Q 14020 : 1999 (ISO 14020 : 1998)
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
また,令和2年10月20日,産業標準化法第17条又は第18条の規定に基づく確認公示に際し,産業標
準化法の用語に合わせ,規格中“日本工業規格”を“日本産業規格”に改めた。
日本産業規格 JIS
Q 14020 : 1999
(ISO 14020 : 1998)
環境ラベル及び宣言−一般原則
Environmental labels and declarations−
General principles
0. 序文
0.1
この規格は,1998年に第1版として発行されたISO 14020, Environmental labels and declarations−
General principlesを翻訳し,技術的内容及び規格票の様式を変更することなく作成した日本産業規格であ
る。
なお,この規格で点線の下線を施してある箇所は,原国際規格にはない事項である。
0.2
環境ラベル及び宣言は,ISO 14000シリーズの主題である環境マネジメントの手段の一つである。
環境ラベル及び宣言は,製品又はサービスについて,その全体の環境特性,特定の環境側面,又はいくつ
かの側面に関する情報を提供する。
購入者及び潜在的購入者は,環境やその他の考慮事項に基づいて製品又はサービスを選択する際に,この
情報を使うことができる。
製品又はサービスの提供者は,環境ラベル又は宣言が,購入の判断に際して自らの製品又はサービスが選
択されるように,効果的に影響することを望んでいる。
環境ラベル又は宣言にこの効果がある場合,その製品又はサービスの市場占有率が増加する可能性がある。
他の提供者は,対抗上環境ラベルの使用又は環境宣言ができるように自らの製品又はサービスの環境側面
を改善することもある。結果として,このカテゴリーの製品又はサービスの環境負荷は減少するであろう。
1. 適用範囲
この規格は,環境ラベル及び宣言の作成と使用についての指導原則を規定する。JIS Q 14020シリーズの他
の適用可能な規格も,この規格とともに使用されることを意図している。これらの規格が,JIS Q 14020
よりさらに特定の要求事項を規定している場合には,それらの特定の要求事項が優先される。
この規格は認証や登録のための仕様として使われるものではない。
備考 このシリーズの他の規格は,この規格に規定している原則と整合するように作られている。JIS
Q 14020シリーズとして存在する他の規格は,現在のところISO 14021,ISO 14024及びISO
14025(ISO 14025は,技術報告書として発行される予定である。)である(参考文献を参照)。
2. 用語及び定義
この規格は,次の用語及び定義を適用する。
2.1
環境ラベル,環境宣言 (environmental label, environmental declaration)
製品又はサービスの環境側面を示す主張。
2
Q 14020 : 1999 (ISO 14020 : 1998)
備考 環境ラベル又は宣言は,製品,包装ラベル,製品説明書,技術報告,広告,広報などに書かれ
た文言,シンボル又は図形・図表の形態をとることができる。
2.2
ライフサイクル (life cycle)
原材料の採取,又は天然資源の産出から最終処分までの,連続的で相互に関連する製品システムの段階
(JIS Q 14040 : 1997)。
備考 “製品”は,物品又はサービスを含む。
2.3
環境側面 (environmental aspect)
環境と相互に影響し得る,組織の活動,製品又はサービスの要素。
3. 環境ラベル及び宣言の目的
環境ラベル及び宣言が全体としてめざすところは,製品及びサービスの環境側面に関して,検証可能で,
正確で,誤解を招かない情報のコミュニケーションを通して,環境負荷の少ない製品及びサービスの需要
と供給を促進し,それによって,市場主導の継続的な環境改善の可能性を喚起することである。
4. 一般原則
4.1
一般事項
4.2から4.10に規定されているすべての原則は,すべての環境ラベル及び宣言に適用される。
JIS Q 14020シリーズにある他の規格が,さらに特定した要求事項を規定している場合には,その特定要求
事項に従わなくてはならない。
4.2
原則1
4.2.1
本文
環境ラベル及び宣言は正確で,検証が可能で,関連性があり,誤解を与えないものでなければならない。
4.2.2
特定考慮事項
環境ラベル及び宣言の有用性と有効性は,製品又はサービスの環境側面について信頼性があり,意味があ
る情報をいかによく伝達できるかにかかっている。環境ラベル及び宣言は,製品又はサービスの環境側面
について,正確な情報を提供しなければならない。
環境ラベル及び宣言の事実に基づいた技術的根拠は,検証できるものでなければならない。環境ラベル及
び宣言は,適切な情報を提供しなくてはならない。すなわち,製品又はサービスに関する,天然資源の採
取,製造,配送,使用若しくは処分の,実際の状況に関係した環境側面について十分に意味のあるものだ
けを取り上げなくてはならない。環境ラベル及び宣言の根拠は,技術革新に対処するために定期的に見直
しを行うことが望ましい。情報は,技術革新の進度にあった頻度で収集されることが望ましい。環境ラベ
ル及び宣言は,理解できる内容でなければならず,製品又はサービスの対象とする購入者を誤解させるよ
うなものであってはならない。
