Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 2
2 用語及び定義 ··················································································································· 2
3 段階的実施プロセス ·········································································································· 6
3.1 一般 ···························································································································· 6
3.2 経営層及びスタッフからの支援,コミットメント及び参画の重要性 ········································· 6
3.3 この規格の構造 ············································································································· 7
3.4 環境マネジメントシステムの適用範囲················································································ 7
3.5 環境マネジメントシステムの段階的実施プロセス ································································· 8
4 環境マネジメントシステムの段階的実施を開始するに当たり,経営層の支援及びコミットメントを確
立するための,環境関連プロジェクトの取組み ·········································································· 8
4.1 目的 ···························································································································· 8
4.2 方法 ···························································································································· 9
5 環境マネジメントシステムの実施及び維持を支援する要素 ······················································ 11
5.1 環境コミュニケーション ································································································ 11
5.2 資源,役割,責任及び権限 ····························································································· 14
5.3 力量,教育訓練及び自覚 ································································································ 15
5.4 記録 ··························································································································· 16
5.5 文書類 ························································································································ 17
5.6 文書管理 ····················································································································· 18
6 環境マネジメントシステムの構築及び実施 ··········································································· 19
6.1 組織の著しい環境側面の特定 ·························································································· 19
6.2 組織の法的及びその他の要求事項の特定············································································ 21
6.3 組織の法的及びその他の要求事項の順守評価 ······································································ 22
6.4 環境方針の準備及び実施 ································································································ 23
6.5 目的及び目標の設定並びに実施計画の策定 ········································································· 24
6.6 運用管理 ····················································································································· 25
6.7 緊急事態への計画及び対応 ····························································································· 27
6.8 監視及び測定を含む,環境パフォーマンス評価 ··································································· 28
6.9 内部監査 ····················································································································· 30
6.10 計画どおりに進まない場合の運用管理 ············································································· 31
6.11 進捗及びパフォーマンスのマネジメントレビュー ······························································ 33
附属書A(参考)活動の概要 ································································································· 35
附属書B(参考)5段階における実施例 ··················································································· 40
附属書C(参考)3段階における段階的実施例 ·········································································· 42
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010) 目次
(2)
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ページ
附属書D(参考)環境マネジメントシステムプロジェクトの例····················································· 43
附属書E(参考)他規格とJIS Q 14005との対比表 ···································································· 50
参考文献 ···························································································································· 52
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
(3)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標
準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業
大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
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日本工業規格 JIS
Q 14005:2012
(ISO 14005:2010)
環境マネジメントシステム−環境パフォーマンス
評価の利用を含む環境マネジメントシステムの
段階的実施の指針
Environmental management systems-Guidelines for the phased
implementation of an environmental management system, including the use
of environmental performance evaluation
序文
この規格は,2010年に第1版として発行されたISO 14005を基に,技術的内容及び構成を変更すること
なく作成した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
この規格は,JIS Q 14001の要求事項を満たす環境マネジメントシステム(EMS)の構築及び実施を,
組織,特に中小企業(SME)に奨励し,かつ,その手引を与えることを目的としている。この手引は,環
境パフォーマンス評価が含まれることを除いて,JIS Q 14001を超えるものではなく,また認証目的及び
JIS Q 14001の解釈のために利用されるものでもない。
正式な環境マネジメントシステムをもつことで利益を得ている組織は多いが,より多くの組織,特に
SMEでは,多大な便益になるにもかかわらずこのようなシステムをもっていない。この規格は,発展し得
る環境マネジメントシステムを実施するために段階的なアプローチを使用し,これによって環境マネジメ
ントシステムの規格であるJIS Q 14001の要求事項を満たすことを目指している。
段階的アプローチには,数々の利点がある。利用者は,環境マネジメントシステムに投ずる時間及び資
金が,どれほどの利益を生むかを容易に見積ることができる。利用者は,環境改善がいかにコスト削減を
生み,地域社会との関係を改善し,法的及びその他の要求事項への順守を示し,顧客の期待に応えること
に役立つかを知ることができる。利用者は,組織にとって価値のある要素を一つ一つ追加,又は拡大しな
がらシステムを完成していくことによって,環境マネジメントシステムの利点を追求することができる。
環境マネジメントシステムの適用範囲が,組織が意図する全ての活動,製品及びサービスを含み,この規
格の全ての要素をこれらに適用していれば,組織は,JIS Q 14001の要求事項を満たすようなシステムを構
築し,実施していることになる。
JIS Q 14001は,最も広く受け入れられている環境マネジメントシステムの規格であり,組織の環境問題
を管理するための構造化されたアプローチである。JIS Q 14001は,多くの他の地域的なマネジメントシス
テムアプローチとも整合し,それらの基本となっている。
なお,他規格とJIS Q 14005との対比表を,附属書Eに示す。
2
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
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1
適用範囲
この規格は,全ての組織,特に中小企業(SME)のための,環境マネジメントシステムの段階的な構築,
実施,維持及び改善に関する手引を示す。また,この規格は,環境パフォーマンス評価技法の環境マネジ
メントシステムへの統合及び利用に関する助言も含む。
この規格は,組織の発展段階,実施される活動の性質又は活動が行われる場所にかかわらず,全ての組
織に適用可能である。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 14005:2010,Environmental management systems−Guidelines for the phased implementation of an
environmental management system, including the use of environmental performance evaluation
(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
用語及び定義
この規格で用いる主な用語及び定義は,次による。
2.1
監査員(auditor)
監査を行う人。
[JIS Q 14050:2012の5.31.1]
2.2
監査所見(audit findings)
収集された監査証拠を,監査基準に対して評価した結果。
注記1 監査所見は,適合又は不適合を示す。
注記2 監査所見は,改善の機会の特定又は優れた実践事例の記録を導き得る。
注記3 監査基準が法的及びその他の要求事項から選択される場合,監査所見は“順守”又は“不順
守”と呼ばれる。
[JIS Q 14050:2012の5.23]
2.3
監査プログラム(audit programme)
特定の目的に向けた,決められた期間内で実行するように計画された一連の監査の取決め。
注記 JIS Q 9000:2006の3.9.2から部分的に採用。
[JIS Q 14050:2012の5.32]
2.4
継続的改善(continual improvement)
組織の環境方針と整合して全体的な環境パフォーマンスの改善を達成するために環境マネジメントシス
テムを向上させる繰り返しのプロセス。
注記 このプロセスは全ての活動分野で同時に進める必要はない。
[JIS Q 14050:2012の4.7]
2.5
是正処置(corrective action)
3
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
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検出された不適合の原因を除去するための処置。
[JIS Q 14050:2012の4.4.2]
2.6
文書(document)
情報及びそれを保持する媒体。
注記1 媒体としては,紙,磁気,電子式若しくは光学式コンピュータディスク,写真若しくはマス
ターサンプル,又はこれらの組合せがあり得る。
注記2 JIS Q 9000:2006の3.7.2から部分的に採用。
[JIS Q 14050:2012の4.5]
2.7
環境(environment)
大気,水,土地,天然資源,植物,動物,人及びそれらの相互関係を含む,組織の活動を取り巻くもの。
注記 ここでいう取り巻くものとは,組織内から地球規模のシステムにまで及ぶ。
[JIS Q 14050:2012の3.1]
2.8
環境側面(environmental aspect)
環境と相互に作用する可能性のある,組織の活動,製品又はサービスの要素。
注記 著しい環境側面は,著しい環境影響を与えるか又は与える可能性がある。
[JIS Q 14050:2012の3.2]
2.9
環境影響(environmental impact)
有害か有益かを問わず,全体的に又は部分的に組織の環境側面から生じる,環境に対するあらゆる変化。
[JIS Q 14050:2012の3.3]
2.10
環境マネジメントシステム,EMS(environmental management system,EMS)
組織のマネジメントシステムの一部で,環境方針を策定し,実施し,環境側面を管理するために用いら
れるもの。
注記1 マネジメントシステムは,方針及び目的を定め,その目的を達成するために用いられる相互
に関連する要素の集まりである。
注記2 マネジメントシステムには,組織の体制,計画活動,責任,慣行,手順,プロセス及び資源
を含む。
[JIS Q 14050:2012の4.1]
2.11
環境目的(environmental objective)
組織が達成を目指して自ら設定する,環境方針と整合する全般的な環境の到達点。
[JIS Q 14050:2012の4.1.2]
2.12
環境パフォーマンス(environmental performance)
組織の環境側面についてのその組織のマネジメントの測定可能な結果。
注記 環境マネジメントシステムでは,結果は,組織の環境方針,環境目的,環境目標及びその他の
4
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環境パフォーマンス要求事項に対応して測定可能である。
[JIS Q 14050:2012の3.16]
2.13
環境パフォーマンス評価,EPE(environmental performance evaluation,EPE)
組織の環境パフォーマンスに関して,経営判断をしやすくするプロセス。環境指標を選定すること,デ
ータを収集及び分析すること,環境パフォーマンス基準に対して情報を評価すること,報告及びコミュニ
ケーションをとること,並びにそのプロセスを定期的にレビュー及び改善すること,による。
[JIS Q 14050:2012の3.16.1]
2.14
環境パフォーマンス指標,EPI(environmental performance indicator,EPI)
組織の環境パフォーマンスについての情報を提供する特定の表現。
[JIS Q 14050:2012の3.16.4]
2.15
環境方針(environmental policy)
トップマネジメントによって正式に表明された,環境パフォーマンスに関する組織の全体的な意図及び
方向付け。
注記 環境方針は,行動のための枠組み,並びに環境目的及び環境目標を設定するための枠組みを提
供する。
[JIS Q 14050:2012の4.1.1]
2.16
環境目標(environmental target)
環境目的から導かれ,その目的を達成するために目的に合わせて設定され,組織又はその一部に適用さ
