P 8135 : 1998
(1)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が改正した日
本工業規格である。これによって,JIS P 8135 : 1976は改正され,この規格に置き換えられる。
今回の改正では,対応国際規格,ISO 3781 : 1983, Paper and board−Determination of tensile strength after
immersion in waterとの整合化を行った。
JIS P 8135には,次に示す附属書がある。
附属書(規定) 浸せき用附属装置
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
P 8135 : 1998
紙及び板紙−湿潤引張強さ試験方法
Paper and board−Determination of tensile strength after immersion in water
序文 この規格は,1983年に第2版として発行されたISO 3781,Paper and board−Determination of tensile
strength after immersion in waterを基に,対応する部分については技術的内容を変更することなく作成した
日本工業規格であるが,対応国際規格には規定されていない規定内容(試験片の採取に従来JISの方法,
試験片の前処置に従来JISの方法,操作の標準条件に従来JISの標準条件)を追加した。
なお,この規格で,点線の下線を施してある箇所は,対応国際規格にはない事項である。
1. 適用範囲 この規格は,規定時間水中に浸せきした後の紙及び板紙の湿潤引張強さ試験方法について
規定する。
備考1. この規格の対応国際規格を,次に示す。
ISO 3781 : 1983, Paper and board−Determination of tensile strength after immersion in water
2. この規格の中で{ }を付けて示してある単位,数値及び式は,従来単位によるものであって,
参考として併記したものである。
3. この規格の中のJIS又はISO規格の選択箇所は,規格全般にわたりJIS又はISO規格のどち
らか一方を選択する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS P 0001 紙・板紙及びパルプ用語
JIS P 8110 試験用紙採取方法
JIS P 8111 紙,板紙及びパルプ−調湿及び試験のための標準状態
JIS P 8113 紙及び板紙−引張特性の試験方法
備考 ISO 1924-1 : 1992, Paper and board−Determination of tensile properties−Part 1 : Constant rate of
loading method及びISO 1924-2 : 1994, Paper and board−Determination of tensile properties
−Part 2 : Constant rate of elongation methodが,この規格と同等である。
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 9051 母平均の区間推定(標準偏差未知)
ISO 186 Paper and board−Sampling to determine average quality
ISO 187 Paper board and pulps−Standard atmosphere for conditioning and testing and procedure
for monitoring the atmosphere and conditioning of samples
3. 定義 この規格で用いる主な用語の定義は,JIS P 0001によるほか,次による。
2
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a) 湿潤引張強さ (wet tensile strength) 紙又は板紙を規定の条件で水中に浸せきした後,所定の条件で
引っ張り,破断するまでの最大荷重を幅1m当たりに換算した値。
b) 湿潤引張強さ残留率 (wet strength retention) 湿潤引張強さと乾燥状態の引張強さの比。百分率で表
示する。
4. 測定の原理 紙又は板紙の試験片を規定の条件で水中に浸せきした後の引張強さを測定する。
5. 装置及び器具 装置及び器具は,次による。
5.1 試験機 試験機は,JIS P 8113に規定する定速緊張形引張試験機又は定速伸張形引張試験機を用いる。
5.2
水 浸せきに使用する水は,蒸留水又はイオン交換水とする。
5.3
