M 8856 : 1998
(1)
まえがき
この規格は,工業標準化法に基づいて,日本工業標準調査会の審議を経て,通商産業大臣が制定した日
本工業規格である。
日本工業規格 JIS
M 8856 : 1998
セラミックス用高アルミナ質原料の
化学分析方法
Methods for chemical analysis of high-alumina raw materials for ceramics
序文 高アルミナ質鉱物をセラミックス原料として使う場合,その化学成分を知らなければならない。そ
のための化学分析方法を規定することによって,この原料の化学分析に対する理解・適用の効率向上をは
かる目的で規格を制定する。
1. 適用範囲 この規格は,シリマナイト,ばん土頁岩,焼成ボーキサイトなどの高アルミナ質セラミッ
クス原料の化学分析方法について規定する。
2. 引用規格 付表1に示す規格は,この規格に引用されることによって,この規格の一部を構成する。
これらの規格は,その最新版を適用する。
3. 一般事項 分析方法に共通な一般事項は,JIS K 0050,JIS K 0115,JIS K 0116,JIS K 0121及びJIS K
8001の規定による。
4. 分析項目 この規格で,規定する分析項目は,次による。
強熱減量
(LOI)
酸化けい素 (IV)
(SiO2)
酸化アルミニウム
(Al2O3)
酸化鉄 (III)
(Fe2O3)(全鉄分をFe2O3として表示する。)
酸化チタン (IV)
(TiO2)
酸化ジルコニウム
(ZrO2)
酸化マンガン (II)
(MnO)
酸化りん (V)
(P2O5)
酸化カルシウム
(CaO)
酸化マグネシウム
(MgO)
酸化ナトリウム
(Na2O)
酸化カリウム
(K2O)
硫黄
(S) (硫化物,硫酸塩などを含めてSとして表示する。)
5. 試料の採り方及び取扱い方
2
M 8856 : 1998
5.1
試料の採り方 試料採取方法は,受渡当事者間の協定による。試験室試料は,そのまま分析用試料
とする。
備考 試験室試料は,通常,JIS Z 8801に規定する網ふるい106μmを全量通過するまで粉砕してある。
5.2
試料の取扱い方 分析用試料は,約5gをJIS R 3503に規定する平形はかり瓶 (60×30mm) に薄く
広げ,110±5℃で2時間乾燥した後,デシケーター(乾燥剤:乾燥用過塩素酸マグネシウム)中で保存す
る。
5.3
試料のはかり方 分析試料のはかり取りには化学はかりを用い,規定された量を0.1mgのけたまで
はかる。
6. 分析値のまとめ方
6.1
分析回数 分析は,日を変えて2回行う。
6.2
空試験 分析に当たっては,全操作を通じて空試験を行い,分析値を補正する。
6.3
分析結果の表示 分析値は,質量百分率で表し,JIS Z 8401によって次のように丸める。
a) 酸化アルミニウム 小数点第1位。
b) その他の成分 小数点第2位。
6.4
分析値の検討・選択 分析値の検討・選択は,JIS Z 8402に準じ,次による。
a) 2個の分析値の差が表1の許容差を超えないときは,その平均を報告値とする。
b) 2個の分析値の差が表1の許容差を超えるときは,更に2回の分析を繰り返す。
その差が許容差を超えないときは,その平均を報告値とする。
その差が許容差を超えるときは,4個の分析値のメジアンを報告値とする。
表1 分析値の許容差
成分
LOI
SiO2
Al2O3
Fe2O3
TiO2
ZrO2
MnO
P2O5
CaO
MgO
Na2O
K2O
S
許容差
0.05
0.20
0.35
0.10
0.10
0.02
0.005
0.01
0.01
0.01
0.03
0.03
0.02
mass%
0.30
0.10
0.10
0.02
0.005
0.01
0.01
0.03
0.03
上段:重量分析法,滴定分析法,吸光光度分析法,原子吸光分析法など。
下段:誘導結合プラズマ(以下,ICPという。)発光分光分析法。
7. 強熱減量の定量方法
7.1
定量方法 強熱減量の定量方法は,重量分析法による。
7.2
重量分析法
7.2.1
原理 試料を1 025℃で60分間強熱したときの減量を求める。
7.2.2
試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,1.00gとする。
7.2.3
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 白金るつぼ(例えば,JIS H 6201に規定する30番)(1)をふたと共に1 025±25℃で30分間強熱し,デ
シケーター中で常温まで放冷した後,質量をはかる。
注(1) 磁器るつぼ(例えば,JIS R 1301に規定する1B形20ml)を用いてもよい。
b) 試料をるつぼに取り,ふたをして質量をはかる。
c) ふたを半開にして,最初は低温で加熱し,次第に昇温して1025±25℃とし,この温度で60分間強熱
する。ふたを全閉にしてデシケーター中で常温まで放冷した後,質量をはかる。
7.2.4
計算 試料中の強熱減量は,次の式によって算出する。
3
M 8856 : 1998
100
0
1
2
1
×
−
−
=
m
m
m
m
LOI
ここに, LOI: 強熱減量 (mass%)
m0: 7.2.3a)ではかった質量 (g)
m1: 7.2.3b)ではかった質量 (g)
m2: 7.2.3c)ではかった質量 (g)
8. 酸化けい素 (IV) の定量方法
8.1
定量方法の区分 酸化けい素 (IV) の定量方法は,次のいずれかによる。
a) 凝集重量分析・吸光光度分析併用法 酸化けい素 (IV) 含有率4mass%以上の試料に用いる。
b) モリブデン青吸光光度分析法 酸化けい素 (IV) 含有率8mass%未満の試料に用いる。
c) ICP発光分光分析法 酸化けい素 (IV) 含有率8mass%未満の試料に用いる。
8.2
凝集重量分析・吸光光度分析併用法
8.2.1
原理 試料を炭酸ナトリウム及びほう酸で融解し,塩酸に溶解し,ポリエチレンオキシドを加えて
けい酸を凝集させた後,ろ別する。沈殿を強熱してはかり,ふっ化水素酸処理を行って酸化けい素 (IV) を
揮散させた後,再び強熱してはかり,その質量差から主酸化けい素 (IV) の量を求める。ろ液からモリブ
デン青吸光光度分析法によって溶存酸化けい素 (IV) の量を求め,両者の和から酸化けい素 (IV) の含有率
を算出する。
8.2.2
試薬 試薬は,次による。プラスチック瓶に保存する。
a) 塩酸 (1+1, 1+4, 1+50) JIS K 8180に規定する塩酸と水を用いて調製する。
b) ふっ化水素酸 JIS K 8819に規定するふっ化水素酸を用いる。
c) ふっ化水素酸 (1+9) 8.2.2b)を用いて調製する。
d) 硫酸 (1+1, 1+4) JIS K 8951に規定する硫酸と水を用いて調製する。
e) ほう酸 JIS K 8863に規定するほう酸を用いる。
f)
ほう酸溶液 (40g/L) 8.2.2e)を用いて調製する。
g) 炭酸ナトリウム JIS K 8625に規定する炭酸ナトリウムを用いる。
h) 七モリブデン酸六アンモニウム溶液 JIS K 8905に規定する七モリブデン酸六アンモニウム四水和物
20gを温水200mlに溶かし,必要ならばろ過する。保存中にモリブデン酸が析出したときは,新しく
調製する。
i)
酒石酸溶液 (100g/L) JIS K 8532に規定する酒石酸を用いて調製する。
j)
L (+) −アスコルビン酸溶液 (50g/L) JIS K 9502に規定するL (+) −アスコルビン酸を用いて調
製し,冷暗所に保存する。調製後2週間を経過したものは使用しない。
k) ポリエチレンオキシド溶液 水200ml中にかき混ぜながらポリエチレンオキシド0.1gを少量ずつ加え
て溶かす。調製後2週間を経過したものは使用しない。
l)
標準けい酸塩溶液 (0.05 mgSiO2/ml) けい酸塩標準溶液[JIS K 8001の4.3(標準液)(1)表5]の原
液 (1mgSiO2/ml) を使用の都度,水で正しく20倍に薄める。
8.2.3
試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,0.50gとする。
8.2.4
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料の融解 試料を白金皿(例えば,JIS H 6202に規定する75番)にはかり取り,炭酸ナトリウム
[8.2.2g)]3.0g及びほう酸[8.2.2e)]1.0gを加えて混合する。最初は低温で加熱し,次第に昇温し(2),1 100℃
4
M 8856 : 1998
附近で強熱融解(3)した後,時計皿で覆って放冷する。
注(2) 急激に加熱すると,ほう酸の脱水によって試料が飛散するおそれがある。
(3) 融解時間が長すぎると,融成物が塩酸に溶けにくくなる。
b) けい酸の凝集及びろ過 融成物に塩酸 (1+1) 30mlを加えて水浴上で加熱し,ガラス棒でかき混ぜて
溶解する。時計皿を少量の水で洗浄して取り除き,加熱を続けて液面が析出した塩類で覆われるよう
になったならば,ときどきガラス棒でかき混ぜながらシロップ状になるまで蒸発した後,塩酸 (1+1)
10ml及び水約10mlを加え,ガラス棒でかき混ぜて塩類を溶かす。白金皿を水浴上から下ろし,粉末
ろ紙0.3gを加えてかき混ぜた後,ポリエチレンオキシド溶液[8.2.2 k)]10mlを加えてかき混ぜ,5分間
放置する。JIS P 3801に規定するろ紙(5種B)を用いて沈殿をろ過し,ろ液をビーカー (300ml) に
受ける。熱塩酸 (1+50) で数回,熱水で十分に洗浄する。ろ液及び洗液は保存する。
c) 酸化けい素 (IV) の定量 沈殿及びろ紙は,白金るつぼ(例えば,JIS H 6201に規定する30番)に移
し入れ,硫酸 (1+4) 5滴を加え,燃えないようにろ紙を灰化した後,1 125+25℃で30分間強熱する。
デシケーター中で放冷した後,質量をはかり,恒量となるまで強熱を繰り返す。強熱物を水で湿し,
硫酸 (1+1) 3滴及びふっ化水素酸10mlを加え,砂浴上で加熱し,蒸発乾固する。
1 125±25℃で5分間強熱し,デシケーター中で常温まで放冷した後質量をはかる。前後の質量差を
主酸化けい素 (IV) とする。
d) 試料溶液 (A) の調製 るつぼ中の残分に炭酸ナトリウム[8.2.2g)]1.0g及びほう酸[8.2.2e)]0.5gを加え
て融解する。放冷後,塩酸 (1+1) 5mlを加え,水浴上で加熱して融成物を溶解後,b)のろ液及び洗液