れる,詳細なパフォーマンス要求事項。
[JIS Q 14050:2012の4.1.3]
2.17
利害関係者(interested party)
組織又はシステムのパフォーマンス又は結果(outcome)に関心をもつ個人又は団体。
注記1 “結果(outcome)”には製品及び合意(agreement)を含む。“システム”には製品システム,
並びに環境ラベル及び宣言のシステムを含む。
注記2 この一般的な定義は規格から直接引用したものではない。この概念は,JIS Q 14001(JIS Q
14004及びJIS Q 14031の定義と同一)の環境パフォーマンス,JIS Q 14024のタイプI環境
ラベル,JIS Q 14025のタイプIII環境宣言及びJIS Q 14040のライフサイクルアセスメント
の観点から定義したものである。
[JIS Q 14050:2012の3.6]
2.18
内部監査(internal audit)
組織が定めた環境マネジメントシステム監査基準が満たされている程度を判定するために,監査証拠を
収集し,それを客観的に評価するための,体系的で,独立し,文書化されたプロセス。
注記 多くの場合,特に中小規模の組織の場合は,独立性は,監査の対象となる活動に関する責任を
負っていないことで実証することができる。
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
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[JIS Q 14050:2012の5.18.1]
2.19
マネジメントパフォーマンス指標,MPI(management performance indicator,MPI)
組織の環境パフォーマンスに影響を及ぼす,様々な経営取組みについての情報を提供する,環境パフォ
ーマンス指標。
[JIS Q 14050:2012の3.16.5]
2.20
不適合(nonconformity)
要求事項を満たしていないこと。
[JIS Q 14050:2012の4.3]
2.21
操業パフォーマンス指標,OPI(operational performance indicator,OPI)
組織の操業における環境パフォーマンスについての情報を提供する,環境パフォーマンス指標。
[JIS Q 14050:2012の3.16.6]
2.22
組織(organization)
法人か否か,公的か私的かを問わず,独自の機能及び管理体制をもつ,企業,会社,事業所,官公庁若
しくは協会,又はその一部若しくは結合体。
注記 複数の事業単位をもつ組織の場合には,単一の事業単位を一つの組織と定義してもよい。
[JIS Q 14050:2012の3.4]
2.23
段階的実施(phased implementation)
組織のニーズ及び資源に合わせて組織が決定した,環境マネジメントシステムの要求事項を満たすため
の連続性のあるステップの組合せ。
2.24
予防処置(preventive action)
起こり得る不適合の原因を除去するための処置。
[JIS Q 14050:2012の4.4.3]
2.25
汚染の予防(prevention of pollution)
有害な環境影響を低減するために,あらゆる種類の汚染物質又は廃棄物の発生,排出,放出を回避し,
低減し,管理するためのプロセス,操作,技法,材料,製品,サービス又はエネルギーを(個別に又は組
み合わせて)使用すること。
注記 汚染の予防には,発生源の低減又は排除,プロセス,製品又はサービスの変更,資源の効率的
使用,代替材料及び代替エネルギーの利用,再利用,回収,リサイクル,再生,処理などがあ
る。
[JIS Q 14050:2012の3.11]
2.26
手順(procedure)
活動又はプロセスを実行するために規定された方法。
6
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注記 手順は文書化することもあり,しないこともある。
[JIS Q 14050:2012の4.2]
2.27
記録(record)
達成した結果を記述した,又は実施した活動の証拠を提供する文書。
[JIS Q 14050:2012の4.6]
3
段階的実施プロセス
3.1
一般
組織は,個別の問題解決のために,又は特定の機会を利用するために,組織の環境側面を管理するため
の体系的なアプローチの適用を決めてもよい。又は別の方法として,組織は,JIS Q 14001の要求事項を満
たすために,組織の全ての環境側面を管理できる環境マネジメントシステムの実施を求めてもよい。
組織が環境側面を管理することによって得られる潜在的な利点は数多くある。しかしながら,組織が,
環境マネジメントへの体系的なアプローチを,柔軟性のない,限定的で,形式的な又はコストのかかるプ
ロセスとみなしてしまうことによって,そのアプローチの適用をためらう可能性もあるし,見た目の作業
量に圧倒される可能性もある。
この規格で記述するモデルは,組織の目的及び利用可能な資源に合わせ,システムの範囲及び適用を順
次拡大しながら,組織が,特定の方法で環境マネジメントシステムを実施することができるように策定さ
れている。
段階的アプローチを実施する前に,組織は,次の事項を考慮するとよい。
− 組織の規模
− 組織の立地
− 既存のマネジメントの仕組み
− 環境課題が日々の運用活動に組み込まれている程度
− 文化的ニーズ及び願望
− スタッフの有無及び専門知識
− 資源の限度
3.2
経営層及びスタッフからの支援,コミットメント及び参画の重要性
組織の活動に価値を付加する,効果的な環境マネジメントシステムを成功裏に実施するためには,トッ
プマネジメント及びスタッフを含む経営層からの支援,コミットメント及び参画を確実にし,維持するこ
とが不可欠である。このことが,ある特定の組織には当てはまらない場合,箇条4は,環境マネジメント
システムの実施を始めるための経営層の十分な支援及びコミットメントを得るために適用することのでき
るアプローチを記述している。
一般的に,支援及びコミットメントは,人々にプロセスへの参画を促し,環境側面の管理の恩恵として
の利点に結び付く。
経営層のコミットメントは,方針など支援の声明文に反映することが望ましいが,効果的な環境マネジ
メントシステムの実施を支援するために必要な人員,財源及びその他の資源を利用可能にすることを伴う
ことが望ましい。組織のために働く人々は,実施プロセスに参加し,貢献するために動機を与えられてい
ることが望ましい。ここでいう参加及び貢献とは,会議に出席したり,提案をしたり,同僚たちに段階的
実施プロセスへの理解及び賛同を促すために主導的な役割を担ったりすることなどである。
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3.3
この規格の構造
この規格の内容は,三つの主要な箇条(箇条4〜箇条6)に分けられる。
箇条4は,環境マネジメントシステムが,いかに環境関連のプロジェクトに適用され得るかについて記
述している。附属書Dに示す事例に従うことによって,組織は,環境マネジメントシステムの実施を可能
にするための,環境マネジメント活動に対する組織内の十分なコミットメント及び支援を確保することを
助ける,明白な利点を得ることが望ましい。組織は,十分なコミットメント及び支援を確保したり,組織
の環境活動のレベルを徐々に確立するために,幾つかのプロジェクトを,同時に又は順番に行うかを決定
したりすることもあり得る。
別の方法として,組織は,JIS Q 14001の要求事項に適合する環境マネジメントシステムの実施に直接着
手すると決定してもよい。その場合,組織は,箇条5及び箇条6に直接進んでもよい。そのような場合で
も,組織は,このプロセスを通して,箇条4及び附属書Dで示されている手引を読み,かつ,参照するこ
とが有益であることを理解することができる。
箇条5は,組織が,段階的実施を計画するときに考慮することが望ましい支援要素を提供する。
箇条6は,組織が,環境課題に取り組むために必要な環境側面を,いかに特定し,かつ,管理するかを
詳説する。箇条5及び箇条6を完全に実施する組織は,JIS Q 14001の要求事項を満たす環境マネジメント
システムをもつことになる(附属書A参照)。
表A.1は,環境マネジメントシステムを実施するために要求される主要要素及び支援要素を表形式で記
述する。それぞれの要素を示す欄を読み進めることによって,各々の要素を実施するためにとられ得る,
論理的な一連のステップを確認できる。必ずしも別の要素を開始する前に,ある要素を完了させる必要は
ない。一つの要素におけるステップからのアウトプットを,別の要素のステップのインプットに使う必要
がある場合もある。
附属書Aをレビューすることで,多くの組織は,環境以外の事項に関連する理由(例えば,コスト節減,
顧客要求事項への対応)のために既に取り組んだ,幾つかのステップを特定することができる。組織が環
境マネジメントシステムの実施に向けた進捗を既に始めているということを実証することによって,JIS Q
14001の全ての要求事項を満たすために活動を広げることに対する支援及びコミットメントを構築する手
助けとなる。また,このレビューは,環境マネジメントシステムの構築を完了するために要求され得る取
組みの,残りの業務及び指標の範囲を組織に示す。
附属書B及び附属書Cは,各段階において,どのように環境マネジメントシステムが実施され得るかに
ついての例を示す。
附属書Dは,小規模組織が,本格的な環境マネジメントシステムへの展開に十分な経営層のコミットメ
ントを確立するためのプロジェクトをどのように進めるかを示している。この附属書に示されている表は,
将来の環境マネジメントシステムの幾つかの要素に取り組む最初のステップを示している。これらの要素
は,附属書Aと同じ順序で表されており,全ての例は,附属書Cで記述されている三つの段階的アプロー
チのいずれにも適用可能である。この企業が,どのように各要素への取組みを開始するかについての記述
の下に,各要素の完全な実施に向けた進捗の程度に対する,評価を示す表がある。
3.4
環境マネジメントシステムの適用範囲
組織は,環境マネジメントシステムの適用範囲,すなわち,環境マネジメントシステムに含める活動,
製品及びサービスを定めることが望ましい。組織は,環境マネジメントシステムが一つ又は複数の場所に
適用可能であるかどうかを決定することが望ましい。組織は,適用範囲を,例えば,敷地の一部が別の組
織に所有及び管理されているといったように,敷地又は複数の製品若しくはサービスの一部に限定する理
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
由があるかどうかを検討することが望ましい。適用範囲が決まれば,その範囲内の全ての活動,製品及び
サービスが,環境マネジメントシステムによって網羅されることが望ましい。
3.5
環境マネジメントシステムの段階的実施プロセス
どのアプローチが最良かについて明確になっていない組織にとっては,箇条4に示す,単独のプロジェ
クトから着手することが,環境マネジメントへの体系的なアプローチを理解及び適用するための開始点と
して,有益であり得る。
環境マネジメントシステムの段階的な実施への次の二つの異なるアプローチが,この規格において提案
されている。
a) 要素の順番に合わせた規定のステップを進める(箇条5及び箇条6を参照)。このアプローチは,最初
の環境プロジェクトを実施した後に(箇条4を参照),環境側面を管理するための構造化されたアプロ
ーチを採用することを決定した組織に適切である(附属書Bの例を参照)。
b) JIS Q 14001の特定の要求事項を満たすために,連続,又は同時に実施し得るステップを選択して使用
する。このステップの選定は,例えば,法令順守を実証すること,利害関係者のニーズ(顧客要求事
項など)を満たすこと,環境パフォーマンスを改善することのような,特定の環境課題に取り組むた
めに選択され得る。このアプローチは,その組織のペースで,かつ,その組織に利用可能な資源の範
囲内で,環境マネジメントシステムをより効果的なものにするように進めることを望む組織に適切で
あり得る(附属書Cの例を参照)。
実施計画は,次の事項を明確にして策定されることが望ましい。
− 採用されたアプローチ
− 達成までの期間
− 必要な資源
− 計画の実施における役割及び責任
− 必要な記録
− 進捗を一貫して監視及び測定できるような方法
進捗は,段階ごとに実施した成果の達成度合い,及び実施計画に沿っているかの観点から測定すること
ができる。また,段階的実施プロセスによって,組織は,JIS Q 14001の実施と対比した評価もできる。環
境マネジメントシステム実施に向けた進捗の評価は,資源の有効な利用を確実にし,かつ,組織の目的を
達成するために有益である。
4
環境マネジメントシステムの段階的実施を開始するに当たり,経営層の支援及びコミットメントを確
立するための,環境関連プロジェクトの取組み
4.1
目的
環境マネジメントシステムの実施を始める前に,かつ,新規のコミットメントの確立,又は既存のコミ
ットメントを強化するために,限られた範囲のプロジェクトを実行することが有用であることを,組織は
理解し得る。プロジェクトの実行によって,環境マネジメントシステムの構築の基本を習得し,体系的に
環境側面を管理することの利点を経験することができ,実際に環境パフォーマンスを改善することにも役
立つ。
このことは,特定の,かつ,組織の当面の関心事項である,一つ又は限られた数の環境側面に焦点を当
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てた小規模プロジェクトを検討することによって,実施し得る。例えば,次のようなものである。
− 高額又は困難な,特定の廃棄物処分のフロー
− 取り扱う必要のある法的要求事項
− 削減が必要な,高額の原材料コスト又はエネルギーコスト
− 近隣の地域社会又は顧客との関係を強化する可能性のある,汚染管理方法の改善
検討される環境側面の数,及び,取り上げられ,解決される範囲は,効果が明確になり,資源の追加が
可能になるに従って,増加し得る。
4.2
方法
4.2.1
一般
ここで説明されるステップは,環境マネジメントシステムの基本的構成を表している。それらは,
“Plan-Do-Check-Act”(PDCA)モデルに従っている。
− Plan:プロジェクトを特定し,選択し,初期環境活動計画を準備する。
− Do:役割及び責任の割当てを含む,活動計画を実行する。
− Check:達成度を監視し,測定し,評価する。
− Act:プロセスをレビューし,マネジメントレビューにおいて更なる処置を決定する。
PDCAモデルは,他の多くのマネジメントシステム規格の基礎としても使用されている。
4.2.2
トップマネジメントの参画
活動を確実に実施することに権限をもつ人々,及び環境マネジメントシステムを成功裏に実施すること
を支援するために必要となる資源を管理する組織内の人々の参画,コミットメント及び支援を得ることは
不可欠である。“トップマネジメント”という用語は,しばしばこれらの人々のことを表すために使用され
る。これらの人々は,自分自身のコミットメント及び支援の重要性を理解することが望ましく,さらに,
そのコミットメント及び支援は,組織内の他の人々にも伝達されることが望ましい。
トップマネジメントは,環境プロジェクトの中心として活動するプロジェクトリーダーを任命すること
が望ましい。JIS Q 14001の要求事項を満たす環境マネジメントシステムを実施するとき,この人物は,管
理責任者となる。この規格にある手引では,“管理責任者”という用語は,JIS Q 14001に完全に準拠した
環境マネジメントシステムを実施するか,又はより小規模な環境プロジェクトを実施するかによって,“プ
ロジェクトリーダー”という意味で使われることもある。
4.2.3
プロジェクトの特定及び選定
どの環境プロジェクトが,コミットメント及び支援を奨励する環境改善及びビジネス上の利点をもたら
すかを決定するために,組織が直面している広範囲の環境問題に関する情報を集めることが有用である。
これらの情報は,規制の順守,環境関連の苦情(例えば,煙,騒音,悪臭),環境への明らかなマイナスの
影響(例えば,大気汚染,水質汚濁),エネルギー,廃棄物,水及び原材料の使用に関するコスト,顧客か
らの要請,スタッフからの提案,又は他の利害関係者の見解を含み得る。
選定されたプロジェクトは,制約された資源のもとでも管理できるように,その範囲を十分に限定する
だけでなく,更なる環境プロジェクト又は環境マネジメントシステムの完全な実施のための支援を確保す
るために,妥当な期間の中で,組織に対して実証可能な価値をもたらすものでもあることが望ましい。
潜在的な利点及び機会を含めて,必要な取組み,資源,及び投資収益率に注意を払うことが望ましい。
選定されたプロジェクトの範囲,期待される利点,必要な予算,及び損失の可能性は,承認を得るために,
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トップマネジメントに提出することが望ましい。
4.2.4
選定されたプロジェクトの計画及び実施
選定されたプロジェクトの作業を始める前に,活動計画を準備するとよい。活動計画は,特に小規模組
織にとっては,短い内容となり得るが,少なくともその中に,プロジェクト実施の意図,組織に価値をも
たらす理由,及びその達成の方法を簡潔に記述することが望ましい。この計画には,想定されるコストも
含んでよい。
活動計画を準備するに当たり,次の事項を特定し,分析するために,レビューの実施から始めてもよい。
a) プロジェクトの範囲に含まれる,組織の活動,製品及びサービスに適用される主な法的要求事項。そ
の他の要求事項(例えば,契約に関する要求事項)についても,考慮され得る。
b) 組織の活動,製品及びサービスの環境への主な影響。これらを特定するときに,組織は,規制当局か
らの許可証,並びに大気,水及び土壌への排出,廃棄物の取扱い及び処理,有害物質の使用及び生産
に関する業界団体から入手できる情報を調査し,かつ,利害関係者の見解を考慮してもよい。
労力をかけてレビューすることはないが,レビューは,環境マネジメントシステムが組織にもたらす価
値を正しく評価するために,重要な要素に焦点を当てて十分に行うことが望ましい。
環境側面及びそれに関連するコストの定量的評価に関する情報(例えば,廃棄物量,液体排出物の量,
潜在的に修復可能な製品を放置又は廃棄することで発生する損失コスト,苦情件数,排出物の成分)がな
い場合,その評価を行う必要がある。これらの値は,環境パフォーマンス指標と呼ばれ,活動単位(例え
ば,最終製品の量)ごとに示すことが実用的である。
注記 環境パフォーマンス指標の使用方法については,6.8を参照。
環境パフォーマンス指標を特定した後,改善のための目的及び目標を特定することが望ましい。例えば,
エネルギー使用の削減,有害な排出の低減などがある。目的及び目標は,可能な限り定量化し,上記の適
切な指標に関連することが望ましい。目的及び目標は,事業運用,利用可能な資源,経営上の到達点及び
組織に関するその他の問題を考慮に入れて優先順位を決める必要がある。
関連する活動計画では,最終的に次の事項を定めることが望ましい。
− これらの目的及び目標に到達するために必要な活動
− 対応する資源(人的及び財務的)
− プロジェクトを完了する上で,期間,特に正確な達成期限を確立することが望ましい。
− 計画実施のための責任
プロジェクトの活動計画は,承認のためにトップマネジメントに提出することが望ましい。
関連する責任を組織内の特定の人々に割り当て,活動計画の内容に見合った適切な資源を準備すること
が望ましい。計画に含まれる全ての活動を,実行することが望ましい。一部の活動を効果的に達成するた
