Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日
本工業規格である。
制定に当たっては,日本工業規格と国際規格との対比,国際規格に一致した日本工業規格の作成及び日
本工業規格を基礎にした国際規格原案の提案を容易にするために,ISO 10019:2005,Guidelines for the
selection of quality management system consultants and use of their servicesを基礎として用いた。
JIS Q 10019には,次に示す附属書がある。
附属書A(参考)品質マネジメントシステムコンサルタントの代表的な活動
附属書B(参考)品質マネジメントシステムコンサルタントの評価
Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
(2)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1. 適用範囲 ························································································································ 1
2. 引用規格 ························································································································ 1
3. 定義 ······························································································································ 2
4. 品質マネジメントシステムコンサルタントの選定 ·································································· 2
4.1 選定プロセスへのインプット ··························································································· 2
4.2 コンサルタントの力量 ···································································································· 3
4.3 倫理的考慮事項 ············································································································· 7
5. 品質マネジメントシステムコンサルタントのサービスの利用 ··················································· 7
5.1 コンサルタントサービス ································································································· 7
5.2 コンサルタントサービス契約 ··························································································· 7
5.3 コンサルタントサービスの有用な考慮事項 ·········································································· 8
附属書A(参考) 品質マネジメントシステムコンサルタントの代表的な活動 ································· 9
附属書B(参考)品質マネジメントシステムコンサルタントの評価 ··············································· 12
参考文献 ···························································································································· 15
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
Q 10019:2005
(ISO 10019:2005)
品質マネジメントシステムコンサルタントの選定及
びそのサービスの利用のための指針
Guidelines for the selection of quality management system consultants and use of