浸せき用附属装置 湿潤強度が非常に弱く,取扱いが難しい紙の場合,附属書に規定する浸せき用
附属装置(フィンチ装置)を用いて湿潤引張強さ試験を行ってもよい。
6. 試験片 試験片は,次による。
a) JIS P 8110又はISO 186に規定する方法によって試験用紙を採取する。
b) 水中浸せき1時間未満で行う試験用紙については,JIS P 8111又はISO 187に規定する方法によって
前処置を行う。
c) 試験片は,JIS P 8113に規定する方法によって採取する。
7. 操作 操作は,JIS P 8111又はISO 187に規定する標準条件下で行う。一般の紙,板紙,強サイズ紙
などは7.1によって,高吸水紙及び湿潤強度が非常に弱い紙は7.2によって操作を行う。
7.1
一般法
a) 浸せき時間の指定がない限り,試験片が水で飽和するまで浸せきする。
備考1. 通常の紙は,1時間浸せきする。
2. 受渡当事者間の合意があれば,特定の使用条件を想定した浸せき時間を選択してもよい。
3. 板紙,強サイズ紙及び強サイズ板紙の場合,24時間,48時間及びそれより長い時間浸せきし
て予備試験を行い,適切な浸せき時間をあらかじめ測定しておくことが望ましい。2点の時
間間隔の湿潤引張強さの差が10%以内であれば,長い時間の方を本試験の浸せき時間とする。
b) 浅い容器に入れた水に試験片を沈め,重ならないように浸せきする。
c) 浸せき後,試験片を水中から取り出して吸取紙の上に置き,別の吸取紙を試験片の上に載せ,軽く押
さえて過剰の水を除き,直ちにJIS P 8113に規定する方法によって引張試験を行う。試験片が破断す
るまでの最大荷重を読み取る。
参考 吸取紙は,JIS P 8222に規定するものを推奨する。
7.2
部分浸せき法 ティシュペーパー,紙タオルなどの高吸水紙(1)の場合は,試験片の中央部分だけを
水に浸せきする部分浸せき法によって湿潤引張試験を行う。部分浸せき法として,次に示す垂直方向引張
法とフィンチ装置法があり,どちらで試験を行ってもよい。
注(1) 湿潤強度が非常に弱い紙の場合,複数の試験片を重ねて試験を行う。
7.2.1
垂直方向引張法
a) 試験片の両端を合わせて輪を作り,試験片の中央部を下向きにして水中に浸せきする。このとき,試
験片の幅方向を均一に浸せきする。
3
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
b) 試験片の浸せき部分の長さは,25〜50mmとする。
c) 試験片を水中から引き上げて,吸取紙の上に平らに置き,別の吸取紙を試験片の上に載せ,軽く押さ
えて過剰の水を除く。
d) 浸せき部分が引張試験機の2個のつかみ具のほぼ中間に位置するように試験片を取り付ける。
e) 浸せきしてから20±1s以内に,JIS P 8113に規定する方法によって引張試験を行う。試験片が破断す
るまでの最大荷重を読み取る。
7.2.2
フィンチ装置法
a) フィンチ装置の水平棒が,引張試験機の上部つかみ具の下方約76mmの位置になるように,フィンチ
装置を下部つかみ具に取り付け,かつ水平棒が2個のつかみ具の先端の線と平行で,その誤差が1°
以内になるようにする。
b) 水平棒の下から試験片を通し,その両端を合わせて輪を作り,引張試験機の上部つかみ具で両端部を
締め付ける。その際,つかみ具間の試験片にたるみが生じないようにする。
c) 水の入ったタブを最上部に固定し,水平棒に接した試験片先端部を19mm以上の深さで水に浸せきす
る。
d) 浸せきしてから20±1s後にタブを最下部まで下げ,直ちにJIS P 8113に規定する方法によって引張試
験を行い,試験片が破断するまでの最大荷重を読み取る。
備考 湿潤引張強さ残留率を測定する場合は,乾燥状態の引張強さを測定するときにもフィンチ装置
を使用する。
7.3
測定回数
a) 湿潤引張強さは,縦方向及び横方向について,それぞれ10枚以上(2)の試験片を測定し,有効な値を
10点ずつ採用する(3)。
b) 湿潤引張強さ残留率を測定する場合,乾燥状態の引張強さは,縦方向及び横方向について,それぞれ
10枚以上の試験片を測定し,有効な値を10点ずつ採用する(3)。
注(2) 複数の試験片を重ねて試験する場合は,重ねて測定した試験片を一組として10組以上を測定す
る。
(3) 試験中に試験片が滑ったり,つかみ具の内部で破断したり,又は試験片の幅方向にわたり一様
でない荷重がかかった形跡がある場合は,その値を採用しない。
8. 計算 計算は,次による。
8.1
湿潤引張強さ 湿潤引張強さは,次の式によって算出する。
a) 一般法及び垂直方向引張法の場合
n
W
X
SW
×
=
×
×
=
n
W
X
SW
'
8.9
ここに, Sw: 湿潤引張強さ (kN/m)
X: 湿潤試験片の破断までの最大荷重 (N)
X': 湿潤試験片の破断までの最大荷重 {kgf}
W: 試験片の幅 (mm)
n: 試験片の重ね枚数