めに,新たな教育訓練が必要となり得る。
4.2.5
選定されたプロジェクトの点検
選択された指標に対する進捗は,次の事項を決定するために,プロジェクトに含まれる運用活動に関わ
る要員によって,定期的に評価してもよい。
− 環境パフォーマンス指標ごとの進捗
− 資源及び費用
− 想定される遅延
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− 上記以外の,活動計画からの逸脱
必要があれば,プロジェクトが計画どおりに進むように,適切な処置をとることが望ましい。
4.2.6
選定されたプロジェクトのレビュー
活動計画が完全に実施された場合,トップマネジメントは,次の事項を調査及び評価するために,プロ
セス及び結果をレビューすることが望ましい。
− 全ての計画された活動が適切に実施されたか
− 環境パフォーマンスの改善が達成されたか
− 計画された到達点に対する達成度合い
− 財務的な成果
− 組織構造に与え得る影響
− 利害関係者の予想される反応を含む,プロジェクトのその他のコスト及び利点
プロジェクトを統括している管理責任者は,上記の項目を考慮に入れて,レビューのための概要報告書
を用意することが望ましい。
レビューの終了時に,トップマネジメントは,自らの理解を深めた上で,完全な環境マネジメントシス
テムの実施を進めるかどうかを決定する立場にいることが望ましい。又は,現在のプロジェクトを拡大す
るか(例えば,活動計画の修正,より良いコミュニケーション,より一層の資源の配分,新たな責任の割
当て及び範囲の変更),若しくは,別の環境側面に焦点を当てた追加のプロジェクトについて開始するかを
決定してもよい。
組織が,JIS Q 14001の全ての要求事項を満たす環境マネジメントシステムの実施の継続を決定した場合,
トップマネジメントは,正式にコミットメント及び支援を表明し,管理責任者の指名並びに十分な時間及
び資源の配分を含む,箇条5以降に記述されている活動の実施のために,必要な全ての対応を行うことが
望ましい。いかなる場合においても,トップマネジメントは,その決定について,組織内の全ての要員に
明確に伝達し,説明することが望ましい。
環境マネジメントシステムプロジェクトの例は,附属書Dを参照。
5
環境マネジメントシステムの実施及び維持を支援する要素
5.1
環境コミュニケーション
5.1.1
一般
環境改善活動又は環境マネジメントシステムの実施に関わる人々が,それに責任を負い,支援すること
によって,環境マネジメントシステムの実施が効果的になる。さらに,その人々が支援を提供することが
望ましい理由をよく理解し,達成された内容に関するフィードバックをより早くするほど,その人々の意
欲をより促すことになる。そのためには,経営層とスタッフとの間で,方向性だけでなく,最新の進捗状
況についても,効果的かつ定期的なコミュニケーションが必要である。さらに,組織内の部門間での,良
好なコミュニケーションが望ましい。これによって,ある部門の活動が他の部門に与える環境的意味合い
を,各人が理解できるようになる。
顧客,地域社会及びその他の外部の利害関係者との良好な双方向のコミュニケーションを構築し,維持
することも重要である。組織外のそうした人々の関心事,考え及び意見を聞くことによって,組織は,信
頼関係を構築でき,ビジネスの改善及び市場への参入に結びつけることもできる。環境目的及び目標を策
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定し,マネジメントシステムが成熟するにつれて,利害関係者の参画を通じて,組織は,問題化する前に
外部の考えを理解し,それに取り組み,かつ,応えることができる。
何を,誰に,どのような方法で伝達するかについての決定は,計画したとおりに行われることが望まし
い。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
環境課題についてコ
ミュニケーションを
行う必要性及び価値
を認識する。
何を,誰に伝達する
かを明確にする。
利害関係者に情報を
伝達する方法を計画
する。
コミュニケーション
プロセスを実施す
る。
コミュニケーション
が効果的であったか
を決定するために,
コミュニケーション
の結果を監視する。
5.1.2
ステップ1
組織は,環境マネジメントシステムの効果的な実施を確実にするために,環境問題に関するコミュニケ
ーションの重要性を認識することが望ましい。これは,組織内部のコミュニケーション及び外部の利害関
係者とのコミュニケーションを含む。不十分なコミュニケーションの例(それがどのような場面で組織の
困難をもたらしたか),又は,良好なコミュニケーションの例(どのような場面で利点をもたらしたか)を
明確にすることは,コミュニケーション戦略の構築に着手するのに良い方法である。環境コミュニケーシ
ョンに関する更なる情報は,JIS Q 14063を参照。
5.1.3
ステップ2
組織は,どの情報を誰に対して伝達する必要があるかを特定し,決定することが望ましい。この情報に
は,次の情報を含んでもよい。
− 組織の環境方針,著しい環境側面の程度及び範囲,環境パフォーマンスの改善のための目的及び目標,
現在の環境パフォーマンスレベル,並びに法的要求事項の順守
− 内部及び外部の利害関係者からのあらゆる意見(苦情,法規制順守状況の監査及び顧客アンケートを
含む。)
− 環境マネジメントシステムの効果的な実施を確実にするために必要なその他の関連情報
組織は,内部及び外部の利害関係者を含めた,コミュニケーションをとる対象者を決めることが望まし
い。内部では経営層とスタッフとの間,外部では顧客,地域社会,行政機関といった利害関係者との,双
方向のコミュニケーションの仕組みがあることを確実にすることが望ましい。組織は,それぞれの対象者
にとって重要となるコミュニケーションを決定することが望ましい(すなわち,メッセージの伝達,イン
プット及び支援の要求,又は規制認可)。
5.1.4
ステップ3
多くの組織は,既に,スタッフ,地域社会,顧客,供給者及びその他の利害関係者とのコミュニケーシ
ョンの方法をもっている。それがない場合には,新しいコミュニケーションの計画を作る必要があり得る。
しかし,実行可能な場合,既存の方法を基にして進めるのが通常最も費用対効果がある。これは,既存の
計画の有効性を評価し,より効果的なコミュニケーションの方法又は様式を明確にすることによって,そ
の有効性を改善する良い機会でもある。
一貫性を維持するため,組織は,コミュニケーションの手順を策定し,実施することが望ましい。この
手順は,必ずしも複雑である必要はないが,何を,誰に,どのように,かつ,いかなる目的をもって伝達
するのかという概要を示すことが望ましい。コミュニケーションの手順は,次のとおりであることが望ま
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しい。
− 各種類のコミュニケーションを,それぞれの対象者とどの程度積極的に行うかを決定する。
− 重要なメッセージ(求められる情報,意見を含む。)を策定し,目標,目的及び環境パフォーマンス指
標を設定する。
− 責任を割り当て,予定表を作成する。
− 近隣住民,規制当局のような外部の利害関係者からの関連するコミュニケーションを受け付け,文書
化し,回答するための手順を策定し,内部にその手順を伝達する。
コミュニケーションに用いる方法には,次の事項が含まれる。
− 会議の議事録
− 掲示板の掲示物
− 内部の広報
− 提案箱及び提案制度
− ウェブサイト
− 電子メール
− 非公式の打合せ
− 組織の一般公開日
− フォーカスグループ
− 地域との対話
− 地域イベントへの参画
− 報道発表
− 広報及び定期会報
− 年次(又は他の定期的な)報告書
− 電話ホットライン
組織が選択するコミュニケーションの方法は,組織の規模及び利用可能な資源によって異なり得る。
5.1.5
ステップ4
この段階において,組織は,次に示す証拠を提供することが望ましい。
− 該当する場合,環境問題に関するコミュニケーションが,組織全体で行われている。
− 外部の質問に対する回答は,手順に沿った形で扱われ,かつ,行われた。
− 必要な場合,外部の環境コミュニケーションの方法を策定した。
5.1.6
ステップ5
組織は,コミュニケーションの有効性を明確にし,必要に応じて,行ったアプローチを調整する処置を
とるために,内部及び外部の利害関係者とのコミュニケーションをレビューすることが望ましい(図1の
例を参照)。
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ある小規模のエンジニアリング会社が,最近,環境マネジメントシステムを実施し,様々な利害関係者にメッセ
ージを伝達したいと考えているが,それぞれの利害関係者は,次のように,異なる種類の情報を要求する可能性が
あることを認識している。
内部の利害関係者
− 役員メンバーは,環境パフォーマンス及び環境マネジメントシステムの進捗に関する情報を要求する。
− 管理者は,環境パフォーマンス評価,並びに将来の目的及び目標に関する情報を知る必要がある。
− スタッフ及び請負者は,環境パフォーマンス基準が達成され,将来の目標が認識されることを確実にするため
に,詳細の作業指示書及び手順を要求する。
外部の利害関係者
− 近隣の地域社会は,騒音及び光害について懸念している。この情報は,サイト管理者に伝達された。
− 投資家及び保険会社は,現行の法的及びその他の要求事項,並びに,会社活動,製品及びサービスに関連する
全てのリスクに関する情報を必要としている。
− 顧客は,様々な製品に関連する環境マネジメントシステム及びライフサイクル影響に関する情報を要求する。
その会社は,メッセージを伝達するために,次に示す様々なコミュニケーション手法の利用を決定する。
− 環境報告書にまとめられている環境方針及びパフォーマンスの詳細が掲載されたウェブサイト(次を参照)。
− 対象となる個人及び請負者に送信される,詳細の作業指示書及び関連する環境規制に関する電子メール。
− 環境パフォーマンスの改善へのコミットメント及びその重要性の理由について説明しているポスター
− 地域的な関心事を議論するため,かつ,環境保護に対する組織のコミットメントを説明するための,住民との
討論会
コミュニケーション戦略を支援するために,その会社は,次の情報を含む環境報告書も作成する。
− 環境方針及び将来の戦略についての説明
− 活動,製品及びサービスの環境側面及び関連影響の一覧表
− 関連する環境法規及び規制のリスト
− 環境パフォーマンス評価及び関連指標からのデータ
− 環境マネジメントシステム及び他の環境上の役割に対して責任をもつ人の詳細
− 次の事項を含む環境パフォーマンスの要約
− 環境方針に対する進捗状況
− 達成されている目的及び目標
− 不適合を含む,特記すべき問題
この報告書は,最高責任者が署名し,かつ,その会社のウェブサイトにおいて公開された。
注記 組織は,外部に認証された環境宣言を作成することを決定することができる。これは,JIS Q 14001の要求事
項ではないが,良好なコミュニケーション実践の一例である。
図1−例−SME 環境コミュニケーション戦略
5.2
資源,役割,責任及び権限
5.2.1
一般
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誤解を生じないように,役割,責任及び権限を,明確に定めることが望ましい。資源についても,同様
に定めることが望ましい。これは,経営層が,環境コミットメントによって必要となる資源を理解し,資
源を提供する人もまた,同様の理解がなされているということで重要である。
個人の責任は,取組みの重複,業務の見落としといったような誤解を除くために,明確に定めることが
望ましい。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
組織のトップマネジメン
ト及びEMSによって必要
となる定められた資源,役
割,責任及び権限をもつ必
要性を認識する。
組織内の役割,責任及び適
切な資源を特定し,定め
る。
EMSのための管理責任者
を任命する。
役割及び責任に影響され
る全ての人々に,役割及び
責任を伝達し,彼らがそれ
らを理解し,同意すること
を確実にする。
必要に応じて資源を割り
当てる。
5.2.2
ステップ1
組織のトップマネジメントは,全ての役割,責任,権限及び資源の必要性が認識されていることが,環
境マネジメントシステムの効果的な実施のために重要であることを理解することが望ましい。
5.2.3
ステップ2
責任は,可能な限り特定の職務に対して付与され,文書化することが望ましい。これは職務記述書によ
って達成される。別の方法として,環境保護に関する特定の役割及び責任に対する記述書もあり得る(例
えば,管理責任者,プロジェクトリーダー,他の特定の環境的役割への任命)。組織内に,主要な役割,責
任及び権限を形成するに当たって,既存の割当てが正しく,かつ,その割当てに環境課題を含むように拡
大することに対する合意が必要となる。資源の配分は,実施計画の活動,予定表及び主要な通過点を考慮
することが望ましい。
5.2.4
ステップ3
JIS Q 14001の要求事項を満たすために,トップマネジメントは,“管理責任者”を任命する必要がある。
管理責任者は,環境マネジメントシステムが確立され,実施され,維持されていることを確実にし,かつ,
トップマネジメントにその進捗を報告する人物である。トップマネジメントが,管理責任者の役割を担う
こともあり得る。割り当てられた個人は,その者がもつ他の責任と比較して,マネジメントシステムに十
分な優先付けができること,かつ,必要な活動を実施する権限をもつことが重要である。
5.2.5
ステップ4
役割,責任及び権限を定めた後,これらは,組織全体に伝達されていることが望ましい。また,関わる
個人は,目的及び目標を達成することをコミットすることが望ましく,その該当部門には,それらのコミ
ットメントを満たし,かつ,必要な教育訓練を完了するために,時間,財務的支援及び技術的能力を与え
ることが望ましい。
5.3
力量,教育訓練及び自覚
5.3.1
一般
組織の要員(従業員及び請負者を含む。)の環境に関する自覚は,効果的な環境マネジメントシステムを
実施するために重要である。組織は,環境に多大に影響を与え得る活動を実施する要員が,それを実施で
きる力量をもつことを確実にする必要がある。このことは,更なる教育訓練を必要とすることがある。
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ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
組織において,力量のある
要員及びEMSに必要とさ
れる事項に対する自覚を
もつ必要性を認識する。
組織の著しい環境影響に
関連する活動の実施にお
いて必要となる力量を決
定する。
自覚させるための手順を
策定し,実施する。
必要に応じて,教育訓練の
計画を策定し,実施する。
要求事項に対する力量を
評価し,それらが満たされ
ていることを確実にする。
力量,教育訓練及び自覚の
計画を維持する。
5.3.2
ステップ1
組織は,力量のない要員が,作業を効果的に実施しないことがあるという認識をもつことが望ましい。
5.3.3
ステップ2
組織は,環境マネジメントシステムにおける要員が,求められる作業を実施する上で,どのような力量
が必要であるかを明確にすることが望ましい。これは,次の事項を含む,多くの方法によって達成できる。
− 教育訓練の必要性の分析を行う。
− 力量の評価を行う。
− 業界標準及び職業資格に対する力量を評価する。
環境及び組織に対するリスクを最小化する取組みに焦点を当てるために,著しい環境側面及び法的要求
事項に着目することから始めることが有用である。組織は,組織で働く又は組織のために働く全ての人々
が,自らの活動の環境に与える影響を自覚していることを確実にするために,自覚させるための手順を策
定し,実施することが望ましい。
5.3.4
ステップ3
教育訓練の計画は,要員の役割及び職務機能に関連する幅広い教育訓練を提供することが望ましい。教
育訓練の計画は,要員は何をする必要があるか,更に,それが,要員自身,組織及び環境に利点をもたら
す理由を理解できるような方法で伝えられることが望ましい。計画には,正式な教育訓練,職場内訓練
(OJT)の手引及び評価,並びに同僚による助言を含む,幅広い技法を含んでもよい。計画には,資源の
配分及び責任の割当ても必要である。
必要となる力量の実証は,終了した教育訓練又は経験に基づくことが望ましい。組織は,環境マネジメ
ントシステム自体及び組織の著しい環境側面の双方に関係する要員に,教育訓練を提供することが望まし
い。特に重要なことは,環境に対する損害を予防又は低減するために,ある特定の方法で活動することが
組織にとって重要である理由を,要員が理解することを確実にすることである。教育訓練の活動及び力量
の実証の記録は,維持することが望ましい。
さらに,新しいスタッフ,サイトへの訪問者及び請負者に対して,環境側面を周知するように留意して
おくことが重要である。
5.3.5
ステップ4
組織は,教育訓練,力量の開発,及び効果を監視するために利用される評価技術に関する要員からの意
見を収集することが望ましい。さらに,定期的に繰り返し教育訓練及び評価を実施することによって,力
量を適切な水準で維持できることを留意しておくことが重要である。
5.4
記録
5.4.1
一般
記録の中には,法的及びその他の要求事項によって,様式及び保管期間が規定されているものがあるが,
ほとんどの記録は,組織の裁量によって作成し,保管する。組織は,外部の利害関係者に対して環境マネ
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ジメントの実施の実証を求められる可能性があるため,これらの記録は,読みやすく入手しやすい形で維
持することが望ましい。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
運用中のEMSの証拠として記録を維
持する必要性を認識する。
どの記録が必要かを決定し,それら
の管理の実施手順を確立する。
必要に応じて記録をレビューし,維
持する。
5.4.2
ステップ1
組織は,記録によって,環境マネジメントシステムが機能している証拠を提供し,かつ,記録を保護し,
必要なときにそれを検索できるということを認識することが望ましい。
5.4.3
ステップ2
組織は,環境側面に関連した記録を,既にもっていることが多い。要求事項の順守及び環境マネジメン
トシステムへの適合を実証するための適切な記録があることを確実にするために,法的及びその他の要求
事項,目的及び目標並びに運用管理に対してこれらの記録をレビューすることが望ましい。記録は,日付
及び署名のある活動の記録が記載された業務日誌,特定の時系列データをとるための設備の記録紙,現場
外に運び出した廃棄物のリスト,会議のメモ又は議事録を含む。
組織は,どの記録を維持するかを決定し,その記録の維持及び廃棄方法を定めた手順を策定し,実施す
ることが望ましい。この手順は,特定の保管期間を過ぎた後の記録を削除する方法も規定していることが
望ましい。
5.4.4
ステップ3
環境マネジメントシステムへの適合を実証するために必要となる記録は,収集し,レビューし,維持す
ることが望ましい。
記録は,それが要求事項の順守及び環境マネジメントシステムへの適合を実証するのに適切であること
を確実にするために,法的及びその他の要求事項,目的及び目標並びに運用管理の基準に対してレビュー
することが望ましい。
5.5
文書類
5.5.1
一般