4.3
原則2
4.3.1
本文
環境ラベル及び宣言のための手続並びに要求事項は,国際貿易に不必要な障害を設ける意図をもって,準
備,採択又は適用をしてはならないし,そのような効果をもたらしてもいけない。
4.3.2
特定考慮事項
上記の原則の指針として,世界貿易機関 (WTO) の該当する規定や解釈を考慮することが望ましい。
4.4
原則3
3
Q 14020 : 1999 (ISO 14020 : 1998)
4.4.1
本文
環境ラベル及び宣言は,主張を裏づけるために十分に詳細,かつ,包括的であり,正確で再現性のある結
果が得られる,科学的方法に基づかなければならない。
4.4.2
特定考慮事項
環境ラベル及び宣言を裏づける情報は,科学的又は専門領域で認知され,広く受け入れられている方法か,
そうでなければ,科学的に根拠のある方法によって,収集,評価されたものでなければならない。この方
法は,国際的に受入れ可能で認知された規格(これらは,国際規格,地域規格又は国家規格を含んでよい。),
又は,同業者が従来から認知している工業上若しくは通商上使用されている方法がある場合には,これに
従うことが望ましい。使用される方法は,主張に対し適切でなければならない。また,この方法は,主張
を裏づけるために関連性及び必要性がある情報で,かつ,正確で再現性がある情報を提供しなければなら
ない。
4.5
原則4
4.5.1
本文
環境ラベル及び宣言を裏づける手続,方法,及びすべての判定基準に関する情報は,すべての利害関係者
が入手可能であり,要求に応じて提供されなくてはならない。
4.5.2
特定考慮事項
この情報は,基礎となる原則,仮定及び境界条件を含まなくてはならない。
この情報は,購入者,潜在的購入者,その他の利害関係者が,科学的原則,関連性,総合的妥当性の観点
から,環境ラベル及び宣言を評価し比較するのに十分,かつ,無理なく理解できるものであることが望ま
しい。さらに,この情報は,環境ラベル及び宣言がJIS Q 14020シリーズの該当する規格に対する整合性
を評価するのに十分,かつ,無理なく理解できるものであることが望ましい。また,この情報は,環境ラ
ベル及び宣言が自己主張のものか,独立した立証に基づくものかを明示しなければならない。製品又はサ
ービスがどこの市場で売られようとも,購入者及び潜在的購入者に,この情報の入手方法を知らせなくて
はならない。
これは4.10に記載の種々の方法によって達成できる。特定の情報の入手は,事業上の機密情報,知的財産
権又は同様な法的制約のため制限されることもある。
4.6
原則5
4.6.1
本文
環境ラベル及び宣言の作成は,製品のライフサイクルにおける,関連する側面のすべてを考慮したもので
なければならない。
4.6.2
特定考慮事項
製品又はサービスのライフサイクルは,原材料の生産と配送,若しくは天然資源の産出に関連した活動か
ら,最終処分に至るまでを範囲とする。製品又はサービスのライフサイクルを考慮することによって,環
境ラベル及び宣言を作成する当事者が,環境に影響を与える一連の広がりをもった要因を考慮に入れるこ
とができるようになる。さらに,ライフサイクルを考慮することによって,一つの環境影響を減少させる
過程で,他の環境影響を増大させる可能性があることを当事者が認識できるようになる。
環境ラベル及び宣言に取り上げる特性や,判断基準として意味のある適切なものを確認したり,環境主張
の有意性を判断するためには,製品又はサービスのライフサイクルが考慮されることが望ましい。ライフ
サイクルの考慮の範囲は,環境ラベル又は宣言のタイプ,主張の性質及び製品の種類によって異なること
もある。
4
Q 14020 : 1999 (ISO 14020 : 1998)
これは,必ずしもライフサイクルアセスメントを実施すべきであるという意味ではない。
4.7
原則6
4.7.1
本文
環境ラベル及び宣言は,環境パフォーマンスを維持したり又は改善する可能性のある技術革新を抑制して
はならない。
4.7.2
特定考慮事項
環境ラベル及び宣言に対する要求事項は,設計や特性の記述ではなく,達成される機能で表現されなけれ
ばならない。要求事項に対するこのような考え方は,技術的又はその他の革新に対して最大限の柔軟性を
残すものである。
設計仕様を記述することや,ある技術を暗黙の内に優先することは避けるべきである。このようなことは,
適用すべき環境上の判断基準への適合性を損なわないような,若しくは顕著な環境改善をもたらすような,
製品又はサービスの改善を制約したり阻止したりする可能性があるからである。
4.8
原則7
4.8.1
本文
環境ラベル及び宣言にかかわる運用上の要求事項又は情報の要求は,環境ラベル及び宣言に適用される判
断基準又は規格に対する適合性の確立に必要なものに限定しなければならない。
4.8.2
特定考慮事項
すべての組織は,規模に関係なく,環境ラベル及び宣言を使用する平等な機会をもつべきである。環境ラ
ベル及び宣言への参加は,無関係な要因又は要求事項,例えば,手続の複雑さ,又は情報若しくは運用上
の不合理な要求によって阻害すべきではない。
4.9
原則8
4.9.1
本文
環境ラベル及び宣言を作成する過程は,利害関係者の参加による公開の協議をすることが強く望まれる。
作成過程の全体を通して,コンセンサスを得るための相応な努力が強く望まれる。
4.9.2
特定考慮事項
規格や判断基準を作成する過程は,すべての利害関係者に公開されなくてはならない。
関係者に対しては,時宜を得た十分な告知によって,参加を求め,参画を奨励しなければならない。関係
