 

1) 次を含む機能 

i) 

性能特性の記述 

ii) 比較において省略されたあらゆる追加的な機能 

2) 次を含む機能単位 

i) 

目的及び調査範囲との整合性 

ii) 定義 

iii) 性能測定の結果 

3) 次を含むシステム境界 

i) 

省略されたライフサイクルの段階,プロセス又はデータの必要性 

ii) エネルギー及び物質のインプット及びアウトプットの定量化 

iii) 発電に関する前提条件 

4) 次を含むインプット及びアウトプットの初期の算入のためのカットオフ基準 

i) 

カットオフ基準及び前提条件の記述 

29 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

ii) 結果に及ぼす選択の影響 

iii) 質量,エネルギー及び環境のカットオフ基準の含有 

d) LCI 

1) データ収集の手順 

2) 単位プロセスの定性的及び定量的な記述 

3) 公開された文献の出典 

4) 計算の手順 

5) 次を含むデータの妥当性確認 

i) 

データ品質の評価 

ii) 欠落データの取扱い 

6) システム境界の精査のための感度分析 

7) 次を含む配分の原則及び配分の手順 

i) 

配分の手順の文書化及び根拠の確認 

ii) 配分の手順の統一的な適用 

e) 適用可能な場合には,LCIA 

1) LCIAの手順,計算,及び調査の結果 

2) LCAの設定された目的及び調査範囲に関連したLCIA結果の限界 

3) LCIA結果の設定された目的及び調査範囲に対する関係(4.2参照) 

4) LCIA結果のLCI結果に対する関係(4.4参照) 

5) 選択した根拠及び出典の引用を含む,考慮した影響領域及び領域指標 

6) すべての前提条件及び限界を含む,使用したすべての特性化モデル,特性化係数及び方法の記述又

は引用 

7) 影響領域,特性化モデル,特性化係数,正規化,グルーピング,重み付け及びLCIAのその他の部

分で,それらの使用のための根拠,並びに結果,結論及び提言に及ぼす影響に関連して使用された

すべての価値観の選択の記述又は引用 

8) LCIA結果の記述は,相対的な表現であり,影響領域内エンドポイント,しきい(閾)値からの超

過若しくは安全性の限界又はリスクへの影響を予測するものではない。 

LCAの一部として,次の事項を含む。 

i) 

定義の説明及び根拠,並びにLCIAのために使用された新規の影響領域,領域指標又は特性化モ

デルの説明 

ii) 影響領域のグルーピングの記述及び根拠 

iii) 結果として得られた指標を変換する更なる手順及び選択した参考資料,重み付け係数などの根拠 

iv) 例えば,結果に対するいかなる示唆も含む,感度分析及び不確実性分析,又は環境データの使用

である結果として得られた指標の分析。 

v) 正規化,グルーピング又は重み付けをする前に得られたデータ,及び結果として得られた指標は,

正規化,グルーピング又は重み付けされた結果と合わせて使用できるようにしなければならない。 

f) 

ライフサイクル解釈 

1) 結果 

2) 関係する方法論とデータとの両方の結果の解釈に関連する前提条件及び限界 

3) データ品質の評価 

30 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

4) 価値観の選択,論理的な根拠及び専門的な判断に関する完全な透明性 

g) 適用可能な場合には,クリティカルレビュー 

1) レビュー実施者の氏名及び所属 

2) クリティカルレビュー報告書 

3) 提言に対する対応 

5.3 

一般に開示することを意図する比較主張のためのより詳細な報告要求事項 

5.3.1 

一般に開示することを意図する比較主張を支援するLCA調査の場合は,5.1及び5.2で特定した事

項に加えて,次の事項も報告書に記載しなければならない。 

a) 物質及びエネルギーのフローの取捨選択の根拠となる分析 

b) 使用したデータの精度,完全性及び代表性の評価 

c) 4.2.3.7に従って比較されるシステムの同等性についての記述 

d) クリティカルレビューのプロセスについての記述 

e) LCIAの完全性の評価 

f) 

選択した領域指標及びその使用に対する根拠に関して,国際的に受け入れられるかどうかの記述 

g) 調査に使用した領域指標の科学的かつ技術的な妥当性と環境との関連性に関する説明 

h) 不確実性分析及び感度分析の結果 

i) 