に加えて冷却後,溶液を500mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。この溶液を試料溶
液 (A) とし,溶存酸化けい素 (IV),酸化アルミニウム,酸化鉄 (III),酸化チタン (IV),酸化ジルコ
ニウム,酸化マンガン (II) 及び酸化りん (V) の定量に用いる。
e) 溶存酸化けい素 (IV) の定量(4) 試料溶液 (A) から正しく10mlをプラスチックビーカー (100ml) に
分取し,ふっ化水素酸 (1+9) 2mlを加えて10分間放置した後,ほう酸溶液[8.2.2f)]50ml及び塩酸 (1
+4) 1mlを加える。液温を25±5℃とし,七モリブデン酸六アンモニウム溶液[8.2.2h)]2mlを加えてか
き混ぜ,10分間放置する。酒石酸溶液[8.2.2i)]5mlを加えてかき混ぜ,1分間後にL (+) −アスコルビ
ン酸溶液[8.2.2j)]2mlを加えてかき混ぜる。溶液を100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄
め,30分間放置する。呈色液の一部を吸光光度分析装置の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液とし
て波長650nm付近における吸光度を測定する。
注(4) ICP発光分光分析法を用いてもよい。
この場合は,試料溶液 (A) の一部を発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,例え
ば,波長251.61nmにおける発光強度を測定する。
8.2.5
空試験 試料を用いないで8.2.4の操作を行う。ただし,融解操作は行わない。試料溶液 (A) に対
応する溶液を空試験液 (A) とする。
8.2.6
検量線の作成(5) 標準けい酸塩溶液[8.2.2l)]から正しく0〜8ml[酸化けい素 (IV) として0〜
0.40mg]を数個のプラスチックビーカー (100ml) に段階的に取り,それぞれに空試験液 (A) から正しく
10mlを加え,以下,8.2.4e)のふっ化水素酸 (1+9) 添加以降の操作を行い,得た吸光度と酸化けい素 (IV) の
量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(5) 注(4)を適用した場合は,次による。
標準けい酸塩溶液[8.2.2l)]から正しく0〜8ml[酸化けい素 (IV) として0〜0.40mg]の各種液
量を100ml全量フラスコに段階的に取り,空試験液 (A) から正しく10ml及び塩酸 (1+4) 2ml
5
M 8856 : 1998
を加えて水で標線まで薄める。これらの検量線用溶液を用いて注(4)の操作を行い,発光強度と
酸化けい素 (IV) の量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
8.2.7
計算 8.2.4c)で得た主酸化けい素 (IV) の量と,8.2.4e)及び8.2.5で得た吸光度と8.2.6で作成した
検量線とを用いて溶存酸化けい素 (IV) の量を求め,試料中の酸化けい素 (IV) の含有率を,次の式によっ
て算出する。
100
10
/
500
)
(
)
(
2
1
2
1
2
×
×
−
+
−
=
m
A
A
m
m
SiO
ここに, SiO2: 酸化けい素 (IV) の含有率 (mass%)
m1: 8.2.4c)による主酸化けい素 (IV) の質量 (g)
m2: 8.2.5による酸化けい素 (IV) の質量 (g)
A1: 8.2.4e)による酸化けい素 (IV) の検出量 (g)
A2: 8.2.5による酸化けい素 (IV) の検出量 (g)
m: 8.2.3による試料のはかり取り量 (g)
8.3
モリブデン青吸光光度分析法
8.3.1
原理 試料を炭酸ナトリウム及びほう酸で融解し,塩酸に溶解して定容とする。この溶液を分取し,
七モリブデン酸六アンモニウム及びアスコルビン酸を加えて生じたモリブデン青の吸光度を測定する。
8.3.2
試薬 試薬は,8.2.2による。ただし,塩酸 (1+50),ポリエチレンオキシドは不要である。
8.3.3
試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,0.50gとする。
8.3.4
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液 (B) の調製 試料を白金皿(例えば,JIS H 6202に規定する75番)にはかり取り,炭酸ナ
トリウム [8.2.2g)] 4.0g及びほう酸 [8.2.2e)] 1.5gを加えて混合した後,最初は低温で加熱し,次第に昇
温し(2),1100℃付近で融解(3)する。時計皿で覆って放冷した後,塩酸 (1+1) 40mlを加え,時々かき
混ぜながら水浴上で加熱して溶解する。放冷後,時計皿を少量の水で洗浄して取り除き,溶液を500ml
の全量フラスコに移し入れ,水で標線まで薄める。この溶液を試料溶液 (B) とし,酸化けい素 (IV),
酸化アルミニウム,酸化鉄 (III),酸化チタン (IV),酸化ジルコニウム,酸化マンガン (II) 及び酸化
りん (V) の定量に用いる。
b) 呈色 試料溶液 (B) から表2によって一定量を2個のプラスチックビーカー (100ml) に分取し,そ
れぞれにふっ化水素酸 (1+9) 2mlを加えて10分間放置した後,ほう酸溶液 [8.2.2f)] 50ml及び塩酸 (1
+4) 1mlを加え水で約70mlに薄める。液温を25±5℃とし,七モリブデン酸六アンモニウム溶液[8.2.2
h)]2mlを加えてかき混ぜ,10分間放置する。酒石酸溶液[8.2.2i)]5mlを加えてかき混ぜ,1分間後にア
スコルビン酸溶液[8.2.2j)]2mlを加えてかき混ぜ,溶液を100mlの全量フラスコに移し入れ,水で標線
まで薄めて30分間放置する。
表2 試料溶液 (B) の分取量
酸化けい素 (IV) の含有率
mass%
試料溶液 (B) の分取量
ml
4未満
10
4以上8未満
5
c) 吸光度の測定 それぞれの呈色液の一部を吸光光度分析装置の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液
として波長650nm付近における吸光度を測定する。吸光度の差が0.005以内であれば,その平均値を
求める(6)。
注(6) 吸光度の差が0.006を超えるときは,8.3.4b)の操作をやり直す。
6
M 8856 : 1998
8.3.5
空試験 試料を用いないで8.3.4の操作を行う。ただし,融解操作は行わない。試料溶液 (B) に対
応する溶液を空試験液 (B) とする。
8.3.6
検量線の作成 8.2.6に準じる。ただし,空試験液 (B) の添加量は,8.3.4b)の試料溶液分取量と同
量にする。
8.3.7
計算 8.3.4c)及び8.3.5で得た吸光度と8.3.6で作成した検量線とから酸化けい素 (IV) の量を求め,
試料中の酸化けい素 (IV) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
2
1
2
×
×
−
=
V
m
A
A
SiO
ここに, SiO2: 酸化けい素 (IV) の含有率 (mass%)
A1: 8.3.4c)による酸化けい素 (IV) の検出量 (g)
A2: 8.3.5による酸化けい素 (IV) の検出量 (g)
m: 8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
V: 試料溶液 (B) の分取量 (ml)
8.4
ICP発光分光分析法
8.4.1
原理 試料溶液 (B) を分取して定容とし,その一部を取りICP発光分光分析装置を用いてけい素
の分析線の発光強度を測定する。
8.4.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸 (1+4) 8.2.2a)による。
b) アルミニウム溶液 (2mgAl2O3/ml) アルミニウム(99.9mass%以上)5.3gに塩酸 (1+1) 150mlを加え
て加熱して溶解し,水で1000mlに薄めて原液 (10mgAl2O3/ml) とする。この原液を使用の都度,水で
5倍に薄める。
c) 標準けい酸塩溶液 8.2.21)による。
8.4.3
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液の調製 8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から表2によって一定量を100mlの全量フラスコに分取
し,塩酸 (1+4) 5mlを加え,水で標線まで薄める。この溶液をICP発光分光分析法による酸化けい素
(IV) の定量に用いる。
b) 発光強度の測定 a)で得た溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,例え
ば,251.61nmにおける発光強度を測定する。
8.4.4
空試験 8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて8.4.3の操作を行う。
8.4.5
検量線の作成 標準けい酸塩溶液 [8.4.2c)] から正しく0〜8ml[酸化けい素 (IV) として0〜
0.40mg]の各種液量を段階的に数個の100ml全量フラスコに取り,それぞれに8.3.5の空試験液 (B) から
8.4.3a)の分取量と同量を分取し,塩酸 (1+4) 5ml及び試料中の酸化アルミニウムの含有率に応じてアルミ
ニウム溶液[8.4.2b)]の一定量(7)を加え,水で標線まで薄める。
これらの検量線用溶液を用いて8.4.3b)の操作を行い,得た発光強度と酸化けい素 (IV) の量との関係線
を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(7) 酸化アルミニウムの含有率10mass%につき試料溶液 (B) からの分取量が10mlの場合はアルミ
ニウム溶液0.5ml,分取量が5mlの場合は0.25mlの割合とする。
8.4.6 計算 8.4.3b)及び8.4.4で得た発光強度と8.4.5で作成した検量線から酸化けい素 (IV) の量を求め,
試料中の酸化けい素 (IV) の量を,次の式によって算出する。
100
500
/
2
1
2
×
×
−
=
V
m
A
A
SiO
7
M 8856 : 1998
ここに, SiO2: 酸化けい素 (IV) の含有率 (mass%)
A1: 8.4.3b)による酸化けい素 (IV) の検出量 (g)
