2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8719-1990
鉄鉱石ペレット−体積測定方法
Iron ore pellets−Determination of volume
1. 適用範囲 この規格は,鉄鉱石ペレット(以下,ペレットという。)の体積測定方法について規定する。
備考 この規格の引用規格を,次に示す。
JIS K 2203 灯油
JIS K 8219 オレイン酸ナトリウム(試薬)
JIS M 8715 鉄鉱石ペレット−膨れ試験方法
JIS Z 8401 数値の丸め方
2. 一般事項 数値の丸め方は,JIS Z 8401による。
3. 方法の種類 ペレットの体積測定方法は,次のいずれかによる。
(1) オレイン酸ナトリウム・ケロシン法 ペレットの水中での浮力を利用する測定方法。
(2) 水銀法 ペレットの水銀中での浮力を利用する測定方法。
4. オレイン酸ナトリウム・ケロシン法
4.1
概要 ペレットをオレイン酸ナトリウム水溶液に浸し(漬)した後,灯油に浸しし,その表面にオ
レイン酸ナトリウム水溶液の被膜を作り,その試料の空気中における質量及び水上における見掛質量を求
め,それらの差を水の密度で割って体積を求める。
4.2
装置及び器具 装置及び器具は,次による。
(1) 乾燥器 温度を105±5℃に調節できるもの。
(2) 試薬浸し用試料かご 試料をオレイン酸ナトリウム水溶液又は灯油に浸しするためのもの。オレイン
酸ナトリウム水溶液及び灯油で変質しない材料を用い,オレイン酸ナトリウム水溶液用と灯油用をそ
れぞれ準備する[付図1(1)参照]。
備考 試料かごは,揺すりながら気泡の除去を促進するため,試料が壊れないようにするため,及び
試料表面に目的の溶液を均質に吸着させるために用いなければならない。
(3) 測定用試料かご 試料とかごの接触部に気泡が付着しにくいように,接触面積をできるだけ小さくし,
かご自体にも気泡が付着しにくいものを用いる[付図1(1)参照]。
(4) 試薬浸し用容器 容器はガラス製とし,オレイン酸ナトリウム水溶液用と灯油用をそれぞれ準備する。
(5) 測定用水容器 水中で試料及びかごの見掛質量を測定するとき,水面の高さが大きく変化しないよう
な大きさのもの。
(6) パック容器 スポンジとガーゼで構成し,ガーゼ面でオレイン酸ナトリウム水溶液又は灯油に浸し後
の試料表面に付着した試薬の泡など過剰なものをふき取るためのもの。ガーゼは4枚重ねとする[付
2
M 8719-1990
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
図1(2)参照]。
パック容器は,オレイン酸ナトリウム水溶液用と灯油用をそれぞれ準備する。
(7) つり具 測定用試料かごを天びんにつるすためのもので,釣糸(直径約0.3mm)を使用する。かごが
安定するために,天びん皿より質量の大きいおもり付きのものを用いるとよい[付図1(4)参照]。
(8) 水容器の置き台 木製又は鋼製のもの。
備考 静電気の影響を避けるため,アクリル樹脂などのプラスチック製のものは用いないほうがよい。
(9) はかり(天びん) 感量が0.001g以下のもの。
(10) 温度計 1目量が0.5℃以下のもの。
4.3
水及び試薬 測定に用いる水及び試薬は,次による。
(1) 水 蒸留水又はイオン交換水を用いる。その使用は,試料12個を限度として新しいものに取り替える。
(2) オレイン酸ナトリウム水溶液 JIS K 8219に規定するオレイン酸ナトリウムの0.1mol/l水溶液を用い
る。その使用は,試料12個を限度として新しいものに取り替える。
(3) 灯油 JIS K 2203に規定する1号を用いる。その使用は,試料12個を限度として新しいものに取り替
える。
4.4
測定試料の調製 試験試料を水洗いし,105±5℃の温度で240分以上乾燥し,必要な測定個数(ペ