得られた差異の重要性の評価 

5.3.2 

さらに,LCAにグルーピングを含める場合には,次の事項を入れる。 

a) グルーピングに使用した手順及び結果 

b) グルーピングから誘導された結論及び提言は,価値観の選択に基づいている旨の記述 

c) 正規化及びグルーピングのために使用した基準の根拠(これは,個人的,組織的又は国家的な価値観

の選択が考えられる。) 

d) “JIS Q 14044は,いかなる特定の方法論を規定し,又は影響領域をグループ化するために使用した根

底にある価値観の選択を支持していない”という記述 

e) “グルーピングの手順の範囲内での価値観の選択及び判断については,調査の責任者(例えば,政府,

自治体,組織など)の全面的な責任事項である”との記述 

クリティカルレビュー 

6.1 

一般 

クリティカルレビューのプロセスは,次の事項を確実にしなければならない。 

− LCAを実行するために使用した方法が,この規格に合致している。 

− LCAを実行するために使用した方法が,科学的かつ技術的に妥当である。 

− 使用したデータが,調査の目的に照らして適切かつ合理的である。 

− 解釈は,特定された限界及び調査の目的を反映している。 

− 調査報告は,透明性及び整合性がある。 

望まれたクリティカルレビューの適用範囲及び種類は,LCAの調査範囲の段階で設定されなければなら

ず,クリティカルレビューの種類に関する決定を記録しなければならない。 

一般に開示することを意図する比較主張の支持のためにLCA結果を用いようとする場合は,外部の利害

関係者への誤解又は悪影響の可能性を軽減するため,利害関係者の委員会がLCA調査のクリティカルレビ

ューを実施しなければならない。 

31 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

6.2 

内部又は外部の専門家によるクリティカルレビュー 

クリティカルレビューは,内部又は外部の専門家が実行してもよい。その場合には,当該LCAとは独立

した専門家がレビューを行わなければならない。レビュー文書,LCA実施者のコメント及びレビュー実施

者の提言への対応は,LCA報告書に含めなければならない。 

6.3 

利害関係者の委員会によるクリティカルレビュー 

クリティカルレビューは,利害関係者によるレビューとして実行してもよい。その場合には,外部の独

立した専門家が,少なくとも3名の委員からなるレビュー委員会の委員長として,当初のコミッショナー

によって選任されることが望ましい。調査の目的及び調査範囲に基づき,委員長は,他の独立した適格な

レビュー実施者を委員として選任することが望ましい。この委員会には,LCAから得られた結論によって

影響を受ける,例えば,政府機関,非政府団体,競合者及び影響を受ける業界のような他の利害関係者を

含めることがある。 

LCIAについては,他の専門知識及び関心事項に加えて,調査の重要な影響領域にかかわる科学分野で

のレビュー実施者の専門的な知識を考慮しなければならない。 

レビュー文書及びレビュー委員会報告書は,専門家のコメント及びレビュー実施者又は委員会による提

言へのすべての対応とともに,LCA報告書に含めなければならない。 

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32 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書A 

(参考) 

データの収集シートの例 

A.1 一般 

この附属書のデータのインプットシートは,指針として使用できる例である。この目的は,単位プロセ

スの報告現場から収集される情報の内容を示すことである。 

シートに使われるデータは,慎重に選択することが望ましい。データ及び仕様の詳細度は,調査の目的

と整合している必要がある。したがって,示されるデータの例は,単なる例示にすぎない。ある種の調査

には,非常に細分化されたデータを必要とし,例えば,土壌への放出のインベントリでは,ここに示すよ

うな一般的なデータではなく,特定の化合物を考慮することもある。 

これらの例示されたシートには,データの収集シート及びインプットシートの記入に関する個別の指示

を添付してもよい。インプットに関する質問を加えて,インプットの内容及び報告する数量の求め方を更

に特徴付ける一助としてもよい。 

例示されたシートには,データ品質(データの不確かさ,測定データ/計算データ/推定データの別)

など,他の係数のための欄などを修正してもよい。 

A.2 上流の輸送のためのデータシートの例 

この例では,輸送データが要求されている中間製品の名称及びトン数が,調査対象のシステムのモデル

の中に既に記録されている。二つの単位プロセスの間の輸送形態は,道路輸送とみなしている。同等のデ

ータシートを,鉄道輸送又は水上輸送に対しても使うことが望ましい。 

中間製品の名称 

道路輸送 

距離 

km 

トラック積載容量 

積載量 

帰り便 

(空車/積載) 