文書類は,組織の環境マネジメントシステムにとって主要な参照元である。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
EMSの適用範囲内におい
て,文書化することの必要
性を認識する。
何を文書化するかを決定
する。
文書化に必要なものを準
備し,まとめる。
その文書による運用を開
始する。
5.5.2
ステップ1
組織は,文書化によって,リスクのある活動を一貫して管理することを確実にできるようになるという
ことを認識することが望ましい。さらに,組織は,どのような決定を行い,その決定はどのような情報及
び状況に基づいて行われたか,どのように必要な活動が実施されたか(誰によってなされたかを含む。),
及びその活動を行った人々がそのために教育訓練され,かつ,力量があったか,並びにそれらの活動の結
果などを,文書化によって実証することができる。
文書化が必要な範囲,及び用いる書式は,個々の組織のニーズによって異なる。特にSMEのような組
織には,文書化の必要性は限定され得るか,又は,環境に関する事業活動及び意思決定に関する文書化の
ための定着した方法を既にもっていることもある。
5.5.3
ステップ2
JIS Q 14001の要求事項に適合した環境マネジメントシステムとするには,実施される幾つかの活動のた
18
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めの手順を規定することが望ましい。これらの手順を文書化するか否かは,組織のニーズ又は業務によっ
て決めてよい。組織が文書化することを決定するものは,例えば,単純な図,フロー図表,写真,標識,
記述文書のように,異なる形式をとってもよい。
5.5.4
ステップ3
環境マネジメントシステムを実施するとき,環境マネジメントシステムの構造を記述したマニュアルを
用意することは,不可欠ではないが,有用である。環境マニュアルは,大容量である必要はないし,紙の
形式である必要もなく,文書の形式は,組織のニーズによって異なる。組織のイントラネットにおける電
子マニュアルは,利用が急速に広まっている。しかし,重要なことは,マニュアルが組織のニーズに適切
であり,環境マネジメントシステムの実施に関わる人々が,そのマニュアルに容易にアクセスでき,かつ,
それを使用することである。
5.5.5
ステップ4
文書が承認されたら,関連する管理者レベルの者は,その文書による運用を開始することが望ましい。
5.6
文書管理
5.6.1
一般
適切な文書管理は,適切に機能している環境マネジメントシステムを維持するために不可欠である。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
EMSの適用範囲の中で,文
書管理の必要性を認識す
る。
文書管理の手順を策定す
る。
文書管理を準備し,体系化
する。
文書管理を実施し,維持す
る。
5.6.2
ステップ1
組織は,文書管理によって,正しい文書を使用し,文書の内容を更新することを確実にできることを認
識することが望ましい。
5.6.3
ステップ2
組織が環境マネジメントシステムにおいて文書を管理する方法を記述する手順が,必要である。組織は,
次の事項に関わる手順を確立し,実施し,維持することが望ましい。
a) 発行前に,適切かどうかの観点から文書を承認する。
b) 文書をレビューする。また,必要に応じて更新し,再承認する。
c) 文書の変更の識別及び現在の改訂版の識別を確実にする。
d) 該当する文書の適切な版が,必要なときに,必要なところで使用可能な状態にあることを確実にする。
e) 文書が読みやすく,容易に識別可能な状態であることを確実にする。
5.6.4
ステップ3
手順の管理は,文書によって異なり得る。組織によって作成される内部文書(例えば,文書化された手
順,図,材料仕様,緊急事態計画,教育訓練,実施計画)は,承認されたコピーだけが,要員が使用する
ために利用可能なことを確実にする方法で管理されることが望ましい。法的及びその他の要求事項のよう
な外部文書については,文書の原本を明確にし,改訂版を入手し,必要とする人々に速やかに配布するこ
とを確実にすることが重要である。
5.6.5
ステップ4
文書が承認されたら,それを適用する人々にその承認された文書を伝達する必要がある。
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6
環境マネジメントシステムの構築及び実施
6.1
組織の著しい環境側面の特定
6.1.1
一般
活動を行い,製品及びサービスを提供する組織は全て,環境と相互に作用する。組織の活動,製品及び
サービスが,どのように環境と相互に作用するか(これらは,組織の“環境側面”として知られている。)
を特定し,その中でも最も重要な(著しい)ものは何かを決定することは,環境マネジメントシステムの
構築において重要なステップである。これによって組織は,環境に有害な影響を与えるものを除去又は少
なくとも最小化し,環境に有益な影響を与えるものを助長するための資源及び取り組みに焦点を当てるこ
とができる。環境側面の管理は,著しい環境改善をもたらすだけではなく,財政的及びその他の商業的な
利点をも生み出す。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
組織の活動,製品及びサー
ビスが,環境と相互に作用
することを認識する。
組織の環境側面を特定す
る手順を策定し,実施する
(3.4参照)。
環境に著しい影響を及ぼ
す,又は及ぼす可能性のあ
る環境側面を決定する手
順を策定し,実施する。
著しい環境側面のリスト
をまとめ,最新の状態に保
つ。
6.1.2
ステップ1
組織が環境と相互に作用することについての認識は,規制当局,顧客又は近隣住民のような,外部の圧
力によって促進され得る。この認識は,また,箇条4に規定されたプロセスを利用した情報の収集及び評
価を含む,組織内でとった処置を通じても得ることができる。
6.1.3
ステップ2
環境側面及び環境影響の特定は,組織の活動,製品及びサービスに詳しい組織の人々が関わることが望
ましい。どのように製品が作られ,使用され,廃棄され,また,どのようにサービスが提供されるかにつ
いて考慮することが望ましい。組織内で十分な情報が得られない場合,外部からの情報,例えば業界団体,
規制当局,供給者,出版物,インターネット,コンサルタントからの情報などを求めることができる。
環境側面の管理を計画するために,組織は,これらの側面がどのようなものであるか,かつ,側面と関
係する影響がどのようなものであるかを知ることが望ましい。水への放出,大気への排出,土地への排出,
並びにエネルギー及び水の使用は,環境側面の例である。ある機器又はプロセスの環境に対する影響の仕
方が,機器の稼働,シャットダウン又は故障によって変化するということに注意することは重要である。
したがって,定常時だけでなく,これらの非定常時及び潜在的な緊急事態に関連する影響を考慮する必要
がある。
特性要因図のようなツール,又はプロセスへの入力及びプロセスからの出力を例示しているフローチャ
ートが,有用な場合もある。また,流出口,配管系統の位置,煙突及びボイラ室,有害物質保管場所など
主要な配置を含めてサイトの境界が確認できるサイト図をもつことも役に立つ。JIS Q 14001の要求事項で
はないが,環境側面を特定する上で,エコデザインの基準及びライフサイクル分析を使用することは,組
織にとって有用である。
組織は,管理できる環境側面及び影響を及ぼすことができる環境側面について対処することだけが期待
される。例えば,供給者から電気をどれだけ購入するかは組織が管理できる可能性があるが,電力の発生
方法については管理できず,また,影響も及ぼすことができない可能性がある。また,組織は,顧客がど
のように製品を廃棄するかについては管理できないが,取扱い及び廃棄に関する説明書を提供することに
よって,顧客に影響を及ぼすことはできる。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
組織は,次に関する環境側面を特定するための手順を策定し,実施することが望ましい。
− サイトにおける過去の活動
− 現在の活動,製品及びサービス
− 非定常事態をも含む,日々の業務
− 組織が直面し得る,潜在及び顕在の緊急事態
− 組織が行う,新規又は変更プロジェクト
環境側面は,環境に変化をもたらすか,又はもたらす可能性がある。この変化は,環境影響と呼ばれる。
これらの環境影響は,有益(例えば,生物の多様性を増大させる。),又は有害(例えば,毒物の放流によ
る魚の殺傷,天然資源の枯渇)であり得る。許可証・ライセンス,既存の監視データ,及び過去に経験し
た環境上の出来事又は規制当局から容易に入手できる情報は,関連する影響を特定するために用いること
ができる。
組織は,環境側面及び関連する影響について記録することが望ましい。記録は,データベース,登録簿
又はリストであってもよい。
6.1.4
ステップ3
管理が必要な組織の著しい環境側面を決定する際には,環境影響に関連する環境側面に詳しい組織内の
人々が関わることが望ましい。外部の専門家,規制当局,業界団体及び他の外部資源もまた,このプロセ
スには有用である。
どの環境側面が著しいものであるかを決定するために,再現性及び一貫性のある結果をもたらす手順を
使用することが望ましい。複雑な分析及び測定は,一般的にはSMEには必要ではないが,簡単な順位付
けプロセスを使用することができる。
その際に,組織の価値,社会的イメージ,従業員の関心事,近隣住民及び地域社会メンバーの見解,及
び/又は法的要求事項のような,内部又は外部の利害関係者の関心事を,どのように著しい環境側面の決
定に盛り込むかについて対応することが望ましい。その他の基準には,期間,環境影響の頻度及び深刻度,
起こりやすさ,予想される結果,並びに既存の管理の程度を含み得る。
組織の環境側面及びそれらの著しさに関する情報を最新にしておく方法が必要である。将来,組織の環
境マネジメントに関する経験及び専門性が増えるにつれ,この方法を改良し得る。
このステップで策定された手順は,環境側面を特定するために策定された前のステップの手順と組み合
わせることができる。
環境に著しい影響を与えるか,又は与える可能性がある環境側面を決定する方法の例を,表1に示す。
著しい環境側面を決定するための方法は,一つだけではない。基本的には,この決定は,明確にされた基
準,専門知識及び経験,及び/又は一貫した方法の使用を基に行われ得る。
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表1−環境に著しい影響を与えるか,又は与える可能性がある環境側面を決定する方法の例
決定の原則
例
基準
著しさの基準は,影響の規模,深刻度及び期間又は環境側面の種類,規模及び頻度の
ような環境的な配慮事項に基づいて選択し得る。すなわち,許可証又は規制における
排出及び放出限度のような法的要求事項,組織価値,社会的イメージのような内部及
び外部の利害関係者の関心事,又は騒音,悪臭又は景観の劣化のような地域社会又は
従業員の関心事である。
環境に関する知識及び経
験
組織は,環境問題に関して力量をもった人々を参画させることが望ましい。力量をも
った人が組織にいない場合は,業界団体,地域規制当局,大学,NGO及びその他の外
部の力量のある機関のような,外部の機関から支援を求めてもよい。
一貫した方法
一貫性及び再現性のある方法を利用することが重要であるが,SMEにとっては複雑な
分析及び測定は必要でない場合もある。
6.1.5
ステップ4
環境マネジメントシステムを構築し,実施し,維持するために,著しい環境側面を考慮に入れることが
望ましい。例えば,環境影響を低減するための管理の実施,スタッフの教育訓練,及び事故/事態に対応
するための計画策定がある。
6.2
組織の法的及びその他の要求事項の特定
6.2.1
一般
全ての関連する法的及びその他の要求事項を特定することは,どの環境マネジメントシステムにとって
も不可欠である。法的要求事項は国によって異なり,それぞれの組織及びサイトに対して固有であるため,
組織が,社会に対するその義務を果たし,法令順守を確実にして,起訴を防ぎ,罰金を避け,組織のイメ
ージを維持又は改善するために,環境側面の種類及び性質を理解し,順守しなければならない法的要求事
項を決定することは重要である。組織が同意するその他の要求事項には,拘束力のない協定,自主協定及
び/又は行動規範を含み得る。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
組織が,環境側面に関する
法的及びその他の要求事
項を順守する必要がある
ことを認識する。
関連する法的及びその他
の要求事項を特定する。
法的及びその他の要求事
項がどのように組織の環
境側面に適用するかを決
定する。
組織に適用する法的及び
その他の要求事項の理解
を最新の状態に保つ。
6.2.2
ステップ1
組織は,資源(水,非再生エネルギーなど)の利用,製品設計,並びに水及び大気への排出,騒音及び
悪臭の規制値,又はボイラ及び地下タンクのような特定機器の設置及び/又は運用,有害廃棄物の保管と
いった内容に基づく法的要求事項をもつ可能性があることを認識することが望ましい。これらは,法律,
許可証,ライセンス,及び排出限度といった形で政府の規制当局によって規定され得る。
法的要求事項を満たさないことによって予想される結果は,組織の存在を脅かし得る(罰金,操業停止,
地域社会の懸念,顧客不満足,契約問題など)ので,全ての組織は,どのように法的要求事項が組織の事
業運営に影響を与えるかを知り,それを順守するための計画を策定することが望ましい。
組織には,供給者との契約に含まれ,かつ,業界団体に期待されるような環境に関する要求事項,又は
組織が同意したその他の同意事項があり得る。
6.2.3
ステップ2
組織は,法的及びその他の要求事項を特定する手順を確立するために,力量をもつスタッフを指名する
ことが望ましい。内部に専門性が欠けている場合は,組織の事業に関わる経験並びに地域/国の法的及び
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その他の要求事項についての知識をもつ外部資源に支援を求めてもよい。業界団体,ビジネス支援ネット
ワーク又は規制当局も,関連する法的情報を提供することができる可能性がある。
組織は,法的及びその他の要求事項を,データベース,登録簿又はリストとして文書化することが望ま
しい。
6.2.4
ステップ3
法的及びその他の要求事項並びにそれらが組織の活動及び環境側面にどのように適用されるかについて
の技術的知識をもつ人々は,請負者も含め,関連する運用に責任をもつ人々に関する法的及びその他の要
求事項を決定し,伝達し,監視する責任をもつことが望ましい。
6.2.5
ステップ4
法的及びその他の要求事項は,定期的にレビューすることが望ましい。このレビューの頻度は,変化が
どのくらいの頻度で起こり得るかに依存する。新しい若しくは変更された要求事項,又は,組織の構造,
規模若しくは製品及びサービスの範囲の変化に対応した要求事項を考慮することが望ましい。関連する情
報を,責任者が理解し,活動を起こすことができる形態で責任者に伝達することが望ましい。これには,
運用手順の確立又は変更,排出及び放出の監視,又はその他の順守のための活動の実施を含み得る。
6.3
組織の法的及びその他の要求事項の順守評価
6.3.1
一般
法的及びその他の要求事項を特定し,組織がどの程度それらを順守しているかを評価することは重要で
ある。継続的に順守していることを実証するために,順守状況を測定する方法及び指標を確立することが
必要である。順守評価は,パフォーマンスの改善を実証するためにも必要である。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
組織が,法的及びその他の
要求事項に従い,それらを
順守する必要があること
を認識する。
順守を監視及び測定する
ための方法を特定し,計画
する。
定期的に,全ての法的及び
その他の要求事項の順守
を評価する。
全ての法的及びその他の
要求事項についての,順守
状況,及び/又は不順守を
含む,評価の結果を記録
し,報告する。
6.3.2
ステップ1
トップマネジメントは,組織が,法的及びその他の要求事項を順守していることを実証する必要がある
ことを認識することが望ましい。
6.3.3
ステップ2
組織は,順守について監視及び測定をする方法を特定し,計画するために,力量のあるスタッフを指名
することが望ましい。法的及びその他の要求事項の順守状況を評価するために,手順を策定することが望
ましい。法的要求事項に対する順守を実証するために必要な,指標の特定が必要となる。指標は,定性的
及び/又は定量的であってもよい。
6.3.4
ステップ3
必要に応じて,組織は,定められた方法を用いて,関連する法的及びその他の要求事項で規定された値
と監視及び測定の結果とを定期的に比較することが望ましい。監視の頻度は,法的要求事項,過去の順守
状況の結果,既存の管理,又は違反によってもたらされる環境に対する潜在的な影響によって異なる。
6.3.5
ステップ4
記録は,順守を実証するために保持され,必要に応じて,トップマネジメントを含む関連する利害関係
者に報告されることが望ましい。
注記 不適合が検出された場合,6.10に従って処置がとられる。
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6.4
環境方針の準備及び実施
6.4.1
一般
環境方針は,環境パフォーマンスの改善に関する組織の意図,方向付け及びコミットメントを記述する,
短い公的な宣言である。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
組織が,環境方針をもつこ
との必要性を認識する。
組織にふさわしい初期の
環境方針を準備する。
環境方針の文書を仕上げ
る。
環境方針を一般公開する。
組織で働く及び組織のた
めに働く全ての人が,その
内容及び意味を認識する。
6.4.2
ステップ1
環境側面の特定によって得た情報を用いて,4.2.2又は6.1で実施された活動から,トップマネジメント
は,組織の運用が環境に与える影響,行政機関,顧客,株主及び他の利害関係者の期待,並びに取り扱う
べき戦略的環境課題について,理解を深めることが望ましい。
6.4.3
ステップ2
トップマネジメントは,組織全体からのインプットを受け,方針の策定を導くことが望ましい。広範な
参加によって,方針は,組織に適切なものになり,スタッフ及び経営層の双方が,その内容に対してコミ
ットすることを確実にする。
JIS Q 14001の要求事項を満たすために,環境方針は,次のとおりであることが望ましい。
a) 組織の活動,製品及びサービスの,性質,規模及び環境影響に対して適切である。
b) 継続的改善及び汚染の予防に関するコミットメントを含む。
c) 組織の環境側面に関係して適用可能な法的要求事項及び組織が同意するその他の要求事項を順守する
コミットメントを含む。
d) 環境目的及び目標の設定及びレビューのための枠組みを与える。
e) 文書化され,実行され,維持される。
f)
組織で働く又は組織のために働く全ての人に周知される。
g) 一般の人々が入手可能である。
組織は,最初の段階で,これらの要求事項を全て満たす方針を必ずしも策定する必要はない。最初の段
階で,初期環境方針を準備することが役に立つことがある。
組織は,たとえ公式に又は文書になっていなくても,組織が既に策定した環境方針又はコミットメント
全てをレビューすることから始めることが望ましい。他の同様の組織がもつ方針を見るのもよい。さらに,
親会社によって作成された宣言又はコミットメントにも,注意を払うことが望ましい。