参考 従来の湿潤引張強さは,試験片の幅が15mmのときの破断までの最大荷重X又はX'であるから,
この式によって湿潤引張強さに換算できる。
4
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b) フィンチ装置法の場合
n
W
X
SW
×
×
= 5.0
×
×
×
=
n
W
X
SW
'
5.0
8.9
参考 フィンチ装置法の場合,破断までの最大荷重の読取り値は,一般法での破断までの最大荷重の
2倍になる。このため,上の式では,破断までの最大荷重に0.5を乗じた値を用いて算出する。
8.2
湿潤引張強さ残留率 湿潤引張強さ残留率は,次の式によって算出する。
100
×
=S
S
R
W
ここに, R: 湿潤引張強さ残留率 (%)
S: 乾燥状態の引張強さ (kN/m)
9. 試験結果の表し方 個々に算出した湿潤引張強さ及び湿潤引張強さ残留率について,縦方向及び横方
向それぞれの平均値を求め,JIS Z 8401に規定する方法によって有効数字3けたに丸める。95%信頼限界
は,JIS Z 9051に規定する方法によって求める。
10. 報告 報告には,必要に応じて次の項目を記録する。
a) 規格名称又は規格番号,及びJIS又はISO規格の区分
b) 試験片の種類及び名称
c) 使用した試験機の名称及び形式
d) 試験年月日及び試験場所
e) 試験片の前処置条件(温度及び相対湿度)
f)
試験片の方向(縦・横)
g) 試験片の幅
h) 2個のつかみ具の間隔(ただし,フィンチ装置法の場合は,上部つかみ具とフィンチ装置の水平棒と
の間隔)
i)
引張速度
j)
試験回数
k) 浸せき時間(1時間以外のとき)
l)
試験片を重ねて測定した場合の試験片の重ね枚数
m) 湿潤引張強さの平均値,最大値・最小値及び95%信頼限界
n) 湿潤引張強さ残留率の平均値,最大値・最小値及び95%信頼限界
o) その他必要とする事項
5
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附属書(規定) 浸せき用附属装置
1. 装置の目的 フィンチ装置の使用目的は,次のとおりとする。
a) 試験片を短時間浸せき後,直ちに引張試験を行う。
b) 湿潤強度が非常に弱く,取扱いが難しい試験片の湿潤引張試験を容易にする。
2. フィンチ装置 本体の5.3に示すフィンチ装置は,次による。
a) フィンチ装置の構成
1) 附属書図1に示すフィンチ装置は,引張試験機に取り付けて使用する(附属書図2参照)。
2) フィンチ装置は,金属製の器具で,試験片中央部分を掛けて支持するための水平棒,タブ及び引張
試験機の下部つかみ具に取り付けられるつかみ部から構成する。
b) タブ 垂直方向への移動が可能で,水平棒を水中に19mm以上の深さに沈めることができる位置に,
水を入れたタブを固定できるものとする。
c) 水平棒 水平棒は,直径5.00±0.05mm,長さ約28mmとする。
附属書図1 フィンチ装置
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附属書図2 フィンチ装置の引張試験機への取付け例
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JIS原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
尾 鍋 史 彦
東京大学
(副委員長)
飯 田 清 昭
紙パルプ技術協会
(委員)
生 田 章 一
通商産業省生活産業局
○ 宮 崎 正 浩
工業技術院標準部
○ 橋 本 繁 晴
財団法人日本規格協会
岡 山 隆 之
東京農工大学
堀 定 男
日本製紙連合会
吉 田 芳 夫
王子製紙株式会社
内 藤 勉
日本製紙株式会杜
高 柳 充 夫
王子製紙株式会社
原 啓 志
三島製紙株式会杜
○ 外 山 孝 治
三菱製紙株式会社
佐久間 雅 義
北越製紙株式会杜
大豆生田 章
大日本印刷株式会社
細 村 弘 義
富士ゼロックス株式会社
○ 熊 谷 健
熊谷理機工業株式会社
○ 水 谷 壽
株式会社東洋精機製作所
○ 内 田 久*
十條リサーチ株式会社
○ 大 石 哲 久*
紙パルプ技術協会
紙パルプ試験規格委員会第2分科会 構成表
氏名
所属
(第2分科会長)
内 藤 勉
日本製紙株式会社
(委員)
高 橋 保
通商産業省製品評価技術センター
島 田 謹 爾
農林水産省森林総合研究所
西 田 友 昭
静岡大学
八 木 寿 則
王子製紙株式会社
仲 山 伸 二
王子製紙抹式会社
大 町 伸 一
紀州製紙株式会社
足 立 博 行
大王製紙株式会社
石 嶋 啓 夫
高崎製紙株式会社
加 藤 義 嗣
日本板紙株式会社(平成9年10月1日まで)
川 岸 秀 治
日本板紙株式会社(平成9年10月2日から)
JIS原案作成委員会の○印の委員
(*印は,事務局兼務を示す。)