P 8133-1:2013 (ISO 6588-1:2012)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
目 次
ページ
序文 ··································································································································· 1
1 適用範囲························································································································· 1
2 引用規格························································································································· 1
3 原理······························································································································· 2
4 試薬······························································································································· 2
5 装置及び器具 ··················································································································· 2
6 試料の採取及び調製 ·········································································································· 2
6.1 試料の採取 ··················································································································· 2
6.2 試料の調製 ··················································································································· 2
7 操作······························································································································· 3
7.1 ひょう量 ······················································································································ 3
7.2 抽出 ···························································································································· 3
7.3 pHの測定 ····················································································································· 3
8 計算······························································································································· 3
9 試験報告書 ······················································································································ 3
附属書A(参考)標準緩衝液の調製方法 ··················································································· 5
附属書B(参考)精度 ··········································································································· 6
参考文献 ····························································································································· 7
P 8133-1:2013 (ISO 6588-1:2012)
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まえがき
この規格は,工業標準化法第12条第1項の規定に基づき,紙パルプ技術協会(JAPAN TAPPI)及び一般
財団法人日本規格協会(JSA)から,工業標準原案を具して日本工業規格を制定すべきとの申出があり,
日本工業標準調査会の審議を経て,経済産業大臣が制定した日本工業規格である。
これによって,JIS P 8133:1998は廃止され,その一部を分割して制定したこの規格に置き換えられた。
この規格は,著作権法で保護対象となっている著作物である。
この規格の一部が,特許権,出願公開後の特許出願又は実用新案権に抵触する可能性があることに注意
を喚起する。経済産業大臣及び日本工業標準調査会は,このような特許権,出願公開後の特許出願及び実
用新案権に関わる確認について,責任はもたない。
JIS P 8133の規格群には,次に示す部編成がある。
JIS P 8133-1 第1部:冷水抽出
JIS P 8133-2 第2部:熱水抽出
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日本工業規格 JIS
P 8133-1:2013