例えば,
− 繰り返し苦情を受け取った場合,地域社会の参画に対するコミットメントを検討するとよい。
− 流出又は放出が過去にあった場合,環境の復元に対するコミットメントが適切であり得る。
6.4.4
ステップ3
初期環境方針の妥当性を確認し,必要に応じて最初の起草段階以降に収集した新しい情報を反映し,改
訂又は拡大する。
ステップ2(6.4.3参照)に記されているように,JIS Q 14001の要求事項の内容を横断的に確認し,必要
に応じて改訂することで,初期環境方針の記述内容が,JIS Q 14001の要求事項を完全に満たしているかを
確認する。
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トップマネジメントは,完成した環境方針文書を承認することが望ましく,これを実証するために署名
してもよい。
6.4.5
ステップ4
方針を伝えることは,それを起草することと同様に重要である。組織は,スタッフ,請負者及び一般の
人々が環境方針を入手可能とすることが望ましい。また,組織は,構内に方針を掲示するか,又はインタ
ーネット及びその他の媒体で公表することを望むことがある。
方針は,新しい従業員,請負者,及び該当する場合は訪問者にも伝えることが望ましい。方針を職場全
体に見えるように掲示するのは,優れた実践事例である。最も重要なことは,トップマネジメントが,方
針におけるコミットメントで表明した価値を言葉及び行動を通じて実施することである。スタッフは,コ
ミットメントがどのようなものであるか,及びそれらを達成するために個人がどのような役割を果たすか
を,他者に説明できるようにすることが望ましい。
6.5
目的及び目標の設定並びに実施計画の策定
6.5.1
一般
環境目的及び目標を策定し,それらを達成するための実施計画を実施することで,組織の環境方針に掲
げているコミットメントが,活動に移される。目的及び目標は,環境マネジメントシステムの中核部分で
あり,環境マネジメントシステム活動に明確な焦点を当てることができる。目的及び目標に対する進展を
追うことで,経営層は,いかに環境マネジメントシステムが機能し,コミットした改善内容に到達してい
るかを決定できる。実施計画は,組織の環境目的及び目標の達成を支援するために必要な活動の,詳細な
計画である。実施計画は,環境マネジメントシステムの実施及び運用における将来の活動及び責任のため
の,明確かつ定義付けられた計画を提供する。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
パフォーマンスを改善さ
せるために,到達点を確立
し,実施する必要性を認識
する。
目的,目標及び実施計画を
策定するための情報を収
集する。
パフォーマンスを改善さ
せるために,目的,目標及
び実施計画を策定し,文書
化する。
実施計画の実施を通じて
目的及び目標を達成する
ように取り組む。
6.5.2
ステップ1
組織は,組織の環境マネジメントシステムの要素全てに関するパフォーマンスを改善するために,環境
目的,目標及び達成のための実施計画を策定することが望ましいことを認識するのがよい。
6.5.3
ステップ2
6.5.3.1
実施計画は,組織の目的及び目標を達成するために,組織が設定する活動計画である。実施計画
では,次の事項を定める。
a) どのように目的を達成し,また,どのような活動が必要か
b) 望ましい目的に達成するための予定表
c) 資源の配分,及び活動に対する責任の割り当て
6.5.3.2
次の情報は,組織が,目的及び目標の設定並びに環境に関する実施計画を設定するために有益で
ある。
a) 方針におけるコミットメント
b) 著しい環境側面
c) 法的及びその他の要求事項
6.5.3.3
その他の考慮事項には,次を含み得る。
a) 技術的な選択肢
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b) 運用及びビジネスに関する要求事項
c) 内外の利害関係者の見解
d) 目的及び目標を達成するために必要な活動
e) 目的及び目標を達成するために必要な期間
f)
特定の期間内に活動を実行するために必要な資源
g) 必要な活動を行うための自覚,技能及び知識の醸成
h) 目的及び目標の達成に向けた活動に対する個人又はグループの役割及び責任
6.5.4
ステップ3
目的及び目標は,測定可能で,かつ,環境方針において策定したコミットメントを支持するものである
ことが望ましい。
組織は,それぞれの目的に対して環境パフォーマンス指標を設定し,それらを監視することによって進
捗を追うことが望ましい。組織の内部及び外部の利害関係者に進捗状況を伝達することが望ましい。全て
の目的及び目標が,継続的改善を目指すものである必要はない。すなわち,現在の環境パフォーマンスレ
ベルを維持することを目的とするものもある。
環境パフォーマンス指標の設定及び利用に関する,詳細な手引を,6.8に示す。
6.5.5
ステップ4
目的及び目標に関する既存の取決め事項をレビューする。
目的及び目標を達成するために必要な,追加の活動及び資源を定める。
目的,目標及び実施計画は,組織に固有の財政状況及び必要なコストを考慮し,優先順位を付け,手直
しをすることが望ましい。また,利用可能な資源も考慮に入れることが望ましい。目的及び目標に向けた
活動の責任を,組織内の関連する要員,部門及び階層に割り当てることが望ましい。運用上の優先順位(例
えば,改善領域)及びビジネス上の考慮(例えば,コアビジネスの計画された拡張又は修正)も考慮する
ことが望ましい。
6.6
運用管理
6.6.1
一般
運用管理は,組織の著しい環境側面が,環境に対する好ましくない影響を最小化し,好ましい影響を高
めるような方法で管理されていることを確実にするために必要である。管理手順は,目的及び目標の達成
も支援することが望ましく,これは,継続的改善並びに関連する法的及びその他の要求事項の順守に対す
る組織の方針におけるコミットメントを支援する。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
著しい環境側面に関連す
る運用を管理する必要性
を認識する。
組織の著しい環境側面を
管理するための運用方法
を計画する。
管理を策定し,実施する。 実施した管理の有効性を
レビューする。
6.6.2
ステップ1
組織は,経営層が,環境方針におけるコミットメントを満たし,目的及び目標を達成し,環境に関する
法的及び組織が同意するその他の要求事項を順守し,著しい環境側面を最小化することを確実にするため
に,運用管理の責任をもっていることを認識することが望ましい。
6.6.3
ステップ2
効果的で効率的な運用管理の計画を立てるために,組織は,そのような管理がどこで必要か,また,何
を達成することを意図しているかを明確にすることが望ましい。
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必要な管理を決めるとき,組織は,製造,メンテナンス,製品の保管などのような,日々の活動全てと
同様に,購買,販売,マーケティング,研究開発,製品設計,製品技術などのような,経営機能に関わる
ものを考慮することが望ましい。また,サイト外における製品輸送方法も考慮することが望ましい。請負
者又は供給者によって実施される運用も,環境側面の管理に影響する範囲において,考慮することが望ま
しい。
適切な管理を決定するに当たって,組織は,まず予防的なアプローチを行い,特定の管理の必要性を除
くことが望ましい。それができない場合は,その運用管理を他の組織に移行すること(例えば,汚水処理
施設の外注化)も可能であるが,結果として生じる環境影響及び法的要求事項に関連するプロセスの責任
は,組織に残る。その他の選択肢としては,より低いリスクのプロセスに代替すること(例えば,油性ペ
ンキの代わりに水性のペンキを使用)もあり得る。予防的なアプローチがとれない場合には,組織の環境
影響を最小化するための事後の対応が必要となり得る。これには,廃棄物の発生抑制,再利用,及び/又
はリサイクル,処理,並びに他の選択肢がない場合の廃棄を含む。
6.6.4
ステップ3
管理のためには,活動又はプロセスの実施方法を規定する。その中には,一次的及び/又は二次的な防
護壁,物理的防壁のような工学的管理,及び/又は,文書化された手順,作業指示書,機器及び機械に関
する技術仕様書,供給者又は請負者に対する要求事項を示した契約上の合意のような組織運営上の管理を
含むことができる。
手順には,適用が詳細かつ限定されるものもある(例えば,化学プロセスの運営に関する手順)。この手
順は,プロセスマップのように複雑なものもあれば,ステップに関する箇条書き,チェックリスト,フロ
ーチャート又は一連の図のように簡潔なものにすることもできる。また,手順は,文書化することが望ま
しい。
手順を策定するとき,運用の行い方を適切に反映することを確実にするために,実際に運用を行ってい
る人を参画させることは,優れた実践事例である。手順は,完成したとき,必要に応じて請負者及び供給
者を含む,活動に参画する全ての人に,伝達されることが望ましい。これによって,全ての人は,何が求
められているかを理解する。
6.6.5
ステップ4
管理は,効果的であることを確実にするために,定期的にレビューすることが望ましい(例は,図2を
参照)。
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ある小規模企業は,(非定常時に生じる。)著しい環境側面の一つとして,ボイラに給油するのに使用されるディ
ーゼルタンクの充塡の間,タンクの通気孔を通じて油があふれ得ることを特定した。
この会社は,可能な管理について調査し,この事態を収拾する最も積極的かつ効果的な方法は,自動遮断弁があ
る閉回路給油システムを使用することであると決定した。しかし,調査の結果,燃料供給者は,そのような設備を
もっておらず,タンクに給油するのに手動の開回路システムを使用していたことが明らかになった。閉回路システ
ムの導入は,非常に高価となる。
これによって,この会社は,次に示す工学的管理及び組織運営上の管理の両方を導入することによって,リスク
を管理するための事後的なアプローチを考慮することにした。
a) 使用することに決めた工学的管理は,タンクのまわりに(レンガ壁を建てて)二次封じ込め施設を設置するこ
とであった。変動操作の遮断弁を導入することも検討したが,その信頼性に懸念があり,代わりに封じ込め施
設を使用することを選択した。
b) さらに,燃料供給者契約における要求事項に,給油プロセスの間はノズルを離さないこと,及び常に油量レベ
ルを作業者が監視することを含めることを決定した。
c) 作業を行っている間,燃料口を離れないようにすること,及びタンクの油量レベルを目視することを作業者に
喚起する警告通知が書かれ,燃料口の付近に置かれた。
図2−運用管理の例
6.7
緊急事態への計画及び対応
6.7.1
一般
緊急事態から生じる,いかなる環境影響も避ける必要がある。そのような事態が起きた場合,効果的な
計画を通じて,環境影響を管理し,最小化することが重要である。十分に準備し,組織で働く,又は組織
のために働く人々が,そのような状況においてすべきことを知っていることを確実にすることによって,
環境への実質的な影響を低減できる。
緊急事態計画及び関連する手順は,効果的な対応を決定し,文書化するために使われることがある。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
緊急事態が起こり得
ること及びそれを管
理する必要があるこ
とを認識する。
どのような緊急事態
が起こり得るのか,
その潜在的な環境影
響は何かを特定す
る。
特定した潜在的な緊
急事態に対応する手
順を確立する。
潜在的な緊急事態に
対応する手順を実施
し,(実施可能な場合
には)テストする。
緊急事態への対応を
レビューし,必要に
応じて手順を改訂す
る。
6.7.2
ステップ1
組織は,事故又は緊急事態が生じ得ることを認識することが望ましい。
6.7.3
ステップ2
火災,偶発的な排出,爆発,洪水などのような,潜在的な緊急事態の決定は,6.1(組織の著しい環境側
面の特定)及び6.2(組織の法的及びその他の要求事項の特定)で対応されていることが望ましい。しかし,
組織の所在又は操業が特殊な場合には,破壊行動,騒乱のように対応が必要な緊急事態もあり得る。
6.7.4
ステップ3
組織は,特定した潜在的な緊急事態に対応することを確実にするために,手順を確立することが望まし
い。組織が,緊急事態に対応するための手順を既に供えている場合は,その手順が緊急事態から潜在的な
環境影響及びそれらを最小なものに抑える仕組みを適切に網羅していることを確実にするように検討する
ことが望ましい。
6.7.5
ステップ4
28
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
組織は,緊急事態に対する手順の有効性を検証するために,実施可能な場合には,実際の運用環境のも
とでその手順を実施し,テストすることが望ましい。演習を,緊急時対応計画の改善方法を学ぶ機会とす
ることが望ましい。
6.7.6
ステップ5
組織は,特に演習及び緊急事態の発生を受けて,緊急事態への準備及び対応手順を定期的にレビューし,
必要に応じて,改訂することが望ましい。事態が終了した後,対応の有効性を明らかにするために,評価
を行うことが望ましい。運用手順をそれに応じて修正しながら,教訓を捉え,是正処置及び予防処置を策
定することが望ましい。
6.8
監視及び測定を含む,環境パフォーマンス評価
6.8.1
一般
組織の環境パフォーマンスを監視し,測定し,追跡するために,環境パフォーマンス指標の設定が必要
である。このパフォーマンスは,マネジメントシステム及びその成果の双方に関係する。環境パフォーマ
ンス指標は,目的及び目標を測定するため,かつ,鍵となる特性の達成を確実にすることの助けとなるよ
うに使用されることになる。環境パフォーマンスデータの収集(進捗の監視及び測定)及び利用は,環境
パフォーマンスの継続的改善を支援する。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
環境パフォーマンス
の評価の必要性を認
識し,その目的のた
めの指標を策定す
る。
鍵となる特性に関す
る情報を収集し,環
境パフォーマンス指
標を定める。
組織の環境パフォー
マンス指標に従っ
て,監視及び測定の
手順を策定する。
組織のパフォーマン
スを収集し,測定し,
分析し,評価する。
機器を校正し,記録
を保持する。
指標の適切性を評価
する。
6.8.2
ステップ1
組織は,改善が,環境マネジメントシステムのパフォーマンス及びその成果の双方において必要である
ことを認識することが望ましい。成果は,組織の活動,製品及びサービスに関連する環境パフォーマンス
を含む。パフォーマンスは,環境パフォーマンス指標(EPI)を設置することによって,測定することがで
きる。
パフォーマンスは,適切な場合,次の事項を含む異なる分野の指標を利用することによって測定するこ
とができる。
− 組織の環境マネジメントシステムのパフォーマンスを追跡するために利用されるマネジメントパフォ
ーマンス指標(MPI)。例えば,環境への自覚に関して教育訓練を受けた人々の数。
− 環境側面の管理の有効性に関連する情報を提供する操業パフォーマンス指標(OPI)。例えば,1日当
たりのエネルギー使用量。
− 組織の放出が環境に対して与える影響に関する情報を提供する環境状態指標(ECI)。例えば,排出地
点の下流域の水に含まれる酸素量。
注記 環境状態指標(ECI)は,局地的,地域的,国家的又は地球規模の,環境状態に関する情報
を提供する特定の表現をいう。
監視及び測定活動は,組織が,環境方針,法的要求事項,目的及び目標に対して,そのパフォーマンス
を評価するために利用される重要なデータを提供する。
6.8.3
ステップ2
6.8.3.1
組織は,指標を策定するために,鍵となる特性に関する情報を集めることが望ましい。
29
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
鍵となる特性には,監視及び測定が必要となる可能性があり,次の事項を含む。
− 主要な利害関係者の見解
− 策定された目的及び目標
− 著しい環境側面及び影響に関する情報
− 環境に関する法的及び組織が同意するその他の要求事項を満たすための,排出及び放出の監視
− 目的及び目標を達成するための,水,エネルギー又は原材料の消費の監視
− 方針,目的及び目標並びに継続的改善の進捗
− 監視又は管理される鍵となる特性をもつ文書(作業指示書,システムの関連する要素のために策定さ
れた手順,他の該当する仕様書など)。それらは,法的及びその他の要求事項から発生する鍵となる特
性を含む。
− 供給者から提供された機器を測定するための操作説明書(例えば,pHメーターを操作する標準指示書)
それぞれの鍵となる特性(又は一連の特性)について,一般的に認識されているテスト手法[例えば,
C.O.D(化学的酸素要求量)の測定]を使うのか,又は,関連データの分析(例えば,CO2排出量換算のた
めの燃料消費)を用いるかといった,採用する機器及び方法を定めることが望ましい。
手順に標準的な方法が記述されていない場合,監視のために使用される方法を文書化することが望まし
い。
6.8.3.2
環境パフォーマンスの鍵となる特性を監視及び測定するための手順を策定することが望ましい。
監視には,時間をかけて行う測定又は観測のような,情報の収集を含む。
測定は,定量的でも定性的でもよい。監視及び測定は,例えば,次の事項のような,環境マネジメント
システムにおける多くの目的に貢献し得る。
− 方針,目的及び目標並びに継続的改善の進捗を追跡する。
− 著しい環境側面を特定するために情報を取りまとめる。
− 環境に関する法的及び組織が同意するその他の要求事項を満たすために,排出及び放出を監視する。
− 水,エネルギー又は原材料の消費が,目的及び目標を満たしているか監視する。
− 運用管理を支援又は評価するためのデータを提供する。
− 組織の環境パフォーマンスを評価するためのデータを提供する。
− 環境マネジメントシステムのパフォーマンスを評価するためのデータを提供する。
− 是正処置及び予防処置を開始するためのデータを提供する。
6.8.4
ステップ3
収集されたデータは,分析され,組織の環境パフォーマンスを記述する情報に変換され,環境パフォー
マンス評価(EPE)の指標として表されることが望ましい。結果に対する偏見を避けるため,収集された
全ての関連した信頼できるデータを検討することが望ましい。データの分析には,信頼できる情報を作成
するために必要な,データの質,妥当性,適切性及び完全性への考慮が含まれる。組織の環境パフォーマ
ンスについての情報は,計算,最善予想,統計的手法若しくはグラフィック技術の利用によって,又は,
索引付け,集計若しくは重み付けによって策定できる。
環境目的,目標及び環境パフォーマンス指標との適合性を決定するため,特定した鍵となる特性に関す
るデータを収集し,評価することが望ましい。このプロセスによって提供されたデータは,環境マネジメ
ントシステムのマネジメントレビューのための基本的なインプットとなる。
組織は,定期的に環境パフォーマンスを監視及び測定するための体系的なアプローチをもつことが望ま
30
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
しい。これを達成するために,組織は,何を,どこで,いつ,どのような方法を用いて測定するかを計画
することが望ましい。最も重要な測定に資源を集中させるために,組織は,測定でき,かつ,最も有益な
情報を提供するプロセス及び活動の,鍵となる特性を特定することが望ましい。