レットの個数)を無作為に選んで,測定試料とする。1回の測定試料はペレット1個とする。
JIS M 8715に規定する膨れ試験の場合には,体積測定後の試料を105±5℃の温度で240分以上乾燥し,
還元試験に用いる。還元後の試料を,再び測定試料とする。
備考 試験試料の水洗いには,水道水を使用してもよい。
4.5
操作 測定操作は,次の手順による。
(1) 試料をオレイン酸ナトリウム水溶液浸し用試料かごに入れ,オレイン酸ナトリウム水溶液 [4.3(2)] に
20分間浸しする[付図1(3)参照]。
(2) オレイン酸ナトリウム水溶液浸し後の試料をオレイン酸ナトリウム水溶液用パック容器に入れ,約10
秒間軽く押さえる。次に,ガーゼの位置を変え,試料を垂直方向に約90°回転させてガーゼの新しい
面を用いて,更に約10秒間軽く押さえる。
ガーゼは常に新しい面を用いる。
(3) (2)の操作を終えた試料を直ちに灯油浸し用試料かごに入れ,灯油 [4.3(3)] に10秒間浸しする[付図
1(3)参照]。
(4) 灯油浸し後の試料は,灯油用パック容器に入れ,(2)と同じ操作を行う。
(5) 試料を3分間放置した後,試料の空気中の質量 (m0) (1)を測定する。
(6) 直ちに測定用試料かごに試料を入れて天びんにつるし,水中に浸しする。その際,かごを揺すって気
泡を除去し,1分間浸しした後,かご込み試料が水中に沈んでいる状態の見掛質量 (m1) (1)を量る。
備考 測定用試料かごは,気泡が付着しないように,あらかじめ水中に浸しして水になじませておく。
(7) 試料を測定用試料かごから取り出し,そのかごを再び水中に浸しし,かごの水中の見掛質量 (m2)(1)
を量る。
(8) 用いた水の温度を測定し,その温度における水の密度(2)を物理定数表から求める。
注(1) 小数点以下3けた(小数点以下4けた以下は切り捨てる。)まで求める。
(2) 有効けた数は,4けたとする。
備考 (7)の操作で得られるm2の見掛質量を天びんの0点にしておき,(6)の操作で直接,試料の水中
の見掛質量を測定し,この値を4.6の式中の (m1−m2) としてもよい。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
4.6
計算
体積は,次の式によって算出し,JIS Z 8401によって小数点以下3けたに丸める。
1
2
1
0
)
(
ρ
m
m
m
V
−
−
=
ここに,
V: 試料の体積 (cm3)
m0: 試料の空気中の質量 (g)
m1: 試薬浸し用試料かごと試料の水中の見掛質量 (g)
m2: かごの水中の見掛質量 (g)
ρ1: 測定温度における水の密度 (g/cm3)
5. 水銀法
5.1
概要 試料の質量と,測定試料をバランス系(3)の水銀中に押し込むために加えた分銅の質量との和
を求め,それを水銀の密度で割って体積を求める。
注(3) バランス系とは,付図2の①〜⑧,⑪及び⑫を総称したものを示す。
5.2
装置及び器具 装置及び器具は,次による。
(1) 試験装置 バランス系(3)の水銀中に浸しされる部分は,その表面が水銀と合金を作らないような材料
を用いる。浮子は,ペレットの見掛密度よりやや小さい密度の材料で作る。水銀容器の深さは,150mm
程度とし,使用する最小の分銅の単位は0.01gとする(付図2参照)。
(2) 乾燥器 温度を105±5℃に調節できるもの。
(3) はかり 感量が0.001g以下のもの。
(4) 温度計 1目量が0.5℃以下のもの。
5.3
試料 1回の測定試料は,105±5℃の温度で240分以上乾燥したペレット1個とする(4)。
注(4) あらかじめ試料からはがれやすい付着物をよく取り除いておく。
5.4
操作 測定操作は,次の手順による。
(1) 試料1個の質量 (m0) (5)を量る。
(2) バランス系の試料押さえ具部分を水銀の中に押し込み,分銅皿に分銅を載せて,すべての指針の先端