燃料の消費量,及び関連する大気への排出量は,輸送モデルを使用して計算する。 

A.3 サイト内部の輸送のためのデータシートの例 

この例では,工場内の内部の輸送のインベントリを扱っている。数値は,特定の期間内に収集されたも

のであり,かつ,燃料の実際の消費量を示す。これと異なる期間の最小値及び最大値が必要な場合は,デ

ータシートに欄の追加が必要になる。 

内部の輸送は,例えば,サイトでの全電力消費量と同様の配分の問題を引き起こす。 

大気への排出量は,燃料の消費のモデルを使用して計算する。 

輸送されたインプットの総量 

燃料の総消費量 

ディーゼル油 

ガソリン 

LPG a) 

注a) 液化石油ガス 

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33 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.4 単位プロセスのためのデータシートの例 

実施者名称: 

記入完了日: 

単位プロセスの名称: 

報告現場名: 

期間:年 

開始月: 

終了月: 

単位プロセスの説明記載(要求があれば,追加のシートを添付すること。) 

物質のインプット 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

投入元 

水の消費量a) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

投入元 

エネルギーのインプットb) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

投入元 

物質のアウトプット 

(製品を含む。) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

投入先 

このデータの収集シートに記載されるデータは,特定期間内の未配分のデータの総量を示している。 
注a) 例えば,地表水,飲料水。 

b) 例えば,重質油,中質油,軽質油,灯油,ガソリン,天然ガス,プロパン,石炭,バイオマス,購入電力。 

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34 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

A.5 LCIのデータの収集シートの例 

単位プロセスの名称: 

報告現場名: 

大気への排出a) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

(必要ならば,シートを添付する。) 

水への放出b) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

(必要ならば,シートを添付する。) 

土壌への放出c) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

(必要ならば,シートを添付する。) 

その他のリリースd) 

単位 

量 

サンプリングの手順の説明 

(必要ならば,シートを添付する。) 

計算,データ収集,サンプリング,又は単位プロセスの機能に関する記述からの変動について,特に記すべきこと
があれば,すべて記述する(必要ならば,追加のシートを添付する。)。 
注a) 例えば,無機物:Cl2,CO,CO2,ばいじん/粒子状物質,F2,H2S,H2SO4,HCl,HF,N2O,NH3,NOx,

SOx;及び有機物:炭化水素,PCB,ダイオキシン,フェノール;金属類:Hg,Pb,Cr,Fe,Zn,Ni。 

b) 例えば,:BOD,COD,酸類H+,Cl2,CN2−,洗剤/油,溶解有機物,F−,Feイオン,Hgイオン,炭化水

素類,Na+,NH4+,NO3−,有機塩素,その他金属,その他の窒素化合物,フェノール類,りん酸塩,SO42−,
懸濁物質。 

c) 例えば,鉱物廃棄物,産業廃棄物,都市ごみ,有毒性廃棄物(このデータの領域に含まれる化合物を列記す

る。) 

d) 例えば,騒音,放射線,振動,悪臭,廃熱。 

35 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

附属書B 

(参考) 

ライフサイクル解釈の例 

B.1 

一般 

この附属書の目的は,どのようにライフサイクル解釈を実施するかを利用者が理解するのを支援するた

めに,LCA又はLCI調査の解釈の段階にある要素の例を示すことにある。 

B.2 

重要な事項の特定に関する例 

B.2.1 要素の特定化(4.5.2参照)は,要素の評価(4.5.3参照)との反復によって実施される。要素の特

定化は,情報の特定及び体系化並びにそれに続くあらゆる重要な事項の決定から成り立っている。利用可

能なデータ及び情報の体系化は,目的及び調査範囲の設定,LCI,並びに(実施される場合は)LCIAの段

階と関連させながら行われる反復プロセスである。この情報の体系化は,LCI又はLCIAのいずれかで既

に完了していることがあり,これらの初期の段階の結果の概要を提供することを目的としている。これに

よって,結論を導いて提言を行うこと,及び重要で環境に関連した事項を決定することを容易にする。体

系化の手順に基づいて,その後のすべての決定は,各種の分析の技法を使用して実施される。 

B.2.2 調査の目的及び調査範囲によって,様々な体系化のアプローチが有用となる可能性がある。その中

でも,次の考え得る体系化のアプローチの利用を推奨する。 

a) 個々のライフサイクルの段階へ区分する。例えば,物質の生産,調査対象の製品の製造,使用,リサ

イクル及び廃棄物処理(表B.1参照) 