(ISO 6588-1:2012)
紙,板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法−
第1部:冷水抽出
Paper, board and pulps-Determination of pH of aqueous extracts-
Part 1: Cold extraction
序文
この規格は,2012年に第2版として発行されたISO 6588-1を基に,技術的内容及び構成を変更するこ
となく作成した日本工業規格である。
1
適用範囲
この規格は,紙,板紙及びパルプから冷水によって抽出した電解質溶液のpH値を測定する方法につい
て規定する。
この規格は,全ての紙,板紙及びパルプに適用できる。
高純度パルプのように,抽出されるイオン性物質の量がゼロに近づくと,この方法の精度は低下する。
これは,電解質をほとんど含まない水のpH値を測定するのが難しくなることによる。
この規格では,抽出に蒸留水又は脱イオン水を使うので,工場のように様々な工程水(例えば,化学処
理したため電解質を多く含む河川水)を使って測定したpH値とは異なる値を示す場合がある(例えば,
十分に漂白したパルプ)。
また,この規格及びISO 29681(参考文献[1]に記載)に従って,pHを測定した場合では,結果が同じに
ならないことを知っておく必要がある。特に低いイオン強度のパルプを測定する場合,差は有意である。
JIS P 8133-2(参考文献[2]に記載)は,この規格と抽出条件が異なるだけである。冷水抽出又は熱水抽出
のいずれが適した方法かを示す一般的な指針はない。
電気関連用途に使用するセルロース製の紙の場合は,IEC 60554-2(参考文献[3]に記載)で規定する方
法によって測定する。
注記 この規格の対応国際規格及びその対応の程度を表す記号を,次に示す。
ISO 6588-1:2012,Paper, board and pulps−Determination of pH of aqueous extracts−Part 1: Cold
extraction(IDT)
なお,対応の程度を表す記号“IDT”は,ISO/IEC Guide 21-1に基づき,“一致している”こ
とを示す。
2
引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成する。これらの
引用規格は,その最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS P 8110 紙及び板紙−平均品質を測定するためのサンプリング方法
2
P 8133-1:2013 (ISO 6588-1:2012)
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注記 対応国際規格:ISO 186,Paper and board−Sampling to determine average quality(IDT)
JIS P 8201 製紙用パルプの試料採取方法
注記 対応国際規格:ISO 7213,Pulps−Sampling for testing(MOD)
ISO 3696,Water for analytical laboratory use−Specification and test methods
3
原理
試料2 gを100 mLの高純度の冷水で1時間抽出する。抽出液をろ過した後に,塩溶液を添加し,20 ℃
〜25 ℃で抽出液のpH値を測定する。
4
試薬
4.1
水 この試験では,蒸留水又は脱イオン水を使用する。使用する水の電気伝導率は,0.1 mS/mを超
えてはならない。電気伝導率は,水を1時間沸騰させた後,酸性ガス(CO2,SO2,H2S)に触れないよう
にして20 ℃〜25 ℃まで冷却し,測定する。その際,水のpHは6.8〜7.3が望ましい。電気伝導率を測定
する方法は,ISO 3696による。
4.2
標準緩衝液 pH値が約4,7及び9のもの。市販標準緩衝液を使用することもできる。
注記 それぞれに適した標準緩衝液の例及びその調製方法を,附属書Aに示す。
4.3
塩化カリウム溶液 1 mol/Lのもの。分析グレードの塩化カリウム(KCl)7.4 gを,蒸留した直後の
蒸留水100 mLに溶かす。1週間ごとに新しい溶液を調製する。
5
装置及び器具
装置及び器具は,通常の実験用のもののほか,次による。
5.1
ガラス器具 すり合わせ付きフラスコ,共栓,ビーカー,ガラスフィルタなどの耐薬品性のもの。
全てのガラス器具は,石けん(鹸),洗剤などを使わず,酸性の洗浄液で洗浄する。その後,注意深く水(4.1)
ですすぎ,使用する前に乾燥させておく。
注記 酸性の洗浄液には,一般に塩酸又は硝酸を使用する。
5.2
pH計 ガラス及びカロメル電極又は複合電極を装備したもので,少なくとも0.05のpH単位まで読
み取れるもの。
6
試料の採取及び調製
6.1
試料の採取
試料の採取は,それぞれの状況に応じて行う。パルプ,紙及び板紙のロット又は市販品を評価するため
に分析を行う場合は,JIS P 8201又はJIS P 8110による。それ以外の場合は,試料の出所及び可能であれ
ば試料の採取方法を報告する。
試料を扱うときには,清浄な保護手袋を用いる。
注記 お互いに付着してしまうのを防ぐために粉末を添加している手袋もある。しかし,この粉末は,
試料を汚染することがある。
6.2
試料の調製
試料には直接手を触れず,常に清浄な場所に置く。清浄なナイフ又はカッターを用いて試料を約1 cm2
の大きさに断裁するか又は引き裂く。高坪量の板紙試料の場合は,層分割する。
試験片を十分に混合し,清浄な蓋付きの容器に保管する。
3
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7
操作
操作を2回行う。
7.1
ひょう量
風乾した試料(6.2)2.0 g±0.1 gをひょう量し,250 mLのすり合わせ付きフラスコ(5.1)に入れる。
注記 試料の量は,厳密でなくてもよいので,水分の僅かな違いを補正するために絶乾率を求める必
要はない。
7.2
抽出
試料片が入っているすり合わせ付きフラスコ(5.1)に水(4.1)100 mLを加え,全ての試験片が水に浸
っていることを確認する。フラスコをすり合わせ共栓で蓋をして,20 ℃〜25 ℃で1時間静置する。この
間,少なくとも1回はすり合わせ付きフラスコを振とうする。
抽出液を目の粗いガラスフィルタでろ過し,ろ液を小さなビーカー(5.1)に移し,直ちに塩化カリウム
溶液(4.3)2 mLを加え,pH測定に進む。
7.3
pHの測定
機器製造業者の取扱説明書に従ってpH計を操作する。水(4.1)で電極を洗浄し,洗浄後には電極に付
いた水を拭かずに,水滴が付いたままにしておく。抽出液のpH値が2種類の標準緩衝液(4.2)の間に入
