2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
日本工業規格 JIS
M 8320 : 1999
チタン鉱石−りん定量方法
Titanium ores−Methods for determination of phosphorus
1. 適用範囲 この規格は,チタン鉱石中のりんの定量方法について規定する。
2. 引用規格 次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。この引用規格は,その最新版を適用する。
JIS M 8301 チタン鉱石の分析方法通則
3. 一般事項 分析に共通の一般事項は,JIS M 8301による。
4. 定量方法の区分 りんの定量方法は,次のいずれかによる。
a) モリブデン青吸光光度法 この方法は,りん含有率0.01% (m/m) 以上0.5% (m/m) 以下の試料につい
て適用する。
b) ICP発光分光法 この方法は,りん含有率0.01% (m/m) 以上0.5% (m/m) 以下の試料について適用す
る。
5. モリブデン青吸光光度法
5.1
要旨 試料を融解剤で融解し,融成物中のりんをりん酸塩として温水で抽出する。
過酸化水素と鉄を添加し,煮沸して過酸化物を分解した後,抽出残分を分離する。硫酸を加えて硫酸酸
性にし,七モリブデン酸六アンモニウムと硫酸ヒドラジニウムの硫酸酸性混合液を加え,沸騰水浴中で加
熱してモリブドりん酸の還元を促進し,ヘテロポリブルー錯体を生成させた後冷却し,生じたヘテロポリ
ブルー錯体の青色の吸光度を測定する。
5.2
試薬 試薬は,次による。
a) 硫酸 (1+3)
b) 炭酸ナトリウム(無水)
c) 過酸化水素水 (1+9)
d) 融解合剤A[炭酸ナトリウム(無水)1,過酸化ナトリウム2]
e) 融解合剤B(水酸化ナトリウム1,過酸化ナトリウム2)
f)
鉄(III)溶液 (10mgFe/ml) 硫酸アンモニウム鉄(III)・12水43gを200mlの水に溶解した後,硫酸 (1+
1) 20ml及び水を加えて500mlとする。
g) 呈色試薬溶液 七モリブデン酸六アンモニウム四水和物20gを温水100mlに溶解し,硫酸 (1+1)
600mlを加え,水で1 000mlとする。この溶液25ml,硫酸ヒドラジニウム溶液 (2g/l) 10m1及び水65ml
を混合する。この溶液は,使用の都度調製する。
2
M 8320 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
h) 標準りん溶液 (10μgP/ml) りん酸二水素カリウムを110℃で乾燥した後,デシケーター中で常温まで
冷却し,恒量としたもの4.39gをはかり取り,水に溶解して1 000mlの全量フラスコに移し入れ,水
で標線まで薄め,原液 (1mgP/ml) とする。この原液を使用の都度,必要量を正確に水で100倍に薄め
て標準りん溶液とする。
i)
p-ニトロフェノール溶液 (2.5g/l)
5.3
試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,1.0gとする。
5.4
操作
5.4.1
試料の分解 試料の分解は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかり取り,融解合剤A [5.2d)](1)8gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコ
ニウムるつぼに移し入れ,かき混ぜた後,約2gの炭酸ナトリウム(無水)を加えてその表面を覆う。
b) るつぼをふたで覆い,初めは低温で内容物が流動状になるまで穏やかに加熱し,徐々に温度を上げて
るつぼの底部が暗赤色の状態になるように保ち,るつぼを揺り動かしながら(2)約5分間加熱し,試料
を完全に融解する。
c) 放冷した後,融成物はるつぼとともにビーカー (300ml) に入れ,温水約100mlを少量ずつ加え,更に
温水約100mlを加え,るつぼを揺り動かしながら融成物を溶かす。るつぼを温水で洗いながら取り出
す。
d) 鉄(III)溶液 [5.2f)] 10ml及び過酸化水素水 (1+9) 5mlを加え,かき混ぜながら,徐々に加熱し,10〜
15分間煮沸(3)して過酸化物を分解した後,常温まで冷却する。
e) 溶液を沈殿とともに250mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
f)
乾いたろ紙(5種C)を用いてろ過し,最初の約50mlを捨て,次のろ液を試料溶液とする。
注(1) 融解合剤Aの代わりに融解合剤B [5.2e)] を用いることができる。
(2) 試料の分解を促進し,るつぼの浸食を防ぐために,るつぼを絶えず揺り動かすのがよい。
(3) 突沸を防ぐために,絶えずかき混ぜるのがよい。
5.4.2
呈色 呈色は,次の手順によって行う。
a) 試料中のりん含有率に応じて,表1に示す量の試料溶液を正確にビーカー (100ml) に分取する。
b) p-ニトロフェノール溶液[5.2i)]を2,3滴加え,硫酸 (1+3) で中和(4)し,煮沸して二酸化炭素を追い出