b) プロセスの群別に区分する。例えば,輸送,エネルギー供給(表B.4参照) 

c) 管理の影響の度合いによるプロセスの区分。例えば,変化及び改善が管理できる自社プロセス,並び

に国のエネルギー政策,供給者に特有な境界条件のような,外部の責任によって設定されるプロセス

(表B.5参照) 

d) 個別の単位プロセスに区分する。これは,最も解決の可能性がある。 

この体系化の手順の結果は,二次元マトリックスとして提示してもよい。例えば,上記した区分基準が

“列”となり,インベントリのインプット及びアウトプット又は個々の結果として得られた領域指標が“行”

となる。より詳細な検討のために,個々の影響領域の別に体系化の手順を行うことも可能である。 

重要な事項の決定は,体系化された情報に基づいて実施される。 

B.2.3 個々のインベントリデータに関係するデータは,目的及び調査範囲の設定の中であらかじめ決定す

ることができ,又はインベントリ分析又は環境マネジメントシステム若しくは企業の環境方針のような他

の情報源から入手してもよい。幾つかの可能な方法が存在する。調査の目的及び調査範囲,並びに必要と

される詳細の程度によって,次に示す方法の利用を推奨する。 

a) 寄与度分析 全体の結果に対するライフサイクルの段階(表B.2及び表B.8参照)又はプロセス群(表

B.4参照)の寄与度を,例えば,合計に占める百分率で表すことによって調べる。 

b) 重要度分析 統計学的な手法又はその他の技法によって,定量的又は定性的な順位付け(例えば,ABC

分析)を行い,著しい又は重要な寄与を調査する(表B.3参照)。 

c) 影響度分析 環境問題に影響する可能性を調査する(表B.5参照)。 

d) 異常評価 これまでの経験に基づいて,予測値及び正常な結果からは通常あり得ない又は驚異的な差

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36 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

異を観察する。これによって,後の点検を容易にし,かつ,改善評価を導く(表B.6参照)。 

この決定の手順の結果も,マトリックスとして提示してもよい。マトリックスには,上記の差異基準が

“列”となり,インベントリのインプット及びアウトプット,又は結果として得られた領域指標の結果が

“行”となる。 

より詳細な検討が可能となるように,目的及び調査範囲の設定から選択した特定のインベントリのイン

プット及びアウトプットについても,又は個々の影響領域についても,この手順を実施することも可能で

ある。この特定の手順において,データが変更又は再計算されることはない。唯一の修正は,百分率など

への換算である。 

表B.1〜表B.8に,どのように体系化の手順が実施できるかの例を示す。例示された体系化の方法は,

LCIの結果及びLCIAを実施した場合には,その結果にも適している。 

体系化の基準は,目的及び調査範囲の設定に関する特定の要求事項,又はLCI若しくはLCIAの知見の

いずれかに基づいている。 

B.2.4 表B.1は,各種のライフサイクルの段階を表す単位プロセスの群ごとに,LCIのインプット及びア

ウトプットを体系化した例であり,表B.2に百分率で表されている。 

表B.1−ライフサイクルの段階へのLCIのインプット及びアウトプットの体系化 

単位 kg 

LCIのインプット 

/アウトプット 

物質の生産 

製造プロセス 

使用の段階 

その他 

合計 

無煙炭 

1200 

25 

500 

− 

1725 

CO2 

4500 

100 

2000 

150 

6750 

NOx 

40 

10 

20 

20 

90 

りん酸塩 

2.5 

25 

0.5 

− 

28 

AOX a) 