their services
序文
この規格は,2005年に第1版として発行されたISO 10019:2005,Guidelines for the selection of quality
management system consultants and use of their servicesを翻訳し,技術的内容を変更することなく作成した日
本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある“参考”は,原国際規格にはない事項である。
品質マネジメントシステムの実現において,組織によっては自組織の要員に頼るところもあるが,外部
コンサルタントのサービスを利用する組織もある。組織によるコンサルタントの選定は,その成果として
の品質マネジメントシステムが,最も効率的で効果の上がる方法で,組織の計画した目標を確実に達成で
きるようにするために重要である。品質マネジメントシステムコンサルタントのサービスを利用する場合
であっても,組織のトップマネジメントの参画及びコミットメントが,品質マネジメントシステムの実現
にとって重要な要素である。
この規格は,品質マネジメントシステムコンサルタントの選定に当たって考慮すべき要素についての手
引を提供することを意図している。この規格は、品質マネジメントシステム実現の過程で、組織の固有の
ニーズ,期待及び目的を満たすことのできる品質マネジメントシステムコンサルタントの選定のために、
組織が利用することができる。この規格は,更に次のように利用することができる。
a) コンサルタント自身が,コンサルティングを行うための指針として
b) コンサルティング組織における,品質マネジメントシステムコンサルタントの選定のため
1. 適用範囲
この規格は,品質マネジメントシステムコンサルタントの選定及びそのサービスの利用のための手引に
ついて規定する。
この規格は,品質マネジメントシステムコンサルタントの選定に当たって組織を支援することを意図し
ている。この規格は,品質マネジメントシステムコンサルタントの力量を評価するためのプロセスに関す
る手引を示し,また,コンサルタントのサービスに対する組織のニーズ及び期待が満たされるだろうとい
う信頼を与える。
備考1. この規格は,認証目的のために利用されることを意図していない。
2. この規格は品質マネジメントシステムの実現について扱うものであるが,同時に,適切に適
応させることで,その他のマネジメントシステムの実現にも用いることができる。
3. この規格の対応国際規格を,次に示す。
2
Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 10019:2005,Guidelines for the selection of quality management system consultants and use of their
services (IDT)
2. 引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。発効年を
付記していない引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Q 9000 品質マネジメントシステム−基本及び用語
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS Q 9000の3.(定義)によるほか,次による。
3.1
品質マネジメントシステムの実現
品質マネジメントシステムを確立し,文書化し,実施し,維持し,継続的に改善するプロセス。
備考 品質マネジメントシステムの実現には,次の事項を含むことができる。
a) 品質マネジメントシステムに必要なプロセスを特定し、それらの組織への適用を明確にす
ること
b) その特定されたプロセスの順序及び相互関係を明確にすること
c) その特定されたプロセスの運用及び管理のいずれもが効果的であることを確実にするため
に必要な,基準及び方法を明確にすること
d) その特定されたプロセスの運用及び監視を支援するために必要な資源及び情報を利用でき
ることを確実にすること
e) その特定されたプロセスを監視,測定及び分析すること
f)
その特定されたプロセスについて、計画どおりの結果が得られるように、かつ、継続的改
善を達成するために必要な処置をとること
3.2
品質マネジメントシステムコンサルタント
品質マネジメントシステムの実現に関して,助言又は情報を与えて組織を支援する個人。
備考1. コンサルタントは品質マネジメントシステムの実現化の一部を支援することもできる。
2. この規格は,力量のある品質マネジメントシステムコンサルタントを,力量のないコンサル
タントから区別するための手引を提供する。
4. 品質マネジメントシステムコンサルタントの選定
4.1
選定プロセスへのインプット
4.1.1
組織のニーズ及び期待