A2: 8.4.4による酸化けい素 (IV) の検出量 (g)
m: 8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
V: 試料溶液 (B) の分取量 (ml)
9. 酸化アルミニウムの定量方法
9.1
定量方法 酸化アルミニウムの定量方法は,シクロヘキサン四酢酸(以下,CyDTAという。)−亜
鉛逆滴定法による。
9.2
CyDTA−亜鉛逆滴定法
9.2.1
原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取し,一定量のCyDTAを加え,アンモニア水及びヘキサメチ
レンテトラミンでpHを5.5〜5.8に調節してアルミニウム−CyDTAキレートを生成させ,キシレノールオ
レンジを指示薬として,過剰のCyDTAを亜鉛溶液で滴定する。別に求めた酸化鉄 (III),酸化チタン (IV),
酸化ジルコニウム及び酸化マンガン (II) を補正して酸化アルミニウムの含有率を算出する。
9.2.2
試薬 試薬は,次による。
a) アンモニア水 (1+1) JIS K 8085に規定するアンモニア水を用いて調製する。
b) ヘキサメチレンテトラミン JIS K 8847に規定するヘキサメチレンテトラミンを用いる。
c) 0.02mol/L CyDTA溶液 シクロヘキサンジアミン四酢酸一水和物7.30gに水酸化ナトリウム溶液
(100g/L) 16ml及び水約150mlを加え,加熱して溶解する。冷却後水で1 000mlに薄める。
d) 0.02mol/L亜鉛溶液 調製方法及びファクターの計算方法は,JIS K 8001の4.5(滴定用溶液)(1.3)に
準じる。ただし,亜鉛0.66g及び硝酸 (1+1) 10mlを用い,ファクターの計算式の分母は,0.653 9と
する。
e) キシレノールオレンジ溶液 調製方法及び保存方法は,JIS K 8001の4.4(表8)による。
9.2.3
操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 滴定 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から正しく50mlをビーカー
(300ml) に分取し,表3によって0.02mol/L CyDTA溶液[9.2.2c)]の一定量を正しく加え,水で約100ml
に薄める。かき混ぜながらアンモニア水 (1+1) でpH1.5とし(pH計使用),ヘキサメチレンテトラ
ミン[9.2.2b)]6gを加え,かき混ぜて溶解する。キシレノールオレンジ溶液[9.2.2e)]3,4滴を指示薬とし
て加え,0.02mol/L亜鉛溶液[9.2.2d)]で滴定する。終点付近では,よくかき混ぜながらゆっくりと滴定
し,黄色がわずかに赤みを帯びる点を終点とする。
表3 0.02mol/L CyDTA溶液の添加量
酸化アルミニウム,その他(8)の
含有率の合計
mass%
0.02mol/L CyDTA溶液の添加量
ml
50 以上 60 未満
35
60 以上 70 未満
40
70 以上 80 未満
45
80 以上
50
注(8) 酸化鉄 (III),酸化チタン (IV),酸化ジルコニウム,酸化マ
ンガン (II) などがCyDTAと反応してキレートを生成する。
9.2.4
空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて,9.2.3の操作を行う。
ただし,空試験液の分取量及び0.02mol/L CyDTA溶液の添加量は,試料溶液の場合と同じにする。
8
M 8856 : 1998
9.2.5
計算 試料中の酸化アルミニウムの含有率は,次の式によって算出する。
100
500
/
50
6
019
001
.0
)
(
1
2
3
2
×
×
×
×
−
=
m
F
V
V
O
Al
−[(Fe2O3+TiO2)×0.638+ZrO2×0.414+MnO×0.719]
ここに, Al2O3: 試料中の酸化アルミニウムの含有率 (mass%)
V1: 9.2.3による0.02mol/L亜鉛溶液の使用量 (ml)
V2: 9.2.4による0.02mol/L亜鉛溶液の使用量 (ml)
F: 0.02mol/L亜鉛溶液のファクター
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
Fe2O3: 酸化鉄 (III) の含有率 (mass%)
TiO2: 酸化チタン (IV) の含有率 (mass%)
ZrO2: 酸化ジルコニウムの含有率 (mass%)
MnO: 酸化マンガン (II) の含有率 (mass%)
10. 酸化鉄 (III) の定量方法
10.1 定量方法の区分 酸化鉄 (III) の定量方法は,次のいずれかによる。
a) 1, 10−フェナントロリン吸光光度分析法
b) ICP発光分光分析法
10.2 1, 10−フェナントロリン吸光光度分析法
10.2.1 原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取し,酒石酸でチタンをマスキングし,L (+) −アスコルビン
酸で鉄を還元して1,10−フェナントロリンを加え,酢酸アンモニウムでpHを調節して呈色させ,吸光度
を測定する。
10.2.2 試薬 試薬は,次による。
a) 酒石酸溶液 (100g/L) JIS K 8532に規定する酒石酸を用いる。
b) 酢酸アンモニウム溶液 (200g/L) JIS K 8359に規定する酢酸アンモニウムを用いる。
c) L (+) −アスコルビン酸溶液 8.2.2j)による。
d) 1, 10−フェナントロリン溶液 JIS K 8789に規定する1,10−フェナントロリン一水和物1gを温水に溶
かして1 000mlとする。冷暗所に保存する。保存中に着色したときは,新しく調製する。
e) 標準鉄溶液 (0.05mgFe/ml) 鉄標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)(2)表6の硝酸溶液]の原液
(1mgFe/ml) を使用の都度,水で正しく20倍に薄める。
10.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 呈色 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から表4によって一定量を100ml
の全量フラスコに分取し,水で約60mlに薄め,酒石酸溶液[10.2.2a)]5ml及びL (+) −アスコルビン
酸溶液[10.2.2c)]2mlを加えて振り混ぜ,1,10-フェナントロリン溶液[10.2.2d)]10ml,酢酸アンモニウム
溶液[10.2.2b)]10mlを加え,その都度振り混ぜた後,水で標線まで薄め,30分間放置する。
表4 試料溶液の分取量
酸化鉄 (III) の含有率
mass%
分取量
ml
1.0 未満
40
1.0 以上 2.0 未満
20
2.0 以上 4.0 未満
10
b) 吸光度の測定 呈色液の一部を吸光光度分析装置の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液として波長
9
M 8856 : 1998
510nm付近における吸光度を測定する。
10.2.4 空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて10.2.3の操作を行う。
空試験液の分取量は,試料溶液の場合と同じにする。
10.2.5 検量線の作成 標準鉄溶液[10.2.2e)]から正しく0〜10ml(鉄として0〜0.50mg)を数個の100mlの
全量フラスコに段階的に取り,以下10.2.3の操作を行い,得た吸光度と鉄の量との関係線を作成し,原点
を通るように平行移動して検量線とする。
10.2.6 計算 10.2.3b)及び10.2.4で得た吸光度と10.2.5で作成した検量線とから鉄の量を求め,試料中の
酸化鉄 (III) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
430
.1
)
(
2
1
3
2
×
×
×
−
=
V
m
A
A
O
Fe
ここに, Fe2O3: 酸化鉄 (III) の含有率 (mass%)
A1: 10.2.3b)による鉄の検出量 (g)
A2: 10.2.4による鉄の検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
V: 試料溶液 (A) 又は (B) の分取量 (ml)
10.3 ICP発光分光分析法
10.3.1 原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取して定容とし,その一部を取り,ICP発光分光装置を用いて
鉄の分析線の発光強度を測定する。
10.3.2 試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸 (1+4) 8.2.2a)による。
b) アルミニウム溶液 (2mgAl2O3/ml) 8.4.2b)による。
c) 標準鉄溶液 (1mgFe/ml) 鉄標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)表6の硝酸溶液]の原液と同じ。
d) 標準チタン溶液 (1mgTi/ml) チタン(99.9mass%以上)1.00gをビーカー (300ml) に取り,時計皿で
覆って塩酸 (1+1) 200mlを加え,加熱して溶解する。常温まで冷却後,時計皿を水洗して除き,溶液
を1 000mlの全量フラスコに移し入れ,塩酸 (1+9) で標線まで薄める。
e) 標準マンガン溶液 (0.01mgMn/ml) マンガン標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)(2)表6−硝酸溶液]
を用いる。
f)
標準混合溶液 (I) (0.05mgFe+0.05mgTi+0.0005mgMn/ml) 標準鉄溶液,標準チタン溶液及び標準マ
ンガン溶液をそれぞれ正しく5mlを100mlの全量フラスコに取り,水で標線まで薄める。この溶液は
使用の直前に調製する。
g) マトリックス溶液 (I) 炭酸ナトリウム4.0g及びほう酸1.5gをプラスチックビーカー (100ml) には
かり取り,少量の水で湿す。時計皿で覆って塩酸 (1+1) 40mlを加えて分解し,加熱して二酸化炭素
を除いた後,常温まで冷却し,時計皿を水洗して取り除く。この溶液を250mlの全量フラスコに移し
入れ,水で標線まで薄める。直ちに乾いたプラスチック瓶に移し入れる。