した後常温まで冷却し,硫酸 (1+3) 2.5mlを加える。
c) 100mlの全量フラスコに少量の水を用いて移し入れ,呈色試薬溶液[5.2g)]10mlを加えた後,水で約80ml
に薄める。
d) 沸騰水浴中で15〜20分間加熱した後常温まで冷却し,水で標線まで薄める。
表1 試料溶液の分取量
りん含有率%
試料溶液の分取量ml
0.1未満
25
0.1以上0.25未満
10
0.25以上0.5未満
5
注(4) 最後の1滴で指示薬の色が消える点を,終点とする。過剰に添加しないように注意する。
5.4.3
吸光度の測定 5.4.2c)で得た溶液の一部を分光光度計の吸収セル (10〜20mm) に取り,水を対照液
として波長820nm付近の吸光度を測定する。
5.5
空試験 試料を用いないで,試料と同じ操作を試料と並行して行う。
5.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
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2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 融解合剤A[5.2d)](5)8gと炭酸ナトリウム(無水)2gをニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコニ
ウムるつぼ(6)に移し入れ,5.4.1b)〜f)の手順に従って操作する。
b) a)で得たろ液を数個のビーカー (100ml) に分取(7)し,標準りん溶液[5.2h)]0〜10ml(りんとして0〜
100μg)を段階的に正確に加える。
c) 5.4.2b),c)及び5.4.3の手順に従って試料と並行して操作し,得た吸光度とりん量との関係線を作成し,
この関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
注(5) 試料の分解に用いたものと,同じ融解剤を用いる。
(6) 試料の分解に用いたものと,同じ種類のるつぼを用いる。
(7) 試料と,同じ分取量とする。
5.7
計算
a) 5.4.3及び5.5で得た吸光度と,5.6で作成した検量線とからそれぞれのりん量を求め,試料中のりん含
有率を,次の式によって算出する。
100
250
2
1
×
×
−
B
m
A
A
P=
ここに,
P: 試料中のりん含有率 [% (m/m)]
A1: 分取した試料溶液中のりん検出量 (g)
A2: 分取した空試験液中のりん検出量 (g)
B: 5.4.2a)で分取した試料溶液量 (ml)
m: 試料のはかり取り量 (g)
b) 試料中のりん含有率を酸化りん(V)で表す場合は,5.7a)で得た試料中のりん含有率 [% (m/m)] から,
次の式によって算出する。
P2O5=P×2.291
ここに, P2O5: 試料中の酸化りん (V) の含有率 [% (m/m)]
P: 5.7a)で得た試料中のりん含有率 [% (m/m)]
6. ICP発光分光法
6.1
要旨 試料を融解剤で融解し,融成物を塩酸に溶解した後,溶液をICP発光分光装置のアルゴンプ
ラズマ中に噴霧して,その発光強度を測定する。
6.2
試薬 試薬は,次による。
a) 塩酸
b) ほう酸
c) 水酸化カリウム
d) 融解合剤B(水酸化ナトリウム1,過酸化ナトリウム2)
e) 酸化チタン(IV)
f)
コバルト溶液 コバルト[99.5% (m/m) 以上]2.00gをはかり取り,ビーカー (300ml) に移し入れ硝
酸 (1+1) 40mlを加え,加熱して分解する。常温まで冷却した後,1 000mlの全量フラスコに水を用い
て移し入れ,水で標線まで薄める。この溶液1mlはコバルト2mgを含有する。
g) ポリエチレングリコールアルキルフェニールエーテル(以下,トリトンという。) 溶液トリトン20ml
をビーカー (300ml) にはかり取り,水50mlを加え加熱して溶解する。常温まで冷却した後,水で1
000mlに薄める。
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M 8320 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
h) 標準りん溶液 (100μgP/ml) りん酸二水素カリウムを110℃で乾燥した後,デシケーター中で常温ま
で冷却し,恒量としたもの0.439gをはかり取ってビーカー (300ml) に移し入れ,水約100mlを加え
て溶解する。この溶液を1 000mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ,水で標線まで薄める。
6.3
試料のはかり取り量 試料のはかり取り量は,0.5gとする。
6.4
操作
6.4.1
試料の分解 試料の分解は,次の手順によって行う。
a) 試料をはかり取り,融解合剤B[6.2d)](8)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコ
ニウムるつぼに移し入れ,かき混ぜる。
b) るつぼをふたで覆い,初めは低温で内容物が流動状になるまで穏やかに加熱し,徐々に温度を上げて