品質マネジメントシステムコンサルタントを選定する場合,組織は,品質マネジメントシステムの実現
についての全体的な目的に基づいて,品質マネジメントシステムコンサルタントに対する組織のニーズ及
び期待を明確にすることが望ましい。トップマネジメントは,品質マネジメントシステムコンサルタント
の評価及び選定のプロセスに参画することが望ましい。
4.1.2
コンサルタントの役割
選定プロセスでは品質マネジメントシステムの実現における品質マネジメントシステムコンサルタント
に求める役割(附属書A参照)を考慮することが望ましい。コンサルタントの役割には,一般に次の事項
3
Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
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が含まれる。
a) 組織の文化、特性、教育レベル及び特有のビジネス環境に適した、品質マネジメントシステムの設計
及び実施を確実にするために、組織を支援すること。
b) 品質マネジメントの原則の理解及び適用に特別の注意を払いながら,品質マネジメントに関する概念
を,明確、かつ、理解しやすい方法で組織全体に説明すること。
c) あらゆるレベルのすべての関係者とのコミュニケーションをはかり,これら関係者を品質マネジメン
トシステムの実現に積極的に参画させること。
d) 品質マネジメントシステムにとって必要とされる適切なプロセスを明確にし、次いで,これらプロセ
スの相対的な重要性,順序及び相互作用を明らかにするに当たって,組織を助言し、支援すること。
e) プロセスの効果的な計画,運用及び管理を確実にするために、不可欠な文書として必要なものを特定
するに当たって,組織を支援すること。
f)
組織が,品質マネジメントシステムのプロセスを改善するための機会を模索することを促すために、
品質マネジメントシステムプロセスの有効性及び効率を評価すること。
g) 組織内における品質マネジメントシステムのプロセスアプローチ及び継続的改善の促進を支援するこ
と。
h) 品質マネジメントシステムの維持を可能にするために必要な教育・訓練を明確にすることに関して,
組織を支援すること。
i)
該当する場合は,品質マネジメントシステムコンサルタントと他の関連マネジメントシステム(例,環
境マネジメント又は労働安全衛生マネジメント)との関係を特定すること及び、このようなシステム間
の統合を促進することに関して組織を支援すること。
4.1.3
品質マネジメントシステムコンサルタントの力量の評価
コンサルタントの力量及び適切性を評価する場合,次の事項を適切に検討することが望ましい。
a) 個人的特質(4.2.2参照)
b) 関連する教育(4.2.3参照)
c) 品質マネジメントシステムに関して、組織の全体的な目的を達成するために必要な知識及び技能
(4.2.3,4.2.4及び4.2.5参照)
d) 業務経験(4.2.6参照)
e) 倫理的行動(4.3参照)
4.2
コンサルタントの力量
4.2.1
一般
品質マネジメントシステムコンサルタントの選定に当たって,組織は,提供されることとなるコンサル
ティングサービスの範囲に対して,コンサルタントが適切な力量を維持しているかどうかを評価すること
が望ましい。
品質マネジメントシステムコンサルタントの力量の概念を,図1に示す。
参考 力量は、知識及び技能を適用するための実証された能力とJIS Q 9000に定義されている。
4
Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図 1 品質マネジメントシステムコンサルタントの力量の概念
4.2.2
個人的特質
個人的特質は,品質マネジメントシステムコンサルタントの実施状況及び成果に寄与するものである。
一般に,品質マネジメントシステムコンサルタントは,次のようであることが望ましい。
a) 倫理的である。公正である、信用できる、誠実である、正直である、そして分別がある。
b) 観察力がある。組織の文化及び価値、物理的な周囲の状況並びに活動を絶えず、かつ、積極的に認識
する。
c) 知覚が鋭い。変化及び改善の必要性を意識し、理解できる。
d) 適応力がある。異なる状況へ適応でき、他の選択肢及び建設的な解決策を提供できる。
e) 粘り強い。根気があり,目的の達成に集中する。
f)
決断力がある。論理的な思考及び分析に基づいて,時宜を得た結論に到達することができる。
g) 自立的である。他人と効果的なやりとりをしながらも自主的に行動し、役割を果たすことができる。
h) コミュニケーション能力がある。確信のあるそして組織文化に敏感な態度で、組織のあらゆるレベル
の人々の意見に注意を払い,効果的に仲立ちすることができる。
i)
実践的である。優れた時間管理能力をもち、現実的、かつ、柔軟である。
j)
責任説明能力がある。自己の行動に対する責任をとることができる。
k) 推進支援能力がある。品質マネジメントシステムの実現を通じて、組織の運営管理及び従業員を支援
できる。
4.2.3