測定は,監視及び測定機器の適切な校正,資格のある要員の使用,適切な品質管理手法の使用といった
ような,結果の妥当性を確実にするための適切なプロセスによって,管理された状況のもとで行われるこ
とが望ましい。監視及び測定を行う手順を文書化することによって,測定の一貫性が提供され,作成され
たデータの信頼性が増すようになる。内部資源をもたない組織は,外部の試験所サービスを利用してもよ
い。
6.8.5
ステップ4
分析されたデータからの情報は,EPI,及び場合によってECIという用語で表され,目的及び目標を含
めた組織の環境パフォーマンス基準によって評価することが望ましい。この評価は,環境パフォーマンス
の進展又は未達成を示すことがある。組織の環境パフォーマンス及び評価の結果を記載した情報は,パフ
ォーマンスレベルを改善又は維持するための適切な経営層の活動を支援するために,経営層に報告される
ことが望ましい。監視に使用される機器を適切に校正し,その校正の記録が保持されることを確実にする
ことが望ましい。
6.8.6
ステップ5
組織は,選定された指標が環境パフォーマンスの適切な説明を提供していることを確実にすることが望
ましい。
監視及び測定の結果は,成功事例及び修正又は改善を要する領域の双方を特定するために分析し,使用
することが望ましい。
6.9
内部監査
6.9.1
一般
組織が計画した取決め事項が満たされていることを確実にするために,内部監査を実施する必要がある。
内部監査プログラムは,単独の活動,又はより細かな部分に分けた活動によって,実施することができ
る。適切な場合,特定の,定められた目的のために実施してもよい。例えば,内部監査は,全ての法的要
求事項を特定していること,又は効果的なコミュニケーションの仕組みが整っていることを確実にするた
めの判断材料として実施されることがある。
いずれの場合でも,環境マネジメントシステムの定めた適用範囲内にある,組織の全ての部署及び部門,
並びに環境マネジメントシステムの全ての要素が,組織によって決定された監査期間内で,完全に監査さ
れることが重要である。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
環境マネジメントシ
ステムが適切に実施
され,計画された取
決め事項を満たして
いることを確実にす
る必要があることを
認識する。
監査プログラムを策
定するために情報を
収集する。
監査プログラムを計
画し,実施する。
経営層へ,監査所見
を報告し,それらに
対して処置をとる。
内部監査の改善を明
確にする。
6.9.2
ステップ1
組織は,内部監査の実施によって,手順及び実践が,実際に計画どおりに実施され,かつ,機能してい
るかどうかについての指標を提供することを認識することが望ましい。
31
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.9.3
ステップ2
機能している領域及び機能していない領域を特定するために,何を,いつ,どの程度監査する必要があ
るのかを決定することが必要である。
監査員は,力量をもち,提案された環境マネジメントシステム,及び適切な場合,該当する規格の内容
に精通していることが望ましい。
焦点を当てた監査計画の策定の指針として,様々な情報源を用いることができる。そのような情報には,
次の事項を含んでもよい。
− 部署又は部門内での,環境マネジメントシステムの要素及び運用管理に関する情報
− 目的及び目標をどの程度達成したかに関する情報,並びに,環境パフォーマンス,及び運用管理の有
効性に関する記録
− 組織のサイトを取り巻く,地域的な環境課題
− 現場視察からの情報
− 要員との面談
6.9.4
ステップ3
監査プログラムの管理責任は,監査の原則,求められる監査員の力量及び監査技法の適用に関する知識
及び理解をもった個人に割り当てられることが望ましい。監査の計画及び実施を指揮するための監査プロ
グラムには,ステップ2で集められた情報の考慮を含むことが望ましい。
監査プログラムの管理者は,どのように領域を監査するか,例えば,手順ごと,部門ごとなど,及び,
いつ監査を受けるかを決定することが望ましい。
監査の頻度は,環境に関する重要性及び前回までの監査所見に基づくことが望ましい。
プロセスの計画において,監査手順は,いかに組織が監査プログラムを計画するかについて,監査基準,
範囲,頻度及び用いる方法を含めた形で策定することが望ましい。
6.9.5
ステップ4
内部監査の完全なプログラムを実施するとき,特定された不適合又はあらゆる必要な改善に関する監査
所見は,それらが修正又は実施されるために,経営層に報告することが望ましい。
監査結果は,記録し,維持することが望ましい。
6.9.6
ステップ5
組織は,監査プログラム及び手順が効果的であり続けることを確実にするために,監査プログラム及び
手順をレビューすることが望ましい。例えば,組織は,前回までの監査所見に基づいて監査の頻度を調整
するかどうか,及び事態が別な側面に変化していないかどうかを確認することが望ましい。さらに,監査
員の力量についても,定期的に評価し,適切に維持することが望ましい。
6.10 計画どおりに進まない場合の運用管理
6.10.1 一般
組織が宣言した方針及び計画された活動(及び該当する場合,行動を規定する手順)が満たされていな
いことが明確になった場合,是正処置及び予防処置を策定し,実施する必要がある。これは,あらゆる成
功した環境マネジメントシステムの基本的な要素であり,かつ,継続的改善の中心部分である。そのよう
な不適合は,様々な方法で特定することができ,また,不適合の報告は,監査プロセスに限定しないほう
がよい。
32
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
計画どおりに進まな
い(不適合)可能性
があることを認識
し,かつ,それらの
発生を修正及び/又
は回避するために処
置をとる必要がある
ことを認識する。
計画どおりに進まな
かったことを明確に
し,それを修正する。
計画どおりに進まな
かった理由を分析
し,再発を防止する
ための処置を明確に
する。
計画どおりに進まな
い可能性のある事項
を明確にし,その発
生を防止するための
処置をとる。
是正処置の有効性を
レビューし,予防処
置をとる。
6.10.2 ステップ1
組織は,次の事項を自覚することが望ましい。
− 物事は,必ずしも計画どおりに起こるとは限らないため,計画どおりに進まなかったときに,生じた
環境影響を修正又は緩和するために処置をとることが望ましい。
− 計画どおりに進まなかったことの再発を防ぐために,処置をとることが望ましい。
− 計画どおりに進まない可能性のあることの発生を防ぐために,処置をとることが望ましい。
6.10.3 ステップ2
組織は,次の事項のために,手順を策定し,実施することが望ましい。
− 計画どおりに進んでいないこと(不適合)を特定する。これは,視察,測定結果の分析又は監査によ
って実施することができる。
− 顕在している不適合の修正に着手し,実施する(例えば,流出の修正,間違った場所にある廃棄物の
修正,未校正の測定機器の校正)。
とられる処置は,不適合によってもたらされる環境影響の性質及び大きさに見合ったものであることが
望ましい。
6.10.4 ステップ3
組織は,次の事項を行うために,手順を策定し,実施することが望ましい。
− 顕在している不適合の原因を分析する。
− その原因を除去するために処置をとる。
とられる是正処置は,不適合によってもたらされる環境影響の性質及び大きさに見合ったものであるこ
とが望ましい。
6.10.5 ステップ4
組織は,次の事項を実施するために,手順を策定し,実施することが望ましい。
− 起こり得る不適合を特定する。
− それらの起こり得る不適合の原因を分析する。
− その原因を除去するために処置をとる。
とられる予防処置は,起こり得る不適合がもたらす可能性のある環境影響の性質及び大きさに見合った
ものであることが望ましい。
6.10.6 ステップ5
組織は,次の事項を,組織がどのように行うかを記述した手順を策定することが望ましい。
− 是正処置及び予防処置が,適時に実施されていることを確実にするために,それらをフォローアップ
33
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
する。
− それらの有効性を検証する。
6.11 進捗及びパフォーマンスのマネジメントレビュー
6.11.1 一般
環境マネジメントシステムの実施及び環境マネジメントシステムの方向性に関するマネジメントレビュ
ーは,実施プロセスを通じて,定期的に行われることが望ましい。さらに,マネジメントレビュープロセ
スは,環境パフォーマンスの改善に関する進捗を評価するための機会を提供する。ただし,正式なマネジ
メントレビューの活動は,環境マネジメントシステムのパフォーマンス並びにその継続的な適切性,妥当
性及び有効性をレビューするための体系化された機会を,トップマネジメントに対して提供する。さらに,
管理責任者は,環境マネジメントシステムの運用及び継続的な開発に関する戦略及び意思決定プロセスに
直接貢献できる。これによって,経営層が,経験及び環境の変化の観点から,方針,目的及び目標並びに
実施計画といった,環境マネジメントシステムの中心的な要素を変更する必要性に取り組むことが可能に
なる。
マネジメントレビューは,どのような形式で実施してもよいが,組織の環境パフォーマンス及び環境マ
ネジメントシステムのパフォーマンスに関する情報を含むことが望ましい。レビューの記録は,保持する
ことが望ましい。
該当する場合には,環境マネジメントシステムを実施し,かつ,資源を提供することの責任をもつ者が,
このレビューに参画することが望ましい。マネジメントレビューは,適切な頻度で行うことが望ましい。
ステップ1
ステップ2
ステップ3
EMSのパフォーマンスをレビューす
る必要性を認識する。
レビュープロセスへのインプットを
明確にする。
EMSの適切性,妥当性及び有効性を
レビューする。改善の機会を明確に
する。
システム及び/又は実際のパフォー
マンスの改善を確立する。
6.11.2 ステップ1
組織のトップマネジメントは,環境マネジメントシステムのパフォーマンスを定期的に評価し,かつ,
改善の領域を探すことの必要性を認識することが望ましい。
6.11.3 ステップ2
マネジメントレビューには,インプットとして,次の事項を使用することが望ましい。
− 内部監査の結果及び監査所見に対してとられた是正処置
− 苦情記録を含む,外部の利害関係者からのコミュニケーション
− 法的及び組織が同意するその他の要求事項の順守評価の結果
− 組織の環境パフォーマンス(著しい環境側面における鍵となる特性に関する環境パフォーマンス指標
の,監視及び測定の結果)
− 目的,目標及び実施計画の進捗のレビュー
− 是正処置及び予防処置の状況
− 前回までのマネジメントレビューからのフォローアップ
− 組織の環境側面に関係した法的及びその他の要求事項の進展を含む,変化している周囲の状況に関す
る情報
− 組織の活動,製品又はサービスの変化及び予測される変化
− 計画された又は新しい開発の結果から生じる可能性のある,環境側面の評価
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
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− 組織の環境側面に関する科学的及び技術的進歩
− 緊急時及びニアミスからの学習
− 利害関係者の見解の傾向
− 必要な資源の改善及び計画の提案
6.11.4 ステップ3
環境パフォーマンス全体における改善を達成するために,環境マネジメントシステムを強化するための
具体的な処置を決定することが望ましい。
環境マネジメントシステムの狙いに合わせて,及び,継続的改善の観点から,改善の決定及び処置は,
それぞれのマネジメントレビューのアウトプットとして導き出されることが望ましい。
トップマネジメントは,マネジメントレビューの後にとられた処置の結果を確認することが望ましい。
マネジメントレビューの結果は,記録することが望ましい。
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
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附属書A
(参考)
活動の概要
組織は,表A.1における情報を利用して,JIS Q 14001と比較した組織のシステムの要求事項の網羅性を評価し,規格の要求事項に(完全に)適合し
ていない領域を徐々に強化することができる。
表A.1−環境マネジメントシステムを実施するための要素の概要
この規格の
細分箇条
JIS Q
14001:2004
の細分箇条
要素
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.1
4.1,4.3.1
組織の著しい環
境側面の特定
組織の活動,製品
及びサービスが,
環境と相互に作
用することを認
識する。
組織の環境側面
を特定する手順
を策定し,実施す
る(3.4参照)。
環境に著しい影
響を及ぼす,又は
及ぼす可能性の
ある環境側面を
決定する手順を
策定し,実施す
る。
著しい環境側面
のリストをまと
め,最新の状態に
保つ。
6.2
4.3.2
組織の法的及び
その他の要求事
項の特定
組織が,環境側面
に関する法的及
びその他の要求
事項を順守する
必要があること
を認識する。
関連する法的及
びその他の要求
事項を特定する。
法的及びその他
の要求事項がど
のように組織の
環境側面に適用
するかを決定す
る。
組織に適用する
法的及びその他
の要求事項の理
解を最新の状態
に保つ。
6.3
4.5.2
組織の法的及び
その他の要求事
項の順守評価
組織が,法的及び
その他の要求事
項に従い,それら
を順守する必要
があることを認
識する。
順守を監視及び
測定するための
方法を特定し,計
画する。
定期的に,全ての
法的及びその他
の要求事項の順
守を評価する。
全ての法的及び
その他の要求事
項についての,順
守状況,及び/又
は不順守を含む,
評価の結果を記
録し,報告する。
3
Q
1
4
0
0
5
:
2
0
1
2
(I
S
O
1
4
0
0
5
:
2
0
1
0
)
36
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.1−環境マネジメントシステムを実施するための要素の概要(続き)
この規格の
細分箇条
JIS Q
14001:2004
の細分箇条
要素
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.4
4.2
環境方針の準備
及び実施
組織が,環境方針
をもつことの必
要性を認識する。
組織にふさわし
い初期の環境方
針を準備する。
環境方針の文書
を仕上げる。
環境方針を一般
公開する。
組織で働く及び
組織のために働
く全ての人が,そ
の内容及び意味
を認識する。
6.5
4.3.3
目的及び目標の
設定並びに実施
計画の策定
パフォーマンス
を改善させるた
めに,到達点を確
立し,実施する必
要性を認識する。
目的,目標及び実
施計画を策定す
るための情報を
収集する。
パフォーマンス
を改善させるた
めに,目的,目標
及び実施計画を
策定し,文書化す
る。
実施計画の実施
を通じて目的及
び目標を達成す
るように取り組
む。
6.6
4.4.6
運用管理
著しい環境側面
に関連する運用
を管理する必要
性を認識する。
組織の著しい環
境側面を管理す
るための運用方
法を計画する。
管理を策定し,実
施する。
実施した管理の
有効性をレビュ
ーする。
6.7
4.4.7
緊急事態への計
画及び対応
緊急事態が起こ
り得ること及び
それを管理する
必要があること
を認識する。
どのような緊急
事態が起こり得
るのか,その潜在
的な環境影響は
何かを特定する。
特定した潜在的
な緊急事態に対
応する手順を確
立する。
潜在的な緊急事
態に対応する手
順を実施し,(実
施可能な場合に
は)テストする。
緊急事態への対
応をレビューし,
必要に応じて手
順を改訂する。
6.8
4.5.1,4.5.2,
4.5
監視及び測定を
含む,環境パフ
ォーマンス評価
環境パフォーマ
ンスの評価の必
要性を認識し,そ
の目的のための
指標を策定する。
鍵となる特性に
関する情報を収
集し,環境パフォ
ーマンス指標を
定める。
組織の環境パフ
ォーマンス指標
に従って,監視及
び測定の手順を
策定する。
組織のパフォー
マンスを収集し,
測定し,分析し,
評価する。機器を
校正し,記録を保
持する。
指標の適切性を
評価する。
3
Q
1
4
0
0
5
:
2
0
1
2
(I
S
O
1
4
0
0
5
:
2
0
1
0
)
37
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.1−環境マネジメントシステムを実施するための要素の概要(続き)
この規格の
細分箇条
JIS Q
14001:2004
の細分箇条
要素
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.9
4.5.5
内部監査
環境マネジメン
トシステムが適
切に実施され,計
画された取決め
事項を満たして
いることを確実
にする必要があ
ることを認識す
る。
監査プログラム
を策定するため
に情報を収集す
る。
監査プログラム
を計画し,実施す
る。
経営層へ,監査所
見を報告し,それ
らに対して処置
をとる。
内部監査の改善
を明確にする。
6.10
4.5.3
計画どおりに進
まない場合の運
用管理
計画どおりに進
まない(不適合)
可能性があるこ
とを認識し,か
つ,それらの発生
を修正及び/又
は回避するため
に処置をとる必
要があることを
認識する。
計画どおりに進
まなかったこと
を明確にし,それ
を修正する。
計画どおりに進
まなかった理由
を分析し,再発を
防止するための
処置を明確にす
る。
計画どおりに進
まない可能性の
ある事項を明確
にし,その発生を
防止するための
処置をとる。
是正処置の有効
性をレビューし,
予防処置をとる。
6.11
4.6
進捗及びパフォ
ーマンスのマネ
ジメントレビュ
ー
EMSのパフォー
マンスをレビュ
ーする必要性を
認識する。
レビュープロセ
スへのインプッ
トを明確にする。
EMSの適切性,
妥当性及び有効
性をレビューす
る。改善の機会を
明確にする。
システム及び/
又は実際のパフ
ォーマンスの改
善を確立する。
3
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S
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.1−環境マネジメントシステムを実施するための要素の概要(続き)
この規格の
細分箇条
JIS Q
14001:2004
の細分箇条
要素
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
5.1
4.4.3
環境コミュニケ
ーション
環境課題につい
てコミュニケー
ションを行う必
要性及び価値を
認識する。
何を,誰に伝達す
るかを明確にす
る。
利害関係者に情
報を伝達する方
法を計画する。
コミュニケーシ
ョンプロセスを
実施する。
コミュニケーシ
ョンが効果的で
あったかを決定
するために,コミ
ュニケーション
の結果を監視す
る。
5.2
4.4.1
資源,役割,責
任及び権限
組織のトップマ
ネジメント及び
EMSによって必
要となる定めら
れた資源,役割,
責任及び権限を
もつ必要性を認
