P 8154-3:2008 (ISO 5630-3:1996)
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目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲 ························································································································· 1
2 引用規格 ························································································································· 1
3 原理······························································································································· 2
4 装置······························································································································· 2
4.1 劣化処理槽 ··················································································································· 2
4.2 特性試験機器 ················································································································ 2
4.3 デシケータ又は他の前処置装置 ························································································· 2
5 試料の採取 ······················································································································ 2
6 試験片の調製 ··················································································································· 2
7 加熱処理 ························································································································· 2
8 前処置及び調湿 ················································································································ 3
9 特性試験 ························································································································· 3
10 試験結果の表し方 ··········································································································· 3
11 報告 ····························································································································· 3
附属書A(参考)加湿加熱処理装置 ························································································· 4
附属書B(参考)参考文献······································································································ 6
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)及び財団法
人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,日本工業標
準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に
抵触する可能性があることに注意を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許
権,出願公開後の特許出願,実用新案権又は出願公開後の実用新案登録出願に係る確認について,責任は
もたない。
JIS P 8154の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS P 8154-1 第1部:乾燥加熱処理(105 ℃)
JIS P 8154-3 第3部:加湿加熱処理(80 ℃, 相対湿度65 %)
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日本工業規格 JIS
P 8154-3:2008
(ISO 5630-3:1996)
紙及び板紙−加速劣化処理方法−
第3部:加湿加熱処理(80 ℃, 相対湿度65 %)