教育,知識及び技能
品質マネジメントシステムコンサルタントは,提供しようとしているコンサルティングサービスに関す
る知識及び技能を習得するために必要な,適切な教育を受けていることが望ましい。代表的な例を附属書
Bに示す。
4.2.2 個人的特質
4.2.5 組織に特有な
知識及び技能
4.2.4 品質マネジメントに特有な
知識及び技能
力量
4.2.7 力量の維持及び改善
4.2.3
4.2.3
4.2.3
4.2.6
教育
業務経験
技能
知識
4.2.2 個人的特質
4.2.5 組織に特有な
知識及び技能
4.2.4 品質マネジメントに特有な
知識及び技能
力量
4.2.7 力量の維持及び改善
4.2.3
4.2.3
4.2.3
4.2.6
教育
業務経験
技能
知識
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
備考 ここでの知識及び技能とは一般的な学業に関係するもので、例えば、言語能力、基礎的な自然
科学及び人文科学の知識をいう。
4.2.4
品質マネジメントに特有な知識及び技能
4.2.4.1
関連規格
品質マネジメントシステムコンサルタントは,組織に影響を与え得る次のような関連規格を理解し,適
用できることが望ましい。
− JIS Q 9000
品質マネジメントシステム - 基本及び用語
− JIS Q 9001 品質マネジメントシステム - 要求事項
− JIS Q 9004 品質マネジメントシステム - パフォーマンス改善のための指針
− JIS Q 19011 品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針
− その他,参考文献に挙げた関連ISO規格
さらに,コンサルタントは,コンサルティングサービスで必要なその他の規格についても,知識を備え
ていることが望ましい。
備考 代表的な例には,次のものが含まれる。
a) セクター別規格
b) 計測管理システム規格
c) 認定規格
d) 適合性評価規格
e) 製品規格
f)
ディペンダビリティマネジメント規格
g) 安全側面に関連する規格
品質マネジメントシステムコンサルタントは,ISO 9000ファミリーの導入及び支援文書の一部として開
発された,ISO指針文書についても知識をもっていることが望ましい。
4.2.4.2
国内及び国際的認証及び認定システム
品質マネジメントシステムコンサルタントは,次の事項に関して一般的な知識を備えていることが望ま
しい。
a) 国内及び国際レベルでの標準化,認証及び認定のシステム並びにそのようなシステムの認証機関のた
めの要求事項(例,JIS Z 9362 品質システム審査登録機関に対する一般要求事項)
b) 製品,システム及び要員の国内での認証のためのプロセス及び手順
4.2.4.3
一般的な品質マネジメントの原則,手法及び技法
品質マネジメントシステムコンサルタントは,適切な品質原則,手法及び技法に関する知識を備え,そ
れを適用できることが望ましい。
次のリストは、コンサルタントの経験と能力が重要であろう領域を示す。
a) 品質マネジメントの原則
b) 継続的改善のためのツール及び技法
c) 適切な統計的手法
d) 監査の手法及び技術
e) 品質経済性の原則
f)
チームワークの技法
g) PDCA (Plan−Do−Check−Act)手法
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
h) 方針展開の手法
i)
プロセスマッピング
j)
問題解決手法
k) 顧客/従業員満足のモニタリング方法
l)
ブレーンストーミング法
4.2.5
組織に特有な知識及び技能
4.2.5.1
法令・規制要求事項
組織の活動及びコンサルタントの業務範囲に関する法令・規制要求事項の知識は,品質マネジメントシ
ステムコンサルティングにとって不可欠なことである。しかしながら,そのサービスに着手する前に,品
質マネジメントシステムコンサルタントがこうした知識を備えていると期待すべきではない。
この分野における関連知識には,代表的なものとして,例えば、JIS Q 9001で求められているような,
組織の製品に関する法令・規制要求事項がある。
4.2.5.2
製品,プロセス及び組織の要求事項
品質マネジメントシステムコンサルタントは,そのコンサルティングサービスに着手する前に,製品,
プロセス及び顧客の期待について適切な知識を備え,また,組織が事業を行っている製品事業分野に関す
る主要な要素を理解していることが望ましい。
コンサルタントは,この知識を次のように適用できることが望ましい。
a) 組織のプロセス及び関連製品の主要な特性を明確にすること。
b) 組織のプロセスの順序及び相互関係を理解すること並びに,それらが製品要求事項を満たすことへの
影響を理解すること。
c) 組織が運営する事業分野の用語を理解すること。
d) 組織内の構造,機能及び関係の特質を理解すること。
e) 事業の目標と人的資源に求められる力量との戦略的な結びつきを理解すること。
4.2.5.3