識する。
組織内の役割,責
任及び適切な資
源を特定し,定め
る。
EMSのための管
理責任者を任命
する。
役割及び責任に
影響される全て
の人々に,役割及
び責任を伝達し,
彼らがそれらを
理解し,同意する
ことを確実にす
る。
必要に応じて資
源を割り当てる。
5.3
4.4.2
力量,教育訓練
及び自覚
組織において,力
量のある要員及
びEMSに必要と
される事項に対
する自覚をもつ
必要性を認識す
る。
組織の著しい環
境影響に関連す
る活動の実施に
おいて必要とな
る力量を決定す
る。
自覚させるため
の手順を策定し,
実施する。
必要に応じて,教
育訓練の計画を
策定し,実施す
る。
要求事項に対す
る力量を評価し,
それらが満たさ
れていることを
確実にする。
力量,教育訓練及
び自覚の計画を
維持する。
5.4
4.5.4
記録
運用中のEMSの
証拠として記録
を維持する必要
性を認識する。
どの記録が必要
かを決定し,それ
らの管理の実施
手順を確立する。
必要に応じて記
録をレビューし,
維持する。
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39
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表A.1−環境マネジメントシステムを実施するための要素の概要(続き)
この規格の
細分箇条
JIS Q
14001:2004
の細分箇条
要素
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
5.5
4.4.4
文書類
EMSの適用範囲
内において,文書
化することの必
要性を認識する。
何を文書化する
かを決定する。
文書化に必要な
ものを準備し,ま
とめる。
その文書による
運用を開始する。
5.6
4.4.5
文書管理
EMSの適用範囲
の中で,文書管理
の必要性を認識
する。
文書管理の手順
を策定する。
文書管理を準備
し,体系化する。
文書管理を実施
し,維持する。
注記 対応国際規格の附属書Aにおいては,A.1及びA.2として欧州連合(EU)の制度である環境管理・環境監査スキーム(EMAS)への適合の
ための助言を記述しているが,この規格では不要であるため,不採用とした。
なお,表A.1においても,対応国際規格ではEMASに関する記述が部分的にあるが,この規格では不要であるため不採用とし,JISとし
て必要な部分を記述している。
3
Q
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40
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B
(参考)
5段階における実施例
図B.1は,5段階における環境マネジメントシステムの実施を示す。
段階1は,特定のプロジェクトの実施に対応する(箇条4参照)。
段階2〜5は,環境マネジメントシステムの主要要素の順番に沿った実施に対応する(箇条6参照)。
支援要素が開発される範囲は,環境マネジメントシステムが実施されるに従って大きくなる。これは,
三角形の形で示されている。
支援要素が必要とされる範囲は,環境マネジメントシステムが実施されるに従って広がる。これは,矢
印が太くなっていくことによって示されている。
注記 組織が,環境マネジメントシステムの実施を始める十分なコミットメントがある場合,第2段
階から始めることができる。
41
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図B.1−5段階における実施例
段階1−環境マネジメントシステムの段階的実施を開始するに当
たり,経営層の支援及びコミットメントを確立するための,環境関
連プロジェクトの取組み(箇条4)
トップマネジメントの参画(4.2.2)
プロジェクトの特定及び選定(4.2.3)
選定されたプロジェクトの計画及び実施(4.2.4)
段階2−環境マネジメントシステムの構築及び実施(箇条6)
選定されたプロジェクトの点検(4.2.5)
環境方針の準備及び実施(6.4 ステップ1及びステップ2)
組織の著しい環境
側面の特定(6.1)
組織の法的及びその他の要求
事項の特定(6.2)
組織の法的及びその他の要求
事項の順守評価(6.3)
段階3−環境マネジメントシステムの構築及び実施(箇条6)
環境方針の準備及び実施(6.4 ステップ3及びステップ4)
目的及び目標の設定並びに実施計画の策定(6.5)
監視及び測定を含む,環境パフォーマンス評価(6.8 ステッ
プ1及びステップ2)
段階4−環境マネジメントシステムの構築及び実施(箇条6)
運用管理(6.6)
緊急事態への計画及び対応(6.7)
段階5−環境マネジメントシステムの構築及び実施(箇条6)
監視及び測定を含む,環境パフォーマンス評価(6.8 ステッ
プ3〜ステップ5)
内部監査(6.9)
計画どおりに進まない場合の運用管理(6.10)
進捗及びパフォーマンスのマネジメントレビュー(6.11)
環境マネジメントシス
テムの実施及び維持を
支援する要素(箇条5)
環境コミュニケーシ
ョン(5.1)
資源,役割,責任及
び権限(5.2)
力量,教育訓練及び
自覚(5.3)
記録(5.4)
文書類(5.5)
文書管理(5.6)
42
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書C
(参考)
3段階における段階的実施例
この附属書の例では(表C.1),XYZ社は,最も重要な顧客からの要求によって,環境マネジメントシ
ステムを実施することを決定した。彼らは,環境課題について,事前に特定していなかった。利用可能な
情報及び資源を評価し,次の3段階における環境マネジメントシステムの実施を決定した。
次に示すそれぞれの段階は,マネジメントレビューを含め,PDCAのループの形で実施される。
a) 第1段階:環境課題の特定
b) 第2段階:活動及び管理の計画
c) 第3段階:支援要素の最終決定を含む,環境マネジメントシステムのレビュー及び改善
注記 支援要素は,全ての段階で使用される。
表C.1−3段階における実施例
この規格の
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.1
組織の著しい環境側面の
特定
段階1
段階2
6.2
組織の法的及びその他の
要求事項の特定
6.3
組織の法的及びその他の
要求事項の順守評価
段階3
6.4
環境方針の準備及び実施
6.5
目的及び目標の設定並び
に実施計画の策定
6.6
運用管理
段階2
段階3
6.7
緊急事態への計画及び対
応
6.8
監視及び測定を含む,環
境パフォーマンス評価
段階3
6.9
内部監査
6.10
計画どおりに進まない場
合の運用管理
6.11
進捗及びパフォーマンス
のマネジメントレビュー
全ての段階における各ステップの一部
(1/2/3段階)
5.1
環境コミュニケーション
段階3
5.2
資源,役割,責任及び権
限
段階1
5.3
力量,教育訓練及び自覚
段階2
5.4
記録
段階3
5.5
文書類
5.6
文書管理
43
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書D
(参考)
環境マネジメントシステムプロジェクトの例
D.1 一般
この附属書の環境マネジメントシステムプロジェクトの例は,段階的環境マネジメントシステムの実施
プロジェクトにおける全ての要素がどのように組み合わさっているかを図示することを目的としている。
この環境マネジメントシステムの例では,限定した運用及び活動に焦点を当て,一方,会社の環境マネジ
メントシステムでは,環境側面及び影響,関連する法規制,運用管理など,幅広い内容を含む。
注記 本文中のそれぞれの表は,網掛けによって,段階的環境マネジメントシステムの各要素の進捗
状況を示している。
プロセスエンジニア,監督者,2名の事務職員,10名の作業員の,計14名の従業員で構成される小規模
の金属加工工場XYZ社の管理者及びオーナーが,環境マネジメントシステムによって会社全体の環境が
改善されるかを確認することにした。
管理チーム会議では,化学物質を運搬及び保管する場所で起きた,一連の小規模流出に焦点を当てた。
流出によって,原料の損失分のコストは僅かだったが,汚染除去による廃棄物処理コストが多く発生した。
さらに,これらの事態によって,著しい環境影響が発生する可能性があり,工場が公表した汚染の予防に
対する方針におけるコミットメントと矛盾することが確認された。地域の冶金に関する中小企業団体の助
言によると,流出については環境監督官庁に報告する法的義務があるということである。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.4
環境方針の準備及び実施
6.1
組織の著しい環境側面の特定
管理チームは,これが重大な問題であることを認識し,この問題に取り組むために,環境マネジメント
プロジェクトを実施することに決めた。荷降ろし業務に責任をもつ監督者が,過去の流出を分析したとこ
ろ,それぞれの流出は,既に導入されている安全機器を用いることによって防ぐことができたことが判明
した。5回の流出は,教育訓練を受けていない従業員が,排水カバーのような適切な設備を使わなかった
ことによって発生し,最後の流出は,安全機器が不適切に使用されたことによって発生した。したがって,
管理チームは,目的を,流出の除去として設定することで合意した。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.5
目的及び目標の設定並びに実
施計画の策定
6.2
組織の法的及びその他の要求
事項の特定
最初のステップは,積荷業務に責任をもつ,4人の作業者の環境に関する自覚を高め,流出に伴う環境
影響を理解し,更なる流出を防ぐための活動計画に合意することであった。このことは,4人の作業者が
出席した,フォローアップ会議で合意された。
管理者は,目的を達成するために,次の活動を含む実施計画を策定した。
a) 適切な運用管理を確実にするために,どのような積荷及び荷降ろしの手順をとるかを明確に定め,作
業者に対して作業指示書を発行する。
b) 流出が起きた場合(緊急事態),機器が適切に配置され,使用できる準備が整っていることを確実にす
るための,追加の作業指示書を発行する。
44
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
c) 廃棄物を廃棄するときの,環境影響を緩和する方法について指導を行う。
d) 地方自治体に,流出及びそれに対してとられた処置について報告する。この指導によって,関連する
法的要求事項の順守を確実にすることができる。
e) 毎月,実習を行うこととする。実習の後,緊急事態の手順をレビューする。これらの手順に対する力
量を,監督者に示すことができた従業員だけが,積荷及び荷降ろしの業務を行うことができる。
f)
図及び写真を用いて,安全機器の使用方法に関する指導を行う。
責任を割り当て,主要な通過点を決定する。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.5
目的及び目標の設定並びに実
施計画の策定
5.3
力量,教育訓練及び自覚
5.2
資源,役割,責任及び権限
6.7
緊急事態への計画及び対応
運用管理には,例えば,作業者が,安全装置を用いたか,用いなかった場合は,その正当性を記録する
といったような,荷降ろし業務日誌の修正を含めた。業務日誌は,毎週,管理者会議(管理者,エンジニ
ア及び監督者)でレビューした。
2か月後,記録によると,流出は発生しなかったということが判明した。しかし,早朝勤務の作業者は,
“時間がないこと”を理由に,安全機器の使用を省き始めていた。このことを修正するための処置として,
朝のスケジュールをレビューし,十分な時間を保証できるよう改訂した。手順を妨げる運用上の問題があ
る場合に,全ての作業者がその上司に知らせるよう,教育訓練をするという形で,予防処置がとられた。
管理者は,環境改善プロジェクトの成功を認め,完全な環境マネジメントシステムを実施することを決
め,さらに,必要な活動を決定した。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.6
運用管理
5.4
記録
6.10
計画どおりに進まない場合の
運用管理
6.11
進捗及びパフォーマンスのマ
ネジメントレビュー
D.2 著しい環境側面及び法的要求事項の特定
XYZ社の管理者及びオーナーは,環境プロジェクトの成功に続き,会社内でJIS Q 14001の要求事項を
全て満たした環境マネジメントシステムを導入することを決定した。
オーナーは,会社のプロセスに関する従業員の経験を認識し,土曜日の朝に工場内で会議を開催し,XYZ
社の活動及び製品に関連する全ての環境側面及び潜在的な環境影響を特定するよう依頼した。チームは,
環境影響をもたらし得る活動,物品及び製品に関して,次の五つのカテゴリを特定した。
− 大気への排出,水及び土壌への放出
− 近隣に影響を与える騒音,臭気又は光
− 製品及びサービスの使用
− エネルギー使用量(電気,ガス,燃料)
− 材料の消費(溶剤,水,合成洗剤)
45
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
チームは,12の環境側面が環境影響につながることについて同意した。地域の中小企業協会の環境アド
バイザーが,その後開催された会議に参加し,12の環境側面の中で,特に五つを著しい環境影響をもたら
す著しい環境側面と決定した。その内容は,電力エネルギーの使用量,排水路への排水の放出,4台の旋
盤によって発生する騒音(これら三つの側面は全て,定常時に発生する),化学物質保管庫での火災,及び
最初のプロジェクトで扱った流出(潜在的な緊急事態として)である。
環境アドバイザーとともに,特定した全ての環境側面に適用する法的要求事項(認可証,流出の報告,
排出の監視及びその他の規制を含む。)の議論を行い,次の四つの法的要求事項を特定した。
− (協会の宣言で規定している。)近隣への騒音
− 流出の報告
− 地域の消防法
− 排水路への放出
管理者は,環境側面のリストを準備し,その中で著しいものを強調した。次に,全ての法的要求事項の
リストを作り,環境マネジメントシステムの実施の一環として,自主的に,このリストの中に地元協会の
“環境宣言”を入れることを決定した。
管理者は,半年ごとに環境アドバイザーを訪問し,特定した内容,環境側面及び法的要求事項の特定及
び評価に関連する情報のレビュー及び更新を行うための手順を策定した。会議による結果の詳細は,全て
の従業員に周知した。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.1
組織の著しい環境側面の特定
6.2
組織の法的及びその他の要求事
項の特定
D.3 環境方針
著しい環境側面のレビューに続いて,管理者は,次に示す会社の目的を含む,XYZ社の新しい環境方針
を準備し,文書化した。
− 環境への適正な配慮の意向
− 法的要求事項及び冶金に関する中小企業団体の環境宣言を順守することに対するコミットメント
− 汚染の予防
− 環境マネジメントシステムの継続的改善
環境方針は,全ての従業員に説明された。特に,JIS Q 14001で規定している,“汚染の予防”を強調し
た。従業員及び訪問者のために,環境方針のコピーを工場の見えやすい場所に貼った。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.4
環境方針の準備及び実施
D.3.1 目的,目標及び実施計画
D.3.1.1 次のステップは,XYZ社が,著しい環境側面を管理し,必要に応じて更なる活動をとることを確
実にするためのものである。
五つの著しい環境側面について,XYZ社は,(パフォーマンスをを改善又は一定レベルに維持するため
に)目的を策定した。
46
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
環境側面
2008年の目的
エネルギー使用量
5 500 kWh未満に維持する。
排水量
規制への適合を保持する。
2名の近隣住民からの苦情によって発覚した騒音
最も近い近隣住民の2地区において,夜間は,60 dBま
でに音を下げる。
流出
流出ゼロ
地域貿易提携の環境宣言における新しい要求事項に基づ
く,化学物質保管庫での火災
2008年9月以前の環境宣言を順守する。
D.3.1.2 環境実施計画は,二つの重要な目的(騒音及び火災)の改善を確実にするために策定され,実施
された。実施計画において,目的を達成するための活動,予定表及び必要な資源,並びにこれらの活動に
責任をもつ作業者を設定した。
二つの重要な目的を改善するための環境実施計画は,次のとおりである。
a) 騒音:騒音の原因の特定,4台の旋盤のメンテナンスのレビュー及び改善,並びに機械の近くに防音
壁を用いることを検討する。目的が達成できているかを検証するために,近隣地区にて騒音レベルを
測定する。
b) 火災:要求事項の明確かつ詳細な情報,要員の教育訓練,火災が起きた場合に要する費用の新しい計
算方法,貯蔵している化学物質についての製品安全データシート(MSDS)分析,並びに消火器が継
続的に使用できることを確実にするための手順。
環境実施計画は,毎月1回,監督者及びプロセスエンジニアがレビューする。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.5
目的及び目標の設定並びに実
施計画の策定
6.8
監視及び測定を含む,環境パフ
ォーマンス評価
D.3.2 運用管理
次のステップは,いかにXYZ社が,改善プロジェクトの対象となっていない著しい環境側面を管理し
ているかを分析することである。
環境側面
運用管理
エネルギー使用量
プロセスエンジニアは,電気機器の使用及び照明のための方法,並びに4台の旋盤の予
防的及び予知的な保守手順を定め,それを要員に伝達した。
排水
産業排水のpHが,法的要求事項を満たすことを確実にするために,作業指示書におい
て,排水処理設備の運転プロセスを明確に定めた。すなわち,一連の運用を説明してい
る作業指示書が,バルブの近くに置かれた。
流出(最初のプロジェク
ト)
化学物質の荷降ろし及び取扱いに関する,MSDSから対応する手引を使用し,文字及び
写真を用いて,全ての要員の教育訓練を実施する。
毎月1回,管理者,監督者及びプロセスエンジニアが,次の事項を含むこれらの環境側面の運用管理を
レビューした。
− 全ての測定及び監視の活動
− 参画する全ての要員の力量
− 必要な場合,是正処置
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.6
運用管理
6.10
計画どおりに進まない場
合の運用管理
47
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
D.4 緊急事態
XYZ社は,流出及び火災の防止に関する,二つの緊急事態を特定した。
流出が起こった場合,プロセスエンジニアは,次のことを実施する必要がある。
− 安全装置が利用可能かどうか,及びその状態に関する,日常的な点検体制を確立する。
− 全ての要員が,流出時にどのように対処するかを理解していることを確実にするために,毎月,実習
をする。
− 各実習の後,及び実際に緊急事態が起きた後に,緊急事態の手順をレビューする。
二つ目の潜在的な緊急事態(化学物質保管庫での火災)は,環境マネジメントシステムの目的に含まれ,
実施計画を完了することで,完全な法令順守を達成できる。全ての従業員は,新しい緊急事態の手順を適
用するための教育訓練を受ける。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.7