るつぼの底部が暗赤色の状態になるように保ち,るつぼを揺り動かしながら(2)約5分間加熱し,試料
を完全に融解する。
c) 放冷した後,融成物をるつぼとともにビーカー (300ml) に移し入れ,温水約100mlを少量ずつ加え,
るつぼを揺り動かしながら融成物を溶解し,ついで塩酸50mlを少量ずつ加え,るつぼを水で洗浄し
ながら取り出す。
d) 常温まで冷却した後,250mlの全量フラスコに水を用いて移し入れ(9)(10),水で標線まで薄める。
注(8) 融解合剤Bの代わりに水酸化カリウムとほう酸の混合物を用いることができる。水酸化カリウ
ムとほう酸の混合物を用いる場合は,試料をはかり取り,るつぼに移し入れ,水酸化カリウム
5g及びほう酸2gを加えてかき混ぜた後,表面が固化するまで電熱器上で加熱して,あらかじめ
水分を除去する。また,炭酸ナトリウム(無水)による表面の被覆は行わない。
(9) 耐ふっ化水素酸ネブライザーを用いるときは,トリトン溶液[6.2g)]5mlを加える。
(10) 6.4.2b)で強度比法を適用する場合は,コバルト溶液[6.2f)]を正確に5ml加える。
6.4.2
発光強度の測定 発光強度の測定は,次のいずれかによる。
a) 強度法 6.4.1d)で得た溶液の一部を,ICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長178.29nm
又は213.61nmにおけるりんの発光強度を測定する。
b) 強度比法(11) 6.4.1d)で得た溶液の一部を,ICP発光分光装置のアルゴンプラズマ中に噴霧し,波長
178.29nm又は213.61nmにおけるりんの発光強度及び228.62nmにおけるコバルトの発光強度を同時に
測定し,りんの発光強度とコバルトの発光強度との比を求める。
注(11) 2本以上のスペクトル線の波長による同時定量が可能な装置では,強度比法によることができる。
6.5
空試験 5.6の検量線作成操作において得られる,標準りん溶液を添加しない溶液の発光強度又は発
光強度比を空試験の発光強度又は発光強度比とする。
6.6
検量線の作成 検量線の作成は,次の手順によって行う。
a) はかり取った試料中に含まれる量とほぼ同量の酸化チタン(IV)を数個はかり取り,それぞれ融解合剤
B[6.2d)](5)5gを入れてあるニッケルるつぼ,アルミナるつぼ又はジルコニウムるつぼ(6)に移し入れ,
かき混ぜた後,6.4.1b)及びc)の手順に従って操作する。
b) 常温まで冷却した後,それぞれ別の250mlの全量フラスコに少量の水を用いて移し入れる。
c) それぞれの溶液に,標準りん溶液[6.2h)]0〜25ml(りんとして0〜2.5mg)を段階的に正確に加え(9)(10),
水で標線まで薄める。
d) 6.4.2によって試料と並行して操作し,得た発光強度又は発光強度比とりん量との関係線を作成し,そ
の関係線を原点を通るように平行移動して検量線とする。
6.7
計算
5
M 8320 : 1999
2019年7月1日の法改正により名称が変わりました。まえがきを除き,本規格中の「日本工業規格」を「日本産業規格」に読み替えてください。
a) 6.4.2及び6.5で得た発光強度又は発光強度比と,6.6で作成した検量線とからそれぞれのりん量を求め,
試料中のりん含有率を次の式によって算出する。
100
)
(
3
2
1
×
−
−
m
A
A
A
P=
ここに,
P: 試料中のりん含有率 [% (m/m)]
A1: 試料溶液中のりん検出量 (g)
A2: 空試験液中のりん検出量 (g)
A3: 6.6a)ではかり取った酸化チタン(IV)中のりん含有量 (g)
m: 試料のはかり取り量 (g)
b) 試料中のりん含有率を酸化りん (V) 含有率で表す場合は,6.7a)で得た試料中のりん含有率 [% (m/m)]
から,次の式によって算出する。
P2O5=P×2.291
ここに, P2O5: 試料中の酸化りん (V) の含有率 [% (m/m)]
P: 6.7a)で得た試料中のりん含有率 [% (m/m)]
JIS原案作成委員会 構成表
氏名
所属
(委員長)
○ 中 村 靖
株式会社ジャパンエナジー分析センター
揖 斐 敏 夫
資源エネルギー庁長官官房鉱業課
大 嶋 清 治
工業技術院標準部
大 島 健 二
古河機械金属株式会社大阪工場
奥 谷 忠 雄
日本大学理工学部
金 築 四 郎
住友シチックス株式会社技術部
○ 河 合 哲 朗
日本酸化チタン工業会
西 島 芳 正
石原産業株式会社四日市工場
○ 服 部 兆 隆
東邦チタニウム株式会社品質管理部
馬 場 央 自
三菱商事株式会社ベースメタル事業部
福 本 寛
堺化学工業株式会社小名浜事業所第一工場
○ 藤 瀬 雅 嵩
チタン工業株式会社宇部工場
藤 貫 正
日本磁気共鳴医学会
○ 細 野 正
富士チタン工業株式会社神戸工場
山 本 浩 司
株式会社トーケムプロダクツ秋田工場
○ 吉 岡 貞 治
テイカ株式会社岡山工場
(事務局)
牧 嶋 作 雄
日本酸化チタン工業会
(関係者)
岡 野 修
堺化学工業株式会社
梶 井 義 文
住友シチックス株式会社
奈 良 雄 大
株式会社トーケムプロダクツ
西 原 英 樹
古河機械金属株式会社
藤 井 澄 男
石原産業株式会社
備考:○印は専門委員会も兼ねる。