るように標準緩衝液を選択する。20 ℃〜25 ℃にて,この2種類の標準緩衝液を使用してpH計を校正す
る。初めに使う標準緩衝液には,標準緩衝液のpH値がpH計の電気的ゼロ点と同じ領域に入る標準緩衝液
(通常はpH 7の標準緩衝液)を選択する。二番目に使う標準緩衝液の読み値は,真の値との誤差を0.1以
内に収めることが望ましい。
二番目に使う標準緩衝液でpH計が正しいpH値を示さない場合は,機器製造業者の取扱説明書を参考に
して補正する。pH値が0.2を超えて変動する場合には,電極が故障していることを示す。また,緩やかで
あるが,数値が連続して増減する場合も,電極が故障していることを示す。
校正後は,電極を水(4.1)で数回すすぎ,その後で少量の抽出液ですすぐ。抽出液の温度が20 ℃〜25 ℃
であることを確認する。電極を抽出液に浸せきして,pH値のドリフトがなければ,30秒以内にpH値を記
録する。
次の試料を測定する前に,前の試料又は標準緩衝液の影響を除くために,電極を水(4.1)で慎重にすす
ぐ。
一連の測定が終了した後に,標準緩衝液を用いて電極を確認する。
8
計算
2回の試験の平均値を求める。
pH値は,小数点以下1位まで算出する。差が0.2以上になった場合は,その値を使用せず,抽出を更に
2回行い,全ての測定値の平均値及び測定値の幅を報告する。
9
試験報告書
試験報告書には,次の項目を記載する。
a) この規格の名称及び規格番号
b) 試験年月日及び場所
c) 試料を特定するのに必要な全ての情報
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d) 箇条8に記載した方法で表した試験結果
e) 試験中に観察した特記事項
f)
この規格から逸脱した事項,又は結果に影響した可能性のある事項
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附属書A
(参考)
標準緩衝液の調製方法
使用する全ての薬品類は,試薬グレードのものを使用する。緩衝液は,少なくとも月に一度は作り替え
る。A.1及びA.2で使用する無水塩は,120 ℃で乾燥する。
A.1 pH 4.0緩衝液:フタル酸水素カリウム0.05 mol/L水溶液
1 L全量フラスコの中で,フタル酸水素カリウム(KHC8H4O4)10.21 gを水(4.1)に溶解し,目盛まで
水を入れて希釈する。
この溶液のpH値は,20 ℃で4.00,25 ℃では4.01である。
A.2 pH 6.9緩衝液:りん酸二水素カリウム及びりん酸水素二ナトリウム溶液
1 L全量フラスコの中で,りん酸二水素カリウム(KH2PO4)3.39 g及びりん酸水素二ナトリウム(Na2HPO4)
3.54 gを水(4.1)に溶解し,目盛まで水を入れて希釈する。
この溶液のpH値は,20 ℃で6.87,25 ℃では6.86である。
A.3 pH 9.2緩衝液:四ほう酸ナトリウム溶液
1 L全量フラスコの中で,四ほう酸ナトリウム(Na2B4O7・10H2O)3.80 gを水(4.1)に溶解し,目盛まで
水を入れて希釈する。
この溶液のpH値は,20 ℃で9.23,25 ℃では9.18である。
6
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附属書B
(参考)
精度
B.1
一般
2002年2月に5か国の試験所が参加して,国際ラウンドロビンテストを実施した。
計算は,ISO/TR 24498(参考文献[6]に記載)に従って,行った。
報告した繰返し精度と再現性の許容差は,類似の試験条件下,類似の材料で二つの試験結果を比較する
とき,95 %の確率で期待される差の最大値を評価したものである。材料及び試験条件が異なる場合には,
これらの数値は,有効でない。
注記 繰返し精度及び再現性の許容差は,繰返し精度及び再現性の標準偏差に2.77 (1.962)を乗じて
計算する。
B.2
繰返し精度
この規格に従って,1か所の試験所で4種類の試料のpH値を測定した。一つの試料について10回測定
した。各試料の繰返し許容差,平均値,標準偏差及び変動係数を表B.1に示す。
表B.1−繰返し精度
試料
平均値
pH
標準偏差
Sr
変動係数
CV, r (%)
繰返し許容差
r
コピー用紙
9.9
0.01
0.07
0.03
板紙
7.8
0.07
0.84
0.19
漂白パルプ
5.2
0.02
0.42
0.06
未漂白パルプ
7.4
0.03
0.46
0.08
B.3
再現性
この規格に従って,5か所の試験所で4種類の試料のpH値を測定した。各試料の再現性許容差,平均値,
標準偏差及び変動係数を,五つの試験所の測定結果に基づいて表B.2にまとめた。
表B.2−再現性
試料
平均値
pH
標準偏差
SR
変動係数
CV, R (%)
再現性許容差
R
コピー用紙
9.8
0.22
2.2
0.61
板紙
7.8
0.34
4.4
0.94
漂白パルプ
5.7
0.37
12.8
2.02
未漂白パルプ
7.3
0.26
3.6
0.72
7
P 8133-1:2013 (ISO 6588-1:2012)
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
参考文献
[1] ISO 29681,Paper, board and pulps−Determination of pH of salted water extracts
[2] JIS P 8133-2 紙,板紙及びパルプ−水抽出液pHの試験方法−第2部:熱水抽出
注記 対応国際規格:ISO 6588-2,Paper, board and pulps−Determination of pH of aqueous extracts−Part
2: Hot extraction(IDT)
[3] IEC 60554-2,Cellulosic papers for electrical purposes−Part 2: Methods of test
[4] SCALLAN A.M. The pH inside the fibre wall. Cellulose Sources and Exploitation (edited by Kennedy J.F.,
Philips G.O. and Williams P.A.), Eric Horwood, London, p. 211 (1990)
[5] SCALLAN A.M. Predicting the Ion-Exchange of Kraft Pulp Using Donnan Theory, Journal of Pulp and Paper
Science 22:9, pp. J332-337, 1996
[6] ISO/TR 24498,Paper, board and pulps−Estimation of uncertainty for test methods