h) 検量線用溶液(I) f)の標準混合溶液 (I) から正しく0〜20ml(鉄,チタンとしてそれぞれ0〜1.0mg及
びマンガンとして0〜0.010mg)の各種液量を段階的に数個の100ml全量フラスコに取り,それぞれに
g)のマトリックス溶液 (I) から正しく10ml,塩酸 (1+4) 5m1及び試料中の酸化アルミニウムの含有率
に応じてアルミニウム溶液[10.3.2b)]の一定量(9)を加え,水で標線まで薄める。
注(9) 酸化アルミニウムの含有率10mass%につきアルミニウム溶液1.0mlの割合とする。
10.3.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液 (C) の調製 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から正しく20ml
10
M 8856 : 1998
を100mlの全量フラスコに分取し,塩酸 (1+4) 5mlを加え,水で標線まで薄める。この溶液を試料溶
液 (C) とし,ICP発光分光分析法による酸化鉄 (III),酸化チタン (IV) 及び原子吸光分析法又はICP
発光分光分析法による酸化マンガン (II) の定量に用いる。
b) 発光強度の測定 試料溶液 (C) の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,例え
ば,259.94nmにおける発光強度を測定する。
10.3.4 空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて10.3.3の操作を行う。
試料溶液 (C) に対応する溶液を空試験液 (C) とする。
10.3.5 検量線の作成 検量線用溶液 (I) [10.3.2h)] を用いて10.3.3b)の操作を行い,得た発光強度と鉄の量
との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
10.3.6 計算 10.3.3b)及び10.3.4で得た発光強度と10.3.5で作成した検量線とから鉄の量を求め,試料中
の酸化鉄 (III) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
20
430
.1
)
(
2
1
3
2
×
×
×
−
=
m
A
A
O
Fe
ここに, Fe2O3: 酸化鉄 (III) の含有率 (mass%)
A1: 10.3.3b)による鉄の検出量 (g)
A2: 10.3.4による鉄の検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
11. 酸化チタン (IV) の定量方法
11.1 定量方法の区分 酸化チタン (IV) の定量方法は,次のいずれかによる。
a) ジアンチピリルメタン吸光光度分析法
b) ICP発光分光分析法
11.2 ジアンチピリルメタン吸光光度分析法
11.2.1 原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取し,塩酸濃度を調節した後,L (+) −アスコルビン酸で鉄を
還元し,ジアンチピリルメタンを加えて呈色させ,吸光度を測定する。
11.2.2 試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸 (1+1) 8.2.2a)による。
b) L (+) −アスコルビン酸溶液 8.2.2j)による。
c) ジアンチピリルメタン溶液 JIS K 9565に規定するジアンチピリルメタン一水和物1gを塩酸 (1+4)
25mlに溶解し,水で100mlに薄める。
d) 標準チタン溶液 (0.01mgTi/ml) 標準チタン溶液[10.3.2d)]の原液 (1mgTi/ml) を使用の都度,水で正
しく100倍に薄める。
11.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 呈色 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から表5によって一定量を50mlの
全量フラスコに分取し,塩酸 (1+1) 5ml及びL (+) -アスコルビン酸溶液[11.2.2b)]2mlを加える。1分
後にジアンチピリルメタン溶液[11.2.2c)]15mlを加え,水で標線まで薄め,60分間放置する。
11
M 8856 : 1998
表5 試料溶液の分取量
酸化チタン (IV) の含有率
mass%
分取量
ml
1.0 未満
20
1.0 以上 2.0 未満
10
2.0 以上 4.0 未満
5
b) 吸光度の測定 呈色液の一部を吸光光度分析装置の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液として波長
390nm付近における吸光度を測定する。
11.2.4 空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて11.2.3の操作を行う。
ただし,空試験液の分取量は,試料溶液の場合と同じとする。
11.2.5 検量線の作成 標準チタン溶液[11.2.2 d)]から正しく0〜25ml[チタンとして0〜0.25mg]の各種液
量を段階的に数個の50mlの全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 5mlを添加した後,11.2.3a)のアスコルビン
酸添加以降の操作を行い,得た吸光度とチタンの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して
検量線とする。
11.2.6 計算 11.2.3b)及び11.2.4で得た吸光度と11.2.5で作成した検量線とからチタンの量を求め,試料
中の酸化チタン (IV) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
668
.1
)
(
2
1
2
×
×
×
−
=
V
m
A
A
TiO
ここに, TiO2: 酸化チタン (IV) の含有率 (mass%)
A1: 11.2.3b)によるチタンの検出量 (g)
A2: 11.2.4によるチタンの検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
V: 試料溶液 (A) 又は (B) の分取量 (ml)
11.3 ICP発光分光分析法
11.3.1 原理 試料溶液 (C) の一部を取り,ICP発光分光分析装置を用いてチタンの分析線の発光強度を
測定する。
11.3.2 試薬 試薬は,10.3.2による。
11.3.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 発光強度の測定 10.3.3a)で得た試料溶液 (C) の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中
に噴霧し,例えば,波長334.94nmにおける発光強度を測定する。
11.3.4 空試験 10.3.4で得た空試験液 (C) を用いて11.3.3a)の操作を行う。
11.3.5 検量線の作成 10.3.2h)の検量線用溶液 (I) を用いて11.3.3a)の操作を行い,得た発光強度とチタ
ンの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
11.3.6 計算 11.3.3a)及び11.3.4で得た発光強度と11.3.5で作成した検量線とからチタンの量を求め,試
料中の酸化チタン (IV) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
20
668
.1
)
(
2
1
2
×
×
×
−
=
m
A
A
TiO
ここに, TiO2: 酸化チタン (VI) の含有率 (mass%)
A1: 11.3.3a)によるチタンの検出量 (g)
A2: 11.3.4によるチタンの検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
12
M 8856 : 1998
12. 酸化ジルコニウムの定量方法
12.1 定量方法の区分 酸化ジルコニウムの定量方法は,次のいずれかによる。
a) キシレノールオレンジ吸光光度分析法
b) ICP発光分光分析法
12.2 キシレノールオレンジ吸光光度分析法
12.2.1 原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取し,塩酸濃度を調節した後,塩化ヒドラジニウム (2+) 溶液
で鉄を還元する。キシレノールオレンジを加えて呈色させ,吸光度を測定する。
12.2.2 試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸 (1+1) 8.2.2a)による。
b) アンモニア水 (1+1) 9.2.2a)による。
c) 塩化ヒドラジニウム (2+) 溶液 (150g/L) JIS K 8200に規定する塩化ヒドラジニウムを用いて調製
する。
d) キシレノールオレンジ溶液 (1g/L) 9.2.2e)による。
e) 標準ジルコニウム溶液 (0.01mgZr/ml) ジルコニウム(99.9mass%以上)0.100gを白金皿に取り,ふ
っ化水素酸 (1+9) 10mlを加えて溶解し,硫酸 (1+1) 2mlを加えて蒸発乾固する。放冷後,塩酸 (1
+9) で正しく1 000mlに薄めて原液 (0.1mgZr/ml) とする。この原液を使用の都度,塩酸 (1+9) で正
しく10倍に薄める。
f) p−ニトロフェノール溶液 (1g/L) JIS K 8721に規定するp−ニトロフェノールを用いて調製する。
12.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 酸濃度の推定 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から正しく10mlをビーカ
ー (100ml) に分取し,p−ニトロフェノール溶液[12.2.2f)]1滴を指示薬として加え,溶液が黄色になる
までアンモニア水 (1+1) を滴加する。このときのアンモニア水の使用量 (xml) を記録する。
b) 呈色 別に試料溶液 (A) 又は (B) から表6によって一定量を50mlの全量フラスコに分取し表6によ
って塩酸 (1+1) の一定量を加える。塩化ヒドラジニウム (2+) 溶液[12.2.2c)]15mlを加えて沸騰水中