マネジメントの実務
品質マネジメントシステムコンサルタントは、品質マネジメントシステムを、人的資源を含めた組織の
全般的なマネジメントシステムにどのように一体化させ、相互に関係付けるか、そして、組織の到達点及
び目標を達成するためにどのように品質マネジメントシステムを開発するか、を理解するために関連のあ
るマネジメントの実務に関する知識を有していることが望ましい。
ある場合には、品質マネジメントシステムに対する組織のニーズ、期待、全般的な目標を満たすために、
例えば、事業計画及び戦略計画、リスクマネジメント、並びに、事業改善ツール及び技法のような付加的
な力量が要求されることがある。(附属書B参照)
4.2.6
業務経験
品質マネジメントシステムコンサルタントは,コンサルタントサービスを提供するに当たって、その分
野での適切なマネジメント,専門的及び技術的な業務経験をもっていることが望ましい。この業務経験に
は,判断,問題解決及びすべての利害関係者とのコミュニケーションを含むことがある(附属書B参照)。
過去の業務経験及び実績の検証可能な照会関連資料は重要であり,組織がこれらを利用できるようにす
ることが望ましい。
コンサルタントの該当する経験には,次の事項の一部又は複数の組合せを含むことがある。
a) 実務経験
b) マネジメントの経験
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
c) 品質マネジメントにおける経験
d) 品質マネジメントシステム監査の経験
e) 次に挙げる一つ又は複数の立場での品質マネジメントシステムの実施経験
1) コンサルタントサービスの提供
2) 品質マネジメントシステム管理責任者として
3) 品質のマネジメントに関する職務の遂行
4.2.7
力量の維持及び改善
品質マネジメントシステムコンサルタントは、追加の業務経験,監査,訓練,継続的な教育,個人学習、
指導(コーチング),専門的な会合・セミナー・会議への参加,又はその他の関連する諸活動のような手段
を通じ、力量を維持し、改善することが望ましい。
継続的な専門能力の開発は,組織のニーズ,品質マネジメントシステムコンサルティングサービスの契
約条項,規格及びその他の関連する要求事項によって必要になることがある。
備考 専門能力の開発は、規制による又は監督権限のある、関連する専門機関、組織又は協会の会員
であること及びそれらが提供する継続的な個人の能力開発を通じて達成することができる。
4.3
倫理的考慮事項
組織は,品質マネジメントシステムコンサルタントを選定する場合,次の倫理的な課題を考慮すること
が望ましい。コンサルタントは,次のようであることが望ましい。
a) 実施すべき業務に影響するいかなる利害の衝突を,回避するか,又は言明する。
b) 組織から提供された又は組織から取得した情報の機密性を維持する。
c) 品質マネジメントシステムの認証/審査登録又は認定機関からの独立性を維持する。
d) 組織による認証/審査登録機関の選定における中立性を維持する。
e) 提案されたコンサルタントサービスに関する現実的な費用見積りを提供する。
f)
コンサルタントサービスに対する、不必要な依存状態を創造しない。
g) コンサルタントが必要な力量をもっていないところのサービスを提案しない。
5. 品質マネジメントシステムコンサルタントのサービスの利用
5.1
コンサルタントサービス
組織は,品質マネジメントシステムの実現のプロセスのなかで,次のうち一つ又は複数についての活動
を支援するためのコンサルティングサービスを利用してもよい(A.2参照)。
a) 目的及び要求事項の定義
b) 初期評価
c) 計画
d) 設計・開発
e) 実施
f)
評価
g) 現行の教育訓練及び維持
h) 改善
5.2
コンサルタントサービス契約
組織は、品質マネジメントシステムコンサルタントと契約するに当たり、そのコンサルタントの業務範
囲(アウトプットを含む)を明確に定義し、現実的なマイルストーン(主要管理点)をもち、組織にとっ
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
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て費用対効果のある契約を確実に締結することが望ましい(A.1参照)。契約を結ぶ場合は,次の事項のよ
うな活動(A.2参照)を考慮することが望ましい。
a) 具体的で,測定可能で,達成可能で,現実的で,期間を限定した,合意による契約目的の設定
b) 合意によるマイルストーン(主要管理点)及びアウトプットを示した詳細な契約のための計画書の設
定
c) すべての利害関係者に対し、この計画書に関するコミュニケーション
d) 関係する従業員が、品質マネジメントシステムの継続的な評価,維持及び改善を実施することができ
るように,従業員の教育訓練の必要性の明確化。
e) 計画書の実施
f)
計画書の有効性の監視及び評価,並びに、適切な場合は追加的な処置の実施