0.05 

0.5 

0.01 

0.05 

0.61 

都市廃棄物 

15 

150 

172 

その他 

1500 

− 

− 

250 

1750 

注a) 吸着性有機ハロゲン化合物 

表B.1のLCI結果の寄与度の分析では,様々なインプット及びアウトプットに対して最も寄与している

プロセス又はライフサイクルの段階を特定する。これに基づき,以降の評価では,それらの知見の意味及

び安定性を明らかにして記述することができ,結論及び提言の基礎となる。この評価は,定性的又は定量

的のいずれかであってよい。 

表B.2−ライフサイクルの段階へのLCIインプット及びアウトプットの寄与度 

単位 % 

LCIのインプット 

/アウトプット 

物質の生産 

製造プロセス 

使用の段階 

その他 

合計 

無煙炭 

69.6 

1.5 

28.9 

− 

100 

CO2 

66.7 

1.5 

29.6 

2.2 

100 

NOx 

44.5 

11.1 

22.2 

22.2 

100 

りん酸塩 

8.9 

89.3 

1.8 

− 

100 

AOX 

8.2 

82.0 

1.6 

8.22 

100 

都市廃棄物 

8.7 

87.2 

1.2 

2.9 

100 

その他 

85.7 

− 

− 

14.3 

100 

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37 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

さらに,これらの結果は,個別のランク付けの手順,又は目的及び調査範囲の設定で事前に設定した規

則のいずれかによって,ランク付けし,かつ,優先順位付けすることができる。表B.3に,次に示すラン

ク付け基準を使用したランク付けの手順の結果を示す。 

A: 最も重要で重大な影響,すなわち,寄与度>50 % 

B: 非常に重要で関連性のある影響,すなわち,25 %<寄与度<50 % 

C: かなり重要で幾らかの影響,すなわち,10 %<寄与度<25 % 

D: あまり重要でなく,わずかな影響,すなわち,2.5 %<寄与度<10 % 

E: 重要ではなく無視してもよい影響,すなわち,寄与度<2.5 % 

表B.3−ライフサイクルの段階へのLCIのインプット及びアウトプットのランク付け 

LCIのインプット 

/アウトプット 

物質の生産 

製造プロセス 

使用の段階 

その他 

合計 

kg 

無煙炭 

− 

1725 

CO2 

Ea) 

6750 

NOx 

90 

りん酸塩 

− 

28 

AOX 

0.61 

都市廃棄物 

172 

その他 

− 

− 

1750 

注a) ISO 14044:2006では“D”と記載されているが,正しくは“E”であるため,修正した。 

表B.4には,考えられる別の体系化の選択肢を示すために,同じLCI事例が使用されている。この表は,

LCIのインプット及びアウトプットをいろいろなプロセスを群別に体系化した例を示している。 

表B.4−プロセス群別に分類した体系化マトリックス 

単位 kg 

LCIのインプット/ 

アウトプット 

エネルギー供給 

輸送 

その他 

合計 

無煙炭 

1500 

75 

150 

1725 

CO2 

5500 

1000 

250 

6750 

NOx 

65 

20 

90 

りん酸塩 

10 

13 

28 

AOX 

0.01 

− 

0.6 

0.61 

都市廃棄物 

10 

120 

42 

172 

その他 

1000 

250 

500 

1750 

相対的な寄与度を決定したり,選択された基準へのランク付けを行うような他の技法は,表B.2及び表

B.3に示したものと同じ手順に従う。 

B.2.5 表B.5は,影響力の度合いによってランク付けして単位プロセスを群別に体系化したLCIのインプ

ット及びアウトプットの例である。単位プロセスは,異なるLCIのインプット及びアウトプットに対応し

たプロセス群を代表している。ここでは,影響力の度合いは,次に示す。 

A: 十分に管理でき,大きな改善が可能 

B: 管理ができ,幾らかの改善が可能 

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38 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