で約15分間加熱し,冷却後,キシレノールオレンジ溶液[12.2.2d)]5.0mlを加え,水で標線まで薄める。
表6 試料溶液の分取量及び塩酸 (1+1) の添加量
酸化ジルコニウムの含有率
mass%
分取量
ml
塩酸 (1+1) の添加量
ml
0.2 未満
25
8−18/6 x
0.2 以上
10
8− 7/6 x
c) 吸光度の測定 呈色液の一部を吸光光度分析装置の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液として波長
535nm付近における吸光度を測定する。
12.2.4 空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて12.2.3の操作を行う。
12.2.5 検量線の作成 標準ジルコニウム溶液[12.2.2e)]から正しく0〜10ml(ジルコニウムとして0〜
0.10mg)の各種液量を段階的に数個の50mlの全量フラスコに取り,塩酸 (1+1) 8mlを加え,12.2.3b)塩化
ヒドラジニウム (2+) 添加以降の操作を行い,得た吸光度とジルコニウムの量との関係線を作成し,原点
を通るように平行移動して検量線とする。
12.2.6 計算 12.2.3c)及び12.2.4で得た吸光度と12.2.5で作成した検量線とからジルコニウムの量を求め,
試料中の酸化ジルコニウムの含有率を,次の式によって算出する。
13
M 8856 : 1998
100
500
/
351
.1
)
(
2
1
2
×
×
×
−
=
V
m
A
A
ZrO
ここに, ZrO2: 酸化ジルコニウムの含有率 (mass%)
A1: 12.2.3c)によるジルコニウムの検出量 (g)
A2: 12.2.4によるジルコニウムの検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
V: 試料溶液 (A) 又は (B) の分取量 (ml)
12.3 ICP発光分光分析法
12.3.1 原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取して定容とし,その一部を取りICP発光分光分析装置を用い
てジルコニウムの分析線の発光強度を測定する。
12.3.2 試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸 (1+1, 1+9) JIS K 8180に規定する塩酸と水を用いて調製する。
b) アルミニウム溶液 (2mgA1203/L) 8.4.2b)による。
c) 標準ジルコニウム溶液 (0.005mgZr/ml) 12.2.2e)の原液を使用の都度,塩酸 (1+9) で正しく20倍に
薄める。
d) マトリックス溶液 (I) 10.3.2g)による。
12.3.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液の調製 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から正しく20mlを
100mlの全量フラスコ中に分取し,塩酸 (1+9) で標線まで薄める。この溶液を沸騰水中で約15分間
加熱し,冷却後,ICP発光分光分析法による酸化ジルコニウムの定量に用いる。
b) 発光強度の測定 a)で得た溶液の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,例え
ば,波長343.82nmにおける発光強度を測定する。
12.3.4 空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて12.3.3の操作を行う。
12.3.5 検量線の作成 標準ジルコニウム溶液[12.3.2c)]から正しく0〜20ml(ジルコニウムとして0〜
0.10mg)の各種液量を段階的に数個の100mlの全量フラスコに取り,それぞれにマトリックス溶液
(I)[12.3.2d)]から正しく10ml,アルミニウム溶液[12.3.2b)]の一定量(9)を加え,塩酸 (1+9) で標線まで薄める。
これらの検量線用溶液を沸騰水中で約15分間加熱し,冷却後,12.3.3b)の操作を行い,得た発光強度とジ
ルコニウムの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
12.3.6 計算 12.3.3b)及び12.3.4で得た発光強度と12.3.5で作成した検量線とからジルコニウムの量を求
め,試料中の酸化ジルコニウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
20
351
.1
)
(
2
1
2
×
×
×
−
=
m
A
A
ZrO
ここに, ZrO2: 酸化ジルコニウムの含有率 (mass%)
A1: 12.3.3b)によるジルコニウムの検出量 (g)
A2: 12.3.4によるジルコニウムの検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
13. 酸化マンガン (II) の定量方法
13.1 定量方法の区分 酸化マンガン (II) の定量方法は,次のいずれかによる。
a) 原子吸光分析法
b) ICP発光分光分析法
13.2 原子吸光分析法
14
M 8856 : 1998
13.2.1 原理 試料溶液 (C) の一部を取り,原子吸光分析装置を用いてマンガンの分析線の吸光度を測定
する。
13.2.2 試薬 試薬は,10.3.2による。
13.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 吸光度の測定 10.3.3a)で得た試料溶液 (C) の一部を原子吸光分析装置の空気・アセチレンフレーム
中に噴霧し,波長279.5nmにおける吸光度を測定する。
13.2.4 空試験 10.3.4で得た空試験液 (C) を用いて13.2.3の操作を行う。
13.2.5 検量線の作成 10.3.2h)の検量線用溶液 (I) を用いて13.2.3a)の操作を行い,得た吸光度とマンガン
の量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
13.2.6 計算 13.2.3a)及び13.2.4で得た吸光度と13.2.5で作成した検量線とからマンガンの量を求め,試
料中の酸化マンガン (II) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
20
291
.1
)
(
2
1
×
×
×
−
=
m
A
A
MnO
ここに, MnO: 酸化マンガン (II) の含有率 (mass%)
A1: 13.2.3a)によるマンガンの検出量 (g)
A2: 13.2.4によるマンガンの検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
13.3 ICP発光分光分析法
13.3.1 原理 試料溶液 (C) の一部を取り,ICP発光分光装置を用いてマンガンの分析線の発光強度を測
定する。
13.3.2 試薬 試薬は,10.3.2による。
13.3.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 発光強度の測定 10.3.3a)で得た試料溶液 (C) の一部をICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴
霧し,例えば,波長257.61nmにおける発光強度を測定する。
13.3.4 空試験 10.3.4で得た空試験液 (C) を用いて13.3.3a)の操作を行う。
13.3.5 検量線の作成 10.3.2h)の検量線用溶液 (I) を用いて13.3.3a)の操作を行い,得た発光強度とマンガ
ンの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
13.3.6 計算 13.3.3a)及び13.3.4で得た発光強度と13.3.5で作成した検量線とからマンガンの量を求め,
試料中の酸化マンガン (II) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
20
291
.1
)
(
2
1
×
×
×
−
=
m
A
A
MnO
ここに, MnO: 酸化マンガン (II) の含有率 (mass%)
A1: 13.3.3a)によるマンガンの検出量 (g)
A2: 13.3.4によるマンガンの検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
14. 酸化りん (V) の定量方法
14.1 定量方法 酸化りん (V) の定量方法は,モリブデン青吸光光度分析法による。
14.2 モリブデン青吸光光度分析法
14.2.1 原理 試料溶液 (A) 又は (B) を分取し,酸濃度を調節した後,七モリブデン酸六アンモニウム及
びL (+) −アスコルビン酸を加えて加熱し,生じたモリブデン青の吸光度を測定する。
15
M 8856 : 1998
14.2.2 試薬 試薬は,次による。
a) 硫酸 (1+1) JIS K 8951に規定する硫酸と水を用いて調製する。
b) 水酸化ナトリウム溶液 (100g/L) JIS K 8576に規定する水酸化ナトリウムを用いて調製する。
c) 七モリブデン酸六アンモニウム溶液 JIS K 8905に規定する七モリブデン酸六アンモニウム四水和物
2gを温水約20mlに溶かし,必要ならばろ過し,硫酸 (1+1) 60mlを加えて水で100mlに薄める。
d) L (+) −アスコルビン酸溶液 8.2.2j)による。
e) 標準酸化りん (V) 溶液 (0.01mgP2O5/ml) JIS K 9007に規定するりん酸二水素カリウムを105℃で乾
燥してその0.191 7gを水に溶かし,正しく1 000mlに薄める。これを原液 (0.1mgP2O5/ml) とする。こ
の原液を使用の都度,水で正しく10倍に薄める。
f) p−ニトロフェノール溶液 12.2.2f)による。
14.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 呈色 8.2.4d)で得た試料溶液 (A) 又は8.3.4a)で得た試料溶液 (B) から正しく50mlを100mlの全量フ
ラスコに分取し,p−ニトロフェノール溶液[14.2.2f)]1滴を指示薬として加え,溶液が黄色となるまで
水酸化ナトリウム溶液[14.2.2b)]を滴加し,次に硫酸 (1+1) を滴加して無色とし,更に2,3滴を過剰
に加える。七モリブデン酸六アンモニウム溶液[14.2.2c)]10ml及びL (+) −アスコルビン酸溶液