緊急事態への計画及び対
応
D.5 監視及び測定
プロセスエンジニアは,次の事項を含む,環境側面に関連する活動を監視するための実施計画を策定し
た。
− 排水の組成
毎週1回
− サイト内外の騒音
半年に1回
− 電力消費
毎月(地域の電力供給会社の請求書)
− 緊急事態に対応する要素の状況
毎月
− インフラストラクチャーのメンテナンス計画
毎月
騒音の測定及び水の組成については,地域の研究所と下請契約を結び,その試験所が使用した機器の校
正記録とともに,結果の報告を受ける。
環境マネジメントシステムのもとで策定された目的の達成度についても,毎月監視する。
全ての報告は,XYZ社の環境業務日誌に記録する。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.8
監視及び測定を含む,環境
パフォーマンス評価
5.4
記録
D.6 環境パフォーマンス
管理者は,環境の改善に対する会社のコミットメントを監視し,環境に関する自覚を高め,かつ,他社
と比較するために,一連の環境パフォーマンス指標(EPI)を策定した。
選択されたEPIには,次の事項が含まれる。
− エネルギー使用量(kWh/材料1トン当たりの加工時)
− 水消費量(L/材料1トン当たりの加工時)
− 従業員1人当たりの教育訓練の時間数
− 環境実施計画の順守度(遅延及びコスト)
48
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
これらの指標は,毎年計算し,マネジメントレビュープロセスにおいてレビューする。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.8
監視及び測定を含む,環境
パフォーマンス評価
D.7 内部監査
オーナー及びエンジニアは,業界団体の二日間の内部監査コースに参加し,これによって,環境マネジ
メントシステムの内部監査を実施するための基準を策定することができた。
毎年1回,計画されたマネジメントレビューの1週間前に,環境マネジメントシステムの内部監査を実
施している。
内部監査の結果が期待したものと異なる場合,オーナーは,適切な処置がとられたかを確認するために,
新たに内部監査を実施できる。
監査報告書は,マネジメントレビュー,又は必要に応じて,毎週の会議において分析される。これらの
報告は,XYZ社の環境業務日誌に記録される。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.9
内部監査
5.4
記録
D.8 計画どおりに進まない場合の運用管理
XYZ社の環境業務日誌に特別項目を作り,そこに,環境マネジメントシステムの要求事項からのあらゆ
る逸脱,事態及び事故,外部の利害関係者からの苦情並びに内部監査の結果を記録するようにした。
全ての項目について,プロセスエンジニアが問題の原因を分析し,是正処置をとり,さらに再発予防の
ための処置をとり,その対処記録を業務日誌に記録することが望ましい。
業務日誌は,毎週の会議でレビューされる。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.10
計画どおりに進まない場
合の運用管理
5.4
記録
D.9 マネジメントレビュー
毎週の会議で,注意すべき環境課題を分析し,必要な場合は処置をとる。さらに,毎年4月末には,毎
週の会議のうちの1回の会議を環境マネジメントシステムのマネジメントレビューのために充てる。この
レビューには,次の事項を含む。
− 内部監査及び法令順守評価の結果,並びに対応する是正処置及び予防処置
− 外部の利害関係者(地方自治体,近隣住民など)とのコミュニケーション
− XYZ社の環境パフォーマンス
− 前回までの会議のフォローアップ
− 組織の環境パフォーマンスに影響を与え得る,法規制の改正及びビジネス全般に起こり得る変化
− 提出された,会社のメンバーからの改善の提案
プロセスエンジニアは,毎年の環境マネジメントシステムのレビュー及び毎週の会議の簡略な報告書を,
49
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
主要課題の要約とともに作成する。この報告書は,XYZ社の環境業務日誌に記録される。
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
6.11
進捗及びパフォーマンス
のマネジメントレビュー
5.4
記録
D.10 文書及び記録
会社の環境マネジメントシステムは,図及び作業系統図を含む“環境マネジメントシステムマニュアル”
に全て記載されている。このマニュアルは,監督者の事務所に保管し,全ての要員が見ることができる。
全ての記録が,XYZ社の環境業務日誌に記録される。この業務日誌には,次の文書を含む。
a) 環境側面のリスト
b) 法的要求事項のリスト
c) 環境実施計画
d) 法令順守の評価
e) 教育訓練の記録
f)
コミュニケーション
g) 前述した,その他の記録
細分箇条
活動
ステップ1
ステップ2
ステップ3
ステップ4
ステップ5
5.5
文書類
5.6
文書管理
5.4
記録
50
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書E
(参考)
他規格とJIS Q 14005との対比表
4
環境マネジメントシステムの段階的実施を開
始するに当たり,経営層の支援及びコミットメ
ントを確立するための,環境関連プロジェクト
の取組み
規格の箇条,細分箇条及び附属書
4.1
目的
4.2
方法
4.2.2
トップマネジメントの参画
JIS Q 14001:2004,4.5(点検)
4.2.3
プロジェクトの特定及び選定
4.2.4
選定されたプロジェクトの計画及び実施
JIS Q 14001:2004,4.3(計画)
JIS Q 14001:2004,4.4(実施及び運用)
JIS Q 14004:2004,4.3(計画)
JIS Q 14004:2004,4.4(実施及び運用)
4.2.5
選定されたプロジェクトの点検
JIS Q 14001:2004,4.6(マネジメントレビュー)
JIS Q 14004:2004,4.6(マネジメントレビュー)
JIS Q 14001:2004,A.1(一般要求事項)
JIS Q 14004:2004,4.1.4(初期環境レビュー)
5
環境マネジメントシステムの実施及び維持を
支援する要素
5.1
環境コミュニケーション
JIS Q 14001:2004,4.4.3(コミュニケーション)
JIS Q 14004:2004,4.4.3(コミュニケーション)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.3(外部への報告及びコミュニケ
ーション)
5.2
資源,役割,責任及び権限
JIS Q 14001:2004,4.4.1(資源,役割,責任及び権限)
JIS Q 14004:2004,4.4.1(資源,役割,責任及び権限)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
5.3
力量,教育訓練及び自覚
JIS Q 14001:2004,4.4.2(力量,教育訓練及び自覚)
JIS Q 14004:2004,4.4.2(力量,教育訓練及び自覚)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
5.4
記録
JIS Q 14001:2004,4.5.4(記録の管理)
JIS Q 14004:2004,4.5.4(記録の管理)
5.5
文書類
JIS Q 14001:2004,4.4.4(文書類)
JIS Q 14004:2004,4.4.4(文書類)
5.6
文書管理
JIS Q 14001:2004,4.4.5(文書管理)
JIS Q 14004:2004,4.4.5(文書管理)
6
環境マネジメントシステムの構築及び実施
6.1
組織の著しい環境側面の特定
JIS Q 14001:2004,4.3.1(環境側面)
JIS Q 14004:2004,4.3.1(環境側面)
6.2
組織の法的及びその他の要求事項の特定
JIS Q 14001:2004,4.3.2(法的及びその他の要求事項)
JIS Q 14004:2004,4.3.2(法的及びその他の要求事項)
6.3
組織の法的及びその他の要求事項の順守評価
JIS Q 14001:2004,4.5.2(順守評価)
JIS Q 14004:2004,4.5.2(順守評価)
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
6.4
環境方針の準備及び実施
JIS Q 14001:2004,4.2(環境方針)
JIS Q 14004:2004,4.2(環境方針)
6.5
目的及び目標の設定並びに実施計画の策定
JIS Q 14001:2004,4.3.3(目的,目標及び実施計画)
JIS Q 14004:2004,4.3.3(目的,目標及び実施計画)
JIS Q 14031:2000,3.3.3(データの分析及び変換)
JIS Q 14031:2000,3.3.4(情報の評価)
6.6
運用管理
JIS Q 14001:2004,4.4.6(運用管理)
JIS Q 14004:2004,4.4.6(運用管理)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
6.7
緊急事態への計画及び対応
JIS Q 14001:2004,4.4.7(緊急事態への準備及び対応)
JIS Q 14004:2004,4.4.7(緊急事態への準備及び対応)
6.8
監視及び測定を含む,環境パフォーマンス評価 JIS Q 14001:2004,4.5.1(監視及び測定)
JIS Q 14004:2004,4.5.1(監視及び測定)
JIS Q 14031:2000,3.3.2(データの収集)
JIS Q 14031:2000,3.2.2(EPEの指標の選択)
6.9
内部監査
JIS Q 14001:2004,4.5.5(内部監査)
JIS Q 14004:2004,4.5.5(内部監査)
JIS Q 14031:2000,3.3.2(データの収集)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
6.10
計画どおりに進まない場合の運用管理
JIS Q 14001:2004,4.5.3(不適合並びに是正処置及び予防
処置)
JIS Q 14004:2004,4.5.3(不適合並びに是正処置及び予防
処置)
JIS Q 14031: 2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
6.11
進捗及びパフォーマンスのマネジメントレビ
ュー
JIS Q 14001:2004,4.6(マネジメントレビュー)
JIS Q 14004:2004,4.6(マネジメントレビュー)
JIS Q 14031:2000,3.3.5.2(内部報告及びコミュニケーシ
ョン)
JIS Q 14031:2000,3.4(EPEのレビュー及び改善)
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Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1] JIS Q 9000:2006 品質マネジメントシステム−基本及び用語
注記 対応国際規格:ISO 9000:2005,Quality management systems−Fundamentals and vocabulary(IDT)
[2] JIS Q 9001 品質マネジメントシステム−要求事項
注記 対応国際規格:ISO 9001,Quality management systems−Requirements(IDT)
[3] JIS Q 9004 組織の持続的成功のための運営管理−品質マネジメントアプローチ
注記 対応国際規格:ISO 9004,Managing for the sustained success of an organization−A quality
management approach(IDT)
[4] ISO/TR 10013,Guidelines for quality management system documentation
[5] JIS Q 14001:2004 環境マネジメントシステム−要求事項及び利用の手引
注記 対応国際規格:ISO 14001:2004,Environmental management systems−Requirements with guidance
for use(IDT)
[6] JIS Q 14004:2004 環境マネジメントシステム−原則,システム及び支援技法の一般指針
注記 対応国際規格:ISO 14004:2004,Environmental management systems−General guidelines on
principles, systems and support techniques(IDT)
[7] JIS Q 14020 環境ラベル及び宣言−一般原則
注記 対応国際規格:ISO 14020,Environmental labels and declarations−General principles(IDT)
[8] JIS Q 14021 環境ラベル及び宣言−自己宣言による環境主張(タイプII環境ラベル表示)
注記 対応国際規格:ISO 14021,Environmental labels and declarations−Self-declared environmental
claims (Type II environmental labelling)(IDT)
[9] JIS Q 14024 環境ラベル及び宣言−タイプI環境ラベル表示−原則及び手続
注記 対応国際規格:ISO 14024,Environmental labels and declarations−Type I environmental labelling
−Principles and procedures(IDT)
[10] JIS Q 14025 環境ラベル及び宣言−タイプIII環境宣言−原則及び手順
注記 対応国際規格:ISO 14025,Environmental labels and declarations−Type III environmental
declarations−Principles and procedures(IDT)
[11] JIS Q 14031:2000 環境マネジメント−環境パフォーマンス評価−指針
注記 対応国際規格:ISO 14031:1999,Environmental management−Environmental performance
evaluation−Guidelines(IDT)
[12] JIS Q 14040 環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−原則及び枠組み
注記 対応国際規格:ISO 14040,Environmental management−Life cycle assessment−Principles and
framework(IDT)
[13] JIS Q 14044 環境マネジメント−ライフサイクルアセスメント−要求事項及び指針
注記 対応国際規格:ISO 14044,Environmental management−Life cycle assessment−Requirements and
guidelines(IDT)
[14] ISO/TR 14047,Environmental management−Life cycle impact assessment−Examples of application of ISO
14042
[15] ISO/TR 14049,Environmental management−Life cycle assessment−Examples of application of ISO 14041
53
Q 14005:2012 (ISO 14005:2010)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
to goal and scope definition and inventory analysis
[16] JIS Q 14050:2012 環境マネジメント−用語
注記 対応国際規格:ISO 14050:2009,Environmental management−Vocabulary(IDT)
[17] TR Q 0007 環境適合設計
注記 対応国際規格:ISO/TR 14062,Environmental management−Integrating environmental aspects into
product design and development(IDT)
[18] JIS Q 14063 環境マネジメント−環境コミュニケーション−指針及びその事例
注記 対応国際規格:ISO 14063,Environmental management−Environmental communication−
Guidelines and examples(IDT)
[19] JIS Q 19011 マネジメントシステム監査のための指針
注記 対応国際規格:ISO 19011,Guidelines for auditing management systems(IDT)
[20] BS 08/30143668 DC, BS EN ISO 14005, Environmental management systems−Guidelines for the phased
implementation of an environmental management system, including the use of environmental performance
evaluation 1)
[21] The integrated use of management system standards. ISO, Geneva, 2008, pp. 146, with CD. ISBN
978-92-67-10473-7
[22] Eco-management and Audit Scheme (EMAS). European Commission © 2010 [viewed 2 July 2010]. Available
from: http://ec.europa.eu/environment/emas/index̲en.htm
[23] Eco Action21−Environmental Management System and Environmental Activity Report Guidelines. Ministry
of the Environment of Japan, 2004
[24] European Union, Regulation (EC) No. 1221/2009 of the European Parliament and of the Council of 25
November 2009 on the voluntary participation by organisations in a Community eco-management and audit
scheme (EMAS), repealing Regulation (EC) No 761/2001 and Commission Decisions 2001/681/EC and
2006/193/EC
注1) 現在,作成中