C: 管理不可能 

表B.5−プロセスを群別に分類したLCIのインプット及び 

アウトプットに関する影響の度合いのランク付け 

LCIのインプット 

/アウトプット 

電源構成 

現場でのエネ

ルギー構成 

輸送 

その他 

合計 

kg 

無煙炭 

1725 

CO2 

6750 

NOx 

90 

りん酸塩 

28 

AOX 

− 

0.61 

都市廃棄物 

172 

その他 

1750 

B.2.6 表B.6は,異常及び予測外の結果に関して評価され,異なるLCIのインプット及びアウトプットに

対してプロセス群となる単位プロセス群別に体系化されたLCI結果の例を示している。異常及び予測外の

結果を,次の記号で示す。 

●:予測外の結果,すなわち,寄与が高すぎるか,又は低すぎる。 

#:異常,すなわち,排出量が発生しないはずなのに排出量がある。 

○:管理せず。 

異常値は,計算又はデータ変換のときの誤りであることが多い。したがって,慎重に考慮することが望

ましい。LCI結果又はLCIA結果の点検は,結論を出す前に実施することが推奨される。 

予測外の結果も,また,再調査し,かつ,点検することが望ましい。 

表B.6−プロセス群のLCIのインプット及びアウトプットの異常及び予測外の結果のマーク付け 

LCIのインプット 

/アウトプット 

電源構成 

現場でのエネ

ルギー供給 

輸送 

その他 

合計 

kg 

無煙炭 

○ 

○ 

● 

○ 

1725 

CO2 

○ 

○ 

● 

○ 

6750 

NOx 

○ 

○ 

○ 

○ 

90 

りん酸塩 

○ 

○ 

# 

○ 

28 

AOX 

○ 

○ 

○ 

○ 

0.61 

都市廃棄物 

○ 

● 

○ 

● 

172 

その他 

○ 

○ 

○ 

○ 

1750 

B.2.7 表B.7の例は,LCIA結果に基づいて行うことができる体系化の手順を示している。この表は,単

位プロセスを群別に体系化された結果として得られた領域指標,及び地球温暖化係数(GWP100)を示して

いる。 

表B.7から結果として得られた領域指標に対する特定物質の寄与を分析することによって,最も寄与の

大きいプロセス又はライフサイクルの段階が特定される。 

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39 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表B.7−ライフサイクルの段階に対する結果として得られた領域指標(GWP100)の体系化 

単位 CO2換算kg 

地球温暖化係数 

(GWP100)の原因物質 

物質の生産 

製造プロセス 

使用の段階 

その他 

GWPの合計 

CO2 

500 

250 

1800 

200 

2750 

CO 

25 

100 

150 

25 

300 

CH4 

750 

50 

100 

150 

1050 

N2O 

1500 

100 

150 

50 

1800 

CF4 

1900 

250 

− 

− 

2150 

その他 

200 

150 

120 

80 

550 

合計 

4875 

900 

2 320 

505 

8600 

表B.8−ライフサイクルの各段階ごとの比率で表された領域指標の構造 

単位 % 

GWP100 

物質の生産 

製造プロセス 

使用の段階 

その他 

GWPの合計 

CO2 

5.8 

20.9 

2.3 

31.9 

CO 

0.3 

1.1 

1.7 

0.3 

3.4 

CH4 

8.7 

0.6 

1.2 

1.8 

12.3 

N2O 

17.4 

1.2 

1.8 

0.6 

21 

CF4 

22.1 

2.9 

− 

− 

25.0 

その他 

2.4 

1.7 

1.4 

0.9 

6.4 

合計 

56.7 

10.4 

27 

5.9 

100 

さらに,様々な選択肢をシナリオとして調査することによって,方法論の事項についても考慮すること

ができる。例えば,配分の規則及びカットオフの選択による影響は,その結果と並行して別の前提条件を

付けた場合の結果を示したり,どの排出量が実際に発生しているかを判断したりすることによって簡単に

調べられる。 

同様に,適用した場合,LCIA特性化係数の影響(例えば,GWP100対GWP500)又は正規化及び重み付け

を行うときに用いる一連のデータの選択影響は,その様々な前提条件の結果に及ぼす差異を証明すること

によって示すことができる。 

B.2.8 要約すれば,特定化要素は,調査データ,情報及び知見に関して行う以降の評価のための体系化の

アプローチを提供することを目的としている。考慮すべき推奨される事柄には,特に次の事項を挙げるこ

とができる。 

− 個々のインベントリデータ:排出物,エネルギー及び材料資源,廃棄物など 

− 個々のプロセス,単位プロセス又はそれらのグループ 

− 個々のライフサイクルの段階 

− 個々の領域指標 

B.3 

評価要素の例 

B.3.1 一般 

評価要素及び特定化要素は,同時に実施される手順である。反復手順によって,特定化要素から得られ

た結果の信頼性と安定性とを判断するため,幾つかの論点と作業とがより詳しく論じられる。 

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40 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

B.3.2 完全性点検 

完全性点検は,すべての段階で得られたすべての必要な情報とデータとが用いられ,解釈に利用できる

ことを確認しようとするものである。さらに,データギャップが特定され,データ収集を完了する必要性

が評価される。特定化要素は,これらの検討事項にとって貴重な根拠となる。表B.9は,A,B二つの選

択肢の比較を含む調査の完全性点検の例を示すものである。それにもかかわらず,完全性は経験に基づく

判断にすぎず,知られている側面の主なものを忘れていないことを確認するものである。 

表B.9−完全性点検の概要 

単位プロセス 

選択肢A 

完全か? 