[14.2.2d)]2mlを加えて振り混ぜ,水で標線まで薄める。沸騰水浴中で15分間加熱した後,流水中で冷
却する。
b) 吸光度の測定 呈色液の一部を吸光光度分析装置の吸収セル (10mm) に取り,水を対照液として波長
830nm付近における吸光度を測定する。
14.2.4 空試験 8.2.5で得た空試験液 (A) 又は8.3.5で得た空試験液 (B) を用いて14.2.3の操作を行う。
14.2.5 検量線の作成 標準酸化りん (V) 溶液[14.2.2e)]から正しく0〜15ml[酸化りん (V) として0〜
0.15mg]を数個の100ml全量フラスコに段階的に取り,14.2.3の操作を行い,得た吸光度と酸化りん (V) の
量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
14.2.6 計算 14.2.3b)及び14.2.4で得た吸光度と14.2.5で作成した検量線から酸化りん (V) の量を求め,
試料中の酸化りん (V) の含有率を,次の式によって算出する。
100
500
/
50
)
(
2
1
5
2
×
×
−
=m
A
A
O
P
ここに, P2O5: 酸化リン (V) の含有率 (mass%)
A1: 14.2.3b)による酸化りん (V) の検出量 (g)
A2: 14.2.4による酸化りん (V) の検出量 (g)
m: 8.2.3又は8.3.3による試料のはかり取り量 (g)
15. 酸化カルシウムの定量方法
15.1 定量方法の区分 酸化カルシウムの定量方法は,次のいずれかによる。
a) 原子吸光分析法
b) ICP発光分光分析法
15.2 原子吸光分析法
16
M 8856 : 1998
15.2.1 原理 試料をほう酸及び炭酸リチウムで融解し,融成物にふっ化水素酸及び硫酸を加えて加熱して
溶解し,加熱して酸化けい素 (IV) 及びほう酸を揮散させて蒸発乾固する。塩酸を加えて加熱して溶解し,
ランタンを加えて定容とする。この溶液の一部を取り,原子吸光分析装置を用いてカルシウムの分析線の
吸光度を測定する。
15.2.2 試薬 試薬は,次による。プラスチック瓶に保存する。
a) 塩酸 (1+1) 8.2.2a)による。
b) ふっ化水素酸 8.2.2b)による。
c) 硫酸 (1+1) 8.2.2d)による。
d) ほう酸 8.2.2e)による。
e) 炭酸リチウム ナトリウム含有率の低いもの。
f)
アルミニウム溶液 (10mgAl2O3/ml) アルミニウム溶液[8.4.2b)]の原液による。
g) ランタン溶液 1 100℃で強熱した酸化ランタン50gを塩酸 (1+1) 200mlに加熱して溶解し,冷却後,
水で1 000mlに薄める。
h) 標準カルシウム溶液 (1mgCa/ml) カルシウム標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)(2)表6]の原液を
用いる。
i)
標準マグネシウム溶液 (1mgMg/ml) マグネシウム標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)(2)表6−塩
酸溶液]の原液を用いる。
j)
標準ナトリウム溶液 (1mgNa/ml) ナトリウム標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)(2)表6]の原液を
用いる。
k) 標準カリウム溶液 (1mgK/ml) カリウム標準液[JIS K 8001の4.3(標準液)(2)表6]の原液を用い
る。
l)
標準混合溶液 (II) (0.05mgCa+0.05mgMg+0.05mgNa+0.1mgK/ml) 標準カルシウム溶液,標準マグ
ネシウム溶液,標準ナトリウム溶液から,それぞれ正しく5ml及び標準カリウム溶液から正しく10ml
を100mlの全量フラスコに取り,水で標線まで薄める。
m) マトリックス溶液 (II) e)の炭酸リチウム7.5gをプラスチックビーカー (100ml) にはかり取り,水
約20mlを加え,プラスチック時計皿で覆って硫酸 (1+1) 15mlを加えて分解する。加熱して二酸化炭
素を除去した後,常温まで冷却し,時計皿を水洗して取り除く。この溶液を250mlの全量フラスコに
移し,水で標線まで薄める。直ちに乾いたプラスチック瓶に移し入れる。
n) 検量線用溶液 (II) 1)の標準混合溶液 (II) から正しく0〜10ml(カルシウム,マグネシウム及びナト
リウムとして,それぞれ0〜0.50mg, カリウムとして0〜1.0mg)の各種液量を段階的に数個の100ml
の全量フラスコに取り,それぞれにm)のマトリックス溶液 (II) から正しく10ml, 塩酸 (1+1) 5mlと
試料中の酸化アルミニウムの含有率に応じてアルミニウム溶液[15.2.2f)]の一定量(10)及びランタン溶
液[15.2.2g)]10mlを加え,水で標線まで薄める。直ちに乾いたプラスチック瓶に移し入れる。
注(10) 酸化アルミニウムの含有率10mass%につきアルミニウム溶液1.5mlの割合とする。
15.2.3 試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,0.15gとする。
15.2.4 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液 (D) の調製 試料を白金皿(例えば,JIS H 6202に規定する75番)にはかり取り,ほう酸
[15.2.2d)]1.8g及び炭酸リチウム[15.2.2e)]0.3gを加えて混合した後,最初低温で加熱し,次第に昇温し,
最後は1 000℃で15〜30分間強熱する。放冷後,ふっ化水素酸15ml及び硫酸 (1+1) 1mlを加え,四
ふっ化エチレン樹脂時計皿で覆って砂浴上で加熱し,融成物を溶解する。時計皿を少量の水で洗浄し
17
M 8856 : 1998
て取り除き,再び加熱して白煙を激しく発生させる。放冷後,皿の内壁を少量の水で洗浄し,加熱し
て硫酸の白煙がなくなるまで蒸発乾固する。放冷後,塩酸 (1+1) 5ml及び水約20mlを加え,時計皿
で覆って水浴上で加熱して溶解する。必要ならば,JIS P 3801に規定するろ紙(5種C)を用いて不溶
物をろ過し,熱水で十分に洗浄する。溶液,ろ液及び洗液は,常温まで冷却した後100mlの全量フラ
スコに移し入れ,ランタン溶液[15.2.2g)]10mlを加え,冷却後,水で標線まで薄め直ちに乾いたプラス
チック瓶に移し入れる。この溶液を試料溶液 (D) とし,原子吸光分析法による酸化カルシウム,酸化
マグネシウム,酸化ナトリウム及び酸化カリウムの定量に用いる。
b) 吸光度の測定 試料溶液 (D) の一部を原子吸光分析装置の酸化二窒素・アセチレンフレーム中に噴霧
し,波長422.7nmにおける吸光度を測定する。
15.2.5 空試験 試料を用いないで,15.2.4の操作を行う。ただし,融解操作は行わない。試料溶液 (D) に
対応する溶液を空試験液 (D) とする。
15.2.6 検量線の作成 検量線用溶液 (II)[15.2.2n)]を用いて15.2.4b)の操作を行い,得た吸光度とカルシウ
ムの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
15.2.7 計算 15.2.4b)及び15.2.5で得た吸光度と15.2.6で作成した検量線とからカルシウムの量を求め,
試料中の酸化カルシウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
399
.1
)
(
2
1
×
×
−
=
m
A
A
CaO
ここに, CaO: 酸化カルシウムの含有率 (mass%)
A1: 15.2.4b)によるカルシウムの検出量 (g)
A2: 15.2.5によるカルシウムの検出量 (g)
m: 15.2.3による試料のはかり取り量 (g)
15.3 ICP発光分光分析法
15.3.1 原理 試料をほう酸及び炭酸リチウムで融解し,融成物にふっ化水素酸及び硫酸を加えて加熱して
溶解し,加熱して酸化けい素 (IV) 及びほう酸を揮散させて蒸発乾固する。塩酸を加えて溶解し,定容と
する。この溶液の一部を取り,ICP発光分光分析装置を用いてカルシウムの分析線の発光強度を測定する。
15.3.2 試薬 試薬は,15.2.2による。ただし,検量線用溶液は次のものを用いる。
a) 検量線用溶液 (III) 15.2.2n)によって調製する。ただし,ランタン溶液は加えない。
15.3.3 試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,0.15gとする。
15.3.4 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液 (E) の調製 15.2.4a)によって試料溶液を調製する。ただし,ランタン溶液は加えない。得
た溶液を試料溶液 (E) とし,ICP発光分光分析法による酸化カルシウム,酸化マグネシウム,酸化ナ
トリウム及び酸化カリウムの定量に用いる。
b) 発光強度の測定 試料溶液 (E) の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,例え
ば,波長393.37nmにおける発光強度を測定する。
15.3.5 空試験 試料を用いないで,15.3.4の操作を行う。試料溶液 (E) に対応する溶液を空試験液 (E) と
する。
15.3.6 検量線の作成 検量線用溶液 (III) [15.3.2a)]を用いて15.3.4b)の操作を行い,得た発光強度とカルシ
ウムの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
15.3.7 計算 15.3.4b)及び15.3.5で得た発光強度と15.3.6で作成した検量線とからカルシウムの量を求め,
試料中の酸化カルシウムの含有率を,次の式によって算出する。
18
M 8856 : 1998
100
399
.1
)
(
2
1
×
×
−
=
m
A
A
CaO
ここに, CaO: 酸化カルシウムの含有率 (mass%)
A1: 15.3.4b)によるカルシウムの検出量 (g)
A2: 15.3.5によるカルシウムの検出量 (g)
m: 15.3.3による試料のはかり取り量 (g)
16. 酸化マグネシウムの定量方法
16.1 定量方法の区分 酸化マグネシウムの定量方法は,次のいずれかによる。
a) 原子吸光分析法
b) ICP発光分光分析法
16.2 原子吸光分析法
16.2.1 原理 試料溶液 (D) の一部を取り,原子吸光分析装置を用いてマグネシウムの分析線の吸光度を