Paper and board-Accelerated ageing-Part 3: Moist heat treatment at
80 ℃ and 65 % relative humidity
序文
この規格は,1996年に第2版として発行されたISO 5630-3を基に,技術的内容を変更することなく作成
した日本工業規格である。
なお,この規格で点線の下線を施してある参考事項は,対応国際規格にはない事項である。
セルロースの分解は,湿度に対して極めて敏感である。相対湿度が60 %から70 %に増加すると,分解
速度が25 %増加する。高湿で,かつ,おそらく高温条件が普通である多くの国の自然条件を代表させる
ため,加速劣化環境においては,紙は,自然劣化雰囲気と同じ水分をもつことが望ましい。このことから,
種々の温度及び相対湿度条件下で,多くの紙の劣化を研究した結果,促進劣化試験の条件として,80 ℃及
び相対湿度 65 %を選定した[1]〜[6](附属書B参照)。
1
適用範囲
この規格は,紙又は板紙の加湿加熱処理及び処理後の紙又は板紙の特性を試験するための一般的な方法
について規定する。この処理方法は,印刷及び筆記用紙に適用するが,他の種類の紙及び板紙に用いても
よい。
この方法は,樹脂含浸紙又はワニス処理紙のような,熱処理によって物理的強度が増加する紙には適用
しない。
また,この方法は,異なる条件を採用する(ISO 5630-4参照)電気絶縁紙には適用しない。
この規格では,紙又は板紙に対して具体的に適用する特性試験については規定しないので,受渡当事者
間で必要な試験を決める。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 5630-3:1996,Paper and board−Accelerated ageing−Part 3: Moist heat treatment at 80 ℃ and
65 % relative humidity (IDT)
なお,対応の程度を表す記号(IDT)は,ISO/IEC Guide 21に基づき,一致していることを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS P 8110 紙及び板紙−平均品質を測定するためのサンプリング方法
注記 対応国際規格:ISO 186, Paper and board−Sampling to determine average quality (IDT)
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JIS P 8111 紙,板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態
注記 対応国際規格:ISO 187, Paper, board and pulps−Standard atmosphere for conditioning and testing
and procedure for monitoring the atmosphere and conditioning of samples (MOD)
3
原理
紙又は板紙の試験片を,80 ℃及び相対湿度65 %において,規定した時間加熱する。試験片の特性をこ
の加湿加熱処理前後で比較する。
4
装置
4.1
劣化処理槽 劣化処理槽は,温度80 ℃±0.5 ℃及び相対湿度 (65±2) %に保持できるものとする。
自動制御式恒温恒湿装置又は恒温浴(附属書A参照)によって,温度及び相対湿度を保持する。
注記 Graminskiら(附属書B [3], [4]参照)は,高温においては相対湿度を変化させることによっ
て耐折強さ及びゼロスパン引張強さで表した劣化速度が増加することを示した。したがって,
精度をできるだけ高めるために,相対湿度の変化を2 %以内に保持するように,温度は0.5 ℃
以内に制御する。
4.2
特性試験機器 特性試験機器は,該当する日本工業規格(以下,“JIS”という。)がある場合はその
規格によるものとし,ない場合は他の適切な標準試験方法に規定したものとする。
4.3
デシケータ又は他の前処置装置 デシケータ又は他の前処置装置は,相対湿度を10 %〜35 %に保
持できるものとする。
注記 デシケータ内の相対湿度は,JIS B 7920を参考にして飽和塩法(塩の飽和水溶液)に従って設
定するとよい。
5
試料の採取
試料の採取は,可能であれば,JIS P 8110による。その他の場合は,受渡当事者間で採取方法を決める。
6
試験片の調製
必要な試験を規定するJISがある場合は,その規格によるものとし,ない場合には他の適切な標準試験
方法の規定によって,5組の試験片を調製する。
光から試験片を保護する。
素手による試験片の取扱いを避け,かつ,化学実験室の雰囲気への暴露も避ける。
注記 試験片を大きめに裁断しておき,劣化処理後に試験片を正しい大きさに裁断すると便利である。
7
加熱処理
加熱処理は,暗所で行う。曲げたり,折ったりすることなく,5組(箇条6)の試験片のうち4組を油浴
中の劣化処理槽又は自動制御式恒温恒湿装置 (4.1) の中につるす。恒温浴中に浸せき(漬)した劣化処理
槽のそれぞれに,80 ℃±0.5 ℃及び相対湿度 (65±2) %で,50 mL/分±25 mL/分の速度で空気を通す。
24時間±15 分,48時間±30 分,72時間±45 分及び144時間±90 分の加熱処理後に,試験片を一組
ずつ取り出す。
注記1 受渡当事者間の合意によって,規定した前記の加熱処理時間のすべてを用いて,データを図
示するか,又はただ一つの加熱処理時間でのデータを無処理試料のデータと比較してもよい。
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注記2 劣化処理槽又は恒温恒湿装置には,蒸発又は昇華生成物による汚染の可能性を防ぐために,
同時に2種類以上の紙又は板紙を入れないほうがよい。
注記3 劣化処理槽中に試験片をつるすために,例えばステンレス鋼針金製の適当な掛け具を用いて
もよい。この方法によって,2列の試験片を附属書Aに示す大きさの劣化処理槽中につるす
ことができる。
この処理を行う間,5番目の無処理試験片の組は暗所に保管する。
8
前処置及び調湿