必要な活動 

選択肢B 

完全か? 

必要な活動 

物質の生産 

はい 

はい 

エネルギー供給 

はい 

いいえ 

再計算 

輸送 

インベントリ点検 

はい 

加工 

いいえ 

インベントリ点検 

はい 

こん(梱)包 

はい 

− 

いいえ 

Aと比較 

使用 

Bと比較 

はい 

使用済みの段階 

Bと比較 

Aと比較 

X: データ入力済み 
−:データ入力なし 

表B.9の結果によって,幾つかの作業を行う必要があることが分かる。当初のインベントリの再計算又

は再点検を行う場合には,逆戻りすることが必要である。 

例えば,廃棄物の管理方法が知られていない製品に関して,二つの起こり得る選択肢の間の比較が実施

されることがある。この比較は,廃棄物処理の段階の綿密な調査を実施するようになるか,又は設定した

目的及び調査範囲にとって,二つの選択肢の間の相違が重大ではないか,若しくは関連性がないという結

論に至る可能性もある。 

この調査の基本は,要求されるインベントリパラメータ(例えば,排出物,エネルギー及び材料資源,

廃棄物),必要とされる領域指標だけでなく,要求されるライフサイクルの段階及びプロセスなどを含むチ

ェックリストを使用することである。 

B.3.3 感度点検 

感度分析(感度点検)は,前提条件,方法及びデータの変動が結果に及ぼす影響を判断しようとするも

のである。主に,特定された事項の中で最も重要なものの感度が点検される。感度分析の手順とは,ある

所定の前提条件,方法又はデータを使って得た結果を,変更された前提条件,方法又はデータを使って得

た結果と比較することである。 

感度分析では,一般に,前提条件及びデータをある範囲(例えば,±25 %)で,変動することによって

得られる結果に及ぼす影響を点検する。両方の結果は,その後,比較される。感度は,変化の百分率,又

は結果の絶対偏差で表すことができる。これに基づいて,結果の重大な変化(例えば,10 %以上)を特定

することができる。 

さらに,感度分析の実施は,目的及び調査範囲を設定するときに要求されるか,又は経験若しくは前提

条件に基づいて調査中に決定される。次に挙げる前提条件,方法又はデータの例では,感度分析が有益と

思われる。 

− 配分のための規則 

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41 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

− カットオフ基準 

− 境界の設定及びシステムの定義 

− データに関する判断及び前提条件 

− 影響領域の選択 

− インベントリ結果の割り振り(分類化) 

− 結果として得られた領域指標の計算(特性化) 

− 正規化データ 

− 重み付けデータ 

− 重み付け方法 

− データ品質 

表B.10,表B.11及び表B.12は,LCI及びLCIAから得た既存の感度分析の結果に基づき,感度点検を

どのように行うことが可能かを示したものである。 

表B.10−配分の規則に関する感度点検 

無煙炭の需要 

選択肢A 

選択肢B 

差異 

質量による配分 MJ 

1200 

800 

400 

経済価値による配分 MJ 

900 

900 

偏差 MJ 

−300 

+100 

400 

偏差 % 

−25 

+12.5 

重大 

感度 % 

25 

12.5 

表B.10から導かれる結論は,配分は重大な影響を及ぼすということ,また,このような状況では,選択

肢Aと選択肢Bとの間に実質的な差はないということである。 

表B.11−データの不確かさに関する感度点検 

無煙炭の需要 

物質の生産 

製造プロセス 

使用の段階 

合計 

基本ケース MJ 

200 

250 

350 

800 

変更した前提条件 MJ 

200 

150 

350 

700 

偏差 MJ 

−100 

−100 

偏差 % 

−40 

−12.5 

感度 % 

40 

12.5 

表B.11から導かれる結論は,重大な変化が生じているということ,また,変動が結果を変えるというこ

とである。ここでの不確かさが重大な影響を及ぼす場合は,新たにデータ収集が指摘される。 

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42 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表B.12−特性化データに関する感度点検 