測定する。
16.2.2 操作 操作は,次の手順によって行う。
a) 吸光度の測定 15.2.4a)で得た試料溶液 (D) の一部を原子吸光分析装置の空気・アセチレンフレーム
中に噴霧し,波長285.2nmにおける吸光度を測定する。
16.2.3 空試験 15.2.5で得た空試験液 (D) を用いて16.2.2a)の操作を行う。
16.2.4 検量線の作成 検量線用溶液 (II) [15.2.2n)]を用いて16.2.2a)の操作を行い,得た吸光度とマグネシ
ウムの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
16.2.5 計算 16.2.2a)及び16.2.3で得た吸光度と16.2.4で作成した検量線とからマグネシウムの量を求め,
試料中の酸化マグネシウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
658
.1
)
(
2
1
×
×
−
=
m
A
A
MgO
ここに, MgO: 酸化マグネシウムの含有率 (mass%)
A1: 16.2.2a)によるマグネシウムの検出量 (g)
A2: 16.2.3によるマグネシウムの検出量 (g)
m: 15.2.3による試料のはかり取り量 (g)
16.3 ICP発光分光分析法
16.3.1 原理 試料溶液 (E) の一部を取り,ICP発光分光分析装置を用いてマグネシウムの分析線の発光強
度を測定する。
16.3.2 試薬 15.3.2による。
16.3.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 発光強度の測定 15.3.4a)で得た試料溶液 (E) の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中
に噴霧し,例えば,波長279.55nmにおける発光強度を測定する。
16.3.4 空試験 15.3.5で得た空試験液 (E) を用いて16.3.3a)の操作を行う。
16.3.5 検量線の作成 検量線用溶液 (III) [15.3.2a)]を用いて16.3.3a)の操作を行い,得た発光強度とマグネ
シウムの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
16.3.6 計算 16.3.3a)及び16.3.4で得た発光強度と16.3.5で作成した検量線とからマグネシウムの量を求
め,試料中の酸化マグネシウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
658
.1
)
(
2
1
×
×
−
=
m
A
A
MgO
19
M 8856 : 1998
ここに, MgO: 酸化マグネシウムの含有率 (mass%)
A1: 16.3.3a)によるマグネシウムの検出量 (g)
A2: 16.3.4によるマグネシウムの検出量 (g)
m: 15.3.3による試料のはかり取り量 (g)
17. 酸化ナトリウムの定量方法
17.1 定量方法の区分 酸化ナトリウムの定量方法は,次のいずれかによる。
a) 原子吸光分析法
b) フレーム光度分析法
c) ICP発光分光分析法
17.2 原子吸光分析法
17.2.1 原理 試料溶液 (D) の一部を取り,原子吸光分析装置を用いてナトリウムの分析線の吸光度を測
定する。
17.2.2 試薬 試薬は,15.2.2による。
17.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 吸光度の測定 15.2.4a)で得た試料溶液 (D) の一部を原子吸光分析装置の空気・アセチレンフレーム
中に噴霧し,波長589.0nmにおける吸光度を測定する。
17.2.4 空試験 15.2.5で得た空試験液 (D) を用いて17.2.3a)の操作を行う。
17.2.5 検量線の作成 検量線用溶液 (II) [15.2.2n)]を用いて17.2.3a)の操作を行い,得た吸光度とナトリウ
ムの量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
17.2.6 計算 17.2.3a)及び17.2.4で得た吸光度と17.2.5で作成した検量線とからナトリウムの量を求め,
試料中の酸化ナトリウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
348
.1
)
(
2
1
2
×
×
−
=
m
A
A
O
Na
ここに, Na2O: 酸化ナトリウムの含有率 (mass%)
A1: 17.2.3a)によるナトリウムのの検出量 (g)
A2: 17.2.4によるナトリウムの検出量 (g)
m: 15.2.3による試料のはかり取り量 (g)
17.3 フレーム光度分析法
17.3.1 原理 試料をほう酸及び炭酸リチウムで融解し,融成物にふっ化水素酸及び硫酸を加えて加熱して
溶解し,加熱して酸化けい素 (IV) 及びほう酸を揮散させ,蒸発乾固する。塩酸に溶解し,セシウムを加
えて定容とする。この溶液の一部を取り,フレーム光度分析装置を用いてナトリウムの分析線の発光強度
を測定する。
17.3.2 試薬 試薬は,15.2.2による。ただし,g)及びn)を次のものと置き換える。
a) セシウム溶液 (10gCs/L) 硝酸セシウム2.93gを水に溶かし,正しく200mlに薄める。
b) 検量線用溶液 (IV) 標準混合溶液 (II) [15.2.2l)]から正しく0〜10ml(カルシウム,マグネシウム,及
びナトリウムとして,それぞれ0〜0.50mg,カリウムとして0〜1.0mg)の各種液量を段階的に数個の
100mlの全量フラスコに取り,それぞれにマトリックス溶液 (II) [15.2.2m)]から正しく10ml,セシウム
溶液[17.3.2a)]10ml及び塩酸 (1+1) 5mlを加え,水で標線まで薄める。直ちに,乾いたプラスチック
瓶に移し入れる。
17.3.3 試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,0.15gとする。
20
M 8856 : 1998
17.3.4 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液 (F) の調製 15.2.4a)による。ただし,ランタン溶液の代わりにセシウム溶液[17.3.2a)]10ml
を加える。この溶液を試料溶液 (F) とし,フレーム光度分析法による酸化ナトリウム及び酸化カリウ
ムの定量に用いる。
b) 発光強度の測定 試料溶液 (F) の一部をフレーム光度分析装置の空気・燃料ガスフレーム中に噴霧し,
波長589.0nmにおける発光強度を測定する。
17.3.5 空試験 試料を用いないで17.3.4の操作を行う。試料溶液 (F) に対応する溶液を空試験液 (F) と
する。
17.3.6 検量線の作成 検量線用溶液 (IV) [17.3.2b)]を用いて17.3.4b)の操作を行い,得た発光強度とナト
リウムの量との関係線を作成し,検量線とする。
17.3.7 計算 17.3.4b)及び17.3.5で得た発光強度と17.3.6で作成した検量線とからナトリウムの量を求め,
試料中の酸化ナトリウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
348
.1
)
(
2
1
2
×
×
−
=
m
A
A
O
Na
ここに, Na2O: 酸化ナトリウムの含有率 (mass%)
A1: 17.3.4b)によるナトリウムの検出量 (g)
A2: 17.3.5によるナトリウムの検出量 (g)
m: 17.3.3による試料のはかり取り量 (g)
17.4 ICP発光分光分析法
17.4.1 原理 試料溶液 (E) の一部を取り,ICP発光分光分析装置を用いてナトリウムの分析線の発光強度
を測定する。
17.4.2 試薬 15.3.2による。
17.4.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 発光強度の測定 15.3.4a)で得た試料溶液 (E) の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中
に噴霧し,例えば,波長588.99nmにおける発光強度を測定する。
17.4.4 空試験 15.3.5で得た空試験液 (E) を用いて17.4.3a)の操作を行う。
17.4.5 検量線の作成 検量線用溶液 (III) [15.3.2a)]を用いて17.4.3a)の操作を行い,得た発光強度とナトリ
ウムの量との関係線を作成する。
17.4.6 計算 17.4.3a)及び17.4.4で得た発光強度と17.4.5で作成した検量線とからナトリウムの量を求め,
試料中の酸化ナトリウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
348
.1
)
(
2
1
2
×
×
−
=
m
A
A
O
Na
ここに, Na2O: 酸化ナトリウムの含有率 (mass%)
A1: 17.4.3a)によるナトリウムの検出量 (g)
A2: 17.4.4によるナトリウムの検出量 (g)
m: 15.3.3による試料のはかり取り量 (g)
18. 酸化カリウムの定量方法
18.1 定量方法の区分 酸化カリウムの定量方法は,次のいずれかによる。
a) 原子吸光分析法
b) フレーム光度分析法
21
M 8856 : 1998
c) ICP発光分光分析法
18.2 原子吸光分析法
18.2.1 原理 試料溶液 (D) の一部を取り,原子吸光分析装置を用いてカリウムの分析線の吸光度を測定
する。
18.2.2 試薬 試薬は,15.2.2による。
18.2.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 吸光度の測定 15.2.4a)で得た試料溶液 (D) の一部を原子吸光分析装置の空気・アセチレンフレーム
中に噴霧し,波長766.5nmにおける吸光度を測定する。
18.2.4 空試験 15.2.5で得た空試験液 (D) を用いて18.2.3a)の操作を行う。
18.2.5 検量線の作成 検量線用溶液 (II) [15.2.2n)]を用いて18.2.3a)の操作を行い,得た吸光度とカリウム
量との関係線を作成し,原点を通るように平行移動して検量線とする。
18.2.6 計算 18.2.3a)及び18.2.4で得た吸光度と18.2.5で作成した検量線とからカリウムの量を求め,試
料中の酸化カリウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