8.1
箇条7に従って加湿加熱処理が終了した後,JIS P 8111によって処理及び無処理試験片を前処置する
ために,試験するまでデシケータ又は他の前処置装置 (4.3) 中に保存する。
8.2
前処置 (8.1) が終了したら,処理及び無処理試験片の両方をJIS P 8111に規定した条件下で,少な
くとも4時間,望ましくは12時間程度調湿する。
9
特性試験
それぞれの試験片について,あらかじめ決めた特性を試験する(箇条1参照)。試験は,該当するJISが
ある場合はその規格によって,ない場合には他の試験方法の規定による。
10 試験結果の表し方
データの表し方の幾つかを,次に示す。
a) 加熱処理及び無処理試料の必要特性の測定値の平均値及び標準偏差を記録する。
b) 加熱処理試料の特性試験の測定値を無処理試料の測定値に対して百分率で表した保持率を計算する。
注記に示すように,保持率を百分率で表すことが不適切な場合を除く。保持率は,図示してもよい。
注記 耐折強さ試験を加熱劣化に対する指標として用いるときには,前記の保持率は,耐折強さ(往
復折曲げ回数の常用対数)ではなく,加熱劣化前後の往復折曲げ回数から計算することを推
奨する。
c) 必要特性測定値の加熱劣化処理による変化の有意性について,統計的試験を行ってもよい。
11 報告
報告には,次の事項を記録する。
a) 規格名称又は規格番号
b) 特性試験の該当するJISがある場合はその規格番号。ない場合は,別の試験方法の規格番号
c) 試料の種類及び名称
d) 加熱処理の時間,温度及び相対湿度
e) 無処理試料の必要特性の測定値に関する平均値及び標準偏差
f) 加熱処理試料の必要特性の測定値に関する平均値及び標準偏差
g) 受渡当事者間で合意したその他のデータ処理
h) 規定した手順から逸脱した事項又は測定結果に影響を及ぼすと思われる事項
i) 試験年月日及び試験場所
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附属書A
(参考)
加湿加熱処理装置
序文
この装置は,温度及び相対湿度を高度に制御できる。
二つの油浴が必要である。浴の温度変動を±0.1 ℃に保つために,それぞれの浴に投入電熱器を入れ,
それらをリレー及び温度制御器で制御する。
注記 温度を±0.1 ℃に保持すれば,必要な相対湿度が達成できると考えてよい。
温度を均一に保つために,浸せき形ポンプを用いて,それぞれの浴において油を連続的に循環させるこ
とが望ましい。
69.7 ℃に保持した第一の浴において(69.7 ℃における水蒸気圧は,80 ℃における蒸気圧の65 %であ
る。),二つの直列の溶融ガラス製発泡器によって空気を水蒸気で飽和する。この空気を,加熱したガラス
又は安定なプラスチック管(凝集を防止するため)を経由して,80 ℃に保持した第二の浴中の劣化処理槽
へ通す。空気は,劣化処理槽に入る前に温度を80 ℃に到達させるために,80 ℃に保持した浴中でガラス
管のコイルに通すことが望ましく,可能であれば,ガラス管を劣化処理槽のまわりに巻き付けるのがよい。
高さ250 mm及び直径60 mmの加湿槽が条件を満足することが分かっている。
60/50の共通テーパすり接手をもつ,高さ300 mm及び直径60 mmの劣化処理槽が適切であるが,それ
以外の大きさの槽を用いてもよい。
図A.1は,系統図を示す。図A.2は,代表的な装置を示す。
注記 我が国においては,自動制御式恒温恒湿装置が普及しているが,この規格の利用者の便宜を図
るために,参考として対応国際規格にある附属書を添付した。
図A.1−加湿加熱処理装置の系統図
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単位 mm(概略寸法)
図A.2−加湿加熱処理のための代表的な装置
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附属書B
(参考)
参考文献
[1] CARDWELL, R.D. Ageing of paper, Doctoral thesis, N.Y. State. College of Forestry, Syracuse, N.Y., 1973.
[2] LUNER, P. Paper Permanence. Tappi 52, 1969: 796-805.
[3] GRAMINSKI, E.L., PARKS, E.J. and TOTH, E.E. The effects of temperature and moisture on the accelerated
ageing of paper. ACS Symposium Series No. 95, Durability of Macromolecular Materials, R.K. Eby (Ed.),
1979.
[4] GRAMINSKI, E.L., PARKS, E.J. and TOTH, E.E. The effects of temperature and moisture on the accelerated
ageing of paper. NBSIR 78-1443, Report to the National Archives and Records Service. Available from:
National Technical Information Service (NTIS), Springfield, VA 22151, USA.
[5] BANSA, H. and HOFER, H.H. Die Ausagekraft einer künstlichen Alterung von Papier für Prognosen über seine
Benutzbarkeit. Restaurator 6 (1, 2), 1984: 21-60.
[6] BANSA, H. and HOFER, H.H. Die Beschreibung der Benutzbarkeitsqualität gealterter Papiere in Bibliotheken
und Archiven. Das Papier 34 (8) 1980: 348-355.
[7] JIS B 7920 湿度計−試験方法