g) 合意したマイルストーン(主要管理点)が満たされているか,又は定め直されていることを確実にす
る
h) 契約の成果を承認するためのプロセスを定義する。
システム実施における進ちょく(捗)状況及びコンサルタントのパフォーマンスを評価するために,会
合を開催することが望ましい。これらの会合では,品質マネジメントシステム実現活動のための計画書及
び予算の点から,進ちょく(捗)状況をレビューすることが望ましい。文書化した進ちょく(捗)状況報
告書を,トップマネジメントへ提出することが望ましい。
5.3
コンサルタントサービスの有用な考慮事項
品質マネジメントシステムコンサルタントサービスを利用するプロセスで,組織は,次の事項を考慮す
ることが望ましい。
a) 結果として構築したシステムが,不必要な管理及び文書を生じさせないことが望ましい。
b) 品質マネジメントシステム構築の成功は,コンサルタントだけでなく,主にトップマネジメントの参
画及びコミットメントに依存する。
c) 組織は,コンサルタントの活動を調整し,監視するために、スタッフメンバー(通常,品質マネジメ
ントシステムが維持されていることを最終的に確実にする人物)を指名することが望ましい。
d) 組織の総合的な運営の中に品質マネジメントシステムを組み込むために,すべての階層の従業員を参
画させる。
e) 組織のプロセスを評価するために、コンサルタントには,組織の管理監督者及びすべての階層の従業
員と対話する権限を与えられることが望ましい。
f)
品質マネジメントシステムのコンサルティングが契約又は市場の要求事項に応じたものであったとし
ても、実現された品質マネジメントシステムを効果的で効率的な運営管理のツールとして利用できる
機会とする。
g) 品質マネジメントシステムには,組織のパフォーマンスの継続的改善のための基盤となる潜在力があ
る。
h) コンサルティングサービスは,組織の文化,従業員の力量、及び既存のプロセス及び/又は文書に基
づいていることが望ましい。
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書A(参考) 品質マネジメントシステムコンサルタントの代表的な
活動
A.1 初期評価及び提案の作成
A.1.1 初期評価及び契約の明確化には代表的な例として次の事項を含む
a) トップマネジメントによって提示された組織のニーズ,要求事項及び目的の明確化
b) 次の事項に関連する、組織が明確にしたニーズ,要求事項及び目的の初期評価
1) 関連する顧客要求事項
2) 関連する規格要求事項への適合性
3) 関連する法令・規制要求事項の順守
4) 現在の管理及び業務運営方法
5) 組織の現状と,明確にされた達成すべき目的との違いの明確化
c) 品質マネジメントシステムが,a)で記載され,b)で明確にされたニーズ,要求事項及び目的に適合す
るために必要な活動の文書化
d) 契約に当たって,c)で規定した活動を実現するためのトップマネジメントに対する提案の作成及び,
提示
A.1.2 契約内容には,明りょう(瞭)な言葉で次の事項に関する条項を含めることが望ましい
a) 品質マネジメントシステムコンサルティング活動の範囲
b) 品質マネジメントシステムの実現活動の計画
c) コンサルタント及び組織の、コミットメント,役割、責任並びに成果物
d) 組織の内部資源についてのコミットメント
e) コンサルタントの活動を支援するために必要な組織としてのコスト
f)
監視するための方法
g) 契約変更の管理方法
h) 機密保持
i)
適用される規格
j)
マイルストーン(主要管理点)/完了日
k) 支払い条件
l)
時間枠
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
A.2 品質マネジメントシステムの実現例
表A.1参照。表A.2は、実施の支援の例である。
表 A.1 品質マネジメントシステムの実現活動
活動の概要
責任者
1. 関連する品質マネジメントシステム規格の主な要求事
項及び,品質マネジメントシステムの設計・開発にお
ける組織とコンサルタントの役割についての,トップ
マネジメントへの通知
コンサルタント
2. 組織の顧客及びその他の利害関係者のニーズ及び期待
の分析
参考 初期評価の結果は,一般に,次のために使用され
る
a) 組織の強み及び弱み,並びに、機会及び脅威を明確に
する(SWOT分析)
b) 組織の品質方針及び目的を定めることを理解し、支援
する
c) 品質マネジメントシステム計画の基礎として
d) 品質マネジメントシステムの実施に必要な資源の利
用可能性を評価する
e) 初期監査の基礎として
f) 測定可能な目標を明確にする
組織のトップマネジメント(コンサルタントが支援
できる)
3. 管理責任者の任命並びに,品質に関する方針,目標及
びコミットメントの定義を明確にする。このような目
標の,組織内の適切な階層及び部門への関連付け。
組織のトップマネジメント(コンサルタントが支援
できる)
4. 組織の体制,プロセス,コミュニケーション経路及び