GWPデータのインプット 

/結果 

選択肢A 

選択肢B 

差異 

CO2換算でGWP=100のス
コア 

2 800 

3 200 

400 

CO2換算でGWP=500のス
コア 

3 600 

3 400 

−200 

偏差 

+800 

+200 

600 

偏差 % 

+28.6 

+6.25 

重大 

感度 % 

28.6 

6.25 

表B.12から導かれる結論は,重大な変化が生じているということ,また,前提条件の変更が結論を変化

させる,又は結論を逆にすることさえあるということ,更に選択肢Aと選択肢Bとの差は,当初の予想よ

りも小さいということである。 

B.3.4 整合性点検 

整合性点検は,前提条件,方法,モデル及びデータが,製品のライフサイクルに沿って,又は幾つかの

選択肢の間で一貫しているか否かを判断しようとするものである。不整合の例としては,次のものが挙げ

られる。 

a) データの出典の差異 例えば,選択肢Aが文献値であるのに対して,選択肢Bが一次データである場

合。 

b) データの精度の差異 例えば,選択肢Aが非常に詳細なプロセスツリーを備え,プロセスの記述が入

手可能であるのに対して,選択肢Bが集約された一つのブラックボックスのシステムとして記述され

ている場合。 

c) 技術範囲の差異 例えば,選択肢Aのデータが実験的なプロセス(例えば,パイロットプラントレベ

ルの高いプロセス効率をもつ新しい触媒)に基づいているのに対し,選択肢Bのデータが既存の量産

技術に基づいている場合。 

d) 時間に関連する範囲の差 例えば,選択肢Aのデータが,最近,開発された技術を説明しているのに

対し,選択肢Bが,最近建設された工場と旧式の工場との両方を含む技術構成によって記述されてい

る場合。 

e) データ年齢の差異 例えば,選択肢Aのデータが,5年前の一次データであるのに対し,選択肢Bが,

最近,収集されたデータである場合。 

f) 

地理的範囲の差異 例えば,選択肢Aのデータが,代表的な欧州の技術構成であるのに対し,選択肢

Bが,高いレベルの環境保護の方針をもつ欧州連合の加盟国のうちの1国,又は単一の工場を記述し

ている場合。 

これらの不整合の幾つかは,目的及び調査範囲の設定に従って調整してもよい。その他のすべての場合,

重大な相違点が存在しているため,結論を出し,かつ,提言を行う前に,これらの妥当性及び影響を考慮

する必要がある。 

LCI調査で行う整合性点検の結果の例を,表B.13に示す。 

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43 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

表B.13−整合性点検の結果 

点検 

選択肢A 

選択肢B 

AとBとを比較 

処置 

データの出典 

文献 

OK 

一次 

OK 

整合 

特になし 

データの精度 

良好 

OK 

劣る 

目的及び調
査範囲が満
たされない 

不整合 

Bを再度調べる 

データ年齢 

2年 

OK 

3年 

OK 

整合 

特になし 

技術範囲 

最新 

OK 

パイロット 

プラント 

OK 

不整合 

調査目標のため

処置なし 

時間に関連する範囲 

最近 

OK 

実際 

OK 

整合 

特になし 

地理的範囲 

欧州 

OK 

米国 

OK 

整合 

特になし 

44 

Q 14044:2010 (ISO 14044:2006) 

2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。 

参考文献 

[1] JIS Q 9000:2006,品質マネジメントシステム−基本及び用語 

注記 対応国際規格:ISO 9000:2005,Quality management systems−Fundamentals and vocabulary(IDT) 

[2] JIS Q 14001:2004,環境マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引 

注記 対応国際規格:ISO 14001:2004,Environmental management systems−Requirements with guidance 

for use(IDT) 

[3] JIS Q 14021,環境ラベル及び宣言−自己宣言による環境主張(タイプII環境ラベル表示) 

注記 対応国際規格:ISO 14021,Environmental labels and declarations−Self-declared environmental 

claims (Type II environmental labelling)(IDT) 

[4] JIS Q 14050,環境マネジメント−用語 

注記 対応国際規格:ISO 14050,Environmental management−Vocabulary(IDT) 

[5] ISO/TR 14047,Environmental management−Life cycle impact assessment−Examples of application of ISO 

14042 

[6] ISO/TS 14048,Environmental management−Life cycle assessment−Data documentation format  

[7] ISO/TR 14049,Environmental management−Life cycle assessment−Examples of application of ISO 14041 

to goal and scope definition and inventory analysis