205
.1
)
(
2
1
2
×
×
−
=
m
A
A
O
K
ここに, K2O: 酸化カリウムの含有率 (mass%)
A1: 18.2.3a)によるカリウムの検出量 (g)
A2: 18.2.4によるカリウムの検出量 (g)
m: 15.2.3による試料のはかり取り量 (g)
18.3 フレーム光度分析法
18.3.1 原理 試料溶液 (F) の一部を取り,フレーム光度分析装置を用いてカリウムの分析線の発光強度
を測定する。
18.3.2 試薬 試薬は,17.3.2による。
18.3.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 発光強度の測定 17.3.4a)で得た試料溶液 (F) の一部をフレーム光度分析装置の空気・燃料ガスフレ
ーム中に噴霧し,波長766.5nmにおける発光強度を測定する。
18.3.4 空試験 17.3.5で得た空試験液 (F) を用いて18.3.3a)の操作を行う。
18.3.5 検量線の作成 検量線用溶液 (IV) [17.3.2b)]を用いて18.3.3a)の操作を行い,得た発光強度とカリ
ウムの量との関係線を作成し,検量線とする。
18.3.6 計算 18.3.3a)及び18.3.4で得た発光強度と18.3.5で作成した検量線とからカリウムの量を求め,
試料中の酸化カリウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
205
.1
)
(
2
1
2
×
×
−
=
m
A
A
O
K
ここに, K2O: 酸化カリウムの含有率 (mass%)
A1: 18.3.3a)によるカリウムの検出量 (g)
A2: 18.3.4によるカリウムの検出量 (g)
m: 17.3.3による試料のはかり取り量 (g)
18.4 ICP発光分光分析法
18.4.1 原理 試料溶液 (E) の一部を取り,ICP発光分光分析装置を用いてカリウムの分析線の発光強度を
測定する。
18.4.2 試薬 15.3.2による。
22
M 8856 : 1998
18.4.3 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 発光強度の測定 15.3.4a)で得た試料溶液 (E) の一部をICP発光分光分析装置のアルゴンプラズマ中
に噴霧し,例えば,波長766.49nmにおける発光強度を測定する。
18.4.4 空試験 15.3.5で得た空試験液 (E) を用いて18.4.3a)の操作を行う。
18.4.5 検量線の作成 検量線用溶液 (III) [15.3.2a)]を用いて18.4.3a)の操作を行い,得た発光強度とカリウ
ムの量との関係線を作成する。
18.4.6 計算 18.4.3a)及び18.4.4で得た発光強度と18.4.5で作成した検量線とからカリウムの量を求め,
試料中の酸化カリウムの含有率を,次の式によって算出する。
100
205
.1
)
(
2
1
2
×
×
−
=
m
A
A
O
K
ここに, K2O: 酸化カリウムの含有率 (mass%)
A1: 18.4.3a)によるカリウムの検出量 (g)
A2: 18.4.4によるカリウムの検出量 (g)
m: 15.3.3による試料のはかり取り量 (g)
19. 硫黄の定量方法
19.1 定量方法 硫黄の定量方法は,炭酸ナトリウム・硝酸カリウム融解−硫酸バリウム重量分析法によ
る。
19.2 炭酸ナトリウム・硝酸カリウム融解−硫酸バリウム重量分析法
19.2.1 原理 試料を炭酸ナトリウム及び硝酸カリウムで融解し,熱水で温浸して不溶物をろ過する。ろ液
に塩酸を加えて酸性として加熱し,塩化バリウムを加えて生成した硫酸バリウムの沈殿をろ過,強熱して
質量をはかる。
19.2.2 試薬 試薬は,次による。a)〜i)はプラスチック瓶に保存する。
a) 塩酸 (1+1) 8.2.2a)による。
b) 炭酸ナトリウム 8.2.2g)による。
c) 硝酸カリウム JIS K 8548に規定する硝酸カリウムを用いる。
d) 炭酸ナトリウム溶液 (5g/L) 19.2.2b)を用いて調製する。
e) 塩化バリウム溶液 JIS K 8155に規定する塩化バリウム二水和物10gを水100mlに溶解する。
f)
硝酸銀溶液 (10g/L) JIS K 8550に規定する硝酸銀を用いて調製する。
g) エタノール (95) JIS K 8102に規定するエタノール (95) を用いる。
h) 標準硫酸塩溶液 (0.1mgS/ml) JIS K 8987に規定する硫酸ナトリウム0.443gを水に溶かし,水で正し
く1 000mlに薄める。
i)
メチルオレンジ溶液 調製方法及び保存方法は,JIS K 8001の4.4(指示薬)表7による。
19.2.3 試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,2.00gとする。
19.2.4 操作 定量操作は,次の手順によって行う。
a) 試料溶液の調製 試料を白金るつぼ(例えば,JIS H 6201に規定する,30番)にはかり取り,炭酸ナ
トリウム[19.2.2b)]10g及び硝酸カリウム[19.2.2c)]0.2gを加えて混合する。ふたをして電気炉に入れ,
徐々に1000℃まで昇温し,この温度に30分間保った後,放冷する。るつぼ及びふたを水100mlを入
れたプラスチックビーカー (300ml) に移し入れ,エタノール (95) [19.2.2g)]2滴を加え,時計皿で覆っ
て水浴上で加熱し,融成物を温浸する。るつぼとふたを取り出し,ゴム付きガラス棒で残分をこすり
23
M 8856 : 1998
落とし,熱水で洗浄する。JIS P 3801に規定するろ紙(5種B)を用いて不溶物をろ過し,熱炭酸ナト
リウム溶液[19.2.2d)]で洗浄する。ろ液及び洗液はプラスチックビーカー (300ml) に受ける。
b) 硫酸バリウムの沈殿生成・ひょう量 ろ液及び洗液に標準硫酸塩溶液[19.2.2h)]から正しく30ml及び
メチルオレンジ溶液[19.2.2i)]1,2滴を加え,かき混ぜながら塩酸 (1+1) を滴加して溶液が変色する
まで中和した後,更に5mlを加え,ガラス製ビーカー (500ml) に移す。プラスチックビーカーを水洗
してその洗液もガラス製ビーカーに加え,時計皿で覆って加熱し,二酸化炭素の気泡が発生しなくな
るまで煮沸する。必要あれば加熱して濃縮し,約200mlとする。
かき混ぜながら熱塩化バリウム溶液[19.2.2e)]10mlを滴加し,水浴上で2時間加熱した後,一夜間放
置する。JIS P 3801に規定するろ紙(5種C)を用いて沈殿をろ過し,熱水で十分に洗浄する(11)。沈
殿及びろ紙は,質量既知の白金るつぼ(例えば,JIS H 6201に規定する30番)(1)に移し入れ,燃えな
いようにろ紙を灰化し,825±25℃で30分間強熱し,デシケーター中で放冷した後,質量をはかる。
注(11) 洗液の最後の一部を取り,硝酸銀溶液を加えて白色沈殿が生じないことを確かめる。この洗液
の容量を記録しておき,空試験の洗液量をこれと同じにする。
19.2.5 空試験 試料を用いないで19.2.4の操作を行う。ただし,融解操作は行わない。
19.2.6 計算 試料中の硫黄の含有率は,次の式によって算出する。
100
4
137
.0
)
(
2
1
×
×
−
=
m
m
m
S
ここに,
S: 硫黄の含有率 (mass%)
m1: 19.2.4b)による硫酸バリウムの質量 (g)
m2: 19.2.5による硫酸バリウムの質量 (g)
m: 19.2.3による試料のはかり取り量 (g)
付表1 引用規格
JIS H 6201 化学分析用白金るつぼ
JIS H 6202 化学分析用白金皿
JIS K 0050 化学分析方法通則
JIS K 0115 吸光光度分析通則
JIS K 0116 発光分光分析通則
JIS K 0121 原子吸光分析通則
JIS K 8001 試薬試験方法通則
JIS K 8085 アンモニア水(試薬)
JIS K 8102 エタノール (95) (試薬)
JIS K 8155 塩化バリウム二水和物(試薬)
JIS K 8180 塩酸(試薬)
JIS K 8200 塩化ヒドラジニウム (2+)
JIS K 8359 酢酸アンモニウム(試薬)
JIS K 8532 L (+) −酒石酸(試薬)
JIS K 8548 硝酸カリウム(試薬)
JIS K 8550 硝酸銀(試薬)
JIS K 8576 水酸化ナトリウム(試薬)
24
M 8856 : 1998
JIS K 8625 炭酸ナトリウム(試薬)
JIS K 8721 p−ニトロフェノール(試薬)
JIS K 8789 1,10−フェナントロリン一水和物(試薬)
JIS K 8819 ふっ化水素酸(試薬)
JIS K 8847 ヘキサメチレンテトラミン(試薬)
JIS K 8863 ほう酸(試薬)
JIS K 8905 七モリブデン酸六アンモニウム四水和物(試薬)
JIS K 8951 硫酸(試薬)
JIS K 8987 硫酸ナトリウム(試薬)
JIS K 9007 りん酸二水素カリウム(試薬)
JIS K 9502 L (+) −アスコルビン酸(試薬)
JIS K 9565 ジアンチピリルメタン一水和物(試薬)
JIS P 3801 ろ紙(化学分析用)
JIS R 1301 化学分析用磁器るつぼ
JIS R 3503 化学分析用ガラス器具
JIS Z 8401 数値の丸め方
JIS Z 8402 分析・試験の許容差通則
JIS Z 8801 試験用ふるい
原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
* 福 浦 雄 飛
福井工業大学
(委員)
* 富 田 育 男
通商産業省生活産業局窯業建材課
* 高 木 譲 一
工業技術院標準部材料規格課
岡 井 貴 司
工業技術院地質調査所
矢 島 祥 行
科学技術庁無機材質研究所
(分科会主査)
布 施 美智雄
前・セイミケミカル株式会社
藤 貫 正
前・社団法人日本分析化学会
種 村 茂
共立窯業原料株式会社
朝 倉 秀 夫
品川白煉瓦株式会社
板 倉 正 勝
東芝セラミックス株式会社
竹 内 光 男
鳴海製陶株式会社
生 川 章
日本ガイシ株式会社
丸 田 俊 久
秩父小野田株式会社
杉 崎 満寿雄
旭硝子株式会社
多 田 格 三
フジ化学研究所
船 戸 已知雄
前・日本セメント株式会社
鈴 木 由 郎
社団法人日本セラミックス協会
▽ 林 勝
株式会社東芝研究開発センター
▽ 為 則 裕 之
日本板硝子株式会社
▽ 丸 山 軍四郎
三菱マテリアル株式会社
備考 *印は本委員会委員,▽印は分科会委員,無印は本委員
会員と分科会委員を兼ねる。