既存のインタフェースについての詳細な分析。
品質目標の達成に必要なプロセス及び責任の明確化。
これらプロセス間の順序及び相互関係の明確化。
組織内の様々な部門を担当する人々の協力を得た,
管理責任者及びコンサルタント。
5. 品質マネジメントシステムの構成、構造を定義し、品
質マネジメントシステムに必要な手順を明確にし、作
成するための計画書を定める。
進ちょく(捗)状況及び実行された活動の質を評価す
るために、適切な主要管理点(マイルストーン)が計
画書に定義されることが望ましい。その評価には次の
事項がある。
a) 準備し作成した内容と,契約の目的とが一致している
こと
b) 業務の進ちょく(捗)状況
c) 組織の満足(品質マネジメントシステムコンサルタント
が提供するサービスに関する)
管理責任者及びコンサルタント
6. 実施した分析結果及び事前に作成した計画のレビュー
組織のトップマネジメント及びコンサルタント
7. 組織の品質目標を達成するために必要な内部資源の明
確化
組織(コンサルタントが支援できる)
8. 品質マネジメントシステムの実現活動を進めることに
参画する要員及び,組織の他の関係者(“推進者“)の教
育・訓練
管理責任者及びコンサルタント
9. プロセスの特定及び明確化並びに,プロセスの相互関
係及び,記録の維持を含む必要な手順の作成
管理責任者(コンサルタントが支援できる)
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
表 A.1 品質マネジメントシステムの実現活動(続き)
活動の概要
責任者
10. 不整合,欠落、及び重複を避けるための,相互に関係
するプロセスと関連する手順との整合
管理責任者及びコンサルタント
11. 品質マニュアルの最終版の推こう(敲)
管理責任者(コンサルタントが,支援できる)
12. 品質マネジメントシステムに関与するすべての要員の
教育訓練
コンサルタント及び管理責任者若しくはコンサルタ
ントの支援を受けた管理責任者。他の力量のある者
が教育・訓練を行うことも可能である。
品質マネジメントシステムの実施
組織(コンサルタントが,支援することができる)
参考 矢印の上でコンサルタント活動は終わることを示し、矢印の下は組織による品質マネジメントシステム
の実行を示している。
表 A.2 品質マネジメントシステムの実施の支援
活動の概要
責任者
1. 監査の概念、監査質問事項の作成及び監査報告書の準
備を重視した内部監査員の訓練、並びに、他の要求さ
れる訓練
コンサルタント(又は,組織が指名するその他の
教育訓練提供者)
2. 内部監査プログラムの作成
管理責任者及びコンサルタント
3. 内部監査員と共に一連の初期内部監査へ参加する。そ
れによって、追加的な教育訓練の実施(監査報告書及
び不適合報告書の作成を含む)、並びに、発見された不
適合及びその原因を正式なものにするための支援を行
う。
コンサルタント
4. 効果的なマネジメントレビュー会合を行うためのトッ
プマネジメントの支援
コンサルタント
5. 監査の結果として発見された不適合事項を含む、是正
処置及び予防処置に焦点を当てた実施上の問題点の解
決の支援
コンサルタント
6. 実施のプロセスの継続的改善
組織のトップマネジメント(コンサルタントが支援で
きる)
7. 審査登録にかかわる事項についての情報。必要ならば
事前評価又は事前監査を含む
コンサルタント
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
附属書B(参考)品質マネジメントシステムコンサルタントの評価
B.1
品質マネジメントシステムコンサルタントのための教育及び業務経験の例
組織は,品質マネジメントシステムコンサルタントの選定の際に,モデルとして表B.1に示す教育及び
業務経験を利用することができる。この表は単なる例であり,すべての状況に適切なものということでな
い。また,品質マネジメントシステムの実現活動の範囲に左右されることもある。場合によっては,さら
なる力量が必要になることもある。(4.2参照)
表 B.1 品質マネジメントシステムコンサルタントの教育及び業務経験
業務経験区分
(備考1.参照)
教育及び業務経験(1)
品質マネジメントシステムの実現の複雑さ
− +
業務経験の合計
より少ない年数を適用し
てもよい。
大卒者の場合は4年(備
考2参照)又は高卒者の
場合6年(備考3.参照)
より多い年数を適用して
もよい。
品質マネジメントの業務
経験
より少ない年数を適用し
てもよい。
少なくとも2年間
より多い年数を適用して
もよい。
品質マネジメントシステ
ム構築の経験
より少ない品質マネジメ
ントシステム構築件数を
適用してもよい。
十分な役割を果たして、
少なくとも3件の品質マ
ネジメントシステム構築
を完了していること。
より多い品質マネジメン
トシステム構築件数を適
用してもよい。
注(1) 記述されている教育及び経験は要求事項でなく,また,認証目的に使用することを意図していない。組織