者は,直接,若しくはその他の書面又は電子的な通信方法による参画が選択できる。意見及び提案は,そ
の意見並びに提案の内容にふさわしい方法で回答されなくてはならない。
JIS Q 14021に基づいて開発された,自己宣言による環境主張の作成については,この規格の作成時に協議
が行われたとみなされる。
備考 さらに指針が必要な場合は,ISO/IEC Guide 2及びISO/IEC Guide 59を参照。
4.10 原則9
4.10.1 本文
環境ラベル又は宣言が対象としている製品及びサービスの環境側面に関する情報は,購入者及び潜在的購
入者が,その環境ラベル又は宣言を行う当事者から,入手可能でなければならない。
4.10.2 特定考慮事項
最終的には,環境ラベル及び宣言の有効性は,購入者及び潜在的購入者に対して,購入の意思決定がもた
らす環境側面に責任をもち,適切な情報に基づく選択をどこまで可能にすることができるか,また,購入
者及び潜在的購入者の製品又はサービスの選択にどこまで影響力を及ぼすことができるかにかかっている。
5
Q 14020 : 1999 (ISO 14020 : 1998)
これは,また,環境側面について提供された情報に対する購入者及び潜在的購入者の受容と理解の程度に
も依存していることである。
したがって,環境ラベル及び宣言を使用する当事者には,購入者及び潜在的購入者に,主張,シンボル,
用語の意味を理解してもらえるように,情報の入手手段を提供する動機付けと責任がある。この情報提供
は,広告,小売り段階における説明パネル,無料電話の番号,教育プログラムなどのような種々な方法に
よって達成される。提供される情報は,環境主張の性質及び適用範囲に対し,適切で十分なものでなけれ
ばならない。
6
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参考文献
[1] ISO 14021, Environmental labels and declaration−Self-declared environmental claims
[2] ISO 14024, Environmental labels and declaration−Environmental labelling Type I−Guiding principles and
procedures
[3] ISO 14025, Environmental labels and declaration−Environmental labelling Type III−Guiding principles and
procedures
[4] JIS Q 14040, 環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠組み
[5] ISO/IEC Guide 2, General terms and their definitions concerning standardization and related activities
[6] ISO/IEC Guide 59, Code of good practice for standardization
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Q 14020 : 1999 (ISO 14020 : 1998)
環境ラベル小委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
山 本 良 一
東京大学生産技術研究所
(副委員長)
〇 山 口 光 恒
慶應義塾大学経済学部
(委員)
浅 田 聡
トヨタ自動車株式会社・設計管理部
網 戸 頴 二
本田技研工業株式会社・環境安全企画室
〇 市 川 昌 彦
財団法人日本品質保証機構・環境監査センター
〇 上 原 春 夫
社団法人産業環境管理協会
大 橋 照 枝
麗澤大学・国際経済学部
岡 田 浩 一
日本電気株式会社・環境管理部
小 林 珠 江
株式会社西友・環境対策室
澤 田 秀 雄
生分解プラスチック研究会技術委員会
曽 原 光 一
日本電気株式会社・環境管理部
瓦 林 真 一
財団法人省エネルギーセンター・調査部
綱 島 群
資源環境技術総合研究所・素材資源研究部
中 野 知 明
三菱化学MKV株式会社・品質保証部
立 川 家 斉
日本プラスチック工業連盟
津 城 修 介
財団法人省エネルギーセンター・調査部
〇 橋 爪 繁 幸
財団法人日本環境協会
波多江 正 和
日本製紙連合会・技術環境部
原 早 苗
財団法人消費者科学センター消費者科学連合
間 宮 陸 雄
財団法人クリーン・ジャパンセンター・相談部
〇 水 谷 広
日本大学・生物資源学部
皆 川 美 郷
富士写真フィルム株式会社・環境安全推進部
南 健 男
三洋電機株式会社・環境統括部
〇 茂 呂 昌 男
株式会社東芝・生産技術推進部
山 口 潤
富士写真フィルム株式会社・環境安全推進部
吉 村 秀 勇
財団法人日本規格協会・技術部
安 川 良 介
株式会社電通・営業企画局公共企画部
(関係者)
〇 鬼 束 忠 人
工業技術院標準部
〇 佐 野 浩 一
工業技術院標準部
〇 佐久間 順 一
通商産業省環境立地局環境政策課
(事務局)
〇 須 田 茂
社団法人産業環境管理協会
〇 松 本 清 文
社団法人産業環境管理協会
〇 吉 松 恵美子
社団法人産業環境管理協会
備考 〇印は,環境JIS専門委員会 (14020) 委員を示す。