を水銀面に接触させる。バランス系を手で軽く水銀中に押し込み,これを放置して静止したとき,す
べての指針の先端が初めと同じように水銀面に接するかどうかを確認する。もし,初めの位置に戻ら
ないときは,再び分銅及び調整ねじで調節し,すべての指針が水銀面に接するまで同じ操作を繰り返
す。
(3) バランス系を水銀面から軽く持ち上げて,試料を試料押さえ具に装入し,(2)と同じ操作を行い,その
ときに加えた分銅の質量 (m1) を読み取る(6)。
(4) 水銀容器中の水銀温度を測定し,その温度における水銀の密度 (ρ2) (7)を物理定数表から求める。
注(5) 小数点以下3けたまで求める。
(6) 小数点以下2けたとする。
(7) 有効けた数は,4けたとする。
5.5
計算
体積は,次の式によって算出し,JIS Z 8401によって小数点以下3けたに丸める。
2
1
0
ρ
m
m
V
+
=
ここに,
V: 試料の体積 (cm3)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
m0: 試料の質量 (g)
m1: 測定時に加えた分銅の質量 (g)
ρ2: 測定温度における水銀の密度 (g/cm3)
関連規格 JIS M 8716 鉄鉱石ペレット−見掛密度及び気孔率の算出方法
5
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図1 オレイン酸ナトリウム・ケロシン法の装置(一例)
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
付図2 水銀法による体積測定装置(一例)
7
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
資源エネルギー部会 鉄鉱石物理試験方法専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員会長)
大 森 康 男
東北大学選鉱製錬研究所
池 田 要
工業技術院標準部
内 田 一 雄
三井物産株式会社
尾 内 武 男
日新製鋼株式会社
大 坪 孝 至
社団法人日本鉄鋼連盟
大 場 章
科学技術庁金属材料研究所
川 口 尊 三
住友金属工業株式会社
栗 山 孝 司
合同製鉄株式会社
佐々木 悦 夫
社団法人日本海事検定協会
澤 田 浩
丸紅株式会社
菅 原 実
川崎製鉄株式会社
杉 山 健
株式会社神戸製鋼所
高 松 保
三菱商事株式会社
中 島 一 郎
通商産業省基礎産業局
長 野 研 一
新日本製鐵株式会社
福 元 美 之
株式会社島津製作所
本 郷 英 夫
株式会社中山製鋼所
谷 中 秀 臣
NKK(日本鋼管株式会社)
(関係者)
馬 渕 勝 利
社団法人日本鉄鋼連盟
(事務局)
熊 川 誠 一
工業技術院標準部材料規格課
斉 藤 和 則
工業技術院標準部材料規格課
ISO/TC102日本委員会物理試験専門委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○ 谷 中 秀 臣
NKK(日本鋼管株式会社)
大 場 章
金属材料技術研究所
長 野 研 一
新日本製鐵株式会社
○ 肥 田 行 博
新日本製鐵株式会社
○ 坂 本 登
NKK(日本鋼管株式会社)
○ 菅 原 実
川崎製鉄株式会社
○ 川 口 尊 三
住友金属株式会社
○ 八 田 正 治
株式会社神戸製鋼所
杉 山 健
株式会社神戸製鋼所
○ 河 野 正 人
日新製鋼株式会社
田 藤 郁 治
合同製鉄株式会社
佐々木 悦 夫
社団法人日本海事検定協会
平 本 克 房
海外貨物検査株式会社
水 野 幸四郎
社団法人日本鉄鋼協会
○ 熊 川 誠 一
工業技術院標準部材料規格課
(顧問)
大 森 康 男
東北大学
(事務局)
馬 渕 勝 利
社団法人日本鉄鋼連盟
畑 中 恵
社団法人日本鉄鋼連盟
備考 ○印は,小委員会委員
文責 ISO/TC102日本委員会物理試験専門委員会事務局