は,これらを要求事項として使用する決定ができる。
備考1. コンサルタントのための業務経験は,品質マネジメントシステムの実現化のために適切なものである
ことが極めて重要である。
2. 大学(高等)教育は,国の教育制度の一部で,また,少なくとも3年間の高校教育を受けた後に行われ
るものである。
3. 中等教育とは,初等教育の後にくる国の教育制度の一部で,学位レベルの教育を受ける前に完了して
いるものである。
B.2
コンサルタントの照会関連資料の評価
評価は,客観的な証拠の調査に基づくことが望ましく,また,次の事項を含むことができる。
a) 以前の職務からの照会関連資料
b) 品質の管理を扱った本及び記事の執筆
c) 専門家としての倫理についての照会関連資料
d) コンサルタントが作成した品質マネジメントシステム文書
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Q 10019:2005 (ISO 10019:2005)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
e) コンサルタントのサービスを利用したことのある組織との面談
f)
コンサルタントが専門的経験を獲得した職務の期間
g) 類似の組織での経験及び知識
h) コンサルタントの専門家としての認証又は資格
i)
力量を評価するためのコンサルタントとの面談
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1] JIS Q 9001, 品質マネジメントシステム - 要求事項
[2] JIS Q 9004, 品質マネジメントシステム - パフォーマンス改善の指針
[3] ISO 10002, Quality management ‒ Customer satisfaction ‒ Guidelines for complaints handling in organizations
[4] ISO 10005, Quality management ‒ Guidelines for quality plans
[5] JIS Q 10006, 品質マネジメントシステム - プロジェクトにおける品質マネジメントの指針
[6] ISO 10007, Quality management systems − Guidelines for configuration management
[7] ISO 10012, Measurement management systems ‒ Requirements for measurement processes and measuring
equipment
[8] ISO/TR 10013, Guidelines for quality management system documentation
[9] ISO/TR 10014, Guidelines for managing the economic of quality
[10] ISO 10015, Quality Management ‒ Guidelines for Training
[11] ISO/TR 10017, Guidance on statistical techniques for ISO 9001:2000
[12] JIS Q 19011, 品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針
[13] JIS Z 9362, 品質システム審査登録機関に対する一般要求事項
[14] Selection and use of ISO 9000 (brochure)
[15] Quality management principles and guidelines on their application (brochure)
[16] ISO 9000, Introduction and Support Package (obtainable from the official ISO/TC 176 website:
http://www.iso.org/iso/en/iso9000-14000/ and http://www. iso.org )
− Guidance on ISO 9001:2000 subclause 1.2 ʻApplicationʼ
− Guidance on the documentation requirements of ISO 9001:2000
− Guidance on the terminology used in ISO 9001:2000 and ISO 9004:2000
− Guidance on the process approach to quality management systems
[17] ISO Handbook: ISO 9001 for Small Business ‒ What to do (Advice from ISO/TC 176)